JP2006166732A - 消化器中の新生物の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
正確かつ簡便に、消化器に存在する新生物を検出する方法を提供することを課題とする。さらに、この検出方法に用いるためのプライマー、プライマーセット、検出用試薬及び検出用試薬キットを提供することを課題とする。
【解決手段】
生体検体中に存在する2種以上の特定の遺伝子又は遺伝子座のメチル化を検出し、該メチル化遺伝子の総和を算出することにより、消化器に存在する新生物を検出する。該メチル化遺伝子の総和を算出は、個々の遺伝子のメチル化を定量的に検出したものの値で遺伝子のメチル化を定量的に加算し、算出してもよいし、または定量を伴わない検出方法でメチル化されている遺伝子数の総和を算出してもよい。特定の遺伝子として、具体的にAPC、DCC、MGMT、hMLH1、SFRP1、又はSFRP2の各遺伝子が挙げられる。

Description

本発明は、生体検体に存在する特定の遺伝子及び/若しくは遺伝子座のメチル化を検出し、該検出されたメチル化遺伝子及び/若しくはメチル化遺伝子座の総和を定量的に、又は非定量的に算出することにより、生体内 に存在する新生物を検出する方法である。
糞便を用いた消化器の悪性新生物(具体的には大腸癌)の検出方法に、便潜血反応(Fecal Occult-Blood Testing; FOBT)を調べる方法がある。欧米の無作為化比較試験3研究により、便潜血検査を行ったところ、早期癌を発見することができ、その結果として死亡率減少効果(検診群で15〜35%低下)が示された。また、検診群では早期癌を発見することができたことによる罹患率、及び浸潤癌の減少も認められた(Mandel JS, Bond JH, Church TR, et al. Reducing mortality from colorectal cancer by screening for fecal occult blood. N Engl J Med 1993; 328:1365-71. Hardcastle JD, Chamberlain JO, Robinson MH, et al. Randomised controlled trial of faecal-occult-blood screening for colorectal cancer. Lancet 1996;348:1472-7. Kronborg O, Fenger C, Olsen J, Jorgensen OD, Sondergaard O. Randomised study of screening for colorectal cancer with faecal-occult-blood test. Lancet 1996;348:1467-71.)。 しかし、本検査方法は感度が低く、便潜血反応陽性患者における大腸癌の発見率は 2〜17%に留まる。また、先の欧米の無作為化比較試験3研究において、大腸癌患者のうち、便潜血反応の検診にて大腸癌を発見された患者は27%であり、満足のいくものとは言えない。
近年の分子生物学の発展により、新生物又は悪性新生物の遺伝子変異の特徴が明らかにされてきている。この新生物及び悪性新生物の遺伝子変異を糞便から検出することができれば、糞便からの新生物及び悪性新生物の検出が可能となることが推測されている(Sidransky D. Emerging molecular markers of cancer. Nat Rev Cancer. 2002 Mar;2(3):210-9)。
大腸癌における遺伝子変異においては、例えばKRAS遺伝子の点突然変異、APC(adenomatous polyposis coli)遺伝子の点突然変異、p53遺伝子の点突然変異、BRAF遺伝子の点突然変異が認められるが、これら遺伝子変異をすべて調べたとしても大腸癌すべてを検出できるわけではなく、また検出する方法及び技術はいまだ困難かつ高額な場合が多い。
近年、新生物及び悪性新生物の特徴として、遺伝子の異常なメチル化の獲得という現象が多々認められることが報告されている。
高等真核生物において、DNAは、CGジヌクレオチド中のグアノシンの5'側に位置するシトシンでのみメチル化される。この修飾は、遺伝子発現において、特に含まれているCpGに富む領域(以下、「CpG島」という。)が多くの遺伝子のプロモーター領域に存在する場合に重要な制御効果を有する。常染色体では殆ど全ての遺伝子関連のCpG島がメチル化から保護されているが、CpG島の広範にわたるメチル化は、刷込み遺伝子の転写の不活性化及び雌の不活性X染色体上の遺伝子の転写の不活性化と関連している。
CpG島の異常なメチル化は、不死化細胞又は形質転換細胞では頻繁に見られる事象であり、ヒト癌における特定の癌抑制遺伝子の転写の不活性化と関連すると考えられている。そして、幾つかの生物学的機能は、DNA中のメチル化された塩基に起因している。最も確立された生物学的機能は、コグネイト制限酵素による消化からのDNAの保護である。制限修飾現象は細菌でしか見られないと考えられていたが、その後哺乳動物細胞にも別のメチラーゼがあり、これはCpGのグアニンの5'側に隣接するDNA上のシトシン残基だけを限定的にメチル化することが明らかになった。このメチル化は、遺伝子活性、細胞分化、腫瘍発生、X染色体の不活性化、遺伝子刷込み、及びその他の主要な生物学的プロセスにおいて或る役割を担っていることが報告されている(Razin,A.,H.,及びRiggs,R.D.編,DNA Methylation Biochemistry and Biological Significance,Springer-Verlag,New York,1984)。
ヒト癌細胞は、典型的には、重要な遺伝子の突然変異、増幅又は欠失を特徴とする体細胞改変ゲノムを含んでいる。さらに、ヒト癌細胞由来のDNA鋳型は、DNAのメチル化という体細胞の変化を示すことが多い(E.R.Fearonら,Cell,61:759,1990;PA.Jonesら,Cancer Res.46:461,1986;R.Holliday,Science,238:163,1987:A.De Bustrosら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,85:5693,1988;PA.Jonesら,Adv.CancerRes.,54:1,1990;S.B.Baylinら,Cancer Cells,3:383,1991;M.Makosら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:1929,1992;N.Ohtani-Fujitaら,Oncogene,8:1063,1993)。
