JP2006179315A - ガス拡散層、および、これを用いた燃料電池 - Google Patents
ガス拡散層、および、これを用いた燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 排水性と保水性の双方を兼ね備えたガス拡散層を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、ガス拡散基材層110と、水蒸気凝縮層121と、水分蒸発層122とが、積層されてなる燃料電池用ガス拡散層100により上記課題を解決する。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明は、ガス拡散基材層110と、水蒸気凝縮層121と、水分蒸発層122とが、積層されてなる燃料電池用ガス拡散層100により上記課題を解決する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、燃料電池用ガス拡散層に関し、より詳細には、排水性と保水性とを有する燃料電池用ガス拡散層に関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動し高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。燃料電池には、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)などがある。なかでも、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動して高出力密度が得られることから、電気自動車用電源として期待されている。
固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、膜−電極接合体(以下、「MEA」とも記載する。)をセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、固体高分子電解質膜の両側に二つの電極が配設され、さらにこれをガス拡散層で挟持した構造となっている。電極は、電極触媒と固体高分子電解質との混合物により形成された多孔性のものであり、電極触媒層とも呼ばれる。
固体高分子型燃料電池では、以下のような電気化学的反応などを通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。まず、アノード(燃料極)側に供給された燃料ガスに含まれる水素が、触媒粒子により酸化され、プロトンおよび電子となる。次に、生成したプロトンは、アノード側電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらにアノード側電極触媒層と接触している固体高分子電解質膜を通り、カソード(酸素極)側電極触媒層に達する。また、アノード側電極触媒層で生成した電子は、アノード側電極触媒層を構成している導電性担体、さらにアノード側電極触媒層の固体高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通してカソード側電極触媒層に達する。そして、カソード側電極触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する。かような電気化学的反応は、主に、触媒粒子と、固体高分子電解質と、燃料ガスまたは酸化剤ガスなどの反応ガスと、が接触する三相界面において進行するのである。従って、ガス拡散層は、供給された反応ガスを電極触媒層へと均一に供給することが必要とされる。
また、燃料電池における固体高分子電解質膜は、湿潤していないと高いプロトン導電性を示さない。そのため、固体高分子型燃料電池に供給する反応ガスは、ガス加湿装置などを用いて加湿することにより、固体高分子電解質膜の湿度分布を均一にする必要がある。
高加湿、高電流密度などの運転条件下では、アノードからカソードに向けて固体高分子電解質膜を移動するプロトンに伴って移動する水の量、およびカソード側電極触媒層内に生成して凝集する生成水の量が増加する。この時、これらの生成水は、特にカソード側電極触媒層内に滞留し、反応ガス供給路となっていた細孔を閉塞するフラッディング現象を招く。これにより、反応ガスの拡散などが阻害され、電気化学的反応が妨げられ、結果として電池性能の低下を招く。
そこで、従来では、ガス拡散基材層表面にカーボンブラックおよび疎水剤などからなるカーボン層を有するガス拡散層がMEAに用いられている(例えば、特許文献1参照。)。前記カーボン層は、疎水剤にコーティングされたカーボンブラックが集合体となり多孔質構造を形成する。従って、加湿して供給された反応ガスをより均一に拡散させることができるだけでなく、過剰な水を毛細管力により吸い取り速やかに排出することが可能となる。また、特許文献2では、気孔径の分布中心が異なる気孔が混在するカーボン層を有するガス拡散層が開示されている。これにより、ガス通路と水通路とを分離し、フラッディング現象を防止している。
特開2003−89968号公報
特開2001−57215号公報
燃料電池には、従来から、広範な運転条件において高い性能を維持する特性を有することが所望されている。
しかしながら、特許文献1によるガス拡散基材層上にカーボン層が形成されてなるガス拡散層によれば、ある程度の排水性は向上するが、低加湿および低電流密度などの運転条件下では、生成水も少なく固体高分子電解質膜が乾き易くなり、電池出力が低下する問題があった。
また、特許文献2のガス拡散層によっても、高加湿運転時の排水性を向上させることは可能であるが、十分な保水性が得られず、低加湿運転時などにおいて固体高分子電解質膜の乾燥を十分に抑制することができない問題があった。
そこで、本発明が目的とするところは、排水性と保水性の双方を兼ね備えたガス拡散層を提供することである。
本発明は、ガス拡散基材層と、水蒸気凝縮層と、水分蒸発層とが、積層されてなる燃料電池用ガス拡散層により上記課題を解決する。
上記構成を有する本発明によれば、排水性と保水性の双方を兼ね備えたガス拡散層を提供することが可能となる。さらに、前記ガス拡散層は、ガス拡散基材層と水分蒸発層との間に水蒸気凝縮層が存在することにより、フラッディング現象を抑制しつつ適度に水分を保水することができる。従って、本発明のガス拡散層によれば、高い発電性能を安定して示すことができる燃料電池を提供することが可能となる。
本発明の第一は、上述した、ガス拡散基材層と、水蒸気凝縮層と、水分蒸発層とが、積層されてなる燃料電池用ガス拡散層(単に「ガス拡散層」とも記載する)である。
まず、本発明のガス拡散層を、図1の断面模式図を用いて説明する。図1において、本発明のガス拡散層は、ガス拡散基材層110上に、水蒸気凝縮層121と、水分蒸発層122とがこの順で積層されてなる構成を有する。
本発明において、水分蒸発層とは、水分を吸い取り蒸発させて水蒸気とする機能を有する層である。また、水蒸気凝縮層とは、水蒸気を凝縮させ、得られた水分を適度に保持することができる機能を有する層である。
前記水蒸気凝縮層は、0℃における水蒸気吸着等温線測定で得られる相対圧(飽和水蒸気圧に対する水蒸気圧)0〜1における水蒸気吸着量が、好ましくは10〜60ml/g、より好ましくは20〜50ml/g、特に好ましくは30〜40ml/gの範囲にあるとよい。前記水蒸気凝縮層の水蒸気吸着量が上記範囲内であれば優れた水蒸気凝縮能が得られる。なお、水蒸気の相対圧0〜1における水蒸気吸着量の測定は、市販の水蒸気吸着等温線測定装置(日本ベル(株)製 BELSORP 18)により測定することができる。
前記水分蒸発層における水分蒸発能は、次の方法によって測定できる。まず、厚さ50μm、面積100mm×100mmの水分蒸発層の質量(m)を測定し、これをガラス板上に両面テープにより固定し、1gの水を吸収させた後、温度70℃、湿度90%の環境下で24時間放置した後の前記水分蒸発層の質量(m’)を測定する。そして、放置前後の質量の差(m−m’)から蒸散量(g)を算出することができる。本発明の水分蒸発層は、水分の前記蒸発量が、好ましくは0.5〜1.0g、より好ましくは0.7〜1.0g、特に好ましくは0.8〜1.0gであるとよい。
