JP2006162078A - 無端金属ベルトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 外周面にショットピーニングによる圧縮残留応力が付与された層6aを有するとともに、内周面にもショットピーニングによる圧縮残留応力が付与された層6bを有する無端金属ベルト6。無端金属ベルト6の外周面6Aと内周面6Bの両方にショットピーニングを施す無端金属ベルト6の製造方法。外周のショットピーニングより内周のショットピーニングを先行させて行う無端金属ベルト6の製造方法。
【選択図】 図3
Description
特開昭61−42402号公報、特開昭63−96258号公報等に、無端金属ベルトの外周面のみにショットピーニングを施すことにより、外周表面に圧縮残留応力を生ぜしめ、外周表面の疲労強度の向上をはかった無端金属ベルトが提案されている。
本発明の目的は、大きな形状変化を起こすことなく大きな疲労強度向上が得られる無端金属ベルトの製造方法を提供することにある。
(1) 無端金属ベルトを少なくとも2つのローラに巻掛け、前記無端金属ベルトの外周面と内周面の両方にショットピーニングを施す無端金属ベルトの製造方法であって、内周面のショットピーニングより後に外周面のショットピーニングを行う無端金属ベルトの製造方法。
(2) 前記無端金属ベルトを走行させながら前記無端金属ベルトの内周面にショットピーニングを行い、その後前記無端金属ベルトを内外反転させて、前記無端金属ベルトを走行させながら前記無端金属ベルトの外周面にショットピーニングを行う(1)記載の無端金属ベルトの製造方法。
(3) 前記無端金属ベルトを走行させながら前記無端金属ベルトを反転させることなく前記無端金属ベルトの内周面および外周面にショットピーニングを行う(1)記載の無端金属ベルトの製造方法。
(4) 前記無端金属ベルト内周面への投射を先に開始し、その後前記無端金属ベルトの送りにより前記内周面の投射された部位が外周面への投射位置に移動したタイミングで外周面への投射を開始する(3)記載の無端金属ベルトの製造方法。
(5) 前記無端金属ベルトの各部位における内周面および外周面への投射順序が異ならないようにショット粒の投射を行う(3)記載の無端金属ベルトの製造方法。
(6) 前記無端金属ベルトの内周面へのショット粒の投射を先に行う(5)記載の無端金属ベルトの製造方法。
(7) 前記無端金属ベルトの内周面へのショット粒の投射時間より外周面へのショット粒の投射時間を長く設定して、前記無端金属ベルトの各部位における最終投射が外周側となるようにした(3)〜(6)記載の無端金属ベルトの製造方法。
上記(2)の無端金属ベルトの製造方法では、内周側のショットピーニングを行った後ベルトを内外周反転させ外周側のショットピーニングを行うので、ショットピーニングを施す順序が逆の場合に比べて、外周側の圧縮残留応力が高レベルとなり、疲労強度向上上有利となる。
上記(3)の無端金属ベルトの製造方法では、無端金属ベルトの内外周反転作業やローラへの着脱作業を省くことができ、ベルトを反転させる場合に比べて、ベルトの疲労強度向上のための処理時間を短縮することができる。
上記(4)の無端金属ベルトの製造方法では、ベルトのショット粒の投射順序がベルトの各部位で内周面への投射、外周面への投射となる。
上記(5)の無端金属ベルトの製造方法では、ベルトのショット粒の投射順序がベルトの各部位で異ならないようにしたので、ショット粒の投射順序のベルト形状に及ぼす影響がベルトの各部位で同じになり、ベルトのショット粒の投射順序がベルトの各部位で異なる場合に比べて、ベルトの各部位の形状精度のばらつきを抑えることができ、ベルト全周で均一な形状精度を得ることができる。
上記(6)の無端金属ベルトの製造方法では、無端金属ベルトの内周面へのショット粒の投射を先に行うので、外周面に高レベルの圧縮残留応力を付与することができる。
上記(7)の無端金属ベルトの製造方法では、無端金属ベルトの各部位における最終投射が外周側となるようにしたので、内周投射による影響をほとんど受けない状態で外周の残留応力を付与することができる。