真核細胞では、グアノシンの5'側に直に存在しているシトシン残基のメチル化は、CGに乏しい領域で優先的に起こる(Bird,A., Nature,321:209,1986)。これに対して、CpG島と呼ばれる不連続なCGジヌクレオチドからなる領域は、正常細胞ではメチル化されないままであるが、X染色体の不活性化(Migeonら,前掲)及び親特異的刷込み(Liら,Nature,366:362,1993)の間だけはメチル化される。この場合、この5'調節領域のメチル化によって転写が抑制され得る。Rb遺伝子のde novoメチル化が網膜芽細胞腫の一部で実証されており(Sakaiら, Am.J.Hum.Genet.,48:880,1991)、また、近年の研究により、ヒトの腫瘍における異常なDNAメチル化は様々な遺伝子のプロモーター領域に起きていることが報告されている(非特許文献1〜3)。
また、ヒトの糞便中に存在する消化管粘膜細胞、悪性新生物細胞、新生物細胞、及び分泌液に存在する遺伝子断片を診断に用いることは、悪性新生物の早期発見のために非常に有用であることが推測される。糞便よりDNAを精製し、その後DNAを重亜硫酸塩(disulfite)処理を行い、新生物に特徴的なメチル化異常を検出して、大腸癌の診断を試みようとする報告がある(非特許文献4)。
しかしながら、糞便を用いての消化器に存在する悪性新生物(癌)や新生物(腺腫)を感度よく、簡便に検出する方法はまだ十分ではない。
Jones, P.A. et al., Nat. Genet., 21: 163-167, 1999. Issa et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 910: 140-153, 2000. Herman et al., N. Engl. J. Med., 349: 2042-2054, 2003 Muller et al., The lancet, vol363, 1283-1285, 2004
本発明は、正確かつ簡便に、消化器に存在する新生物を検出する方法を提供することを課題とする。さらに、この検出方法に用いるためのプライマー、プライマーセット、検出用試薬及び検出用試薬キットを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、生体検体中に存在しうる2種以上の特定の遺伝子のメチル化又は遺伝子座のメチル化を検出し、該検出されたメチル化遺伝子の総和を算出することにより、正確かつ簡便に消化器に存在する新生物を検出できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下よりなる。
1.生体検体中 に存在する2種以上の特定の遺伝子及び/若しくは遺伝子座のメチル化を検出し、該メチル化遺伝子の総和を算出することによる、消化器に存在する新生物の検出方法。
2.特定の遺伝子及び/若しくは遺伝子座が、APC遺伝子及び/又はDCC遺伝子を含む前項1に記載の新生物の検出方法。
3.APC遺伝子の1Aプロモーター領域及び/又はDCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域 のメチル化を検出することを特徴とする前項2に記載の新生物の検出方法。
4.特定の遺伝子及び/若しくは遺伝子座が、さらにSFRP2遺伝子、MGMT遺伝子、hMLH1遺伝子、又はSFRP1遺伝子から選択される1種又は複数種を含む前項2又は3に記載の新生物の検出方法。
5.SFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域、MGMT遺伝子のプロモーター領域、hMLH1遺伝子のプロモーター領域又はSFRP1遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域のメチル化を検出することを特徴とする前項4に記載の新生物の検出方法。
6.メチル化の検出が、生体検体中に存在するDNAを非メチル化シトシンを修飾する試薬と接触させ、該生体検体中に存在しうるDNAの全ての非メチル化シトシンをウラシルに転換する方法を用いてDNAの修飾を行ったのち、修飾されていないシトシンを検出することによる前項1〜5のいずれか一に記載の検出方法。
7.生体検体中に存在するDNAを非メチル化シトシンを修飾する試薬と接触させたのち、配列番号1〜18のいずれかに表された塩基配列のオリゴヌクレオチドからなるプライマーを用いてDNAを増幅し、修飾されていないシトシンを検出することによる前項6に記載の検出方法。
8.前項7に記載の検出方法に使用する、以下の1)〜12)のいずれかから選択される2種のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセット:
1)配列番号1及び3に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
2)配列番号2及び3に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
3)配列番号4及び6に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
4)配列番号4及び5に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
5)配列番号7及び9に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
6)配列番号8及び9に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
7)配列番号10及び12に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
8)配列番号11及び12に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
