本発明は電子機器用バスバー及びこの電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法に関し、より詳しくは電子部品の接続端子が接合される接合部分における形状を改良した電子機器用バスバー及びこの電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法に関する。
近年のエレクトロニクスの進歩は著しく、例えばカーエレクトロニクスにあっては、自動車に搭載される電子機器やCPUの数が飛躍的に増大している。このため、自動車用ワイヤーハーネスを種々の電装品に分岐接続する際には、分岐接続部分を集中させて配線を合理的かつ経済的に行うべく、電気接続箱(ジャンクションブロック)が採用されている。
そして従来にあっては、プレス加工等により種々の形状に打ち抜かれるとともに各種回路パターンが形成されたバスバーに対して、別途製作された各電子部品の接続端子(タブ端子)を接合することにより所望の回路を構成して、小型・高密度化を図った電気接続箱が知られている。
このような電気接続箱において、バスバーと接続端子とを接合する際にはんだ付けを利用すると、接合部にクラックが発生して機械的強度が低下する場合がある等から、レーザ光やプラズマ等の高エネルギ密度の加熱源を利用して溶接する手法が知られている。しかし、バスバーの材質は銅又は銅合金であり、その熱伝導度が高い。このため、例えばレーザ溶接によると、高出力のレーザ照射が必要となり、設備費の高額化やスパッタの発生による溶接品質の低下等の問題を招く場合がある。
そこで、接続端子に断面積の小さい棒状突起部を設ける一方、バスバーにこの棒状突起部を挿通可能なスルーホールを形成し、スルーホールに棒状突起部を挿通させた状態で、該棒状突起部の先端部に向けてレーザ光を照射して該棒状突起部の先端部を溶融させることにより、バスバーと接続端子とを接合する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術によれば、接続端子に設けられた低熱容量形状の棒状突起部に対してレーザ光を照射することから、その材質が熱伝導率の高い銅又は銅合金であったとしても融点以上にまで容易に加熱して棒状突起部の先端部を溶融させることができるので、低出力のレーザ照射による溶接が可能となる。
また、バーリング加工を利用して、前記スルーホールを中心孔としてテーパ筒状に突出したバーリング部を設け、該スルーホールに接続端子の棒状突起部を挿通させて該棒状突起部の先端部をバーリング部の突出先端よりも突出させた状態で、該棒状突起部の先端部にレーザ光を照射して該先端部を溶融させることにより、バスバーと接続端子とを接合する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
この技術によれば、テーパ筒状に突出するバーリング部が、バスバーのスルーホールに接続端子の棒状突起部を挿通させる際の案内作用を果たすため、その挿通作業をスムーズかつ容易に行うことができる。
特開2002−25639号公報
特開平7−241020号公報
しかしながら、上記従来技術では、バーリング部に接合するためだけの棒状突起部を接続端子に別途設ける必要があり、工程数の増加やコスト高を招くという問題があった。
一方、接合用の棒状突起部を接続端子に設けない場合は、特にバスバーに対して複数の電子部品の接続端子を接合するときに以下に示すような問題があった。すなわち、各電子部品の接続端子は径や材質等がそれぞれ異なるところ、接続端子に対する入熱条件が端子毎に大きく異なる。このため、上記従来技術のように接続端子を加熱・溶融させることによりバーリング部と接続端子とを接合する技術で、複数の電子部品の接続端子をバスバーに接合するには、以下に示すように接合方法も各電子部品の接続端子毎に変更しなければならない。したがって、各接合方法毎に異なる溶接機をそれぞれ準備する必要があり、電子機器のコスト高や製造工程の複雑化を招いていた。
例えば、接続端子が銅系材料よりなる場合、銅系材料は熱伝導率が高いとともにレーザ光の反射率が高いことから、特に線径の太い銅系接続端子をレーザ光の照射により溶融させようとすると、かなり大きなパワーが必要となり効率が極端に悪くなってしまう。また、銅系材料よりなるバスバーに対して銅系接続端子を抵抗溶接により接合しようとしても、両部材間における抵抗値の差が小さいため、良好に接合することができない。このため、線径がφ2mm以上の銅系接続端子はプラズマ溶接により、線径がφ2mm未満の銅系接続端子はTIG溶接により、銅系材料よりなるバスバーに接合していた。一方、接続端子が鉄系材料よりなる場合は、線径がφ2mm以上のときはレーザ溶接又はプラズマ溶接により(線径がφ2mm以上になると、抵抗溶接によりジュール熱を発生させることが困難になるため)、線径がφ2mm未満であれば抵抗溶接により、銅系材料よりなるバスバーに接合していた。
他方、電子部品の接続端子が接合されたバスバーを備えた電子機器について、例えば振動試験を行う場合、接続端子とバスバーとの接合部における接合強度は、接続端子の母材強度よりも高い強度が必要とされる。このため、接続端子の線径が太くなれば、その接続端子とバスバーとの接合強度は、線径の細い接続端子とバスバーとの接合強度よりも高い強度が必要とされる。したがって、線径の太い接続端子とバスバーとの接合は高い接合強度を確保することのできる溶接方法を採用する必要があった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、バスバーに対して材質や線径の異なる複数の接続端子を溶接する場合であっても、接合のためだけの棒状突起部等を接続端子に別途設けることなく、また接続端子毎に溶接方法(溶接機)を変更することなく、各接続端子を良好に溶接することのできる電子機器用バスバー及びその電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法を提供することを解決すべき技術課題とするものである。
