JP2006174841A - 変異プルラナーゼ - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化剤に対して優れた耐性を有し、至適pHが変化した、漂白剤配合洗浄剤への配合など幅広い用途で有用なプルラナーゼを提供する。
【解決手段】以下の(a)又は(b)の特徴を持つ変異プルラナーゼ。(a)特定のアミノ酸配列の特定位置のアラニン残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。(b)上記配列の保存IV領域と50%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつプルラナーゼ活性を有するアミノ酸配列において、上記配列の特定位置のアラニン残基と相同位のアミノ酸残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。洗浄剤及び澱粉糖化用組成物として有用である。
【選択図】なし
【解決手段】以下の(a)又は(b)の特徴を持つ変異プルラナーゼ。(a)特定のアミノ酸配列の特定位置のアラニン残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。(b)上記配列の保存IV領域と50%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつプルラナーゼ活性を有するアミノ酸配列において、上記配列の特定位置のアラニン残基と相同位のアミノ酸残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。洗浄剤及び澱粉糖化用組成物として有用である。
【選択図】なし
Description
本発明は変異プルラナーゼ及びこれをコードする遺伝子に関し、さらに詳細にはプルラナーゼを構成するアミノ酸残基の一部が欠失又は他のアミノ酸に置換することにより酸化剤耐性や最適反応pHの変化を獲得した変異プルラナーゼ、その遺伝子及びこれを含有する洗浄剤組成物に関する。
プルラナーゼは、澱粉、グリコーゲン、アミロペクチン或いはプルラン分子中に存在するα−1,6グルコシド結合のみを切断し、最終的にマルトトリオースを生成する酵素であり、エンド型アミラーゼ及びエキソ型アミラーゼと併用することにより、澱粉からグルコースやマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペントオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖を生産することができるので、澱粉製造工業において注目されている酵素である。
近年、Klebsiella aerogenes(Journal of Bacteriology, 169, 2301-2306(1987)、Klebsiella pneumoniae(Molecular Microbiology, 4, 73-85(1990))、Spinacia oleracea(NCBI gi:634092))、Bacillus stearothermophilus(Journal of Fermentation and Bioengineering, 69, 204-210(1990))等において、プルラナーゼがクローニングされ、そのアミノ酸配列が決定されている。それぞれの酵素において4つの保存領域(中島ら,Journal of Bacteriology, 163, 401-406(1985))が見出されており、K. aerogenesではGFRFDLMGY(保存II領域)及びYVSKHD(保存IV領域)、K. pneumoniaeではGFRFDLMGY(保存II領域)及びYVSKHD(保存IV領域)、S. oleraceaではGFRFDLMGH(保存II領域)及びYVSAHD(保存IV領域)、B. stearothermophilusではGFRFDLMGI(保存II領域)及びYVESHD(保存IV領域)のアミノ酸配列が認められる。
一方、近年になって本発明者らは、α−アミラーゼとプルラナーゼを共に食器洗浄剤及び衣料洗浄剤に配合することによって、主に澱粉汚れに対する洗浄力が飛躍的に向上することを明らかにした(特許文献1参照)。
一方、近年になって本発明者らは、α−アミラーゼとプルラナーゼを共に食器洗浄剤及び衣料洗浄剤に配合することによって、主に澱粉汚れに対する洗浄力が飛躍的に向上することを明らかにした(特許文献1参照)。
食器用洗浄剤や衣料用洗浄剤は、往々にして酸化剤、例えば漂白剤又は過酸化物を含むものであり、強いアルカリ条件で使用されており、より酸化剤耐性の酵素並びに最適反応pHの高い酵素が望まれている。非特許文献1等によりプルラナーゼのランダム変異による熱安定性向上研究が報告されているがプルラナーゼの機能改変はまだ十分とはいえない。非特許文献2には、部位特異的変異誘発を利用することで、222 位のメチオニンがズブチリシンの酸化的不活性化にとっての主要部位であることが明らかとされている。また、特許文献2〜5等には、特定のメチオニンがα−アミラーゼの酸化的不活性化に寄与することが明らかとされている。しかし、いずれもα−アミラーゼについての報告であり、機能的に異なる酵素であるプルラナーゼの部位と作用との関係については何の報告もない。
特開平2−132193号公報
特表平8−500243号
特表平8−5064911号
WO96/05295
WO96/23873
Journal of Biochemistry, 116巻, 1233-1240頁, 1994年
Journal of Biological Chemistry, 第260巻, No.11, 6518-6521頁、1985年
