請求項1に記載の発明は、前面に開閉する回転扉を備えた貯蔵室が最上段に配置された箱本体を有し、前記箱本体の天面と背面に渡って前記貯蔵室内の最上段収納スペース側に凹ませた凹部を形成し、密閉容器内に固定子と回転子からなる電動要素と前記電動要素によって駆動される圧縮要素とを収納した圧縮機を前記凹部に設置したものであって、前記回転扉を中ほどから左右両側を支点として開くように分割するとともに、前記回転扉を左右に分割する分割線の前方からの投影線上を避けて前記圧縮機を配置したものである。
これによって、回転扉の角運動量の内、最も大きい分割線の前方からの投影線上から圧縮機を離して、回転扉を閉めたときに冷蔵庫箱本体を通じて圧縮機に伝わる衝撃力を減少させることで、圧縮機の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、前面に開閉する回転扉を備えた貯蔵室が最上段に配置された箱本体を有し、前記箱本体の天面と背面に渡って前記貯蔵室内の最上段収納スペース側に凹ませた凹部を形成し、密閉容器内に固定子と回転子からなる電動要素と前記電動要素によって駆動される圧縮要素とを収納した圧縮機を前記凹部に設置したものであって、圧縮要素は圧縮室と前記圧縮室内で往復動するピストンを備えた往復動型であり、前記回転扉を中ほどから左右両側を支点として開くように分割するとともに、前記回転扉を左右に分割する分割線の前方からの投影線上を避けて前記圧縮室を配置したものである。
これによって、回転扉の角運動量の内、最も大きい分割線の前方からの投影線上から、少なくとも圧縮機の中で往復運動を行っている為に振動発生源となる圧縮室を離して、回転扉を閉めたときに冷蔵庫箱本体を通じて圧縮室に伝わる衝撃力を減少させることで、圧縮機の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項3に記載の発明は、 前面に開閉する回転扉を備えた貯蔵室が最上段に配置された箱本体を有し、前記箱本体の天面と背面に渡って前記貯蔵室内の最上段収納スペース側に凹ませた凹部を形成し、密閉容器内に固定子と回転子からなる電動要素と、前記電動要素によって駆動される圧縮要素と、前記圧縮要素と前記密閉容器に備えられた高圧配管とを接続部を介して弾性的に接続する吐出細管とを収納した圧縮機を前記凹部に設置したものであって、前記回転扉を中ほどから左右両側を支点として開くように分割するとともに、前記圧縮機の左右方向の中心軸に対して前記吐出細管が配置されている側と対向する側の圧縮要素の端部を、前記回転扉を左右に分割する分割線の前方からの投影線上を避けて配置したものである。
これによって、回転扉の角運動量の内、最も大きい分割線の前方からの投影線上から、少なくとも圧縮機の中で圧縮要素と電動要素からなる機械部と密閉容器との接続部から最も離れている為に大きく振動しやすい圧縮要素の端部を離すことで、圧縮機の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項4に記載の発明は、前記圧縮機を前記左右のいずれかの回転扉の前方からの投影面内に配置したものである。
これによって、回転扉を中ほどから左右両側を支点として開くように分割するとともに、左右のいずれかの回転扉の前方からの投影面内に圧縮機を配置したもので、回転扉の開閉軌跡の半径を小さくして回転扉の角運動量を総体的に小さくするとともに、かつ回転扉と箱本体が衝突して伝播される衝撃力の影響を受ける回転扉の投影面の外枠線から圧縮機を離して、回転扉を閉めたときに冷蔵庫箱本体を通じて圧縮機に伝わる衝撃力を減少させることで、圧縮機の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項5に記載の発明は、圧縮機が配置された側の回転扉をさらに上下に分割するとともに、上下に分割された回転扉の前方からの投影面内に圧縮機を配置したものである。
これによって、回転扉開閉軌跡の半径を小さく、かつ回転扉を細分化することで、個々の回転扉を閉めたときの角運動量を顕著に総体的に小さくするとともに、かつ回転扉と箱本体が衝突して伝播される衝撃力の影響を受ける回転扉の投影面の外枠線から圧縮機を離して、圧縮機の釜当りを抑制することで、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
加えて、回転扉を細分化することで、特に暑い夏場において、細分化された回転扉の内、必要な回転扉のみを開けて食品等を出し入れすることで、庫外に逃げ出す冷気を減らし、圧縮機の運転率の抑制が図れ、消費電力量が低い冷蔵庫を提供することができる。
請求項6に記載の発明は、最上段の貯蔵室下部に引出室が配置されたものである。
これによって、圧縮機を引出室から離して、引出室を押し込んだ際の引出扉と箱本体との衝突による衝撃力が圧縮機に伝わり難い構成として、圧縮機の釜当りを抑制することで、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項7に記載の発明は、圧縮要素は圧縮室と前記圧縮室内で往復動するピストンを備えた往復動型であり、前記ピストンの往復動方向を、回転扉が閉まる際に箱本体に衝突する衝突方向以外の方向に位置させるように圧縮機を搭載したものである。
これによって、回転扉を閉めたときの衝撃による圧縮機の揺動方向と、圧縮機の振動方向を不一致として、圧縮機の振幅加速を防止し、釜当りの発生を回避することで、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項8に記載の発明は、圧縮要素は圧縮室と前記圧縮室内で往復動するピストンを備えた往復動型であり、前記ピストンの往復動方向を、回転扉が閉まる際に箱本体に衝突する衝突方向に対して略垂直となる方向に位置させるように圧縮機を搭載したものである。
これによって、回転扉を閉めたときの衝撃による圧縮機の振動方向と、圧縮機の振動方向を垂直方向とすることで、圧縮機の往復動方向における振幅加速を防止し、釜当りの発生を回避することで、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項9に記載の発明は、圧縮要素と密閉容器の高圧配管とを弾性的に接続する吐出細管は、扉が閉まる際に箱本体に衝突する衝突方向に対して略平行する方向に形成されている部分を有するものである。
これによって、吐出細管に回転扉を閉じたときの衝撃力が伝達される方向と略平行となることで剛性が高くなる部位を有することから、吐出細管によって効果的に衝撃を加えられた際の機械部であるメカの振れ回りを抑制することで、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項10に記載の発明は、圧縮機の電動要素と圧縮要素からなる機械部が、密閉容器内に支持部を介して弾性支持されるとともに前記圧縮機は前記密閉容器の下部に固設された複数個の脚を介して凹部に弾性的に設置されたものであって、回転扉が閉まる際に箱本体に衝突する衝突方向に対し略平行方向に隣接する前記脚同士の間のピッチが、前記支持部の回転扉が閉まる際に箱本体に衝突する衝突方向に対して略平行する方向に隣接する前記支持部同士の間のピッチよりも長く形成されたものである。
