JP2006181590A - 連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 熱伝達係数を任意に且つ容易に、しかも局所的に変更することが可能であって、鋳型を交換しなくても簡便且つ安価に、高速鋳造にもまた緩冷却化にも対応することのできる連続鋳造用鋳型を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するための本発明の連続鋳造用鋳型は、鋳型銅板1を冷却するための冷却水用通水路4を備えた連続鋳造用鋳型において、前記通水路の内壁面には、紫外線の照射によって親水性を示す物質の被覆層7が形成され、当該被覆層に向けて紫外線の照射が可能に構成されている。この場合、前記被覆層は、TiO2 或いはTiO2 の混合化合物であることが好ましい。
【選択図】 図2
【解決手段】 上記課題を解決するための本発明の連続鋳造用鋳型は、鋳型銅板1を冷却するための冷却水用通水路4を備えた連続鋳造用鋳型において、前記通水路の内壁面には、紫外線の照射によって親水性を示す物質の被覆層7が形成され、当該被覆層に向けて紫外線の照射が可能に構成されている。この場合、前記被覆層は、TiO2 或いはTiO2 の混合化合物であることが好ましい。
【選択図】 図2
Description
本発明は、連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、熱伝達係数を任意に且つ容易に、しかも局所的に変更することが可能で、高い熱伝達を必要とする高速鋳造にも、或いは溶鋼湯面位置の緩冷却化を必要とする、中炭素鋼などの割れ感受性の高い鋼種にも適用可能な連続鋳造用鋳型、並びに、この鋳型を用いた連続鋳造方法に関するものである。
近年、鋼の連続鋳造では、生産性を向上するために鋳造速度(即ち鋳片の引抜き速度)を増加する技術が種々検討されている。連続鋳造において鋳造速度を速めた操業は、通常、高速鋳造と呼ばれていて、その鋳造速度は鋳片の厚みに応じて異なっており、断面積の大きい厚さ220mmのスラブで3.5m/min、厚さ90mmのスラブで8m/min、断面積の小さいビレット(120mm角〜150mm角)で5m/min程度の高速鋳造が可能になっている。
高速鋳造では、単位時間当たりに多量の溶鋼を冷却する必要があることから、鋳型の冷却効率を高めることが要求される。従来、鋳型の冷却効率を高める手段として、溶鋼及び凝固シェルと接触する鋳型の内壁面に、熱伝達率の高い且つ厚みの薄い銅板を設置する技術が一般的に行われてきた。
しかしながら高速鋳造では、銅板への単位時間当たりの入熱量、及び単位面積当たりの入熱量が増加するので、銅板の温度が上昇してしまう。また、銅板が薄いので、廃却までの改削回数が少なくなり、寿命も短くなる。その結果、下記のような問題が生じ、連続鋳造の操業に支障を来たす場合があった。
(A):銅板が変形して凝固シェルと均一に接触できなくなるので、凝固シェルの成長が不均一になり、鋳片の表面に縦割れが発生する。ビレットの場合、それに加えて、菱形変形が顕著になり、鋳片内部割れの原因となり、製品の表面疵が発生する。(B):凝固シェルが銅板に焼付いて、拘束性ブレークアウトが発生する。(C):銅板の変形と鋳造速度増速との相互作用により、鋳型出側における凝固シェル厚みが減少するので、鋳片のバルジングが発生する。(D):凝固シェルには鋳片内部の未凝固溶鋼の静圧が作用するので、上記の(A)及び(C)に関連して、凝固シェルが溶鋼を保持できないときには、鋳片の破断或いは溶鋼の漏出が発生する。
これらの(A)〜(D)に掲げたような問題点に対し、鋳型の冷却特性を向上して高速鋳造を支障なく行う技術が種々検討されている。例えば、特許文献1には、連続鋳造用鋳型を冷却水で冷却する際に、鋳型内で冷却水の核沸騰を許容しつつ冷却水を供給制御した冷却方法が開示されている。この技術は、鋳型の冷却水が核沸騰の発生しない強制対流の状態よりも、核沸騰の発生する状態の方が、熱伝達率が向上することを利用した技術である。
