図1及び図2は、本発明の実施形態によるエンジンの概略構成を示している。これらの図において、エンジン本体1には、気筒2が配設され、各気筒2には、ピストン3が嵌挿されることにより、その上方に燃焼室4が形成されている。上記ピストン3は、図外のコンロッドを介してクランクシャフト5に連結されている。
上記気筒2の燃焼室4には、その頂部に点火プラグ13が装備されているとともに、吸気ポート6及び排気ポート7が開口し、この吸気ポート6には、燃料噴射弁8が設けられている。この燃料噴射弁8は、図外のニードル弁及びソレノイドを内蔵し、パルス信号が入力されることにより、このパルス入力時にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を吸気ポート6に噴射するように構成されている。
上記吸気ポート6及び排気ポート7には、吸気弁6a及び排気弁7aがそれぞれ装備されている。これらの吸気弁6a及び排気弁7aは、カムシャフト等を有する動弁機構により駆動されるようになっている。そして、各気筒2が所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように、各気筒2の吸気弁6a及び排気弁7aの開閉タイミングが設定されている。
上記吸気ポート6及び排気ポート7には、吸気通路9及び排気通路10が接続されている。この吸気通路9には、メインスロットル弁12及びサブスロットル弁46が配設されている。上記メインスロットル弁12は、上記吸気通路9におけるサージタンク48よりも上流側に配置され、アクチュエータ12aにより駆動されるようになっている。一方、上記サブスロットル弁46は、上記吸気通路9におけるサージタンク48よりも下流側の気筒別吸気通路に配設され、アクチュエータ46aにより駆動されるようになっている。上記アクチュエータ46aには、上記サブスロットル弁46の開度を検出するサブスロットル開度センサ47が設けられている。このサブスロットル開度センサ47は、サブスロットル弁46の開度の検出だけでなく、上記アクチュエータ46aからの作動信号が入力されたときに実際にサブスロットル弁46が作動したか否かの検出にも利用される。
また、エンジン本体1のクランクシャフト5に対し、その回転角を検出するクランク角センサ14が設けられている。
図2に示すように、上記クランクシャフト5には、その一端部にエンジン本体1の回転を変速して車輪15に伝達するトランスミッション16が配設されているとともに、他端部にエンジンの再始動装置が配設されている。この再始動装置は、車両に搭載されたバッテリ18からインバータ19を介して供給された電力により回転駆動される再始動モータ(モータの一例)20と、この再始動モータ20の駆動力をクランクシャフト5に伝達するチェーン又はベルトを有する動力伝達機構21とを有している。上記再始動モータ20は、内蔵された図略のクラッチにより、上記バッテリ18からの供給電力により上記クランクシャフト5を駆動させる作動状態、上記クランクシャフト5に対する駆動連結を解除したニュートラル状態、又は上記クランクシャフト5からの逆作動により発電して上記バッテリ18に充電する充電状態の何れかの状態に切換可能とされている。
そして、上記再始動装置は、エンジンの再始動時に後述するECU(エンジンコントロールユニット:図3参照)30から出力される制御信号に応じ、上記再始動モータ20が上記作動状態となってクランクシャフト5を回転駆動し、上記ニュートラル状態となってクランクシャフト5に対する負荷を解除し、上記発電状態となって発電してこの電力を上記バッテリ18に充電するように構成されている。また、上記再始動モータ20には、その回転角を検出する回転角センサ22が設けられている。
上記ECU30には、図3に示すように、アクセルペダルの踏込状態を検出するアクセルセンサ32、上記サブスロットル開度センサ47、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ33、運転者によるイグニッションキーの操作に応じてON又はOFF操作されるイグニッションスイッチ34、ブレーキペダルの踏込状態を検出するブレーキスイッチ35又は、バッテリ残量を検出するバッテリ残量センサ36からそれぞれ出力される各検出信号が入力されるようになっている。
