JP2006173456A - 難焼結性拘束用グリーンシート及び多層セラミック基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 難焼結性拘束用グリーンシートの全体積に対する有機物(ここで有機物とは有機バインダと可塑剤とする)と無機粒子の体積含有量が、当該グリーンシートの前記未焼結多層セラミック基板との密着面側の方が自由面側よりも多いように、例えば難焼結性拘束用グリーンシートの密着面から例えば全厚みの20%以内における領域の有機物と無機粒子の体積含有量が、自由面から例えば全厚みの20%以内における領域のそれよりも10〜50%多いように有機物の含有量に傾斜を持たせた難焼結性拘束用グリーンシートである。
【選択図】 図1
Description
多層セラミック基板としては、アルミナ焼結体からなり、表面または内部にタングステン、モリブデン等の高融点金属からなる配線層が形成された絶縁基板が現在も広く用いられている。
しかし、従来のタングステン、モリブデン等の高融点金属は導体抵抗が大きく、高周波領域の損失が大きいため、低抵抗配線が必要な部品や高周波用部品では使用することが不可能であった。そこで、前記タングステン、モリブデン等の金属に変わって銅、銀、金等の低抵抗金属を使用することが可能な、低温焼結セラミック基板が、特に携帯電話用部品を中心に市場が広がっている。低温焼結セラミック基板は、前記融点が低い低抵抗金属と同時に焼結するため、800〜1000℃程度の低温で焼結、緻密化が必要である。以下、低温焼結セラミックス(LTCC:Low Tempereture Cofired Ceramics)を用いた多層セラミック基板をLTCC基板と称することがある。
この収縮率のばらつきの問題に対応するため、あるグリーンシートのロットについて、先行で試作し、収縮率などにマッチングするような、内部や表層の配線パターンを選択する必要性が生じている。また、反りの問題に対しては、収縮率がグリーンシートと異なるセラミックペーストを積層体の表裏、所定の位置、範囲に印刷塗布した後、同時焼結し、反り量を低減する対策を講じている。
(a)揮発し得る固体ポリマーバインダ中に分散させたセラミック固体と、焼結性無機バインダとの微粉砕粒子の混合物からなる未焼結セラミック体を準備し、
(b)未焼結セラミック体の表面に可撓性強制層を、前記強制層を未焼結セラミック体に密接に一致させるように適用し、ここで前記強制層は揮発し得るポリマーバインダ中に分散させた非金属無機固体の微粉砕粒子からなり、セラミック体の焼結性無機バインダの強制層への浸透は50μm以下であり、
(c)ポリマーバインダをセラミック体と強制層の両方から揮発させ、強制層中で相互連結された多孔性を形成させ、そして無機バインダをセラミック体中で焼結するに十分な温度と時間で集成体を焼結し、
(d)焼結済み集成体を冷却し、そして
(e)多孔質強制層を焼結済みセラミック体から除く各工程から順次なるセラミック体の焼結の間X−Y収縮を減少させる方法。
より具体的には前記難焼結性拘束用グリーンシートの全体積に対する前記有機物と無機粒子の体積含有量は、当該グリーンシートの前記未焼結多層セラミック基板との密着面側の方が自由面側よりも多いことが望ましい。
このとき、前記難焼結性拘束用グリーンシートの密着面近傍、例えば全厚みの20%における領域の有機物と無機粒子の体積含有量が、自由面近傍、例えば全厚みの20%における領域のそれよりも10〜50%多いことが望ましい。より望ましくは30〜40%である。対比する領域は限定的なものではないが、それぞれ密着面と自由面から全厚みの20%程度を目処としている。
また、拘束用グリーンシートの密着面は、キャリアフィルム(PETフィルム等)上に形成された接触面側を用いることが望ましい。
このとき、前記難焼結性拘束用グリーンシートを構成する無機粒子の平均粒径が、前記基体用グリーンシートを構成するセラミック粉の平均粒径より大きいものを用いることが望ましく、さらに言えば難焼結性拘束用グリーンシートを構成する無機粒子の平均粒径が、前記基体用グリーンシートを構成するセラミック粉の平均粒径の1.5〜7倍であることが良い結果を招来する。より望ましくは2〜5倍である。