ストレスピーニングの原理を、図3、図4を参照して説明する。
ベルト6がローラ1、2、3に巻掛けられる部分にさしかかると、ベルト6に曲げが生じ、曲がりの外周側に引張曲げ応力の予負荷Aがかかり、曲がりの内周側に圧縮曲げ応力の予負荷がかかる。この状態でショットピーニングを施す。ショット粒7をベルト6の引張曲げ応力の予負荷がかかっている部分に投射する。Vは投射速度、eVは反射速度を示す。ショット粒7の投射により、ベルト6の表面が伸びて表面部に圧縮残留応力Bが生じる。ついで、ベルト6の輪転に伴い、ベルト6がローラ1、2、3巻掛け部から進んで直線部に入ると引張曲げ応力の予負荷が解放され、引張予負荷A分が加わって、ベルト表面にA+B=Cの大きな圧縮残留応力が形成される。すなわち、予負荷が無い場合のショットピーニングに比べて、ストレスピーニングでは引張予負荷A分大きな圧縮残留応力が得られ、疲労強度向上上有利となる。
実施例1(無端金属ベルトとその製造方法)
本発明の無端金属ベルト6は、図1、図2に示すように、外周面6Aにショットピーニングによる圧縮残留応力が付与された層6aを有するとともに、内周面6Bにもショットピーニングによる圧縮残留応力が付与された層6bを有する無端金属ベルトからなる。無端金属ベルト6は、1本のベルトをリング状にして始端と終端を溶接などにより接合して無端状にした金属ベルトである。ショットピーニングは、ストレスピーニングであることが望ましいが、予負荷を与えないで施したショットピーニングであってもよい。
また、本発明の無端金属ベルト6(以下、単にベルト6ともいう)の製造方法は、図3、図4に示すように、無端金属ベルトの外周面6Aと内周面6Bの両方に装置4、5からショット粒を投射して、ショットピーニングを施す無端金属ベルトの製造方法からなる。ショットピーニングは、ストレスピーニングであることが望ましいが、予負荷を与えないで施したショットピーニングであってもよい。
ストレスピーニングの場合は、図3に示すように、無端金属ベルト6の表面に曲げ応力による予負荷を付与した部分(ローラ1、2、3等に巻掛けられた部分)にショットピーニングを施す。
無端金属ベルト6の内外周面へのショット粒の投射の効果を検証するために、以下の2条件の処理を行った。
(1) 外周のみの投射で、予負荷曲率半径Rが20mm、投射エア圧が0.3MPa、投射時間が36sec、投射粒径がΦ70μm、ショット粒硬度がHV700、駆動軸回転数が20rpmにて、投射処理を実施した。
(2) 一方、内外周両方の投射処理を上記と同一の条件にて行った。
それに対し、内外周の処理を施した本発明実施例品は、図1に示すように形状を維持しており(多重化していない)、表面の圧縮残留応力はX線応力測定の結果1.8GPaに達し、その疲労強度は図5の(2) に示すように、100万回繰り返し強度で窒化のままのものに比較して約20%の向上が得られた。
本発明の実施例2の無端金属ベルトの製造方法では、無端金属ベルト6を少なくとも2つのローラに巻掛け、無端金属ベルト6を走行させながら無端金属ベルト6の内周面にショットピーニングを行い、その後無端金属ベルト6を内外反転させて、無端金属ベルト6を走行させながら無端金属ベルト6の外周面にショットピーニングを行う。
実施例2では、実施例1の処理を行う場合、内周側の処理と外周側の処理を行う順序を、内周側の処理を先にし、外周側の処理を後にする方法であり、その場合に、無端金属ベルト6の内外周の反転を伴う方法である。実施例1は、内周側を先に処理しその後で外周側を処理する場合、内周側の処理と外周側の処理を同時にする場合、外周側を先に処理しその後で内周側を処理する場合、を含むが、実施例2は、そのうち、内周側を先に処理しその後で外周側を処理する場合である。
その理由は、強度に直接影響する外周側の圧縮残留応力のレベルに違いが見られ、外周側の処理を後にする方が、他の場合より結果として高レベルの値が得られ、これが疲労強度向上に結びついていると考えられる。