上記課題を解決する本発明の電子機器用バスバーは、銅系材料よりなる本体部と、挿入孔をもつように該本体部から一体に隆起して筒状にそれぞれ突出するとともに各突出先端側に先端側溶融部をそれぞれもつ複数の筒状突起部とを有し、材質及び線径のうちの少なくとも一方が互いに異なる複数の接続端子が各該挿入孔にそれぞれ挿入された状態で、各該先端側溶融部が高エネルギ密度の加熱源によりそれぞれ溶融されることによって各該筒状突起部と各該接続端子とがそれぞれ溶接される電子機器用バスバーであって、各前記筒状突起部は、溶接される各前記接続端子との接合強度が所定値以上となるように、各該接続端子の材質及び線径に応じて突出高さがそれぞれ調整されることにより前記先端側溶融部の長さがそれぞれ調整されていることを特徴とするものである。
ここに、先端側溶融部とは、筒状突起部の突出先端側の部分であって、高エネルギ密度の加熱源により加熱・溶融されて溶融金属となる部分をいう。
この電子機器用バスバーは、筒状突起部の挿入孔に挿入された接続端子よりも該筒状突起部の先端側溶融部が優先的に加熱・溶融されることにより、以下に示すような作用効果を奏する。すなわち、この電子機器用バスバーでは、筒状突起部の先端側溶融部が高エネルギ密度の加熱源により加熱・溶融され、この先端側溶融部が溶融した溶融金属が筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の隙間に埋まって固化する(互いに溶融して溶接されるか、接続端子がバスバーより融点の高い異種材の場合はバスバー材の銅系金属によりろう付けされる)ことにより、筒状突起部と接続端子とが接合される。このとき、加熱源により加熱・溶融される筒状突起部の溶融量(溶融金属量)が多いほど、言い換えれば加熱源により加熱・溶融される先端側溶融部の長さが長いほど接合面積が大きなって接合部における接合強度が高くなる。このため、先端側溶融部の長さを適切に調整しておけば、筒状突起部と先端側溶融部との接合部において適切な接合面積を確保することができ、したがって所望の接合強度を得ることが可能となる。
本発明の電子機器用バスバーでは、接合される接続端子の材質及び線径に応じて筒状突起部の突出高さが調整されることにより先端側溶融部の長さが調整されている。すなわち、接続端子の材質が筒状突起部と接合し難いものであったり、あるいは接続端子の線径が大きくてより高い接合強度が求められるものであったりする場合は、それに応じて筒状突起部の先端側溶融部の長さが長くされている。このように、各筒状突起部において、接合される接続端子の材質及び線径に応じて予め筒状突起部の突出高さを調整して先端側溶融部の長さを適切に調整しておけば、あとはこの先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることで、その筒状突起部に接合される接続端子に応じた適切な接合面積を確保して所望の接合強度を得ることが可能となる。
したがって、本発明の電子機器用バスバーによれば、接合される接続端子に応じて異なる溶接方法(溶接機)を採用することなく、各筒状突起部の各先端側溶融部を確実に加熱 ・溶融させることが可能な高エネルギ密度の加熱源を利用する単一の溶接方法(溶接機)を採用することのみによって、各筒状突起部と各接続端子とを良好に接合することが可能となる。
また、本発明の電子機器用バスバーでは、各筒状突起部の各先端側溶融部を加熱・溶融させることで、各筒状突起部と各接続端子とを良好に接合することができるので、接合端子側に接合性を確保するための前記従来の棒状突起部等を別途設ける必要がない。したがって、棒状突起部を接続端子に別途設けることによる、工程数の増加やコストの高騰を回避することが可能となる。
好適な態様において、前記筒状突起部は、前記挿入孔に前記接続端子が挿入された後でかつ前記先端溶融部が溶融される前の状態で、該筒状突起部と該接続端子との間の隙間が最小となる位置における最小隙間が0.05〜0.4mmとなるように設定されている。
この電子機器用バスバーでは、筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の最小隙間が所定範囲に設定されていることから、筒状突起部と接続端子との間の隙間を同筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融された溶融金属で適切に埋めて所望の接合強度を確実に得ることができる。また、筒状突起部と接続端子との間の最小隙間が上記所定範囲に設定されていれば、先端側溶融部が加熱・溶融した溶融金属により筒状突起部と接続端子との間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得るのに適する加熱源から先端側溶融部への入熱量の適正範囲が広がり、生産性が向上する。
このような本発明の電子機器用バスバーは、請求項3乃至7に記載の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法を適用することにより、接合用の棒状突起部等を接続端子に別途設けたり、あるいは接続端子毎に接合方法を変更したりすることなく、複数の電子部品の各接続端子を各筒状突起部に良好に接合することができる。
すなわち、上記課題を解決する本発明の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、各前記筒状突起部の各前記挿入孔に各前記接続端子をそれぞれ挿入して、各該接続端子の各先端面を各該筒状突起部の各前記先端側溶融部の近傍にそれぞれ位置させるセット工程と、前記加熱源としてのレーザ光を各前記筒状突起部の各前記先端側溶融部に向けてそれぞれ照射することにより、各該先端側溶融部を溶融させて各該筒状突起部と各該接続端子とをそれぞれ接合する接合工程とを備えていることを特徴とするものである。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、高エネルギ密度の加熱源としてレーザ光を利用して筒状突起部の先端側溶融部を接続端子よりも優先的に加熱・溶融させる。この接合方法では、まずセット工程で、各筒状突起部の各挿入孔に各接続端子をそれぞれ挿入して、各該接続端子の各先端面を各該筒状突起部の各先端側溶融部の近傍にそれぞれ位置させる。このとき、好適には挿入孔に接続端子が挿入された後でかつ先端溶融部が溶融される前の状態で、筒状突起部と接続端子との間の隙間が最小となる位置における最小隙間が0.05〜0.4mmとなるように、接続端子の線径に応じて筒状突起部の挿入孔の内径を予め設定しておく。そして、接合工程で、各筒状突起部の各先端側溶融部に向けてレーザ光をそれぞれ照射する。レーザ光の照射により先端側溶融部が加熱・溶融されれば、同先端側溶融部が溶融した溶融金属が筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の隙間に埋まり、それが固化することによって各筒状突起部と各接続端子とが接合される。