また、上記ECU30には、エンジン回転数を検出するクランク角センサ14、上記再始動モータ20の回転角を検出する回転角センサ22、エンジンの冷却水温度若しくは潤滑油温度等の気筒内温度に関する値に基づいてエンジンの気筒内温度を検出するエンジン温度センサ37又は、吸気管内の負圧を検出する吸気管負圧センサ40からそれぞれ出力される検出信号が入力されるようになっている。
そして、上記ECU30には、メインスロットル弁12及びサブスロットル弁46の開度を制御するスロットル弁制御手段41と、燃料噴射弁8から噴射される燃料の噴射タイミング及び噴射量を制御する燃料噴射制御手段42と、点火プラグ13による混合気の点火タイミングを制御する点火制御手段43と、エンジンの自動停止制御を実行する自動停止制御手段44と、エンジンの自動停止時及び再始動時に上記インバータ22に制御信号を出力して再始動モータ20の駆動を制御する再始動モータ制御手段45とが設けられている。
上記スロットル弁制御手段41は、クランク角センサ14からのクランク角速度情報に基づいて算出されたエンジン回転速度や、アクセルセンサ32からのアクセル開度情報等に応じて必要なメインスロットル弁12及びサブスロットル弁46の開度を演算し、この演算結果に対応した制御信号を上記アクチュエータ12a及び46aに出力してメインスロットル弁12及びサブスロットル弁46を開閉制御するように構成されている。
また、上記燃料噴射制御手段42及び点火制御手段43は、上記アクセル開度情報やエンジン回転数情報に加え、エアフローセンサ39により検出された吸気流量情報や、エンジン温度センサ37により検出されたエンジン温度情報等に基づき、必要な燃料噴射量とその噴射時期及び適正な混合気の点火時期を演算し、この演算結果に対応した制御信号を燃料噴射弁8及び点火プラグ13に出力するようになっている。
また、スロットル弁制御手段41、燃料噴射制御手段42、点火制御手段43及び再始動モータ制御手段45は、エンジンの自動停止を行う場合に、上記制御に加えて、次に述べる自動停止制御手段44から出力される制御信号に対応した制御を実行するものである。すなわち、自動停止制御手段44は、上記シフトポジションセンサ33、ブレーキスイッチ35及びバッテリ残量センサ36等の出力信号に応じてエンジンの自動停止条件が成立したか否かを判別し、この自動停止条件が成立したことが確認された場合に、所定のタイミングで燃料噴射弁8からの燃料噴射を停止させるとともに、点火プラグ13による混合気の点火を停止させることにより、エンジンを自動停止させるようになっている。
そして、上記自動停止制御手段44によりエンジンを自動停止させる際には、エンジンの自動停止時に膨張行程になる気筒(以下、膨張行程気筒と称す)及び圧縮行程になる気筒(以下、圧縮行程気筒と称す)、つまり、エンジンの停止後に吸気弁6a及び排気弁7aが閉止状態となって燃焼室4が密閉される気筒を予測して特定するとともに、これらの気筒に対してエンジンの停止直前に所定のタイミングで燃料を噴射する(以下、停止前噴射と称す)制御が実行されるようになっている。
また、上記自動停止条件の成立時にサブスロットル弁46を全開にするとともにスロットル弁12の開度を予め設定された一定値に増大させ、これに対応して空燃比を一定(理論空燃比)に維持させるために燃料噴射量を増大させてエンジン回転数を一時的に上昇させる制御が、上記スロットル弁制御手段41及び燃料噴射制御手段42からなる回転数制御手段において実行されるように構成されている。さらに、エンジンの冷却水温度及び吸気温度等に基づき、エンジンを自動停止させる際の燃料カット回転数と、その後のスロットル開度とを求め、これらに基づいてクランクシャフト5の停止位置を目標停止位置とするとともに、各気筒2に吸気を導入させる制御が上記自動停止制御手段44において実行されるようになっている。
そして、当実施形態では、上記エンジン回転数を一時的に上昇させる制御を実行した後、後述する開放期間Yが経過した時点でサブスロットル弁46を閉止させる制御が、上記スロットル弁制御手段41において実行されるように構成されている。これにより、上記膨張行程気筒において停止前噴射された燃料により生成された混合気が、エンジン停止前の段階で圧縮自己着火するのを抑制することができる。