圧縮残留応力の値が高くなる理由としては、以下のように推論される。薄板にショットピーニングを施す場合、ショットピーニングに伴い金属板(ベルト)には面内方向(板厚に対し垂直方向)の伸びが発生する。したがって、金属板の表裏(ベルト内外周)で投射のタイミングが異なる場合、後から行う投射によって生じる面方向の伸びは、先の投射で付与された圧縮残留応力を解放する方向に働く。これによって、投射の順序によって最終的に付与される応力のバランスが異なると考えられる。
もしも、外周側の投射を先に行うと、内周側投射時に金属板が延びることによって外周側の応力が解放してしまうため、外周側の圧縮残留応力が低レベルになるが、本発明の実施例2では、内周側を先に投射するので、内周側の応力値が低く、外周側の応力値は高くなり、疲労強度が向上すると考えられる。
その結果を図6に示す。100万回繰り返し強度(図6の縦軸が強度を示す)で比較すると、窒化のままのものに対する強度向上率は、上記(3) が11%程度であるのに対し、上記(2) では約20%の向上が見られた。強度に影響の強い外周面の表面残留応力を計測したところ、(3) が1.5GPaであるのに対し、(2) では1.8GPaに達し、投射順序の違いによる圧縮残留応力レベルの違いが確認された。
本発明の実施例3の無端金属ベルトの製造方法では、図3に示すように、無端金属ベルト6を少なくとも2つのローラ1、2、3に巻掛け、無端金属ベルト6を走行させながら無端金属ベルト6を反転させることなく無端金属ベルト6の内周面6Bおよび外周面6Aにショットピーニングを行う。
実施例2のようにベルト6の内外周を反転させる場合は、内外周反転作業が必要で、投射処理は2工程必要になる。それに対し、実施例3は図3に示すように内外周を反転させることなく処理する。
内周面6Bの処理ではストレスピーニング(予負荷として表面を引張応力状態にしておいて投射処理し、予負荷解放時のその分の応力を圧縮残留応力として余分に付与する)の効果を得るため、内周処理部位に外周側からローラ3を押し当て、ローラ1、2の部位とは逆方向の円周方向曲率を与え、内周面に引張応力を発生させた状態で処理を行う。
1本のベルトの処理に必要なサイクルタイム(取付け+処理+取外しの、サイクルタイム)は、実施例2の場合は、ベルトの反転作業時間、処理品の着脱時間を含めると120秒程度必要であるのに外資、実施例3の場合は、約55秒と大幅に削減できる。一方、処理品の強度としては、実施例2の図5の(2) とほぼ同レベルの値が得られ、強化率としては約18%であった。
本発明の実施例4の無端金属ベルトの製造方法では、無端金属ベルト6の各部位における内周面6Bおよび外周面6Aへの投射順序が異ならないようにショット粒の投射を行う。また、無端金属ベルトの内周面6Bへのショット粒の投射を先に行う。
実施例3の処理を行う場合、投射装置4、5の投射タイミングを同時に行っても、ベルト6の周方向の部位の違いによって、内周側が先に投射される部位と外周側が先に投射される部位が発生する。実施例2で述べたように、投射の順序は圧縮残留応力に影響し、それによって決定される処理品の形状精度にも影響を及ぼす。金属ベルト6の用途としては、CVTベルトのフープのように軸方向断面のクラウニング(幅方向湾曲)精度が要求される場合が多く、特に周方向での部位によるバラツキはできる限り小さい方が望ましい。
実施例4では、周方向部位による投射順序が異なることがないように、内周面6Bの処理を先に開始し、その後処理品の回転(輪転)送りにより、その部位が外周投射位置に移動したタイミングで、外周面6Aへの投射を開始する。
この方法により、ベルト6全体の部位による投射順の違いはなくなり、均一な形状精度が得られる。
ベルト6各部のクラウニングR、32箇所のばらつきについて、従来法、本発明実施例4の方法ともに30個のベルトについて、1本の処理品内ばらつきを測定値の標準偏差によって比較した。結果を図7に示す。クラウニングRのベルト全周でのばらつきは大幅に抑制され、ばらつき範囲(標準偏差)で比較して約50%低減された。
本発明の実施例5の無端金属ベルトの製造方法では、図3に示すように、無端金属ベルト6の内周面6Bへのショット粒の投射時間より外周面6Aへのショット粒の投射時間を長く設定して、無端金属ベルト6の各部位における最終投射が外周側となるようにした。