これによって、回転扉が閉まる際に箱本体に衝突する衝突方向に対して略平行する方向に外部から受けた振動の振幅よりが密閉容器の脚部よりも密閉容器内の支持部のほうが小さくなるので、圧縮機の釜当りを抑制するので、機械部であるメカの振れ回りを抑制することで、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
請求項11に記載の発明は、圧縮機の電動要素と圧縮要素からなる機械部が、密閉容器内に支持部を介して弾性支持されるとともに前記圧縮機は前記密閉容器の下部に固設された複数個の脚に備えられた弾性部材を介して凹部に弾性的に設置されたものであって、前記圧縮機の上下方向の重心と、前記圧縮機の脚と前記弾性部材との当接面との距離を、前記圧縮機の上下方向の重心と前記密閉容器の下端面との距離よりも短くしたものである。
これによって、圧縮機に外力が作用した場合の振動の振幅は、重心付近が最も小さく重心から離れるにつれて振動が大きくなるような重心まわりに圧縮機全体が振動することから、圧縮機のより重心に近い部分に脚と前記弾性部材との当接面を位置させることにより、冷蔵庫側から圧縮機に外力がかかった場合に、圧縮機全体の振動を低減することができるので、さらに、冷蔵庫への振動伝達を低減できることとなり、不快な振動や、振動に起因する騒音発生の無い高品位の冷蔵庫を提供することできる。
請求項12に記載の発明は、圧縮機の電動要素と圧縮要素からなる機械部が、密閉容器内に支持部を介して弾性支持されるとともに前記圧縮機は前記密閉容器の下部に固設された複数個の脚に備えられた弾性部材を介して凹部に弾性的に設置されたものであって、前記圧縮機の脚と前記弾性部材との当接面は前記密閉容器の下端面よりも上方に位置するものである。
これによって、圧縮機に外力が作用した場合の振動の振幅は、重心付近が最も小さく重心から離れるにつれて振動が大きくなるような重心まわりに圧縮機全体が振動することから、圧縮機のより重心に近い部分に脚と前記弾性部材との当接面を位置させることにより、冷蔵庫側から圧縮機に外力がかかった場合に、圧縮機全体の振動を低減することができるので、さらに、冷蔵庫への振動伝達を低減できることとなり、不快な振動や、振動に起因する騒音発生の無い高品位の冷蔵庫を提供することできる。
請求項13に記載の発明は、前面に開閉する回転扉を備えた貯蔵室が最上段に配置された箱本体を有し、前記扉が閉まる際に前記扉の閉まる速度を減速させる減速機能部とを有するものである。
これによって、回転扉を閉めたときに冷蔵庫箱本体を通じて圧縮機に伝わる衝撃力を減少させることで、圧縮機の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の構成断面図、図2は同実施の形態における冷蔵庫の正面図、図3は同実施の形態における冷蔵庫を上方から見た回転扉の開閉軌跡の概略断面図、図4は同実施の形態における冷蔵庫背面から見た圧縮機の縦断面図、図5は同実施の形態における冷蔵庫天面から見た圧縮機の平面断面図、図6は同実施の形態における回転扉を閉めたときの圧縮機の挙動を示す特性図である。
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1から図6において、冷蔵庫は、圧縮機150と、圧縮機150に接続された吐出配管140と、凝縮器(図示せず)と、減圧器であるキャピラリー142と、水分除去を行うドライヤー(図示せず)と、庫内ファン191を近傍に配置した蒸発器128と、吸入配管141を環状に接続して構成される冷凍サイクルを箱本体101に内蔵しており、この冷凍サイクルにより生成された冷気を吐出し、貯蔵庫106内の温度を低下させ、食品などを冷凍、冷蔵保管する。
箱本体101は、ABSなどの樹脂体を真空成形した内箱102とプリコート鋼板などの金属材料からなる磁性体を用いた外箱103とで構成された空間に発泡充填する断熱体104を注入してなる断熱壁を備えている。断熱体104は、例えば硬質ウレタンフォームやフェノールフォームやスチレンフォームなどが用いられる。また、発泡材として、ハイドロカーボン系のシクロペンタンを用いれば、地球温暖化防止の観点でさらに良い。
箱本体101は複数の断熱区画に区分されており、箱本体101の前面には、各々、扉105を設けている。断熱区画された貯蔵室106は、上から、冷蔵室107、並べて設けた切替室109aおよび製氷室109b、野菜室110、冷凍室111となっている。
冷蔵室107には、前面の中ほどから分割線130にて分割され左右両側を支点として、両端部がヒンジ112を介して回転可能に支持された回転動式の回転扉113a、113bが2枚設けられている。正面から見て、左側の回転扉113aの横幅と右側の回転扉113bの横幅との比率はおよそ4:6としている。また、各々の回転扉113a、113bには、食品などを収納するスペースとして扉ポケット114が複数個設けられている。
一方、切替室109a、製氷室109b、野菜室110、及び冷凍室111はいずれも引出室108となっており、いずれも、レール(図示せず)を介して前方、後方にスライド可能な往復動式である引出扉115a、115b、115c、115dが設けられている。
回転扉113a、113b、及び引出扉115a、115b、115c、115dの内側の縁には、箱本体101のシール面117と密着することで冷蔵庫内部と外部を遮断させるとともに、各々の扉105を閉めたときの衝撃を吸収するためのガスケット116が装着されている。
ガスケット116は、耐久性、柔軟性、経済性などの特長を合わせ持ち、優れた加工性を有する軟質塩化ビニール樹脂体を押出成形することで形成している。ガスケット116には、永久磁石と、隔壁にて多数に区分された空気ポケットが内蔵されており、ガスケット116が密着される箱本体101側のシール面117は、外箱103の一端面とすることで、磁性体としてなる。
箱本体101の上方には、箱本体101の天面118と背面119に渡って冷蔵室107側に凹ませた凹部120が設けられている。冷蔵室107には食品などを収納するための収納棚121が複数個設けられており、凹部120は、冷蔵室107内の最上段棚122と内箱102で区画された最上段収納スペース122a側、及び第2段棚123と最上段棚122で区画された第2段棚収納スペース123a側に凸状に出張っている。また、より好ましくは凸部124の室内側底壁面125と最上段棚122の棚底部122bを略同一水平面としている。