(1)難焼結性拘束用グリーンシート(単に拘束用グリーンシートと言うことがある。)に含まれる有機物(ここで有機物とは有機バインダと可塑剤とする)と無機粒子(アルミナ等のセラミック粉)の体積含有量について考察した結果、未焼結LTCC基板との密着面の、有機物の量と未焼結LTCC基板を拘束する無機粒子との合計の含有量が、自由面のそれに比べてより多い関係にすること、即ち、グリーンシートの厚さ方向で有機物と無機粒子の含有率が傾斜しており、密着面側の体積含有率が高いことが有効であることを知見した。図1は本発明に係る難焼結性拘束用グリーンシートの断面を示す概念図である。未焼結LTCC基板との密着面側61は無機粒子を有機物が包み込むようにして連鎖しており未焼結LTCC基板の界面80まで密接な関係にある。一方、自由面側62は有機物の量が少なく細いつながりでしかなく空孔も多い。このように未焼結LTCC基板に密着する側において有機物および無機粒子の含有量が自由面側より多いということは、自由面側での空隙量が密着面側に比べて多いことと同義である。密着面の有機物および無機粒子が、LTCC基板の拘束に寄与すると同時に、自由面での有機物および無機粒子の体積含有率は比較的低いため、すなわち空隙量が多いため、脱バインダ時には、拘束用グリーンシート自身の有機物の熱分解ガスや酸化により発生する二酸化炭素の蒸散が、空隙を通過することが容易となり、脱バインダには有効に働くのである。ここで、脱バインダとは、有機バインダだけではなくて可塑剤も含めた熱分解、酸化を意味している。
以上により収縮抑制効果を維持しつつ脱バインダが良好に行われ、反りや剥離の問題が回避できる。
図2において、未焼結LTCC基板10は集合基板であり、上下面に拘束用グリーンシート6を密着した状態を示している。LTCC基板は、Agを主体とするペーストにより内部電極2を印刷した複数の基板用グリーンシート8を積層してなる。各層の内部電極2はグリーンシート8に設けた貫通孔に導体を充填したビア電極3により接続されている。基板10の上面及び下面(及び必要に応じて側面)に、外部電極4が形成されている。搭載部品と回路基板との接続に側面電極を設けることもあるが、最近ではビア電極3を基板10の下面に導いて、ボール半田で接続するBGAやクリーム半田で接続するLGA接続が行われている。いずれにしても、基板10の下面にはグランド電極や回路基板に接続するための入出力端子としての外部電極4を形成する必要がある。基板10の上面には、図4に示すように、チップコンデンサ7a、PINダイオード7b、半導体素子7c等のチップ部品と内部電極2とを電気的に接続するランド電極としての外部電極4、又は他の素子に接続するための配線として外部電極4が形成される。
多層セラミック基板1個はせいぜい数ミリ角の大きさであるので、通常は多数の多層セラミック基板をチップとして有する100〜200 mm角程度の大型の集合基板を形成し、最終工程で個々のチップに分割している。従って、本明細書において「多層セラミック基板」という場合、個々の多層セラミック基板のみならず、分割前の集合基板をも含む。
基体用グリーンシートは、低温焼結セラミック材料からなる。例えば、主成分がAl,Si,Sr,Tiの酸化物で構成され、それぞれAl2O3換算で10〜60質量%、SiO2換算で25〜60質量%、SrO換算で10〜50質量%、TiO2換算で20質量%以下(0を含む)からなり、900℃以下の温度でも焼結できる材料である。これにより、銀や銅、金といった高い導電率を有する金属材料を電極用導体として用いて一体焼結を行うことができる。
