請求項1に記載の発明は、断熱箱体と、前記断熱箱体に備えられた圧縮機と凝縮器と減圧器と蒸発器と吸入配管とを順に備えて環状の冷媒流路を形成した冷凍サイクルと、前記圧縮機内の内部構成部品である電動要素と圧縮要素とを収めた空間内に封入されるオイルとを有し、前記圧縮機は前記吸入配管の開口端が内部に開放される内部低圧型であるとともに前記電動要素を回転子に永久磁石を用いたインバーター電動機とし、かつ前記圧縮要素の軸受部を前記電動要素の回転子の高さ範囲内に嵌挿することにより、前記電動要素と前記圧縮要素とからなる前記内部構成部品を支持する支持部以外の構成要素で高さ方向の小型化を図ったものであって前記断熱箱体の天面部に形成した機械室内に配設され、前記蒸発器は前記圧縮機よりも下方に設けられ、前記圧縮機と前記蒸発器との間の前記機械室内には、前記断熱箱体を傾けた場合に前記圧縮機内部から前記蒸発器側への前記オイルの流出を防止し、かつ通常姿勢に正立させたときに圧縮機内に前記オイルが重力で戻るように運搬時のオイル滞留面に対して上方に立ち上がり構成されているオイル流出防止トラップが設けられたことを特徴とする。
これにより、客先はもとより配送から店頭までの物流を含めての冷蔵庫運搬や移設において、冷蔵庫を横倒しにして持ち運びを行う際に、圧縮機も横倒しとなり、圧縮機内部に開放された吸入配管の開口端にオイルが流入する。しかしながら吸入配管はオイル流出防止トラップが設けられているので、吸入配管内奥部に流出することがなく、さらに吸入配管から蒸発器へとオイルが逆流して流出することがない。これにより運搬などの後、冷蔵庫を起こして設置してもオイル流出防止トラップにより、圧縮機より下方にある吸入配管および蒸発器にオイルが滞留することを防止できる。
したがって、冷蔵庫天面に圧縮機を配置した上で、冷蔵庫横倒し時に、圧縮機下方に配置された吸入配管および蒸発器などにオイル流出を防止するので、圧縮機内のオイル量を確保しオイル面高さを大幅に減少させることを防止でき、圧縮機摺動部へのオイル供給を確保し、圧縮機の損傷等の危険性をさらに低減できる。
また、吸入配管の内容積を大きくすることができるので、内径拡大による低圧力損失化、および配管長さを延長しキャピラリとの熱交換長さを増加させることによる冷凍効果の拡大から省エネ化を図ることができる。
さらに、圧縮機の高さを低減するにあたって、圧縮要素および電動要素を支持する支持部を高さ低減の要素として取り込まず、圧縮要素および電動要素で高さ低減を図ることで、オイルが支持部以外の内部構成部品と緩衝せず、油面高さの変動が生じにくくなり吸入配管からのオイル流出を抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、内部低圧型の圧縮機は上下二分割の上シェルと下シェルを備え、内部に構成部品を収納した後、前記上シェルと前記下シェルとがシェル接合部において密閉接合されており、前記下シェル側に設けられた吸入配管は下シェル内壁面とほぼ同一面上で圧縮機内部に開口しているものであり、圧縮機が傾いた際に吸入配管からよりオイルがより流出しやすいような吸入配管を備えた圧縮機においても、運搬などの後、冷蔵庫を起こして設置しても、圧縮機より下方にある吸入配管および蒸発器にオイルが滞留することを防止できる。
請求項3に記載の発明は、冷凍サイクルには冷媒が封入されるとともに、前記冷媒は液化した状態において、圧縮機に封入されるオイルよりも比重が軽いものであり、圧縮機が傾いた際に吸入配管からよりオイルがより流出しやすいような冷媒とオイルの組み合わせを用いた圧縮機においても、運搬などの後、冷蔵庫を起こして設置しても、圧縮機より下方にある吸入配管および蒸発器にオイルが滞留することを防止できる。
請求項4に記載の発明は、冷凍サイクルに冷媒が封入される冷媒はR600aであり、圧縮機に封入されるオイルは鉱油を用いることで、冷媒の単位時間当たりの体積流量が増大するので、冷凍システム内を冷媒が通過する際の配管内の流速がR134aに比べて約2倍、CO2に比べて約20倍程度にまで増大するので、冷凍システム内に滞留しているオイルを圧縮機内部へ速やかに戻すことが可能となり、シェル内のオイル量不足を防止することができる。
請求項5に記載の発明は、断熱箱体は天面後方に凹み部を設け、前記凹み部に圧縮機とオイル流出防止トラップとが備えられたことを特徴とする。
これにより、冷蔵庫の運搬や移設で冷蔵庫を横倒しにして持ち運びを行う際に、圧縮機の傾きがより大きくなる天面後方部に圧縮機が備えられた場合においても、オイル流出防止トラップにより、圧縮機より下方にある吸入配管および蒸発器にオイルが滞留することを防止できる。
請求項6に記載の発明は、オイル流出防止トラップは、前記断熱箱体の前面側が上になるように傾けた場合に前記圧縮機内部から前記蒸発器側への前記オイルの流出を防止することを特徴とする。
これにより、冷蔵庫の前面の扉が上になるように横倒しにされての運搬時や移設時においても、圧縮機からのオイル流出を防止できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に示した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の概略断面図を示すものであり、図2は同実施の形態における冷蔵庫の概略背面図を示しており、図3は同実施の形態における冷蔵庫の概略部品展開図を示しており、図4は同実施の形態における冷蔵庫の吸入配管要部概略斜視図を示しており、図5は同実施の形態における冷蔵庫に搭載する圧縮機の概略断面図を示しており、図6は同実施の形態における冷蔵庫の運搬状態の概略断面図を示しており、図7は同実施の形態における冷蔵庫運搬時の圧縮機の概略断面図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図1から図4において断熱箱体1はABSなどの樹脂体を真空成型した内箱13とプリコート鋼板などの金属材料を用いた外箱14とで構成された空間に発泡充填する断熱体15を注入してなる断熱壁を備えている。断熱体15はたとえば硬質ウレタンフォームやフェノールフォームやスチレンフォームなどが用いられる。発泡材としてはハイドロカーボン系のシクロペンタンを用いると、温暖化防止の観点でさらによい。