上記自動停止制御手段44は、エンジンの自動停止状態で上記各センサの出力信号に応じてエンジンの再始動条件が成立したか否かを判定し、再始動条件が成立したことが確認された場合に、上記再始動モータ20を上記作動状態にするとともに、上記停止前噴射された燃料により生成された混合気に点火し、かつ、エンジンの再始動時に吸気行程及び排気行程にある気筒にそれぞれ燃料を順次噴射して所定のタイミングで点火することにより、エンジンを自動的に再始動させるように構成されている。
この再始動モータとエンジンとが協働する駆動状態において、上記自動停止制御手段44及びスロットル弁制御手段41は、アクセル操作が実行されているか否かを判定し、アクセル操作が実行されていないことが確認された場合に、上記サブスロットル弁46の閉止状態を、各気筒2の充填効率が予め設定された下限値A(図13参照)に低下するまで維持し、この下限値Aまで低下したことが確認された場合に当該下限値Aを維持するようにメインスロットル弁12及びサブスロットル弁46を徐々に開放するように構成されている。これにより、上記再始動条件が成立したときに、アクセル操作が実行されていないにもかかわらずエンジン回転数が過度に上昇してしまう、いわゆるエンジンの吹け上がりが生じるのを抑制することができる。
上記自動停止制御手段44によるエンジンの再始動制御を実行する際には、エンジンの停止時点から再始動時点までの停止継続時間が測定され、この停止継続時間に基づいて上記再始動モータ制御手段45により再始動モータ20の駆動トルクが調節されるようになっている。すなわち、上記ECU30内に設けられたタイマーによりエンジンが自動停止状態となった後に再始動条件が成立するまでの時間が停止継続時間として計測され、この停止継続時間が長い場合には、短い場合に比べて上記再始動モータ20の駆動トルクが小さな値に設定されるようになっている。このように、停止継続時間に応じて再始動モータ20の駆動トルクを調整することにより、再始動モータ20から不要な駆動トルクがクランクシャフト5に付与されることに起因した電力の消費及び騒音の発生を抑制しつつ、必要な駆動トルクを付与してエンジンを適正に再始動させることができる。
例えば、エンジンの停止継続時間が長い場合には、エンジンの停止直前に噴射された燃料が充分に気化又は霧化した状態となり、混合気の燃焼による出力トルクが充分に得られるため、停止継続時間が短い場合に比べて上記再始動モータ20の駆動トルクを小さな値に設定することにより、不要な電力消費を抑制することができる。一方、エンジンの停止継続時間が短い場合には、エンジンの停止直前に噴射された燃料の気化又は霧化が不充分となり、混合気の燃焼による出力トルクが充分に得られない傾向があるため、再始動モータ20の駆動トルクを大きな値に設定することにより、エンジンを適正に再始動させることができるという利点がある。
さらに、上記エンジンの自動停止中にイグニッションスイッチ34が運転者によりOFF操作されたことが検出された場合には、この時点で、エンジンの停止直前に上記気筒2(膨張行程気筒又は圧縮行程気筒)に燃料が噴射されることにより生成された混合気に点火する制御が、上記点火制御手段43において実行されるようになっている。
上記のように構成されたエンジンの制御装置により実行されるエンジンの制御動作を、図4〜図6に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御動作がスタートすると、各種センサ類から出力された検出信号を入力した後(ステップS1)、エンジンが自動停止状態にあるか否かを判定し(ステップS2)、NOと判定された場合には、上記検出信号に基づき、エンジンの自動停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、上記各種センサ類の検出信号に基づき、車速がゼロの状態で、ブレーキスイッチ35のON状態が所定時間にわたり継続し、かつ、バッテリ残量が予め設定された値以上であることが確認された場合には、エンジンの自動停止条件が成立したと判定され、上記要件の一つでも満足されていない場合には、自動停止条件が成立していないと判定されるようになっている。
上記ステップS3でNOと判定されてエンジンの自動停止条件が成立していないことが確認された場合には、エンジン回転数と吸気量とに応じた通常の燃料噴射制御及び点火制御を実行する(ステップS4)。
