<<第1実施形態>>
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の空気調和機の室内機1を示す斜視図である。空気調和機の室内機1は、キャビネット2により本体部が保持されており、キャビネット2には上面側と前面側に吸込口4が設けられたフロントパネル3が着脱自在に取り付けられている。キャビネット2は後方側面に爪部(不図示)が設けられ、室内の側壁W1(図2参照)に取り付けられた取付板(不図示)に該爪部を係合して支持される。
フロントパネル3の前面下部には空気を送出する吹出口5が設けられている。吹出口5は水平方向に延びた矩形に形成されている。吹出口5は4枚の横ルーバ111a、111b、111c、111dにより塞がれている。横ルーバ111aは吹出口5の向かって左半分を形成する左側吹出口5aの上部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ111bは吹出口5の右半分を形成する右側吹出口5bの上部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ111cは左側吹出口5aの下部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ111dは右側吹出口5bの下部を塞ぐ位置に配される。
横ルーバ111a、111b、111c、111dは水平な回動軸を有し、駆動モータ(不図示)の駆動によってそれぞれ独立に回動する。従って、横ルーバ111a、111cは左側吹出口5aから送出される気流の上下方向の風向を可変する。横ルーバ111b、111dは右側吹出口5bから送出される気流の上下方向の風向を可変する。
図2は室内機1の側面断面図を示している。室内機1の内部には、吸込口4から吹出口5に連通する送風経路6が形成されている。送風経路6内には空気を送出する送風ファン7が配されている。送風ファン7として、例えば、クロスフローファン等を用いることができる。送風経路6は前方へ行くほど下方に向かって傾斜し、送風ファン7により送出される空気を前方下方に案内する前方案内部6aを有している。また、送風経路6の上壁は前方案内部6aの終端から前方へ行くほど上方に傾斜した傾斜面になっている。
前方案内部6aには複数の縦ルーバ12a(図3参照)、12bが設けられている。図3は縦ルーバ12a、12bの上面図を示している。左側に配される複数の縦ルーバ12aはそれぞれ前方案内部6aに略垂直な支軸12dにより中央部を軸支され、後部が連結部材12cにより連結されている。これにより、複数の縦ルーバ12aは連動して回動し、左側吹出口5aから送出される気流の左右方向の風向を可変する。
同様に、右側に配される複数の縦ルーバ12bはそれぞれ前方案内部6aに略垂直な支軸12fにより中央部を軸支され、後部が連結部材12eにより連結されている。これにより、複数の縦ルーバ12bは連動して回動し、右側吹出口5bから送出される気流の左右方向の風向を可変する。
図2において、フロントパネル3に対向する位置には、吸込口4から吸い込まれた空気に含まれる塵埃を捕集・除去するエアフィルタ8が設けられている。送風経路6中の送風ファン7とエアフィルタ8との間には、室内熱交換器9が配置されている。室内熱交換器9は屋外に配される室外機に設けられた圧縮機(不図示)に接続されており、圧縮機の駆動により冷凍サイクルが運転される。
冷凍サイクルの運転によって冷房運転時には室内熱交換器9が周囲温度よりも低温に冷却される。また、暖房運転時には、室内熱交換器9が周囲温度よりも高温に加熱される。尚、室内熱交換器9とエアフィルタ8との間には吸込口4から吸い込まれた空気の温度を検知する温度センサ61が設けられ、室内機1の側部には空気調和機の駆動を制御する制御部(不図示)が設けられている。室内熱交換機9の前後の下部には冷房または除湿時に室内熱交換器9から落下した結露を補集するドレンパン10が設けられている。
図4は本実施形態の空気調和機の動作をコントロールするためのリモートコントローラ31を示す外観図である。リモートコントローラ31は操作部31a、表示部31b、発信部31cを有している。操作部31aは複数の操作キーを有し、空気調和機の運転状態を操作入力する。
操作部31aの操作キーによって、室内の冷房運転、除湿運転、暖房運転に切り替えることができる。下部のカバー31dを開くと別の操作キーが露出し、設定温度、風向、風速を設定することができる。また、室内を左右、前後、上下に二分割した第1、第2領域を別々に温度設定することができる。
表示部31bは液晶表示パネル等から成り、空気調和機の運転状況、時刻、設定温度等を表示する。また、室内機1を設置した部屋Rの概略形状、室内機1の概略設置位置が模式的に斜視図により表示される。そして、例えば、室内機1に向かって左右、前後または上下に分割した第1、第2領域の設定温度を別々に設定することができる。また、発信部31cは操作部31aによる操作信号を室内機1に発信する。
また、風速を「微風」、「弱風」、「強風」、「自動」等にユーザ設定することができる。これにより、手動で微風(6畳タイプの空気調和機で約4m/s)、弱風(同、約6m/s)、強風(同、約8m/s)等に可変することができる。また、「自動」に設定すると、運転状況に応じて微風、弱風、強風等に切り替えられる。
上記構成の空気調和機において、圧縮機(不図示)を駆動すると、室外機(不図示)からの冷媒が室内熱交換器9へ流れて冷凍サイクルが運転される。送風ファン7の駆動によって室内の空気は吸込口4から室内機1内に吸い込まれ、エアフィルタ8によって空気中に含まれる塵埃が除去される。
冷房運転時には、室内機1内に取り込まれた空気は低温側となる室内熱交換器9と熱交換して冷却される。室内熱交換器9で冷却された調和空気は、縦ルーバ12a、12b、及び横ルーバ111a、111b、111c、111dによって左右方向および上下方向に向きを規制され室内に送出される。
<第1の気流制御>
室内の温度分布を均一にする場合は、第1の気流制御が行われる。図5に示すように上方の横ルーバ111a、111bは前方が上方になるように例えば水平に対して20゜の角度で配置される。下方の横ルーバ111c、111dは前方が若干下方となる斜め下方から略水平の間で例えば水平に対して5゜以下の角度で配置される。また、縦ルーバ12a、12bは前述の図3に示すように正面に向けて配置される。縦ルーバ12a、12bは前方を外側に向けて約5゜までの範囲で傾斜してもよい。そして、風速が「微風」に設定され、吹出口5から調和空気が送出される。
送風経路6を流通して吹出口5の上部から送出される空気は横ルーバ111a、111bに沿って斜め上方に導かれる。送風経路6を流通して吹出口5の下部から送出される空気は横ルーバ111c、111dに沿って若干下方または略水平に導かれる。この時、送風ファン7によって送風経路6内を図中、時計回りに旋回して流通する空気は、内周側となる送風経路6の上部の風量が多くなる。このため、吹出口5の下部から送出される空気は上部から送出される空気に沿う。その結果、吹出口5から矢印Bに示すように斜め上方に向かって調和空気が送出される。
下方の横ルーバ111c、111dを前方へ行くほど上方になるように配置して空気を上方に導いてもよいが、横ルーバ111c、111dの下面に沿って流通する調和空気が減少する。このため、横ルーバ111c、111dの上面と下面との間に温度差が生じて結露する場合がある。従って、横ルーバ111c、111dを斜め下方から略水平の間に配置する方がより望ましい。