さらに主成分100質量%に対して、副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうち、Bi2O3換算で0.1〜10質量%、Na2O換算で0.1〜5質量%、K2O換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%の少なくとも1種以上を含有させることが好ましい。これらの副成分は、仮焼工程においてAl2O3、TiO2以外の成分がガラス化する際、焼結助剤として働き、ガラスの軟化点を低下させる効果があり、より低温で収縮を開始する材料が得られる。
また、更に副成分としてCu、Mn、Agのうち、CuO換算で5質量%以下(0を含む)、MnO2換算で5質量%以下(0を含む)、Agを5質量%以下(0を含む)のうち少なくとも1種以上を含有させることが好ましい。これらの副成分は、主に焼結工程において結晶化を促進する効果があり、焼結工程において1000℃以下の焼結温度でQの高い誘電特性を得ることを可能とするものである。
SiがSiO2換算で25質量%より少ない場合、SrがSrO換算で10質量%より少ない場合、いずれも1000℃以下の低温焼結では、焼結密度が十分上昇しないために、磁器が多孔質となり、吸湿等により良好な特性が得られない。AlがAl2O3換算で10質量%より少ない場合、良好な高強度が得られない。また、AlがAl2O3換算で60質量%より多い場合、SiがSiO2換算で60質量%より多い場合、SrがSrO換算で50質量%より多い場合、やはり1000℃以下の低温焼結では、焼結密度が十分上昇しないために、磁器が多孔質となり、吸湿等により良好な特性が得られない。
また、TiがTiO2換算で20質量%より多いと、1000℃以下の低温焼結では、焼結密度が十分上昇しないために、磁器が多孔質となり、吸湿等により良好な特性が得られない。同時に、磁器の共振周波数の温度係数がTiの含有量増加と共に大きくなり良好な特性が得られない。Tiが含有してない場合の磁器の共振周波数の温度係数τfは−20〜−40ppm/℃に対し、Tiの配合量を多くしていくにつれて増加し、τfを0ppm/℃に調整することも容易である。
CuとMnは、焼結工程において誘電体磁器組成物の結晶化を促進する効果があるが、収縮時のガラスの流動性による緻密化とのバランスから、それぞれの添加量を適正化を行う。それぞれ、CuO換算、MnO2換算で、5質量%を超えると低温焼結性が損なわれる。
Agは、ガラスの軟化点を低下させると同時に、結晶化を促進する効果があり、低温焼結を達成するために添加されるが、5質量%を超えると誘電損失が大きくなり過ぎ、実用性がない。このため、Agは5質量%以下の添加が好ましい。
尚、さらに、ZrO2換算で0.01〜2質量%のZrを含有していると機械的強度の向上が見られるので望ましい。
上記主成分及び副成分の粉末に蒸留水を加えて、ボールミルで湿式混合し、得られたスラリー100質量%に対して1質量%のポリビニルアルコール(PVA)を加えて攪拌した後、これをスプレードライヤーで加熱乾燥し、直径が50〜100μm程度の顆粒を得る。この顆粒をセラミックケースに所定量を量り取り、連続炉に投入し、最高温度800℃で1時間保持し仮焼粉を得る。この仮焼粉にエタノール及びブタノールの混合溶剤を加えて、ボールミルで粉砕する。20時間で平均粒径1μmの微紛を含むスラリーが得られる。前記スラリーに、有機バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)を仮焼粉100質量%に対して15質量%、可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)を10質量%添加して、攪拌し十分溶解、混合を行う。
有機バインダは、グリーンシートの強度、穴あけ性、圧着性、寸法安定性等を調整するために適宜選定する。好ましい有機バインダは、例えばポリビニルブチラール樹脂及びポリメタクリル樹脂である。有機バインダの添加量はグリーンシート全体の5質量%以上、好ましくは10〜20質量%である。
可塑剤としてブチルフタリルグリコール酸ブチル(BPBG)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)等を添加するのが好ましく、また溶媒としてエタノール、ブタノール、トルエン、イソプロピルアルコール等を添加するのが好ましい。これらの原料をボールミル混合することにより、仮焼体微粉砕粉のスラリーを作製する。スラリーの均一性を向上させるために、必要に応じて分散剤を添加するのも効果的である。