上記ステップS3でYESと判定されてエンジンの自動停止条件が成立したことが確認された場合には、サブスロットル弁46を全開にするとともにメインスロットル弁12の開度を予め設定された基準開度Zとし、これに対応して燃料噴射量を増大させてエンジン回転数を一時的に上昇させる制御を実行した後(ステップS5)、後述する燃料カット回転数H及びその後におけるメインスロットル弁12の目標開度G並びにこの目標開度Gを継続する開放期間Yの設定制御を実行する(ステップS6)。なお、上記メインスロットル弁12の基準開度Zは、エンジンの自動停止時にエンジン回転数が急上昇することに起因した騒音の発生を防止し、かつ、エンジン回転数が緩上昇することに起因して停止時間が不必要に長くなるのを防止し得る値として、予め実験等に基づいて定められている。
次いで、エンジン回転数Nが、上記ステップS6で設定された燃料カット回転数Hとなったか否かを判定し(ステップS7)、YESと判定された時点で、通常の燃料噴射及び点火を停止する燃料カット制御を実行するとともに、メインスロットル弁12の開度を、上記ステップS6で設定された目標スロットル開度Gとする制御を実行する(ステップS8)。
そして、上記ステップS6で設定されたメインスロットル弁12の開放期間Yが経過したか否かを判定し(ステップS9)、YESと判定され、当該開放期間Yが経過したことが確認されると、メインスロットル弁12及びサブスロットル弁46を閉止する(ステップS10)。
その後、エンジン回転数Nが、膨張行程気筒及び圧縮行程気筒を特定するために予め実験等に基づいて設定された基準回転数Rとなったか否かを判定し(ステップS11)、YESと判定された時点で、膨張行程気筒及び圧縮行程気筒を判別するとともに、当該膨張行程気筒及び圧縮行程気筒に対して所定のタイミングで再始動用の燃料を噴射する停止前噴射を実行する(ステップS12)。
例えば、図7及び図8に示すように、第1気筒〜第4気筒を有し、第1気筒、第3気筒、第4気筒及び第2気筒の順に燃焼が行われるように構成された4気筒4サイクルエンジンにおいて、回転数Nが500rpmとなった後にエンジンが約2回転して停止することが実験により確認されている場合には、上記基準回転数Rとして500rpmを設定し、この回転数となった時点t0で膨張行程にある第1気筒を、膨張行程気筒として特定するとともに、上記時点t0で圧縮行程にある第3気筒を、圧縮行程気筒として特定する。そして、上記第1気筒のクランク角が圧縮上死点TDC前の540°(ATDC−540deg)となった時点t1の後に、第1気筒の吸気ポート6に対する燃料噴射F1を行うとともに、上記クランク角が360°となった時点t2の後に、第3気筒の吸気ポート6に対する燃料噴射F2を行う。
なお、エンジン回転数Nが予め行った実験等に基づいて設定された基準回転数Rとなった時点t0で膨張行程にある気筒2を判別することにより、膨張行程気筒を特定するようにした上記構成に代え、エンジン回転数Nが所定値となった時点t0におけるクランクシャフト5の回転速度から回転エネルギーを算出し、この回転エネルギーと、各気筒2の1行程の間(クランクシャフト5が180°回転する間)に失われる損失エネルギーとに基づき、上記時点t0からエンジンが停止するまでの回転量を演算により求めるようにしてもよい。上記損失エネルギーは、エンジンのポンピングロスと、回転部の機械抵抗と、各気筒2の圧縮漏れによるロスとを加算することにより求められる。
上記エンジンの停止直前における燃料噴射F1、F2を行った後、エンジン回転数Nがゼロになったか否かを判定し(ステップS13)、YESと判定されてエンジンが自動停止状態となったことが確認された時点t3で、停止継続時間Tの計測を開始する(ステップS14)。
一方、上記ステップS2でYESと判定され、現在エンジンが自動停止状態にあることが確認された場合には、運転者によるイグニッションスイッチ34のOFF操作が行われたか否かを判定する(ステップS15)。このステップS15でYESと判定され、運転者が停車することを意図してイグニッションスイッチ34をOFF操作したことが確認された場合には、膨張行程気筒及び圧縮行程気筒に上記燃料噴射F1、F2が行われることにより生成された混合気に対する点火を同時に行うとともに(ステップS16)、上記停止継続時間Tの計測値をリセットした後(ステップS17)、リターンする。
