JP2006174815A - 保水性土壌組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 食肉産業に由来する産業廃棄物としての牛糞および火力発電産業に由来する産業廃棄物としてのクリンカを植物の生育に適する保水性土壌組成物とする。
【解決手段】 短時間で多量の水分を吸収するクリンカ20〜60重量%と、長時間を要して多量の水分を吸収する高吸水性ポリマ0.5〜10重量%と、長期間を要して肥料成分を徐々に放出する牛糞粒30〜70重量%を配合し、植物の生育に必要な保水性、排水性、肥料成分、根系の支持力の各要素をバランスさせる。
【選択図】 なし
【解決手段】 短時間で多量の水分を吸収するクリンカ20〜60重量%と、長時間を要して多量の水分を吸収する高吸水性ポリマ0.5〜10重量%と、長期間を要して肥料成分を徐々に放出する牛糞粒30〜70重量%を配合し、植物の生育に必要な保水性、排水性、肥料成分、根系の支持力の各要素をバランスさせる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、単一又はそれに近い特定の性質に偏った性質を有するために、植物の生育に適さないこととなる数種の産業廃棄物、その他の補助的な材料を適切な配合比率によって混ぜ合わせることによって、植物の生育に極めて好適な特性を発揮するようにした保水性土壌組成物に関する。
各種の産業部門に分化した今日の産業活動は、何らかの産業廃棄物を排出する弊害を伴なって成り立っている。産業廃棄物の処理には、海洋投棄と、地上または地中投棄と、再処理との3種類の選択肢があるのみである。そして、産業活動の一部は、幸いにもそのまま地上に廃棄することによって最終的に土壌に還元することができる性質の産業廃棄物を排出する。
ただし、最終的に土壌に還元することができるということは、そのまま植物の育成に適するということを意味しない。各産業部門に分化した産業活動は、一般に植物の生育に対しては、特定の性質に偏り過ぎた物質を排出するからである。したがって、このような産業廃棄物は、最終的に土壌に還元することができるとはいっても、特定の場所に継続して大量に廃棄するならば、その土地の性質を偏らせ、不毛地を拡大する公害を発生させる。
継続して多量に排出される産業廃棄物の有効利用は、公害の防止および資源の有効利用の観点から、企業目的としても着目されている。土壌に還元できる産業廃棄物としては、例えば、養鶏、養豚、肉牛、乳牛等の糞、植物性のチップ、浄水場沈殿土、石材粉、珪藻土粉、火力発電産業のクリンカ等、その種類は多岐に及ぶ。
上記産業廃棄物のいずれかに属する物の利用技術または処理技術および関連技術としては、次のような例がある。
特開平7−39246号公報 特開平9−142976号公報 特開2002−29871号公報
家畜等の糞尿に属する産業廃棄物には、植物に生育に必要とされる成分が多く含まれていることから、その一部は、固形肥料に加工して利用されることが多い(特許文献2,3参照)。有機肥料は、優れた肥料ではあるが、遅効性の特性と人工的促成栽培による短期収穫サイクルとのミスマッチング、取扱い性や付近住民への臭害の発生等の面においての欠点もあり、供給過剰の状態にある。また、産業廃棄物単独ではなく、産業廃棄物の加工物に性質改良材料としての高吸水性ポリマを配合することによって産業廃棄物を利用可能にしようとする発想もみられる(特許文献1参照)。
上記利用例に限らず、環境に対する配慮および保護の意識の覚醒に伴ない、各種の産業廃棄物の利用技術の模索がなされており、本発明もその一環を担うものである。しかしながら、産業廃棄物中には、継続的に大量に排出されているが利用が進んでいないものも多い。牛糞およびクリンカがこのような産業廃棄物に属する。
牛糞は、言うまでもなく食肉産業および乳業から排出され、クリンカは、主に製鉄業や火力発電所から排出される。発明者らの着目したところに従い、この両者は、対照的な性質を示す。反芻動物の糞である牛糞は、植物の生育に有用な肥料成分を多く含有するが、馬糞と異なり極めて排水性が悪い。すなわち、牛糞を特定箇所に継続して投棄すると、その場所は、泥沼状態となる。一方、クリンカは、多孔質の物質であって一時的には極めて高い吸水能力を示すが、肥料成分には乏しい。また、排水性が過大であるために吸水した水分を短時間内に喪失してしまう。すなわち、クリンカを特定箇所に継続して投棄すると、その場所は、がれきの荒れ地状態となる。
