JP2006160782A - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐衝撃性および塗装性を維持しながらも、高流動でしかもシルバー発生が防止された熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゲル含有量が70〜85%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位がグラフト密度3〜15%の範囲でグラフトしたゴム含有グラフト共重合体(A)20〜40質量部と、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位を含むマトリックス樹脂(B)80〜60質量部とを含有し(ゴム含有グラフト共重合体(A)とマトリックス樹脂(B)の合計は100質量部である。)、マトリックス樹脂(B)は、質量平均分子量(Mw)が55000〜80000であると共にシアン化ビニル単量体単位含有率が20〜30質量%であるビニル共重合体を50質量%以上含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は、大型薄肉成形に適した熱可塑性樹脂組成物に関する。さらには、その熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関する。
ABS樹脂などのゴム含有樹脂は、優れた加工性、耐衝撃性、機械特性を有していることから、車両分野、家電分野などの広範な分野において各種構成部材の成形材料として使用されている。
近年、省資源やコストダウンのために、電話機、ノートパソコン、コピー機およびテレビ等の弱電用筐体、バンパーやタイヤカバー等の車両用部品は大型化薄肉化する傾向にある。しかし、従来のゴム含有樹脂では流動性が不足するため、特にテレビ、バンパー等の大型成形品を成形した場合には、ショートショットやシルバー発生等の不具合が発生しやすい傾向にあった。
そこで、成形品の大型薄肉化に対応して、ゴム含有樹脂の流動性を向上させるためには、マトリックス樹脂の分子量を下げて樹脂粘度を低下させたり、ゴム含有量やシアン化ビニル単量体単位の含有量を少なくしたりする対策が採られるが、いずれの場合も樹脂の重要な特性である耐衝撃性や塗装性などの性質が低下するという問題があった。特に、メルトボリュームレート(220℃、98N)が60cm/10分を越えるような、一般的なABS樹脂の倍以上の流動性を持つ高流動材料の場合には、耐衝撃性や塗装性の低下は避けられなかった。
塗装性と物性バランスとを共に良好にする方法としては、例えば、特許文献1に、グラフト重合体の分子量と、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体の共重合体の分子量と、シアン化ビニル単量体の含有量とを特定した熱可塑性樹脂組成物を用いる方法が提案されている。
特開2000−007877号公報
しかし、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂組成物は流動性が不充分であったため、成形品の大型薄肉化に充分に対応できなかった。すなわち、これまでに、耐衝撃性および塗装性に優れた高流動のゴム含有樹脂は提案されていなかった。
また、成形時のシルバー発生などの外観不良に対しては、従来、成形条件等で対応することが多く、材料での対策は充分に検討されていなかったが、シルバー発生を抑制できる材料も求められている。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、耐衝撃性および塗装性を維持しながらも、高流動でしかもシルバー発生が防止された熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的としている。また、耐衝撃性および塗装性に優れ、シルバーの発生が防止された成形品を提供することを目的としている。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゲル含有量が70〜85%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位がグラフト密度3〜15%の範囲でグラフトしたゴム含有グラフト共重合体(A)20〜40質量部と、
芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位を含むマトリックス樹脂(B)80〜60質量部とを含有し(ゴム含有グラフト共重合体(A)とマトリックス樹脂(B)の合計は100質量部である。)、
マトリックス樹脂(B)は、質量平均分子量(Mw)が55000〜80000であると共にシアン化ビニル単量体単位含有率が20〜30質量%であるビニル共重合体を50質量%以上含むことを特徴とする。
本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性および塗装性を維持しながらも、高流動でしかもシルバー発生が防止されたものである。このような熱可塑性樹脂組成物は、大型薄肉成形に特に適している。
本発明の成形品は、耐衝撃性および塗装性に優れ、シルバーの発生が防止されたものである。