本発明は、プルラナーゼを変異させることにより酸化剤耐性や最適反応pHの変化した変異プルラナーゼ、これをコードする遺伝子及び該変異プルラナーゼを含有する洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、プルラナーゼのアミノ酸配列とそれらの部位特異的変異による性質の変化について種々検討してきたところ、メチオニン残基が酸化剤による不活性化に寄与しており、これを欠失させるか他のアミノ酸に置換することによりプルラナーゼ活性を保持したまま優れた酸化剤耐性を獲得することを見出した。一方、アラニン残基が、最適反応pHの変化に寄与しており、これを欠失させるか他のアミノ酸に置換することによりプルラナーゼ活性を保持したまま最適反応pHの変化した変異プルラナーゼが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(a)又は(b)の特徴を持つ変異プルラナーゼ(以下、変異プルラナーゼBと称する)
(a)配列番号1のアミノ酸配列の557位のアラニン残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。
(b)配列番号1の保存IV領域と50%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつプルラナーゼ活性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の557位のアラニン残基と相同位のアミノ酸残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。
を提供するものである。
(a)配列番号1のアミノ酸配列の557位のアラニン残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。
(b)配列番号1の保存IV領域と50%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつプルラナーゼ活性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の557位のアラニン残基と相同位のアミノ酸残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。
を提供するものである。
また、本発明は、上記の変異プルラナーゼをコードする遺伝子、該遺伝子を含有するベクタープラスミド、該ベクタープラスミドで形質転換された又は染色体相同組換えされた形質転換体細胞を提供するものである。
さらに、本発明は、上記の変異プルラナーゼを含有する洗浄剤組成物を提供するものである。
さらにまた、本発明は、本発明は上記の変異プルラナーゼを含有する澱粉糖化用組成物を提供するものである。
本発明によれば、酸化剤に対して優れた耐性を有するプルラナーゼ及び最適反応pHが変化したプルラナーゼを得ることができ、漂白剤配合洗浄剤への配合など幅広い用途で有用なプルラナーゼを得ることができる。
本明細書において、「酸化剤の存在下での安定性」なる語は、プルラナーゼの貯蔵中の、及びプルラナーゼ含有洗浄剤の貯蔵中の貯蔵安定性、さらには例えば過酸化水素又はその他の漂白剤の存在下でのプルラン加水分解中のプルラナーゼの安定性を意味する。
本発明の変異プルラナーゼA及び変異プルラナーゼABにおけるCys及びMet以外のアミノ酸残基としては、Ala、Arg、Asn、Asp、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValが挙げられるが、酸化剤耐性の点からAla、Glu、Ile、Leu、Asn、Arg、Ser及びValがより好ましい。
一方、本発明の変異プルラナーゼB及び変異プルラナーゼABにおけるAla以外のアミノ酸残基としては、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValが挙げられるが、このうちCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、Val及びTrpがより好ましい。
本発明の変異プルラナーゼAは、アミノ酸残基として少なくとも1個のメチオニン残基を有するプルラナーゼを変異させて得られるものであり、原料プルラナーゼとしてはメチオニン残基を有するものである限り、野生型プルラナーゼであっても、変異プルラナーゼであってもよい。
一方、本発明の変異プルラナーゼBは、アミノ酸残基として少なくとも1個のアラニン残基を有するプルラナーゼを変異させて得られるものであり、原料プルラナーゼとしてはアラニン残基を有するものである限り、野生型プルラナーゼであっても、変異プルラナーゼであってもよい。
かかる原料プルラナーゼとしては、バチルス属に属する微生物由来のプルラナーゼ、α−アミラーゼ活性を有するアルカリプルラナーゼ(アルカリアミロプルラナーゼ;バチルス sp.KSM−AP1378株由来)、又は該アミロプルラナーゼのプルラナーゼ領域が好ましい。特に好ましいアルカリアミロプルラナーゼの例としては、秦田ら,Journal Biological Chemistry, 271, 24075-24083(1996)に示されているアミノ酸配列を有するものが好ましい(配列番号2)。また、該アミロプルラナーゼのプルラナーゼ領域としては、配列番号2の1023番目Metから1820番目Aspまで(配列番号1)が好ましい。さらに、バチルス属由来のプルラナーゼとしてはバチルス sp.KSM−AP1876株由来のプルラナーゼが好ましい。このうち、配列番号1記載のアミノ酸配列を有するプルラナーゼ又は該配列と相同性の高い配列を有するプルラナーゼが特に好ましい。ここで、配列番号1記載の配列と相同性の高い配列としては、配列番号1の443位のメチオニン残基近傍(保存II領域)に少なくとも77%相同性を有するプルラナーゼ、又は配列番号1の557位のアラニン残基近傍(保存IV領域)に少なくとも50%の相同性を有するプルラナーゼが挙げられる。