したがって、本発明に係る電子機器用バスバーに対して接続端子を接合するこの電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法によれば、接合される接続端子に応じて異なる溶接方法(溶接機)を採用することなく、各筒状突起部の各先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることが可能な照射条件でレーザ光を各該先端側溶融部に向けて照射するというレーザ溶接を採用することのみによって、各筒状突起部と各接続端子とを良好に接合することが可能となる。
本発明の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、好適な態様において、前記セット工程で、前記接続端子の先端面を前記筒状突起部の突出先端面よりも低い位置にセットする。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、セット工程で、筒状突起部の突出先端面(レーザ光の照射により加熱・溶融される先端側溶融部の突出先端面)よりも低い位置に接続端子の先端面がセットされるため、先端側溶融部に向けて照射されたレーザ光が接続端子の先端面に照射され難い。このため、先端側溶融部を加熱・溶融させるために照射されたレーザ光のエネルギを該先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用することができる。また、接続端子が鉄系材料の場合は、レーザ光の照射により接続端子が加熱・溶融されると鉄系材料中に含まれる低沸点添加成分や不純物が沸騰することによるスパッタが発生することがあるが、この接合方法によればそのようなスパッタの発生を抑えることが可能となる。
本発明の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、好適な態様において、前記接合工程で、前記レーザ光を前記筒状突起部の突出方向に対して斜め照射する。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、接合工程で、筒状突起部の先端側溶融部に向けて、レーザ光を前記筒状突起部の突出方向に対して斜め照射するため、このレーザ光が接続端子の先端面に照射され難い。このため、レーザ光のエネルギを先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用することができるとともに、前記スパッタの発生を効果的に抑えることができる。
本発明の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、好適な態様において、前記接合工程で、中心部よりも外周部の方がエネルギ密度が高くされた前記レーザ光を、前記筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射する。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、接合工程で、中心部よりも外周部の方がエネルギ密度が高くされたレーザ光を、筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射するため、先端側溶融部を加熱・溶融させるために照射されたレーザ光のエネルギを該先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用することができる。また、接続端子の先端面には、エネルギ密度の低いレーザ光が照射されることから、鉄系材料よりなる接続端子中の低沸点添加成分が沸騰することによるスパッタの発生を抑えることができる。
本発明の電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、好適な態様において、前記接合工程で、エネルギ密度が前記筒状突起部の突出先端位置で高くなりかつ前記接続端子の先端位置で低くなるように焦点位置制御が行われた前記レーザ光を、前記筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射する。
この電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法では、接合工程で、エネルギ密度が筒状突起部の突出先端位置で高くなりかつ接続端子の先端位置で低くなるように焦点位置制御が行われたレーザ光を、筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射するため、その焦点位置制御を適切に行うことにより、先端側溶融部を加熱・溶融させるために照射されたレーザ光のエネルギを該先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用しつつ該先端側溶融部を確実に加熱・溶融させる一方で、鉄系材料よりなる接続端子中の低沸点添加成分が沸騰することによるスパッタの発生を確実に防止することが可能となる。
したがって、本発明に係る電子機器用バスバー及びこの電子機器用バスバーへの接続端子の接合方法によれば、バスバーに対して材質や線径の異なる複数の接続端子を溶接する場合であっても、接合のためだけの棒状突起部等を接続端子に別途設けることなく、また接続端子毎に溶接方法や溶接機を変更することなく、各筒状突起部と各接続端子とを良好に溶接することが可能となる。