断熱箱体1は複数の断熱区画に区分されており上部を回転扉式、下部を引出し式とする構成をとってある。上から冷蔵室2、並べて設けた引出し式の切替室16および製氷室17と、引出し式の野菜室3と引出し式の冷凍室4となっている。各断熱区画にはそれぞれ断熱扉がガスケット18を介して設けられている。上から冷蔵室回転扉5、切替室引出し扉19、製氷室引出し扉20、野菜室引出し扉6、冷凍室引出し扉7である。
冷蔵室回転扉5には扉ポケット21が収納スペースとして設けられており、庫内には複数の収納棚22が設けられてある。また冷蔵室2の最下部には貯蔵ケース23が設けてある。
また、断熱箱体1の外箱14は、天面奥部が切りかかれた鋼板をU曲げしたシェル24と底面パネル25と背面パネル26と天面後方を窪ませた凹み部27を構成する機械室パネル28とをシール性を確保して組み付けられて構成されている。機械室パネル28は鋼板の絞り加工により成型されており、加工性の向上のためにコーナー部はR形状がとられている。このR形状により発泡充填する断熱体15の分岐もしくは合流部の流路が確保されて流動性が良化され、充填不足によるボイドの発生などを防止できる。
なお、機械室パネル28は圧縮機11の配置部が最も深く、左右端に向かうに従って絞りが浅い形状とすることでも発泡充填する断熱体15の分岐もしくは合流部の流路が確保されて流動性が良化される。
さらになお、機械室パネル28は絞り加工としたので発泡充填のためのシール部が少なくてすむので工数的に有利であるし、また、板金加工により同様の形状を構成するならば絞り金型費用が少なくて済むうえに、絞りしわのない仕上げと寸法精度を上げることが可能である。
また、機械室パネル28は複数の空気抜き穴(図示せず)が各面に設けられており、外観および内観を阻害することなく残留空気によるボイドの発生や変形を防止することができる。
また、底面パネル25と背面パネル26には指先を引っ掛けることが可能な窪みからなる取っ手が設けられている。底面取っ手29は底面前方から中央にかけての位置で、前方から指先をかけられるよう二箇所に所定の間隔を置いて設けられている。背面取っ手30は背面パネル26の最上部のなるべく高い場所で上向きに指先をかけられるよう二箇所に所定の間隔を置いて設けられている。
また、内箱13は外箱14より一回り小さく、背面奥部が内側に凹んだ構成となっており、外箱14の中に組み入れることで断熱体15が発泡充填される空間が断熱箱体1に形成される。したがって、機械室パネル28の左右部も断熱体15が発泡充填されて断熱壁が構成され、強度確保される。さらに底面取っ手29や背面取っ手30も発泡充填された断熱体15により強度が確保される。
また、冷凍サイクルは凹み部27に弾性支持して配設した圧縮機11と、圧縮機11の近傍に設けた機械室ファン31と、シェル24の天面や凹み部27や底面パネル25下部やシェル24の側面などに設けた凝縮器(図示せず)と、減圧器であるキャピラリ32と、水分除去を行うドライヤ(図示せず)と、野菜室3と冷凍室4の背面で冷却ファン8を近傍に配置して設けた蒸発器9と、吸入配管33とを環状に接続して構成されている。
凹み部27はビスなどで固定された天面カバー34が設けられており、凹み部27に設けられた圧縮機11や凝縮器(図示せず)や機械室ファンやドライヤや配管などを収納してある。
キャピラリ32と吸入配管33は、おおむね同等の長さの銅管であり、端部を残して熱交換可能にはんだ付けされている。キャピラリ32は減圧のため内部流動抵抗が大きい細径の銅管が用いられており、その内径は0.6ミリから1.0ミリ程度で長さとともに調節して減圧量を設計する。吸入配管33は圧力損失を低減するために大径の銅管が用いられており、その内径は6.35ミリから7.94ミリ程度で設計されている。また熱交換部35の長さを確保するために、蛇行させてコンパクトにまとめて、冷蔵室2の背面に蛇行部がくるようにして、内箱13と背面パネル26との中間に配置され断熱体15に埋設される。キャピラリ32と吸入配管33は、一方の端部を内箱13の野菜室3後方位置から突き出し蒸発器9と接続されており、他方の端部を機械室パネル28の淵に設けた切欠部(図示せず)から上方に突き出してドライヤ(図示せず)や凝縮器および圧縮機11と各々接続されている。
なお、比較的温度の高い野菜室3の後方から配管を庫内に出し入れするので、配管出し入れによる侵入する熱量の増加影響が小さく手済み省エネに効果がある。
また、吸入配管33はオイル流出防止トラップ36が圧縮機11との接続部近傍に設けられており、凹み部27に収納されている。組立て作業性やサービス作業性を向上させることを狙いに、配管の密集度を軽減し、後方から配管接続部を目視できるようにするために、圧縮機11の配管接続部は背面側に面して圧縮機の左右に振り分けて配置されている。
吸入配管33は、圧縮機11の背面側下方部から側方に若干の上り勾配を設けて直進させた後、略垂直方向に圧縮機11の垂直方向中心線より高くかつ圧縮機11の高さより低い位置まで立ち上がり部を設ける。凹み部27を最小とし、冷蔵室庫内へのでっぱりを最小とするために圧縮機11の小型化と圧縮機周辺壁面との空間はできるだけ小さくすることが必要であり、上下方向に関しては圧縮機11の高さ以下に配管高さを設定することで配管の壁面接触防止を図ることができる。
さらに吸入配管33は垂直方向立ち上げ後、断熱箱体1の前方向に向って設けられた配管U曲げ部37で構成されたオイル流出防止トラップ36を設けてあり、配管U曲げ先端は圧縮機の平面方向中心線よりも断熱箱体の前方側に位置してある。圧縮機11は天面に向って曲率をもつ形状となっているために、圧縮機11の上方で配管曲げ部37を構成するとスペース的に余裕があり、配管収納空間を余分に取らず小型化が可能である。また、配管U曲げ部37を設けることで配管の弾性を持たせることができ、圧縮機11からの振動伝播を吸収し、配管固定部における応力集中を防ぎ配管破損の危険性を軽減できる。
吸入配管33はU曲げ後、略垂直方向に曲げられて機械室パネル28の背面端部から断熱体15内に埋設されている。
また、圧縮機11内部の構造について説明する。
図5において、2ミリから4ミリの厚手の鋼板を深絞り成形してなる鉢形状の下シェル38と逆鉢形状の上シェル39を組み合わせて重なりあった部分であるシェル接合部40aの周囲を溶接接続した密閉構造の圧縮機シェル40の内部に弾性体41で弾性支持された回転駆動部42と圧縮部43とを備え、圧縮機シェル40内部に端部を開放した吸入配管33と、吐出配管44で冷凍サイクルを構成する他の機器と接続されており、所定量のオイル45と冷媒(図示せず)が封入されている。また、下シェル38の下方部には断熱箱体1との弾性支持するための支持部46が取り付けられている。なお、支持部46は弾性支持部材の厚みを確保するための逃がしが一段の段差により設けられている。