吹出口5から斜め上方に送出された空気は、コアンダ効果により天井壁Sに沿って流通し、拡散しながら室内機1に対向する側壁W2(図16参照)に到達する。そして、側壁W2に沿って降下し、床面F(図16参照)を流通して部屋R内の全体を調和空気が流通する。これにより、室内が均一な温度に冷房運転される。
尚、詳細を後述するように、吹出口5から送出される空気の風速を大きくすると、冷房運転時に調和空気が低温を維持して遠くまで導かれる。このため、室内機1から遠い側が近い側よりも低温になる。
<第2の気流制御>
次に、操作部31aにより室内を左右に分割した各領域を異なる温度に設定した場合は、第2の気流制御が行われる。前述の図4に示すリモートコントローラ31の表示部31bは、室内機1に向かって左側の第1領域E1(図10参照)の設定温度を24℃に設定し、右側の第2領域E2(図10参照)の設定温度を26℃に設定した状態を表わしている。第1、第2領域E1、E2は室内機1を左右に分断する鉛直面によって分割されている。
この設定温度で冷房運転を開始すると、縦ルーバ12a、12bは図6に示すように配置される。即ち、右側の縦ルーバ12bは正面に向かう方向に配置される。左側の縦ルーバ12aは前方に行くほど左方に例えば40゜傾斜して配置される。縦ルーバ12aよりも傾斜角の小さい範囲で右側の縦ルーバ12bを前方に行くほど若干右方に例えば5゜傾斜して配置してもよい。
右側の横ルーバ111b、111dは、前述の図5と同様に配置される。即ち、上方の横ルーバ111bは前方が上方になるように例えば水平に対して20゜の角度で配置される。下方の横ルーバ111dは前方が若干下方となる斜め下方から略水平の間の例えば水平に対して5゜以下の角度で配置される。また、左側の横ルーバ111a、111cは図7に示すように配置される。即ち、横ルーバ111a、111cは回動して前方に行くほど若干下方となる斜め下方から略水平の間に配置される。例えば、横ルーバ111aが水平に配置され、横ルーバ111cは水平に対して10゜前方が下方になるように配置される。図8はこの状態を示す室内機1の斜視図を示している。
そして、第1の気流制御と同様に風速が「微風」に設定され、送風ファン7を駆動して調和空気が吹出口5から図9に示すように送出される。即ち、左側吹出口5aからは、調和空気が矢印Aに示すように左方の略水平または左方の若干下方に向けて送出される。また、室内機1を分断する鉛直面に対して傾斜角αだけ左方に傾斜して送出される。右側吹出口5bからは、調和空気が矢印Bに示すように正面の斜め上方に向けて送出される。
図10は室内に送出された空気の流通状態を示している。右側吹出口5bから送出される空気(B)の気流(以下、「第2気流」という)は左右に拡散しながらコアンダ効果により天井壁Sに沿って流通して徐々に速度を低下させる。そして、室内機1に対向する側壁W2の広い範囲に沿って降下する。
左側吹出口5aから送出される空気(A)の気流(以下、「第1気流」という)は室内機1に向かって左側の側壁W3に沿って流通し、側壁W2に到達する。そして、第2気流は第1気流と合流して床面Fを流通する。
第1気流の傾斜角α(図9参照)は20゜以上にするとよい。図10の部屋Rを6畳間として短い方の側壁W1の中央に室内機1を設けると、室内機1の中央から側壁W2、W3が交わるコーナーに向かう方向は側壁W1に垂直な鉛直面に対して約20゜傾斜する。従って、第1気流の傾斜角αを20゜以上にすると、確実に第1気流を側壁W3に沿わせることができる。部屋Rが8畳間の場合や室内機1を正面にして横長の場合は傾斜角αを20゜よりも大きくすることにより側壁W3に沿わせることができる。
第2気流(B)は正面に向かって送出されるため、第2気流(B)によって部屋Rの左側の第1領域E1と右側の第2領域E2とが同等の冷却能力で冷却される。一方、第1気流(A)は左方に向かって送出されるため、第1気流(A)によって部屋Rの左側の第1領域E1が第2領域E2よりも多く冷却される。その結果、第1領域E1の平均温度は第2領域E2の平均温度よりも低くなる。
例えば、左側吹出口5a及び右側吹出口5bから1/2ずつの調和空気が送出されると、第2気流によって第1、第2領域はそれぞれ吹出口5から送出された調和空気の1/4ずつの冷却能力で冷却される。また、第1気流によって第1領域は吹出口5から送出された調和空気の略1/2の冷却能力で冷却される。これにより、第1領域には吹出口5から送出された調和空気の3/4の冷却能力が供給される。
また、前述の図6に示すように縦ルーバ12aは傾斜するため、左側吹出口5aから送出される第1気流(A)は縦ルーバ12aによる圧力損失の増加及び断面積の減少等により風量が減少する。このため、室内熱交換器9との熱交換によって第2気流よりも第1気流(A)の温度が低くなる。従って、第1領域E1の平均温度を第2領域E2の平均温度よりも更に低くすることができる。
図11〜図14は、第2の気流制御時の部屋R内の温度分布を示している。部屋Rの大きさは6畳(高さ2400mm、横3600mm、奥行き2700mm)である。図11〜図14は図10の一点鎖線D1、D2及び二点鎖線D3、D4のそれぞれの断面の測定結果を示している。
尚、D1断面は、側壁W3に平行かつ側壁W3から675mmの位置であり、部屋Rの室内機1に向かって左側1/4の位置の断面である。D2断面は、側壁W3に対向する側壁W4に平行かつ側壁W4から675mmの位置であり、部屋Rの室内機1に向かって右側1/4の位置の断面である。D3断面は、側壁W1に平行かつ側壁W1から1200mmの位置であり、部屋Rの室内機1に向かって前方1/3の位置の断面である。D4断面は、側壁W1に対向する側壁W2に平行かつ側壁W2から1200mmの位置であり、部屋Rの室内機1に向かって後方1/3の位置の断面である。
これらの図によると、部屋Rの室内機1に向かって左側の第1領域E1が約24℃に温度制御されている。また、室内機1に向かって右側の第2領域E2が約26℃に温度制御されている。従って、第1、第2領域E1、E2の温度差を約2℃設けることができる。
このとき、部屋Rの下方中央部の居住空間には空気が側壁W2から側壁W1の方向に向かって流通する。このため、吹出口5から送出された空気は減速され、第1領域E1の風速が0.1m/s以下であり、第2領域E2の風速が約0.2m/sになっている。従って、居住空間に冷気が直接降り注ぐことがなく、極めて低速の気流が流れるため使用者の健康を損なうことを防止することができる。尚、風速が0.5m/s以下であれば使用者にはほとんど無風に感じられる。このため、居住空間の風速が0.5m/s以下になるように送風ファン7の回転数が決められる。
また、第1気流(A)の風量は2.5m3/min、風速は3m/s、吹出温度は10℃であり、第2気流(B)の風量は5m3/min、風速は6m/s、吹出温度は15℃である。前述したように、圧力損失等により風量及び風速が異なり、第1気流(A)の吹出し温度が低くなっている。また、第1気流の風速が低いため、第1領域E1から第2領域E2に循環する調和空気の量が減少して第1領域E1に停滞する量が増加する。これにより、より簡単に第1領域E1の温度を第2領域E2よりも低くすることができる。
熱交換器9を左右に分割してそれぞれの熱交換器を異なる温度にして第1、第2気流の温度差を設けてもよい。また、送風ファン7を左右に分割してそれぞれの送風ファンを異なる回転数にして第1、第2気流を異なる風速及び風量にしてもよい。これらにより、第1、第2領域の温度をより細かく調節することができる。
