JP2006169545A - 電気メッキ用電極およびそれを用いた電気メッキ方法 - Google Patents

電気メッキ用電極およびそれを用いた電気メッキ方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板幅方向の中央部に発生するメッキむらを解消することができる電気メッキ用電極およびそれを用いた電気メッキ方法を提供する。
【解決手段】連続電気メッキ槽内に配設され鋼板表面にメッキ処理を施す電気メッキ用電極であって、前記電極にはメッキ液が通過する複数の穴が設けられており、前記複数の穴が前記電極の幅方向の中心に対して左右非対称に配置されていることを特徴とする電気メッキ用電極およびそれをもちいた電気メッキ方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、連続電気メッキ槽内に配設され鋼板表面にメッキ処理を施す電気メッキ用電極およびそれを用いた電気メッキ方法に関する。
現在、鋼板の電気メッキは亜鉛、錫、銅、ニッケル、クロムの単独、またはこれらの合金、さらにはこれらの金属による多層メッキが行われ、多品種の防食および装飾鋼板が大量に連続的に生産されている。
鋼板表面に電気メッキを施す連続電気メッキ槽内に配設される電気メッキ用電極に関しては従来から種々の提案がなされている。
例えば、特開昭63−34562号公報には、電極表面に多孔性陽極を有する電極を使用して、特に高電流密度において電極間で発生するガスの抜けを良くすることにより、電圧降下を防止して生産能力の向上を図るとともに、鋼板表面へのメッキ浴の補給を行うことによりメッキむらの改善を図る方法が開示されている。
しかし、特開昭63−34562号公報の方法では、電極表面の穴の配置について十分な検討がなされていなかったため、穴をあけることによってメッキ液の流動性が逆に悪くなり、後述するように、特に鋼板幅方向の中央部に発生するメッキむらを解消することができないという問題点があった。
特開昭63−34562号公報
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、鋼板幅方向の中央部に発生するメッキむらを解消することができる電気メッキ用電極およびそれを用いた電気メッキ方法を提供することを課題とする。
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果、電気メッキ用電極の幅方向の中心に対して左右非対称にメッキ液が通過する複数の穴を配置させることによって、鋼板幅方向の中央部に発生するメッキむらを解消することができる電気メッキ用電極およびそれを用いた電気メッキ方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)連続電気メッキ槽内に配設され鋼板表面にメッキ処理を施す電気メッキ用電極であって、
前記電極にはメッキ液が通過する複数の穴が設けられており、
前記複数の穴が前記電極の幅方向の中心に対して左右非対称に配置されていることを特徴とする電気メッキ用電極。
(2)前記電極に設けられた複数の穴が矩形のスリット状であることを特徴とする(1)に記載の電気メッキ用電極。
(3)(1)または(2)のいずれかに記載の電気メッキ用電極を用いて鋼板表面にメッキを施すことにより鋼板中央部におけるメッキ液のよどみを防止することを特徴とする電気メッキ方法。
本発明によれば、電気メッキ用電極の幅方向の中心に対して左右非対称にメッキ液が通過する複数の穴を配置させることによって、鋼板幅方向の中央部に発生するメッキむらを解消することができる電気メッキ用電極およびそれを用いた電気メッキ方法を提供することができ、従来のメッキ電極で発生していた製品仕様を満足しない注文外の発生を無くすことができるうえ、電気メッキの効率を改善させることで生産能力の向上効果も期待できるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