凹部120には、ビスなどで固定された天面カバー126が設けられており、圧縮機150、機械室ファン190、凝縮器(図示せず)、ドライヤー(図示せず)、吐出配管140、吸入配管141の一部などを収納している。尚、圧縮機150は、回転扉113a、113bを左右に分割する分割線130の前方からの投影線131上を避けて、回転扉113bの後方に位置する。加えて、天面カバー126の上部は、天面118と略同一平面としており、圧縮機150の頂部151は天面118より低い位置にある。
また、冷蔵庫の組立作業性やサービス性を向上させることを狙いに、配管の密集度を軽減し、後方から配管接続部を目視できるようにするために、冷蔵庫背面119から見て手前側の圧縮機150の側面に形成された吐出チューブ140a、吸入チューブ141aに、それぞれ吐出配管140、吸入配管141が左右に振り分けられて溶接される。
次に、圧縮機150の構成について説明する。
厚さ2〜4mmの圧延鋼板を深絞りにより成形してなるすり鉢状の下容器172と逆すり鉢状の上容器173を係合し、係合部分を全周溶接して密閉容器152が形成される。密閉容器152の内部には、冷媒153としてイソブタン(R600a)が充填され、オイル154として鉱油を貯留しているとともに、電動要素158と圧縮要素163からなる機械部であるメカ174が配置されている。メカ174は、密閉容器152の底部に固設された支持部160aと電動要素158下端に固設された支持部160bの間にスプリング170を介して弾性支持されている。
電動要素158は、ブロック159の下方に固定されインバータ駆動回路(図示せず)とつながっている固定子160と、永久磁石を内蔵し主軸部161の下方に固定された回転子162から構成され、インバータ駆動用の電動モータを形成しており、インバータ駆動回路によって、商用電源周波数を下回る運転周波数を含む複数の運転周波数で駆動される。
圧縮要素163は、シリンダ164を形成するブロック159と、圧縮室であるシリンダ164のボア孔175内に往復自在に嵌入されたピストン165と、ブロック159の軸受166に軸支される主軸部161と偏芯軸部167からなるクランクシャフト168と、偏芯軸部167とピストン165を連結するコンロッド169とを備えており、クランクシャフト168の回転運動がピストン165の往復運動に変換される。
尚、ピストン165の往復運動方向(図6中の矢印P参照)は、冷蔵庫の前面143に対し略平行関係としている。すなわち、ピストン165の往復動方向を、回転扉が閉まる際に箱本体に衝突する衝突方向に対して略垂直となる方向に位置させている。
また、ピストン165とボア孔175内とで形成される圧縮室176の空間体積が、ピストン165の往復運動により増減変化することで、密閉容器152内の冷媒153は、吸入マフラー177の吸入口178から吸込まれ、シリンダヘッド179の内部に設けられたバルブ(図示せず)を介して圧縮室176内にて吸入、圧縮された後、ブロック159に形成された吐出マフラー180から、吐出細管171、密閉容器152に備えられた高圧配管である吐出チューブ140aを経て、密閉容器152外の吐出配管140に吐出される。
吐出細管171は、内径1.5mmから3.0mmの鋼管であり、L字やU字曲げにより、冷蔵庫の前面143に対し略垂直方向に延在した部位171aを多用することで、略垂直方向の吐出細管171の剛性が高くなるように形成されている。すなわち、圧縮要素163と密閉容器152に備えられた高圧配管である吐出配管140とを弾性的に接続する吐出細管171は、回転扉113aが閉まる際に箱本体101に衝突する衝突方向に対して略平行する方向に形成されている部分171aを有することで、回転扉113aが閉まる際に箱本体101に衝突する衝突方向に対して略平行する方向の剛性を上げている。この衝突方向に対して略平行する方向に形成されている部分171aとは直線からなる平行のみでなく、曲線や湾曲部を有するものであってももちろん良い。また、この吐出細管171と密閉容器152の吐出チューブ140aは、接続部181にて弾性をもって接合されている。
密閉容器152の下方には、複数個の脚155が固着されており、各々の脚155に係止された弾性部材156を介して、冷蔵庫の凹部120に固設されたピン127に、弾性部材156の孔157を遊嵌させることで位置を固定している。尚、冷蔵庫の前面143に対し平行方向の脚155間ピッチWmは、同じく平行方向の密閉容器152の径Wcよりも長くなるように形成してなる。
次に、回転扉113a、113bを閉めたときの箱本体101との衝突時の衝撃力と、その圧縮機150への影響について説明する。
尚、円弧132aは回転扉113aにおけるヒンジ112側とは反対側の最端部の開閉軌跡、円弧132bは回転扉113bにおけるヒンジ112側とは反対側の最端部の開閉軌跡である。
一般的に、回転体の勢いを表す量として角運動量がある。角運動量は質量、周方向速度、回転半径のそれぞれに比例する。つまり、回転扉113a、113bを閉めたときに、回転扉113a、113bに与えられた角運動量が大きいほど、回転扉113a、113bと回転扉113a、113bを受ける側、すなわち箱本体101のシール面117の衝突時に発生する衝撃力は大きくなる。また、衝撃力は、冷蔵庫の前面143に対し垂直方向に影響を及ぼしていく。
回転扉113bを例に挙げて説明すると、総体的な角運動量に影響を及ぼす因子は、回転扉113bと扉ポケット114に収納された食品などを合せた質量と、シール面117との衝突直前における回転扉113bの周方向速度と、回転扉113bの横幅、すなわち回転扉113bの開閉軌跡の円弧132a半径である。これらが、ガスケット116とシール面117との衝突時に、冷蔵庫の箱本体101に加えられる総体的な衝撃力を支配する。
また、回転扉113bに与えられる角運動量の分布の観点から、回転扉113bの回転支点であるヒンジ112から離れたポイントほど周方向速度は大きくなり、角運動量が大きくなる。食品などを偏り無く扉ポケット114に収納した状態であれば、通常では、回転扉113bにおけるヒンジ112とは反対側の最端部にて角運動量が最大となる分布を呈する。
回転扉113bを閉めると、ガスケット116に内蔵された永久磁石と、磁性体で形成されたシール面117の間に磁力が作用し、ガスケット116がシール面117と密着する。この時、ガスケット116に内蔵された空気ポケットが、衝撃力をある程度吸収するものの、吸収し切れない衝撃力がシール面117を通じて冷蔵庫の箱本体101に伝わる。
昨今では、主力となる冷蔵庫の容量帯は300L以上が基調である。これにより、冷蔵庫サイズが大きくなるに伴って、回転扉13の開閉軌跡である円弧32半径は大きくなり、加えて、扉ポケット14への収納量の増加により、収納品などを合せた回転扉13の総重量は必然的に重くなり、回転扉13が閉まる際に箱本体1に加えられる衝撃力は相乗的に大きくなると推察される。