本発明に係る電子機器用バスバーは、銅系材料よりなる本体部と、挿入孔をもつように該本体部から一体に隆起して筒状にそれぞれ突出するとともに各突出先端側に先端側溶融部をそれぞれもつ複数の筒状突起部とを有している。
この電子機器用バスバーは、本体部と複数の筒状突起部とが、平板状等の銅系材料からプレス加工等により一体に形成されている。この銅系材料としては、特に限定されず、銅や真鍮等の銅合金を用いることができる。
この電子機器用バスバーでは、複数の電子部品の各接続端子が各筒状突起部にそれぞれ接合される。この電子部品の種類や接続端子の材質及び線径については特に限定されず、銅系材料や鉄系材料等よりなる接続端子を接合することができる。
各筒状突起部は、本体部の所定位置から挿入孔を持つように一体に隆起して所定の突出高さ及び肉厚をもつ筒状にそれぞれ突出している。このように複数の筒状突起部を有する本発明の電子機器用バスバーでは、材質及び線径のうちの少なくとも一方が互いに異なる複数の接続端子が各挿入孔にそれぞれ挿入された状態で、各筒状突起部の各先端側溶融部が高エネルギ密度の加熱源によりそれぞれ溶融されることによって各筒状突起部と各接続端子とがそれぞれ溶接される。
材質及び線径のうちの少なくとも一方が互いに異なる複数の接続端子とは、本発明の電子機器用バスバーに対して接合される全ての接続端子のうちの少なくとも一つは、残りの接続端子のうちの少なくとも一つと、材質及び線径のうちの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。なお、複数の接続端子を有する一つの電子部品であって各該接続端子の材質及び線径が同一のものである場合は、各該接続端子がそれぞれ接合される各筒状突起部においては、突出高さ、肉厚及び挿入孔の内径がそれぞれ同じ大きさとされる。
各筒状突起部の各挿入孔は、その挿入孔に挿入されて接合される接続端子の線径に応じて、各筒状突起部の内周面と各接続端子の外周面との間にそれぞれ所定の隙間を形成しうるように、それぞれが所定の孔径で形成されている。すなわち、挿入孔は、接続端子を容易に挿入することができるように接続端子の線径よりも所定量大きな孔径で、かつ、筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融した溶融金属で前記隙間を適切に埋めて所望の接合強度を発揮することができるような大きさの孔径とされている。なお、筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融した溶融金属量に対して前記隙間が相対的に大きすぎると、この隙間を溶融金属で適切に埋めることができないため、所望の接合強度を得ることができない。
ここに、前記筒状突起部は、挿入孔に接続端子が挿入された後でかつ先端溶融部が溶融される前の状態で、該筒状突起部と該接続端子との間の隙間が最小となる位置における最小隙間が0.05〜0.4mmとなるように設定されていることが好ましく、0.05〜0.2mmとなるように設定されていることがより好ましい。この筒状突起部と該接続端子との間の隙間とは、筒状突起部の挿入孔の中心に接続端子が挿入されている場合における該筒状突起部と該接続端子との間の片側隙間を意味する。この筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の最小隙間が上記所定範囲に設定されていれば、筒状突起部と接続端子との間の隙間を同筒状突起部の先端側溶融部が加熱・溶融された溶融金属で適切に埋めて所望の接合強度を確実に得ることができる。また、筒状突起部と接続端子との間の最小隙間が上記所定範囲に設定されていれば、先端側溶融部が加熱・溶融した溶融金属により筒状突起部と接続端子との間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得るのに適する加熱源から先端側溶融部への入熱量の適正範囲が広がり、生産性が向上する。筒状突起部と接続端子との間の隙間が大きすぎると、挿入孔内で接続端子が偏ること等により溶融金属の溶け落ちが発生したり、溶融金属量の不足により隙間を適切に埋めることができなくなったりするため、接合不良が発生し易くなる。一方、筒状突起部と接続端子との間の隙間が小さすぎると、筒状突起部の挿入孔に対する接続端子の挿入性が低下するとともに、毛細管現象により溶融金属が隙間内を流れ落ちてしまうことがあり接合不良が発生し易くなる。
本発明の電子機器用バスバーでは、各筒状突起部は、溶接される各接続端子との接合強度が所定値以上となるように、各該接続端子の材質及び線径に応じて突出高さがそれぞれ調整されることにより先端側溶融部の長さがそれぞれ調整されている。筒状突起部に接合される接続端子の線径が大きくなれば、それに応じて接合部に要求される接合強度も高くなる。このため、接合される接続端子の線径が大きくなれば、それに応じて筒状突起部の突出高さも高く設定されて先端側溶融部の長さが長く設定される。また、接合される接続端子の材質と電子機器用バスバーの材質とが異種である場合は、同種である場合と比較して溶接され難い。このため、接合される接続端子の材質と電子機器用バスバーの材質とが異種である場合は、同種である場合と比較して、筒状突起部の突出高さが高く設定されて先端側溶融部の長さが長く設定される。
ここに、筒状突起部の肉厚は、厚すぎるとこの筒状突起部の先端側溶融部を加熱・溶融させることが困難になる一方、薄すぎるとこの筒状突起部の挿入孔に挿入された接続端子と同筒状突起部との間の隙間を先端側溶融部が溶融した溶融金属で適切に埋めて所望の接合強度を得ることが困難になる。このため、各筒状突起部の肉厚は、同筒状突起部の先端側溶融部が溶融した溶融金属により、同筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、同先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることができるように調整される。