スラリーを減圧下で脱泡するとともに、溶剤を一部蒸発させて粘度調整した後、ドクターブレード法によりキャリアフィルム上にシート状に成形する。キャリアフィルムとしては、機械的強度、表面平滑性等を考慮して、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムが好ましい。得られた基板用グリーンシートはキャリアフィルムごと所定の大きさに切断する。
上記基板用グリーンシートを十分に乾燥した後、ビアホール3を設け、Agを主体とする導体ペーストでビアホール3を充填し、さらにAgを主体とする導体ペーストを用いて内部電極パターン2を印刷する。それぞれ上面及び下面に位置する基板用グリーンシートに外部電極4のパターンを形成する。これらの基板用グリーンシートを積層した後、熱圧着する。グリーンシート積層体の厚さは、目的とするモジュールによるが、一般に1.0〜2.0 mmとするのが好ましい。
熱圧着条件は、50〜95℃の温度及び50〜200 kg/cm2(4.9〜19.6 Mpa)の圧力であるのが好ましい。外部電極4のパターンは熱圧着の後に形成しても良い。その後、基板チップのサイズに分割溝5を形成する。分割溝5を形成すると、拘束層の一部が溝内にも入り込み、拘束力が大きくなる効果がある。
拘束用グリーンシートは、例えば平均粒径2.5μmのアルミナ100質量%に対して、有機バインダとして5質量%のポリビニルブチラール(PVB)、可塑剤として3質量%のジオクチルフタレート(DOP)及び、エタノールとブチラールの混合溶剤を加えて、ボールミルで20時間分散する。得られたスラリーを減圧下で脱泡し、溶剤の一部を蒸発させて、粘度を8000〜10000cps(MPa・s)に調整した後、ドクターブレード法により、キャリアフィルム上に所定厚みのシート状に成形する。溶剤が乾燥した後、得られた拘束用グリーンシートは、キャリアフィルムより剥離後、所定の大きさに切断する。ここで、有機バインダおよび可塑剤の種類や添加量は、未焼結LTCC基板の有機バインダ、可塑剤との相性、即ち、化学的性質や構造が類似しているものが密着性の向上のために良く、出来れば同一のものを選ぶのが良い。
未焼結多層セラミック基板10の上面及び/又は下面に拘束層(拘束用グリーンシート)6を密着させて形成する。このとき、キャリアフィルムとの接触面が未焼結多層セラミック基板の表面に密着するように、未焼結多層セラミック基板の外部電極を含む上面及び/又は下面に積層し、熱圧着する。基板用グリーンシートの未焼結多層セラミック基板への熱圧着の条件は、50〜95℃の温度及び50〜200 kg/cm2(4.9〜19.6 MPa)の圧力である。基板用グリーンシートの未焼結多層セラミック基板への熱圧着の条件は、50〜95℃の温度及び50〜200 kg/cm2(4.9〜19.6 MPa)の圧力である。キャリアフィルムとの接触面では、拘束用グリーンシート中のバインダ及び可塑剤(有機物)が濃縮されている。そのため、キャリアフィルムとの接触面で未焼結多層セラミック基板に対する熱圧着時の密着力は大きく、かつ無機粒子も濃縮されているため、未焼結多層セラミック基板への拘束力も大きい。従って、拘束用グリーンシートのキャリアフィルムとの接触面を未焼結多層セラミック基板の表面に密着させると、有機物が濃縮していることによる拘束用グリーンシートと未焼結多層セラミック基板との密着力が大きく、かつ、無機粒子も濃縮しているため拘束力を十分に発揮保持することができる。