以下、図6に基づいて圧縮機の釜当りのメカニズムを説明する。
密閉容器152の側面に形成された吐出チューブ140a、及び吸入チューブ141aは、冷蔵庫サイドに形成された吐出配管140、吸入配管141と各々溶接されており、また、密閉容器152の下方に固着された脚155は、ピン127を介して凹部120の設置面120aに固定されていることから、圧縮機150の外殻を構成する密閉容器152は、冷蔵庫に拘束されているような状態であると言える。そのため、回転扉113bを閉めたときの前面143からの衝撃(図中、矢印A)により、冷蔵庫が前後方向(図中矢印B1方向、B2方向)に揺動すると、密閉容器152は冷蔵庫に引っ張られる形で同様に前後方向に揺動することになる。
一方、衝撃を加えられた瞬間の圧縮機150の内部では、圧縮要素163と電動要素158からなる機械部であるメカ174には、弾性支持(図4参照)により見掛け上B2方向に慣性力が作用するのに加え、密閉容器152の振動に伴って、密閉容器152底部に固設された支持部160aが矢印B1方向に変位するとともに、密閉容器152に固設された吐出チューブ140aに溶接された吐出細管171を介してメカ174を矢印B1方向に引っ張る力が作用して、スプリング170にねじれが生じる。この後、スプリング170、及び吐出細管171の弾性による復元力によって、メカ174は、吐出細管171と密閉容器152の吐出チューブ140aを接合した接続部181を中心とした円弧状の矢印C1、C2方向に振れ回ることになる。
よって、本実施の形態においては、圧縮機150の左右方向の中心軸150aに対して吐出細管171が配置されている側と対向する側の圧縮要素の端部150bを、回転扉213bを左右に分割する分割線130の前方からの投影線上を避けて配置したものである 。
これによって、回転扉213bの開閉軌跡半径を小さくして回転扉213bの角運動量を総体的に小さくするとともに、回転扉213bの角運動量の内、最も大きい分割線130の前方からの投影線上から、少なくとも圧縮機150の中で圧縮要素163と電動要素158からなる機械部と密閉容器152との接続部181から離れている為に大きく振動しやすい部分を離すことで、圧縮機150の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
このような密閉容器152の揺動とメカ174の振れ回りによって、メカ174と密閉容器152の内壁が接触し、いわゆる釜当りが発生していたと考えられる。
しかしながら、本実施の形態では、冷蔵室107の扉105の中ほどから4:6の比率に分割する分割線130にて左右両側に開くように、回転扉113a、113bが2枚設けているとともに、分割線130の前方からの投影線131上を避けて圧縮機150を配置している。
これにより、回転扉113a、113bの開閉軌跡の円弧132a、並びに円弧132b半径は従来に比べて小さくなるとともに、回転扉113a、113bを2枚として、回転扉への収納品を分散することで、回転扉1枚当りの重量と収納される食品などの重量を合せた総重量を見掛け上軽くして、個々の回転扉113a、113bに与えられる総体的な角運動量を小さくし、冷蔵庫の箱本体101側に加えられる衝撃力を効果的に減少させている。
加えて、回転扉113bの角運動量の内、最も大きい角運動量が付与される位置を避けて圧縮機150を配置することで、回転扉113a、113bを閉めたときの衝撃が圧縮機に伝わり難い構成としている。
発明者らの400Lの冷蔵庫を用いた実機試験(回転扉の扉ポケットに数〜10kg程度の錘を入れ、回転扉の開閉速度は1分間に6〜12回、開閉回数を数万〜20万回として、圧縮機150が釜当りする回数頻度を評価する試験)によれば、回転扉113bの角運動量の内、最も大きい角運動量が付与される位置に圧縮機が配設された冷蔵庫に比べて、釜当りの回数頻度が50%程度減少することを確認している。
以上のことから、回転扉113a、113bを閉めたときの衝撃による圧縮機150の釜当りを抑制することができるとともに、釜当りによって、生成したチッピング片を噛み込むことで生じる異常摩耗や、吐出細管171の疲労破断を回避することができる。よって、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
また、本実施の形態では、冷蔵庫を正面から見て、左側の回転扉113aの横幅と右側の回転扉113bの横幅との比率はおよそ4:6としているが、分割線130の前方からの投影線131上を避けた圧縮機150の配置であるならば、左右の回転扉の幅比率を変更しても同様の効果が得られる。
尚、本実施の形態では、冷蔵室107の下方に、引出室108を開閉するための引出扉115aから115dを設置している。
引出室108を押し込んだ際にも、当然冷蔵庫の箱本体101に衝撃が伝わるが、圧縮機150は引出室108から離れた配置とすることで、引出室108を押込んだ際の衝撃力が圧縮機150に伝わり難い構成であり、圧縮機150の釜当りを回避することができる。
更に、本実施の形態によれば、ピストン165の往復運動方向が冷蔵庫の前面143に対し略平行となるように、圧縮機150を凹部120に設置している。
ここで、圧縮機150は、運転中では自らが振動発生源となる。一般的にレシプロ式のメカ174から発生する振動としては、クランクシャフト168の回転運動やピストン165の往復運動時の摩擦摺動に起因するものなどが挙げられるが、その中でもピストン165の往復運動による影響が大きく、そのため、ピストン165の往復運動(図6中、矢印P)と平行方向の圧縮機150の振動が比較的高くなる。
これを踏まえ、本実施の形態では、回転扉を閉じたときの衝撃力が伝達される方向(図6中、矢印A方向)と、ピストン165の往復運動方向(図6中、矢印P方向)が略垂直関係とすることにより、圧縮機150を外部から振動させる方向と内部から振動する方向を一致させないことで、圧縮機150の振幅が倍加されて釜当りが頻発することが回避できる。
また、本実施の形態によれば、吐出細管171は、冷蔵庫の前面143に対し垂直となる方向に延在した部位171aを多用することで、略垂直方向の剛性が高くなるように形成されている。
これにより、剛性の高い吐出細管171の部位171aが、回転扉113a、113bを閉じたときの衝撃力が伝達される方向(矢印A方向)と略平行関係となることから、矢印A方向の弾性変形をし難くすることで、衝撃を加えられた際のメカ174の振れ回り(矢印C1、C2方向)を抑制することができる。更に、剛性の高い部位171aを確保するために、吐出細管171を蛇行させる空間体積が乏しい場合は、部位171aの細管肉厚を比較的厚くすることで剛性を上げても同様の効果が得られる。