また、吹出口5の左右の左側吹出口5aと右側吹出口5bから異なる方向に調和空気を送出するので、快適性を向上することができる。即ち、吹出口5の上下から異なる方向に調和空気を送出すると、横ルーバの上下面に温度差が発生する。これにより、横ルーバに結露が生じ、使用者に水が吹きかかったり、部屋を水浸しにして使用者を不快にする場合がある。これに対し、左側吹出口5aと右側吹出口5bから異なる方向に調和空気を送出すると、横ルーバ111a〜111dの上下面の温度差発生が抑制され、結露を防止して快適性が向上する。
<第3の気流制御>
リモートコントローラ31の操作によって第1、第2領域E1、E2の温度差を更に大きく設定した場合は、第3の気流制御が行われる。第3の気流制御では縦ルーバ12a及び横ルーバ111a〜111dは第2の気流制御の場合と同様に配置される。右側の縦ルーバ12bは前方が内側(左側)に向けて傾斜して配置される。
縦ルーバ12bは前方が内側(左側)に向けて傾斜して配置されるため、右側吹出口5bから送出される第2気流(B)は、部屋Rの右側の第2領域E2よりも左側の第1領域E1により多く送出される。このため、部屋Rの右側の第2領域E2よりも左側の第1領域E1に多くの冷却能力がもたらされる。但し、吹出口5から送出される全体の空気量が減少するために送風ファン7の回転数を増加して風量が増加される。また、第1、第2領域E1、E2の絶対的な室温は圧縮機(不図示)の回転数を可変して調整される。
例えば、第1、第2領域E1、E2の設定温度がそれぞれ23℃、26℃の場合は、第1の気流制御に対して右側の縦ルーバ12bは前方が内側(左側)に向けて10°傾斜して配置される。また、送風ファン7の回転数は110%に設定され、圧縮機(不図示)の回転数は105%に設定される。
第1、第2領域E1、E2の設定温度がそれぞれ22℃、26℃の場合は、第1の気流制御に対して右側の縦ルーバ12bは前方が内側(左側)に向けて20°傾斜して配置される。また、送風ファン7の回転数は120%に設定され、圧縮機(不図示)の回転数は110%に設定される。
上記の通り、縦ルーバ12bの傾斜角αを内側(左側)に向けて傾斜して配置し、第2気流(B)の第1領域E1に送出される風量を増加することにより第1領域E1の冷却能力が増加し、第2の気流制御に比して第1領域E1の温度が低くなる。これにより、第1、第2領域E1、E2の温度差を大きくすることができる。従って、第2気流(B)の風向により第1領域E1及び第2領域E2に送出される風量の割合を増減することによって、第1、第2領域E1、E2を独立して所望の温度に温度制御することができる。
また、左右に2分割した縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ111a〜111dを更に細分化することにより第1気流の割合を増減してもよい。送風ファンを左右に設けて個別に第1、第2気流の風量を可変してもよい。
尚、第2、第3の気流制御において第1領域E1を第2領域E2よりも低温にした場合を説明しているが、縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ111a〜111dを上記と左右対称に配置することで第2領域E2を第1領域E1よりも低温にすることができる。
<第4の気流制御>
次に、操作部31aにより室内を前後に分割した各領域を異なる温度に設定した場合は、第4の気流制御が行われる。図15はリモートコントローラ31の操作によって室内機1に近い側の第1領域E3(図16参照)の設定温度を26℃に設定し、遠い側の第2領域E4(図16参照)の設定温度を24℃に設定した状態を表わしている。第1、第2領域E3、E4は部屋Rの中央部を分断する鉛直面によって分割されている。
この設定温度で冷房運転を開始すると、縦ルーバ12a、12bは前述の図3と同様に、正面に向けて配置される。縦ルーバ12a、12bは前方を外側に向けて約5゜までの範囲で傾斜してもよい。また、横ルーバ111a、111b、111c、111dは、前述の図5と同様に配置される。即ち、上方の横ルーバ111a、111bは前方が上方になるように例えば水平に対して20゜の角度で配置される。下方の横ルーバ111c、111dは前方が若干下方となる斜め下方から略水平の間で例えば水平に対して5゜以下の角度で配置される。
そして、送風ファン7の回転数が第1の気流制御時に対して140%に設定され、調和空気が吹出口5から斜め上方に送出される。この時、吹出し風速は「弱風」(6畳タイプの空気調和機の場合は例えば6m/s)と同等になっている。図16に示すように、吹出口5から斜め上方に送出された空気は、コアンダ効果により天井壁Sに沿って流通し、拡散しながら室内機1に対向する側壁W2に到達する。そして、側壁W2に沿って降下し、床面Fを流通する。
この時、吹出し風速が大きいため、調和空気は天井壁Sに沿って流通する間に昇温されず、低温を維持して遠くまで到達する。このため、室外機1から近い側の第1領域E3の平均温度が遠い側の第2領域E4の平均温度よりも高くなる。
図17は、第4の気流制御時の部屋R内の温度分布を示している。部屋Rの大きさは上記と同様に6畳(高さ2400mm、横3600mm、奥行き2700mm)である。また、図17は図16に示す一点鎖線Dで示した部屋Rの中央断面の測定結果を示している。
同図によると、部屋Rの室内機1に近い側の第1領域E3が約26℃に温度制御されている。また、室内機1から遠い側の第2領域E4が約24℃に温度制御されている。従って、第1、第2領域E3、E4の温度差を約2℃設けることができる。
このとき、部屋Rの下方中央部の居住空間には空気が側壁W2から側壁W1の方向に向かって流通する。このため、吹出口5から送出された空気は減速され、居住空間の風速は0.1m/s以下になっている。従って、居住空間に冷気が直接降り注ぐことがなく、極めて低速の気流が流れるため使用者の健康を損なうことを防止することができる。
<第5の気流制御>
リモートコントローラ31の操作によって第1、第2領域E3、E4の温度差を更に大きく設定した場合は、第5の気流制御が行われる。第5の気流制御では、縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ111a〜111dは第4の気流制御の場合と同様に配置される。送風ファン7の回転数は増加され、吹出し気流の風速が増加される。また、第1、第2領域E3、E4の絶対的な室温は圧縮機(不図示)の回転数を可変して調整される。
例えば、第1、第2領域E3、E4の設定温度がそれぞれ23℃、26℃の場合は、第1の気流制御に対して送風ファン7の回転数は150%に設定され、圧縮機(不図示)の回転数は105%に設定される。また、第1、第2領域E3、E4の設定温度がそれぞれ22℃、26℃の場合は、第1の気流制御に対して送風ファン7の回転数は160%に設定され、圧縮機(不図示)の回転数は110%に設定される。
吹出口5から送出される風速が増加すると、低温の調和空気がより遠くまで到達する。これにより、第1、第2領域E3、E4の温度差をより大きくすることができる。従って、吹出し時の風速を可変することにより、第1、第2領域E3、E4を独立して所望の温度に温度制御することができる。
<第6の気流制御>