本発明は、利用が進展しない産業廃棄物である牛糞とクリンカの性質に着目し、両者を適切な加工の下で適切な配合比率で配合することによって、両者の長所を生かしながら両者の欠点を相殺するとともに、それによっても不足する性質に限って人工的な材料によって最小限度補足することで、従来利用が困難であった牛糞およびクリンカを植物の生育に適した土壌として大量に利用することを可能とした保水性土壌組成物を提供することを目的とする。
この目的を達成するための手段として、本発明は、次のような構成を採用する。
本発明の請求項1に記載の保水性土壌組成物は、短時間で多量の水分を吸収する急速保水部材と、長時間を要して多量の水分を吸収する遅速保水部材と、長期間を要して肥料成分を徐々に放出する徐放性固形肥料とを配合して組成され、この際、急速保水部材として粒度を一定範囲に選定したクリンカを使用し、遅速保水部材として高吸水性ポリマの粉粒体を使用し、徐放性固形肥料として牛糞を乾燥造粒した牛糞粒を使用し、配合後の全組成物中にクリンカが20〜60重量%含まれるとともに、高吸水性ポリマが0.5〜10重量%含まれ、徐放性固形肥料が30〜70重量%含まれることを特徴とする。
この構成に係る保水性土壌組成物は、まず、急速保水部材であるクリンカが、その組成が多孔質であることよって、散水時または降雨時の水分を多量に吸収する。吸収に要する時間は短時間であり、散水作業は極く短時間に省略される。また、短時間の降雨を捉えて吸水することもできる。一方、遅速保水部材である高吸水性ポリマは、散水作業等が終了した後、水分を貯留したクリンカの水分を吸収し、保水する。つまり、ここでは、吸水性に優れたクリンカと保水性に優れた高吸水性ポリマとによる役割分担が実現されるのである。なお、徐放性固形肥料である牛糞粒は、造粒された際の形状を維持しながら、この時点で十分に水を含んだ状態となる。クリンカに残留する水分、高吸水性ポリマに貯留された水分および牛糞粒に含まれた水分は、牛糞粒から徐々に放散される肥料成分を溶かし出しながら長期間継続して植物の根系に供給される。
本発明の請求項2に記載の保水性土壌組成物は、配合後の全組成物中に高吸水性ポリマが5〜10重量%含まれることを特徴とする。
この構成に係る保水性土壌組成物は、乾燥地の緑化に寄与することができる。乾燥地を形成する土壌の一般的な特徴は、土壌の組成が砂地成分に偏っており、急速保水性能には優れるが、排水性が過大であるために長期的な保水力がないと言う点にある。また、砂地成分は、降雨時に流水に伴なって移動するため、植物の生育に適した土壌が形成され難いという特質を有する。また、砂地における過大な排水性は、肥料成分を流れ去る水分とともに短期間内に流失してしまう。高吸水性ポリマを5〜10重量%含む保水性土壌組成物が砂地に供給されると、クリンカが噛み合って砂地の流失を阻止するとともに、これによってクリンカと砂地が協働して急速保水部材として機能することができる。クリンカとクリンカによって拘束された砂地に吸収された寸分は、所定時間を要して多目に設定した高吸水性ポリマによって吸収され保水される。高吸水性ポリマに保水された水分は、牛糞粒の肥料成分を溶かし出しながら徐々に植物に供給される。
本発明の請求項3に記載の保水性土壌組成物は、配合後の全組成物中にクリンカが50〜60重量%含まれることを特徴とする。
この構成に係る保水性土壌組成物は、湿地改良に寄与することができる。湿地における土壌組成の特徴は、一般に、排水性の悪い泥土質に覆われているということである。泥土は、流動性を有し、植物の根系に対する支持力に乏しく、主根を有しない湿地植物しか生育することができない。クリンカを多目に設定した保水性土壌組成物が泥土質に供給されると、クリンカが泥土を噛み込みながら噛み合い、泥土の流動を停止させ、植物の根系を支持するとともに、クリンカを介しての水分の排出を可能にする。含まれる高吸水性ポリマは、湿地の排水性が高まって干上がった際に適度の水分を補給し、泥土の粉体化を阻止する。牛糞粒は、形成された新たな土壌環境に生育する植物に肥料成分を供給することができる。
本発明の請求項4に記載の保水性土壌組成物は、請求項1ないし請求項3のいずれが1項に記載の保水性土壌組成物に対し、植物の根系を支持するための土質材料を加えることを特徴とする。
クリンカと高吸水性ポリマと牛糞粒とを配合してなる保水性土壌組成物は、自然の土壌に加えて使用することを主な使用形態とするのに対して、土質材料を含む本発明の保水性土壌組成物は、そのままの状態で使用することを目的としている。すなわち、クリンカと高吸水性ポリマと牛糞粒のみの場合は、全材料が粒状であるので崩壊性が高く、背丈の高い植物の根系を支持する力に乏しい。そこで、これに土質材料を加えることによって根系を押さえ込む重量と土塊として固まる力を付与することができるので、保水性土壌組成物をそのままの配合で直接に植物植栽土としてポット栽培等に使用することができる。