前記拘束層を備えた未焼結セラミック基板を、脱バインダで発生するガスが放散しやすいように、多孔質のアルミナ板上にセットし、連続炉で脱バインダと焼結を行う。先ず、バインダが熱分解を開始する200℃から、完了する600℃までは、発生するガスの圧力による、基板の剥離(デラミネーション)を防止するため、更にはバインダが炭化することで焼結時にガス化し、膨れの発生などの不具合を防止するため、1時間あたり10〜20℃の速度で昇温する。この時、有機バインダの分解・酸化の促進及び発生した分解ガスまたはCO2ガスの除去促進のため、十分な空気を供給及び排気を行う必要がある。600℃以上では、有機物は多くても0.5重量%以下になっている。600℃から、1時間あたり200℃の昇温速度で900℃まで昇温し、2時間保持することで、焼結を行う。
本発明での組成では、800℃近傍から、ガラスの流動性による緻密化が開始され、900℃達成時には、ほとんど緻密化が終了している。900℃の保持によりガラスが結晶化し、機械的強度や高周波特性が得られるようになる。900℃保持後は、毎時200〜300℃の速度で降温し、焼結体が得られる。
尚、焼結温度が800℃未満であると、焼結時間を長くしても基板の緻密化が困難であり、また930℃を超えるとAgの融点が960℃であるため焼結が進みすぎて目的とするパターニングが不可能となる。
焼結後、多層セラミック基板(特に外部電極)の表面に付着している無機粒子(アルミナ粒子)を除去する。これは、焼結した多層セラミック基板を超音波洗浄槽の水の中に入れて、超音波をかけることにより行う。超音波洗浄によりほとんどのアルミナ粒子は除去されるが、アルミナ粒子が多少残留していても、めっき性は比較的良い。
アルミナ粒子を除去したAgパッド上に無電解めっき法によりNiめっき及びAuめっき等を形成する。Ni及びAuをメタライズした外部電極の上に半田パターンをスクリーン印刷した後、半導体素子等の部品を搭載し、リフローにより接続する。ワイヤボンディング用半導体素子の場合、リフロー処理後にワイヤボンディング接続を行う。最後に集合基板を分割溝に沿って破断することにより、個々の多層セラミック基板を得る。
(1)基体用グリーンシート及び未焼結多層セラミック基板の作製
平均粒径1μmのセラミック紛100質量%に対して有機バインダとしてPVBを15質量%、可塑剤としてDOPを10質量%加えて、更に溶剤として、エタノールとブタノールの混合物を使用して、ボールミルにて20時間分散した。得られたスラリーを、減圧下にて脱泡し、8000〜10000cps(MPa・s)になるように、一部溶剤を揮発させて、ドクターブレード法にてシート成形した。乾燥後の厚さが80μmになるように、ブレードとキャリアフィルムのギャップ調整を行った。得られたグリーンシートを、キャリアフィルムと一緒に、所定の大きさに裁断し、所定の配線パターンをAgペーストにてスクリーン印刷して形成した。尚、本実施例では、通常形成するビアホールについては、本発明の目的、作用効果に関係しないので、ビアホールの形成は行わなかった。
前記、印刷後のシートを、画像処理装置で位置合わせを行いながら20層を仮圧着した積層体を得た。ここで、仮圧着とは、各層を順次、位置合わせ後、約50℃、圧力40Kg/cm2(3.9M)で熱圧着する工程であり、各層が一体化されてはいないが、各層の位置ずれは発生しない積層体を得ることである。
次に、前記積層体の印刷されていない面、即ちキャリアフィルム面が露出した面に別途スクリーン印刷を行った後、CIP装置にて、100Kg/cm2(9.8Mpa)、85℃で熱圧着し、各層が一体化した積層体(未焼結多層セラミック基板)を得た。
平均粒径2.5μmのアルミナ粉100質量%に対して有機バインダとしてPVBを5質量%、可塑剤としてDOPを3質量%加えて、更に溶剤として、エタノールとブタノールの混合物を使用して、ボールミルにて10時間分散した。得られたスラリーを、減圧下にて脱泡し、8000〜10000cps(MPa・s)になるように、一部溶剤を揮発させて、ドクターブレード法にてシート成形した。乾燥後の厚さが200μmになるように、ブレードとキャリアフィルムのギャップ調整を行った。得られたシートを、キャリアフィルムから剥離し、前記未焼結セラミック基板の両主面と同一な大きさに裁断した。