回転駆動部42はモーター47と軸受け部48からなり、モーター47は電圧印加されて永久磁石との間に回転力を発生させる中空円柱状電磁コイルを有するステーター49と、ステーター49内部の中空部にあって微小隙間で相対させた永久磁石を有するローター50とからなり、軸受け部48は端部に偏芯シャフト51を備え、内部を両端開放中空とし、周囲に螺旋状の溝(図示せず)と内部連通する噴出穴を設けたシャフト52と、シャフト52を回転自在に保持する軸受け53で構成される。
圧縮部43は、先端にバルブ機構(図示せず)を備えたシリンダヘッド54を設けたシリンダ55と、ピストン56と、ピストン56と偏芯シャフト51とに揺動自在に取り付け回転動作を直線往復動作に変換するロッド57とで構成されている。圧縮された冷媒が直接圧縮機シェル40外部へと吐出されるようにシリンダヘッド54には吐出配管44がバルブ機構を介して接続されており、また吸入部はバルブ機構を介して圧縮機シェル40内部に開放されている。特に消音のために、吸入経路はシリンダヘッド54と機械室シェル40の吸入ガス経路間に消音マフラー(図示せず)が配設されている。
なお、吸入配管33は圧縮機シェル40の内壁面に対して開口端が面一となるように配置されており、圧縮機11の小型化を行っている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず各断熱区画の温度設定と冷却方式について説明する。冷蔵室2は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1〜5℃で設定されている。また、貯蔵ケース23は肉魚などの保鮮性向上のため比較的低めの温度、たとえば−3〜1℃で設定される。
切替室16はユーザーの設定により温度設定を変更可能であり、冷凍室温度帯から冷蔵、野菜室温度帯まで所定の温度設定にすることができる。また、製氷室17は独立の氷保存室であり、自動製氷装置(図示せず)を備えて、氷を自動的に作製、貯留するものである。氷を保存するために冷凍温度帯であるが、氷の保存が目的であるために冷凍温度帯よりも比較的高い−18℃〜−10℃の冷凍温度で設定されることも可能である。
野菜室3は冷蔵室2と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃とすることが多い。凍らない程度で低温にするほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。
冷凍室4は冷凍保存のために通常−22〜−18℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、たとえば−30や−25℃の低温で設定されることもある。
各室は異なる温度設定を効率的に維持するために断熱壁によって区分されているが、低コストでかつ断熱性能を向上させる方法として断熱体15で一体に発泡充填することが可能である。発泡スチロールのような断熱部材を用いるのに比べて約2倍の断熱性能とすることができ、仕切りの薄型化による収納容積の拡大などができる。
次に冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて温度センサ(図示せず)および制御基板からの信号により冷却運転が開始および停止される。冷却運転の指示により圧縮機11内部では回転駆動部42のモーター47にターミナル(図示せず)から電線を通して電圧印加される。
モーター47が動作するとステーター49の電磁コイルが励磁して永久磁石を有するローター50との間に回転力を発生させる。ローター50の回転により、軸受部48ではローター50に固定されたシャフト52が同期回転し、偏芯シャフト51も偏芯回転する。偏芯シャフト51の回転により揺動自在に設けられたロッド57を通して、ピストン56はシリンダ55内を往復動作する。
これにより圧縮部43で冷媒ガスの圧縮動作が行われる。つまり、ピストン56がシリンダ55から最も離れた位置に移動するときに、シリンダ55内の圧力が低下し、シリンダヘッド54に設けられた吸入部のバルブ機構(図示せず)が開放となり、圧縮機シェル40内の冷媒ガスが消音マフラー(図示せず)を経由してシリンダ55内に吸入される。次にピストン56がシリンダ55と最も近づく位置に移動するときに、吸入された冷媒ガスが圧縮されて高温高圧の冷媒ガスとなってシリンダヘッド54の吐出部からバルブ機構を介して吐出される。吐出された冷媒ガスはシリンダヘッド54に直接接続された吐出配管44を通して圧縮機シェル40外へと送られる。
このように圧縮機シェル40内は低圧の冷媒ガスが存在する内部低圧型の構成となっており、吸入配管から戻ってくる冷媒ガスは圧縮機シェル40内へと放出されている。
圧縮機11の軸受部48や圧縮部43に存在する摺動部58はオイル45により潤滑性を確保されている。さらにオイル45と冷媒ガスは相溶性のある組合せを選定してあり、オゾン破壊係数の低いR134aとエステルオイルの組合せや、特に地球温暖化係数も低く環境保護に良いハイドロカーボン系の冷媒であるHC600aと鉱油の組合せなどがある。
また、オイル45は圧縮機シェル40内に封入されており、下部に貯留されて所定のオイル面高さを確保するように封入量が決められている。摺動部58へのオイル45の供給はシャフト52の回転による遠心力でシャフト52の中空内部を伝わり行われる。シャフト52の下端がオイル45に完全につけられており、ここからシャフト52内部をさかのぼるオイル45が摺動部58の各部位に相対する位置に設けられた噴出穴(図示せず)から吹付けられている。さらに、シャフト52周囲の螺旋溝により摺動部58へのオイル45の供給を十分にいきわたらせることができる。
以上のような圧縮機11の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)にて放熱して凝縮液化し、キャピラリ32で減圧されて低温低圧の液冷媒となり蒸発器9に至る。
冷却ファン8の動作により、庫内の空気と熱交換されて蒸発器9内の冷媒は蒸発気化され、熱交換された低温の冷気をダンパ(図示せず)などで分配することで各室の冷却が行われる。