9)配列番号13及び15に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
10)配列番号14及び15に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
11)配列番号16及び18に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
12)配列番号17及び18に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド。
9.前項7に記載の検出方法に使用する、以下の1)〜6)のいずれかから選択される3種のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセット:
1)配列番号1〜3に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
2)配列番号4〜6に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
3)配列番号7〜9に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
4)配列番号10〜12に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
5)配列番号13〜15に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド。
6)配列番号16〜18に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド。
10.前項8又は9に記載のプライマーセットを含む、消化器に存在する新生物の検出用試薬又は検出用試薬キット。
本発明の検査方法により、糞便検体等の生体検体から消化器に存在する悪性新生物(癌)や新生物(腺腫)を正確に検出することができる。
本発明において、「生体検体」とは、上記特定の遺伝子を含むものであれば良く、特に限定されないが、具体的には生体から採取した組織の他、血液、血清、糞便、尿、喀痰、膵液、胆汁、精液、唾液、脳脊髄液等が挙げられ、特に消化器新生物の検出には糞便が好適である。
生体検体中に存在する特定の遺伝子とは、消化器の悪性新生物(癌)や新生物(腺腫)に関連する遺伝子をいい、具体的には少なくともAPC (adenomatous polyposis coli)遺伝子及び/又はDCC (deleted in colorectal carcinomas)遺伝子を含むことが好適である。さらにMGMT (O6-Methylguanine-DNA methyltransferase)遺伝子、hMLH1遺伝子、SFRP1 (secreted apoptosis-related protein-1)遺伝子、又はSFRP2 (secreted apoptosis-related protein-2)遺伝子から選択される1種又は複数種の遺伝子を含めることが好適である。
上記に示す特定の遺伝子のメチル化の検出により、生体内に存在する新生物を検出することができる。新生物は、悪性新生物(癌)であっても良いし、新生物(腺腫)であっても良い。
具体的には、APC遺伝子の1Aプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化及び/又はDCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化を検出することにより消化器に存在する新生物を検出することができる。より具体的には、APC遺伝子の1Aプロモーター領域及び/又はDCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域のメチル化を検出することにより該新生物を検出することができる。
さらに、SFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化、MGMT遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化、hMLH1遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化、及び/又はSFRP1遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化を検出することにより消化器に存在する新生物を検出することができる。
本発明において、「遺伝子のメチル化の検出」とは、生体検体に存在する特定の遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域又は遺伝子座に関連するCpG島/CpG配列のシトシンのメチル化を検出することをいう。
本発明において、「メチル化遺伝子の総和を算出する」とは、上記個々の遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域のメチル化を定量的に検出したものの値を定量的に加算して算出したものであってもよいし、定量を伴わない方法でメチル化されている遺伝子数の総和を算出してもよい。
本発明において、特定遺伝子のメチル化検出の前処理として、DNAを抽出することが必要である。具体的にはMagExtractor(東洋紡製)やQIAamp Stool DNA Isolation Kit(QIAGEN製)などの市販品を用いる等、自体公知の方法で検体からDNAを抽出してもよいし、特願2004-359471号の実施例1に記載と同手法によりグリコーゲン処理によってもよい。
次に、重亜硫酸塩(disulfite)を用いて生体検体中に存在するDNAの全ての非メチル化シトシンをウラシルに転換する。前記重亜硫酸塩処理後、本発明の特定の遺伝子又は遺伝子座の必要な領域、例えばCpG領域をPCR等の核酸増幅法により増幅し、該増幅したDNAについて非メチル化シトシンがウラシルへ転換されたか否かを確認する。