一方で、ピストン165の往復運動方向(矢印P方向)や圧縮機150の高さ方向に平行な吐出細管171の部位の剛性は比較的低いことにより、メカ174の振動が冷蔵庫へ伝達されるのを抑制することもできる。
尚、本実施の形態によれば、図6に示すように、回転扉113aが閉まる際に箱本体101に衝突する衝突方向Aに対し略平行方向に隣接する脚155a、155b同士の間のピッチWmが、衝突方向Aに対して略平行する方向に隣接する支持部152a,152b同士の間のピッチWcよりも長く形成されたものである。
これにより、脚155a、155b同士の間のピッチWmを広くして、回転扉113aが閉まる際に箱本体101に衝突する衝突方向Aに対して略平行する方向に外部から受けた振動の振幅が密閉容器の脚部155a,155bよりも密閉容器152内の支持部152a、152bのほうが小さくなるので、圧縮機150の釜当りを抑制するので、機械部であるメカの振れ回りを抑制することで、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の構成断面図、図8は同実施の形態における冷蔵庫の正面図、図9は同実施の形態における冷蔵庫を上方から見た回転扉の開閉軌跡の概略断面図、図10は同実施の形態における冷蔵庫を横方向から見た回転扉の開閉軌跡の概略断面図である。
以下、図7、図8、図9、図10に基づいて本実施の形態の説明を進めるが、実施の形態1と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図7から図10において、冷蔵庫は、圧縮機150と、圧縮機150に接続された吐出配管140と、凝縮器(図示せず)と、減圧器であるキャピラリー142と、水分除去を行うドライヤー(図示せず)と、庫内ファン191を近傍に配置した蒸発器128と、吸入配管141を環状に接続して構成される冷凍サイクルを箱本体201に内蔵しており、この冷凍サイクルにより生成された冷気を吐出し、貯蔵庫206内の温度を低下させ、食品などを冷凍、冷蔵保管する。
箱本体201は、内箱202と外箱203とで構成された空間に発泡充填する断熱体104を注入してなる断熱壁を備えている。
箱本体201は複数の断熱区画に区分されており、箱本体201の前面には、各々、扉205を設けている。断熱区画された貯蔵室206は、上から冷蔵室207、並べて設けた切替室109aおよび製氷室109b、野菜室110、冷凍室111となっている。
冷蔵室207には、前面の中ほどから分割され左右両側を支点として、両端部がヒンジ112を介して回転可能に支持された回転動式の回転扉213a、213bが2枚設けられている。正面から見て、左側の回転扉213aの横幅と右側の回転扉213bの横幅との比率はおよそ4:6としている。また、各々回転扉213a、213bには、食品などを収納するスペースとして扉ポケット114が複数個設けられている。
一方、切替室109a、製氷室109b、野菜室110、及び冷凍室111はいずれも引出室108として形成されており、いずれも、レール(図示せず)を介して前方、後方にスライド可能な往復動式である引出扉115a、115b、115c、115dが設けられている。
回転扉213a、213b、及び引出扉115a、115b、115c、115dの内側の縁には、箱本体101のシール面117と密着することで冷蔵庫内部と外部を遮断させるとともに、各々の扉205を閉めたときの衝撃を吸収するためのガスケット116が装着されている。
箱本体201の上方には、箱本体201の天面218と背面219に渡って冷蔵室207側に凹ませた凹部220が設けられている。冷蔵室207には食品などを収納するための収納棚221が複数個設けられており、凹部220は、冷蔵室207内の最上段棚222と内箱202で区画された最上段収納スペース222a側、及び第2段棚223と最上段棚222で区画された第2段棚収納スペース223a側に凸状に出張っている。
凹部220には、ビスなどで固定された天面カバー226が設けられており、圧縮機150、機械室ファン190、凝縮器(図示せず)、ドライヤー(図示せず)、吐出配管140、吸入配管141の一部などを収納している。尚、圧縮機150は、回転扉213bの前方からの投影面233内に、より好ましくは投影面233の外枠線234に圧縮機150の一部が掛からないように完全に投影面233内に配置される。また、天面カバー226の上部は、天面218と略同一平面としている。
本実施の形態により、回転扉213a、213bの開閉軌跡の円弧232a、並びに円弧232b半径は従来の1枚扉式に比べて小さくなる。更に、回転扉213a、213bを2枚として、回転扉への収納品を分散することで、回転扉1枚当りの重量に収納される食品などの重量を合せた総重量を見掛け上軽くなる。よって、個々の回転扉213a、213bに与えられる総体的な角運動量を小さくし、冷蔵庫の箱本体201側に加えられる衝撃力を効果的に減少させることができる。
加えて、本実施の形態では、回転扉213bの前方からの投影面233内に、より具体的には投影面233の外枠線234を避けて圧縮機150を配置したことで、回転扉213bの角運動量の内、最も大きい角運動量が付与される投影面233の投影線234a上に加え、直接的に衝撃力が伝播すると思われる天面218側の投影面233の投影線234cからも離れており、衝撃力が圧縮機150に伝わり難い構成としている。
発明者らの400Lの冷蔵庫を用いた実機試験(回転扉の扉ポケットに数〜10kg程度の錘を入れ、回転扉の開閉速度は1分間に6〜12回、開閉回数を数万〜20万回として、圧縮機が釜当りする回数頻度を評価する試験)によれば、回転扉213bの角運動量の内、最も大きい角運動量が付与される位置に圧縮機150が配設された冷蔵庫に比べて、釜当りの回数頻度が60%程度減少することを確認している。
以上のことから、回転扉213a、213bを閉めたときの衝撃による圧縮機150の釜当りを抑制することができるとともに、釜当りによって生成されるチッピング片の噛み込みによる異常摩耗や、配管の疲労破断による圧縮不良を回避することができる。よって、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
また、本実施の形態では、冷蔵庫を正面から見て、左側の回転扉213aの横幅と右側の回転扉213bの横幅との比率はおよそ4:6としているが、回転扉113b投影面233内に圧縮機150を配置するのであれば、左右の回転扉の幅比率を変更しても同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
図11は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の構成断面図、図12は同実施の形態における冷蔵庫の正面図、図13は同実施の形態における冷蔵庫を上方から見た回転扉の開閉軌跡の概略断面図、図14は同実施の形態における冷蔵庫を横方向から見た回転扉の開閉軌跡の概略断面図である。
