JP2006170143A - スタータ - Google Patents

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Abstract

【課題】同軸上に配列された複数のはすば歯車(第1の減速ギヤ14と第2の減速ギヤ15)を有し、この複数のはすば歯車に発生する総スラスト力が略0になる様に構成する。【解決手段】同軸上に配列される第1の減速ギヤ14と第2の減速ギヤ15は、歯筋のねじれ方向が同一であり、それぞれに発生するスラスト力の合計(総スラスト力)が略0になる様に、ねじれ角およびピッチ円半径が設定される。例えば、要求される減速比を固定して、総スラスト力が略0になる様に、第2の減速ギヤ15のねじれ角を設定する。これにより、スラスト用の軸受を使用する必要はなく、且つ中間軸23を支持するハウジング22の軸受部(フランジ部22b)の強度を必要以上に大きくしなくても良いため、軸受構造を簡素化でき、コストダウンが可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数のはすば歯車が同軸上に配列される減速装置を備えたスタータに関する。
従来、減速装置を用いてモータの回転力を増大することで、モータを小型軽量化した減速型スタータが知られている(特許文献1参照)。しかし、減速型スタータに多く用いられる遊星歯車減速機構等の様に、歯車同士が噛み合う減速装置では、歯車の噛み合い騒音が発生する問題がある。
これに対し、減速装置にヘリカルギヤ(はすば歯車)を用いると、スバーギヤ(平歯車)を使用した場合と比較して、噛み合い率が向上するため、動力の伝達が滑らかであり、騒音を低減できることが知られている。
特開2003−74449号公報
ところが、はすば歯車を用いた減速装置では、歯筋のねじれ角に応じて軸方向にスラスト力が発生するため、そのスラスト力を考慮した軸受構造が必要である。具体的には、スラスト用の軸受を使用する、歯車軸を支持するハウジング軸受部の強度を大きくする等の対応が要求される。その結果、軸受構造が複雑になり、コストが高くなるという問題を生じる。また、スラスト力を受けるスラスト用の軸受が、ハウジング等の壁面に摺接して回転ロスを生じると、スタータの性能低下(エンジン始動性の低下)を招く恐れがある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、同軸上に配列された複数のはすば歯車を有する減速装置を備え、複数のはすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に構成されたスタータを提供することにある。
(請求項1の発明)
本発明は、回転力を発生するモータと、このモータの回転を減速する減速手段とを備え、減速手段で増大された回転力をエンジンのクランク軸に伝達してエンジンを始動させるスタータであって、減速手段は、同軸上に配列された複数のはすば歯車を有し、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のピッチ円半径、ねじれ角、およびねじれ方向が設定されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になるので、スラスト力を考慮した軸受構造を採用する必要がない。つまり、スラスト用の軸受を使用する必要はなく、歯車軸を支持する軸受部の強度を必要以上に大きくしなくても良いため、軸受構造を簡素化でき、コストダウンが可能である。
また、スラスト用の軸受を廃止できるので、回転ロスが発生することもなく、スタータの性能低下を防止できる。
(請求項2の発明)
請求項1に記載したスタータにおいて、減速手段は、要求される減速比が得られる様に、複数のはすば歯車のピッチ円半径をそれぞれ適宜に設定した上で、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のねじれ角が設定されることを特徴とする。
この場合、複数のはすば歯車のピッチ円半径を固定できるので、スタータの大幅な設計変更を必要とすることはなく、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のねじれ角を設定すれば良い。
(請求項3の発明)