本発明を実施するための最良の形態について、図1乃至図5を用いてクロムメッキを電気メッキの代表例として詳細に説明する。
図1は、本発明の電気メッキ用電極を用いる連続電気メッキ槽を例示する図である。
図1において、1は鋼板、2はシンクロール、3はコンダクダーロール、4は平板電極、4´穴あき電極を示す。
図1に示すように、鋼板1は、コンダクターロール3およびシンクロール2によって連続電気メッキ槽に供給されてメッキ液に浸漬され、平板電極4および穴あき電極4´を通過することによって、メッキ処理が施される。
本発明者等は、クロムメッキを施した鋼板表面に発生する汚れのように見えるメッキむらの原因を調査するために、正常部と汚れ部のメッキ組成についてESCA分析を行った。
その結果、正常部の金属クロム(M-Cr)48%、水酸化クロム(Cr(OH)3)14%に対して、汚れ部の金属クロム(M-Cr)40%、水酸化クロム(Cr(OH)3)19%となっており、汚れ部は金属クロム量が少なく、水酸化クロム量が多いことが判明し、この原因は、鋼板表面への硫酸イオン供給能力が不足し、鋼板表面にCr3+が多く残留してメッキ中の水酸化クロム(Cr(OH)3)が多くなって黄変するためであると考えられた。
そこで本発明等は、このメッキむらを改善するポイントは、鋼板表面のメッキ液の流動性を高めて硫酸イオンの供給不足を解消することに想到し本発明をなしたものである。
すなわち、本発明の電気メッキ用電極は、連続電気メッキ槽内に配設され鋼板1表面にメッキ処理を施す電気メッキ用電極4´であって、前記電極4´にはメッキ液が通過する複数の穴6´が設けられており、前記複数の穴6´が前記電極4´の幅方向の中心に対して左右非対称に配置されていることを特徴とする。
電極4´にはメッキ液が通過する複数の穴6´を設け、この複数の穴6´を前記電極4´の幅方向の中心に対して左右非対称に配置することによって、鋼板表面のメッキ液の流動性を高めて硫酸イオンの供給不足を解消することによって、鋼板1のエッジ部だけでなく、鋼板1の中央部に発生するメッキむらをなくすことができるうえ、メッキする際の電流密度を高めることができるのでメッキ効率が改善することによりメッキ鋼板の生産能力を向上させることができる。
なお、図1に例示する連続電気メッキ槽おいては、電流密度が高くてメッキ液がよどみ易いため製品の品質に影響が大きい最初のメッキ槽において鋼板1が上昇する方向のアップパス1Dの電極のみに穴あき電極4´を設置しているが、複数の電極に本発明の穴あき電極を用いることにより、さらに、本発明の効果を高めることができる。
図2および図3は、穴あき電極の比較例を例示する図であり、図2(a)は、電極の幅方向の中心に対して左右対称の円形穴を設けた電極の正面図であり、図2(b)はその側面図である。
図2において、1は鋼板、3はコンダクターロール、4´は穴あき電極、5は通電面、6は穴(左右対称)を示す。
図2に示すように、穴あき電極4´の通電面5には、円形の穴6が、電極4´の幅方向(X)の中心に対して左右対称に設けられている。
図3は、図2に矢印で示したシミュレーション断面における電極4´の幅方向(X)の流速分布を熱流動解析ソフト(Z−Flow)を用いて解析した結果を示す図である。
図3の横軸はメッキ槽を構成するラインタンクの幅方向の位置(mm)を示し、縦軸は図2に示すシミュレーション断面における電極4´の幅方向(X)のメッキ液流速(mm/sec)を示し、実線が穴あき電極4´の場合、点線が穴なしの平板電極4の場合を示す。
図3に示すように、鋼板1の両端のエッジ部において、平板電極4に比べて、穴あき電極4´の場合のメッキ液流速が約1.5mm/sec速くなっており、電流密度が高くメッキむらが生じ易い鋼板1のエッジ部におけるメッキ液の流動性がある程度改善されていることがわかる。
しかし、この比較例における穴6は電極4´の幅方向中心に対して左右対称の円形としているため、この穴を通過したメッキ液の流れが干渉しあって中央部にメッキ流速がゼロとなる「よどみ」が生じており、これが鋼板1の中央部に生じるメッキむらの原因となっていると考えられる。