一方、割れ感受性の高い中炭素鋼やフェライト系ステンレス鋼を鋳造する場合には、鋳片表面の割れを抑制するために、鋳型の緩冷却化、特に、溶鋼湯面部位に相当する鋳型上部の緩冷却化が要求されており、換言すれば、高速鋳造とは全く逆の冷却機能を有する鋳型が要求されており、そのための技術が種々検討されている。例えば、特許文献2には、鋳型を鋳造方向に上部と下部とに分けたとき、鋳型の上部の冷却水通水路の内壁面に金属材料のメッキ層を設けた鋳型が開示されている。この技術は、銅よりも熱伝導率が低い金属材料のメッキ層を設けることで、鋳型上部の抜熱を抑制して緩冷却化を図った技術である。
特開平3−81049号公報
特開平11−179492号公報
ところで、或る1基の連続鋳造機で鋳造する鋼種は多岐に亘り、高速鋳造に適した鋼種のみを鋳造することはなく、中炭素鋼のような割れ感受性の高い鋼種も鋳造する必要がある。即ち、鋳型の冷却効率を高めた高速鋳造と、鋳型の緩冷却化を必要とする鋳造とを、同一の連続鋳造機で実施することが要求される。それぞれの鋳造チャンスの都度、それぞれの鋳造条件に適正化した鋳型に取り替えて鋳造すれば目的を達成できるが、頻繁な鋳型交換を余儀なくされ、連続鋳造機の生産性を悪化させるのみならず、操作員には鋳型交換という作業が負荷される。これらの理由から、鋳型を交換しなくても、高速鋳造にも、また、緩冷却化にも対応可能な鋳型が要求されていた。
この観点から上記従来技術を検証すると、特許文献1は鋳型の冷却能を高めた技術であり、緩冷却化は実質的に不可能である。また、特許文献1の技術では、沸騰現象を安定して維持するのは困難であることから、鋳型の熱伝達率が大きく変動し、その結果、鋳片に縦割れが生じるばかりでなく、甚だしい場合はバーンアウト(沸騰熱伝達から膜沸騰熱伝達に遷移する領域で熱伝達率が急激に低下することによる鋳型の溶損)が生じて操業を停止せざるを得なくなる恐れがあり、安定した高速鋳造を実施できない懸念がある。更に、沸騰現象を利用して鋳型の冷却を行う場合には、例えば環水などの安価な水資源を使用すると水中に溶解している炭酸カルシウムが析出して冷却水の通水路(例えば配管など)の内壁面に付着し、熱伝達が阻害される。そのため、特許文献1に開示された技術を適用するときには、冷却水として純水を使用しなければならず、冷却水の管理費のみならず配管や水処理設備の維持費が増大するという問題もある。
一方、特許文献2に開示された技術は、鋳片に緩冷却を施すことによって割れを防止する技術であるから、鋳型の冷却効率を高める必要のある高速鋳造には適用できない。また、冷却水の通水路の内壁面にNiなどの金属材料のメッキ層を設ける必要があることから、鋳型の製造費が増大するという問題もある。
このように、鋳型を交換しなくても、高速鋳造にも、また、緩冷却化にも対応可能な鋳型が要求されているにも拘らず、従来、有効な手段はなく、やむなくどちらか一方を犠牲にして操業しているのが現状であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、熱伝達係数を任意に且つ容易に、しかも局所的に変更することが可能であって、鋳型を交換しなくても簡便且つ安価に、高速鋳造にもまた緩冷却化にも対応することのできる連続鋳造用鋳型を提供することであり、同時に、この連続鋳造用鋳型を用いた効率的な、鋼の連続鋳造方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討・研究を行った。その結果、連続鋳造用鋳型の鋳型銅板に設けられる冷却水用通水路の壁面の熱伝達に着目し、冷却水と接触する通水路の壁面に、紫外線の照射によって親水性を示す、TiO2 或いはその混合化合物などをコーティングして被覆層を形成し、更に、この被覆層に、強度を調整した紫外線を照射しながら鋳造することで、鋳型の抜熱量が飛躍的に増大すると同時に、鋳型の冷却が安定するとの知見を得た。
また、紫外線を照射しない場合には、抜熱量が従来の鋳型銅板の値にまで低下するので、抜熱量の増大を嫌うような鋼種、例えば、割れ感受性の高い中炭素鋼やフェライト系ステンレス鋼などを鋳造する場合にも好適な鋳型になるとの知見を得た。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、第1の発明に係る連続鋳造用鋳型は、鋳型銅板を冷却するための冷却水用通水路を備えた連続鋳造用鋳型において、前記通水路の内壁面には、紫外線の照射によって親水性を示す物質の被覆層が形成され、当該被覆層に向けて紫外線の照射が可能に構成されていることを特徴とするものである。