また、本発明の変異プルラナーゼA及び変異プルラナーゼABとしては、配列番号1中のメチオニン残基の1個〜18個が変異していてもよいが、443位のMet又は他のプルラナーゼの相同位のMetが欠失又は前記のMet及びCys以外のアミノ酸残基に置換しているのが好ましい。一方、変異プルラナーゼB及び変異プルラナーゼABとしては、配列番号1中の557位のAla又は他のプルラナーゼの相同位のAlaが欠失又は前記のAla以外のアミノ酸残基に置換しているのが好ましい。
本発明の変異プルラナーゼは、例えば、プルラナーゼをコードするDNAに部位特異的変異を導入して、変異プルラナーゼをコードする遺伝子及びこれを含有するベクタープラスミドを得、次いで該プラスミドを用いて宿主を形質転換するか、染色体相同組換えにより形質転換体を得、これを培養することにより製造される。
上記製造法をアルカリアミロプルラナーゼのプルラナーゼ領域(配列番号1)を原料として実施する場合を例にとり、さらに詳細に説明する。
まず、配列番号1のプルラナーゼをコードするDNAは、例えばバチルス sp.KSM−AP1378株(FERM BP-3048)由来のアミロプルラナーゼをコードするDNA(配列番号2)の2945番目に存在する制限酵素PstI及び5460番目に存在する制限酵素SmaI間をプラスミドpUC19の制限酵素PstIとSmaI間に結合したプラスミド(図1)を導入した大腸菌HB101株から常法に従って得ることができる。
部位特異的変異の方法としては一般的に行なわれている方法であればいずれも採用できるが、例えばClonetech の Transformer TM Site-Directed Mutagenesis Kit、Takara社のSite-Directed Mutagenesis System Mutan-Super Express Km Kit 等を用いて行なうことができる。
所望の変異プルラナーゼを産生するクローンのスクリーニングは、形質転換体をレッドプルラン含有培地で培養することにより行なわれる。
次に、本発明方法を実施するにあたって採用する一般的な方法について説明する。
〔塩基配列の決定〕
塩基配列の決定は、Maxam-Gilbert の化学修飾法(Methods Enzymology., 65, 499-559 (1980))又はジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Proceeding of National Academic Science, U. S. A., 74, 5463-5467 (1977) ;Nature, London, 321, 674-679 (1986))などを用いて決定することができる。
塩基配列の決定は、Maxam-Gilbert の化学修飾法(Methods Enzymology., 65, 499-559 (1980))又はジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Proceeding of National Academic Science, U. S. A., 74, 5463-5467 (1977) ;Nature, London, 321, 674-679 (1986))などを用いて決定することができる。
〔部位特異的変異の導入法〕
(1)Clontech社のプロトコールに準じて、Transformer TM Site-Directd Mutagenesis Kit(2nd version )を用いた方法。
(1−1)プラスミドDNAの変性とプライマーDNAの結合
10×アニーリングバッファーが2.0μl、目的遺伝子の挿入したプラスミドDNA(0.05μg)が2.0μl、リン酸化済み変異選択用プライマー(0.05μg)が2.0μl、リン酸化済み変異導入プライマー(0.05μg)が2.0μl、滅菌水が12μl混ぜ合わさった液を100℃で3分間放置し、その後氷上で5分間急冷する。
(1−2)変異導入ステップ
(1)で調製した液20μlに10×伸長バッファーを3.0μl、T4 DNA polymerase(2-4単位/μl)を1μl、T4 DNA ligase(4-6単位/μl)を1μl、滅菌水5μl添加しよく混合後、37℃で2時間インキュベートする。その後、70℃で5分間熱処理をし酵素反応を停止する。
(1−3)制限酵素による1段階目の変異プラスミドの選択
酵素反応停止後の反応液からエタノール沈澱でプラスミドDNAを回収し、変異の導入されていないプラスミドのみが切断される制限酵素で処理する。制限酵素処理溶液を直接大腸菌HB101に導入し、形質転換体を液体培養で増殖させる。
(1−4)制限酵素による2段階目の変異プラスミドの選択
(1−3)において増殖した形質転換菌体からプラスミドを精製し(1−3)で用いた制限酵素と同じ制限酵素で処理し、処理溶液でHB101を形質転換する。抗生物質入りLBプレート上に出現したコロニーを変異プラスミドを有する候補コロニーと判断し、選択を行なう。
(1−5)変異の確認
(1−4)の操作で得られた形質転換体を抗生物質入りのLB培地で培養し、増殖した菌体から調製したプラスミドのDNA配列解析を行ない変異の導入を確認する。
(1)Clontech社のプロトコールに準じて、Transformer TM Site-Directd Mutagenesis Kit(2nd version )を用いた方法。
(1−1)プラスミドDNAの変性とプライマーDNAの結合
10×アニーリングバッファーが2.0μl、目的遺伝子の挿入したプラスミドDNA(0.05μg)が2.0μl、リン酸化済み変異選択用プライマー(0.05μg)が2.0μl、リン酸化済み変異導入プライマー(0.05μg)が2.0μl、滅菌水が12μl混ぜ合わさった液を100℃で3分間放置し、その後氷上で5分間急冷する。