蒸発器9を出た冷媒は吸入配管33を経て圧縮機11へと吸い込まれる。このとき吸入配管33はキャピラリ32と熱交換可能にはんだ付けされて断熱体15に埋設されているので、周囲に熱が逃げることなく低温の吸入配管33から高温のキャピラリ32へと伝熱する。キャピラリ32は冷媒の減圧過程において冷却されるので比エンタルピが低下し冷凍効果が増加する。吸入配管33は冷媒温度が上昇し出口部で周囲温度とほぼ同等以上とすることができる。吸入配管33の冷媒温度が上昇するので圧縮機11に吸入される過程における熱損失は小さくて済み効率が向上する。冷凍温度を生成する冷凍サイクルは蒸発器9での冷媒温度が−20度以下の非常に低温であるために、特に熱損失を低減する効果は大きいものとなる。
また、キャピラリ32は比較的高温であるために低温部位に配置すると吸入配管33との熱交換以外に放熱が生じ、冷凍サイクルの熱損失が生じるとともに庫内への熱負荷となり省エネ性を低下させてしまうが、庫内温度の高い冷蔵室2の背面にキャピラリ32と吸入配管33を配置したので熱損失や庫内への熱負荷が大きく増加することなく、省エネ性の確保が可能である。特に熱交換部35の長さを十分に確保し、かつ冷蔵室2の背面で蛇行させてコンパクトに収納するので省エネ化と吸入配管33の十分な温度上昇が得られ、加えて、蛇行部は昇り勾配を設けトラップのない構成としてあるので、液冷媒や冷凍機オイルが滞留することがなく、圧力損失などの性能影響を引き起こすことがない。
以上のような動作を行う冷蔵庫の運搬や移設時においては、図6に示すように底面パネル25及び背面パネル26に設けた底面取っ手29と背面取っ手30を使って4人など複数人数で運搬するようにしてある。
冷蔵庫の重量は内容積の大型化や高機能化に伴う付加部品の増加や省エネ化のための密度の大きい真空断熱材使用量の増加などに伴いずいぶんと増加してきており、また冷蔵庫の外寸も高さは1800ミリ近くあるものが主流となり、幅や奥行も600ミリから750ミリ程あり、運搬の工夫は非常に重要なものとなってきている。
客先までの冷蔵庫配送時には必ずといってよいほど横倒しでの運搬形態が必要となっており、そのため底面と背面上部に取っ手が設けてある。また、配送時だけでなく、引越しや模様替えなど、冷蔵庫は電源投入直前に横倒しして運搬されることが多い。
これらの取っ手構成により、冷蔵庫は扉面を上方に向けての運搬可能となり、運搬中に扉が不意に開放されて運搬者にとって不安全となり、庫内部品や収納物が落下するなどの問題を防止することができる。
このとき天面の凹み部27に設けられている圧縮機11の内部は、図7に示すように、圧縮機シェル40内に開放された吸入配管33の開口端がオイル45中に没してしまうこととなり、吸入配管33から逆流流出が可能な状態となるが、配管U曲げ部37からなるオイル流出防止トラップ36が、運搬時のオイル45の滞留面に対して、上方に立ち上がり構成されているのでオイル45が吸入配管33内と蒸発器9内に流出することがない。運搬後の再設置時にはオイル流出防止トラップ36内のオイル45は圧縮機シェル40内へと重力で戻り、吸入配管33内をオイル45で閉塞した状態のままにすることがない。
このことから圧縮機シェル40内のオイル45が所定量確保されて摺動部58への給油不足や、特に圧縮機11のイニシャル始動となる電源投入時において摺動部58への給油不足を防止できるので、圧縮機11の損傷等の危険性をさらに低減できる信頼性の高い冷蔵庫を提供できる。
なお、凹み部27の庫内でっぱりを最小限とするために、凝縮器を薄型とし天面に配置してもよいし、箱型の構成として凹み部27に圧縮機11と機械室ファン31とを順番に並列配置して、上下方向の内容積を確保してもよいし、また凝縮器はフィンチューブタイプやワイヤーチューブタイプやスパイラルフィンチューブタイプなど外表面積を拡大させ放熱能力を増加させると、凝縮器の小型化や能力増加による省エネ化などで効果がある。
また凝縮器は強制空冷タイプだけでなく、外箱23の内側に熱伝達よく貼り付けられた銅配管で構成される自然空冷タイプであってもよいし、各室断熱扉体間の仕切りに配設して防滴防止を行うための銅配管を組み合わせてもよい。
なお、冷媒にはHC600aを用いると、さらに冷媒ガスの比容積が大きく、体積流量が増加するので熱交換部の流速も増加し、伝熱促進となり吸入配管33の温度上昇とキャピラリ32の冷却による冷凍効果の増加に対し効果が向上するとともに、冷媒との相溶性が大きく、ガス流速も大きいのでオイル45の循環性が良好となり信頼性確保の面で有利である。
またなお、電動三方弁や電動膨張弁などの流路制御手段を用いて、区画構成や温度設定の構成に応じた複数の蒸発器を使い分けたり、複数のキャピラリを切り替えたり、減圧量を制御したり、圧縮機11の停止中にガスカットなどして更なる省エネ化を図ることができる。特に流路制御手段を断熱箱体1の天面にある凹み部27に設けることで庫内への熱負荷を低減することができ、さらに省エネ効果がある。
またなお、冷蔵庫運搬用の背面取っ手30は強度が確保しやすい凹み部27の下方に設けたが、同位置で制御基板を中央にその両側に背面取っ手30を設けるならば、スペース効率よく配置でき内容積拡大の効果がある。また天面カバー34の上方左右に振り分けて背面取っ手30を設けると圧縮機11の設置空間を逃げて取っ手形状が構成できるのでスペース効率がよく、さらにもち運びにおいても、断熱箱体1のコーナー部を握ることとなるので持ちやすい効果がある。底面取っ手29においても底面前方端に設けることで、コーナー部を握ることとなり持ちやすさを向上させることができる。
なお、断熱箱体1の凹み部27は左右壁面を断熱体15で構成したが、シェル24だけで側面を構成すると、圧縮機11の放熱性が向上し、さらに凹み部27に配置する部品スペースが大きくとることができる。