次に、操作部31aにより室内を上下に分割した各領域を異なる温度に設定した場合は、第6の気流制御が行われる。図18はリモートコントローラ31の操作によって室内の上部の第1領域E5(図20参照)の設定温度を26℃に設定し、遠い側の第2領域E6(図20参照)の設定温度を24℃に設定した状態を表わしている。第1、第2領域E5、E6は部屋Rの中央部を分断する水平面によって分割されている。
この設定温度で冷房運転を開始すると、縦ルーバ12a、12bは前述の図3と同様に、正面に向けて配置される。縦ルーバ12a、12bは前方を外側に向けて約5゜までの範囲で傾斜してもよい。また、横ルーバ111a、111b、111c、111dは、図19に示すように配置される。即ち、上方の横ルーバ111a、111bは回動して吹出口5の上部を遮蔽するように配置される。下方の横ルーバ111c、111dは回動して下端が上端に対して略真下方向から後方下方の間になるように設定される。
そして、送風ファン7の回転数が第1の気流制御時に対して80%に設定され、調和空気が吹出口5から略真下方向または下方後方に送出される。この時、吹出し風速は「微風」よりも小さくなっている。図20に示すように、吹出口5から略真下方向または下方後方に送出された空気は、室内機1が設置される側壁W1に沿って降下し、床面Fを流通する。
この時、吹出し時の風速が大きいと床面Fを流通した空気は側壁W2を上昇して循環されるが、吹出し時の風速が小さいため低温の空気が比重により床面Fに停滞して側壁W1及び床面F近傍が低温となる。このため、室外機1の上部の第1領域E5の平均温度が下部の第2領域E6の平均温度よりも高くなる。
図21は、上記の気流制御時の部屋R内の温度分布を示している。部屋Rの大きさは上記と同様に6畳(高さ2400mm、横3600mm、奥行き2700mm)である。また、図21は図20に示す一点鎖線Dで示した部屋Rの中央断面の測定結果を示している。
同図によると、部屋Rの天井側の第1領域E5が約25℃〜27℃になっており、平均温度が約26℃に温度制御されている。また、部屋Rの床面F側の第2領域E6が約23℃〜25℃になっており、平均温度が約24℃に温度制御されている。従って、第1、第2領域E5、E6の温度差を約2℃設けることができる。
このとき、吹出口5から低速で送出された空気は側壁W1に沿って流通する際に減速され、部屋Rの下方中央部の居住空間の風速は0.1m/s以下になっている。また、部屋Rの上部まで気流が届かないため上部の風速も0.1m/s以下になっている。従って、居住空間に冷気が直接降り注ぐことがなく、極めて低速の気流が流れるため使用者の健康を損なうことを防止することができる。
<第7の気流制御>
リモートコントローラ31の操作によって第1、第2領域E5、E6の温度差を更に大きく設定した場合は、第7の気流制御が行われる。第7の気流制御では縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ111a〜111dは第6の気流制御の場合と同様に配置される。送風ファン7の回転数は減少され、吹出し気流の風速が低下される。また、第1、第2領域E5、E6の絶対的な室温は圧縮機(不図示)の回転数を可変して調整される。
例えば、第1、第2領域E5、E6の設定温度がそれぞれ23℃、26℃の場合は、第1の気流制御に対して送風ファン7の回転数は70%に設定され、圧縮機(不図示)の回転数は105%に設定される。また、第1、第2領域E5、E6の設定温度がそれぞれ22℃、26℃の場合は、第1の気流制御に対して送風ファン7の回転数は60%に設定され、圧縮機(不図示)の回転数は110%に設定される。
吹出口5から送出される調和空気の風速が低下すると、低温の調和空気が対向する側壁W2を更に上昇しなくなる。これにより、第1、第2領域E5、E6の温度差をより大きくすることができる。従って、吹出し時の風速を可変することにより、第1、第2領域E5、E6を独立して所望の温度に温度制御することができる。
上記の第1〜第7の気流制御によると、室内を分割した第1領域E1、E3、E5と、第2領域E2、E4、E6とを略等しい温度にすることができるとともに、それぞれを独立して所望の温度に温度制御することができる。従って、複数の使用者が快適と感じる温度が異なる場合でも各使用者が第1、第2領域に分かれて各使用者の快適性を満たすことができる。尚、第1、第2領域の温度を独立に温度制御することにより、第1、第2領域にいる使用者の体感温度も独立して温度制御することができる。
例えば、従来であれば冷房運転時に22℃の環境を好む使用者と28℃の環境を好む使用者が1つの部屋にいる場合に、後者に合わせて設定温度を28℃にして前者に冷気を直接当て続ける。これにより、前者は冷気を直接浴び続けて体調を損ねる。また、前者に合わせて設定温度を22℃にして後者に衣服を多く着用させる。これにより、後者が長期間にわたりその部屋にいると所謂「底冷え」を感じて体調を損ねる。本実施形態は、両者の体調を損ねることを防止して快適な環境を提供することができる。
<第8の気流制御>
夏に外出して部屋Rに入室した場合等にはリモートコントローラ31の操作によって第8の気流制御が行われる。第8の気流制御では、縦ルーバ12a、12bは前述の図3に示すように正面に向かう方向に配置される。横ルーバ111a〜111dは前述の図7に示す横ルーバ111a、111cよりも下向きに配置される。即ち、横ルーバ111a〜111dは回動して前方に行くほど下方となり、部屋Rの中央下部の居住域に向かうように配置される。
そして、送風ファン7が風速「強」で駆動され、吹出口5から正面の斜め下方に調和空気が送出される。これにより、部屋Rの中央下部の居住域には冷気が直接到達し、部屋Rの下部にいる使用者は例えば風速2m/sの冷気を直接浴びることができる。従って、室内の設定温度よりも使用者の体感温度が低くなり、外出して暑いと感じる使用者を迅速に快適にすることができる。尚、第8の気流制御により、部屋Rを左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)や前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)の下部にいる使用者に対して同じように冷気を直接浴びせることができる。
<第9の気流制御>
夏に複数の使用者の1人が外出して部屋Rに入室した場合等にはリモートコントローラ31の操作によって第9の気流制御が行われる。第9の気流制御では、縦ルーバ12a、12bは前述の図3に示すよりも若干外側に向かう方向に配置される。即ち、縦ルーバ12a、12bは正面に対して傾斜角α(図9参照)が20゜よりも小さい範囲で傾斜される。
横ルーバ111a、111cは第8の気流制御と同じ位置に配置され、横ルーバ111b、111dは前述の図5と同じ位置に配置される。即ち、横ルーバ111a、111cは回動して前方に行くほど下方となり、部屋Rを左右に分割した第1領域E1(図10参照)の下部の居住域に向かうように配置される。横ルーバ111bは前方が上方になるように配置される。横ルーバ111dは前方が若干下方となる斜め下方から略水平の間に配置される。
そして、送風ファン7が風速「弱」で駆動され、左側吹出口5aから左方の斜め下方に向けて第1気流が送出される。右側吹出口5bからは、正面のやや右側の斜め上方に向けて第2気流が送出される。第1気流によって第1領域E1(図10参照)の下部の居住域には冷気が直接到達し、第1領域E1の下部の風速は例えば1m/sになる。これにより、第1領域E1の下部にいる使用者は冷気を直接浴びることができる。従って、室内の設定温度よりも第1領域E1にいる使用者の体感温度が低くなり、外出して暑いと感じる第1領域E1の使用者を迅速に快適にすることができる。