(1−2)変異導入ステップ
(1)で調製した液20μlに10×伸長バッファーを3.0μl、T4 DNA polymerase(2-4単位/μl)を1μl、T4 DNA ligase(4-6単位/μl)を1μl、滅菌水5μl添加しよく混合後、37℃で2時間インキュベートする。その後、70℃で5分間熱処理をし酵素反応を停止する。
(1−3)制限酵素による1段階目の変異プラスミドの選択
酵素反応停止後の反応液からエタノール沈澱でプラスミドDNAを回収し、変異の導入されていないプラスミドのみが切断される制限酵素で処理する。制限酵素処理溶液を直接大腸菌HB101に導入し、形質転換体を液体培養で増殖させる。
(1−4)制限酵素による2段階目の変異プラスミドの選択
(1−3)において増殖した形質転換菌体からプラスミドを精製し(1−3)で用いた制限酵素と同じ制限酵素で処理し、処理溶液でHB101を形質転換する。抗生物質入りLBプレート上に出現したコロニーを変異プラスミドを有する候補コロニーと判断し、選択を行なう。
(1−5)変異の確認
(1−4)の操作で得られた形質転換体を抗生物質入りのLB培地で培養し、増殖した菌体から調製したプラスミドのDNA配列解析を行ない変異の導入を確認する。
〔プルラナーゼ活性測定法〕
各種緩衝液中にプルラン(反応系における最終濃度は0.25%)を溶解させた基質溶液0.9mLに、酵素液0.1mLを加え、50℃で、30分間反応させた。反応後、3,5−ジニトロサリチル酸(DNS)法にて還元糖の定量を行なった。すなわち、反応液1.0mLにDNS試薬1.0mLを加え、5分間、100℃で加熱発色させ、冷却後、4.0mLの脱イオン水を加えて希釈し、波長535nmで比色定量した。酵素の力価は、1分間に1μmol のグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位(1U)とした。
各種緩衝液中にプルラン(反応系における最終濃度は0.25%)を溶解させた基質溶液0.9mLに、酵素液0.1mLを加え、50℃で、30分間反応させた。反応後、3,5−ジニトロサリチル酸(DNS)法にて還元糖の定量を行なった。すなわち、反応液1.0mLにDNS試薬1.0mLを加え、5分間、100℃で加熱発色させ、冷却後、4.0mLの脱イオン水を加えて希釈し、波長535nmで比色定量した。酵素の力価は、1分間に1μmol のグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位(1U)とした。
〔変異プルラナーゼ粗酵素液の調製〕
プルラナーゼに変異を導入したプラスミドを保持する大腸菌を、適当な培地、例えば、アンピシリン50μg/mLを含む2×YT培地(16g Bacto Trypton, 10g Yeast Extract, 10g NaCl/L)で、37℃、24時間振盪培養した。培養液35mLを遠心分離して得られた菌体を、適当な緩衝液、例えば、7mLの10mM Tris-HCl pH8.0に懸濁した。菌懸濁液に適当な処理、例えば、超音波処理(BIOTEC 7500ULTRASONIC PROCESSOR SEIKO INSTRUMENTS & ELECTRONICS LTD.、%DUTY CYCLE 70%, OUTPUT CONTROL3, TIMER3)を行うことにより、菌体の破砕を行った。破砕後、遠心分離によって不溶物を取り除き、得られた上清液を無細胞抽出液(粗酵素液)とした。
プルラナーゼに変異を導入したプラスミドを保持する大腸菌を、適当な培地、例えば、アンピシリン50μg/mLを含む2×YT培地(16g Bacto Trypton, 10g Yeast Extract, 10g NaCl/L)で、37℃、24時間振盪培養した。培養液35mLを遠心分離して得られた菌体を、適当な緩衝液、例えば、7mLの10mM Tris-HCl pH8.0に懸濁した。菌懸濁液に適当な処理、例えば、超音波処理(BIOTEC 7500ULTRASONIC PROCESSOR SEIKO INSTRUMENTS & ELECTRONICS LTD.、%DUTY CYCLE 70%, OUTPUT CONTROL3, TIMER3)を行うことにより、菌体の破砕を行った。破砕後、遠心分離によって不溶物を取り除き、得られた上清液を無細胞抽出液(粗酵素液)とした。
〔H2O2酸化耐性度の検定〕
(1)試験管にカタラーゼ(ベーリンガーマンハイム社、カタログ番号 106810、由来beefliver)を2.5μl分注し、氷中に置いておく。
(2)30℃又は40℃に保温した、30%過酸化水素水(和光純薬社)をサンプル添加後最終濃度が20、250、又は500mMとなるように添加した適当な緩衝液、例えば20mM Britton-Robinson バッファーpH8.0によって希釈しておく。
(3)サンプルのプルラナーゼを、適当な緩衝液、例えば10mM Tris-HCl pH8.0で(2)で調製した溶液に添加後25倍になるように希釈しておく。
(4)(2)で調製した試験管に(3)で調製したサンプルを加え、素早く混ぜ合わせた。所定の時間放置後の反応液を各々500μlサンプリングし、(1)で用意したカタラーゼ入りの試験管に注入し酸化反応を停止した。
(5)各々のサンプルの残存プルラナーゼ活性をDNS法で測定し、過酸化水素に対する酸化剤耐性を求めた。
(1)試験管にカタラーゼ(ベーリンガーマンハイム社、カタログ番号 106810、由来beefliver)を2.5μl分注し、氷中に置いておく。
(2)30℃又は40℃に保温した、30%過酸化水素水(和光純薬社)をサンプル添加後最終濃度が20、250、又は500mMとなるように添加した適当な緩衝液、例えば20mM Britton-Robinson バッファーpH8.0によって希釈しておく。