本発明のガス拡散層では、図1に示す構成を有することにより、水分蒸発層が燃料電池において隣接して配置される電極触媒層などで生成した水分を速やかに吸い取り、水分蒸発層内で蒸発させて水蒸気凝縮層へと排出させることが可能となり、電極触媒層からの排水性を向上させることが可能となる。さらに、ガス拡散基材層と水分蒸発層との間に配置される水蒸気凝縮層により、水分蒸発層からの水蒸気をある程度凝縮させて水分を留めることが可能となる。これによりガス拡散層に保水性を付与することができ、固体高分子電解質膜が乾燥し易い環境下であっても水蒸気凝縮層において溜められた水分により固体高分子電解質膜の乾燥を防止することが可能となる。また、水分蒸発層およびガス拡散基材層において水蒸気は細かく分散されるため、水分蒸発層とガス拡散基材層との間に水蒸気凝縮層を有する構成とすることにより、水蒸気凝縮層における過剰な水分の凝縮を抑制することが可能となる。
従って、本発明によれば、排水性を向上させつつ部分的に保水性が付与されることにより、性能がより向上されたガス拡散層を提供することが可能となる。さらに、水分蒸発層と水蒸気凝縮層がそれぞれ別々の層として存在することで、ガス拡散層における排水性と保水性の調整が容易に行え、所望の性能を有するガス拡散層が得られるのである。
本発明のガス拡散層における水分蒸発層は、疎水性の空孔を有し、かつ、平均空孔径が10nm未満とするのが好ましい。
空孔内の疎水性は、空孔表面と水との接触角により判断できる。すなわち、空孔表面と水との接触角が大きいと疎水性の空孔を有する。具体的には、疎水性の空孔は、空孔表面と水との接触角が、好ましくは90℃以上、より好ましくは120℃以上とするのがよい。これに対して、空孔表面と水との接触角が小さいと親水性の空孔を有する。具体的には、親水性の空孔は、空孔表面と水との接触角が、好ましくは90℃未満、より好ましくは70℃以下とするのがよい。
平均空孔径が10nm未満の疎水性の空孔内では、ガス拡散層を透過する水蒸気が飽和蒸気圧以上などと過飽和であっても、空孔内で前記水蒸気が凝縮せず、空孔表面に接した水分を蒸発させてガス拡散基材層へ排出させることができる。さらに、平均空孔径が10nm未満の疎水性の空孔内によれば、毛細管力により、燃料電池において隣接して配置される電極触媒層で生成した水分を迅速に吸い取ることができる。従って、平均空孔径が10nm未満の疎水性の空孔を有する水分蒸発層を用いることにより、ガス拡散層の排水性を向上させることができる。
前記水分蒸発層における平均空孔径は、好ましくは10nm未満であるが、より好ましくは2nm以上10nm未満、特に好ましくは3〜7nmとするのがよい。
前記水分蒸発層における空隙率は、60〜90%、好ましくは70〜80%とするのがよい。空隙率が、60%未満であるとガス拡散層に十分な排水性を付与することができない恐れがあり、90%を超えるとガス拡散層の強度が低下する恐れがある。
次に、本発明のガス拡散層における前記水蒸気凝縮層は、疎水性の空孔を有し、かつ、平均空孔径が10nm以上とするのが好ましい。
疎水性の空孔において10nm以上の平均空孔径を有していれば、ガス拡散層を透過する水蒸気が飽和蒸気圧以上などと過飽和であった場合に、前記水蒸気凝縮層で水蒸気が凝縮し、水分と外部から供給されたガスが相分離した状態とすることができ、ある程度の水分を保持するとともにガス拡散経路を確保することが可能となる。これにより、ガス拡散層を透過する水蒸気が低加湿となった場合に、前記水蒸気凝縮層において保持された水分により固体高分子電解質膜などを加湿することができる。従って、平均空孔径が10nm以上の疎水性の空孔を有する水蒸気凝縮層によれば、ガス拡散層にガス拡散経路を確保しつつ適度な保水性を付与することができるのである。
疎水性の空孔を有する前記水蒸気凝縮層における平均空孔径は、10nm以上とするのが好ましいが、より好ましくは10〜200nm、特に好ましくは50〜120nmとするのがよい。
疎水性の空孔を有する前記水蒸気凝縮層における空隙率は、60〜90%、好ましくは70〜80%とするのがよい。空隙率が、60%未満であるとガス拡散層に十分な保水性を付与することができない恐れがあり、90%を超えるとガス拡散層の強度が低下する恐れがある。
本発明のガス拡散層において前記水蒸気凝縮層は、ガス拡散層の保水性をより向上させるためには、親水性の空孔を有するのがより好ましい。
空孔内の親水性については水分蒸発層において上述した通りである。前記水蒸気凝縮層が親水性の空孔を有することにより、ガス拡散層を透過する水蒸気が飽和蒸気圧以下などであっても、ガス拡散層を透過する水蒸気の凝縮性および保水性をより向上させることが可能となる。
親水性の空孔を有する前記水蒸気凝縮層における平均空孔径は、得られるガス拡散層の保水性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは10nm以下、より好ましくは2〜10nm、特に好ましくは3〜7nmとするのがよい。
水分蒸発層において上述した通り、平均空孔径が10nm未満の疎水性の空孔内では、飽和蒸気圧以上の過飽和の水蒸気が供給されても水蒸気が凝縮し難く、水分を蒸発させる機能を有する。しかしながら、多孔質層における空孔内では、空孔径と空孔表面の親水性および疎水性とにより、水蒸気が凝縮する飽和蒸気圧に変化が生じる。すなわち、平均空孔径が10nm以下の親水性の空孔内では、飽和蒸気圧以下であっても水蒸気を凝縮させることができる。従って、ガス拡散層に供給される水蒸気が低加湿であっても水蒸気を凝縮させることができ、より優れた水蒸気凝縮性および保水性を発揮することが可能な前記水蒸気凝縮層とすることができるのである。
親水性の空孔を有する前記水蒸気凝縮層における空隙率は、60〜90%、好ましくは70〜80%とするのがよい。空隙率が、60%未満であるとガス拡散層に十分な保水性を付与することができない恐れがあり、90%を超えるとガス拡散層の強度が低下する恐れがある。
本発明のガス拡散層において、上述した通り、水分蒸発層としては、疎水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm未満であるものが好ましく挙げられる。また、水蒸気凝縮層としては、疎水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm以上のものが挙げられ、より好ましくは親水性の空孔を有するものが挙げられ、特に好ましくは親水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm以下のものが挙げられる。
本発明のガス拡散層において、上述した水分蒸発層と水蒸気凝縮層との好ましい組み合わせは、ガス拡散層の排水性および保水性を考慮して決定すればよい。すなわち、本発明のガス拡散層は排水性および保水性を兼ね備えるが、なかでも、排水性を高くするためには、水分蒸発層として疎水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm未満であるものを用い、水蒸気凝縮層として疎水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm以上のものを用いるのが好ましい。また、親水性を高くするためには、水分蒸発層として疎水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm未満であるものを用い、水蒸気凝縮層として親水性の空孔を有するものを用いるのが好ましい。さらに、より親水性を高くするためには、水分蒸発層として疎水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm未満であるものを用い、水蒸気凝縮層として親水性の空孔を有し且つ平均空孔径が10nm以下のものを用いるのが好ましい。
なお、水分蒸発層および水蒸気凝縮層における平均空孔径は、Quantachrome社製 PoreMaster装置などを用いた水銀圧入法により測定することができる。また、水分蒸発層および水蒸気凝縮層における空隙率も同様の装置などにより測定することができる。
前記水蒸気凝縮層および前記水分蒸発層における疎水性の空孔は、カーボン粒子および疎水剤により形成されてなるのが好ましい。これにより、疎水剤にコーティングされたカーボン粒子が集合体となり多孔質構造を有する層を形成し、疎水剤により空孔表面に疎水性を付与することができる。また、カーボン粒子の粒子径を調整することにより、前記水蒸気凝縮層および前記水分蒸発層における空孔径を所望の値に制御するのも容易である。