なお、本実施の形態では、圧縮機11は断熱箱体1の天面後方にある凹み部27に備えることとしたが、断熱箱体1の天面部に凹部等を設けずにほぼ平面状の天面部に圧縮機11を備えた場合でも、蒸発器9が圧縮機11より下方にあるタイプの冷蔵庫においては同様に、冷蔵庫の運搬等によって横倒しをした時に、圧縮機11下方に配置された吸入配管33および蒸発器9などにオイルが流出するのを防止するので、圧縮機11内のオイル量を確保しオイル面高さを大幅に減少させることを防止でき、圧縮機11の摺動部へのオイル供給を確保し、圧縮機11の損傷等の危険性を低減できる。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫に搭載する圧縮機の概略断面図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図8において、圧縮機シェル40内で吸入配管33は圧縮機上部に向かって立ち上がりを設けてあり、さらに上部で横方向への配管曲げが設けられて開口端が中央に向かって構成されている。このように吸入配管33の構成によって設けられたオイル流出防止トラップ36により、冷蔵庫を横倒しにして持ち運びを行う際に、圧縮機11の横倒しによりオイル45が移動しても、吸入配管33の開口端がオイル45内に没することが無く逆流流出が防止できる。
したがって冷蔵庫天面に圧縮機11を配置した上で、下方に配置された吸入配管33および蒸発器9などに冷蔵庫横倒し時のオイル45の流出を防止するので、圧縮機シェル40内のオイル45が確保でき、摺動部58への十分なオイル供給が可能であり、圧縮機の損傷等の危険性をさらに低減できる。
さらにオイル45を逆流流出させないので、圧縮機11に接続される吸入配管33を直接断熱体15に埋設することができ、断熱箱体1の凹み部27の配管収納空間を削減し、庫内内容積の増加や断熱壁の厚み増による省エネ化が可能となる。
なお、圧縮機シェル40内部の吸入ガス経路に設けられた消音化のためのマフラーに吸入配管を直接接続して、マフラー内部経路でオイル流出防止トラップとなるように構成すると圧縮機構成部品の熱影響により暖められた冷媒ガスを吸入することなく、直接吸入配管から冷媒ガスを吸入するために効率が向上しさらに省エネ化が図れる。
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の吸入配管要部概略斜視図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図9において、断熱箱体1の凹み部27に設けたオイル流出防止トラップ36は蒸発器9から接続される第一の吸入配管33aと圧縮機11と接続される第二の吸入配管33bと第一、第二の吸入配管33a、33bの間に設けた各吸入配管33a、33bより管径が大きく、20ミリから40ミリの外形を有するチャンバー59で構成される。第一の吸入配管33aはチャンバー59上方から差し込まれており、内部に配管が突出して開口端が設けてあり、第二の吸入配管33bはチャンバー59下方から差し込まれており、配管開口端がチャンバー59内部の壁面と面一となるように配置されている。
これにより、冷蔵庫を横倒しにして持ち運びを行う際に、圧縮機11の横倒しによりオイル45が移動し、第二の吸入配管33bの開口端がオイル45内に没するとオイル45は一旦チャンバー59内へと流出するも、第一の吸入配管33aへの流出はチャンバー59内の配管構成により防止されるので、再度冷蔵庫の設置時には圧縮機シェル40内へとオイル45が戻り、必要量が確保される。
したがって冷蔵庫天面に圧縮機11を配置した上で、下方に配置された第一の吸入配管33aおよび蒸発器9などに冷蔵庫横倒し時のオイル45の流出を防止するので、圧縮機シェル40内のオイル45が確保でき、摺動部58への十分なオイル供給が可能であり、圧縮機の損傷等の危険性をさらに低減できる。
なお、下部から差し込まれた配管は内部に突出させて、チャンバー59の内面下端部近傍にオイル戻し穴を設けると、チャンバー59内へのオイル滞留を防止するとともに、液冷媒の過渡的な戻りに対して、一旦貯留し、圧縮機11への直接吸入を防止する緩衝機構とすることができ、圧縮機の液圧縮などを防止し、圧縮機の損傷等の危険性をさらに低減できる。
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫の吸入配管要部概略斜視図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図10において、オイル流出防止トラップ36は、圧縮機11と吸入配管33の接続部60を圧縮機11の中心線よりも断熱箱体1の前方側に配置されており、吸入配管33は圧縮機接続部60から若干の上り勾配を設けて横方向に伸ばしてから略垂直方向に立ち上がりを設けたのち、背面側で断熱体15に埋設するようにU曲げを設けてある。
これにより、冷蔵庫を横倒しにして持ち運びを行う際に、圧縮機11の横倒しによりオイル45が移動しても、吸入配管33の開口端が圧縮機11の天面側にありオイル45内に没することが無く逆流流出が防止できる。
したがって冷蔵庫天面に圧縮機11を配置した上で、下方に配置された吸入配管33および蒸発器9などに冷蔵庫横倒し時のオイル45の流出を防止するので、圧縮機シェル40内のオイル45が確保でき、摺動部58への十分なオイル供給が可能であり、圧縮機の損傷等の危険性をさらに低減できる。
また、吸入配管33との溶接接続部61を吸入配管33の背面垂直部に設けたので、配管溶接作業が容易に行える。
(実施の形態5)
図11と図12は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の吸入配管要部概略斜視図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図11において、吸入配管33は、圧縮機11の背面側下方部から側方に若干の上り勾配を設けて直進させた後、略垂直方向に圧縮機11の垂直方向中心線より高くかつ圧縮機11の高さより低い位置まで立ち上がり部を設ける。凹み部27を最小とし、冷蔵室庫内へのでっぱりを最小とするために圧縮機11の小型化と圧縮機周辺壁面との空間はできるだけ小さくすることが必要であり、上下方向に関しては圧縮機11の高さ以下に配管高さを設定することで配管の壁面接触防止を図ることができる。
さらに吸入配管33は垂直方向立ち上げ後、圧縮機11の周囲を取り巻くように、少なくとも三面は圧縮機11中心線をまたぐように配置されてオイル流出防止トラップ36を構成してある。配管U曲げ先端は圧縮機の平面方向中心線よりも断熱箱体の前方側に位置してある。圧縮機11は天面に向って曲率をもつ形状となっているために、圧縮機11の上方で配管曲げ部37を構成するとスペース的に余裕があり、配管収納空間を余分に取らず小型化が可能である。また、凹み部27内での吸入配管33長さを確保できるので配管に弾性を持たせることができ、圧縮機11からの振動伝播を吸収し、配管固定部における応力集中を防ぎ配管破損の危険性を軽減できる。