請求項1に記載したスタータにおいて、減速手段は、複数のはすば歯車のねじれ角をそれぞれ任意に設定した上で、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のピッチ円半径が設定されることを特徴とする。
この場合、複数のはすば歯車のねじれ角を固定できるので、既存の歯切カッターを用いて歯切加工できる。
(請求項4の発明)
請求項1に記載したスタータにおいて、減速手段は、複数のはすば歯車のねじれ角を全て同一に設定した上で、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のピッチ円半径が設定されることを特徴とする。
この場合、複数のはすば歯車のねじれ角を同一にできることから、全てのはすば歯車を同一の歯切カッターで歯切加工できるため、生産性が向上する。
(請求項5の発明)
本発明は、回転力を発生するモータと、このモータの回転を出力する出力軸と、この出力軸の外周に係合して出力軸と一体に回転するスタータギヤと、両端部がハウジングに支持されて出力軸と平行に配置される中間軸と、この中間軸に軸受を介して回転自在に支持され、スタータギヤに噛み合って回転する第1の減速ギヤと、この第1の減速ギヤと同軸上にクラッチを介して配置され、第1の減速ギヤの回転がクラッチを介して伝達される第2の減速ギヤとを備え、第2の減速ギヤが、エンジンのクランク軸に設けられたクランクギヤに噛み合わされ、第2の減速ギヤからクランクギヤに回転力を伝達してエンジンを始動させるスタータであって、スタータギヤ、第1の減速ギヤ、および第2の減速ギヤには、それぞれはすば歯車が用いられている。また、第1の減速ギヤと第2の減速ギヤは、歯筋のねじれ方向が同一であり、且つ第1の減速ギヤに作用するスラスト力と第2の減速ギヤに作用するスラスト力との合計が略0になる様に、両者のピッチ円半径およびねじれ角が設定されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、第1の減速ギヤに発生するスラスト力と第2の減速ギヤに発生するスラスト力との合計が略0になるので、スラスト力を考慮した軸受構造を採用する必要がない。つまり、スラスト用の軸受を使用する必要はなく、中間軸を支持するハウジング軸受部の強度を必要以上に大きくしなくても良いため、軸受構造を簡素化でき、コストダウンが可能である。
また、スラスト用の軸受を廃止できるので、回転ロスが発生することもなく、スタータの性能低下を防止できる。
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
図1はスタータ1の半断面図である。
実施例1に係るスタータ1は、図2に示す様に、回転力を発生するモータ2と、このモータ2の通電回路に設けられるモータ接点(図示せず)を開閉する電磁スイッチ3と、モータ2の回転を減速してエンジンのクランクギヤ4に伝達する減速手段(後述する)等より構成される。
モータ2は、磁束を発生する界磁5と、整流子6を有する電機子7、および整流子6上に配置されるブラシ8等を有する周知の直流電動機であり、電磁スイッチ3によってモータ接点が閉成すると、バッテリ(図示せず)から給電されて、電機子7に回転力を発生する。
電磁スイッチ3は、例えば、運転者が手動操作する始動スイッチ(図示せず)の閉操作によってバッテリから通電される励磁コイルと、この励磁コイルが発生する磁力を受けて作動するプランジャと、このプランジャと一体に、またはプランジャの動きに連動して可動する可動接点と、2本の外部端子9、10(図1参照)を介してモータ2の通電回路に接続される一組の固定接点等を内蔵し、可動接点が一組の固定接点に当接して、両固定接点間を導通することでモータ接点が閉状態となり、可動接点が一組の固定接点から離れて、両固定接点間の導通が遮断されることでモータ接点が開状態となる。
減速手段は、電機子7の回転を減速して出力軸11に伝達する減速装置12と、出力軸11の外周に係合して出力軸11と一体に回転するスタータギヤ13と、このスタータギヤ13に噛み合って回転する第1の減速ギヤ14と、この第1の減速ギヤ14と同軸上に配置される第2の減速ギヤ15とを備え、この第2の減速ギヤ15が、エンジンのクランク軸16(図1参照)に設けられたクランクギヤ4に常時噛み合わされ、第2の減速ギヤ15からクランクギヤ4に回転力が伝達される。なお、クランクギヤ4は、エンジンのクランク軸16を支持するクランクケース(図示せず)の内部に配設されている。