また、上記ステップS15でNOと判定され、イグニッションスイッチ34のOFF操作が行われていないことが確認された場合には、エンジンの再始動条件が成立したか否かを判定する(ステップS18)。上記再始動条件としては、ブレーキスイッチ35がOFF状態となったこと、ブレーキ負圧(吸気管負圧)が所定値以下となったこと、停止継続時間Tが所定値以上となったこと、又はバッテリ残量が所定値未満となったこと等があり、これらの要件の一つでも満足された場合に、エンジンの再始動条件が成立したと判定される。
上記ステップS18でNOと判定された場合には上記ステップS15の処理を繰り返し実行する一方、YESと判定され、エンジンの再始動条件が成立したと判定されると、後述の再始動制御、すなわち、再始動モータ20とエンジンとを協働させる駆動制御が実行される(ステップS19)。
次いで、運転者によるアクセルのON操作が行われたか否かを判定する(ステップS20)。このステップS20でYESと判定され、運転者により加速要求が入力されたことが確認されると、上記サブスロットル弁46を全開にするとともに(ステップS21)、再始動モータ20を停止してエンジンのみの駆動制御に移行し(ステップS22)、通常運転に移行する。
すなわち、図13に示すように、上記再始動条件が成立した時点t4において、再始動モータ20とエンジンとを協働させる駆動制御の実行が開始され、この駆動制御中にアクセル操作が検出された時点t5において、当該アクセル操作量に応じた開度にメインスロットル弁12を開放する(二点鎖線で示す開度L1参照)とともにサブスロットル弁46を全開とする(二点鎖線で示す開度L2参照)。これにより、上記時点t5から充填効率L3が上昇して、エンジン回転数L4を速やかに増加させることができる。なお、上記両スロットル弁12、46の開弁動作と同時に上記時点t5においては、再始動モータ20の作動状態L5がOFFとされる。
一方、上記ステップS20でNOと判定され、運転者による加速要求が入力されていないことが確認されると、各気筒2の充填効率が予め設定された下限値A以下に低下したか否かが判定される(ステップS23)。このステップS23でYESと判定されると、再始動モータ20の駆動を停止してエンジンのみの駆動に移行する(ステップS24)とともに、上記下限値Aを維持するようにメインスロットル弁12及びサブスロットル弁46の開弁動作を実行する(ステップS25)。
つまり、図13に示すように、上記再始動モータ20とエンジンとを協働させる駆動制御の実行中に充填効率が下限値A以下となった時点t6において、作動状態L6に示すように再始動モータ20をOFFにするとともに、充填効率が上記下限値Aを維持するようにメインスロットル弁12及びサブスロットル弁46を徐々に開放する制御(それぞれ開度L7及びL8参照)を実行する。この制御により、充填効率を下限値Aで一定にすることができるので、エンジン回転数Nを一定に保つ(回転数L9参照)ことができ、再始動時におけるエンジンの吹け上がりを抑制することができる。
次いで、上記吸気管負圧センサ40(図3参照)の検出信号に基づいて、吸気負圧が予め設定された基準値以下となったか否かを判定し(ステップS26)、NOと判定された場合には上記ステップS25の開弁動作を繰り返し実行する。一方、上記ステップS26でYESと判定された場合には、サブスロットル弁46を全開として(ステップS27)、通常運転に移行する。
なお、上記ステップS19の再始動制御では、図6に示す処理が実行される。
まず、上記再始動モータ20の駆動トルクをテーブルから読み出す等により設定する(ステップS28)。上記停止継続時間Tの計測値に対応した駆動トルクを設定するためのテーブルは、停止継続時間Tが長い場合には、短い場合に比べて駆動トルクが小さな値となるように設定されている。また、図7に示すように、上記再始動条件の成立時点t4で再始動モータ20を作動させるとともに、停止前噴射燃料により生成された混合気に対して所定のタイミングS1、S2を行うことによりエンジンを再始動させる(ステップS29)。
そして、上記再始動条件の成立時点t4で吸気行程にある第4気筒及び排気行程にある第2気筒に対する燃料噴射F3、F4を行うとともに(ステップS30)、これらの気筒が圧縮上死点となった時点で順次、混合気の点火S3、S4を行った後(ステップS31)、上記停止継続時間Tの計測値をゼロにリセットする(ステップS32)。