(熱可塑性樹脂組成物)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体(a)に芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位がグラフトしたゴム含有グラフト共重合体(A)と、マトリックス樹脂(B)とを含有するものである。
<ゴム含有グラフト共重合体(A)>
ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)は、ジエン系単量体が重合した重合体であり、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどが挙げられる。
ゴム質重合体(a)のゲル含有量は70〜85%である。ゲル含有量が前記範囲にあることにより、塗装性を確保しつつシルバー発生を抑えることができる。しかし、ゲル含有量が70%未満であると、塗装時の吸い込みによる不良が発生しやすく、85%を越えるとシルバー等の外観不良が発生しやすくなる。ゴム質重合体(a)のゲル含有量を70〜85%にするためには、ジエン系単量体を重合する際の連鎖移動剤量、架橋剤量、重合温度、重合時間等の重合条件を適宜変更すればよい。
ゲル含有量は、ゴム含有グラフト共重合体を含むラテックスを凝固、乾燥させた後、トルエンに室温(23℃)で20時間溶解させ、次いで、100メッシュ金網で分取した不溶解分の質量を測定することで求められる。
ゲル含有量(%)=(不溶解分の質量Wg/トルエン溶解前の試料の質量Wc)×100%
ゴム質重合体(a)にグラフトした芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位は共重合していることが好ましい。
芳香族ビニル単量体単位としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、これらの中でも、特にスチレンが好ましい。また、シアン化ビニル単量体単位としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらの中でも、特にアクリロニトリルが好ましい。これらの単量体については、1種または2種以上を用いることができる。
芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体単位には、必要に応じて、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体単位が共重合されていてもよい。このような他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸またはアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸化合物が挙げられ、それぞれ1種または2種以上用いることができる。
ゴム含有グラフト共重合体(A)においては、グラフト密度が3〜15%であり、5〜8%であることが好ましい。グラフト密度が3〜15%であることにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性と耐衝撃性、特に低温耐衝撃性とのバランスが向上する。
グラフト密度を3〜15%にするためには、グラフト重合時の連鎖移動剤量、重合開始剤量、重合温度等の重合条件を適宜変更すればよい。
ここで、グラフト密度は以下のようにして求められる。すなわち、ゴム含有グラフト共重合体(A)の試料をアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分(X)をオゾン分解する。そして、メタノール不溶分(m)を抽出し、さらに得られたメタノール不溶分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて質量平均分子量(Mw)を求め、下記式により算出する。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/10
グラフト率(%)={m/(X−m)}×100
ゴム含有グラフト共重合体(A)を合成するためのグラフト重合方法としては、いかなる公知重合方法も採用できる。グラフト重合法の中でも、あらかじめゴム質重合体(a)とこれにグラフト重合させる単量体の一部または全部を混合、放置することによって、単量体をゴム質重合体(a)に含浸させた単量体含浸ゴム質重合体を調製した後、これをグラフト重合する方法が好ましい。この重合方法を採用すれば、ゴム質重合体(a)内に重合体が形成された、いわゆるオクルード構造を形成するため、熱可塑性樹脂組成物の成形性と耐衝撃性等の物性がより良好になる。
オクルード構造を形成するグラフト重合の具体的な方法は、例えば、まず、乳化重合にて製造されたゴム質重合体(a)を撹拌翼、ジャケット付き反応器内に仕込む。次に、グラフト重合させる単量体の一部または全部を一括投入または連続滴下し、撹拌しながら40〜70℃にて15〜90分放置する。次いで、開始剤と必要に応じて残りの単量体とを添加して重合する。この方法によれば、開始剤が添加される前に添加された単量体がゴム質重合体(a)に含浸し、ゴム質重合体(a)内にて重合するためオクルード構造を形成する。ゴム質重合体に含浸させる単量体(オクルード単量体)としては、流動性および耐衝撃性がより高くなることから、芳香族ビニル単量体が好ましい。
<マトリックス樹脂(B)>
