JP2006179273A - 複合水蒸気透過膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくとも2層以上の高分子樹脂多孔体の層と、少なくとも2層以上の透湿性樹脂の層を、少なくとも最外層の一方が透湿性樹脂の層となるように交互に積層してなる複合水蒸気透過膜。
【選択図】 なし
Description
特に近年では固体高分子電解質型燃料電池の加湿装置の構成材料として多く用いられるようになってきた。固体高分子電解質型燃料電池に水蒸気透過膜が使用させるのは以下の理由からである。
固体高分子電解質型燃料電池の電解質にはイオン交換膜が使用されているが、その材質としては、高い化学的安定性を有することから、フッ素系イオン交換樹脂が広く用いられており、中でも主鎖がパーフルオロカーボンで、側鎖末端にスルホン酸基を有するデュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」が広く用いられている。こうしたフッ素系イオン交換樹脂は、当業者間でよく知られているように、高いイオン伝導性を発現させるためには水で十分な膨潤をさせておくことが必要である。したがって、水の供給に制限のある移動体用途、具体的には、車載燃料電池においては、このための水の確保が大きな課題となっている。
燃料電池は反応に伴って酸素側電極で水を生成するため、酸素側の排気に含まれる水蒸気を利用して酸素側または水素側の給気を加湿することができれば、別途、水タンク等を用意することなく水を自給自足することが可能になる。そこで、水蒸気透過膜を介して一方の側面にある気体の水蒸気を用いて他方の側面にある気体を加湿する装置(加湿装置)が考案され、使用されている。
(1)高い水蒸気透過量
(2)高機械強度
(3)高い水蒸気透過選択性(耐リーク性)
(4)上記性能の長期安定性
(5)低コスト
高い水蒸気透過量は、使用膜面積を少なくすることができるので、装置の小型化が可能になる。
高機械強度が要求されるのは、加工時や長時間の使用での破れや破損を防いだりするためである。
また、しばしば圧力差が生じる環境で使用されるため、水蒸気以外の気体は透過させない性能、即ち高い水蒸気透過選択性(耐リーク性)も要求される。
上記性能の長期安定性や低コストで製造される点も重要である。
これまでに上記の個々の性能について要求を満足しようとする水蒸気透過膜の提案はいくつかあったが、何れも全てを満たすものはなかった。
最も一般的なものとして、水蒸気透過性を有する親水性高分子樹脂の厚さ20〜200μm程度の皮膜を水蒸気透過膜として用いる場合があるが、これらの樹脂の多くは吸水性が強く、水蒸気の多い使用条件では皮膜が膨潤して機械的強度が弱まり、膜の破れや破損が起こりやすかった。
しかしながら、このような複合水蒸気透過膜のこれまでの何れの形態も完全なものではなかった。例えば、特許文献1には多孔質シートの片面に水蒸気を透過させ得る非水溶性の親水性高分子薄膜を形成した複合透湿膜が開示されているが、親水性高分子薄膜といっても厚さは10μm程度と厚く、十分な透湿性能が得られないばかりか、片面にしか薄膜が形成されていないため、加工時や長時間の使用条件のなかで、皮膜が剥離して耐リーク特性が低下する恐れがあった。
また、特許文献2には、2枚の高分子樹脂多孔膜の間に硬化したパーフルオロスルホン酸系イオン交換樹脂からなる透湿性樹脂層を設けた構造を有する水蒸気透過膜が開示されている。この特許文献によると、2枚の高分子樹脂多孔膜の間に透湿性樹脂層が形成されているため、加工時や長時間の使用条件のなかで、皮膜が剥離して耐リーク特性が低下する恐れがなく耐久性に優れているといえる。しかしこの場合、多孔構造が複合膜の両表面に形成されているため、流通する気体に微粒子等の不純物が含まれていると、多孔膜の表面に目詰まりが生じ、透湿性能が著しく低下する懸念があった。
〔1〕少なくとも2層以上の高分子樹脂多孔体の層と、少なくとも2層以上の透湿性樹脂の層を、少なくとも最外層の一方が透湿性樹脂の層となるように交互に積層してなることを特徴とする複合水蒸気透過膜。
〔2〕該透湿性樹脂がフッ素系イオン交換樹脂であることを特徴とする上記〔1〕に記載の複合水蒸気透過膜。
〔3〕上記〔1〔または〔2〕に記載の水蒸気透過膜を構成材として使用することを特徴とする加湿装置。
〔4〕上記(3)の加湿装置を使用することを特徴とする燃料電池システムに関する。