吸入配管33はオイル流出防止トラップ36の後、略垂直方向に曲げられて機械室パネル28の背面端部から断熱体15内に埋設されている。
これにより、冷蔵庫を横倒しにして持ち運びを行う際に、圧縮機11の横倒しによりオイル45が移動しても、オイル流出防止トラップ36により下方に配置された吸入配管33および蒸発器9などにオイル45の流出を防止するので、圧縮機シェル40内のオイル45が確保でき、摺動部58への十分なオイル供給が可能であり、圧縮機の損傷等の危険性をさらに低減できる。
また、冷蔵庫取っ手方向にかかわらず、冷蔵庫がさまざまな方向に横倒しされても、圧縮機周囲を取り囲むように配管トラップが設けられているので、背面方向に横倒したときと同様にオイル45の流出を防止することができるので、冷蔵庫運搬における制限が少なく搬送性が向上する。
なお、図12に示すように吸入配管33が圧縮機11からの接続部と同じ方向に配置すると圧縮機11を一周するようにオイル流出防止トラップが構成でき、さらに逆流流出しにくい構成とすることができる。
(実施の形態6)
図13は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫の吸入配管要部概略斜視図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図13において、圧縮機62はたとえばロータリータイプのように内部高圧型であり、断熱箱体1の天面後方に設けた凹み部27に配設されている。圧縮機62からの吐出配管63は圧縮機62内部に開放されており、吸入配管64は圧縮機62の吸入部へと直接接続されている。また、断熱箱体1の天面部には薄型の凝縮器65が設けられており、圧縮機62から吐出配管63により昇り勾配を持って接続されている。さらに凝縮器65は圧縮機62の吐出配管接続部66より前方でかつ高い位置に配置されている。また凝縮器65の下流部ではキャピラリ32と凹み部27の背面側に設けた接続部で接続されており作業性とサービス性の向上が図られている。
なお、この接続部近傍にドライヤ(図示せず)などを配置することもある。
凝縮器65は機械室ファン31により強制空冷されており、風路は天面ダクトカバー67でカバーと兼用して構成されている。天面ダクトカバー67には前面および側面に吸入開口部68が、背面部に吐出開口部69が設けられており、さらに凝縮器65の配置部と凹み部27との間には仕切り70を設け風路を構成している。
これにより、冷蔵庫取っ手を用いての運搬や移設において、冷蔵庫を横倒しにした際に、圧縮機も横倒しとなり、圧縮機内部に開放された吐出配管63の開口端にオイル45が流入するが、凝縮器65は上方に配置されており、凝縮機65内に向かって自重によりオイル45が流出することがない。
これにより凝縮器65にオイル45が多量に流出すると凝縮器65の配管やその下流にあるキャピラリ32がオイル閉塞し冷媒の循環を妨げることで生じる著しい性能低下や信頼性劣化に影響を与えることを防止できる。
なお、圧縮機62の周囲を取り巻くようにして、少なくとも三面の圧縮機62中心線をまたいで吐出配管63を配置すると、取っ手にかかわらず冷蔵庫の横倒し方向がいずれの方向であってもオイル45の流出を防止ることができる。
なお、凝縮器65の下流側で別に配置した凝縮器を接続しても凝縮器65が配管トラップとなるので問題ない。
なお、ロータリータイプの圧縮機を用いれば、構成部品が少なく小型化に有利であり、冷蔵室庫内のでっぱりの小型化や無効容積の削減において有利である。
(実施の形態7)
図14は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫に搭載する圧縮機の概略断面図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
圧縮機100内部の構造について説明する。
図14において、圧縮機100の構成は上シェル101と下シェル102とを重ね合わせて溶接接続した密閉構造としてあり、内部に弾性体103で弾性支持された回転駆動部104と圧縮部105とからなる内部構成部品を備えてある。また圧縮機100は、吸入配管106と吐出配管107で冷凍サイクルを構成する他の機器と接続されており、所定量のオイル108と冷媒(図示せず)が封入されている。
回転駆動部104はモーター109と軸受け部110からなり、モーター109は電圧印加されて永久磁石との間に回転力を発生させる中空円柱状電磁コイルを有するステーター111と、ステーター111内部の中空部にあって微小隙間で相対させた永久磁石を有するローター112とからなる。
なお、圧縮機100は天面に配置するために、小型化すると、配置の自由度、重量、冷蔵庫有効容積の面で有利となるが、小型化の方法として以下の方法がある。ステーター111を構成する電磁コイルに突極集中巻きタイプを用いると、巻線を集中して密に巻き込むことが可能であり、小型化することができる。また、ローター112に収納されている永久磁石は、たとえばNdなどの希土類の永久磁石としたので、一般的に用いられているフェライト磁石より、磁束密度が約4倍程度大きいため、磁石の高さを低くでき、圧縮機100を小型化することができる。
このように小型化された圧縮機100では圧縮機内容積の内、構造物である内部構成部品の占める容積が大きくなり、空間部が小さくなる。空間部が小さくなると、封入した冷凍機オイルの容積を圧迫するために冷凍機オイル面高さが上昇し、少しの傾きで吸入配管に冷凍機オイルが逆流し易くなる。
また、シャフト134はシャフト主軸部134aとシャフト主軸部134aに対して偏芯させたシャフト偏芯部134bとを備え、シャフト主軸部134aの軸受け部110として、荷重を受けるA軸受け131と、上シェル101に固定され、運搬時等に内部構成部品の傾斜防止手段として作用するB軸受け132とを有している。
圧縮部105は、先端にバルブ機構(図示せず)を備えたシリンダヘッド135を設けたシリンダ136と、ピストン137と、ピストン137と偏芯シャフト133とに揺動自在に取り付け回転動作を直線往復動作に変換するロッド138とで構成されている。
