JP2006162425A - フッ化物の光学特性評価法、光学材料、及び蛍石結晶製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光学特性に影響を与えるフッ化物結晶の欠陥の簡便な評価法を提供し、特に真空紫外光リソグラフィ装置などに要求される高耐久・高透過率蛍石、及びその製造法を提供する。
【解決手段】 紫外線に対するフッ化物結晶の耐久性、透過率を評価する光学特性評価法であって、電子スピン共鳴吸収を測定したときに、観測されるスピン濃度が求められる光学特性に対応する濃度以下であるものを特性の優れたフッ化物結晶とする。前記スピン濃度は、観測されるg値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度であり、前記求められる光学特性に対応する濃度は、スピン濃度の総和が5×1010spins/mgである。前記フッ化物結晶は、特にフッ化カルシウム結晶(蛍石)である。
【選択図】 図1
【解決手段】 紫外線に対するフッ化物結晶の耐久性、透過率を評価する光学特性評価法であって、電子スピン共鳴吸収を測定したときに、観測されるスピン濃度が求められる光学特性に対応する濃度以下であるものを特性の優れたフッ化物結晶とする。前記スピン濃度は、観測されるg値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度であり、前記求められる光学特性に対応する濃度は、スピン濃度の総和が5×1010spins/mgである。前記フッ化物結晶は、特にフッ化カルシウム結晶(蛍石)である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、フッ化物の光学特性評価法、特にエキシマレーザーを露光光とするフォトリソグラフィ装置などで用いられる光学材料としての蛍石(フッ化カルシウム結晶)の光学特性評価法、光学材料としての蛍石、及び蛍石結晶製造法に関する。また、本発明は、上記蛍石を光学素子として用いた光学系、その光学系を用いた半導体製造用露光装置、及びその露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
近年の急速な半導体回路の微細化に伴い、半導体露光装置に使用される光源の短波長化が進んでいる。現在ではF2エキシマレーザー(λ:157nm)を用いた露光装置の開発が盛んである。これに伴って短波長に対しても高い耐久性、透過率を実現する光学材料として蛍石が有望視されている。
しかし、蛍石は不純物や結晶欠陥の存在によって耐久性や透過率が低下してしまう。これは光源の短波長化と共により顕著となるため、露光装置の光学材料として用いるにあたり不純物や結晶欠陥の存在は大きな問題となる。
この問題を解決するために、一つには蛍石の高純度化が精力的に進められている。例えば、下記特許文献1に挙げた不純物の分析手法、即ち、蛍石試料の前処理法と分析装置としての誘導結合プラズマ質量分析装置を用いた方法によれば、蛍石中不純物を定量限界0.1ppbで検出可能となる。この手法を用いて不純物濃度を管理することにより、求められる光学特性に必要な純度の蛍石を得ることができる。
もう一つには、結晶欠陥の低減が精力的に進められており、結晶成長工程及び成長させた蛍石結晶を再び融点を超えない温度まで加熱・徐冷を行う工程において、最適な条件を見出すことで欠陥低減を図っている。
これによって良好な光学特性を持つ蛍石を歩留まり良く作製することができる。しかし、蛍石中の不純物量が管理されていることに対して、結晶中欠陥量は評価・管理されていなかった。そのためこれが品質のバラツキの原因となっており、歩留まりを更に上げる余地があった。
また、通常の光学特性の評価法では試料を高精度に研磨し、ArFやF2エキシマレーザーを長時間照射してその特性を測定していた。
特開2003−21619号公報
上記従来の評価法は多くの手間、時間、費用が必要となる。そのため、光学特性評価についても大きな課題となっており、これに代わる簡便な評価法が求められている。
そこで、本発明は、フッ化物結晶中欠陥量を電子スピン共鳴法により直接定量することによりフッ化物の簡便な光学特性評価法を提供し、更に、その評価結果から光学特性にとって理想的と示されたスピン濃度範囲を満たす光学材料としての蛍石、及びその許容濃度範囲を実現するための蛍石結晶製造法を提供する。特に、真空紫外光リソグラフィ装置などに要求される高耐久・高透過率蛍石の光学特性評価法、光学材料としての蛍石、及び蛍石結晶製造法を提供する。