(3)サンプルのプルラナーゼを、適当な緩衝液、例えば10mM Tris-HCl pH8.0で(2)で調製した溶液に添加後25倍になるように希釈しておく。
(4)(2)で調製した試験管に(3)で調製したサンプルを加え、素早く混ぜ合わせた。所定の時間放置後の反応液を各々500μlサンプリングし、(1)で用意したカタラーゼ入りの試験管に注入し酸化反応を停止した。
(5)各々のサンプルの残存プルラナーゼ活性をDNS法で測定し、過酸化水素に対する酸化剤耐性を求めた。
かくして得られる本発明変異プルラナーゼは、酸化剤に対する耐性が極めて高く、酸化剤、漂白剤を含む洗浄剤、澱粉糖化用組成物等の配合成分として有用である。
ここで本発明の洗浄剤には、上記変異プルラナーゼ以外に、さらに、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ、プロトペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、パーオキシダーゼ、ラッカーゼ及びカタラーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素を配合することができる。
また、洗浄剤に通常配合されるアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等の界面活性剤;二価金属イオン捕捉剤(キレート剤)、アルカリ剤、無機塩、再汚染防止剤、塩素捕捉剤、還元剤、漂白剤、蛍光染料可溶化剤、香料、ケーキング防止剤、酵素の活性化剤、酸化防止剤、防腐剤、色素、青味付け剤、漂白活性化剤、酵素安定化剤、相調節剤等を配合することができる。
本発明の洗浄剤組成物は、上記変異プルラナーゼ及び上記公知の洗浄成分を組み合せて常法に従い、製造することができる。洗浄剤の形態は、用途に応じて選択することができ、例えば液体、粉末、顆粒等とすることができる。また、本発明洗浄剤組成物は、衣料用洗浄剤、漂白洗浄剤、自動食器洗浄機用洗浄剤、排水管洗浄剤、義歯洗浄剤等として使用することができるが、特に衣料用洗浄剤、漂白洗浄剤又は自動食器洗浄機用洗浄剤として好適に使用することができる。
本発明の洗浄剤組成物は、上記変異プルラナーゼ及び上記公知の洗浄成分を組み合せて常法に従い、製造することができる。洗浄剤の形態は、用途に応じて選択することができ、例えば液体、粉末、顆粒等とすることができる。また、本発明洗浄剤組成物は、衣料用洗浄剤、漂白洗浄剤、自動食器洗浄機用洗浄剤、排水管洗浄剤、義歯洗浄剤等として使用することができるが、特に衣料用洗浄剤、漂白洗浄剤又は自動食器洗浄機用洗浄剤として好適に使用することができる。
また、本発明の澱粉糖化用組成物には、さらに、グルコアミラーゼ、マルターゼ、α−アミラーゼ、イソアミラーゼ及びネオプルラナーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素も配合し、変異プルラナーゼとともに澱粉に作用させることもできる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
バチルス sp.KSM−1378株由来アミロプルラナーゼ遺伝子がプラスミドpBR322に連結されたプラスミドpBP101(10.6kb)1μgを、制限酵素PstI及びSmaIによって切断後、アガロースゲル電気泳動を行ない、ゲルからジーンクリーンキット(フナコシ社製)によって、約2.5kbのDNA断片を単離した。得られたDNA断片と、制限酵素PstI及びSmaIによって切断したベクターpUC19とをT4リガーゼによって結合させた組換えプラスミド混合物を大腸菌HB101に導入し、アンピシリン50μg/mLを含むLB培地に塗抹した。出現してきた形質転換体から、常法〔Maniatis, T, et. al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory(1982)〕に従って組換えプラスミドを調製した。得られたプラスミドの制限酵素切断地図を作成したところ、約2.5kbのDNA断片がベクターに含まれていることが明らかとなり、これをプラスミドpUPSPULと命名した。また、プラスミドpUPSPULによって形質転換された大腸菌HB101株をHB101(pUPSPUL)株と命名した。
バチルス sp.KSM−1378株由来アミロプルラナーゼ遺伝子がプラスミドpBR322に連結されたプラスミドpBP101(10.6kb)1μgを、制限酵素PstI及びSmaIによって切断後、アガロースゲル電気泳動を行ない、ゲルからジーンクリーンキット(フナコシ社製)によって、約2.5kbのDNA断片を単離した。得られたDNA断片と、制限酵素PstI及びSmaIによって切断したベクターpUC19とをT4リガーゼによって結合させた組換えプラスミド混合物を大腸菌HB101に導入し、アンピシリン50μg/mLを含むLB培地に塗抹した。出現してきた形質転換体から、常法〔Maniatis, T, et. al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory(1982)〕に従って組換えプラスミドを調製した。得られたプラスミドの制限酵素切断地図を作成したところ、約2.5kbのDNA断片がベクターに含まれていることが明らかとなり、これをプラスミドpUPSPULと命名した。また、プラスミドpUPSPULによって形質転換された大腸菌HB101株をHB101(pUPSPUL)株と命名した。
実施例2