該増幅したDNA中の非メチル化シトシンがウラシルへ転換されたか否かの確認は、遺伝子又は遺伝子座の必要な領域、例えばCpG領域、プロモーター領域若しくは5'領域について、重亜硫酸塩処理によってもメチル化シトシンがウラシルに転換されない配列、及び非メチル化シトシンがウラシルに転換した配列を増幅しうるプライマーを用いて核酸を増幅させ、該増幅産物を確認することにより行うことができる。検体材料の性質上、増幅される遺伝子は200bp以下が好ましく、より好ましくは180bp以下である。
本発明の特定の遺伝子又は遺伝子座の塩基配列は、APC遺伝子についてはGenebank Accession No.HSU02509に、DCC遺伝子については同No.NT_033905.3に、MGMT遺伝子については同No.HSU95038に、hMLH1遺伝子については同No.AB017806に、SFRP1遺伝子についてはNC_000008に、及びSFRP2遺伝子についてはNC_000004に示すとおりである。
これらの遺伝子のプロモーター領域又は5'領域に存在するCpG領域の核酸増幅用プライマーとして、以下のものを使用することができる。
APC遺伝子の1Aプロモーター領域に存在するCpG領域を増幅しうるプライマーは以下のとおりである。
APC1A-NF: 5'-ATATTTTYGAGGGGTAYGGGGTTA (配列番号1)
APC1A-MF: 5'-TATTGCGGAGTGCGGGTC (配列番号2)
APC1A-NR: 5'-ACRAAAATAAAAAACRCCCTAATC (配列番号3)
APC1A-NF(配列番号1)とAPC1A-NR(配列番号3)はメチル化シトシンの存在するアレルにも非メチル化シトシンの存在するアレルにもハイブリダイズするように設計されており、この2つのプライマーにより、メチル化シトシンの有無にかかわらず、148bpの増幅産物が得られる。
一方、APC1A-MF(配列番号2)はメチル化シトシンの存在するアレルのみにハイブリダイズするように設計されており、もしメチル化シトシンが存在するならばAPC1A-MS(配列番号2)とAPC1A-NAS(配列番号3)の2つのプライマーにより、84bpの増幅産物が得られる。
すなわち、APC遺伝子の1Aプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められる場合は148bpと84bpの2つの遺伝子増幅産物が認められることになり、また、APC遺伝子の1Aプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められない場合は148bpの1つのみの遺伝子増幅産物が認められることになる(図1)。
APC遺伝子の必要な領域を増幅しうるプライマーであれば、上記プライマーに限定されず、同様の機能を有するプライマーを用いることもできる。好ましくは、配列番号1〜3プライマーをセットで使用することにより、一度の核酸増幅処理で、APC遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化に応じて塩基数の異なるDNAの増幅を確認することができる。
DCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域を増幅しうるプライマーは以下のとおりである。
DCC-NF: 5'-AGGTGGAGAAAGAGGTGGAGGAA (配列番号4)
DCC-MR: 5'-ACCAAAAATCGCGAACAACG (配列番号5)
DCC-NR: 5'-TCAACCAACACCTTCRAAACCAAA (配列番号6)
DCC-NF(配列番号4)とDCC-NR(配列番号6)はメチル化シトシンの存在するアレルにも非メチル化シトシンの存在するアレルにもハイブリダイズするように設計されており、この2つのプライマーセットにより、メチル化シトシンの有無にかかわらず、151bpの増幅産物が得られる。
一方、DCC-MR(配列番号5)はメチル化シトシンの存在するアレルのみにハイブリダイズするように設計されており、もし、メチル化シトシンが存在するならばDCC-MR(配列番号5)とDCC-NF(配列番号4)の2つのプライマーにより、133bpの増幅産物が得られる。
すなわち、DCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められる場合は151bpと133bpの2つの遺伝子増幅産物が認められることになり、また、DCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められない場合は151bpの1つのみの遺伝子増幅産物が認められることになる(図2)。
DCC遺伝子の必要な領域を増幅しうるプライマーであれば、上記プライマーに限定されず、同様の機能を有するプライマーを用いることもできる。好ましくは、配列番号4〜6に表された配列からなるプライマーをセットで使用することにより、一度の核酸増幅処理で、DCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化に応じて塩基数の異なるDNAの増幅を確認することができる。
MGMT遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域を増幅しうるプライマーは以下のとおりである。
MGMT3-NF: 5'-GYGTTTYGGATATGTTGGGAT (配列番号7)
MGMT3-MF: 5'-ACGTTCGTAGGTTTTCGC (配列番号8)
MGMT3-NR: 5'-AACTCCRCACTCTTCCRAAAACRA (配列番号9)
MGMT3-NF(配列番号7)とMGMT3-NR(配列番号9)はメチル化シトシンの存在するアレルにも非メチル化シトシンの存在するアレルにもハイブリダイズするように設計されており、この2つのプライマーにより、メチル化シトシンの有無にかかわらず、134bpの増幅産物が得られる。
一方、MGMT3-MF(配列番号8)はメチル化シトシンの存在するアレルのみにハイブリダイズするように設計されており、もし、メチル化シトシンが存在するならばMGMT3-MF(配列番号8)とMGMT3-NR(配列番号9)の2つのプライマーにより、82bpの増幅産物が得られる。
すなわち、MGMT遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められる場合は134bpと82bpの2つの遺伝子増幅産物が認められることになり、また、MGMT遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められない場合は134bpの1つのみの遺伝子増幅産物が認められることになる(図3)。