内外周を同工程で処理を行う場合、内外周が互いの投射による面内方向の伸びに影響を与えながら残留応力が付与される。内外周それぞれの残留応力の役割を考慮した場合、内周側は形状維持、外周側は疲労強度の向上で目的が異なり、それに必要な応力レベルも異なる。強度を決定する外周側は内周側よりも高い圧縮残留応力レベルが望ましい。
そこで、処理の終了に当り、内周側の投射を外周側よりも先に終了させ、ベルト6の全周が外周単独で処理された状態にすることで、内周投射による影響を受けない状態で外周の残留応力を付与する。これにより投射を内外周同時に停止した場合に比べ外周側の応力レベルを相対的に高くすることができる。これにより、強度向上と形状精度を高次元でバランスさせることができる。
本発明の実施例6の無端金属ベルトの製造方法では、図3に示すように、無端金属ベルト6を、無端金属ベルト6の内周面6Bに予引張応力(予負荷)を付与する第1のローラ3と、無端金属ベルト6の外周面6Aに予引張応力(予負荷)を付与する第2のローラ2とを含む、3つ以上のローラ1、2、3に巻掛け、無端金属ベルト6の内周側から投射ノズル5より無端金属ベルト6の第1のローラ3への巻掛け部分に向けてショット粒を投射し、無端金属ベルト6の外周側から投射ノズル4より無端金属ベルト6の第2のローラ2への巻掛け部分に向けてショット粒を投射する。内周側の投射位置で、外周側の投射位置とは逆方向の予負荷曲率を与え、内外周の投射ノズル4、5をそれぞれ独立で投射タイミングを制御可能とする。
ばねでベルト6に張力を与えるようにしてもよい。この張力は、ベルト5がスリップすることなく回転し、送られるための摩擦力を得るためのもので、ローラの曲率によりリング表面に発生する引張予負荷と比較して十分小さい。駆動ローラ1はサーボモータで駆動され、回転数は最大60rpmまで制御可能で、回転速度、回転角は主・副ノズルの投射開始および終了のタイミングと同期している。ショット粒の投射機構は、通常の直圧式エアブロータイプを用いているが、他のベンチレーションエアブロータイプ、もしくはインペラータイプ、その他方式は問わない。
2 第2のローラ
3 第1のローラ
4 投射ノズル(外側投射)
5 投射ノズル(内側投射)
6 無端金属ベルト(ベルト)
6A 外周面
6B 内周面
6a 圧縮残留応力が付与された層(外周側)
6b 圧縮残留応力が付与された層(内周側)
Claims (7)
- 無端金属ベルトを少なくとも2つのローラに巻掛け、前記無端金属ベルトの外周面と内周面の両方にショットピーニングを施す無端金属ベルトの製造方法であって、内周面のショットピーニングより後に外周面のショットピーニングを行う無端金属ベルトの製造方法。
- 前記無端金属ベルトを走行させながら前記無端金属ベルトの内周面にショットピーニングを行い、その後前記無端金属ベルトを内外反転させて、前記無端金属ベルトを走行させながら前記無端金属ベルトの外周面にショットピーニングを行う請求項1記載の無端金属ベルトの製造方法。
- 前記無端金属ベルトを走行させながら前記無端金属ベルトを反転させることなく前記無端金属ベルトの内周面および外周面にショットピーニングを行う請求項1記載の無端金属ベルトの製造方法。
- 前記無端金属ベルト内周面への投射を先に開始し、その後前記無端金属ベルトの送りにより前記内周面の投射された部位が外周面への投射位置に移動したタイミングで外周面への投射を開始する請求項3記載の無端金属ベルトの製造方法。
- 前記無端金属ベルトの各部位における内周面および外周面への投射順序が異ならないようにショット粒の投射を行う請求項3記載の無端金属ベルトの製造方法。
- 前記無端金属ベルトの内周面へのショット粒の投射を先に行う請求項5記載の無端金属ベルトの製造方法。
- 前記無端金属ベルトの内周面へのショット粒の投射時間より外周面へのショット粒の投射時間を長く設定して、前記無端金属ベルトの各部位における最終投射が外周側となるようにした請求項3〜6記載の無端金属ベルトの製造方法。
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