このように構成された本発明の電子機器用バスバーは、筒状突起部の挿入孔に接続端子が挿入された状態で、該接続端子よりも該筒状突起部の先端側溶融部が優先的に加熱・溶融される。このとき、筒状突起部の先端側溶融部を加熱・溶融させる加熱源としては、各筒状突起部の各先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることができる高エネルギ密度の加熱源であれば特に限定されず、レーザ、プラズマやTIGを利用することができる。ただし、生産性向上や設備の小型化等の観点より、レーザ照射を利用することが好ましい。
すなわち、本発明の電気機器用バスバーに対して接続端子を接合する際に好適に採用することができる、本発明の電気機器用バスバーへの接続端子の接合方法は、セット工程と、接合工程とを備えており、この接合工程で、レーザ光により筒状突起部の先端側溶融部を加熱溶融させる。
セット工程では、各前記筒状突起部の各前記挿入孔に各前記接続端子をそれぞれ挿入して、各該接続端子の各先端面を各該筒状突起部の各前記先端側溶融部の近傍にそれぞれ位置させる。このとき、接続端子の先端面は筒状突起部の突出先端面(先端側溶融部の突出先端面)よりも突出していないことが好ましく、接続端子の先端面が筒状突起部の突出先端面よりも低い位置にセットされることがより好ましい。こうすれば、接合工程においてレーザ光の照射により筒状突起部の先端側溶融部を接続端子よりも優先的に加熱・溶融させることが容易になる。また、先端側溶融部に向けて照射されたレーザ光が接続端子の先端面に照射され難くなることから、先端側溶融部を加熱・溶融させるために照射されたレーザ光のエネルギを該先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用することができるとともに、接続端子が鉄系材料である場合におけるスパッタの発生を抑えることが可能となる。
したがって、接続端子が鉄系材料である場合は、スパッタの発生を抑えるべく、セット工程で、接続端子の先端面が筒状突起部の突出先端面(先端側溶融部の突出先端面)よりも突出していないことが好ましく、接続端子の先端面が筒状突起部の突出先端面よりも低い位置にセットされることがより好ましい。
接合工程では、加熱源としてのレーザ光を各筒状突起部の各先端側溶融部に向けてそれぞれ照射することにより、各該先端側溶融部を溶融させて各筒状突起部と各接続端子とをそれぞれ接合する。このとき、レーザ光の照射により筒状突起部の先端側溶融部を過不足なく確実に加熱・溶融させることができるように、各筒状突起部の各先端側溶融部の長さや肉厚に応じてレーザ光の照射条件を予め適切に設定しておく。なお、レーザ光の照射により先端側溶融部が過剰に溶融することは、所望の接合強度を得ることができる範囲内で許容される。こうしてレーザ光の照射により先端側溶融部が加熱・溶融されれば、この先端側溶融部が溶融した溶融金属が筒状突起部とその挿入孔に挿入された接続端子との間の隙間に埋まり、それが固化することによって各筒状突起部と各接続端子とが接合される。
この接合工程において、レーザ光を、筒状突起部の先端側溶融部に向けて、該筒状突起部の突出方向に対して斜め照射することが好ましい。先端側溶融部の外側面に向けてレーザ光を斜め照射することにより、特に接続端子の先端面が筒状突起部の突出先端よりも低い位置にセットされていれば、レーザ光が接続端子の先端面に照射され難くくなるので、レーザ光のエネルギを先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用することができるとともに、前記スパッタの発生を効果的に抑えることができる。
したがって、接続端子が鉄系材料である場合は、スパッタの発生を抑えるべく、接合工程で、レーザ光を、筒状突起部の先端側溶融部に向けて、該筒状突起部の突出方向に対して斜め照射することが好ましい。
また、この接合工程では、中心部よりも外周部の方がエネルギ密度が高くされたレーザ光を、筒状突起部の先端側溶融部に向けて、該筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射することが好ましい。照射するレーザ光において、中心部のエネルギ密度よりも外周部のエネルギ密度を高くするには、例えば、そのようなリング状のエネルギ分布となるような集光レンズを利用することができる。このとき、接続端子が鉄系材料である場合における前記スパッタをより確実に抑えるべく、中心部のエネルギ密度をできるだけ低くすることが好ましい。筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射されたレーザ光の光軸上に円形のマスキング部材を配置して、レーザ光の中心部のみを遮ってもよい。
したがって、接続端子が鉄系材料である場合は、スパッタの発生を抑えるべく、接合工程で、中心部よりも外周部の方がエネルギ密度が高くされたレーザ光を、筒状突起部の先端側溶融部に向けて、該筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射することが好ましい。
さらに、接合工程で、照射するレーザ光について、エネルギ密度が筒状突起部の突出先端位置で高くなり、かつ、接続端子の先端位置で低くなるように焦点位置制御を行い、このように焦点位置制御が行われたレーザ光を、筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射することが好ましい。なお、このときは、セット工程で、接続端子の先端面を筒状突起部の突出先端面よりも低い位置にセットしておく。この焦点位置制御は、例えば、筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射されるレーザ光の光軸上に配置された集光レンズを光軸方向に平行移動させることにより行うことができる。こうして焦点位置制御されたレーザ光を垂直照射すれば、先端側溶融部を加熱・溶融させるために照射されたレーザ光のエネルギを該先端側溶融部を加熱・溶融させるために効率的に利用しつつ該先端側溶融部を確実に加熱・溶融させることができる一方で、接続端子が鉄系材料よりなる場合におけるスパッタの発生を確実に防止することが可能となる。