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討した結果、本発明を想到するに至った。
本発明者らは、フッ化物結晶、特に蛍石の光学特性が電子スピン共鳴吸収量、即ち、蛍石結晶中の不対電子濃度と相関があり、該電子スピン共鳴吸収量を測定することで光学特性を評価できることを見出した。特にg値(spectroscopic splitting factor,スペクトル分岐因子)1.9から2.1の範囲における不対電子濃度の総和と良好な相関があり、該範囲の不対電子濃度の総和を測定することで光学特性を評価することができる。
なお、電子スピン共鳴吸収は、結晶中の不対電子の状態(不対電子のスピンが共鳴を受けるエネルギー(即ちg値)及び吸収波形に反映される)及びその濃度(吸収強度に反映される)を観測できる手法である。
また、結晶欠陥は不対電子を伴う場合のあることが知られている。そのため前記知見は、蛍石の光学特性に影響する結晶欠陥を、蛍石中の不対電子、特にg値1.9から2.1の範囲にある不対電子によって評価することが可能であることを示している。このように、本発明によって結晶中の欠陥量を評価・管理することが可能となり、また欠陥量の評価によって、従来の光学特性評価で必要であった高精度な研磨や長時間のレーザー照射を伴うことなく蛍石の光学特性を評価することができる。
ここで、電子スピン共鳴について簡単に説明する。物質中で不対電子が磁場中にあるとき、電子の持つ磁気モーメント、即ちスピン状態が量子化し、これに対応してエネルギー準位が2つに分裂する(ゼーマン分裂)。物質にマイクロ波を加えたとき二準位間のエネルギー差に等しいエネルギーをもつ場合に共鳴吸収が起こる。磁場の強さとマイクロ波の周波数の間には一定の関係があり、この電波の吸収量及び吸収スペクトル波形は、それぞれ不対電子の数及びその周囲のポテンシャル状態を反映する。通常、測定は一定の周波数のマイクロ波を用い、磁場を走査させて行う。次式を満たすときに共鳴吸収が起こり、横軸を磁場の強さ、縦軸を吸収強度とする共鳴吸収スペクトルが得られる。通常はこの吸収強度スペクトルを一次微分したものをESRスペクトルと呼ぶ。ESRスペクトル中のピークの位置から不対電子の存在状態を表す指標としてg値が得られる。なお、拘束を受けていない自由電子で、g=2.00232である。
次式においてh,μBは、それぞれプランクの定数、ボーア磁子と呼ばれる定数であり、νはマイクロ波の周波数、Hは静磁場の強さを表している。
hν=gμBH
hν=gμBH
上記知見に基づき、本発明のフッ化物の光学特性評価法は、紫外線に対するフッ化物結晶の耐久性、透過率を評価する光学特性評価法であって、電子スピン共鳴吸収を測定したときに、観測されるスピン濃度が求められる光学特性に対応する濃度以下であるものを特性の優れたフッ化物結晶とすることを特徴とする(請求項1)。
また、上記本発明のフッ化物の光学特性評価法において、前記スピン濃度は、観測されるg値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度であることを特徴とする(請求項2)。
また、上記本発明のフッ化物の光学特性評価法において、前記求められる光学特性に対応する濃度は、スピン濃度の総和が5×1010spins/mgであることを特徴とする(請求項3)。
また、上記本発明のフッ化物の光学特性評価法において、前記フッ化物結晶は、フッ化カルシウム結晶であることを特徴とする(請求項4)。
更に、本発明の光学材料は、フッ化カルシウム結晶を主成分とする光学材料であって、電子スピン共鳴吸収を測定したときに、観測されるスピンの濃度が求められる光学特性に対応する濃度以下であることを特徴とする(請求項5)。
また、上記本発明の光学材料において、前記スピン濃度は、観測されるg値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度であることを特徴とする(請求項6)。
また、上記本発明の光学材料において、前記求められる光学特性に対応する濃度は、スピン濃度の総和が5×1010spins/mgであることを特徴とする(請求項7)。
更に、本発明の蛍石結晶製造法は、蛍石原料を融解して前処理品を作製する第1の工程と、前処理品を融解・結晶化してインゴットを作製する第2の工程と、得られたインゴットを融点以下で熱処理して結晶性を向上させ製品を得る第3の工程とを有する蛍石結晶製造法において、インゴット又は製品の少なくともいずれか1方において、上記本発明のフッ化カルシウム結晶の光学特性評価法を行い、その評価結果に基づいて前記各工程を管理することを特徴とする(請求項8)。