減速装置12は、電機子軸7aに形成された太陽ギヤ17と、緩衝装置(以下に説明する)を介して回転規制された内歯ギヤ18とに噛み合う複数の遊星ギヤ19を有し、この遊星ギヤ19が自転しながら太陽ギヤ17の周囲を公転する周知の遊星歯車減速機であり、遊星ギヤ19の公転運動が出力軸11に伝達される。
緩衝装置は、摩擦力によって回転規制された回転ディスク20を有し、この回転ディスク20の静止トルクを越える過大トルクが内歯ギヤ18に加わると、回転ディスク20が滑る(回転する)ことで、内歯ギヤ18の回転が許容されて過大トルクを吸収する。
スタータギヤ13は、出力軸11の先端部に直スプライン結合されると共に、一組の軸受21を介して、スタータ1のハウジング22に回転自在に支持されている。
第1の減速ギヤ14は、出力軸11と平行に配置された中間軸23に軸受24を介して回転自在に支持されている。この第1の減速ギヤ14は、スタータギヤ13よりピッチ円半径が大きく、歯数が多く設けられている。
中間軸23は、図2に示す様に、ハウジング22の取付け面22aよりクランクケースの内部あるいはオイルパンの内部へ突き出るフランジ部22bに固定されている。
第2の減速ギヤ15は、クラッチ25を介して第1の減速ギヤ14に連結され、この第1の減速ギヤ14と回転中心が同一、つまり中間軸23を中心にして配設されている。この第2の減速ギヤ15は、図3に示す様に、第1の減速ギヤ14よりピッチ円半径が小さく、歯数が少なく設けられている(図3において、第1の減速ギヤ14のピッチ円半径をr1、第2の減速ギヤ15のピッチ円半径をr2で表す)。
上記のスタータギヤ13、第1の減速ギヤ14、および第2の減速ギヤ15には、歯筋がねじれたヘリカルギヤ(はすば歯車)が用いられている。このはすば歯車を使用すると、はすば歯車同士が噛み合って回転する際に、接線方向と軸方向および半径方向にそれぞれ分力が発生する。例えば、図4に示す様に、スタータギヤ13に噛み合う第1の減速ギヤ14には、歯筋のねじれ角β1に応じて、接線方向分力(垂直荷重Kt1)と、軸方向分力(スラスト力Ka1)、および半径方向分力Kr1が発生する。同様に、クランクギヤ4に噛み合う第2の減速ギヤ15には、接線方向分力(垂直荷重Kt2)と、軸方向分力(スラスト力Ka2)、および半径方向分力Kr2が発生する(図5参照)。
ここで、第1の減速ギヤ14に発生するスラスト力Ka1と、第2の減速ギヤ15に発生するスラスト力Ka2とに注目すると、図5(b)に示す様に、両ギヤ14、15の歯筋のねじれ方向を同一にすると、Ka1の向きとKa2の向きとが反対になるため、Ka1とKa2の大きさを略等しくできれば、総スラスト力(Ka1+Ka2)を略0にできる。そこで、実施例1では、第1の減速ギヤ14と第2の減速ギヤ15の歯筋のねじれ方向が同一(実施例1では共に左)であり、且つ、Ka1とKa2との合計、つまり総スラスト力が略0になる様に、両ギヤ14、15のピッチ円半径r1、r2およびねじれ角β1、β2が設定されている(後述する)。
クラッチ25は、図3に示す様に、第1の減速ギヤ14と一体に回転するインナ部25aと、第2の減速ギヤ15と一体に回転するアウタ部25b、およびインナ部25aとアウタ部25bとの間のトルク伝達を断続する複数のスプラグ25c等より構成される。
インナ部25aは、第1の減速ギヤ14のボス部と一体に設けられ、そのボス部から軸方向に延出して、反ボス部側の端部が中間軸23に軸受26を介して回転自在に支持されている。アウタ部25bは、第2の減速ギヤ15の内周に圧入等により固定されている。このアウタ部25bとインナ部25aは、スプラグ25cの軸方向両側に配設される一組のボールベアリング27を介して相対回転可能に設けられている。
このクラッチ25は、スプラグ25cを介してインナ部25aからアウタ部25bにトルク伝達を行うと共に、アウタ部25bからインナ部25aへのトルク伝達を遮断する一方向クラッチ25として構成されている。従って、エンジンの始動により第2の減速ギヤ15の回転速度が第1の減速ギヤ14の回転速度を上回ると、スプラグ25cが空転してアウタ部25bからインナ部25aへのトルク伝達が遮断されることで、第1の減速ギヤ14の回転が第2の減速ギヤ15に伝達されることを防止できる。