ベクターpUPSPULの配列を基にしてApplied Biosystems Division 392DNA/RNA Synthesizer(パーキンエルマー社製)を用いて合成し、DNA Refinement System DNASTEC-1000(アステック社製)を用いて精製された29塩基及び25塩基からなるプライマー1及びプライマー2(図2)と、鋳型としてpUPSPUL及び、Transformer TM Site-Directed Mutagenesis Kit(CLONTECH Laboratories, Inc. 製)を用いて、キットの操作手順に従って、プラスミドpUPSPUL上のプルラナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)の443、444番目のメチオニン残基の位置にアンバー変異を導入した。変異導入処理した反応液を用いて大腸菌HB101株を形質転換した。得られた形質転換体を実施例1と同様に解析し、プルラナーゼのアミノ酸配列の443、444番目のメチオニン残基の位置にアンバー変異を導入したプラスミドPUPSAを単離した。また、変異導入の確認は、蛍光プライマー法〔Smith, L. M. et. al., Nature, 321, 674(1986)〕に従って、ABI PRISM377DNA Sequencer・(パーキンエルマー社製)を用いて行なった。
ベクターpUPSPULの配列を基にしてApplied Biosystems Division 392DNA/RNA Synthesizer(パーキンエルマー社製)を用いて合成し、DNA Refinement System DNASTEC-1000(アステック社製)を用いて精製された29塩基及び25塩基からなるプライマー1及びプライマー2(図2)と、鋳型としてpUPSPUL及び、Transformer TM Site-Directed Mutagenesis Kit(CLONTECH Laboratories, Inc. 製)を用いて、キットの操作手順に従って、プラスミドpUPSPUL上のプルラナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)の443、444番目のメチオニン残基の位置にアンバー変異を導入した。変異導入処理した反応液を用いて大腸菌HB101株を形質転換した。得られた形質転換体を実施例1と同様に解析し、プルラナーゼのアミノ酸配列の443、444番目のメチオニン残基の位置にアンバー変異を導入したプラスミドPUPSAを単離した。また、変異導入の確認は、蛍光プライマー法〔Smith, L. M. et. al., Nature, 321, 674(1986)〕に従って、ABI PRISM377DNA Sequencer・(パーキンエルマー社製)を用いて行なった。
ベクターpUPSPULの配列を基にして合成された24塩基及び35塩基からなるプライマー3及びプライマー4(図3)と、鋳型としてPUPSA及びTransformer TM Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて、プルラナーゼのアミノ酸配列の443番目の位置に種々のアミノ酸置換を導入した。変異導入処理した反応液を用いて大腸菌HB101株を形質転換した。得られた形質転換体を実施例1と同様に解析し、プルラナーゼのアミノ酸配列の443番目の位置にアミノ酸置換を導入した種々のプラスミドを単離した。また、DNAシークエンスにより導入したアミノ酸の確認を行なった。
実施例3
プルラナーゼに変異を導入したプラスミドを保持する大腸菌を、アンピシリン50μg/mLを含む2×YT培地(16g Bacto Trypton, 10g Yeast Extract, 10g NaCl/L)で、37℃、24時間振盪培養した。培養液35mLを遠心分離して得られた菌体を、7mLの10mM Tris−HClpH8.0に懸濁し、超音波による破砕(BIOTEC 7500ULTRASONIC PROCESSOR SEIKO INSTRUMENTS & ELECTRONICS LTD.)を行なった。破砕後、遠心分離によって不溶物を取り除き、得られた上清液を無細胞抽出液(粗酵素液)とした。
プルラナーゼに変異を導入したプラスミドを保持する大腸菌を、アンピシリン50μg/mLを含む2×YT培地(16g Bacto Trypton, 10g Yeast Extract, 10g NaCl/L)で、37℃、24時間振盪培養した。培養液35mLを遠心分離して得られた菌体を、7mLの10mM Tris−HClpH8.0に懸濁し、超音波による破砕(BIOTEC 7500ULTRASONIC PROCESSOR SEIKO INSTRUMENTS & ELECTRONICS LTD.)を行なった。破砕後、遠心分離によって不溶物を取り除き、得られた上清液を無細胞抽出液(粗酵素液)とした。
実施例4
表1に示す様々なプルラナーゼ突然変異体を有する菌体の粗酵素液を、30℃で保温した。250mM又は500mM 過酸化水素(H2・O2・)を含む20mM Britton-Robinson バッファーpH8.0に適当に希釈して添加した。15秒後、並びに30分後、過酸化水素処理液500μlにカタラーゼ(ベーリンガー マンハイム社製、カタログ番号106810、牛肝臓)2.5μlを加えた後、プルラナーゼ活性を測定した。活性は10mM Tris−HClpH8で希釈した処理液を、0.25%プルラン、50mM Britton-Robinson バッファーpH8.0、30℃中で15分間反応させ、生成した還元糖を3,5−ジニトロサリチル酸〔3,5-dinitrosalicylic acid(DNS)〕試薬により定量した。その結果は下記の表1により明らかであり、種々の変異体で酸化剤の存在下での安定性の向上が認められる。プルラナーゼ突然変異体は1文字アミノ酸標記によって示している。すなわちM443Aは、443位のMetがAlaで交換されているプルラナーゼ変異体を意味する。表1における値は、15秒におけるプルラナーゼ活性を100%とした相対活性の値である。