以下、図11、図12、図13、図14に基づいて本実施の形態の説明を進めるが、実施の形態1と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図11から図14において、冷蔵庫は、圧縮機150と、圧縮機150に接続された吐出配管140と、凝縮器(図示せず)と、減圧器であるキャピラリー142と、水分除去を行うドライヤー(図示せず)と、庫内ファン191を近傍に配置した蒸発器128と、吸入配管141を環状に接続して構成される冷凍サイクルを箱本体301に内蔵しており、この冷凍サイクルにより生成された冷気を吐出し、貯蔵庫306内の温度を低下させ、食品などを冷凍、冷蔵保管する。
箱本体301は、内箱302と外箱303とで構成された空間に発泡充填する断熱体104を注入してなる断熱壁を備えている。
箱本体301は複数の断熱区画に区分されており、箱本体301の前面には、各々、扉305を設けている。断熱区画された貯蔵室306は、上から冷蔵室307、並べて設けた切替室109aおよび製氷室109b、野菜室110、冷凍室111となっている。冷蔵室307には、前面の中ほどから分割され、かつ冷蔵庫の正面から見て右側の扉305は上下に分割され、左右両側を支点として開くように、両端部がヒンジ112を介して回転可能に支持された回転動式の回転扉313a、313b、313cが3枚設けられている。冷蔵庫を正面から見て、左側の回転扉313aの横幅と右側の回転扉313bの横幅との比率はおよそ4:6とし、右側上方の回転扉313bの高さと右側下方の回転扉313cの高さとの比率はおよそ1:2としている。回転扉313a、313b、313cには、食品などを収納するスペースとして扉ポケット114が複数個設けられている。
一方、切替室109a、製氷室109b、野菜室110、及び冷凍室111はいずれも引出室108として形成されており、いずれにも、レール(図示せず)を介して前方、後方にスライド可能な往復動式である引出扉115a、115b、115c、115dが設けられている。
回転扉313a、313b、313c及び引出扉115a、115b、115c、115dの内側の縁には、箱本体301のシール面117と密着することで冷蔵庫内部と外部を遮断させるとともに、各々の扉305を閉めたときの衝撃を吸収するためのガスケット116が装着固定されている。
箱本体301の上方には、箱本体301の天面318と背面319に渡って冷蔵室307側に凹ませた凹部320が設けられている。冷蔵室307には食品などを収納する為の収納棚321が複数個設けられており、凹部320は、冷蔵室307内の最上段棚322と内箱302で区画された最上段収納スペース322a及び第2段棚323と最上段棚322で区画された第2段棚収納スペース323a側に凸状に出張っている。
凹部320には、ビスなどで固定された天面カバー326が設けられており、圧縮機150、機械室ファン190、凝縮器(図示せず)、ドライヤー(図示せず)、吐出配管140、吸入配管141の一部などを収納している。尚、圧縮機150は、回転扉313bの前方からの投影面333内に、より具体的には投影面333の外枠線334に圧縮機150の一部が掛からないように完全に投影面333内に配置される。また、天面カバー326の上部は、天面318と略同一平面としており、圧縮機150の頂部151は天面318より低い位置にある。
本実施の形態により、回転扉313a、313b、313cの開閉軌跡の円弧332a半径、円弧332b半径並びに円弧332c半径は従来の1枚扉式に比べて小さくなる。更に、正面から見て右側の扉305を上下に分割して細分化して回転扉の枚数を3枚として、回転扉への収納品を分散することで、回転扉1枚当りの重量に収納される食品などの重量を合せた総重量を見掛け上軽くなる。よって、個々の回転扉313a、313b、313cに与えられる総体的な角運動量を小さくし、冷蔵庫の箱本体301側に加えられる衝撃力を効果的に減少させることができる。
加えて、本実施の形態では、回転扉313bの前方からの投影面333内に、より具体的には投影面333の外枠線334を避けて圧縮機150を配置したことで、回転扉313bの角運動量の内、最も大きい角運動量が付与される投影面333の投影線334a上に加え、直接的に衝撃力が伝播すると思われる天面318側の投影面333の投影線334cから離れており、衝撃力が圧縮機150に伝わり難い構成としている。
発明者らの400Lの冷蔵庫を用いた実機試験(回転扉の扉ポケットに数〜10kg程度の錘を入れ、回転扉の開閉速度は1分間に6〜12回、開閉回数を数万〜20万回として、圧縮機が釜当りする回数頻度を評価する試験)によれば、回転扉313bの角運動量の内、最も大きい角運動量が付与される位置に圧縮機150が配設された冷蔵庫に比べて、釜当りの回数頻度が70%程度減少することを確認している。
以上のことから、回転扉313a、313b、及び313cを閉めたときの衝撃による圧縮機150の釜当りを抑制することができるとともに、釜当りによって生成されるチッピング片の噛み込みによる異常摩耗や、配管の疲労破断による圧縮不良を回避することができる。よって、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
また、冷蔵庫の回転扉313bの投影面333内に圧縮機150を配置するのであれば、扉の高さや幅の比率を変更しても同様の効果が得られる。
尚、回転扉を細分化することで、特に暑い夏場において、細分化された回転扉の内、必要な回転扉のみを開けて食品等を出し入れすることで、庫外に逃げ出す冷気を顕著に減らし、圧縮機の運転率の抑制が図れ、消費電力量が低い冷蔵庫を提供することができる。
(実施の形態4)
図15は本発明の実施の形態4における冷蔵庫の縦断面図、図16は同実施の形態における冷蔵庫の冷蔵室ドアが閉まる際の平面断面図、図17は同実施の形態における冷蔵庫の冷蔵室ドアが閉まる際の平面断面図である。
図において、冷蔵庫420の箱本体である断熱箱体421は内箱422と外箱423との間に発泡断熱材424を充填したものであり、前面開口部421aを有し、仕切壁425,426,427により、上部より貯蔵室である冷蔵室428、切替室429、野菜室430、冷凍室431を形成している。
また、箱本体421の天面後方部に圧縮機450を配設している。
また、各貯蔵室には閉時に前面開口部421aを閉塞し箱本体である断熱箱体421と連結された扉である冷蔵室ドア432、切替室ドア433、野菜室ドア434、冷凍室ドア435を備える。