圧縮された冷媒が直接圧縮機100外部へと吐出されるようにシリンダヘッド135には吐出配管107がバルブ機構を介して接続されており、また吸入部はバルブ機構を介して圧縮機100内部に開放されている。特に消音のために、吸入経路はシリンダヘッド135と吸入配管106との経路間に消音マフラー(図示せず)が配設されている。
以上のように構成された圧縮機を有する冷蔵庫では、冷蔵庫の運搬移設時に横倒しした場合、圧縮機100が傾斜しても、上シェル101に設けられたB軸受け132で支えられているので、弾性支持された回転駆動部104や圧縮部105等の内部構成部品が下シェル102壁面に向かって大きく傾斜することがない。したがって、傾斜側に移動した冷凍機オイルの容積を圧迫することを防ぎ、空間部を確保できるので、オイル108が吸入配管より流出しやすくなるのを防止できる。
なお、本実施例ではB軸受け132で内部構成部品の傾斜防止用の軸受け構造を実現したが、傾斜防止手段はシャフト134の先端部に設けた開口部に所定の間隔で嵌合させるピンを上シェル101の天面に設けたものや、シャフト134の先端部が傾斜しないように上シェル101の天面のシャフト134外周側に設けたガイド部材や、回転駆動部104が所定量以上傾斜しないように所定間隔の隙間を設けて上、下シェル101、102に固定されたガイド部材などを用いることでも同様の効果を奏することができる。
(実施の形態8)
図15は本発明の実施の形態8における冷蔵庫に搭載する圧縮機の概略断面図であり、図16は本発明の実施の形態8における冷蔵庫に搭載する圧縮機の内部を上部から見た図である。
図において、圧縮機100内部で吸入配管200は下シェル201の圧縮機内部に延出しないようにシェル内部とほぼ同一面に配設されており、吸入マフラー202の吸入口202aと近接して対向するように配設されている。
吸入配管200のシェル内開口部がシェル内面とほぼ同一面に配設されている理由は、構造面に関してはシェル内の内部構成部品に対しての吸入配管200の物理的緩衝を防いで小型化を図るためである。
また、回転子203aと固定子203bとを有している電動要素203は、下シェル201に弾性部材を有した支持部205を介して弾性支持されており、電動要素203の上部には圧縮要素204が配置されている。
また、圧縮機100と凝縮器(図示せず)と減圧器(図示せず)と蒸発器(図示せず)とを順に備えて一連の冷媒流路を形成した冷凍サイクルには冷媒としてR600aが封入されており、圧縮機100内部にはR600aに対して相互溶解性の大きい鉱油を原料としたオイル210が封入されている。
このように、電動要素203が下部に配置されるタイプの圧縮機100においては、圧縮機100の運転に伴って回転を行う電動要素203の回転子203aがオイル210と緩衝しないように支持部205の高さや取り付け位置を配慮した上で配置をされている。
また、圧縮要素204には上シェル(図示せず)または下シェル201と一定の隙間を有した当たり部220が形成されている。
次に、圧縮機100の詳細を以下に説明する。
シャフト240は、回転子203aを圧入や焼嵌めにより固定した主軸部241と、主軸部241に対して偏芯して形成された偏芯部242を有する。シリンダブロック250は、略円筒形の圧縮室251を有するとともに、シャフト240の主軸部241を軸支する為の軸受部243を有し、電動要素203の上方に形成されている。
この時、回転子203aの圧縮要素204側には回転子凹部203cが形成されており、この回転子凹部203c内に軸受部243が延出していることで圧縮要素204を電動要素203の回転子の高さ範囲内に嵌挿することで小型化を実現している。
ピストン260は、圧縮室251に遊嵌され、連結手段261でシャフト240の偏芯部241に連結され、シャフト240の回転運動をピストン260の往復運動に変換し、ピストン260が圧縮室251の空間を拡大、縮小することでシェル内の冷媒を吸入マフラー202の吸入口202aから吸込み、シリンダヘッド252の内部に設けられたバルブ(図示せず)を介して、シリンダブロック250に形成された吐出マフラー253と吐出管254、吐出チューブ270を通ってシェルの外部の吐出配管31に吐出する。
高圧配管である吐出管254は、内径1.5mmから3.0mmの鋼管で、L字やU字曲げを使って柔軟性を持つように形成されており、圧縮要素204とシェルの吐出チューブ270とは弾性をもって接続されている。
また、電動要素203は回転子203aに永久磁石を用いたインバーター電動機を用いている。従来一般的であったインダクション電動機では、固定子203bや回転子203aの積厚が大きくないと圧縮機100の運転に必要なトルクが発生しないが、回転子203aに永久磁石を用いたインバーター電動機を用いることにより、回転トルクの発生に必要な励磁電流が必要でなくなるため固定子203bの積厚や回転子203aの積厚は低くすることが出来、電動要素203をコンパクトにすることが出来る。
次に圧縮機11の動作について説明する。
圧縮機に通電がなされると、ターミナル280、リード線281を通って電動要素203の固定子203bに電流が流れ、固定子203bが発生する回転磁界により回転子203aが回転する。回転子203aの回転により、回転子に連結されたシャフト240の偏芯部242がシャフト240の軸心より偏芯した回転運動を行う。シャフト240の偏芯運動は、偏芯部242に連結された連結手段261によって往復運動に変換され、連結手段261の他端に連結されたピストン260の往復運動となり、ピストン260は、圧縮室251内の容積を変化させながら冷媒の吸入圧縮を行う。
ピストン260が、圧縮室251内で一往復中に吸入、吐出する容積を気筒容積と云い、気筒容積の大小で冷却する能力が変化する。
次に圧縮機を停止した状態で冷蔵庫が運搬等により傾いた場合について説明する。
長時間において圧縮機100が運転されない状態であると、R600aは液化して液冷媒290となって、液化したR600aよりも比重の重い鉱油であるオイル210の上部に貯留される。このように冷媒が液化した状態で液冷媒がオイルの上部に貯留される汎用の冷媒としてはCO2冷媒と、エステル油やエーテル油の組み合わせでも同様となる。これに対して、例えば従来冷媒として一般的に用いられていたR134aとエステル油の場合ではオイルと液冷媒の上下関係は逆となり、液冷媒が下部に貯留され、その上部にエステル油が貯留される。