また、本発明の光学系は、紫外線を光源とする光学系において、上記本発明の光学材料の素子を用いることを特徴とする(請求項9)。
また、本発明の半導体製造用露光装置は、上記本発明の光学系を用いることを特徴とする(請求項10)。
また、本発明のデバイス製造方法は、上記本発明の半導体製造用露光装置をデバイス製造の露光工程に用いることを特徴とする(請求項11)。
本発明により、フッ化物結晶の電子スピン共鳴吸収量であるスピン濃度の総和を測定することで、フッ化物結晶中の欠陥量に起因する光学特性を評価する簡便な方法が提供される。
また、フッ化物結晶を蛍石とし結晶欠陥量を規定することにより、良好な光学特性を持つ蛍石を提供することが可能となる。また、上記評価法を用いて結晶欠陥量を管理することにより歩留まり良く高品質蛍石を製造することができる。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
第一に、本発明の提供する光学特性評価法について説明する。本発明の評価法は、電子スピン共鳴吸収の測定により観測されるスピンの濃度によって評価を行うことを特徴とする。
フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化バリウム(BaF2)のようなフッ化物の結晶は、紫外領域での透過率が高く、光学材料として用いられている。本発明ではこれらのフッ化物結晶に対して実施可能である。以下の実施形態では専らフッ化カルシウムを主成分とする蛍石について説明する。
まず、測定したいフッ化物結晶試料、例えば蛍石結晶試料を用意する。試料は結晶格子へのダメージを抑えるため、ヘキ開により採取することが望ましい。試料のサイズは用いる測定装置に応じて異なるが、いずれの場合も感度が良くなるようにサイズを調整すると良い。
試料は電子スピン共鳴測定装置に通常の手法にて固定する。例えば、石英ロッドにシリコングリースを用いて試料を貼り付ける手法などを挙げることができる。なお、試料を固定するときには結晶方位を揃えておくことが望ましい。これは、異なった試料間で吸収強度の比較を行いやすくするためである。方位については感度が高くなるよう調整することが望ましい。
その後、電子スピン共鳴の測定を行う。なお、測定条件は一般的に用いられるものを用いて構わない。例えば、Xバンド領域のマイクロ波(8〜12GHz、通常は約9.3GHz)を用いる場合、マイクロ波出力4mW、変調磁場0.5mT、応答時間0.03秒、磁場掃引幅303〜353mT(おおよそg値1.86〜2.17に相当)、掃引速度30秒などの値を代表的に挙げることができる。
また、吸収共鳴磁場(g値)の補正及び吸収強度をスピン量に換算する係数算出には通常用いられる標準試料を用いることができる。例えば、吸収共鳴磁場(g値)の補正にはMn2+/MgOを、吸収強度をスピン量に換算する係数算出にはTANOLやCuSO4・5H2Oなどを挙げることができる。また、Mn2+/MgOのスピン量をあらかじめ測定しておけば、Mn2+/MgOのみで吸収共鳴磁場(g値)の補正及び吸収強度をスピン量に換算する係数算出を行うこともできる。
なお、測定は室温で行って構わないが、一般に電子スピンは熱擾乱によりエネルギーの低いスピン状態(基底状態)とエネルギーの高いスピン状態(励起状態)の2種類が混在している。試料を低温にすると、熱擾乱が抑制されて基底状態であるスピンの割合が増えるため、共鳴吸収強度が増加する。そのため、低温下での測定はより好ましい実施形態となる。
このようにして得られた電子スピン共鳴吸収スペクトルから、通常用いられる解析手法を用いてg値及びスピン量を算出する。即ち、吸収波形をローレンツ型曲線であるとみなし、電子スピン共鳴吸収の見られる磁場強度からg値を求め、吸収シグナルの高さ及びその半値幅から吸収強度(即ちスピン量)を得ることができる。
以上のようにしてg値とスピン量を測定することで、蛍石の光学特性を評価することが可能となる。
第二に、本発明の提供するF2エキシマレーザーのような真空紫外光に好適である光学材料について、その実施形態を説明する。本発明の光学材料は、フッ化カルシウムを主成分とする蛍石であって、光学特性を低下させている結晶欠陥が光学特性に影響のない程度しか含まれていないことを特徴とする。即ち、電子スピン共鳴吸収測定により観測されるスピンの濃度が求められる光学特性に対応する濃度以下であることを特徴としている。
真空紫外光用の光学材料として製造された蛍石結晶に対して、電子スピン共鳴吸収を測定した。観測されたスピン濃度が求める光学特性に対応する濃度以下であるものを任意に選び出し光学特性を評価したところ、いずれも求められる光学特性を満足していることが確認された。