前記カーボン粒子としては、電子伝導性に優れるものであればよく、カーボンブラック粉末、黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、金属粉末、セラミックス粉末などが挙げられる。電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。
前記カーボン粒子は、市販品を用いることができ、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などのオイルファーネスブラック;電気化学工業社製デンカブラックなどのアセチレンブラック等が挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などがある。また、耐食性などを向上させるために、カーボン粒子を熱処理などの加工を行ってもよい。
前記水分蒸発層に用いられる前記カーボン粒子の平均粒子径は、得られる前記水分蒸発層の平均空孔径を10nm未満とすることを考慮すると、100〜300nm、より好ましくは100nm以上300nm未満、特に好ましくは150〜250nmとするのがよい。
前記水蒸気凝縮層に用いられる前記カーボン粒子の平均粒子径は、得られる前記水蒸気凝縮層を10nmを超える平均空孔径とすることを考慮すると、300〜3000nm、より好ましくは1000〜2000nmとするのがよい。また、得られる前記水蒸気凝縮層の平均空孔径を10nm未満とすることを考慮すると、100〜300nm、より好ましくは150〜250nmとするのがよい。
次に、前記疎水剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。なかでも、疎水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系樹脂が好ましく用いられる。
前記水分蒸発層における、カーボン粒子と疎水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると水分蒸発能力が低下する恐れがあり、疎水剤が多過ぎると所望の空孔径が得られない恐れがある。これらを考慮して、水分蒸発層におけるカーボン粒子と疎水剤との混合比は、質量比で、90:10〜60:40、好ましくは80:20〜70:30程度とするのがよい。
前記水蒸気凝縮層におけるカーボン粒子と疎水剤の混合比は、カーボン粒子が多過ぎるとバインダーの役目をする疎水剤が少なくなり、結合力が低下する恐れがあり、疎水剤が多過ぎると所望の空孔径が得られない恐れがある。これらを考慮して、前記水蒸気凝縮層における、カーボン粒子と疎水剤との混合比は、質量比で、95:5〜60:40、好ましくは90:10〜80:20程度とするのがよい。
前記水蒸気凝縮層および前記水分蒸発層における疎水性の空孔は、疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜により形成されていてもよい。これによっても、導電性多孔質高分子膜の空孔内に疎水剤が含まれることにより疎水性を有する空孔が得られる。また、導電性多孔質高分子膜によればガス拡散層の導電性を低下させる恐れもない。さらに、導電性多孔質高分子膜の空孔径を調整することにより、前記水蒸気凝縮層および前記水分蒸発層における空孔径を所望の値に制御するのも容易である。
前記導電性多孔質高分子膜を構成する材質としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリフラン、ポリアセン、などの導電性高分子が挙げられる。なかでも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンは導電率が高く、熱安定性にも優れているので好ましく用いられる。また、前記導電性高分子は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
前記疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜は、特に制限されないが、前記導電性高分子からなる膜を、多孔質化させた後、空孔内に疎水剤を含ませる方法などにより得られる。前記導電性高分子からなる膜は、前記導電性高分子のモノマーを用いて電解重合法などの公知の方法により作製すればよい。
前記疎水剤としては、上述したカーボン粒子および疎水剤により形成されてなる疎水性の空孔において記載したのと同様のものが用いられるため、ここでは詳細な説明を省略する。
前記水分蒸発層に用いられる前記導電性多孔質高分子膜における前記疎水剤の含有量は、導電性多孔質高分子膜重量に対して、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%とするのがよい。前記疎水剤の含有量が、10質量%未満であると空孔表面に十分な疎水性を付与することができない恐れがあり、40質量%を超えると得られる水分蒸発層の空孔径が小さくなる恐れがある。
前記水蒸気凝縮層に用いられる前記導電性多孔質高分子膜における前記疎水剤の含有量は、導電性多孔質高分子膜重量に対して、5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%とするのがよい。前記疎水剤の含有量が、5質量%未満であると空孔表面に十分な疎水性を付与することができない恐れがあり、40質量%を超えると得られる水蒸気凝縮層の空孔径が小さくなる恐れがある。
次に、前記水蒸気凝縮層における親水性の空孔は、カーボン粒子および親水剤により形成されてなるものが好ましい。これにより、親水剤によりコーティングされたカーボン粒子が集合体となり、親水剤により空孔表面に親水性を付与することが可能となる。また、カーボン粒子の粒子径を調整することにより、水蒸気凝縮層における空孔径を所望の値に制御することが容易となる。
前記カーボン粒子としては、上述したカーボン粒子および疎水剤により形成されてなる疎水性の空孔において記載したのと同様のものが用いられるため、ここでは詳細な説明を省略する。
前記親水剤としては、Nafion(DuPont社製 登録商標)、Flemion(旭化成株式会社製 登録商標)、Aciplex(旭硝子株式会社製登録商標)などの、スルホン酸基等の親水性基を含有する高分子が好ましく挙げられる。前記親水性は、水分子の蒸気からの吸着を促進する活性サイトとして作用するとともに、吸着させた水分子間の水素結合を媒介として水の凝縮を促進することができる。従って、前記親水性基を有する高分子が親水剤として好ましく用いられる。
前記親水性の空孔を有する水蒸気凝縮層に用いられる前記カーボン粒子の平均粒子径は、所望の空孔径を有する水蒸気凝縮層が得られるように適宜決定すればよいが、100〜3000nmとするのがよい。なかでも、水蒸気凝縮層における平均空孔径を10nm以下とする場合には、前記カーボン粒子の平均粒子径は、100〜300nm、より好ましくは150〜250nmとするのがよい。
前記親水性の空孔を有する水蒸気凝縮層におけるカーボン粒子と親水剤の混合比は、カーボン粒子が多過ぎると空孔表面に十分な親水性を付与することができない恐れがあり、親水剤が多過ぎると得られる水蒸気凝縮層の空孔径が小さくなる恐れがあるため、これらを考慮して、前記水蒸気凝縮層におけるカーボン粒子と親水剤との混合比は、質量比で、90:10〜60:40程度とするのがよい。
前記水蒸気凝縮層における親水性の空孔は、親水剤を含む導電性多孔質高分子膜により形成されていてもよい。これによっても、導電性多孔質高分子膜の空孔内に親水剤が含まれることにより、空孔表面に親水性を付与することができる。また、導電性多孔質高分子膜によればガス拡散層の導電性を低下させる恐れもない。さらに、導電性多孔質高分子膜の空孔径を調整することにより、水蒸気凝縮層における空孔径を所望の値に制御するのも容易である。
前記導電性多孔質高分子膜の材質としては、上述した疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜において列挙したものと同様の高分子などが好ましく用いられる。また、親水剤としては、上述したカーボン粒子および親水剤からなる水蒸気凝縮層において列挙したものと同様の親水剤が好ましく用いられる。