表1に示す様々なプルラナーゼ突然変異体を有する菌体の粗酵素液を、30℃で保温した。250mM又は500mM 過酸化水素(H2・O2・)を含む20mM Britton-Robinson バッファーpH8.0に適当に希釈して添加した。15秒後、並びに30分後、過酸化水素処理液500μlにカタラーゼ(ベーリンガー マンハイム社製、カタログ番号106810、牛肝臓)2.5μlを加えた後、プルラナーゼ活性を測定した。活性は10mM Tris−HClpH8で希釈した処理液を、0.25%プルラン、50mM Britton-Robinson バッファーpH8.0、30℃中で15分間反応させ、生成した還元糖を3,5−ジニトロサリチル酸〔3,5-dinitrosalicylic acid(DNS)〕試薬により定量した。その結果は下記の表1により明らかであり、種々の変異体で酸化剤の存在下での安定性の向上が認められる。プルラナーゼ突然変異体は1文字アミノ酸標記によって示している。すなわちM443Aは、443位のMetがAlaで交換されているプルラナーゼ変異体を意味する。表1における値は、15秒におけるプルラナーゼ活性を100%とした相対活性の値である。
実施例5
突然変異プルラナーゼの粗酵素液を10mM Tris−HClpH8で希釈し、各突然変異体の活性を酸化剤(H2O2)の存在下及び対照として酸化剤の非存在下で測定した。活性は実施例4に記載の通りに反応したが、反応温度を40℃、反応液中に過酸化水素を20mMとなるように添加した。活性の値は対照を100%とした相対活性で示した。相対活性の値を示す表2から明らかな通り、コントロール(野生型)に比べ、全ての突然変異体に関して酸化剤存在下での活性レベルは優れていた。
突然変異プルラナーゼの粗酵素液を10mM Tris−HClpH8で希釈し、各突然変異体の活性を酸化剤(H2O2)の存在下及び対照として酸化剤の非存在下で測定した。活性は実施例4に記載の通りに反応したが、反応温度を40℃、反応液中に過酸化水素を20mMとなるように添加した。活性の値は対照を100%とした相対活性で示した。相対活性の値を示す表2から明らかな通り、コントロール(野生型)に比べ、全ての突然変異体に関して酸化剤存在下での活性レベルは優れていた。
実施例6
443位のMetを他のアミノ酸に置換した突然変異プルラナーゼの粗酵素液を10mM Tris−HClpH8で希釈し、対応pHを4と10の間の指定のpHに調製した活性測定反応液を用いて、実施例4に記載の通り酵素活性を測定した。活性の値は最も高い活性を示した値を100%とした相対活性で示した。各反応pHに対応する相対活性の値を示す図3から明らかな通り、コントロール(野生型)のpH8.0に比べ、突然変異体の至適pHはM443A,M443N,M443R変異体のpH6.2近傍、M443E,M443I,M443S,M443V変異体のpH7.1近傍の酸性側から、M443L変異体のpH8.8近傍のアルカリ側まで様々な値を示すことが示された。
443位のMetを他のアミノ酸に置換した突然変異プルラナーゼの粗酵素液を10mM Tris−HClpH8で希釈し、対応pHを4と10の間の指定のpHに調製した活性測定反応液を用いて、実施例4に記載の通り酵素活性を測定した。活性の値は最も高い活性を示した値を100%とした相対活性で示した。各反応pHに対応する相対活性の値を示す図3から明らかな通り、コントロール(野生型)のpH8.0に比べ、突然変異体の至適pHはM443A,M443N,M443R変異体のpH6.2近傍、M443E,M443I,M443S,M443V変異体のpH7.1近傍の酸性側から、M443L変異体のpH8.8近傍のアルカリ側まで様々な値を示すことが示された。
実施例7
突然変異プルラナーゼの粗酵素液を、0.2重量%のwfk モデル漂白剤配合洗剤(Institut For Applied Research Ltd.;IEC-436)中に10倍希釈になるように添加し、30℃でインキュベートした。様々な突然変異プルラナーゼの活性を120分間追跡し、実施例4に記載の通りに反応したが、反応温度を40℃で行なった。
インキュベーション中の残存活性を表3に示す(“0”は洗剤へ添加後の最初の測定である)。表3から明らかな通り、120分間処理においてコントロール(野生型)の67%に対し、M443A,M443E,M443L,M443S変異体の安定性は83〜96%の値を示しており、コントロールに比べ、洗剤中の安定性は全ての突然変異体に関して優れていた。
突然変異プルラナーゼの粗酵素液を、0.2重量%のwfk モデル漂白剤配合洗剤(Institut For Applied Research Ltd.;IEC-436)中に10倍希釈になるように添加し、30℃でインキュベートした。様々な突然変異プルラナーゼの活性を120分間追跡し、実施例4に記載の通りに反応したが、反応温度を40℃で行なった。
インキュベーション中の残存活性を表3に示す(“0”は洗剤へ添加後の最初の測定である)。表3から明らかな通り、120分間処理においてコントロール(野生型)の67%に対し、M443A,M443E,M443L,M443S変異体の安定性は83〜96%の値を示しており、コントロールに比べ、洗剤中の安定性は全ての突然変異体に関して優れていた。
実施例8
実施例2に従って443位のMetをLeuに変換した変異プルラナーゼM443Lの557位のアミノ酸残基を、アラニン残基以外のアミノ酸に置換した。プラスミドpUPSPULの443位MetがLeuに変換されたプラスミドPUPSLを鋳型とし、プライマー5と6を用いて、Transformer TM Site-Directed Mutagenesis Kitにより557位にアンバー変異を導入した。次に得られた557位にアンバー変異の入った変異プラスミドPUPSLAを鋳型として、プライマー3と7を用いて、プルラナーゼの443位のLeuへの変異に加えて、557位のアラニン残基の種々のアミノ酸残基への置換を導入した。変異導入処理した反応液を用いて大腸菌HB101株を形質転換した。得られた形質転換体を実施例1と同様に解析し、プルラナーゼのアミノ酸配列の443番目の位置がLeuに置換した変異に加えて、557位のアラニン残基の種々のアミノ酸残基に置換したプラスミドを単離した。また、DNAシークエンスにより導入したアミノ酸の確認を行なった。