したがって、接続端子が鉄系材料である場合は、スパッタの発生を抑えるべく、接合工程で、照射するレーザ光について、エネルギ密度が筒状突起部の突出先端位置で高くなり、かつ、接続端子の先端位置で低くなるように焦点位置制御を行い、このように焦点位置制御が行われたレーザ光を、筒状突起部の突出方向に沿って垂直照射することが好ましい。
以下、本発明に係る電気機器用バスバー及びこの電気機器用バスバーへの接続端子の接合方法についての具体的な実施例を、図面を参照しつつ説明する。
(実施例1)
本実施例は、請求項1、2、3、4又は5に係る発明を具現化したものである。
この電子機器用バスバー1は、図1及び図2に示されるように、銅よりなる本体部2と、第1〜第3挿入孔3A〜3Cをもつように本体部2から一体に隆起してテーパ筒状にそれぞれ突出するとともに各突出先端側に第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cをそれぞれもつ6個の第1〜第3筒状突起部5A〜5Cとを有している。この電子機器用バスバー1は、銅板を絞り加工することにより、本体部2と6個の第1〜第3筒状突起部5A〜5Cとを一体に形成したものである。各筒状突起部5A〜5Cの各挿入孔3A〜3Cの下端部には、下端から上方に向けて孔径が徐々に縮小する方向に傾斜するテーパ状(円錐側面状)の導入ガイド部6がそれぞれ設けられている。
この6個の筒状突起部5A〜5Cは、2個で一対の組が3組あり、第1組をなす第1筒状突起部5A、5Aと、第2組をなす第2筒状突起部5B、5Bと、第3組をなす第3筒状突起部5C、5Cとされている。なお、各組を構成する一対の筒状突起部は形状や大きさ(挿入孔の孔径、突出高さや肉厚等)がそれぞれ同じものである。そして、第1組をなす第1筒状突起部5A、5Aには、第1電子部品(ダイオード)Aから延びる一対の第1接続端子7A、7Aがそれぞれ接合される。第2組をなす第2筒状突起部5B、5Bには、第2電子部品(コンデンサ)Bから延びる一対の第2接続端子7B、7Bがそれぞれ接合される。第3組をなす第3筒状突起部5C、5Cには、第3電子部品(コイル)Cから延びる一対の第3接続端子7C、7Cがそれぞれ接合される。
ここに、第1接続端子7A、7Aは、銅よりなり、線径がφ1.2mmとされている。そして、この第1接続端子7A、7Aがそれぞれ接合される第1筒状突起部5A、5Aは、第1挿入孔3A、3Aの最小孔径(第1挿入孔3Aの上端位置における孔径)が、第1接続端子7Aの線径よりも所定量大きなφ1.4mmとされている。すなわち、この第1挿入孔3Aの中心に第1接続端子7Aが挿入された状態における第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間の最小隙間(第1挿入孔3Aの上端位置(第1筒状突起部5Aの突出先端位置)での片側隙間)は、0.1mmとされている。また、第1筒状突起部5A、5Aの突出高さは2mmとされており、この第1筒状突起部5A、5Aの第1先端側溶融部4A、4Aの長さは2mmとされている。なお、第1筒状突起部5A、5Aの肉厚は、第1筒状突起部5Aの第1先端側溶融部4Aが溶融した溶融金属により、第1筒状突起部5Aと第1挿入孔3Aに挿入された第1接続端子7Aとの間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、第1先端側溶融部4Aを後述する接合工程で確実に加熱・溶融させることができるように調整されている。
第2接続端子7B、7Bは、軟鉄よりなり、線径がφ0.8mmとされている。そして、この第2接続端子7B、7Bがそれぞれ接合される第2筒状突起部5B、5Bは、第2挿入孔3B、3Bの最小孔径(第2挿入孔3Bの上端位置における孔径)が、第2接続端子7Bの線径よりも所定量大きなφ1.0mmとされている。すなわち、この第2挿入孔3Bの中心に第2接続端子7Bが挿入された状態における第2筒状突起部5Bと第2接続端子7Bとの間の最小隙間(第2挿入孔3Bの上端位置(第2筒状突起部5Bの突出先端位置)での片側隙間)は、0.1mmとされている。なお、第2筒状突起部5B、5Bの肉厚は、第2筒状突起部5Bの第2先端側溶融部4Bが溶融した溶融金属により、第2筒状突起部5Bと第2挿入孔3Bに挿入された第2接続端子7Bとの間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、第2先端側溶融部4Bを後述する接合工程で確実に加熱・溶融させることができるように調整されている。
また、第3接続端子7C、7Cは、銅よりなり、線径がφ2.4mmとされている。そして、この第3接続端子7C、7Cがそれぞれ接合される第3筒状突起部5C、5Cは、第3挿入孔3C、3Cの最小孔径(第3挿入孔3の上端位置における孔径)が、第3接続端子7Cの線径よりも所定量大きなφ2.6mmとされている。すなわち、この第3挿入孔3Cの中心に第3接続端子7Cが挿入された状態における第3筒状突起部5Cと第3接続端子7Cとの間の最小隙間(第3挿入孔3Cの上端位置(第3筒状突起部5Cの突出先端位置)での片側隙間)は、0.1mmとされている。なお、第3筒状突起部5C、5Cの肉厚は、第3筒状突起部5Cの第3先端側溶融部4Cが溶融した溶融金属により、第3筒状突起部5Cと第3挿入孔3Cに挿入された第3接続端子7Cとの間の隙間が適切に埋められて所望の接合強度を得ることができ、かつ、第3先端側溶融部4Cを後述する接合工程で確実に加熱・溶融させることができるように調整されている。
上記構成を有する電子機器用バスバー1に対して、第1〜第3電子部品A〜Cの第1〜第3接続端子7A〜7Cを、レーザ溶接を利用して、以下のようにして接合した。
<セット工程>