前記水蒸気凝縮層において、前記親水剤を含む導電性多孔質高分子膜における親水剤の含有量は、所望の空孔径を有する水蒸気凝縮層が得られるように適宜決定すればよいが、導電性多孔質高分子膜重量に対して、5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%とするのがよい。前記親水剤の含有量が、5質量%未満であると空孔表面に十分な親水性を付与することができない恐れがあり、40質量%を超えると得られる水蒸気凝縮層の空孔径が低下する恐れがある。
水蒸気凝縮層における平均空孔径を10nm以下とする場合には、前記親水剤を含む導電性多孔質高分子膜における親水剤の含有量は、導電性多孔質高分子膜重量に対して、5〜40質量%、好ましくは20〜30質量%とするのがよい。
本発明のガス拡散層において、水分蒸発層の厚さは、得られるガス拡散層の疎水性およびガス透過性を考慮して決定すればよいが、10〜100μm、より好ましくは25〜50μmとするのがよい。厚さが、100μmを超えるとガス拡散層のガス透過性が低下する恐れがあり、10μm未満であると十分な排水性が得られない恐れがある。
また、本発明のガス拡散層において、水蒸気凝縮層の厚さは、得られるガス拡散層の保水性およびガス透過性を考慮して決定すればよいが、10〜100μm、より好ましくは25〜50μmとするのがよい。厚さが、100μmを超えるとガス拡散層のガス透過性が低下する恐れがあり、10μm未満であると十分な保水性が得られない恐れがある。
本発明のガス拡散層におけるガス拡散基材層としては、特に制限されないが、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料などからなるものが挙げられる。多孔質性を有するシート状材料を用いることにより、外部から供給されたガスをガス拡散基材層内で均一に拡散させることができる。より具体機には、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボン不織布などが好ましく挙げられる。前記シート状材料は、市販品を用いることもでき、例えば、東レ株式会社製カーボンペーパTGPシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが挙げられる。
前記ガス拡散基材層の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。厚さが、30μm未満であると十分な機械的強度などが得られない恐れがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
前記ガス拡散基材層は、排水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐために、前疎水剤が含まれているのが好ましい。前記疎水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
以下に、本発明のガス拡散層の製造方法について説明する。
ガス拡散層におけるガス拡散基材層に疎水剤を含有させる場合には、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。疎水剤の水性ディスパージョン溶液またはアルコールディスパージョン溶液に、ガス拡散基材層を浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。乾燥時の排ガス処理の容易さからは、疎水剤の水性ディスパージョン溶液を用いるのが好ましい。
次に、カーボン粒子および疎水剤により疎水性の空孔が形成されてなる水蒸気凝縮層の製造方法としては、カーボン粒子、疎水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製する。次に、前記スラリーをガス拡散基材層上などに塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これをガス拡散基材層上に塗布する方法などを用いればよい。また、前記スラリーは、疎水剤の水性ディスパージョン溶液またはアルコールディスパージョン溶液に、カーボン粒子を混合することによっても調製できる。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。
前記スラリーにおいて、カーボン粒子の粒子径、疎水剤の混合比などを適宜調整することにより、得られる水蒸気凝縮層の平均空孔径を10nm以上にすればよい。また、所定の平均空孔径を有する水蒸気凝縮層が得られるようにするには、前記スラリーの粘度は、好ましくは50〜300mPa・s、より好ましくは100〜200mPa・sとするのがよい。
次に、カーボン粒子および疎水剤により疎水性の空孔が形成されてなる水分蒸発層の製造方法としては、上記したのと同様の方法を用いて水蒸気凝縮層上に水分蒸発層を形成すればよい。この時、カーボン粒子の粒子径、疎水剤の混合比などを適宜調整することにより、得られる水分蒸発層の平均空孔径を10nm未満に制御すればよい。
また、カーボン粒子および親水剤により親水性の空孔が形成されてなる水蒸気凝縮層の製造方法としては、カーボン粒子、親水剤等を、水、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調整する。次に、前記スラリーをガス拡散基材層上に塗布し乾燥する方法などを用いればよい。
前記スラリーにおける、カーボン粒子の粒子径、親水剤の添加量などを調製することにより、得られる水蒸気凝縮層の平均空孔径を所望の値に制御すればよい。得られる水分蒸発層が所望の平均空孔径を有するように、前記スラリーの粘度は、好ましくは50〜300mPa・s、より好ましくは100〜200mPa・sとするのがよい。
前記乾燥条件としては、特に限定されないが、20〜120℃、好ましくは60〜100℃で行えばよい。
また、疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜により疎水性の空孔が形成されてなる水蒸気凝縮層の製造方法としては、導電性高分子膜を多孔質化することにより導電性多孔質高分子膜を得た後、前記導電性多孔質高分子膜の空孔内に疎水剤を含有させる方法などを用いればよい。
前記導電性高分子膜の作製方法は、電解重合法、押出成形、Tダイ法、インフレーション法などの溶融加工法、または、導電性高分子含有溶液からの製膜法など、従来公知の方法を用いて作製すればよい。
例えば、導電性高分子含有溶液からの製膜法として、具体的には、ポリアニリンなどの導電性高分子を前記導電性高分子に対する可溶性溶剤に溶解させることにより調整した導電性高分子含有溶液を、PTFEシート、PETシート、PENシートなどの基材上に塗布した後、乾燥させる方法などが用いられる。
前記可溶性溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられ、これらは一種単独で用いてもよく二種以上を混合して用いてもよい。
前記乾燥は、真空乾燥によって行うことが適しているが、その真空乾燥は、溶剤を完全に除去でき、かつ導電性高分子のガラス転移点(ポリアニリンの場合は120〜130℃)を超える温度で行うのが好ましい。これにより、ポリアニリンなどの導電性高分子の粘性率を低下させ、均一かつ広範囲に導電性高分子の被膜を形成させることができる。
上述の通りにして作製した導電性高分子膜は、さらに、クエン酸、ホウ酸、ドデシルベンゼンスルホン酸又はドデシルベンゼンスルホン酸塩を含む水溶性電解液中に浸漬させるなどしてもよい。これにより、導電性高分子膜中に水素イオンが浸透し、導電性高分子膜の導電性を向上させることができる。
前記導電性高分子膜を多孔質化するには、特に制限されないが、前記導電性高分子膜に高エネルギーイオン(荷電粒子)を照射して、照射損傷を形成した後、化学的にエッチング処理を行う方法、などが挙げられる。
高エネルギーイオンとしては、例えば、核分裂によって得られる核分裂片やイオン加速器によって得られる加速イオンなどが利用できる。原子炉から発生した中性子を含む荷電粒子など、荷電粒子以外に非荷電粒子を含んでいてもよい。
前記導電性高分子膜に高エネルギーイオンを、通常、膜に対してほぼ垂直に照射し、これによって膜中にポリマー鎖が切断された照射損傷を与える。次いで、この照射損傷を化学的にエッチング処理すると、均一なシリンダー状の穿孔を有する導電性多孔質高分子膜が得られる。前記照射は、酸素やオゾンなどの活性ガス雰囲気中で照射してもよい。