次に、上記ステップS6で実行される燃料カット回転数H及びその後の目標回転数G並びにこの目標回転数Gを継続する開放期間Yを設定する制御の具体例を、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、燃料カット前におけるエンジン温度センサ37及び吸気温センサ38の検出値に基づき、気筒2の冷却に必要な吸入空気総量A及び許容圧縮圧力Bを設定する(ステップS33)。上記吸入空気総量Aは、停止前噴射燃料が膨張行程気筒に供給されて圧縮されるまでに気筒2内を通過する吸気量であって、上記エンジン温度及び吸気温度が高いほど、上記吸入空気総量Aも大きな値となる。また、上記許容圧縮圧力Bは、停止前噴射燃料により生成された混合気が、圧縮上死点近傍で自己着火することのない限界圧力であって気筒内温度に依存した値である。
次いで、予め設定された掃気用吸気量C、つまり燃料カット前に噴射された最後の燃料が燃焼した後、停止前噴射燃料が膨張行程気筒に供給されるまでの間に気筒2内を通過する吸気量Cと、上記ステップS33で設定された吸入空気総量Aとを比較し、そのうちの大きい方を目標吸気総量Dとして設定する(ステップS34)。
なお、当実施形態では、上述したステップS10において膨張行程気筒がエンジン停止前最後の吸気行程を迎える前までにサブスロットル弁46を閉止することにより、エンジン停止時における当該膨張行程気筒の圧縮効率を低減することができるので、このサブスロットル弁46の閉止動作を実行しない場合よりも上記掃気用吸気量Cを小さく設定することができる。これにより、掃気に要するエンジンのサイクル数を低減することができ、エンジン停止時間を短縮することができる。
一方、上記サブスロットル弁46は、燃焼時に生じるカーボン等の異物によって、開放した状態で固着してしまう、いわゆるオープン固着状態となることがあるが、このオープン固着状態が上記サブスロットル開度センサ47(図3参照)により検出された場合、上記掃気用吸気量Cは、オープン固着が発生していないときよりも大きな値に設定される。これにより、上記膨張行程気筒の最後の吸気行程を迎える前までに、オープン固着によってサブスロットル弁46を閉止できない場合であっても、気筒2内を充分に掃気することができるので、当該膨張行程気筒に生成された混合気がエンジン停止前に圧縮自己着火するのを抑制することができる。
次いで、燃料カット後の気筒内圧力を上記ステップS33で求めた許容圧縮圧力B以下とし、かつ、エンジン停止時の振動を抑制し得る値となるように、吸気の充填効率パターンEを設定する(ステップS35)。この充填効率パターンEを上記のように設定するのは、エンジンの自動停止時に吸気の充填効率が予め設定された上限値Ba(図12参照)以下となるように制限することにより、停止前噴射燃料がエンジン停止前に圧縮自己着火するのを防止するとともに、エンジンの騒音や振動によって運転者が違和感を受けるのを防止するためである。
次いで、上記目標吸気総量D及び吸気の充填効率パターンEを満足するように、燃料カット後の空転サイクル数Fと、目標スロットル開度Gと、この目標スロットル開度Gを継続する開放期間Yとを予め設定されたマップから読み出して設定する(ステップS36)。上記燃料カット後の空転サイクルFを設定するためのマップは、図10に示すように、吸気の充填効率パターンEと、目標吸気総量Dとをパラメータとし、吸気の充填効率パターンEが大きいほど、空転サイクルFが小さな値となるように設定されている。また、上記目標スロットル開度G及び開放期間Yについては、図12に示すように、エンジンを自動停止させるために燃料カットを行った時点tbからメインスロットル弁12の開度を一時的に増大させることにより、目標吸気総量Dに対応した吸気量が気筒内に供給されるとともに、エンジンの停止直前に燃料噴射F1、F2が行われた気筒が圧縮上死点となった時点tcの吸気効率が予め設定された上限値Ba以下となるように設定する。
そして、上記燃料カット後の空転サイクルFを満足するような燃料カット回転数H、つまり、エンジンの自動停止時に燃料カットを実行するエンジン回転数を、図11に示すマップから読み出して設定する。このマップは、上記燃料カット後の空転サイクル数Fをパラメータとし、この空転サイクル数Fの値が大きいほど、上記燃料カット回転数Hが大きな値となるように設定されている。