第2の発明に係る連続鋳造用鋳型は、第1の発明において、前記被覆層は、TiO2 或いはTiO2 の混合化合物であることを特徴とするものである。
第3の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、第1または第2の発明に記載の連続鋳造用鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法であって、紫外線の照射強度を調整しながら鋳造することを特徴とするものである。
本発明によれば、高速鋳造を行うに当たって簡便且つ安価な手段で鋳型の冷却効率を高めることができ、下記の(1)〜(3)の効果が発揮される。
(1)鋳片の縦割れ、菱形変形、ブレークアウトの防止:従来の高速鋳造の技術では、鋳型銅板への入熱量が増大するので、鋳型銅板の温度が上昇し、鋳型銅板の変形や焼付きが生じる。その結果、鋳片の縦割れ、菱形変形、ブレークアウトが発生するが、本発明では、高速鋳造においても鋳型銅板の温度上昇を抑制できるので、これらの問題を防止できる。この効果は、スラブの高速鋳造のみならずビレットの高速鋳造でも発揮される。
(2)通水路壁面への付着物の堆積防止:冷却水と接触する通水路の壁面に濡れ性の良い物質をコーティングすることによって、水垢やスケールなどの付着が抑制される。この効果は、環水などの安価な水資源を冷却水として使用する場合にも発揮され、しかもスケールなどの付着防止のための薬剤を注入しなくても長期間に亘って維持される。
(3)鋳型の耐用性の向上:上記の(1)、(2)の効果が発揮されることによって、高速鋳造における鋳型の耐用性が著しく向上する。その結果、高速鋳造を長時間安定して継続できる。
また、紫外線を照射しない場合には、鋳型の抜熱量が低下するので、抜熱量の増大を嫌うような鋼種、例えば、割れ感受性の高い中炭素鋼やフェライト系ステンレス鋼を鋳造する場合には好適な鋳型となる。
このように、同一の鋳型であっても、熱伝達係数を任意に且つ容易に、しかも局所的に変更することが可能であり、高い熱伝達を必要とする高速鋳造にも或いは溶鋼湯面位置の緩冷却化を必要とする割れ感受性の高い鋼種にも適用可能であり、生産性の向上、鋳片表面性状の向上など、工業上有益な効果がもたらされる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に係る連続鋳造用鋳型では、鋳型銅板を冷却するための冷却水用通水路には、冷却水と接触する内壁面に、紫外線の照射によって濡れ性の良くなる物質、即ち紫外線の照射によって親水性を示す物質がコーティングされ、コーティング被覆層を形成している。このコーティング層を形成する物質(以下、「コーティング材」とも記す)の水との濡れ性は、水との濡れ角度(deg )で評価する。水との濡れ角度は、図1に示すように、表面粗さRa を2μm以下とした銅板上に各コーティング物質をコーティングし、温度24℃、湿度(相対湿度)45%の条件下で、実機で冷却用として用いる水(環水または純水)を使用し、この水をコーティング層7の上に垂らして0.4mlの水滴16を形成し、紫外線を照射しながら協和界面科学(株)製のFACE接触角計(CA-X型)によって水滴16とコーティング層7とのなす角度θを測定し、この角度θを濡れ角度と定義し、濡れ角度θによって親水性を評価した。
鋳造速度即ち鋳片の引抜き速度を増加する高速鋳造では、通水路における冷却水の流速を3m/sec以上に速める必要があり、冷却水を流速3m/sec以上で通過させる場合には、上記の濡れ角度θが40度を超えると、冷却水の沸騰現象が不安定になり、熱伝達率が変動する。一方、冷却水の流速が3m/sec以上の場合に、濡れ角度θが40度以下では、冷却水の沸騰現象を促進させ且つ安定させることができる。その結果、鋳型の熱伝達率を向上させることができるとともに、高熱伝達率を安定して維持することができる。