実施例2に従って443位のMetをLeuに変換した変異プルラナーゼM443Lの557位のアミノ酸残基を、アラニン残基以外のアミノ酸に置換した。プラスミドpUPSPULの443位MetがLeuに変換されたプラスミドPUPSLを鋳型とし、プライマー5と6を用いて、Transformer TM Site-Directed Mutagenesis Kitにより557位にアンバー変異を導入した。次に得られた557位にアンバー変異の入った変異プラスミドPUPSLAを鋳型として、プライマー3と7を用いて、プルラナーゼの443位のLeuへの変異に加えて、557位のアラニン残基の種々のアミノ酸残基への置換を導入した。変異導入処理した反応液を用いて大腸菌HB101株を形質転換した。得られた形質転換体を実施例1と同様に解析し、プルラナーゼのアミノ酸配列の443番目の位置がLeuに置換した変異に加えて、557位のアラニン残基の種々のアミノ酸残基に置換したプラスミドを単離した。また、DNAシークエンスにより導入したアミノ酸の確認を行なった。
実施例9
443位がLeu、557位が種々のアミノ酸残基に置換した突然変異プルラナーゼの粗酵素液を実施例3と同様に調製した。得られた粗酵素液を用いて実施例6と同様に種々のpHでのプルラナーゼ活性を測定した。各反応pHに対応する相対活性を示す図4から明らかな通り、コントロール(野生型)に比べて、突然変異体の最適反応pHは酸性側からアルカリ側まで様々な値を示すことが示された。図中の表記、例えば、M443L/A557Cは、443位のMetがLeuへの置換に加えて、557位のAlaがCysへの置換が導入されている二重変異プルラナーゼを示している。
443位がLeu、557位が種々のアミノ酸残基に置換した突然変異プルラナーゼの粗酵素液を実施例3と同様に調製した。得られた粗酵素液を用いて実施例6と同様に種々のpHでのプルラナーゼ活性を測定した。各反応pHに対応する相対活性を示す図4から明らかな通り、コントロール(野生型)に比べて、突然変異体の最適反応pHは酸性側からアルカリ側まで様々な値を示すことが示された。図中の表記、例えば、M443L/A557Cは、443位のMetがLeuへの置換に加えて、557位のAlaがCysへの置換が導入されている二重変異プルラナーゼを示している。
Claims (8)
- 以下の(a)又は(b)の特徴を持つ変異プルラナーゼ
(a)配列番号1のアミノ酸配列の557位のアラニン残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。
(b)配列番号1の保存IV領域と50%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつプルラナーゼ活性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の557位のアラニン残基と相同位のアミノ酸残基が欠失又はCys、Phe、Gly、Leu、Pro、Ser、ValもしくはTrpに置換されている変異プルラナーゼ。 - 請求項1記載の変異プルラナーゼをコードする遺伝子。
- 請求項2記載の遺伝子を含有するベクタープラスミド。
- 請求項3記載のベクタープラスミドで形質転換された又は染色体相同組換えされた形質転換体細胞。
- 請求項1記載の変異プルラナーゼを含有する洗浄剤組成物。
- さらに、α−アミラーゼ、イソアミラーゼ、ネオプルラナーゼ、α−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ、プロトペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、パーオキシダーゼ、ラッカーゼ及びカタラーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素を含有する請求項5記載の洗浄剤組成物。
- 請求項1記載の変異プルラナーゼを含有する澱粉糖化用組成物。
- さらに、グルコアミラーゼ、マルターゼ、α−アミラーゼ、イソアミラーゼ及びネオプルラナーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素を含有する請求項7記載の澱粉糖化用組成物。
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US9969996B2 (en) | 2006-08-04 | 2018-05-15 | Amano Enzyme Inc. | Method for making mutated pullulanase enzyme, mutated pullulanase enzyme, and microorganism expressing the same |
CN108374004A (zh) * | 2018-05-29 | 2018-08-07 | 天津中天精科科技有限公司 | 一种普鲁兰酶及其应用 |
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-
2006
- 2006-01-16 JP JP2006007214A patent/JP2006174841A/ja active Pending
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