第1気流と吹出し方向の異なる第2気流は左右に拡散しながらコアンダ効果により天井壁Sに沿って流通して徐々に速度を低下させる。そして、室内機1に対向する側壁W2に沿って降下して床面Fを流通する。この時、第2領域E2の下部の風速は例えば0.1m/sになる。従って、第2領域E2にいる使用者には直接冷気が当たらず、冷気を直接を浴び続けて体調を損ねることを防止することができる。
<第10の気流制御>
夏に複数の使用者が外出して部屋Rに入室した際等に各使用者が快適と感じる室内温度が同じでも各使用者の体格、代謝量、運動量等が異なる場合は、リモートコントローラ31の操作によって第10の気流制御が行われる。第10の気流制御は、上記第8の気流制御、第9の気流制御、第1の気流制御が連続して行われる。使用者は最終の室内温度である設定温度及び各気流制御を切替える時期をリモートコントローラ31により設定する。
第10の気流制御を開始すると、まず第8の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7が風速「強」で駆動され、吹出口5から正面の斜め下方に調和空気が送出される。この時、圧縮機(不図示)は大きな回転数で駆動され、設定温度よりも低温の冷気が送出される。例えば設定温度が26℃の場合に冷気温度は22℃である。
これにより、部屋Rは第1の送風状態となり、部屋Rの中央下部の居住域には冷気が直接到達する。このため、部屋Rを左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)の下部にいる使用者は例えば風速2m/sの冷気を直接浴びることができる。従って、設定温度よりも使用者の体感温度が低くなり、外出して暑いと感じる複数の使用者を迅速に快適にすることができる。
第1の送風状態を設定された時間だけ継続すると、第9の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7が風速「弱」で駆動され、左側吹出口5aから左方の斜め下方に向けて第1気流が送出される。右側吹出口5bからは、正面のやや右側の斜め上方に向けて第2気流が送出される。これにより、部屋Rは第2の送風状態となる。第1気流によって第1領域E1の下部の居住域には冷気が直接到達し、第1領域E1の下部の風速は例えば1m/sになる。このため、第1領域E1の下部にいる使用者は継続して冷気を直接浴びることができる。
第2気流は左右に拡散しながらコアンダ効果により天井壁Sに沿って流通して徐々に速度を低下させる。そして、室内機1に対向する側壁W2に沿って降下して床面Fを流通する。この時、第2領域E2の下部の風速は例えば0.1m/sになる。これにより、第2領域E2にいる使用者には直接冷気が当たらない。従って、第1領域E1にいる使用者よりも体格、代謝量、運動量等が小さい使用者は第2領域E2にいることにより、冷気を直接を浴び続けて体調を損ねることを防止することができる。
第2の送風状態を設定された時間だけ継続すると、第1の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7は風速「微風」で駆動され、吹出口5から調和空気が正面の斜め上方に向けて送出される。これにより、部屋Rは第3の送風状態となる。室内に送出された調和空気はコアンダ効果により天井壁Sに沿って流通し、拡散しながら室内機1に対向する側壁W2(図16参照)に到達する。そして、側壁W2に沿って降下し、床面F(図16参照)を流通して部屋R内の全体を調和空気が流通する。これにより、第1、第2領域E1、E2にいる使用者には直接冷気が当たらず、室内が設定温度に均一に維持され、体感温度が設定温度に略一致する。従って、設定温度に維持された室内で各使用者が快適と感じることができる。
第10の気流制御によると、冷房運転の開始時に第1の送風状態によって第1、第2領域E1、E2の下部の体感温度が低く維持される。その後、第2の送風状態に移行して第1領域E1の下部の体感温度を低く維持して第2領域E2の体感温度が上昇される。更にその後第3の送風状態に移行して第1領域の下部の体感温度が上昇され、第1、第2領域が風速が小さい状態で設定温度に維持される。従って、第1、第2領域E1、E2で設定温度の到達時期が異なり、快適と感じる温度が同じで体格、代謝量、運動量等が異なる複数の使用者に対して快適性を満たすことができる。
<第11の気流制御>
第10の気流制御と同様に、夏に複数の使用者が外出して部屋Rに入室した際等に各使用者が快適と感じる室内温度が同じでも各使用者の体格、代謝量、運動量等が異なる場合は、リモートコントローラ31の操作によって第11の気流制御を行ってもよい。第11の気流制御は、上記第8の気流制御、第2の気流制御、第1の気流制御が連続して行われる。
第11の気流制御を開始すると、まず第8の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7が風速「強」で駆動され、吹出口5から正面の斜め下方に調和空気が送出される。この時、圧縮機(不図示)は大きな回転数で駆動され、設定温度よりも低温の冷気が送出される。例えば設定温度が26℃の場合に冷気温度は22℃である。
これにより、部屋Rは第1の送風状態となり、部屋Rの中央下部の居住域には冷気が直接到達する。このため、部屋Rを左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)の下部にいる使用者は例えば風速2m/sの冷気を直接浴びることができる。従って、設定温度よりも使用者の体感温度が低くなり、外出して暑いと感じる複数の使用者を迅速に快適にすることができる。
第1の送風状態を設定された時間だけ継続すると、第2の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7が風速「微風」で駆動され、左側吹出口5aからは、第1気流が左方の略水平または左方の若干下方に向けて20゜よりも大きな傾斜角αで送出される。右側吹出口5bからは、第2気流が正面の斜め上方に向けて送出される。これにより、室内を左右に分割した第1領域E1は第2領域E2よりも低温に維持される。例えば、設定温度が26℃に対して第2領域が26℃で第1領域が24℃に維持される。また、第1領域E1の下部の風速は約0.2m/sになり、第2領域E2の下部の風速は約0.1m/sになる。
従って、第1領域にいる使用者と第2領域にいる使用者との体感温度が異なり、第1領域E1にいる使用者よりも体格、代謝量、運動量等が小さい使用者は第2領域E2にいることにより、低温を継続して体調を損ねることを防止することができる。第1、第2領域E1、E2の温度差を大きくする場合は第3の気流制御を行ってもよい。
第2の送風状態を設定された時間だけ継続すると、第1の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7は風速「微風」で駆動され、吹出口5から調和空気が正面の斜め上方に向けて送出される。これにより、部屋Rは第3の送風状態となり、第1、第2領域E1、E2にいる使用者には直接冷気が当たらない。そして、室内が設定温度に均一に維持され、体感温度が設定温度に略一致する。従って、設定温度に維持された室内で各使用者が快適と感じることができる。