MGMT遺伝子の必要な領域を増幅しうるプライマーであれば、上記プライマーに限定されず、同様の機能を有するプライマーを用いることもできる。好ましくは、配列番号7〜9に表された配列からなるプライマーをセットで使用することにより、一度の核酸増幅処理で、MGMT遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化に応じて塩基数の異なるDNAの増幅を確認することができる。
hMLH1遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域を増幅しうるプライマーは以下のとおりである。
hMLH15-NF: 5'-YGGGTAAGTYGTTTTGAYGTAGA (配列番号10)
hMLH15-MF: 5'-CGTTCGTCGTTCGTTATATATC (配列番号11)
hMLH15-NR: 5'-TATACCTAATCTATCRCCRCCTCA (配列番号12)
hMLH15-NF(配列番号10)とhMLH15-NR(配列番号12)はメチル化シトシンの存在するアレルにも非メチル化シトシンの存在するアレルにもハイブリダイズするように設計されており、この2つのプライマーにより、メチル化シトシンの有無にかかわらず、149bpの増幅産物が得られる。
一方、hMLH15-MF(配列番号11)はメチル化シトシンの存在するアレルのみにハイブリダイズするように設計されており、もし、メチル化シトシンが存在するならばhMLH15-MF(配列番号11)とhMLH15-NR(配列番号12)の2つのプライマーセットにより、109bpの増幅産物が得られる。
すなわち、hMLH1遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められる場合は149bpと109bpの2つの遺伝子増幅産物が認められることになり、また、hMLH1遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められない場合は149bpの1つのみの遺伝子増幅産物が認められることになる。
hMLH1遺伝子の必要な領域を増幅しうるプライマーであれば、上記プライマーに限定されず、同様の機能を有するプライマーを用いることもできる。好ましくは、配列番号10〜12に表された配列からなるプライマーをセットで使用することにより、一度の核酸増幅処理で、hMLH1遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化に応じて塩基数の異なるDNAの増幅を確認することができる。
SFRP1遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域を増幅しうるプライマーは以下のとおりである。
S1-NF: 5'-GYGTTTTTTTGTTYGTYGTATTTT (配列番号13)
S1-MF: 5'-TCGTAGCGTCGTTTTTTC (配列番号14)
S1-NR: 5'-AAAACRCAATCCCCAACRTTAC (配列番号15)
S1-NF(配列番号13)とS1-NR(配列番号15)はメチル化シトシンの存在するアレルにも非メチル化シトシンの存在するアレルにもハイブリダイズするように設計されており、この2つのプライマーにより、メチル化シトシンの有無にかかわらず、166bpの増幅産物が得られる。
一方、S1-MF(配列番号14)はメチル化シトシンの存在するアレルのみにハイブリダイズするように設計されており、もし、メチル化シトシンが存在するならばS1-MF(配列番号14)とS1-NR(配列番号15)の2つのプライマーにより、120bpの増幅産物が得られる。
すなわち、SFRP1遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められる場合は166bpと120bpの2つの遺伝子増幅産物が認められることになり、また、SFRP1遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められない場合は166bpの1つのみの遺伝子増幅産物が認められることになる。
SFRP1遺伝子の必要な領域を増幅しうるプライマーであれば、上記プライマーに限定されず、同様の機能を有するプライマーを用いることもできる。好ましくは、配列番号13〜15に表された配列からなるプライマーをセットで使用することにより、一度の核酸増幅処理で、SFRP1遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化に応じて塩基数の異なるDNAの増幅を確認することができる。
SFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域を増幅しうるプライマーは以下のとおりである。
S2-NF: 5'-GGTTGTTAGTTTTTYGGGGTTT (配列番号16)
S2-MF: 5'-TCGTTTCGTTTTTTTTCGGTTTC (配列番号17)
S2-NR: 5'-CAACAACAACRAACCAAAACCCTAC (配列番号18)
S2-NF(配列番号16)とS2-NR(配列番号18)はメチル化シトシンの存在するアレルにも非メチル化シトシンの存在するアレルにもハイブリダイズするように設計されており、この2つのプライマーにより、メチル化シトシンの有無にかかわらず、159bpの増幅産物が得られる。
一方、S2-MF(配列番号17)はメチル化シトシンの存在するアレルのみにハイブリダイズするように設計されており、もし、メチル化シトシンが存在するならばS2-MF(配列番号17)とS2-NR(配列番号18)の2つのプライマーにより、87bpの増幅産物が得られる。
すなわち、SFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められる場合は159bpと87bpの2つの遺伝子増幅産物が認められることになり、また、SFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンにメチル化が認められない場合は159bpの1つのみの遺伝子増幅産物が認められることになる(図4)。