例えば、F2エキシマレーザーに対応する光学特性を持つ蛍石は、g値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が5×1010spins/mg以下であるものによって提供することができる。
第三に、本発明の提供する、前記のように光学特性の優れた蛍石結晶を効率良く得るための製造法の実施形態を、概略図に沿って説明する。
図1は、蛍石結晶の製造工程例を説明するためのフローチャートである。
本発明の製造方法は、インゴット及び製品を製造するプロセスの少なくとも1つの段階において電子スピン共鳴吸収測定による評価を行い、その結果に基づいて該プロセスを管理することを特徴とする。以下には両段階において分析を実施した場合の製造法の形態を例示する。
まず、前処理品の製造工程について説明する。蛍石結晶の製造原料は一般に化学合成された不純物の少ない粉末原料が用いられる。この工程では、該蛍石原料を脱酸素剤と共に融解・固化する。以下、具体例で説明を行う。
まず、合成蛍石原料に脱酸素剤としてZnF2を0.1mass % 加え、よく攪拌混合させる。この混合物を黒鉛等で作られた清浄な容器に充填し、真空雰囲気下で加熱を行い、混合物を融解後、徐冷・固化させる。
次いで、インゴットの製造工程について説明する。この工程では、上述した前処理品を脱酸素剤と共に融解・固化するが、前処理品に比べ更にゆっくりと徐冷する。これにより、結晶性が高く結晶粒界が少ない良好な結晶を得る。以下、具体例で説明を行う。
上述のようにして得られた前処理品に脱酸素剤としてZnF2を0.01mass % を均一になじむように振り掛ける。これを黒鉛等で作られた清浄な容器に充填し、真空雰囲気下で加熱を行い、混合物を融解後、坩堝引下げ法により前処理品に比べ更にゆっくりと徐冷・固化させる。
このようにして得られたインゴットについて、本発明の評価法によって結晶欠陥量の分析を行い、最終的に得られる製品に含まれる結晶欠陥量が少なくなるよう管理を行う。
最後に、製品の製造工程について説明する。この工程では上述したインゴットを融点以下の温度で保持し、その後インゴット作製時と同等またはそれ以下の速度でゆっくりと徐冷する。この熱処理により、インゴット内部に生じた歪に伴う残留応力を減少させ、複屈折を低減させる。以下、具体例で説明を行う。
上述のようにして得られたインゴットを黒鉛等で作られた清浄な容器に充填する。このとき、脱酸素剤としてZnF2を入れても良い。雰囲気としては、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気などが望ましい。この状態で融点を超えない温度まで加熱を行い、所定時間保持した後に結晶構造形成に敏感な温度範囲においてインゴット作製時と同等またはそれ以下の速度でゆっくりと徐冷する。
このようにして得られた製品について、本発明の評価法によって結晶欠陥量の分析を行い、最終的に得られる製品に含まれる結晶欠陥量を直接に管理する。発明者は、F2エキシマレーザーに対して良好な光学特性を示すために必要な、製品中結晶欠陥の限界含有量を調査したところ、電子スピン共鳴吸収を測定したときに、g値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が5×1010spins/mg以下であることが望ましいことを実際の光学特性との相関調査実験において突き止めた。
第四に、本発明の蛍石の光学素子を用いた光学系及び露光装置、そして該露光装置を用いたデバイス製造方法について、その実施形態を説明する。
本発明の蛍石は、F2エキシマレーザーのような真空紫外光に対して耐久性及び透過率が高い。そのため、該蛍石の光学素子を用いて光学系を作製することで、真空紫外光に対しても光吸収や透過率低下が少ない、即ち熱収差が少なく、且つ照度の安定した良好な光学系を得ることができる。
また、そのような光学系を半導体製造用露光装置に用いることにより、照度低下が少なく、生産性に優れた半導体製造用露光装置を提供することができる。
更に、熱収差による結像性能の劣化が少ないため、前記半導体製造用露光装置を用いることで安定したデバイス製造法を提供することができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。以下に示す具体例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるが、本発明はかかる具体的形態に限定されるものではない。