高分子樹脂多孔体としては、機械強度を確保し、水蒸気の透過をできる限り妨げない構造が好ましく、織布、不織布、微多孔膜等を用いることができる。
素材としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン/ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンなどが特に好ましい。
高分子樹脂多孔体の孔径は0.001μm以上10μm以下が好ましい。孔径の下限は0.005μm以上がより好ましく、0.01μm以上が更に好ましい。孔径の上限は5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.5μm以下がより更に好ましく、0.2μm以下が特に好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。孔径が0.001μm未満では、水蒸気透過性が不足する場合があり、孔径が10μmを越えると、機械的強度が低下する場合がある。
高分子樹脂多孔体の膜厚は1μm以上1000μm以下が好ましい。膜厚の下限は5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。膜厚の上限は500μm以下がより好ましく、300μm以下が更に好ましく、200μm以下が最も好ましい。膜厚が1μm未満になると、機械強度が不足する場合があり、膜厚が1000μmを越えると、水蒸気透過性が低下する場合がある。
高分子樹脂多孔膜の気孔率は5%以上90%以下が好ましく、気孔率の下限は10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、30%以上がより更に好ましく、40%以上が最も好ましい。気孔率が5%未満では、水蒸気透過性が不十分な場合があり、気孔率が90%を越えると、機械強度が不足する場合がある。
透湿性樹脂層としては、水蒸気を優先的に透過し、かつ空気などの気体をリークさせないために無孔質の親水性樹脂からなる皮膜が用いられる。
皮膜に用いられる樹脂としては、皮膜として単独で測定される透湿量Aが1000〜30000(g/m2・24hr)であることが好ましく、2000〜20000(g/m2・24hr)が更に好ましく、5000〜15000(g/m2・24hr)が特に好ましい。透湿量Aが1000未満では複合膜にしたときの水蒸気透過性が不十分な場合があり、透湿量Aが30000以上では吸水による寸法変化が大きく、膜の寸法安定性が不足する場合がある。
ここでいう透湿量Aとは、JIS−L−1099に記載された塩化カルシウム法により測定される水蒸気透過量であって、膜厚10μmあたりの換算値である。
このような材料としては、ポリウレタン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル、デンプン等の非電解質高分子やこれらの共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルピリジン、ポリアミノ酸等の電解質高分子やこれらの共重合体および塩、等親水性樹脂として知られる樹脂であれば公知のどのような膜でも使用可能である。
必要に応じて、イオン架橋、化学架橋、放射線架橋等の架橋、繊維補強、フィブリル補強等の補強を施すことにより透湿性の調整や水への不溶化をはかることができる。
本発明の複合水蒸気透過膜は、少なくとも2層以上の高分子樹脂多孔体の層と、少なくとも2層以上の透湿性樹脂の層を、少なくとも最外層の一方が透湿性樹脂の層となるように交互に積層してなることを特徴とする。
具体的には、高分子樹脂多孔体の層(A)と透湿性樹脂の層(B)が、(A−B)n 、B−(A−B)n の2つの型を例示することができる(nは2以上の整数である)。
本発明の複合水蒸気透過膜では、高分子樹脂多孔体の層と透湿性樹脂の層は互いに密着している構造をいう。
透湿性樹脂層の厚さの絶対値は、透湿性の観点から10μm以下であることが好ましく、更に好ましくは5μm以下が好ましく、特に好ましくは3μm以下である。また、耐リーク特性の観点から0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上が更に好ましい。
また、密着性を向上させるために、高分子樹脂多孔体表面を放電等の処理をすることもと好ましい。