照射損傷を与える高エネルギーイオンの照射は、比較的質量が大きく、導電性高分子膜に照射損傷の形成可能なイオン種を用いて行う。また、照射損傷を与える高エネルギーイオンの照射量は、穿孔の重なりを考慮して、通常、1×1010個/cm2以下(1cm2当たりの照射イオンの個数を意味する)が好ましく、より好ましくは1×109個/cm2以下である。
続いて行う化学的なエッチング処理は、通常、照射損傷を与えた導電性高分子膜をエッチング剤に所定時間浸漬して行う。エッチング剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ溶液;硫酸、硝酸などの酸性溶液;重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤などが使用できる。これのエッチング剤には、アルコールや界面活性剤を添加してもよい。前記エッチング処理をすることにより、導電性高分子膜のイオンの貫通により生じた損傷部分が選択的にエッチングされ、穿孔が形成される。また、穿孔形成を効率よく行うために、照射損傷を形成した導電性高分子膜に、電離放射線または紫外線を照射した後、または、照射を行いつつ、化学的にエッチング処理をしてもよい。
得られる導電性多孔質高分子膜が所望の平均空孔径を有するように、導電性高分子膜に照射するイオンの種類、エッチング条件などを適宜調整するとよい。
また、前記導電性多孔質高分子膜を作製する方法としては、上記した方法に限定されず、フォトリソグラフィー法の他、前記導電性多孔質高分子膜に好ましく用いられる高分子を有機溶剤(溶媒)に溶解した溶液を、例えば支持基板上に流延し、その流延膜を前記有機溶剤とは相溶性を有し高分子は不溶な有機溶剤や水など(非溶媒)に浸漬し、その際に溶媒と非溶媒とが置換するために生じる相分離現象を利用して細孔を形成するいわゆる相転換法によっても得ることができる。
前記導電性多孔質高分子膜の空孔内に疎水剤を含有させるには、疎水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させたスラリーを、前記導電性多孔質高分子膜に塗布および含浸させる方法などが好ましく用いられる。
前記導電性多孔質高分子膜の空孔内に疎水剤が均一に含浸されるように、スラリーの粘度を調整するとよい。具体的には、前記スラリーの粘度は、好ましくは50〜300mPa・s、より好ましくは100〜200mPa・sとするのがよい。
疎水剤を含む前記スラリーの他にも、疎水剤の水性ディスパージョン溶液またはアルコールディスパージョン溶液などを用いてもよい。また、疎水剤を含む前記スラリーに、導電性多孔質高分子膜を浸漬させ、空孔内に前記スラリーを含浸させてもよい。
前記スラリーを前記導電性多孔質高分子膜に含浸させた後は、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、60〜130℃、程度で乾燥させればよい。上記の通りにして得られた疎水剤が含浸された導電性多孔質高分子膜を、ガス拡散基材層上に積層すればよい。これにより、ガス拡散基材層上に水蒸気凝縮層が得られる。
水蒸気凝縮層において平均空孔径は10nm以上とするのが好ましい。従って、上記した方法において、多孔質化した導電性多孔質高分子膜における空孔径、および、疎水剤の含有量などを調整することにより、疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜における平均空孔径が10nm以上となるように調整すればよい。
また、疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜により疎水性の空孔が形成されてなる水分蒸発層の製造方法としては、上述したのと同様の方法が用いられ、多孔質化した導電性多孔質高分子膜における空孔径、および、疎水剤の含有量などを調整することにより、疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜における平均空孔径を10nm未満となるように調整すればよい。その後、疎水剤が含浸された平均空孔径が10nm未満の導電性多孔質高分子膜を、水蒸気凝縮層上に積層すればよい。これにより、水蒸気凝縮層上に水分蒸発層を形成することができる。
また、親水剤を含む導電性多孔質高分子膜からなる水蒸気凝縮層の製造方法としては、導電性高分子膜を多孔質化することにより導電性多孔質高分子膜を得た後、前記導電性多孔質高分子膜の空孔内に親水剤を含有させる方法などを用いればよい。
導電性高分子膜を多孔質化することにより導電性多孔質高分子膜を得る方法としては、上述した疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜において記載した方法と同様に行えばよい。得られる水蒸気凝縮層の空孔径が所望の値となるように、導電性高分子膜を多孔質化する際に空孔径を調整するのがよい。
前記導電性多孔質高分子膜の空孔内に親水剤を含有させるには、親水剤などを、水、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることにより調整したスラリーを前記導電性多孔質高分子膜に塗布および含浸させる方法などが用いられる。
前記導電性多孔質高分子膜の空孔内にスラリーが均一に含浸されるように、スラリーの粘度を調整するとよい。具体的には、前記スラリーの粘度は、好ましくは50〜300mPa・s、より好ましくは100〜200mPa・sとするのがよい。
また、親水剤を含む前記スラリーに、導電性多孔質高分子膜を浸漬させ、空孔内に前記スラリーを含浸させてもよい。
前記スラリーを前記導電性多孔質高分子膜に含浸させた後は、20〜120℃、好ましくは60〜100℃程度でスラリーを乾燥させればよい。これにより、前記導電性多孔質高分子膜の空孔内表面に親水剤を物理的に結合させることにより、空孔内表面を親水性に改質できる。
また、前記導電性多孔質高分子膜の空孔内に親水剤を含有させる方法として上記した方法の他、電離性放射線を照射しグラフト重合させる電離性放射線グラフト重合法などを用いることもできる。電離性放射線は前記導電性多孔質高分子膜の内部まで透過するため、前記導電性多孔質高分子膜の空孔内表面にほぼ均一に親水剤を化学的に結合させることができ、空孔内表面を親水性に改質できる。
上述の通りにして得られた親水剤を含む導電性多孔質高分子膜をガス拡散基材層に積層させることにより、ガス拡散基材層上に水蒸気凝縮層を形成することができる。
本発明のガス拡散層において、水分蒸発層および/または水蒸気凝縮層に、疎水剤または親水剤を含む導電性多孔質高分子膜を用いた場合には、作成したガス拡散層をさらにホットプレスするのが好ましい。これにより各層の接合性を高めるのができる。ホットプレスは、好ましくは110〜170℃で、1〜5MPaのプレス圧力で行うのがよい。また、ホットプレスする時期は、特に制限されず、ガス拡散基材層上に水蒸気凝縮層と水分蒸発層とを積層させた後に行ってもよく、燃料電池用MEAを組み立てた際にホットプレスを行ってもよい。
本発明のガス拡散層は、ガス拡散基材層と、水蒸気凝縮層と、水分蒸発層とがこの順で積層された3層構造とすることにより、上述した通り、水分蒸発層における毛細管力により電極触媒層中の水分を吸い取り蒸発させて水蒸気としてガス拡散基材層へ排出させることができ、また、ガス拡散基材層と水分蒸発層との間に水蒸気凝縮層を有することによりフラッディング現象を抑制しつつ適度に水分を保水することができ、排水性を向上させつつ部分的に保水性を付与することが可能となる。
これにより、高加湿および高電流密度などの多量の生成水が発生し得る運転条件下であっても水分が系外へ排出され、また、運転停止時、低加湿および低電流密度、などの固体高分子電解質膜が乾燥し易い運転条件下では水蒸気凝縮層にある程度溜められた水分により加湿して固体高分子電解質膜の湿潤状態を一定に保つことが可能となる。
従って、本発明のガス拡散層によれば、広範な運転条件においても高い発電性能を安定して示すことができる燃料電池用MEAを提供することができる。
本発明の第二は、上述したガス拡散層を用いた燃料電池用MEA(以下、単に「MEA」とも記載する)である。すわなち、固体高分子電解質膜の両側に、電極触媒層と、ガス拡散層とを有するMEAにおいて、前記ガス拡散層の少なくとも1つが、上述した本発明の第一のガス拡散層であるMEAである。
本発明のMEAの好適な一実施形態を図2に示す断面模式図を用いて説明する。図2において、MEA200は、固体高分子電解質膜210の両側に、アノード側電極触媒層231およびアノード側ガス拡散層232と、カソード側電極触媒層241およびカソード側ガス拡散層242と、それぞれ配置された構成を有する。