次に、スタータ1の作動を説明する。
電磁スイッチ3によりモータ接点が閉じて電機子7に給電されると、電機子7に回転力が発生し、その電機子7の回転が減速装置12で減速されて出力軸11に伝達される。出力軸11の回転は、スタータギヤ13に噛み合う第1の減速ギヤ14によって減速され、更にクラッチ25を介して第2の減速ギヤ15に伝達されることにより、第2の減速ギヤ15からクランクギヤ4に回転力が伝達されて、エンジン2がクランキングする。
エンジン始動後は、クランクギヤ4に常時噛み合う第2の減速ギヤ15がエンジン2によって高速で回されると、クラッチ25が切り離される(スプラグ25cが空転する)ことで、第2の減速ギヤ15から第1の減速ギヤ14へのトルク伝達が遮断されて、第2の減速ギヤ15のみ回転する。
続いて、第1の減速ギヤ14に発生するスラスト力ka1と、第2の減速ギヤ15に発生するスラスト力ka2について説明する。
一般的なガソリンエンジン(排気量が0.66〜3.0L)では、クランキング時の必要トルクが、エンジンのクランク軸16上で、およそ20〜200Nmまで変化することが知られている。ここで、クランクギヤ4の歯数を61枚、第2の減速ギヤ15の歯数を18枚と仮定すると、減速比が3.39(≒61/18)となるため、中間軸23上でクランキングに必要な軸トルクは5.9〜59Nm(≒20/3.39〜200/3.39)となる。
この軸トルクの値、すなわち第1の減速ギヤ14に働く軸モーメントM1は、第1の減速ギヤ14の接線方向に発生する垂直荷重Kt1と、第1の減速ギヤ14のピッチ円半径r1との積である。従って、r1を例えば50mmに設定して、以下の(1)式よりKt1求めると、Kt1=118〜1180Nとなる。
Kt1=M1/r1……………………………………………………………(1)
また、第1の減速ギヤ14に働く軸モーメントM1は、第2の減速ギヤ15に働く軸モーメントM2と大きさが同じであるが、第1の減速ギヤ14に発生する垂直荷重Kt1と、第2の減速ギヤ15に発生する垂直荷重Kt2とのベクトルが反対(図5参照)であるため、以下の(2)式に示す様に、M1とM2の合計は0になる。
M1+M2=Kt1×r1+Kt2×r2=0……………………………(2)
そこで、上記(1)式で求められるKt1を入力として、第1の減速ギヤ14と第2の減速ギヤ15のピッチ円半径r1、r2を任意に設定すると、(2)式よりKt2を求めることができる。
第1の減速ギヤ14に発生するスラスト力Ka1、および第2の減速ギヤ15に発生するスラスト力Ka2は、それぞれ以下の(3)、(4)式で表される。
Ka1=Kt1×tanβ1…………………………………………………(3)
Ka2=Kt2×tanβ2…………………………………………………(4)
そこで、第1の減速ギヤ14と第2の減速ギヤ15の諸元を下記表(1)のように仮定してスラスト力Ka1、Ka2を求め、総スラスト力(Ka1+Ka2)が回転角度に応じて変化する様子をグラフに表すと、図6の様になる。この場合、最大で670Nmの総スラスト力が発生するため、この荷重に耐え得る軸受構造と強度が必要となる。
Figure 2006170143
次に、総スラスト力(Ka1+Ka2)が略0になる様に、要求される減速比を固定して、第2の減速ギヤ15のねじれ角β2を設定する方法について説明する。
第1の減速ギヤ14の垂直荷重Kt1は、上述した様に、ピッチ円半径r1を50mmに設定した場合に、Kt1=118〜1180Nとなる。
ここでは、Kt1=1180N(最大)の時を例として、上記(2)式を基にKt2を求める。
Kt2=(1180×50/1000)/(−25/1000)=−2360(N)
なお、第1の減速ギヤ14のねじれ角β1とピッチ円半径r1、および第2の減速ギヤ15のピッチ円半径r2は、上記の場合と同じである。
総スラスト力(Ka1+Ka2)が0になるためには、以下の(5)式が成立する。
Ka1+Ka2=Kt1×tanβ1+Kt2×tanβ2
=1180×tan20°−2360×tanβ2=0………………(5)
この(5)式からtan-1β2を求める以下の(6)式に変換して、β2を求める。