本発明の複合水蒸気透過膜の性能は従来に比べ水蒸気透過性能を損なうことなく、機械強度にも優れ、透湿性樹脂の層が高分子樹脂多孔体の層の間に形成されているため、耐リーク性能の信頼性も向上している。また、複合水蒸気透過膜の最外層の少なくとも一方に透湿性樹脂の層が形成される場合には、流通する気体側に透湿性樹脂層を配置すれば微粒子等の不純物が含まれていても、多孔膜の表面に目詰まりが生じることなく、透湿性能を長時間維持できる。
複合水蒸気透過膜の水蒸気透過性能は、測定温度を80℃、乾燥側の相対湿度を0〜1%とする以外はJIS−L−1099に記載されているウォーター法に準じ、簡易的に測定することができ、20000(g/m2・24hr)以上が好ましく、25000(g/m2・24hr)以上が更に好ましく、30000(g/m2・24hr)以上が特に好ましい。
また、水蒸気透過性能の長期耐久性は、複合水蒸気透過膜をJIS−S−3201に準じた処理を行う前後の透湿量(前述のJIS−L−1099に記載されているウォーター法に準じた手法)差で、簡易的に測定することができ、処理前の水蒸気透過量に対する処理後の水蒸気透過量の割合は、50%以上が好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。
また、機械強度は湿潤環境下での突刺試験で表され、本発明の複合水蒸気透過膜の強度は1N以上が好ましく、2N以上が更に好ましく、3N以上が特に好ましい。
耐リーク性はJIS−P−8117の透気度で表され、本発明の複合水蒸気透過膜の透気度は10000秒以上が好ましく、100000秒以上が更に好ましい。
このような性能を達成できるのは、(1)高分子樹脂多孔体の間に透湿性樹脂の皮膜が形成されているため、透湿性樹脂の皮膜がはがれたり、欠落するようなことがなく耐リーク性を維持できる、(2)高分子樹脂多孔体の表面にも透湿性樹脂皮膜があるため複合膜全体の透湿性を損なうことがない、ためと考えられる。
本発明の複合水蒸気透過膜の作成方法としては、特に限定されるものではないが次の方法を挙げることができる。
表層の透湿性樹脂層を片面に形成する場合は、シート状の高分子樹脂多孔質体を透湿性樹脂溶液の入った層に浸漬したのち、もう1枚のシート状の高分子樹脂多孔体を積層し乾燥する方法が好ましい。
また、表層の透湿性樹脂層を両面に形成する場合は、シート状の高分子樹脂多孔質体を透湿性樹脂溶液の入った層に浸漬したのち、もう1枚の透湿性樹脂溶液を含浸したシート状の高分子樹脂多孔体を積層し乾燥する方法が好ましい。
尚、本発明では予め成膜したシート状の透湿性樹脂を用いてシート状の高分子樹脂多孔質体と積層しても構わない。
図1は、本発明の実施形態の例を示す加湿装置及び燃料電池システム構成図である。この燃料電池は水素と空気を用いる。
加湿装置2は、空気が導入される乾燥側流路21と、燃料電池1からのカソード側排気が導入される湿潤側流路22、吸気口211および221、排気口212および222、これらの流路を分離する水蒸気透過膜23、とを具備している。この加湿装置2の乾燥側流路21の吸気口211は、空気供給源であるコンプレッサー3が配管31で接続されており、乾燥側流路21の排気口212は、燃料電池1のカソード側の吸気口35と配管32で接続されている。湿潤側流路22の吸気口221は、燃料電池1のカソード側の排気口36と配管33で接続されており、湿潤側流路22の排気口222は、排気用の配管34が接続されている。水素供給源4は、燃料電池1のアノード側の吸気口37と配管41で接続されており、燃料電池1のアノード側の排気口38には排気用の配管42が接続されている。
燃料電池1のカソード側からの排気は、電池反応で生成された水、加湿装置2から供給されて燃料電池1の内部で吸収されなかった水、並びに加湿装置2から供給されて電池反応に使用されなかった酸素および酸素以外の気体(窒素等)からなる混合気体である。この混合気体は、配管33から加湿装置2の湿潤側流路22に導入されるが、水蒸気透過膜23は水蒸気のみを優先的に透過するため、湿潤側流路22内の水蒸気が乾燥側流路21に移動し、乾燥側流路21内の空気が加湿される。加湿された空気は、配管32を通って燃料電池1のカソード側の吸気口35に導入される。したがって、この加湿装置2は、水蒸気以外の気体組成や圧力を変化させることなく燃料電池運転に必要な加湿を安定して行うことができる。このため、本発明の加湿装置は、特に燃料電池自動車への搭載に適している。