MEAの構成は、本発明の第一のガス拡散層を用いる以外は、特に限定されることはなく従来公知の各種技術を適宜参照すればよい。従って、アノード側電極触媒層、カソード側電極触媒層、および、固体高分子電解質膜に関する詳細な説明はここでは省略する。
また、MEAにおいて、本発明の第一のガス拡散層は、前記電極触媒層と接する面に前記水分蒸発層が配置される必要がある。これにより、電極触媒層内の過剰な水分を前記水分蒸発層が吸い取ることができ、電極触媒層内のフラッディング現象を防止することができる。
MEAにおいて、本発明の第一のガス拡散層は、アノード側ガス拡散層またはカソード側ガス拡散層の少なくともいずれか一方に用いられればよいが、フラッディング現象が生じ易いカソード側ガス拡散層に用いられるのが好ましく、より好ましくはアノード側ガス拡散層およびカソード側ガス拡散層の双方に用いられる。
MEAの製造方法としては、従来公知の方法に従って行えばよい。例えば、上述したガス拡散層上に電極触媒層を形成し、これを二枚用いて固体高分子電解質膜を挟持した後、ホットプレスする方法などが挙げられる。
本発明の第三は、上述した本発明の第二のMEAを用いた燃料電池である。上述した本発明のガス拡散層を用いたMEAによれば、広範な運転条件下であっても高い発電性能を安定して示すことができる燃料電池を提供することができる。
燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では固体高分子型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型燃料電池、固体高分子型燃料電池などが挙げられる。なかでも、実用性・安全性などの観点から固体高分子型燃料電池(PEFC)として用いるのが好ましい。これにより、移動体用電源、定置用電源として信頼性の高い燃料電池が得られる。
固体高分子型燃料電池の構造は、特に限定されず、MEAをセパレータなどで挟持した構造などが挙げられる。
セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。また、空気と燃料ガスの流路を確保するためにガス流通溝が形成されてもよく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータの形状は、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、下記実施例は、本発明の好ましい一実施形態を示したに過ぎず、本発明が下記実施例に限定されない。
(実施例1)
(1)ガス拡散基材層の撥水処理
ガス拡散基材層としてカーボンペーパ(東レ社製TGP−H−090、厚さ270μm)を10×10cmに打ち抜いたものを用い、これをPTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)に浸漬後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させることにより、ガス拡散基材層の撥水処理を行った。このとき、ガス拡散基材層におけるPTFE含有量は25wt%であった。
(1)ガス拡散基材層の撥水処理
ガス拡散基材層としてカーボンペーパ(東レ社製TGP−H−090、厚さ270μm)を10×10cmに打ち抜いたものを用い、これをPTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)に浸漬後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させることにより、ガス拡散基材層の撥水処理を行った。このとき、ガス拡散基材層におけるPTFE含有量は25wt%であった。
(2)水蒸気凝縮層および水分蒸発層の作製
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径1500nmのカーボン粒子1とした。このカーボン粒子1と、上記工程(1)と同じPTFE分散液、および水を、カーボン粒子とPTFEとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリー1を先に撥水処理したガス拡散基材層上にバーコーターを用いて塗布後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させた。
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径1500nmのカーボン粒子1とした。このカーボン粒子1と、上記工程(1)と同じPTFE分散液、および水を、カーボン粒子とPTFEとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリー1を先に撥水処理したガス拡散基材層上にバーコーターを用いて塗布後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させた。
次に、カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径200nmのカーボン粒子2とした。このカーボン粒子2と、上記工程(1)と同じPTFE分散液、および水を、カーボン粒子2とPTFEとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリー2を先に塗布および乾燥させたスラリー1上にバーコーターを用いて塗布後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させた。
上記の通りにして、スラリー1およびスラリー2が塗布および乾燥させたガス拡散基材層をマッフル炉にて350℃、1時間熱処理を行った。これにより、ガス拡散基材層上に水蒸気凝縮層および水分蒸発層が形成されたガス拡散層を得た。
得られた水蒸気凝縮層は、大きさ100mm×100mm、厚さ50μm、平均空孔径60nm、空隙率70%であった。また、水分蒸発層は、大きさ100mm×100mm、厚さ50μm、平均空孔径8nm、空隙率80%であった。
(実施例2)
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径1500nmのカーボン粒子3とした。このカーボン粒子3と、Nafion溶液(登録商標 DuPont社製 DE520、Nafion含量5wt%)、および2−プロパノールを、カーボン粒子3とNafionとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化し、スラリー3を調製した。
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径1500nmのカーボン粒子3とした。このカーボン粒子3と、Nafion溶液(登録商標 DuPont社製 DE520、Nafion含量5wt%)、および2−プロパノールを、カーボン粒子3とNafionとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化し、スラリー3を調製した。
スラリー1の代わりに、上記の通りにして得られたスラリー3を用いた以外は、実施例1と同様にしてガス拡散層を作製した。得られたガス拡散層における水蒸気凝縮層は、大きさ100mm×100mm、厚さ50μm、平均空孔径60nm、空隙率70%であった。
(実施例3)
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径200nmのカーボン粒子4とした。このカーボン粒子4と、Nafion溶液(登録商標 DuPont社製 DE520、Nafion含量5wt%)、および2−プロパノールを、カーボン粒子4とNafionとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化し、スラリー4を調製した。
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕し、平均粒子径200nmのカーボン粒子4とした。このカーボン粒子4と、Nafion溶液(登録商標 DuPont社製 DE520、Nafion含量5wt%)、および2−プロパノールを、カーボン粒子4とNafionとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化し、スラリー4を調製した。