tan-1β2=1180×tan20°/2360………………………(6)
β2=−10.314°
これにより、下記表(2)に示される第1の減速ギヤ14および第2の減速ギヤ15の諸元を基に、スラスト力Ka1、Ka2を求め、総スラスト力(Ka1+Ka2)が回転角度に応じて変化する様子をグラフに表すと、図7の様になる。このグラフからも分かる様に、第1の減速ギヤ14に発生するスラスト力Ka1と、第2の減速ギヤ15に発生するスラスト力Ka2とが略同じ大きさとなり、両者の荷重方向(ベクトル)が反対であるため、総スラスト力(Ka1+Ka2)は限りなく0に近くなる。
Figure 2006170143
(実施例1の効果)
実施例1に示すスタータ1は、第1の減速ギヤ14に発生するスラスト力Ka1と、第2の減速ギヤ15に発生するスラスト力Ka2との合計が略0になるので、スラスト力を考慮した軸受構造を採用する必要がない。つまり、スラスト用の軸受を使用する必要はなく、且つ中間軸23を支持するハウジング22の軸受部(フランジ部22b)の強度を必要以上に大きくしなくても良いため、軸受構造を簡素化でき、コストダウンが可能である。
また、スラスト用の軸受を廃止できるので、回転ロスが発生することもなく、スタータ1の性能低下を防止できる。
さらに、第2の減速ギヤ15のピッチ円半径r2を固定した上で、総スラスト力が略0になる様に、第2の減速ギヤ15のねじれ角β2を求めているので、軸間距離(出力軸11と中間軸23との距離、および中間軸23とクランク軸16との距離)を変更する必要がなく、本発明の構成を低コストに実現できる。
この実施例2では、第2の減速ギヤ15のねじれ角β2を固定して、総スラスト力が略0になる様に、第2の減速ギヤ15のピッチ円半径r2を求める方法について説明する。 Kt1=118N(最小)の時を例にとると、第2の減速ギヤ15の垂直荷重Kt2は、上記(2)式を変換して、以下の(7)式で表される。
Kt2=−Kt1×r1/r2
=(−118×50/1000)/(r2/1000)………………(7)
また、実施例1と同様に、上記(3)、(4)、(5)式が成立する。
Ka1=Kt1×tanβ1…………………………………………………(3)
Ka2=Kt2×tanβ2…………………………………………………(4)
Ka1+Ka2=Kt1×tanβ1+Kt2×tanβ2=0………(5)
ここで、第2の減速ギヤ15のねじれ角β2を25°に固定して、Kt1、β1、およびKt2と共に、上記(5)式に代入すると、以下の(8)式が得られる。
Ka1+Ka2=118×tan20°+Kt2×tan25°
=118×tan20°+{(−118×50/1000)/(r2/1000)} ×tan25°=0…………………………………………………………(8)
この(8)式よりr2を求める。
r2=118×50/1000×tan25°/(118×tan20°)
=64.06(mm)。
これにより、下記表(3)に示される第1の減速ギヤ14および第2の減速ギヤ15の諸元を基に、スラスト力Ka1、Ka2を求め、総スラスト力(Ka1+Ka2)が回転角度に応じて変化する様子をグラフに表すと、図8の様になる。
Figure 2006170143
この実施例2においても、図8に示すグラフから分かる様に、第1の減速ギヤ14に発生するスラスト力Ka1と、第2の減速ギヤ15に発生するスラスト力Ka2とが略同じ大きさとなり、両者の荷重方向(ベクトル)が反対であるため、総スラスト力(Ka1+Ka2)は限りなく0に近くなる。従って、実施例1と同様に、スラスト用の軸受を使用する必要はなく、且つ中間軸23を支持するハウジング22の軸受部(フランジ部22b)の強度を必要以上に大きくしなくても良いため、軸受構造を簡素化でき、コストダウンが可能である。
また、スラスト用の軸受を廃止できるので、回転ロスが発生することもなく、スタータ1の性能低下を防止できる。
さらに、この実施例2の方法では、第2の減速ギヤ15のねじれ角β2を固定できるので、既存の歯切カッターを用いて歯切加工できる。また、第1の減速ギヤ14のねじれ角β1と、第2の減速ギヤ15のねじれ角β2とを同一に設定すれば、同一の歯切カッターで歯切加工できるため、生産性が向上する。
(変形例)