図4および図5は、本発明の穴あき電極の実施形態を例示する図であり、図4(a)は、電極の幅方向の中心に対して左右非対称の矩形のスリットを設けた電極の正面図であり、図4(b)はその側面図である。
図4において、1は鋼板、3はコンダクターロール、4´は穴あき電極、5は通電面、6´は穴(左右非対称)を示す。
図4に示すように、穴あき電極4´の通電面5には、電極の幅方向に細長い矩形のスリット状の穴が、電極4´の幅方向(X)の中心に対して左右非対称に設けられている。
図5は、図4に矢印で示したシミュレーション断面における電極4´の幅方向(X)の流速分布を熱流動解析ソフト(Z−Flow)を用いて解析した結果を示す図である。
図5の横軸はメッキ槽を構成するラインタンクの幅方向の位置(mm)を示し、縦軸は図4に示すシミュレーション断面における電極4´の幅方向(X)のメッキ液流速(mm/sec)を示し、実線が本発明の非対称穴6´の場合、点線が比較例の対称穴6の場合を示す。
図5に示すように、鋼板1の両端のエッジ部において、対称穴6の場合に比べて、非対称穴6´の場合のメッキ液流速が約15mm/sec速くなっており、電流密度が高くメッキむらが生じ易い鋼板1のエッジ部におけるメッキ液の流動性が著しく改善されていることがわかる。
また、本発明例における穴6´は電極4´の幅方向中心に対して左右非対称の矩形のスリット状としているため、この穴を通過したメッキ液の流れの干渉が生じないため中央部にメッキ流速がゼロとなる「よどみ」が生じないため鋼板1の中央部に生じていたメッキむらが発生しないものと考えられる。
さらに、穴形状を円形ではなく矩形のスリット状にすることによって、メッキ液が通過し易くなるうえ、メッキ液の流れのパス数が低減するためメッキ液の流れの干渉が生じにくくなるので、メッキむら低減効果をさらに向上させることができる。
図4に示す、電極幅方向の中心に対して左右非対称の矩形スリット状の穴6´を有する電極を図1の1Dに配置して、下記の条件でクロムメッキを行った。
<クロムメッキ液浴条件>
・CrO3濃度:100±10(g/リットル)
・硫酸濃度 :1.5±0.1(g/リットル)
・液温 :55±5(℃)
<メッキ付着量>
・Cr量:72〜128(mg/m2)
・CrOx量(内数):7〜18(mg/m2)
本発明を適用することにより、穴のない平板電極を使用した場合のメッキ鋼板のエッジ部に15〜40mmの幅で発生していたメッキむらが5mm幅以下に低減することができ、また、鋼板中央部に発生していたメッキむらにより製品仕様から外れる注文外製品の発生を全て無くすことができたうえ、メッキむらが発生しない範囲でメッキ時の電流密度を大きくすることによりメッキ効率を改善させてメッキ鋼板の生産性を向上させることができ、本発明の効果を確認することができた。
本発明の電気メッキ用電極を用いる連続電気メッキ槽を例示する図である。 穴あき電極の比較例を例示する図である。 比較例の穴あき電極を用いたメッキ液流速分布を示す図である。 本発明の穴あき電極の実施形態を例示する図である。 本発明の穴あき電極を用いたメッキ液流速分布を示す図である。
符号の説明
1 鋼板
2 シンクロール
3 コンダクダーロール
4 平板電極
4´穴あき電極
5 通電面
6 穴(左右対称)
6´穴(左右非対称)

Claims (3)

  1. 連続電気メッキ槽内に配設され鋼板表面にメッキ処理を施す電気メッキ用電極であって、
    前記電極にはメッキ液が通過する複数の穴が設けられており、
    前記複数の穴が前記電極の幅方向の中心に対して左右非対称に配置されていることを特徴とする電気メッキ用電極。
  2. 前記電極に設けられた複数の穴が矩形のスリット状であることを特徴とする請求項1に記載の電気メッキ用電極。
  3. 請求項1または請求項2のいずれかに記載の電気メッキ用電極を用いて鋼板表面にメッキを施すことにより鋼板中央部におけるメッキ液のよどみを防止することを特徴とする電気メッキ方法。
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