冷蔵室ドア432は断熱箱体421に枢支された回転扉であり、上部ヒンジ436と、仕切壁425に固着された下部ヒンジ437とにより断熱箱体421に回動自在に連結されており、残りの切替室ドア433と野菜室ドア434と冷凍室ドア435とは各貯蔵室内の断熱箱体421の両側部に固着されたレール部材421bにより断熱箱体421と前後に開閉可能であるように連結される。
冷蔵室ドア432の下部の下部ヒンジ437には自閉機能部437aと減速機能部437bとが備えられている。
また、冷蔵室ドア432の減速機能が動作を開始する第1の位置Aは冷蔵室ドア432の閉扉時に断熱箱体421の前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの間に約100mmから150mmの空間を有している。
また、冷蔵室ドア432の減速機能が解除される第2の位置Bは同じく冷蔵室ドア432の閉扉時に断熱箱体421の前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの間に約1mmから5mmの空間を有する様に設定されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷蔵室ドア432を全開し、手動にて閉扉していき冷蔵室ドア432が前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの間に約150mmから250mmの空間を有する位置に到達すると冷蔵室ドア432は自閉を開始し、更に閉扉して前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの間に約100mmから150mmの空間を有する第1の位置Aに冷蔵室ドア432が到達すると、減速機能部437bが作動することで冷蔵室ドア432の閉扉速度は減速し始める。
更に冷蔵室ドアが閉扉していくにつれ冷蔵室ドア432の閉扉速度は徐々に減速し、前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの間に約1mmから5mmの空間を有する第2の位置Bに到達すると冷蔵室ドア432は減速機能を解除され確実に閉扉する。
また、冷蔵室ドア432の減速機能が動作を開始するする第1の位置を冷蔵室ドア432の閉扉時に断熱箱体421の前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの間に約100mmから150mmの空間を有するとしたが、減速機能が動作する範囲が広いと冷蔵室ドア432の閉扉動作に時間がかかることになり、結果としてせっかく冷却された冷蔵室428内の冷気が逃げてしまうので消費電力量が増加したり冷蔵室428内の被収納物の劣化の要因となってしまう為、減速機能が動作する範囲は冷蔵庫ドア432の断熱箱体421への衝突速度が十分に減速される範囲で狭い方が良い。
しかしながら、冷蔵室ドア432の閉扉時に断熱箱体421の前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの空間を狭くしたり、もしくは回転軸と反対側の土手部432dが前面開口部421aより更に冷蔵室428内に入り込んだ位置より減速機能が動作を開始すると前面開口部421aと回転軸と反対側の土手部432dとの間に使用者の指や腕を挟んでしまう恐れが生じる。
したがって、本実施の形態では断熱箱体421の前面開口部421aと冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dとの空間に使用者の指や腕を挟んでしまうことが無い様、約100mmから150mmの空間を有するとした。
尚、本実施の形態では冷蔵室ドア432に土手部432dを設けたが、土手部432dが無い場合には冷蔵室ドア432の断熱箱体421側の面と前面開口部421aとの空間を各所定値範囲とすれば良い。
また、棚443の断熱箱体421側の面は土手部432dの先端とほぼ同一面としたが、棚443の断熱箱体421側の面が土手部432dの先端より断熱箱体421側に突出する場合は冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dの先端と棚443の断熱箱体421側の面との内、前面開口部421aとの距離が狭い方の空間を各所定値範囲とすれば良い。
また、冷蔵庫420の冷蔵室ドア420が左右に分割された観音開きドアの場合は開状態にある側の冷蔵室ドア432の回転軸と反対側の土手部432dの先端と棚443の断熱箱体421側の面との内、閉位置にある側の冷蔵室ドア432の断熱箱体421と反対側の外観面との距離が狭い方の空間を各所定値範囲とすれば良い。
以上のように本実施の形態においては冷蔵庫420が冷蔵室ドア432に動作する減速機能を有することにより、冷蔵室ドア420を閉めたときに断熱箱体421を通じて圧縮機450に伝わる衝撃力を減少させることで、圧縮機450の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
(実施の形態5)
図18は本発明の実施の形態5における冷蔵庫要部の平面断面図であり、図19は同実施の形態における冷蔵庫に搭載した圧縮機の縦断面図である。
冷蔵庫は、箱本体501の天面後方に備えられた機械室510と、機械室510に備えられた圧縮機550と機械室ファン520と、圧縮機550に接続された高圧配管540と、圧縮機550と、凝縮器(図示せず)と、減圧器(図示せず)と、蒸発器(図示せず)とを順に備えた冷凍サイクルを箱本体501とを備えている。
また、最上段の貯蔵室507にはヒンジ部512を介して回動自在に回転扉513が備えられており、回転扉513は箱本体501の左右方向のほぼ全幅に渡って一枚の回転扉513で形成されている。
また、回転扉513は、ヒンジ部512を支点として開閉し、ヒンジ部512が備えられている側と反対側の端部513aの軌跡532bが回転扉513の開閉軌道半径が最も大きくなっている。
また、圧縮機550は箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512側に備えられている。
この圧縮機550は、密閉容器551の内部に圧縮室552と圧縮室552内をピストン(図示せず)が往復動することで冷媒の圧縮を行う往復動型圧縮機であり、圧縮室552をそなえた圧縮要素553と密閉容器551に備えられた高圧配管540とを接続する吐出細管554を備えている。高圧配管540と吐出細管554とは接続部555を介して接続されている。
このように圧縮室552は回転扉513のヒンジ部512側の投影線に近い側に位置するように圧縮機550を配設しており、また、圧縮機の左右方向の中心軸Iに対して、高圧配管540と吐出細管554とを接続する接続部555と対向する側に位置する圧縮要素553の端部553aも同様に回転扉513のヒンジ部512側の投影線に近い側に位置するように圧縮機550を配設している。