以上のことから、熱伝達率を向上させるには、冷却水に対するコーティング層7の濡れ角度を40度以下にする必要のあることが分った。即ち、本発明における親水性を示す物質とは、水に対する濡れ角度θが40度以下となる物質のことである。ここで、紫外線照射によって親水性を呈するコーティング層を形成するためのコーティング材としては、使用段階において、酸化チタン(TiO2 )、或いは、酸化チタン(TiO2 )と酸化シリコン(SiO2 )との混合物が好適である。ここで、「使用段階」の意味は、コーティング層を形成するときには金属或いは金属化合物であっても、使用時即ち使用段階には酸化物になっていればよいという意味である。
冷却水用通水路の内壁面に形成したコーティング層に親水性を発揮させ、冷却水との間で任意の熱伝達係数を得るために、本発明に係る連続鋳造用鋳型には、紫外線照射装置が設置されている。図2に、本発明に係る連続鋳造用鋳型の1例の概略側断面図を示し、図3に、図2におけるA−B矢視の概略断面図を示す。尚、図2は、スラブ連続鋳造機の長辺用の鋳型を示し、しかも、片側の鋳型壁のみを図示している。
図2及び図3において、1は鋳型銅板、2は鋳型銅板を固定するためのバックアップフレーム、3は冷却水、4は鋳型銅板に設けられたスリットとバックアップフレームとで形成される通水路、5は浸漬ノズル、6は鋳型内の溶鋼湯面である。冷却水3は、鋳型銅板1の下部から通水路4に供給され、通水路4を上昇して鋳型銅板1の上部から排出される構造になっている。この通水路4の内壁面には、紫外線照射によって親水性を呈するコーティング材からなるコーティング層7が形成されている。浸漬ノズル5及び溶鋼湯面6は、溶鋼をこの鋳型によって連続鋳造する場合の位置関係を示したものである。
紫外線照射装置は、照射する紫外線の強度を制御するための紫外線照射制御装置9と、紫外線照射制御装置9からの信号により所定の電源を供給するための紫外線照射用電源10と、紫外線照射用電源10から供給される電力によって所定の紫外線を照射する紫外線光源ランプ11と、紫外線光源ランプ11から照射された紫外線のコーティング層7に到達する際の強度を調整することの可能な紫外線光量調整装置15と、紫外線を送光するための光ファイバーケーブル12と、通水路4からの冷却水3の漏洩を防止するとともに光ファイバーケーブル12の先端から照射される紫外線を通水路4の内部に透過させるための耐圧透明ガラス13と、から構成されている。また、紫外線照射制御装置9には、鋳型抜熱量測定装置14で測定した鋳型抜熱量の測定値が入力されるようになっている。鋳型抜熱量測定装置14は、冷却水3の鋳型への入り側温度と出側温度の差や、鋳型銅板内の厚み方向に埋設した2本の熱電対の温度差などから、鋳型における抜熱量を測定する装置である。
コーティング層7へ照射される紫外線の強度は、鋳型抜熱量測定装置14で測定される鋳型抜熱量が目標値に近づくように、紫外線光源ランプ11から照射された紫外線の強度が紫外線光量調整装置15によって調整され、強度が調整された紫外線が、光ファイバーケーブル12を経由し、耐圧透明ガラス13及び通水路4の内部の冷却水3を透過し、通水路4の内壁面に形成されたコーティング層7に照射される。紫外線の光源としては、特に限定する必要なく、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、エキシマレーザー光源などが適用できる。
紫外線光量調整装置15としては、例えばメッシュ絞り回転方式の調整装置を用いることができる。その他、親水性のコーティング層7に照射する紫外線強度の制御方法として、光ファイバーケーブル12の先端位置を可動させて光ファイバーケーブル12の先端からコーティング層7までの距離を変更する方法、或いは、紫外線照射用電源10に供給する電力を直接調整する方法などによって実施することもできる。
光ファイバーケーブル12は、波長の短いDUV(deep ultraviolet radiation)光によるダメージによって光学特性が劣化しないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、石英ガラス質でもよい。