乾燥側流路は、コンプレッサー3で加圧されているため、湿潤側流路よりも全圧は高くなる。水蒸気透過膜は前記した水蒸気透過性に加え、全圧差に対する十分な耐リーク性、すなわち空気を含む他の気体に対する非透過性を併せ持つ。
実施例及び比較例において示される特性の試験方法は次のとおりである。
(1)水蒸気透過性
測定温度を80℃、乾燥側の相対湿度を0〜1%とする以外はJIS−L−1099に記載されているウォーター法と同様の手法で測定した。
(2)水蒸気透過性能の長期耐久性簡易試験
複合水蒸気透過膜をJIS−S−3201に準じ、濁度標準液を水蒸気透過膜のどちらか一方の表面(10cm2 )に10リットル流通させた。このとき、表面に透湿性樹脂層のある場合(実施例)は、透湿性樹脂層がある面を、表面に透湿性樹脂層がない場合(比較例)は任意の表面に処理を行った。処理液を流通させる処理を行う前の水蒸気透過性B1、処理を行った後の水蒸気透過性B2を前述(1)の手法で測定し、処理前の水蒸気透過量に対する処理後の水蒸気透過量の割合Cを算出した。
C=100×(B2/B1) (%)
(3)突刺強度
カトーテック製「KES−G5ハンディー圧縮試験機」(商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重(N)を測定した。尚、測定する膜はあらかじめ80℃、湿度95%の環境下に1時間放置したものを用いた。
高分子樹脂多孔体(A)の層としてのポリエチレン製微多孔膜(膜厚16μm、目付け9g/m2、気孔率40%、透気度300秒)を、透湿性樹脂(B)としてのパーフルオロイオン交換樹脂溶液(旭化成(株)製、Aciplex−SS−1000、樹脂濃度5%)に連続浸漬装置を使用して浸漬し、ポリエチレン製微多孔膜の両面にパーフルオロイオン交換樹脂溶液を塗布した。引き続き、先ほどと同様の1枚のポリエチレン製微多孔膜が一方の最外層となるようにパーフルオロイオン交換樹脂の塗布面に重ね合わせ、その後80℃で乾燥することにより複合化透湿性加湿膜を得た(A−B)2 型の複合膜となる)。このときのパーフルオロイオン交換樹脂の塗工目付量は3g/m2であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果より、複合化透湿性加湿膜を構成するパーフルオロイオン交換樹脂の透湿性樹脂層の厚さは、高分子樹脂多孔体の層の層間に配置されたものが1μm、複合化透湿性加湿膜の最外層に配置されたものが0.1μmであった。得られた複合水蒸気透過膜の膜性能を表1に示す。
[比較例1]
高分子樹脂多孔体(A)の層としてのポリエチレン製微多孔膜(膜厚16μm、目付け9g/m2、気孔率40%、透気度300秒)の片面上に、透湿性樹脂(B)としてのパーフルオロイオン交換樹脂溶液(旭化成(株)製、Aciplex−SS−1000、樹脂濃度5%)を塗工し、溶液が付着した膜面へ新たに同様のポリエチレン製微多孔膜を重ね合わせ、その後80℃で乾燥することにより複合化透湿性加湿膜((A−B)1 −A)型の複合膜ととなる。)。このときのパーフルオロイオン交換樹脂の塗工目付け量は4g/m2であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果より、2枚のポリエチレン製微多孔膜の膜間に形成されたパーフルオロイオン交換樹脂の皮膜の厚さは2μm、表面には皮膜が形成されていなかった。得られた複合水蒸気透過膜の膜性能を表1に示す。
2 加湿装置
21 乾燥側流路
22 湿潤側流
23 水蒸気透過膜
3 コンプレッサー
31、32、33、34 配管
35、37 吸気口
36、38 排気口
4 水素供給源
41、42 配管
211、221 吸気口
212、222 排気口
Claims (4)
- 少なくとも2層以上の高分子樹脂多孔体の層と、少なくとも2層以上の透湿性樹脂の層を、少なくとも最外層の一方が透湿性樹脂の層となるように交互に積層してなることを特徴とする複合水蒸気透過膜。
- 該透湿性樹脂がフッ素系イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の複合水蒸気透過膜。
- 請求項1または2に記載の水蒸気透過膜を構成材として使用することを特徴とする加湿装置。
- 請求項3に記載の加湿装置を使用することを特徴とする燃料電池システム。
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