SFRP2遺伝子の必要な領域を増幅しうるプライマーであれば、上記プライマーに限定されず、同様の機能を有するプライマーを用いることもできる。好ましくは、配列番号16〜18に表された配列からなるプライマーをセットで使用することにより、一度の核酸増幅処理で、SFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域に存在するCpG領域のシトシンのメチル化に応じて塩基数の異なるDNAの増幅を確認することができる。
前記増幅産物の確認は、自体公知の方法により行うことができる。具体的には、アガロースゲルにて電気泳動を行うことにより確認できる。また、メチル化の検出を行いたい遺伝子又は遺伝子座における遺伝子増幅の際に用いるプライマーを、メチル化シトシの存在するアレルにも非メチル化シトシンの存在するアレルにもハイブリダイズするように設計されたプライマーのみを用いた場合は、DNAチップによるハイブリダイゼーション、クローンライブラリー法、変性グラジェントゲル電気泳動法(DGGE法)、温度グラジェンドゲル電気泳動法(TGGE法)、Methylight法 又はSSCP法を採用することができる。
本発明は、消化器に存在する新生物の検出方法の他、上記のプライマー、プライマーセットにも及ぶ。さらに、本発明は消化器に存在する新生物の検出用試薬及び検出用試薬キットにも及ぶ。本発明の試薬には、上述の各プライマーを試薬とすることができ、また試薬キットにはプライマー若しくはプライマーセットを含めることができる。試薬キットには、上記プライマーの他、前処理液、核酸増幅用試薬、増幅産物の確認に使用する試薬等を含めることもできる。
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは明らかである。
(実施例1)予備検討
250例の大腸癌患者、10例の大腸腺腫患者、85例の胃癌患者よりそれぞれ、新生物部分、又は正常粘膜部分の生体検体を得、以下の検討を行った。
外科手術切除及び内視鏡切除を施行された250例の大腸癌組織(遺伝性非腺腫性大腸癌を含む)、10例の大腸腺腫組織(家族性大腸腺腫症を含む)、85例の胃癌組織、225例の正常大腸粘膜組織、及び85例の正常胃粘膜組織を生体検体とし、各検体から抽出されたDNAについて重亜硫酸塩(disulfite)処理を行い、まず、合計15種の遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域及び遺伝子座(SFRP1, SFRP2, DCC, APC, MGMT, hMLH1, MINT1, MINT2, MINT31, CACNA1G, p14, p16, THBS1, DAPK, COX2)のメチル化の検討を239症例の大腸癌を用いて行った。その結果より、メチル化の頻度の高い6つの遺伝子(SFRP1、SFRP2、APC, DCC, MGMT, hMLH1)を大腸癌及び消化器新生物の検出用マーカーとして選出した。
次に、これら6つの遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域のメチル化の頻度及び傾向を、250例の大腸癌組織(遺伝性非腺腫性大腸癌を含む)、10例の大腸腺腫組織(家族性大腸腺腫症を含む)、85例の胃癌組織、225例の正常大腸粘膜組織、及び85例の正常胃粘膜組織を用いて解析、検討を行った。尚SFRP1、SFRP2、APC, DCC, MGMT, hMLH1の各遺伝子のメチル化の検出のために、表1のプライマーを用いた。表1のプライマーは、配列表の配列番号1〜18に表された配列からなるオリゴヌクレオチドからなる。各プライマーの各遺伝子における位置、塩基長及びTm値についても表1に示した。
各遺伝子のメチル化の検出のための核酸増幅反応に、10×PCR緩衝液(Invirogen社), 1.5 mM MgCl2, 0.2 mMの各プライマー, 0.1mM dNTP, 1 unit の Taq polymerase (Platinum taq polymerase; Invirogen社)、組織から抽出されたDNAを重亜硫酸塩(disulfite)処理した溶液2μLを鋳型に、合計20μLのPCR反応溶液を用いて行った。
増幅反応条件は95℃を3分のあと、95℃を30秒、各Tm温度を30秒、72℃を30秒を1サイクルとして、合計36サイクル行い、その後に72℃を5分間行った。
250症例の大腸癌検体、10症例の大腸腺腫検体について各遺伝子のメチル化の有無を調べた結果、これらの6種の遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域において1つ以上のメチル化を認めた大腸癌症例は100% (250/250)、また大腸腺腫においても100%(10/10)であった。また、85症例の胃癌症例でも100% (85/85)であった。
各遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域について、メチル化の認められた遺伝子について1ポイントを、メチル化を認めなかった遺伝子については0ポイントという評価を与え、各検体について上記6種の遺伝子又は遺伝子座についての合計を算出し、この合計値を M.I.(メチレーションインデックス(Methylation Index))とした。大腸癌、大腸腺腫、胃癌、大腸正常粘膜、及び胃正常粘膜のM.I. の平均値、及び各遺伝子のメチル化の頻度を表2に示した。尚、各組織におけるM.I.平均値の検定には分散分析を用い、P値はその値を示す。また、M.I.平均値のカッコ内は95%信頼区間を示す。
表2に示すように、大腸癌、大腸腺腫、及び大腸正常粘膜におけるM.I.の平均値は有為に差が認められた(p<0.0001)。また、胃癌及び胃正常粘膜におけるM.I.の平均値も有為に差が認められた(p<0.0001)。すなわち、消化器新生物と消化器正常粘膜のM.I.の平均値には明らかな差が存在することが確認された。本結果より、糞便検体から、これら6種類の遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域のメチル化を検出し、そのM.I.値により消化器新生物の存在を予測することが可能であるかもしれないことが示唆された。