第11の気流制御によると、冷房運転の開始時に第1の送風状態によって第1、第2領域E1、E2の下部の体感温度が低く維持される。その後、第2の送風状態に移行して第1領域E1の下部の体感温度を低く維持して第2領域E2の体感温度が上昇される。更にその後第3の送風状態に移行して第1領域の下部の体感温度が上昇され、第1、第2領域が風速が小さい状態で設定温度に維持される。従って、第1、第2領域E1、E2で設定温度の到達時期が異なり、快適と感じる温度が同じで体格、代謝量、運動量等が異なる複数の使用者に対して快適性を満たすことができる。
<第12の気流制御>
夏に複数の使用者が外出して部屋Rに入室した際等に、各使用者の体格、代謝量、運動量等が異なるとともに、各使用者が快適と感じる室内温度も異なる場合は、リモートコントローラ31の操作によって第12の気流制御が行われる。第12の気流制御は、上記第8の気流制御、第9の気流制御、第2の気流制御が連続して行われる。使用者は最終の室内温度である設定温度及び各気流制御を切替える時期をリモートコントローラ31により設定する。
第12の気流制御を開始すると、まず第8の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7が風速「強」で駆動され、吹出口5から正面の斜め下方に調和空気が送出される。この時、圧縮機(不図示)は大きな回転数で駆動され、設定温度よりも低温の冷気が送出される。例えば設定温度が26℃の場合に冷気温度は22℃である。
これにより、部屋Rは第1の送風状態となり、部屋Rの中央下部の居住域には冷気が直接到達する。このため、部屋Rを左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)の下部にいる使用者は例えば風速2m/sの冷気を直接浴びることができる。従って、設定温度よりも使用者の体感温度が低くなり、外出して暑いと感じる複数の使用者を迅速に快適にすることができる。
第1の送風状態を設定された時間だけ継続すると、第9の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7が風速「弱」で駆動され、左側吹出口5aから左方の斜め下方に向けて第1気流が送出される。右側吹出口5bからは、正面のやや右側の斜め上方に向けて第2気流が送出される。これにより、部屋Rは第2の送風状態となる。第1気流によって第1領域E1の下部の居住域には冷気が直接到達し、第1領域E1の下部の風速は例えば1m/sになる。このため、第1領域E1の下部にいる使用者は継続して冷気を直接浴びることができる。
第2気流は左右に拡散しながらコアンダ効果により天井壁Sに沿って流通して徐々に速度を低下させる。そして、室内機1に対向する側壁W2に沿って降下して床面Fを流通する。この時、第2領域E2の下部の風速は例えば0.1m/sになる。これにより、第2領域E2にいる使用者には直接冷気が当たらない。従って、第1領域E1にいる使用者よりも体格、代謝量、運動量等が小さい使用者は第2領域E2にいることにより、冷気を直接を浴び続けて体調を損ねることを防止することができる。
第2の送風状態を設定された時間だけ継続すると、第2の気流制御が行われる。即ち、送風ファン7が風速「微風」で駆動され、左側吹出口5aからは、第1気流が左方の略水平または左方の若干下方に向けて20゜よりも大きな傾斜角α(図9参照)で送出される。右側吹出口5bからは、第2気流が正面の斜め上方に向けて送出される。これにより、室内を左右に分割した第1領域E1は第2領域E2よりも低温に維持される。例えば、設定温度が26℃に対して第2領域E2が26℃、第1領域E1が24℃に維持される。また、第1領域E1の下部の風速は約0.2m/sになり、第2領域E2の下部の風速は約0.1m/sになる。
従って、第1領域にいる使用者と第2領域にいる使用者との体感温度が異なり、第1領域E1にいる使用者よりも体格、代謝量、運動量等が小さい使用者は第2領域E2にいることにより、低温を継続して体調を損ねることを防止することができる。第1、第2領域E1、E2の温度差を大きくする場合は第3の気流制御を行ってもよい。
第12の気流制御によると、冷房運転の開始時に第1の送風状態によって第1、第2領域E1、E2の下部の体感温度が低く維持される。その後、第2の送風状態に移行して第1領域E1の下部の体感温度を低く維持して第2領域E2の体感温度が上昇される。更にその後第3の送風状態に移行して第1領域の下部の体感温度がやや上昇される。そして、第1、第2領域E1、E2が風速が小さい状態で、かつ、第1領域E1が第2領域E2に比べて低温に維持される。これにより、第1、第2領域E1、E2で設定温度の到達時期及び到達温度の両方を異ならせることができる。従って、体格、代謝量、運動量等が異なるとともに、快適と感じる温度も異なる複数の使用者に対して快適性を満たすことができる。
尚、第8の気流制御、第4の気流制御、第1の気流制御を連続して行うことによって、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)で設定温度の到達時期を異ならせることができる。
<<第2実施形態>>
次に、図22は第2実施形態の空気調和機の室内機1を示す斜視図である。説明の便宜上、前述の図1〜図21に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態の横ルーバ111a、111b、111c、111dに替えて横ルーバ112a、112b、112cが設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
横ルーバ112aは左側吹出口5aの上部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ112bは右側吹出口5bの上部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ112cは吹出口5の下部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ112a、112b、112cは水平な回動軸を有し、駆動モータ(不図示)の駆動によってそれぞれ独立に回動する。従って、横ルーバ112cの左部分及び横ルーバ112aは左側吹出口5aから送出される気流の上下方向の風向を可変する。横ルーバ112cの右部分及び横ルーバ112bは右側吹出口5bから送出される気流の上下方向の風向を可変する。
第1の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ112a、112b、112cは回動して前述の図5に示す横ルーバ111a、111b、111cと同様に配置される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、冷房運転時の室内の温度を均一にすることができる。
第2の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図6に示すように配置される。横ルーバ112b、112cは第1の気流制御と同様に配置される。横ルーバ112aは回動して前述の図7に示す横ルーバ111aと同様に配置される。図23はこの時の室内機1を示す斜視図である。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)が異なる温度に制御される。