以上説明したように、サージタンク48の上流側に配置されたメインスロットル弁12を上記開放期間Y中に開放させ、この開放期間Yの経過後に閉止させるとともに、上記サージタンク48よりも下流側に配置されたサブスロットル弁46の開閉動作を制御するスロットル弁制御手段41と、上記開放期間Y中におけるエンジン回転数が予め設定された基準回転数以上を維持するように、自動停止条件成立時に一時的にエンジン回転数を上昇させるスロットル弁制御手段41及び燃料噴射制御手段42からなる回転数制御手段とを備え、上記開放期間Yの経過後にサブスロットル弁46を閉止させる上記実施形態によれば、上記開放期間Y中にエンジン回転数を基準回転数以上に維持させながらメインスロットル弁12を開放することができるので、当該開放期間Y中に気筒2内の掃気が促進され、再始動性能を向上させることができる。
すなわち、図12に示すように、上記実施形態の回転数制御手段は、エンジン自動停止条件が成立した時点taで、スロットル弁12の開度が予め設定された基準開度Zとなるようにメインスロットル弁12を開放して各気筒2に導入される吸気量を増大させるとともに、これに対応して空燃比を一定に維持するための燃料噴射量を増大させることにより、エンジン回転数Nを一時的に上昇させる。そして、エンジン回転数Nが燃料カット回転数Hとなって燃料カットが行われた時点tbから開放期間Yの間、メインスロットル弁12及びサブスロットル弁46を開放させるので、燃料カット後に多量の吸気を各気筒2に導入させることにより気筒内温度を効果的に低下させることができる。したがって、停止前噴射燃料により生成された混合気が圧縮自己着火したり、熱面点火したりするのを効果的に抑制し、エンジンの再始動時に上記混合気に点火することにより得られる燃焼エネルギーと、上記再始動モータ20からクランクシャフト5に付与される駆動力とに応じてエンジンを迅速、かつ、適正に再始動させることができる。
これに加えて、上記実施形態では、上記開放時間Yが経過する時点tdに上記サブスロットル弁46を閉止するようにしているので、膨張行程気筒に対するサージタンク48からの気体の流入を防止することにより、エンジン停止時における膨張行程気筒の充填効率を低減させることができる結果、上記停止前噴射燃料により生成された混合気がエンジン停止前に圧縮自己着火するのをより確実に防止することができる。
そして、上記実施形態では、自動停止条件の成立時に一旦エンジン回転数を上昇させることにより、燃料カット後に惰性で駆動するエンジンの回転数は、低下しながらも基準回転数以上に保たれることになる。したがって、この構成によれば、外部動力(例えば、再始動モータ20)を利用することなく、エンジン回転数を上記基準回転数以上に維持することができる。
なお、上記実施形態では、上記自動停止条件の成立時にエンジン回転数を上昇させることにより開放期間Y中のエンジン回転数を基準回転数以上に維持させるようにしているが、上記再始動モータ制御手段45により再始動モータ20を作動状態として、上記自動停止条件成立後のエンジン回転数を維持させること、すなわち、上記再始動モータ制御手段45を回転数制御手段とすることができる。以下、この再始動モータ20を利用した制御動作について、図14及び図15のフローチャートを参照して説明する。なお、これらフローチャートにおいて、上記実施形態と同一の処理については、同一の符号を付してその説明を省略する。
この制御動作の開始後、上記ステップS3で再始動条件が成立したか否かが判定され、ここで、NOと判定された場合には、上記ステップS4を実行する。一方、上記ステップS3でYESと判定され、再始動条件が成立したことが確認された場合には、後述する燃料カット後におけるメインスロットル弁12の目標開度Gと、その開放時間Y及び燃料カット後におけるエンジンの空転サイクル数Fの設定制御を実行するとともに、この空転サイクル数Fに基づいて再始動モータ20を作動状態とする設定時間、つまり、モータ作動時間Jを設定する制御を実行する(ステップS38)。
次いで、通常の燃料噴射及び点火を停止して燃料カットするとともに、メインスロットル弁12を開放操作してその開度を上記ステップS38で設定された目標スロットル開度Gとし、かつ、上記再始動モータ20を作動状態としてエンジン回転数をアイドル回転数に維持する制御を実行する(ステップS39)。また、上記ステップS38で設定された開放時間Yが経過したか否かを判定し(ステップS40)、YESと判定された時点で、メインスロットル弁12及びサブスロットル弁46を閉止状態とし(ステップS41)、その後、上記ステップS38で設定されたモータ作動時間Jが経過したか否かを判定する(ステップS42)。