予備検討より得られた結果により、理論上では、複数個の遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域におけるメチル化の有無の総和は新生物と正常組織で異なることが示された。この結果と同様に、糞便からDNAメチル化を検出することにより、消化器における新生物の存在を検出可能かどうかの検討を行った。
(実施例2)遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域のメチル化の総和と病理診断との関係
インフォームド・コンセントを得られた大腸内視鏡検査予定患者60名から、検査施行前の糞便を生体検体として得た。得られた糞便を、特願2004-303787号の実施例1に記載と同手法によりグリコーゲン処理及び重亜硫酸塩処理を行った。該重亜硫酸塩処理した溶液2μLについて、SFRP1, SFRP2, DCC, APC, MGMT, hMLH1各遺伝子のプロモーター領域及び/又は5'領域のメチル化を予備検討で行った方法と同じ方法で検出した。
60症例の糞便からのメチル化を検出した結果、大腸内視鏡及び上部消化管内視鏡検査結果を表3に示した。性別は女性をFと表記し、男性をMと表記した。FOBTは便潜血反応検査(fecal Occult-blood test)を示し、(+)は便潜血反応検査陽性を、(−)は便潜血反応検査陰性を、N.D.は便潜血反応検査を行ったかどうか確認不可能な症例を示した。また、メチル化状況(Methylation Status)は、遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域にメチル化が認められた場合を1と表記し、メチル化が認められない場合を0と表記した。また、核酸増幅反応の認められなかったものに対しては、N.A.(Not Amplified)と表記した。M.I. は、各遺伝子のプロモーター領域及び/又は5'領域についてメチル化の認められた場合を1ポイントとして加算を行い、N.A.は加算しなかった(すなわち0ポイントと同義である)。
表3に示した60症例を、悪性新生物(胃adenocarcinoma, 大腸adenocarcinoma, 十二指腸carcinoidを含む)群、良性新生物(胃fundic gland polyp, 胃hyperplastic polyp, 大腸tubular Adenomaを含む)群、及びW.N.L(新生物(癌又は腺腫)が認められなかった症例)群の3つに分類した。この3つに分類された症例群と、APC, DCC, MGMT, hMLH1, SFRP1, SFRP2各遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域のメチル化頻度、及びM.I.平均値との関係を表4に示した。P値は3群間とM.I.平均値との比較には分散分析を用いた。また、3群間のM.I.平均値の比較には分散分析を用いた。また、3群間の各遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域のメチル化頻度の比較についてはPearsonの検定を用いた。
その結果、糞便からのDNAメチル化の検出により、そのメチル化遺伝子の総和の値の平均値は悪性新生物を伴う症例及び良性新生物を伴う症例と新生物を伴わない(W.N.L)症例の間において有為に差が認められた。また、この結果は、予備検討と同じ傾向であった。
APC遺伝子の1Aプロモーター領域のメチル化は新生物(癌と腺腫)を検出することができ、SFRP2プロモーター領域若しくは5'領域のメチル化も同様な傾向であった。DCCプロモーター領域若しくは5'領域のメチル化においては、悪性新生物を中心に検出可能であることが示され、この傾向はMGMTプロモーター領域のメチル化にも認められた。
本実施例において、各遺伝子プロモーター領域及び/又は5'領域のメチル化を非定量的に検出した。表4の結果を考慮し、M.I.値が2以上の症例を検査陽性群(すなわち消化器に新生物の存在が疑われる症例群)とし、また、M.I.値が1又は0の症例を検査陰性群として、この検査方法における感度、及び特異度を算出した。その結果を表5に示した。尚、P値はFisherの正確検定の値を示す。
表5に示したように、消化器に存在する新生物を検出する感度は90.0%、特異度は53.3%であった。また、悪性新生物については、100%検出可能であることが示された。
(比較例1)便潜血による確認
上記予備検討に示した症例のうち60症例について便潜血反応を施行し、陽性を示した患者20症例における大腸内視鏡による新生物の有無の関係を調べ、表6に示した。W.N.Lは新生物(癌又は腺腫)が認められなかった症例である。このように便潜血反応陽性の症例においても半数以上は新生物が認められなかった。
上記の結果より、便潜血反応では新生物の判断を行うことが殆ど不可能であると考えられた。一方、本発明の検査方法により、特に複数の遺伝子プロモーター領域若しくは5'領域についてメチル化を検出し、その総和(M.I.)を求めることで、正確、かつ簡便に新生物の検査を行うことができることが示唆された。
以上説明したように、本発明の検査方法により生体検体、好ましくは糞便検体から消化器に存在する新生物(癌又は腺腫)を判定することが可能である。実施例に示した遺伝子プロモーター領域及び/又は5'領域のメチル化の有無は、正常粘膜組織由来DNA又は、大腸癌及び新生物組織由来DNAのメチル化の有無の検出を糞便から検出可能であることを示した。このように非侵襲DNA材料として実用的に利用可能となったことは、各種疾患の診断上有用であるばかりではなく、操作的に多数検体の処理が可能なことから、正常集団を対象とした大腸癌等の各種検診への応用も可能である。従って、本発明の方法により、消化器に関する新生物をある程度予測でき、本発明の検査方法により要注意と判断された患者について内視鏡検査を行う等、患者への負担を軽減化することもできる。