先ず、第1〜第3接続端子7A〜7Cを上方に向けながら第1〜第3電子部品A〜Cを図示しない部品保持治具に保持させることにより、第1〜第3電子部品A〜Cを所定位置に配置した(図1参照)。そして、第1〜第3電子部品A〜Cの上方から電子機器用バスバー1を降ろすことにより、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3挿入孔3A〜3Cに第1〜第3接続端子7A〜7Cをそれぞれ挿入して、第1〜第3接続端子7A〜7Cの各先端面を第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cの近傍にそれぞれ位置させた。詳しくは、第1〜第3接続端子7A〜7Cの各先端面を、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの各突出先端面(第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cの突出先端面)よりも所定量(0.5〜1.5mm程度)低い位置にセットした(図2参照)。
このセット工程では、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cに導入ガイド部6がそれぞれ設けられていることから、この導入ガイド部6に沿って第1〜第3接続端子7A〜7Cが案内されて第1〜第3挿入孔3A〜3C内に挿入されるので、その挿入作業が容易となる。
<接合工程>
そして、図示しないレーザ照射装置を用いてレーザ光8を、一方の第1筒状突起部5Aの第1先端側溶融部4Aの外側面に向けて、同第1筒状突起部5Aの突出方向に対して斜め照射した(図2参照)。このとき、本実施例では、同第1先端側溶融部4Aの突出先端面の外縁角部にレーザ光8が照射されるように斜め照射した。このように第1先端側溶融部4Aの外縁角部にレーザ照射すれば、エッジ部の熱溜まり効果により第1先端側溶融部4Aの加熱・溶融が容易となる。そして、このレーザ光8の第1先端側溶融部4Aに対する斜め照射により、同第1先端側溶融部4Aの全体が溶融し、この第1先端側溶融部4Aが溶融した溶融金属で第1接続端子7Aの先端面を覆うとともに第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間の隙間を埋めた状態とし、この状態で溶融金属を固化させてロー付け部9とし、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとを一体的に接合した(図3参照)。なお、このレーザ光8の第1先端側溶融部4Aに対する斜め照射によっては、第1接続端子7Aに直接レーザ光8が照射されなかった。次に、同様にして、他方の第2筒状突起部5Aと第2接続端子7Aとを一体的に接合した。
同様にして、第2筒状突起部5B、5Bと第2接続端子7B、7Bとをレーザ溶接により一体的に接合した。さらに、同様にして第3筒状突起部5C、5Cと第3接続端子7C、7Cとを一体的に接合した。
なお、前記レーザ照射装置は、レーザ発振器と、このレーザ発振器から出射したレーザ光の光軸上に配置され、そのレーザ光の焦点位置や照射方向(照射角度)等を任意に制御可能となるような所定の光学系要素をミラースキャン装置とを備えている。
また、レーザ溶接する際のレーザ出力や照射時間等の照射条件は、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの第1先端側溶融部4A〜4Cの全体をそれぞれ過不足なく加熱・溶融させることができるように、第1〜第3筒状突起部5A〜5C毎に予め設定しておいた。
このように本実施例では、第1〜第3接続端子7A〜7Cの材質及び線径に応じて第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの突出高さが調整されることにより第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cの長さがそれぞれ調整されている。そして、レーザ光8の斜め照射により第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cを優先的に確実に加熱・溶融している。このため、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cに接合される第1〜第3接続端子7A〜7Cにそれぞれ応じた適切な接合面積を確保することができ、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとを所望の接合強度で接合することが可能となる。
したがって、本実施例によれば、接合される第1〜第3接続端子7A〜7Cに応じて異なる溶接方法(溶接機)を採用することなく、また、接合端子側に接合性を確保するための前記従来の棒状突起部等を別途設けることなく、線径や材質の異なる第1〜第3接続端子7A〜7Cと第1〜第3筒状突起部5A〜5Cとを良好に接合することができる。
また、本実施例では、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとの間の最小隙間が所定範囲に設定されていることから、第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cが加熱・溶融された溶融金属で第1〜第3筒状突起部5A〜5Cと第1〜第3接続端子7A〜7Cとの間の隙間を適切に埋めて所望の接合強度を確実に得ることができる。
さらに、本実施例では、セット工程で、第1〜第3接続端子7A〜7Cの各先端面が第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの突出先端面よりも低い位置にセットされるとともに、接合工程で、レーザ光8が、第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cに向けて、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの突出方向に対して斜め照射されることから、第1〜第3接続端子7A〜7Cに対してレーザ光8が直接照射されることがなく、第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cを加熱・溶融させるために照射されたレーザ光8のエネルギを効率的に利用することができる。また、第1〜第3接続端子7A〜7Cが鉄系材料である場合におけるスパッタの発生を効果的に抑えることが可能となる。