尚、シート成形時、乾燥後の自由面と密着面(キャリアフィルム面)の有機物と無機粒子の体積含有量を制御するために、乾燥時のプロファイル、即ち、乾燥温度、風量、時間を適時制御し、自由面に比べて、密着面(キャリアフィルム面)の有機物と無機粒子の体積含有率が、5%から60%になるように、各シートを成形した。尚、10%未満及び、50%超えるものを成形したのは、後述する比較例で使用するためである。
含有率の評価方法としては、グリーンシートを0.1〜0.2mm程度に細く裁断し、シート断面を上面になるように固定し、ミクロトームによりシート断面の自由面側、またはPETフィルム面側をμmオーダーで切断・分離し、重量・体積により算出する方法が容易である。
また、アルミナ粉の平均粒径を1.2〜8μmに変えたもので同様に拘束用グリーンシートを作製し実施例と比較例で用いた。
未焼結セラミック基板の両主面に、前記両主面と同じ大きさに裁断した拘束用グリーンシートを、キャリアフィルム側が未焼結セラミック基板の両主面に密着するようにして積層し、CIP装置にて、120Kg/cm2(11.8Mpa)、85℃で熱圧着し、拘束用グリーンシートと未焼結セラミック基板を一体化した。前記一体化した積層体を、今後、単に積層体と称することとする。
脱バインダと焼結は連続炉で行った。
室温から、有機物の分解が始まる200℃までは、毎時200℃、有機物の分解・酸化が、比較的激しい温度領域である200℃〜350℃までは毎時10℃、やや反応が穏やかになる350〜600℃は毎時20℃で昇温した。600℃では、残留した有機物をカーボン量で表すと、0.5質量%以下となるため、有機物の分解・酸化は実質的に終了したと考えられる。600℃〜900℃は毎時200℃で昇温した後、900℃で2時間保持し、その後、毎時300℃で室温まで降温し、焼結体を得た。
焼結体から、アルミナを除去するために超音波洗浄を行った。水中で、周波数:26kHz、出力:1200Wの条件で、上下に揺動しながら10分行うことで、アルミナを目視で確認できない程度に除去した。EDX分析により、残留アルミナ量を定量したところ、セラミックス上で約5質量%程度、Ag電極上で約10質量%であった。表面のSEM観察によりAg電極上にアルミナが多い原因としては、Agが塑性変形しやすいため、アルミナ紛の一部が突き刺さるような形態が観察され、このためと考えられる。
以上、一連の工程を詳述してきたが、評価項目としては下記する[1]X-Y面方向の収縮率、[2]基板のそり量、[3]その他の不具合について評価した。
更に、拘束用グリーンシートの無機粒子の平均粒径、有機物と無機粒子の体積含有量の自由面に対する密着面の増加率をそれぞれパラメータとした実施例について評価した。結果を表1に示す。
[1]X-Y面方向の収縮率
拘束層を形成する前の集合基板のうち、四隅及び四辺の中央にある合計8個のチップ部を選択し、各チップ部の2つの対角線のX軸方向及びY軸方向の距離をそれぞれ三次元座標測定器により測定し、X-Y座標値X0,Y0を求めた。同様に焼結後の集合基板に対して、各チップ部の2つの対角線のX軸方向及びY軸方向の距離をそれぞれ測定し、X-Y座標値Xn,Ynを求めた。Xn/X0の比及びYn/Y0の比を8個のチップ部(n=1〜8)について平均し、拘束層形成後に焼結した集合基板の収縮率とした。
[2]反り量
収縮率の測定の際に三次元座標測定器により20mmの線間の高低差(Z軸方向)を求め、反りとした。反り量の許容値は40μm程度である。
前記と同様の製造方法によって製作したものであるが、実施例にて一部記載したように有機物と無機粒子の体積含有量を自由面に対する密着面の増加率を変えたもの、または拘束用グリーンシートのアルミナ粉の平均粒径比を変えたものについて比較例として評価した。結果を表1に*印を付して示す。
No9は、逆に平均粒子径の差が大き過ぎて拘束力を得ることができなかった。
No10は、平均粒子径の差は適当であるが、有機物と無機粒子の体積含有率について自由面に対する密着面の増加率が過少で適正でないために収縮率とそり量ともに満足できなかった。これは拘束グリーンシートの密着性が悪く焼結中に界面剥離が生じたものと考えられる。