糞便検体についてのAPC遺伝子の1Aプロモーター領域のメチル化の有無の検討結果を示す図である。SMはサイズマーカーを示し、各番号は検体番号を示す。またMcはメチル化のコントロールを示し、Mはメチル化が検出されたことを示し、Uはメチル化が検出されなかったことを示す。 糞便検体についてのDCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域のメチル化の有無の検討結果を示す図である。SMはサイズマーカーを示し、各番号は検体番号を示す。またMcはメチル化のコントロールを示し、Mはメチル化が検出されたことを示し、Uはメチル化が検出されなかったことを示す。 糞便検体についてのMGMT遺伝子のプロモーター領域のメチル化の有無の検討結果を示す図である。SMはサイズマーカーを示し、各番号は検体番号を示す。またMcはメチル化のコントロールを示し、Mはメチル化が検出されたことを示し、Uはメチル化が検出されなかったことを示す。 糞便検体についてのSFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域のメチル化の有無の検討結果を示す図である。SMはサイズマーカーを示し、各番号は検体番号を示す。またMcはメチル化のコントロールを示し、Mはメチル化が検出されたことを示し、Uはメチル化が検出されなかったことを示す。

Claims (10)

  1. 生体検体中 に存在する2種以上の特定の遺伝子及び/若しくは遺伝子座のメチル化を検出し、該メチル化遺伝子の総和を算出することによる、消化器に存在する新生物の検出方法。
  2. 特定の遺伝子及び/若しくは遺伝子座が、APC遺伝子及び/又はDCC遺伝子を含む請求項1に記載の新生物の検出方法。
  3. APC遺伝子の1Aプロモーター領域及び/又はDCC遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域 のメチル化を検出することを特徴とする請求項2に記載の新生物の検出方法。
  4. 特定の遺伝子及び/若しくは遺伝子座が、さらにSFRP2遺伝子、MGMT遺伝子、hMLH1遺伝子、又はSFRP1遺伝子から選択される1種又は複数種を含む請求項2又は3に記載の新生物の検出方法。
  5. SFRP2遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域、MGMT遺伝子のプロモーター領域、hMLH1遺伝子のプロモーター領域又はSFRP1遺伝子のプロモーター領域若しくは5'領域のメチル化を検出することを特徴とする請求項4に記載の新生物の検出方法。
  6. メチル化の検出が、生体検体中に存在するDNAを非メチル化シトシンを修飾する試薬と接触させ、該生体検体中に存在しうるDNAの全ての非メチル化シトシンをウラシルに転換する方法を用いてDNAの修飾を行ったのち、修飾されていないシトシンを検出することによる請求項1〜5のいずれか一に記載の検出方法。
  7. 生体検体中に存在するDNAを非メチル化シトシンを修飾する試薬と接触させたのち、配列番号1〜18のいずれかに表された塩基配列のオリゴヌクレオチドからなるプライマーを用いてDNAを増幅し、修飾されていないシトシンを検出することによる請求項6に記載の検出方法。
  8. 請求項7に記載の検出方法に使用する、以下の1)〜12)のいずれかから選択される2種のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセット:
    1)配列番号1及び3に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    2)配列番号2及び3に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    3)配列番号4及び6に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    4)配列番号4及び5に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    5)配列番号7及び9に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    6)配列番号8及び9に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    7)配列番号10及び12に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    8)配列番号11及び12に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    9)配列番号13及び15に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    10)配列番号14及び15に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    11)配列番号16及び18に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド;
    12)配列番号17及び18に表された各塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチド。
  9. 請求項7に記載の検出方法に使用する、以下の1)〜6)のいずれかから選択される3種のオリゴヌクレオチドを含むプライマーセット:
    1)配列番号1〜3に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
    2)配列番号4〜6に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
    3)配列番号7〜9に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
    4)配列番号10〜12に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド;
    5)配列番号13〜15に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド。
    6)配列番号16〜18に表された各塩基配列からなる3種のオリゴヌクレオチド。
  10. 請求項8又は9に記載のプライマーセットを含む、消化器に存在する新生物の検出用試薬又は検出用試薬キット。
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