本実施例は、電子スピン共鳴吸収の測定により観測されるスピンの濃度によって光学特性の評価を行う手法に関するものである。
まず、真空紫外光用の光学材料として製造された任意の蛍石結晶試料を複数用意した。試料は結晶格子へのダメージを抑えるため、ヘキ開により採取を行った。試料のサイズは約30mgとした。
試料は、石英ロッドにシリコングリースを用いて試料を貼り付けることで電子スピン共鳴測定装置に固定した。測定装置にはJEOL製のJES-RE2Xを用いた。なお、試料を固定する際には(1,1,1)ヘキ開面が外部磁場方向及びマイクロ波定在波の電場の振動方向(即ち装置の上下方向)に垂直となるように結晶方位を揃えた。
その後、電子スピン共鳴の測定を行った。測定にはXバンド領域のマイクロ波(約9.3GHz)を用い、測定条件はマイクロ波出力4mW、変調磁場0.5mT、応答時間0.03秒、磁場掃引幅303〜353mT(おおよそg値1.86〜2.17に相当)、掃引速度30秒、受信器利得200倍とした。なお、測定は室温で行った。また、吸収共鳴磁場(g値)の補正及び吸収強度をスピン量に換算する係数算出にはあらかじめg値及びスピン量既知のMn2+/MgOを標準試料として用いた。g値及びスピン量の算出は吸収波形をローレンツ型曲線でフィッティングし、電子スピン共鳴吸収の見られる磁場強度からg値を、吸収シグナルの高さ及びその半値幅から吸収強度(即ちスピン量)を求めた。
図2は、このようにして得られた電子スピン共鳴吸収波形(スペクトル)のグラフである。
図中Aは、光学特性に問題のある蛍石試料、図中Bは、良好な光学特性を示す蛍石試料のものである。Aには矢印で示したようにシグナルが観測され、そのうちg値1.9から2.1の範囲(図2において掃引磁場範囲313.5〜346.5mTに対応する)におけるスピン濃度の総和は2×1011spins/mgであった。その他の蛍石についても同様の評価を行い、g値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が5×1010spins/mg以下であるグループとそうでないグループに分け、前者を光学特性が良好であるもの、後者をそうでないものとして分類を行った。次に、その分類が正当なものであるかを確認するために、実際に耐久性と透過率を真空紫外光を用いて評価を行った。その結果、g値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が5×1010spins/mg以下であるグループはいずれもF2エキシマレーザーに求められる光学特性をクリアしていた。g値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が5×1010spins/mgを超えるグループはいずれも規定された光学特性を満たしていなかった。
このように、g値とスピン量を測定することで蛍石の光学特性を評価することが可能であった。
本実施例は、F2エキシマレーザーのような真空紫外光に好適である光学部材に関するものである。
露光装置用蛍石レンズ材として作製された円盤状製品の縁部から試料をヘキ開にて取り出し、その電子スピン共鳴吸収を測定した。このうちg値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が5×1010spins/mg以下であるものについて透過率、耐久性を調査したところ、いずれも光学特性は良好で規定基準を満たしていた。
このように、不対電子濃度を規定することによって、求める光学特性を達成する蛍石を提供することができた。
本実施例は、F2エキシマレーザーのような真空紫外光に好適である蛍石結晶の製造法に関するものである。
まず、蛍石結晶の原料となる合成フッ化カルシウム粉末を用いて前処理品を作製した。前処理品の作製は、以下のように行った。
粉末のフッ化カルシウム原料に粉末状のZnF2を0.1 mass % 添加してよく混合した。これを黒鉛製の清浄な容器に充填し、この容器を真空排気可能な加熱装置内に設置した。装置内を 10-6 torr 程度の真空に保ちながら1450℃まで加熱を行い、その後坩堝引下げ法により室温まで降温した。これにより多結晶体である前処理品を得た。
次に、インゴットを作製した。インゴットの作製は、以下のように行った。
前述のようにして得た前処理品に脱酸素化剤としてZnF2 0.01 mass % を均一になじむように振り掛け、これを黒鉛製の清浄な容器に充填し、この容器を真空排気可能な加熱装置内に設置した。装置内を 10-6 torr 程度の真空に保ちながら1450℃まで加熱を行い、その後坩堝引下げ法により室温まで降温した。これによりインゴットを得た。