スラリー1の代わりに、上記の通りにして得られたスラリー4を用いた以外は、実施例1と同様にしてガス拡散層を作製した。得られたガス拡散層における水蒸気凝縮層は、大きさ100mm×100mm、厚さ50μm、平均空孔径8nm、空隙率70%であった。
(実施例4)
ポリアニリンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に濃度が20質量%になるように溶解させた溶液を、基材としてPETシート上に塗布し、熱風循環乾燥機中、温度100℃で1時間乾燥して、ポリアニリンからなる導電性高分子膜(厚さ30μm、大きさ100mm×100mm)を得た。
ポリアニリンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に濃度が20質量%になるように溶解させた溶液を、基材としてPETシート上に塗布し、熱風循環乾燥機中、温度100℃で1時間乾燥して、ポリアニリンからなる導電性高分子膜(厚さ30μm、大きさ100mm×100mm)を得た。
作製した導電性高分子膜を、イオン加速器を用い、S4イオンを1×109個/cm2照射して、照射損傷を形成した後、過マンガン酸カリウムの80℃飽和水溶液に24時間浸漬して、化学的にエッチング処理を行った後、水洗・乾燥して導電性多孔質高分子膜1(平均空孔径8nm、空隙率80%)を得た。得られた導電性多孔質高分子膜1を、PTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)に浸漬させ、攪拌することにより十分にPTFE分散液を含浸させた後、導電性多孔質高分子膜1を引き上げ、オーブン内にて100℃、1時間乾燥させることによりPTFEを20質量%含む導電性多孔質高分子膜1を得た。
次に、上記と同様にして別途作製したポリアニリンからなる導電性高分子膜(厚さ30μm、大きさ100mm×100mm)を、イオン加速器を用い、S4イオンを1×109個/cm2照射して、照射損傷を形成した後、過マンガン酸カリウムの80℃飽和水溶液に24時間浸漬して、化学的にエッチング処理を行った後、水洗・乾燥して導電性多孔質高分子膜2(平均空孔径8nm、空隙率80%)を得た。得られた導電性多孔質高分子膜2を、Nafion溶液(登録商標 DuPont社製 DE520、Nafion含量5wt%)を2−プロパノールによりNafion含量20wt%に希釈した溶液に浸漬させ、攪拌することにより十分に前記溶液を含浸させた後、導電性多孔質高分子膜2を引き上げ、オーブン内にて100℃、1時間乾燥させることによりNafionを20質量%含む導電性多孔質高分子膜2を得た。
実施例1と同様にして撥水処理を行ったガス拡散基材層上に、水蒸気凝縮層としてNafionを含む導電性多孔質高分子膜2、および、水分蒸発層としてPTFEを含む導電性多孔質高分子膜1を順に積層させることによりガス拡散層を得た。さらに、前記ガス拡散層を、ガス拡散基材層あたり3MPaの圧力で、130℃、10分間ホットプレスした。
(比較例1)
1.ガス拡散基材層の親水処理
ガス拡散基材層としてカーボンペーパ(東レ社製TGP−H−090、厚さ270μm)を、10cm×10cmに打ち抜き、これを特開2003−89968号公報の段落[0040]に記載の手順に従って、前記カーボンペーパを親水処理した。
1.ガス拡散基材層の親水処理
ガス拡散基材層としてカーボンペーパ(東レ社製TGP−H−090、厚さ270μm)を、10cm×10cmに打ち抜き、これを特開2003−89968号公報の段落[0040]に記載の手順に従って、前記カーボンペーパを親水処理した。
2.カーボン層の作製
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R、平均粒子径1500nm)、PTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)、および水を、カーボン粒子とPTFEとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリーを実施例1と同様にして撥水処理したガス拡散基材層上にバーコーターを用いて塗布後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させた後、マッフル炉にて350℃、1時間熱処理を行った。これにより、ガス拡散基材層上にカーボン層1(厚さ50μm、大きさ100mm×100mm、平均空孔径60nm、空隙率80%)が形成されたガス拡散層を得た。
カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R、平均粒子径1500nm)、PTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)、および水を、カーボン粒子とPTFEとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散してスラリー化した。得られたスラリーを実施例1と同様にして撥水処理したガス拡散基材層上にバーコーターを用いて塗布後、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させた後、マッフル炉にて350℃、1時間熱処理を行った。これにより、ガス拡散基材層上にカーボン層1(厚さ50μm、大きさ100mm×100mm、平均空孔径60nm、空隙率80%)が形成されたガス拡散層を得た。
(比較例2)
まず、カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕して平均粒子径1500nmのカーボン粒子5を作製し、次に、これと同様にして平均粒子径1μmのカーボン粒子6を作製した。
まず、カーボンブラック(製品名Vulcan XC72R)を遊星ボールミルにより粉砕して平均粒子径1500nmのカーボン粒子5を作製し、次に、これと同様にして平均粒子径1μmのカーボン粒子6を作製した。
次に、カーボン粒子5をPTFE分散液(ダイキン工業社製ポリフロンD−1E、PTFE60wt%)に、カーボン粒子5とPTFEとが質量比で80:20となるようにし、ホモジナイザーにて3時間混合分散した後、60℃で24時間乾燥させることにより、PTFEにより塊状となったカーボン粒子5を得た。次に、この塊状となったカーボン粒子5を遊星ボールミルにより平均粒子径10μm程度まで粉砕した後、カーボン粒子6を添加してミキサーで混合した。得られた混合物を、実施例1と同様にして撥水処理したガス拡散基材層上に、窒素気流で搬送させて塗布後、マッフル炉にて350℃、1時間熱処理を行った。これにより、ガス拡散基材層上にカーボン層2(厚さ50μm、大きさ100mm×100mm、空隙率80%)が形成されたガス拡散層を得た。
(評価)
実施例1〜4、および、比較例1〜2において作製した各ガス拡散層を用いて、下記の手順に従ってMEAを作製し、各MEAの発電性能を測定することにより、各ガス拡散層の評価を行った。
実施例1〜4、および、比較例1〜2において作製した各ガス拡散層を用いて、下記の手順に従ってMEAを作製し、各MEAの発電性能を測定することにより、各ガス拡散層の評価を行った。
(1)触媒インク調製
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製 TEC10E50E、白金含量46.5wt%)10g、固体高分子電解質溶液(DuPont社製 NAFION溶液DE520、電解質含量5wt%)90g、純水25g、2−プロパノール(和光純薬工業社製 特級試薬)10gを、20℃で保持するよう設定したウォーターバス中のガラス容器にて、ホモジナイザーを用いて3時間混合分散することで、触媒インクとした。
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製 TEC10E50E、白金含量46.5wt%)10g、固体高分子電解質溶液(DuPont社製 NAFION溶液DE520、電解質含量5wt%)90g、純水25g、2−プロパノール(和光純薬工業社製 特級試薬)10gを、20℃で保持するよう設定したウォーターバス中のガラス容器にて、ホモジナイザーを用いて3時間混合分散することで、触媒インクとした。
(2)電極触媒層の作製