上記ステップS42でYESと判定されて、モータ作動時間Jが経過したことが確認された場合には、この時点で上記再始動モータ20の作動を停止した後(ステップS43)、上記ステップS11移行の処理を実行する。
次に、上記ステップS38で実行されるメインスロットル弁12の目標開度G、開放時間Y、空転サイクル数F及びモータ作動時間Zを設定する制御の具体例を図16に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、ステップS33〜S36については、上記実施形態と同一の処理であるため、ここでは説明を省略する。
上記制御動作が開始して、上記ステップS36を実行した後、当該ステップS36で設定された空転サイクル数Fを満足するように、再始動モータ20を作動させてクランクシャフト5に駆動トルクを付与する設定時間、つまり、燃料カット後に再始動モータ20を作動させてエンジン回転数を一定値(アイドル回転数)に維持するためのモータ作動時間Jを算出する(ステップS44)。具体的には、アイドル回転状態にあるエンジンを燃料カットした場合に、停止状態となるまでの時間を実験等により求め、この時間と空転サイクル数Fに対応した時間とに基づき、上記モータ作動時間Jを算出する。
以上説明したように、上記燃料カット後に予め設定されたモータ作動期間Jが経過するまでの間、上記再始動モータ20を作動状態としてエンジン回転数を基準回転数(アイドル回転数)に維持する再始動モータ制御手段45からなる回転数制御手段を備えた上記実施形態によれば、再始動モータ20を作動状態としてエンジン回転数を調整するようにしているので、車両の走行条件(例えば、坂道走行時等)にかかわらず、精緻にエンジン回転数を制御することができる。
すなわち、図17に示すように、上記実施形態では、エンジンの自動停止条件が成立した時点teで、燃料カットを行うとともに、上記再始動モータ20からエンジンのクランクシャフト5に駆動トルクを入力してエンジン回転数Nを基準回転数(アイドル回転数)以上に維持する。そして、上記時点teから開放期間Yの間、メインスロットル弁12及びサブスロットル弁46を開放させるので、燃料カット後に多量の吸気を各気筒2に導入させることにより気筒内温度を効果的に低下させることができる。したがって、停止前噴射燃料により生成された混合気が圧縮自己着火したり、熱面点火したりするのを効果的に抑制し、エンジンの再始動時に上記混合気に点火することにより得られる燃焼エネルギーと、上記再始動モータ20からクランクシャフト5に付与される駆動力とに応じてエンジンを迅速、かつ、適正に再始動させることができる。
これに加えて、上記実施形態では、上記開放時間Yが経過する時点tfに上記サブスロットル弁46を閉止するようにしているので、膨張行程気筒に対するサージタンク48からの気体の流入を防止することにより、エンジン停止時における膨張行程気筒の充填効率を低下させることができる結果、上記停止前噴射燃料により生成された混合気がエンジン停止前に圧縮自己着火するのをより確実に防止することができる。
そして、上記実施形態では、上記燃料カットが実行される時点teからモータ作動時間Jが経過する時点tgまでの間、再始動モータ20を駆動することにより、上記燃料カット後のエンジン回転数を基準回転数(アイドル回転数)以上に維持するようにしているので、車両の走行条件等にかかわらず、精緻にエンジン回転数を抑制することができる。
なお、上述した両実施形態では、燃料カット後の掃気動作及びサブスロットル弁46の閉止動作の双方によって、エンジン停止前の膨張行程気筒における圧縮自己着火を抑制することができる。したがって、上記各実施形態では、掃気だけで圧縮自己着火を抑制する場合と比較して、当該掃気動作の時間を短縮することができ(上記掃気用吸気量Cを低減することができ)、これによりエンジンの自動停止に要する時間を短縮することができるといった効果もある。
また、上記各実施形態では、開放時間Yの経過後にサブスロットル弁46を閉止させるようにしているが、この閉止動作のタイミングに限定されることはなく、少なくとも膨張行程気筒がエンジン停止前最後の吸気行程を迎えるまでにサブスロットル弁46を閉止すれば上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。