このようにして得られたインゴットについて、本発明の評価法によって結晶欠陥量の分析を行い、最終的に得られる製品に含まれる結晶欠陥量が少なくなるよう管理した。即ち、g値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が1×1011spins/mg以下のインゴットのみを選び、以後の製造に使用した。
次に、製品を作製した。製品の作製は、以下のように行った。
前記のようにして得たインゴットを所定の形状に加工し、この形成品を黒鉛製の清浄な容器に設置し、更に真空排気可能な加熱装置内に設置した。これを 10-6 torr 程度の真空中で1000℃まで加熱し、20時間保持した後に 0.7℃ / h の速度でゆっくりと600 ℃まで降温した。その後10℃ / h で室温まで冷却し、製品を得た。
このようにして得られた製品のうち、最終研磨工程で削り落とされる部分をヘキ開により取り出し、本発明の評価法によって結晶欠陥量の分析を行って、最終的に得られる製品に含まれる結晶欠陥量を評価した。このように、g値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度の総和が5×1010spins/mg以下である製品のみを選び、研磨工程等へ使用できる合格製品とした。
こうして得られた製品について実際に耐久性・透過率を測定したところ、規定基準をクリアする良好な蛍石結晶であることが確認できた。
本実施例は、F2エキシマレーザーのような真空紫外光に好適である光学部材を用いた光学系、半導体製造用露光装置、該半導体製造用露光装置を用いたデバイス製造法に関するものである。
図3は、本実施例の半導体製造用露光装置の概略図である。
1は光源であり、ArFエキシマレーザーを用いている。光源1から発せられる光束2はミラー3により照明光学系4に導光され、照明光学系4を通過した光束は第一物体であるレチクル5面上を照明する。更にレチクル5の情報を持った光束が縮小投影光学系6を通り感光基板7へ投影される。
本実施例における半導体製造用露光装置の照明光学系や投影光学系には蛍石が石英と共に用いられている。なお、ここで用いた蛍石は、実施例1にて良好であると評価されたもの、実施例2にて良好であると規定されたもの、又は実施例3にて良好であるように製造された蛍石である。
本実施例における半導体製造用露光装置を、定常業務において1年間使用した。使用後のレチクル面における照度を測定した結果、使用前に測定した照度とほぼ同じ値であった。また、感光基板面(ウエハ面)における照度を測定した結果も使用前に測定した照度とほぼ同じ値であった。
このように、本発明に基づく蛍石は、ArFエキシマレーザーに対する耐久性及び透過率に優れているため、露光装置を長期時間使用した後でも充分な透過率を有し、熱収差も少ない。従って、照明光学系においては照度の低下が少なく、投影光学系においては結像安定性の高い、即ちスループット及び品質安定性に優れた露光装置を提供することができた。
次いで、該露光装置を用いた半導体デバイスの製造方法についてその実施例を説明する。
図4は、半導体デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシンなど)の製造工程を示すフローチャートである。
ステップ1(回路設計)ではデバイスのパターン設計を行う。ステップ2(マスク製作)では設計したパターンを成型したマスクを製作する。一方、ステップ3(ウエハ製造)でシリコンなどからなるウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)において、前記用意したマスクとウエハを用いてリソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組立)において、ステップ4によって作製された回路が形成されたウエハを半導体チップ化し、次いで、アセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)を行い、パッケージング工程(チップ封入)などを行う。ステップ6(検査)においてステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
図5は、半導体デバイスの製造工程におけるウエハプロセスの詳細なフローチャートである。