本実施の形態のように、液冷媒290がオイル210の上部に貯留されるタイプの冷媒とオイルの組み合わせを用いた圧縮機100においては、圧縮機100を傾けると下シェル201の内壁面とほぼ同一面に開口されている吸入配管200に下部に貯留されているオイル210が達すると、シェルの外へと容易に流出することで、シェル内部のオイル210が減少し油面高さが減少してしまう。
このように油面高さが低下すると、圧縮要素204の摺動部に供給されるオイル量が減少し、摺動部の摩耗等が発生する可能性があり、信頼性が低下してしまうおそれがあった。
この課題に対して本発明においては、単位体積当たりの冷凍能力がR134aに比べて約1/2程度、CO2に比べて約1/20程度まで小さい冷媒であるR600aを用いている。これによって、R134aやCO2と同等の冷凍能力を得る為に、気筒容積をR134aに比べて約2倍、CO2に比べて20倍程度まで大きくするので、圧縮機のピストン押しのけ量もこの気筒容積の増加に比例して増大する。すなわち、冷媒の単位時間当たりの体積流量が増大するので、冷凍システム内を冷媒が通過する際の配管内の流速がR134aに比べて約2倍、CO2に比べて約20倍程度にまで増大するので、冷凍システム内に滞留しているオイル210を圧縮機100内部へ速やかに戻すことが可能となり、シェル内のオイル量不足を防止することができる。
また、このような冷蔵庫の運搬等による冷凍機油面の低下については、圧縮機の電源を入れた直後から10分間程度のうちの少なくとも半分である5分間以上においては、圧縮機の回転数を商用電源周波数より高い回転数で駆動するようなインバーター装置を用いると、高回転によって圧縮機のピストン押しのけ量が増大することで、冷凍システム内を冷媒が通過する際の配管内の流速がより増大するので、冷凍システム内に滞留しているオイル210を圧縮機100内部へより速やかに戻すことができ、シェル内のオイル量不足を防止することができる。
また、本実施の形態の圧縮機100では圧縮機の高さ方向の小型化を実現しており、従来の一般的な小型圧縮機の全高190〜200mmに対して、本実施の形態の圧縮機100は145mm程度まで高さ方向における小型化を図っている。
このような圧縮機の全高に対する小型化を行うにあたっては、信頼性の低下を避ける為、圧縮機の内部に封入するオイル量の油面高さについては一般的な従来の小型圧縮機と同等の30mm程度を確保した為に、従来の圧縮機の全高に対するオイル油面高さが12〜13%程度であったのに対して、本実施の形態の小型圧縮機においては圧縮機の全高に対するオイル油面高さが17%程度まで増大しており、圧縮機が傾いた場合のオイル流出がより大きな課題となっていた。
この課題に対して、本実施の形態の圧縮機100は小型化を実現するにあたって、圧縮要素204および電動要素203の高さを低減することで、圧縮機を小型化している。
すなわち、圧縮要素204および電動要素203からなる機械部を弾性的に支持する支持部205の部分を高さ低減の要素として取り込まず、圧縮要素204および電動要素203の機械部すなわち内部構成部品で高さ低減を図ることで、オイル210が機械部の電動要素203と緩衝せず、かつ油面高さの変動が生じにくい配慮をしている。
このように、冷蔵庫本体の上部に圧縮機100を配置する形態において、大きな課題となる圧縮機100の高さ方向の小型化に関して、小型化を図る要素や観点の中でも、特に、オイル流出を促進する方向でない、換言すればオイル流出抑制に関わる信頼性維持のための特有の上述の小型化要素の組み合わせ構成を採用している。
また、オイル210の油面の最上部から吸入配管200の開口部までの高さについては従来の圧縮機と同等以上の寸法関係を確保することによってもオイル210の流出を抑制することができる。例えば、吸入配管200のシェルへの開口位置はシェル内の最大高さに対して1/2高さより上部に位置していることで、圧縮機100が傾いた場合のオイル流出を防止する効果を大きくすることができる。
また、本実施の形態においては圧縮要素204には上シェル(図示せず)または下シェル201と一定の隙間を有した当たり部220が形成されているので、圧縮機が傾いた際には当たり部220と上シェルもしくは下シェル201とが当接することで、大きな圧縮要素204および電動要素203からなる機械部は大きく傾斜することがない。したがって、傾斜側に移動したオイルの容積を機械部が圧迫することを防ぎ、空間部を確保できるので、オイル108が吸入配管より流出しやすくなるのを防止できる。
(実施の形態9)
図17は、本発明の実施の形態9における冷蔵庫に搭載する圧縮機の概略断面図を示している。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
圧縮機100内部で吸入配管106はシェルの内部に延出しており、吸入マフラー139に弾性部材であるスプリング106aを介して接合されたダイレクトサクションタイプであり、吸入マフラー139の内部空間経路を経てシリンダ136内へと通じている。また、吸入配管106のシェル内部側は上方に向かった曲げ部を有しており、シェル内には上方に向かって開口するとともに、弾性部材であるスプリング106aと連結している。
また吸入マフラー139はシリンダヘッド135へと経路がつながっており、シリンダ136やシリンダヘッド135と同方向に配置される。さらに吸入配管106も吸入マフラー139と接続するために同方向に配置されている。吐出配管107は圧力脈動の低減のため配管の弾性を高めるように所定の配管長さをとってシリンダヘッドと反対側で下シェルと取り付けてある。吸入配管106と吐出配管107を反対側で構成することでより小型の圧縮機100の構成が可能となる。
以上のようなダイレクトサクションの構成により、圧縮機100が傾斜した場合でもシリンダ136の隙間やシリンダヘッド135のバルブ隙間や、吸入マフラー139に設けられたオイル108戻し穴(図示せず)など微小空間を通してしか、オイル108の逆流流出が発生しない。
なお、吸入配管106と吸入マフラー139との接合は密着巻きされたスプリングで構成すると、圧縮振動の伝達低減となる上に、オイル108も粘性によりスプリング隙間からの流出が低減できるので、オイル108の逆流を低減することが可能である。
なお、吸入配管106と吸入マフラー139とを接続する弾性部材として、本実施の形態ではスプリングを用いたが、ゴム等の弾性的な樹脂を用いても良い。