紫外線の強度は、コーティング層7が親水性を発揮するまでの時間に影響を及ぼす。従って、鋳型抜熱量を低く抑えて鋳造する鋼種(「鋼種L」と記す)に引き続き、抜熱量を大きくして鋳造する鋼種(「鋼種H」と記す)の場合、紫外線照射開始からコーティング層7に親水性が発現(濡れ角度<40度)するまでの時間が、鋼種Lの鋳造終了から次の鋼種Hの鋳造開始までの鋳造準備時間に一致するように、紫外線の強度を設定すればよい。例えば、鋳造準備時間が30分以内の場合、コーティング層7の壁面における紫外線の強度は、100mW/cm2 以上が望ましい。100mW/cm2 未満の場合には、30分間では所定の親水性を得られない場合が発生する。
通水路4の内壁面に形成されるコーティング層7の被覆層の厚さが0.2μm未満では、冷却水3の沸騰現象が安定しない場合がある。一方、被覆層の厚さが2μmを超えると、鋳型銅板1から冷却水3への熱伝達が阻害される傾向があるばかりでなく、コーティング層7が剥離しやすくなる。従って、コーティング層7の被覆層の厚さは、0.2μm〜2μmの範囲内が好ましい。また、通水路4の内壁面の粗度も大きく影響し、表面粗さRa が大きすぎると、安定した親水性が得られないため、コーティングする壁面の表面仕上げ加工精度は、機械加工の場合は仕上げ記号で三角2つ(▽▽)或いは三角3つ(▽▽▽)とし、バフ研磨や冷間引き抜き加工後の表面状態も望ましい。
通水路4の内壁面をコーティング材で被覆する方法は、特定の手段に限定せず、安価で且つ作業性の良いスプレーコート法の他に、ディップ法、PVD法、CVD法、メッキ法などの従来から知られている技術が適用できる。また、コーティング材で被覆する領域は、熱伝達を大幅に変更することが可能になるという観点から、鋳型銅板1に設けられる通水路4の内壁面全体をコーティング材で被覆することが好ましい。但し、冷却水3へ大量の熱が伝達される鋳型上部(例えば上側半分)の通水路4の内壁面のみをコーティング材で被覆してもよい。
また本発明を適用する鋳型の種類や形状は特に限定しない。例えば、スラブ連続鋳造機で使用するような組立て鋳型の場合には、図3に示すように、冷却水3の通水路4は、鋳型銅板1に形成されたスリットとバックアップフレーム2とで形成されているので、そのスリット部のみをコーティング材で被覆すればよい。
スラブ連続鋳造機の鋳型に比べて断面が小さいビレット連続鋳造機の鋳型の場合は、図4及び図5に示すように、フラットな通水路4が、鋳型銅板1とバックアップフレーム2とパッキン8とで囲まれた間隙として形成されており、通水路4を構成する鋳型銅板1の壁面全体をコーティング材で被覆すればよい。尚、図4は、本発明に係るビレット連続鋳造機用鋳型の1例の概略側断面図であり、図5は、図4におけるA−B矢視の概略断面図である。図4は、片側の鋳型壁のみを図示している。図4に示すビレット連続鋳造機用の鋳型も、パッキン8の設置以外は基本的には図2に示すスラブ連続鋳造機用の鋳型と同一構造になっており、同一の部分は同一符号により示し、その説明は省略する。
上記構成の本発明に係る連続鋳造用鋳型によれば、鋳型銅板1の熱伝達係数を任意に且つ容易に、しかも局所的に変更することが可能となり、鋳型を交換しなくても簡便且つ安価に、高速鋳造にもまた緩冷却化にも対応することができ、その結果、鋳片の縦割れ、菱形変形、ブレークアウトの防止、及び、鋳型の耐用性の向上などが達成され、連続鋳造工程のコスト合理化が推進される。
スラブ連続鋳造機とビレット連続鋳造機の2種類の連続鋳造機を用いて鋼の連続鋳造を行った。スラブ連続鋳造機の鋳型は、前述した図2の構造であり、ビレット連続鋳造機の鋳型は前述した図4の構造である。表1に、これらの連続鋳造機の仕様を示す。
各鋳型に取付けた鋳型銅板の仕様を表2に示す。尚、スラブ連続鋳造機では、鋳型長辺を構成する鋳型銅板の通水路内壁面全体をコーティング材で被覆し、ビレット連続鋳造機では、一体成形された鋳型銅板の冷却水と接触する壁面全体をコーティング材で被覆した。使用したコーティング材は表2に示す通りであり、被覆方法は、何れもスプレーコーティング法を採用した。
コーティング材の被覆層の厚さは、1μm弱とした。紫外線光源ランプ11として水銀キセノンランプ、光ファイバーケーブル12として石英ファイバー、耐圧透明ガラス13として石英ガラス、紫外線照射調整装置15としてメッシュ絞り回転方式の調整装置を使用した。紫外線光源ランプ11の強度は、紫外線照射調整装置15が全開時に、光ファイバーケーブル12を通過した後のコーティング層7の壁面で3500mW/cm2 (波長365nm、中心強度)となるように設定した。また、鋳型抜熱量測定装置14は、目標値として、鋳型冷却水の出入り温度差が従来鋳型における温度差の10%増加するように設定した。紫外線の照射は、鋳型内の溶鋼湯面6の位置を基準として、溶鋼湯面6の上部側50mm、下部側200mmの範囲とし、スラブ連続鋳造機の場合は鋳型長辺面のみ、ビレット連続鋳造機の場合は全周全面に実施した。