まず、ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。次いで、ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオン打込みを行う。ステップ15(CMP)では、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)装置によってウエハ表面を平坦に研磨する。ステップ16(レジスト処理)では、平坦化されたウエハ表面にレジストを塗布する。ステップ17(露光)では前記説明した露光装置によってマスクの回路パターンをウエハに焼き付け露光する。はじめに、レチクルを搬送し、レチクルチャックにチャッキングし、次いでレジストが塗布されたウエハ基板を露光装置内にローディングし、アライメントユニットでグローバルアライメント用のデータを読み取り、計測結果に基づいてウエハステージを駆動して所定の位置に次々と露光を行う。ステップ18(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ19(エッチング)では現像後にレジストが除去された部分をエッチングする。ステップ20(レジスト剥離)ではレジストを剥離する。これらのステップを繰返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
このような半導体デバイスの製造方法を用いれば、従来は製造が難しかった高集積度のデバイスを安定的に低コストで製造することができる。
1…光源
2…光束
3…ミラー
4…照明光学系
5…レチクル
6…投影光学系
7…感光基板
2…光束
3…ミラー
4…照明光学系
5…レチクル
6…投影光学系
7…感光基板
Claims (11)
- 紫外線に対するフッ化物結晶の耐久性、透過率を評価する光学特性評価法であって、電子スピン共鳴吸収を測定したときに、観測されるスピン濃度が求められる光学特性に対応する濃度以下であるものを特性の優れたフッ化物結晶とすることを特徴とするフッ化物の光学特性評価法。
- 前記スピン濃度は、観測されるg値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度であることを特徴とする請求項1に記載のフッ化物の光学特性評価法。
- 前記求められる光学特性に対応する濃度は、スピン濃度の総和が5×1010spins/mgであることを特徴とする請求項2に記載のフッ化物の光学特性評価法。
- 前記フッ化物結晶は、フッ化カルシウム結晶であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ化物の光学特性評価法。
- フッ化カルシウム結晶を主成分とする光学材料であって、電子スピン共鳴吸収を測定したときに、観測されるスピンの濃度が求められる光学特性に対応する濃度以下であることを特徴とする光学材料。
- 前記スピン濃度は、観測されるg値1.9から2.1の範囲におけるスピン濃度であることを特徴とする請求項5に記載の光学材料。
- 前記求められる光学特性に対応する濃度は、スピン濃度の総和が5×1010spins/mgであることを特徴とする請求項6に記載の光学材料。
- 蛍石原料を融解して前処理品を作製する第1の工程と、前処理品を融解・結晶化してインゴットを作製する第2の工程と、得られたインゴットを融点以下で熱処理して結晶性を向上させ製品を得る第3の工程とを有する蛍石結晶製造法において、インゴット又は製品の少なくともいずれか一方において、請求項4に記載の光学特性評価法を行い、その評価結果に基づいて前記各工程を管理することを特徴とする蛍石結晶製造法。
- 紫外線を光源とする光学系において、請求項5〜7のいずれかに記載の光学材料の素子を用いることを特徴とする光学系。
- 請求項9に記載の光学系を用いることを特徴とする半導体製造用露光装置。
- 請求項10に記載の半導体製造用露光装置をデバイス製造の露光工程に用いることを特徴とするデバイス製造方法。
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JP2004354145A JP2006162425A (ja) | 2004-12-07 | 2004-12-07 | フッ化物の光学特性評価法、光学材料、及び蛍石結晶製造法 |
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- 2004-12-07 JP JP2004354145A patent/JP2006162425A/ja not_active Withdrawn
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