尚、前述したように、送風経路6の上部を流通する空気量が下部を流通する空気量よりも多い。このため、下方の横ルーバ112cが左右で同じ角度になっても第1実施形態と同様に左側吹出口5aと右側吹出口5bとで上下に異なる方向に気流を送出することができる。
第3の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a及び横ルーバ112a〜112cは第2の気流制御の場合と同様に配置される。右側の縦ルーバ12bは前方を内側(左側)に向けて10゜以上傾斜して配置される。また、送風ファン7の回転数を増加して風量が増加される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)の温度差を大きくすることができる。従って、室内を左右に分割した第1、第2領域E1、E2を独立して温度制御することができる。
第4の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ112a、112b、112cは回動して前述の図5に示す横ルーバ111a、111b、111cと同様に配置される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)が異なる温度に制御される。
第5の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ112a、112b、112cは第4の気流制御と同様に配置される。そして、冷房運転時に第1実施形態と同様に風速を増大して調和空気を送出し、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)の温度差を大きくすることができる。従って、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4を独立して温度制御することができる。
第6の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ112a、112b、112cは回動して前述の図19に示す横ルーバ111a、111b、111cと同様に配置される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を上下に分割した第1、第2領域E5、E6(図20参照)が異なる温度に制御される。
第7の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ112a、112b、112cは第6の気流制御と同様に配置される。そして、冷房運転時に第1実施形態と同様に風速を低下して調和空気を送出し、室内を上下に分割した第1、第2領域E5、E6(図20参照)の温度差を大きくすることができる。従って、室内を前後に分割した第1、第2領域E5、E6を独立して温度制御することができる。
第8の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ112a、112b、112cは回動して前述の図7に示す横ルーバ111a、111cよりも下向きに配置される。これにより、部屋Rの中央下部の使用者に冷気を直接浴びせて体感温度を低くすることができる。
第9の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すよりも若干外側に向かう方向に配置される。横ルーバ112a、112cは回動して第8の気流制御と同様に配置される。横ルーバ112bは回動して前述の図5に示す横ルーバ111bと同様に配置される。これにより、室内を左右に分割した第1領域E1(図10参照)の体感温度を低くして、第2領域E2(図10参照)の体感温度を高くすることができる。
第1実施形態と同様に、第10の気流制御を行う場合は第8の気流制御、第9の気流制御、第1の気流制御が連続して行われる。第11の気流制御を行う場合は第8の気流制御、第2の気流制御、第1の気流制御が連続して行われる。第12の気流制御を行う場合は第8の気流制御、第9の気流制御、第2の気流制御が連続して行われる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、第8の気流制御、第4の気流制御、第1の気流制御を連続して行うことによって、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)で設定温度の到達時期を異ならせることができる。
<<第3実施形態>>
次に、図24は第3実施形態の空気調和機の室内機1を示す斜視図である。前述の図1〜図21に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1の実施形態の横ルーバ111a、111b、111c、111dに替えて横ルーバ113a、113bが設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
横ルーバ113aは吹出口5の上部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ113bは吹出口5の下部を塞ぐ位置に配される。横ルーバ113a、113bは水平な回動軸を有し、駆動モータ(不図示)の駆動によってそれぞれ独立に回動する。また、横ルーバ113a、113bは柔軟な可撓性材料から成り、駆動モータによって両端の回転軸にそれぞれ逆方向の回転トルクを加えることができる。これにより、横ルーバ113a、113bは図25に示すように捻ることができるようになっている。
従って、横ルーバ113a、113bの左部分は左側吹出口5aから送出される気流の上下方向の風向を可変する。横ルーバ113a、113bの右部分は右側吹出口5bから送出される気流の上下方向の風向を可変する。
第1の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ113a、113bは回動して前述の図5に示す横ルーバ111a、111cと同様に配置される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、冷房運転時の室内の温度を均一にすることができる。
第2の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図6に示すように配置される。横ルーバ113a、113bの右部分は第1の気流制御と同様に配置される。横ルーバ113a、113bの左部分は捻られて前述の図7に示す横ルーバ111a、111cと同様に配置される。図26はこの時の室内機1を示す斜視図である。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)が異なる温度に制御される。
第3の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a及び横ルーバ113a、113bは第2の気流制御の場合と同様に配置される。右側の縦ルーバ12bは前方前方を内側(左側)に向けて10゜以上傾斜して配置される。また、送風ファン7の回転数を増加して風量が増加される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を左右に分割した第1、第2領域E1、E2(図10参照)の温度差を大きくすることができる。従って、室内を左右に分割した第1、第2領域E1、E2を独立して温度制御することができる。