一方、比較のために、鋳型銅板の冷却水と接触する壁面をコーティング材で被覆しない従来の鋳型を使用した鋳造も実施した。
使用したコーティング材は、(1)TiO2 (結晶系:アナタース、酸化チタン粒子径<100nm、市販品)、並びに、(2)SiO2 が主成分の無機高分子と有機溶剤から成り、乾燥によってガラス質の塗膜が形成されるもの(市販品)と、(1)のTiO2 とが、乾燥後に質量比でおよそ50:50の割合となる混合物の2種類とした。本発明例で使用したコーティング層7での濡れ角度及び従来例の鋳型銅板での濡れ角度を前述した表2に示す。本発明例では、何れも濡れ角度が40度以下であったのに対して、比較例では85〜108度であった。尚、濡れ角度の測定は、温度24℃、湿度(相対湿度)45%の条件下で前述した図1のようにして行った。
このようにして鋳型を準備し、各々500チャージ(スラブ連続鋳造機:280トン/チャージ、ビレット連続鋳造機:140トン/チャージ)の鋳造を実施し、得られた鋳片の縦割れの総長さ、菱形変形量(ビレットの場合、断面の2つの対角線長さの差として定義する)を調査した。更に、鋳型を解体し、通水路4の壁面に付着したスケールの最大厚さを調査した。その結果を表2に併せて示す。ここで、スケールの最大厚さとは、本発明例ではコーティング材で被覆した壁面に付着したスケールの最大厚さを指し、従来例では鋳型銅板の壁面に付着したスケールの最大厚さを指す。
表2から明らかなように、本発明例は、鋳片の縦割れの総長さや菱形変形が著しく減少し、且つ通水路4の壁面へのスケール付着も大幅に減少した。
以上に説明した通り、本発明によれば、通水路の壁面をコーティング材で被覆するという簡便且つ安価な手段で、優れた冷却特性を安定して維持できることが確認された。その結果、冷却水の管理費、配管や水処理設備の維持費、鋳型の製造費が削減可能で、しかも、高速鋳造を行う際には、鋳片の縦割れ、菱形変形、ブレークアウトを防止し、長時間に亘って操業を安定に継続することが可能となることが分った。
1 鋳型銅板
2 バックアップフレーム
3 冷却水
4 通水路
5 浸漬ノズル
6 溶鋼湯面
7 コーティング層
8 パッキン
9 紫外線照射制御装置
10 紫外線照射用電源
11 紫外線光源ランプ
12 光ファイバーケーブル
13 耐圧透明ガラス
14 鋳型抜熱量測定装置
15 紫外線光量調整装置
16 水滴
θ 濡れ角度
2 バックアップフレーム
3 冷却水
4 通水路
5 浸漬ノズル
6 溶鋼湯面
7 コーティング層
8 パッキン
9 紫外線照射制御装置
10 紫外線照射用電源
11 紫外線光源ランプ
12 光ファイバーケーブル
13 耐圧透明ガラス
14 鋳型抜熱量測定装置
15 紫外線光量調整装置
16 水滴
θ 濡れ角度
Claims (3)
- 鋳型銅板を冷却するための冷却水用通水路を備えた連続鋳造用鋳型において、前記通水路の内壁面には、紫外線の照射によって親水性を示す物質の被覆層が形成され、当該被覆層に向けて紫外線の照射が可能に構成されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
- 前記被覆層は、TiO2 或いはTiO2 の混合化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。
- 請求項1または請求項2に記載の連続鋳造用鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法であって、紫外線の照射強度を調整しながら鋳造することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
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