実施例1および実施例2では、同軸上に配列される2個のはすば歯車、つまり第1の減速ギヤ14と第2の減速ギヤ15とに発生する総スラスト力が略0になる様に、第1の減速ギヤ14と第2の減速ギヤ15のねじれ角およびピッチ円半径を設定しているが、請求項1〜4に係わる何れかの発明は、同軸上に3個以上のはすば歯車を有する構成にも適用できる。
スタータの半断面図である。 軸方向から見たスタータの正面図である。 第1の減速ギヤと第2の減速ギヤのねじれ角およびピッチ円半径を説明する図面である。 第1の減速ギヤに発生する分力の説明図である。 (a)第1の減速ギヤと第2の減速ギヤとに発生する分力を示すスタータの軸方向正面図、(b)第1の減速ギヤと第2の減速ギヤとに発生する分力を示すスタータの一部断面図である。 総スラスト力(総スラスト力≠0)の変化をグラフ化した図面である。 総スラスト力の変化をグラフ化した図面である(実施例1)。 総スラスト力の変化をグラフ化した図面である(実施例2)。
符号の説明
1 スタータ
2 モータ
4 クランクギヤ
11 出力軸
12 減速装置(減速手段)
13 スタータギヤ
14 第1の減速ギヤ(はすば歯車/減速手段)
15 第2の減速ギヤ(はすば歯車/減速手段)
16 クランク軸
22 ハウジング
23 中間軸
24 軸受
25 クラッチ

Claims (5)

  1. 回転力を発生するモータと、
    このモータの回転を減速する減速手段とを備え、
    前記減速手段で増大された回転力をエンジンのクランク軸に伝達して前記エンジンを始動させるスタータであって、
    前記減速手段は、同軸上に配列された複数のはすば歯車を有し、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のピッチ円半径、ねじれ角、およびねじれ方向が設定されていることを特徴とするスタータ。
  2. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記減速手段は、要求される減速比が得られる様に前記複数のはすば歯車のピッチ円半径をそれぞれ適宜に設定した上で、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のねじれ角が設定されることを特徴とするスタータ。
  3. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記減速手段は、前記複数のはすば歯車のねじれ角をそれぞれ任意に設定した上で、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のピッチ円半径が設定されることを特徴とするスタータ。
  4. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記減速手段は、前記複数のはすば歯車のねじれ角を全て同一に設定した上で、各はすば歯車に発生するスラスト力の合計が略0になる様に、各はすば歯車のピッチ円半径が設定されることを特徴とするスタータ。
  5. 回転力を発生するモータと、
    このモータの回転を出力する出力軸と、
    この出力軸の外周に係合して前記出力軸と一体に回転するスタータギヤと、
    両端部がハウジングに支持されて前記出力軸と平行に配置される中間軸と、
    この中間軸に軸受を介して回転自在に支持され、前記スタータギヤに噛み合って回転する第1の減速ギヤと、
    この第1の減速ギヤと同軸上にクラッチを介して配置され、前記第1の減速ギヤの回転が前記クラッチを介して伝達される第2の減速ギヤとを備え、
    前記第2の減速ギヤが、エンジンのクランク軸に設けられたクランクギヤに噛み合わされ、前記第2の減速ギヤから前記クランクギヤに回転力を伝達して前記エンジンを始動させるスタータであって、
    前記スタータギヤ、前記第1の減速ギヤ、および前記第2の減速ギヤには、それぞれはすば歯車が用いられると共に、前記第1の減速ギヤと前記第2の減速ギヤは、歯筋のねじれ方向が同一であり、且つ前記第1の減速ギヤに作用するスラスト力と前記第2の減速ギヤに作用するスラスト力との合計が略0になる様に、両者のピッチ円半径およびねじれ角が設定されていることを特徴とするスタータ。
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