(実施例2)
本実施例は、請求項1、2、3、4又は6に係る発明を具現化したものである。
すなわち本実施例では、図4に示されるように、前記接合工程で、図示しない集光レンズを通過して中心部よりも外周部の方がレーザ光のエネルギ密度が高くなる(中心部のエネルギ密度がほとんど零に近い)ようなリング状のエネルギ分布をもつレーザ光8を、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの突出先端面(第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cの突出先端面)に向けて、レーザ光8の中心が第1〜第3接続端子7A〜7Cの中心と一致するように、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの突出方向に沿ってそれぞれ垂直照射した。
したがって、この実施例によれば、第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cを加熱・溶融させるために照射されたレーザ光8のエネルギを効率的に利用することができる。また、第1〜第3接続端子7A〜7Cの先端面には、エネルギ密度の低いレーザ光8が照射されることから、第1〜第3接続端子7A〜7Cが鉄系材料である場合におけるスパッタの発生を効果的に抑えることが可能となる。
その他の構成及び作用効果は前記実施例1と同様である。
(実施例3)
本実施例は、請求項1、2、3、4又は7に係る発明を具現化したものである。
すなわち本実施例では、前記接合工程で、図5に示されるように、エネルギ密度が第1〜第3筒状突起部5A〜5cの突出先端位置で高くなり、かつ、第1〜第3接続端子7A〜7Cの各先端位置で低くなるように焦点位置制御が行われたレーザ光8を、レーザ光8の中心が第1〜第3接続端子7A〜7Cの中心と一致するように、第1〜第3筒状突起部5A〜5Cの突出方向に沿ってそれぞれ垂直照射した。
したがって、本実施例によれば、第1〜第3先端側溶融部4A〜4Cを加熱・溶融させるために照射されたレーザ光8のエネルギを効率的に利用することができる。また、第1〜第3接続端子7A〜7Cの先端面には、エネルギ密度の低いレーザ光8が照射されることから、第1〜第3接続端子7A〜7Cが鉄系材料である場合におけるスパッタの発生を効果的に抑えることが可能となる。
その他の構成及び作用効果は前記実施例1と同様である。
(最小隙間の評価)
前記実施例1において、前記第1筒状突起部5Aと前記第1接続端子7Aとの間における最小隙間の大きさを0.4、0.3、0.2、0.1、0.05と種々変更して、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの接合部における接合強度を評価した。
その結果を図6に示す。なお、図6において、縦軸は、第1先端側溶融部4Aへのレーザ入熱量(J)の適正値Aを基準とするレーザ入熱量である。例えば、A+20の点は、適正値Aよりも20Jだけ大きいレーザ入熱量であることを示し、A−20の点は、適正値Aよりも20Jだけ小さいレーザ入熱量であることを示す。
図6からわかるように、第1挿入孔3Aに第1接続端子7Aが挿入された後でかつ第1先端溶融部4Aが溶融される前の状態で、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間の最小隙間が0.05〜0.4mmとなるように設定されていれば、少なくとも適正値Aのレーザ入熱量で第1先端側溶融部4Aを加熱溶融させれば、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとを良好に接合することができる。
また図6より、この第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間の最小隙間が0.05〜0.2mmに設定されていれば、所望の接合強度を得るのに適する第1先端側溶融部4Aへのレーザ入熱量の適正範囲が60J以上に広がり、生産性が向上することがわかる。例えば、第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間の最小隙間が0.2mmに設定されていれば、適正値A−20〜適正値A+40の60Jという広い適正範囲内のレーザ入熱量で第1先端側溶融部4Aを加熱すれば所望の接合強度を得ることができ、同最小隙間が0.1mmに設定されていれば、適正値A−40〜適正値A+40の80Jというかなり広い適正範囲内のレーザ入熱量で第1先端側溶融部4Aを加熱すれば所望の接合強度を得ることができ、同最小隙間が0.05mmに設定されていれば、適正値A−40〜適正値A+20の60Jという広い適正範囲内のレーザ入熱量で第1先端側溶融部4Aを加熱すれば所望の接合強度を得ることができる。なお、同最小隙間が0.05mmのときに適正値A+40のレーザ入熱量で接合不良となるのは、毛細管現象により溶融金属の流れ落ちが発生するための考えられる。これに対して、同最小隙間が0.3mm以上になると、レーザ入熱量の適正範囲が20J以下と狭くなってしまい、その分生産性が低下する。
本発明の実施例1に係り、電子機器用バスバーの筒状突起部に電子部品の接続端子をセットし、レーザ溶接を行っている様子を模式的に説明する説明図である。
本発明の実施例1に係り、接合工程でレーザ溶接を行っている様子を模式的に示す部分断面図である。
本発明の実施例1に係り、接合工程でレーザ溶接を行った後の様子を模式的に示す部分断面図である。
本発明の実施例2に係り、接合工程でレーザ溶接を行っている様子を模式的に示す部分断面図である。
本発明の実施例3に係り、接合工程でレーザ溶接を行っている様子を模式的に示す部分断面図である。
第1筒状突起部5Aと第1接続端子7Aとの間における最小隙間(片側隙間)とレーザ入熱量の適正範囲との関係を説明する説明図である。
符号の説明
1…電子機器用バスバー 2…本体部
3A〜3C…第1〜第3挿入孔
4A〜4C…第1〜第3先端側溶融部
5A〜5C…第1〜第3筒状突起部
7A〜7C…第1〜第3接続端子
A〜C…第1〜第3電子部品
8…レーザ光