本発明の請求項5に記載の保水性土壌組成物は、配合される高吸水性ポリマが、デンプン系の高吸水性ポリマであることを特徴とする。
デンプン系の高吸水性ポリマは、各種の高吸水性ポリマの中でも生分解性に優れていることによる採用である。これによって保水性土壌組成物の使用後、クリンカや牛糞粒の崩壊とともに高吸水性ポリマも分解され、環境に将来的な負担を残すことなく消失させることができる。
本発明に係る高吸水性ポリマは、短時間で多量の水分を吸収する急速保水部材としてのクリンカと、長時間を要して多量の水分を吸収する遅速保水部材としての高吸水性ポリマと、長期間を要して肥料成分を徐々に放出する徐放性固形肥料としての牛糞粒を適切な比率で配合して組成することによって、または、さらに土質材料を加えることによって、植物の生育に適する土壌に要求される、排水性、保水性、肥料成分、根系の支持力の要素を人為的にバランスさせることができるので、従来、利用が進展していなかった牛糞およびクリンカを植物の植栽用土壌として、および土地改良用土壌として大量に有効利用することができるという効果を奏する。
以下、本発明に係る保水性土壌組成物の実施例を説明する。
(実施例1)徐放性固形肥料は、乳産業から排出された含水率約20重量%の牛糞を乾燥造粒機にかけて長径7〜10mm、短径5〜7mmの乾燥牛糞粒とした。また、急速保水部材には、火力発電所から排出されたクリンカを破砕機にかけて破砕し、篩選別によって粒径5〜8mmの範囲のものを選択した。遅速保水部材には、生分解性に優れるデンプンポリアクリル酸塩系の高吸水性ポリマの粉粒体を選定した。なお、これらの素材は、以下の各実施例において共通である。
上記クリンカ40重量%、牛糞粒59重量%、高吸水性ポリマ1重量%を混練機で混合し、保水性土壌組成物とした。この際、クリンカは比重が小さいため見かけ上の配合比率はこれより大きく見えることとなる。この保水性土壌組成物を一般畑地の補充土として、畑地の表層に約10cmの厚さに敷き詰めて野菜栽培に使用した。なお、保水性土壌組成物は、敷地土に混ぜ合わせることなくそのまま使用した。通常は、敷地土に混ぜて使用するが、混ぜると混ぜ加減によって観察結果にばらつきが発生すると考えられるからである。
上記保水性土壌組成物において葉野菜類は、極め良好に生育することが判明した。排水性が十分に確保されながら、つまり、根腐れ等を発生させることなく水遣り手数を半分以下に抑えることができる。また、1収穫期においては、肥料を補充する必要が無いことが判明した。ただし、植物の根系に対する支持力には乏しいので、背丈を伴なうトマト等を栽培する場合には、敷地土と混ぜ合わせることが必要である。
(実施例2)クリンカ50重量%、牛糞粒45重量%、高吸水性ポリマ5重量%の配合比率による保水性土壌組成物を調製し、乾燥地における大豆の発芽実験をした。この配合比率の特徴は、高吸水性ポリマの配合比率が大きいことである。また、クリンカの配合比率は、砂地の移動を阻止する部材としての設定である。
乾燥した浜砂地に上記保水性土壌組成物を約10cmの厚さに敷設して試験地とし、敷設しない隣接地を比較地とした。比較地の大豆は、砂地に窪みを設け、また試験地の大豆は、平坦な状態でいずれも約2cmの掛け土を施し、水遣りは、夕刻1回土壌に一応の水分が浸透する最短時間とした。
この結果、試験地の大豆は、4日後に発芽し、比較地の大豆は、全く発芽しなかった。乾燥時期の浜砂地では、夕刻に付与した水分が翌日の午前中の間に完全に失われるのに対し、試験地においては、高吸水性ポリマが次回の水遣りまでの十分な水分を保水する効果が確認された。また、比較地の砂地は、多目の散水によって簡単に流れ出すが、試験地の保水性土壌組成物は、全く流れず、敷地である浜砂の移動を阻止する機能を十分に発揮している。すなわち、この配合比率による保水性土壌組成物は、乾燥地の緑化用途に大量に使用することができるのである。
(実施例3)クリンカ60重量%、牛糞粒39重量%、高吸水性ポリマ1重量%の配合比率による保水性土壌組成物を調製し、これを湿地の窪んでいる箇所に大量に投入して隣地レベルに均して湿地改良試験を行なった。
湿地に供給される水源を絶たない限りは、水分の浸潤は避けられない状況である。しかし、敷地の泥土が普通に歩行できる程度にまで締まる効果が認められる。大量のクリンカが泥土を噛み込んで互いに噛み合うためである。したがって、さらにこの保水性土壌組成物をさらに投入し、隣地レベルよりも幾分高く整地するならば、肥料成分に富み、しかも、水遣り不要な良好な耕地に改良することができると考えられる。