No11は、逆に自由面に対する密着面の増加率が大きく脱バインダが適正に行われなかったものと思われる。そのため収縮率、そり量が大きく基体内部に空隙も発生した。
2:内部電極
3:ビア電極
4:外部電極
5:分割溝
6:拘束層(難焼結性拘束用グリーンシート)
7:搭載部品
8:基体用グリーンシート
10:未焼結多層セラミック基板
61:拘束用グリーンシートの自由面側
62:拘束用グリーンシートの密着面側
80:拘束用グリーンシートと未焼結多層セラミック基板の界面
Claims (8)
- 低温焼結可能な基板用グリーンシートを積層してなる未焼結多層セラミック基板の上面及び/又は下面に密着するように設けるための難焼結性拘束用グリーンシートにおいて、前記難焼結性拘束用グリーンシートの全体積に対する有機物(ここで有機物とは有機バインダと可塑剤とする)と無機粒子の体積含有量が、当該グリーンシートの前記未焼結多層セラミック基板との密着面側と自由面側とで異なることを特徴とする難焼結性拘束用グリーンシート。
- 前記難焼結性拘束用グリーンシートの全体積に対する前記有機物と無機粒子の体積含有量は、当該グリーンシートの前記未焼結多層セラミック基板との密着面側の方が自由面側よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の難焼結性拘束用グリーンシート。
- 前記難焼結性拘束用グリーンシートの密着面近傍における領域の有機物と無機粒子の体積含有量が、自由面近傍における領域のそれよりも10〜50%多いことを特徴とする請求項2に記載の難焼結性拘束用グリーンシート。
- 前記難焼結性拘束用グリーンシートの密着面は、キャリアフィルム上に設けられた接触面側であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の難焼結性拘束用グリーンシート。
- セラミック材料の粉末及び有機バインダを含有するスラリーを用いて低温焼結可能な基板用グリーンシートを作製し、
前記基板用グリーンシートを積層して未焼結多層セラミック基板を作製し、
前記未焼結多層セラミック基板の焼結温度では焼結しない無機粒子と有機物(ここで有機物とは有機バインダと可塑剤とする)とを含有する難焼結性拘束用グリーンシートを、前記未焼結多層セラミック基板の上面及び/又は下面に密着するように設けて一体的な積層体とし、
前記積層体を焼結し、有機物成分を熱分解や酸化により除去した後、焼結して多層セラミック基板となし、
その後、前記難焼結性拘束用グリーンシートを焼結した多層セラミック基板の表面から除去する工程を有しており、
前記難焼結性拘束用グリーンシートは、前記難焼結性拘束用グリーンシートの全体積に対する有機物(ここで有機物とは有機バインダと可塑剤とする)と無機粒子の体積含有量が、当該グリーンシートの前記未焼結多層セラミック基板との密着面側と自由面側とで異なるものを用いることを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。 - 前記難焼結性拘束用グリーンシートの全体積に対する有機物と無機粒子の体積含有量は、当該グリーンシートの前記未焼結多層セラミック基板との密着面側の方が自由面側よりも多いものであることを特徴とする請求項5に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記難焼結性拘束用グリーンシートを構成する無機粒子の平均粒径が、前記基体用グリーンシートを構成するセラミック粉の平均粒径より大きいものを用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記難焼結性拘束用グリーンシートを構成する無機粒子の平均粒径が、前記基体用グリーンシートを構成するセラミック粉の平均粒径の1.5〜7倍であることを特徴とする請求項7に記載の多層セラミック基板の製造方法。
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