厚さ200μmのPTFE製シート(ニチアス社製ナフロン(登録商標)シート)の片面上に、スクリーンプリンターを用いて先に調製した触媒インクを塗布し、オーブン中で100℃、30分間乾燥させた後、一辺10cmの正方形に切り出した。
厚さ200μmのPTFE製シート(ニチアス社製ナフロン(登録商標)シート)の片面上に、スクリーンプリンターを用いて先に調製した触媒インクを塗布し、オーブン中で100℃、30分間乾燥させた後、一辺10cmの正方形に切り出した。
(3)MEAおよび単セルの組立て
一辺10cmの正方形で厚さ30μmの固体高分子電解質膜(DuPont社製NAFION NR−112)を挟んで、先に作製した2枚の電極触媒層形成PTFE製シートの電極触媒層形成側が対向するように重ねて、片側PTFE製シートあたり3MPaの圧力で、130℃、10分間ホットプレスし、冷却後PTFE製シートのみを剥がすことで、固体高分子電解質膜に電極触媒層を転写させ接合体を得た。このとき、PTFE製シートから固体高分子電解質への電極触媒層の転写率が100%で、固体高分子電解質膜上の片面電極触媒層面積1cm2あたりの白金重量が0.40mgとなるようにした。また、電極触媒層の厚さは、それぞれ10μmであった。
一辺10cmの正方形で厚さ30μmの固体高分子電解質膜(DuPont社製NAFION NR−112)を挟んで、先に作製した2枚の電極触媒層形成PTFE製シートの電極触媒層形成側が対向するように重ねて、片側PTFE製シートあたり3MPaの圧力で、130℃、10分間ホットプレスし、冷却後PTFE製シートのみを剥がすことで、固体高分子電解質膜に電極触媒層を転写させ接合体を得た。このとき、PTFE製シートから固体高分子電解質への電極触媒層の転写率が100%で、固体高分子電解質膜上の片面電極触媒層面積1cm2あたりの白金重量が0.40mgとなるようにした。また、電極触媒層の厚さは、それぞれ10μmであった。
得られた接合体を、先に作製したガス拡散層を2枚用いてガス拡散基材層が外側となるようにして挟んで重ねた状態とし、これをグラファイト製セパレータで挟持し、さらに金メッキしたステンレス製集電板で挟持して、評価用単セルとした。
(4)単セル評価
実施例1〜3および比較例1〜2の各評価用単セルの発電試験を行った。アノードに水素、カソードに空気を供給し、ガス流量はアノード/カソードS.R.=1.5/2.5で、セル温度70℃で行った。また、ガス拡散層の保水性と排水性を評価するために、相対湿度30%と100%で評価を行った。なお、「S.R.」(Stoichiometric Ratio)とは、所定量の電流を流すために必要な水素または酸素の量の比率を意味し、「アノードS.R.=1.5」とは、所定量の電流を流すために必要な水素量の1.5倍の流量で水素を流すことを意味する。
実施例1〜3および比較例1〜2の各評価用単セルの発電試験を行った。アノードに水素、カソードに空気を供給し、ガス流量はアノード/カソードS.R.=1.5/2.5で、セル温度70℃で行った。また、ガス拡散層の保水性と排水性を評価するために、相対湿度30%と100%で評価を行った。なお、「S.R.」(Stoichiometric Ratio)とは、所定量の電流を流すために必要な水素または酸素の量の比率を意味し、「アノードS.R.=1.5」とは、所定量の電流を流すために必要な水素量の1.5倍の流量で水素を流すことを意味する。
(5)結果
図3に、相対湿度30%の固体高分子電解質膜が比較的乾き易い条件において、ACインピーダンス法(周波数:1kHz)により測定した膜抵抗を示す。保水性が大きいと、膜抵抗は低い。実施例3<実施例2<実施例1の順に膜抵抗は低く、水蒸気凝縮層による効果が現れていることが分かる。これに対し、比較例2は保湿性に乏しくため、膜抵抗が高い。
図3に、相対湿度30%の固体高分子電解質膜が比較的乾き易い条件において、ACインピーダンス法(周波数:1kHz)により測定した膜抵抗を示す。保水性が大きいと、膜抵抗は低い。実施例3<実施例2<実施例1の順に膜抵抗は低く、水蒸気凝縮層による効果が現れていることが分かる。これに対し、比較例2は保湿性に乏しくため、膜抵抗が高い。
図4に、相対湿度100%のフラッディングが比較的起きやすい条件での電圧を示す。排水性が大きいと得られる電圧は高い。実施例1、2、3はほぼ同様の高い電圧が得られている。これに対し、比較例1はよりフラッディングが生じ易い高電流密度において得られる電圧が低下し、比較例2も高電流密度において電圧が低下している。
以上のように、実施例1〜3は、高加湿での排水性はほとんど同じで、低加湿の保湿性に若干性能差が現れるが、低加湿から高加湿まで発電性能が高い。比較例1は高加湿でのフラッディングが顕著で、比較例2は高加湿でのフラッディングは抑えられるが、逆に低加湿での膜の乾燥が顕著である。
本発明のガス拡散層によれば、広範な運転条件下において優れた発電性能を維持することができる燃料電池を実現することが可能となる。
110…ガス拡散基材層、121…水蒸気凝縮層、122…水分蒸発層、200…MEA、210…固体高分子電解質膜、231…アノード側電極触媒層、232…アノード側ガス拡散層、241…カソード側電極触媒層、242…カソード側ガス拡散層。
Claims (11)
- ガス拡散基材層と、水蒸気凝縮層と、水分蒸発層とが、積層されてなる燃料電池用ガス拡散層。
- 前記水分蒸発層が、疎水性の空孔を有し、かつ、平均空孔径が10nm未満である請求項1記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記水蒸気凝縮層が、疎水性の空孔を有し、かつ、平均空孔径が10nm以上である請求項1または2記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記水蒸気凝縮層が、親水性の空孔を有する請求項1または2に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記水蒸気凝縮層の平均空孔径が、10nm以下である請求項4記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記疎水性の空孔は、カーボン粒子および疎水剤により形成されてなる2または3記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記疎水性の空孔は、疎水剤を含む導電性多孔質高分子膜により形成されてなる請求項2または3記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記親水性の空孔は、カーボン粒子および親水剤により形成されてなる請求項4または5記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記親水性の空孔は、親水剤を含む導電性多孔質高分子膜により形成されてなる請求項4または5記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散層を用いた燃料電池用MEA。
- 請求項9記載の燃料電池用MEAを用いた燃料電池。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007250411A (ja) * | 2006-03-17 | 2007-09-27 | Sanyo Electric Co Ltd | 燃料電池 |
JP2010021060A (ja) * | 2008-07-11 | 2010-01-28 | Nissan Motor Co Ltd | 燃料電池用保水層およびその製造方法並びに電解質膜−電極接合体 |
JP2011198520A (ja) * | 2010-03-17 | 2011-10-06 | Nihon Gore Kk | 固体高分子形燃料電池ガス拡散層 |
KR101534948B1 (ko) * | 2013-11-25 | 2015-07-07 | 현대자동차주식회사 | 연료 전지 |
CN114976166A (zh) * | 2022-06-20 | 2022-08-30 | 中国科学技术大学 | 一种耐氧化型阳离子交换膜、其制备方法及耐氧化型膜电极 |
-
2004
- 2004-12-22 JP JP2004371616A patent/JP2006179315A/ja active Pending
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