第4の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ113a、113bは回動して前述の図5に示す横ルーバ111a、111cと同様に配置される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)が異なる温度に制御される。
第5の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ113a、113bは第4の気流制御と同様に配置される。そして、冷房運転時に第1実施形態と同様に風速を増大して調和空気を送出し、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)の温度差を大きくすることができる。従って、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4を独立して温度制御することができる。
第6の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ113a、113bは回動して前述の図19に示す横ルーバ111a、111cと同様に配置される。これにより、冷房運転時に第1実施形態と同様に調和空気を送出して、室内を上下に分割した第1、第2領域E5、E6(図20参照)が異なる温度に制御される。
第7の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12b及び横ルーバ113a、113bは第6の気流制御と同様に配置される。そして、冷房運転時に第1実施形態と同様に風速を低下して調和空気を送出し、室内を上下に分割した第1、第2領域E5、E6(図20参照)の温度差を大きくすることができる。従って、室内を前後に分割した第1、第2領域E5、E6を独立して温度制御することができる。
第8の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すように配置される。横ルーバ113a、113bは回動して前述の図7に示す横ルーバ111a、111cよりも下向きに配置される。これにより、部屋Rの中央下部の使用者に冷気を直接浴びせて体感温度を低くすることができる。
第9の気流制御を行う場合は、縦ルーバ12a、12bが前述の図3に示すよりも若干外側に向かう方向に配置される。横ルーバ113a、113bの左部分は回動して第8の気流制御と同様に配置される。横ルーバ113a、113bの右部分は捻られて前述の図5に示す横ルーバ111a、111cと同様に配置される。これにより、室内を左右に分割した第1領域E1(図10参照)の体感温度を低くして、第2領域E2(図10参照)の体感温度を高くすることができる。
第1実施形態と同様に、第10の気流制御を行う場合は第8の気流制御、第9の気流制御、第1の気流制御が連続して行われる。第11の気流制御を行う場合は第8の気流制御、第2の気流制御、第1の気流制御が連続して行われる。第12の気流制御を行う場合は第8の気流制御、第9の気流制御、第2の気流制御が連続して行われる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、第8の気流制御、第4の気流制御、第1の気流制御を連続して行うことによって、室内を前後に分割した第1、第2領域E3、E4(図16参照)で設定温度の到達時期を異ならせることができる。
<<第4実施形態>>
次に、図27は第4実施形態の空気調和機の室内機1の設置状態を示す斜視図である。説明の便宜上、前述の図1〜図21に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態の空気調和機は所謂コーナーエアコンになっており、第1実施形態と同様の室内機1が部屋Rの隣接する2側壁W5、W6が交差したコーナーLの天井壁Sに接する位置に取り付られる。
同図は第2の気流制御を行った際の気流を示している。室内機1の縦ルーバ、横ルーバは第1実施形態と同様に配置される。室内機1の右側吹出口5bから送出される第2気流(B)は天井面Sを流通して室内機1に対向する側壁W7、W8を降下し、床面Fを流通する。室内機1の左側吹出口5aから送出される第1気流(A)は室内機1を正面に見て左側の側壁W6に沿って流通する。そして、室内機1に対向する側壁W7に到達して第1気流とともに床面Fを流通する。
従って、第1実施形態と同様に、部屋Rの対角線上の室内機1を分断する鉛直面により分割された第1、第2領域E1、E2が異なる温度に制御される。また、他の気流制御においても第1実施形態と同様に室内を温度制御することができる。尚、第2、第3実施形態の室内機1をコーナーLの天井壁Sに接する位置に取り付けてコーナーエアコンにしてもよい。
第1〜第4実施形態において、前述の図4に示すリモートコントローラ31の表示部31aには部屋Rの概略形状及び室内機1の概略設置位置が模式的な斜視図で表示されている。表示部31aの表示画面はこれに限られず他の画面を表示してもよい。例えば、図28に示すように、「左26℃、右24℃」、「前26℃、後24℃」、「上26℃、下24℃」のように文字で表わしてもよい。即ち、部屋R内をどのように分割した第1、第2領域に2つの異なる設定温度を与えるのかが、使用者にわかりやすくなっていればよい。また、図29に示すように、スライド式の蓋31dをスライドさせることにより温度、風向、風量等をより詳細に入力することができるようになっている。
尚、各気流制御は使用者の操作によってリモートコントローラ31から指令があった際に行われるが、室内の温度が所定条件に到達した際に自動的に切り替えて実行されるようにしてもよい。また、音声認識部(不図示)を介して接続されたマイク(不図示)を室内機1に設けて制御部に指令してもよい。即ち、マイクに向かって、例えば、「左を低温」と発声すると、室内が均一な温度分布の状態から、左右に分割した第1領域を第2領域よりも低温に温度制御することができる。
また、図30に示すように、インターネット等のネットワーク37を介して空気調和機と通信端末36とを接続してもよい。この時、ホームサーバー等のサーバー38を介在させてもよい。通信端末36はパーソナルコンピュータ、電話機、携帯電話機等から成り、無線移動通信網、電話回線、衛星通信、ケーブル回線等によりネットワーク37に接続される。
通信端末36は前述の図4や図29に示すリモートコントローラ31の各種キー操作に相当する操作が可能に構成される。これにより、ネットワークを利用した空気調和機のリモートコントロールシステムが構築される。従って、通信端末36から空気調和機に指令を送信して室内を温度制御することができ、外出先から遠隔操作して空気調和機の利便性を向上することができる。
更に、プロバイダ等の情報を提供する役務機関からネットワーク37を介して提供される情報に基づいて空気調和機を制御してもよい。即ち、役務機関から契約ユーザを対象とするサービスの一環として、ネットワーク37を介して空気調和機またはサーバー38にアクセスして気象情報等が提供される。空気調和機は気象情報に基づいて、西日が強い日には、部屋Rの西側を東側に対して2℃低温に制御される。これにより、空気調和機の利便性がより向上することができる。
以上により、本発明に係る空気調和機を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を加えて実施することができる。