(実施例4)クリンカ40重量%、牛糞粒、59.5重量%、高吸水性ポリマ0.5重量%の配合比率の保水性土壌組成物を調製し、この全量に対して土質材料として約20重量%の鹿沼土を混ぜ合わせて試験土とするとともに、鹿沼土のみのものを比較土としてポット栽培試験を行なった。試験植物には、ホウセンカの苗を使用した。試験は、ホウセンカの苗を試験土と比較土のポットに植えて十分に活着するまで水遣りをし、生育状態を観察後、水遣りを停止する方法による。
過剰な水遣りに対しては、いずれのポットも良好な排水性を示すが、比較土の排水性は徐々に低下して来る。これは、崩れた泥成分がポットの底側に水を疎通し難い泥土層を形成するからである。一方、試験土の排水性は、低下しない。これは、クリンカがポットの鉢底材料として機能するからである。また、活着後の苗は、当初はいずれも良好に生育するが、試験土の苗が順調に生育を持続するのに対して、比較土の苗は、急速に成長が鈍ってくる。比較土に含まれていた肥料成分が途絶えた症状である。
次いで、水遣りを停止し、両者の保水性を観察した。ポットは、室内の窓際で直射日光に当たらない場所に配置されている。比較土では、水遣り停止後3日目に苗の萎れが観察されるのに対し、試験土では6日目に至って萎れが観察される。すなわち、試験土は、肥料遣りや水遣りの手数を省きながらポット栽培を楽しむことができるのである。また、この期間は、高吸水性ポリマの配合比率を増やせばさらに長期間化することができると考えられる。
なお、本発明の保水性土壌組成物は、栽培する植物の固有性に応じて任意の材料を加えて使用することができるのは無論である。例えば、一般的には、ゼオライト、ベントナイト、パーライト、シリカ、珪藻土、植物炭化物等が混ぜられるようである。また、高吸水性ポリマ材料には、上記、デンプンポリアクリル酸塩系の材料以外のものを使用しても同等の効果が得られる。
Claims (5)
- 短時間で多量の水分を吸収する急速保水部材と、長時間を要して多量の水分を吸収する遅速保水部材と、長期間を要して肥料成分を徐々に放出する徐放性固形肥料とを配合して組成され、
前記急速保水部材として粒度を一定範囲に選定したクリンカを使用し、前記遅速保水部材として高吸水性ポリマの粉粒体を使用し、前記徐放性固形肥料として牛糞を乾燥造粒した牛糞粒を使用し、配合後の全組成物中にクリンカが20〜60重量%含まれるとともに、高吸水性ポリマが0.5〜10重量%含まれ、徐放性固形肥料が30〜70重量%含まれることを特徴とする保水性土壌組成物。 - 配合後の全組成物中に高吸水性ポリマが5〜10重量%含まれることを特徴とする乾燥地緑化に適した請求項1に記載の保水性土壌組成物。
- 配合後の全組成物中にクリンカが50〜60重量%含まれることを特徴とする湿地改良に適した請求項1に記載の保水性土壌組成物。
- 請求項1ないし請求項3のいずれが1項に記載の保水性土壌組成物に対し、植物の根系を支持するための土質材料を加えてなるポット栽培に適した保水性土壌組成物。
- 前記高吸水性ポリマがデンプン系の高吸水性ポリマであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の保水性土壌組成物。
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JP2007106808A (ja) * | 2005-10-11 | 2007-04-26 | Nishi Nippon Gijutsu Kaihatsu Kk | 水底土壌改良剤並びにそれによる水底土壌の改良方法 |
US20110314882A1 (en) * | 2008-10-24 | 2011-12-29 | DuluxGroup (Australia) Pty. Ltd. | Fertiliser composition |
CN103931393A (zh) * | 2014-04-11 | 2014-07-23 | 桂林市林业科学研究所 | 一种利用食用菌废料培育曼地亚红豆杉袋苗的方法 |
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- 2004-12-20 JP JP2004382728A patent/JP2006174815A/ja active Pending
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