以上のような構成の冷蔵庫において、以下に回転扉513の開閉時の動作と作用を説明する。
回転扉513において、総体的な角運動量に影響を及ぼす因子は、回転扉513と扉ポケット(図示せず)に収納された食品などを合せた質量と、シール面517との衝突直前における回転扉513の周方向速度と、回転扉513の横幅、すなわち回転扉513の開閉軌跡の半径532bである。これらが、ガスケット516とシール面517との衝突時に、冷蔵庫の箱本体501に加えられる総体的な衝撃力を支配する。
また、回転扉513に与えられる角運動量の分布の観点から、回転扉513の回転支点であるヒンジ512から離れたポイントほど周方向速度は大きくなり、角運動量が大きくなる。食品などを偏り無く扉ポケットに収納した状態であれば、通常では、回転扉513におけるヒンジ512とは反対側の最端部にて角運動量が最大となる分布を呈する。
回転扉513を閉めると、ガスケット516に内蔵された永久磁石と、磁性体で形成されたシール面517の間に磁力が作用し、ガスケット516がシール面517と密着する。
この時、ガスケット516に内蔵された空気ポケットが、衝撃力をある程度吸収するものの、吸収し切れない衝撃力がシール面517を通じて冷蔵庫の箱本体501に伝わる。
昨今では、主力となる冷蔵庫の容量帯は300L以上が基調である。これにより、冷蔵庫サイズが大きくなるに伴って、回転扉513の開閉軌跡の半径の円弧532bは大きくなり、加えて、扉ポケットへの収納量の増加により、収納品などを合せた回転扉513の総重量は必然的に重くなり、回転扉513が閉まる際に箱本体501に加えられる衝撃力は相乗的に大きくなると推察される。
しかしながら、本実施の形態では、圧縮機550は箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512側に備えられていることにより、回転扉513を閉めた際に、冷蔵庫の箱本体501に加えられる衝撃力の最も大きい回転扉513のヒンジ部512が備えられている側と反対側の端部513aの前面側からの投影線上から大きく離していることにより、幅方向に長い寸法を有する為に、支点から反支点側の端部までの距離が大きいタイプの回転扉においても、角運動量の内、最も大きい分割線の前面からの投影線上からより圧縮機550を離すことで、回転扉513を閉めたときに冷蔵庫箱本体を通じて圧縮機に伝わる衝撃力を減少させることができ、圧縮機550の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
尚、回転扉513を閉じた時の衝撃力の幅方向の変化は、本実施の形態のように一枚扉の場合は、ヒンジ部512と反対側である、一般的にはハンドル側の端部が回転半径が大きいために最も大きく、ヒンジ部512に近付くにつれて小さくなるが、出し入れの便宜を図るために回転扉513の扉ポケットのハンドル側に例えばPETボトル飲料どの重量物を収納するように設計している場合が多く、実際の使用状態における衝撃力の分布は、ヒンジ部512側に近付くにつれての衝撃力の減少度合いが顕著となる。
このため、機械室510の幅方向のスペースにおいて、圧縮機550を配置した左右の空間スペースである反ヒンジ側スペース510aとヒンジ側スペース510bの幅方向の距離a,bについて言及すると、反ヒンジ側スペース510aの距離a>ヒンジ側スペース510bの距離bとすることによって、圧縮機550(の容器)の幅方向の中心軸Iが少なくとも箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512側に寄ることになり、回転扉513を閉じた際の衝撃力は実質上圧縮機550に影響を与えない程度のものとすることができる。
そしてさらに、箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hを境界線として、圧縮機550の全体がこの境界線よりもヒンジ部512側に寄れば、その点での衝撃力はさらに低減され圧縮機550への影響は回避できるものとすることができる。
尚、本実施の形態では圧縮機550を箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512側に備えているが、冷蔵庫の機械室510内部での構成上、圧縮機550が箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512の反対側へ延出してしまった場合でも、圧縮室552を箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512側に備えることで、少なくとも圧縮機550の中で往復運動を行っている為に振動発生源となる圧縮室552を衝撃力の最も大きい回転扉513のヒンジ部512が備えられている側と反対側の端部513aの前面側からの投影線上より離すことで、回転扉513を閉めたときに冷蔵庫の箱本体501を通じて圧縮機550に伝わる衝撃力を減少させることができ、圧縮機550の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
尚、同様に、圧縮機550が箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512の反対側へ延出してしまった場合でも、高圧配管540と吐出細管554とを接続する接続部555と対向する側に位置する圧縮要素553の端部553aを箱本体501の左右方向の全幅Gの1/2に相当する部分Hよりもヒンジ部512側に備えることで、圧縮機550の中で圧縮要素552と密閉容器551との接続部555から最も離れている為に大きく振動しやすい部分をより離すことで、圧縮機550の釜当りを抑制し、静音化が図れ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することができる。
また、本実施の形態の圧縮機550の脚560と弾性部材561との当接面Lは密閉容器551の下端面551aよりも上方に位置している為、圧縮機550の上下方向の重心Kと、圧縮機550の脚560と脚560を弾性支持する弾性部材561との当接面Lとの距離Mを、圧縮機550の上下方向の重心Kと密閉容器551の下端面551aとの距離Nよりも短くなっている。
これによって、圧縮機550に外力が作用した場合の振動の振幅は、重心付近が最も小さく重心から離れるにつれて振動が大きくなるような重心まわりに圧縮機550全体が振動することから、圧縮機550のより重心に近い部分に脚560と弾性部材561との当接面Lを位置させることにより、冷蔵庫側から圧縮機550に外力がかかった場合に、圧縮機550全体の振動を低減することができるので、さらに、冷蔵庫への振動伝達を低減できることとなり、不快な振動や、振動に起因する騒音発生の無い高品位の冷蔵庫を提供することできる。