マトリックス樹脂(B)は、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位を構成成分として含む樹脂である。このマトリックス樹脂(B)は、必要に応じて、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体単位を含んでいてもよい。
ここで、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、これらと共重合可能な他の単量体は、上述したゴム含有グラフト共重合体(A)を構成するものと同様のものを使用できる。また、マトリックス樹脂(B)の製造方法については、乳化、懸濁、塊状またはこれらを複合化した公知の重合方法を採用できる。
また、マトリックス樹脂(B)は、GPCによる質量平均分子量(Mw)が55000〜80000であると共にシアン化ビニル単量体単位の比率が20〜30質量%であるビニル共重合体を50質量%以上含むものである。前記特定のビニル共重合体が100質量%であっても構わない。質量平均分子量(Mw)が55000〜80000であると共にシアン化ビニル単量体単位の比率が20〜30質量%であるビニル共重合体の含有量が50質量部未満であると、流動性、耐衝撃性、塗装性のバランスが低下する。
さらに、50質量%以上含まれるビニル共重合体の質量平均分子量(Mw)が55000未満では衝撃強度等の物性が得られず、80000を越えると流動性が不充分になる。また、シアン化ビニル単量体単位の含有率が20質量%未満であると塗装性、衝撃強度、機械的特性等の特性が得られず、30質量%を越えると流動性が低下する。
<熱可塑性樹脂組成物>
この熱可塑性樹脂組成物では、ゴム含有グラフト共重合体(A)を20〜40質量部、マトリックス樹脂(B)を80〜60質量部含有する(ゴム含有グラフト共重合体(A)とマトリックス樹脂(B)の合計は100質量部である。)。ゴム含有グラフト共重合体(A)が20質量部未満である(マトリックス樹脂(B)の含有量が80質量部を超える)と、塗装性、耐衝撃性が低くなり、ゴム含有グラフト共重合体(A)が40質量部を超える(マトリックス樹脂(B)の含有量が60質量部未満である)と、流動性、塗装性、シルバー発生防止性、機械物性が低下する。
また、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて更に、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤など各種添加剤を、その物性を損なわない範囲内において配合することができる。
熱可塑性樹脂組成物を得る方法としては特に制限はないが、ゴム含有グラフト共重合体(A)とマトリックス樹脂(B)とを混合した後に溶融混練することが好ましい。溶融混練は、例えば、単軸または二軸の押出し機、バンバリーミキサー等を用いて実施することができる。
以上説明した熱可塑性樹脂組成物は、特定のゴム含有グラフト共重合体(A)と特定のマトリックス樹脂(B)とを特定の割合で含んでいる。そのため、この熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品は、塗装吸い込み現象が発生しにくく、塗装性に優れる。また、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性に優れる上に流動性が高いので、大型薄肉であるにもかかわらず、充分な耐衝撃性を有する成形品を得ることができる。さらに、この熱可塑性樹脂組成物によれば、成形時のシルバー発生を抑制することができる。
したがって、上記熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性および塗装性を維持しながらも、高流動でしかもシルバー発生が防止されたものである。
(成形品)
本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、ブロー成形などが挙げられる。中でも、大型薄肉の成形品を工業的に得るためには、射出成形が好ましい。
この成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形してなるから、塗装性、耐衝撃性、剛性のバランスに優れており、大型テレビなどの弱電用筐体はもとより、塗装が必要とされるバンパーやタイヤカバー等の車両用部品にも好適に利用できる
以下に、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の合成例1〜4において、ゴム質重合体のゲル含有量およびグラフト密度(%)は次のように測定した。
[ゴム質重合体のゲル含有量]
ゴム質重合体のサンプルWc(g)をトルエンに溶解し、100メッシュ金網で分取した直後の質量Ws(g)を読み取り、その後、不溶成分を60℃にて24時間乾燥して、乾燥不溶分量Wg(g)を求め下記式で算出した。
ゲル含有量(%)=Wg/Wc×100
[グラフト密度]
サンプルをアセトン中に溶解させ、遠心分離器を用いて可溶分と不溶分とに分離し、得られた不溶分X(g)をオゾン分解させた。次いで、メタノール不溶分m(g)を抽出し、さらに得られたメタノール不溶分をGPCにて質量平均分子量Mwを求め、これらの結果を基に次の計算式により算出した。
グラフト密度(%)=グラフト率/(Mw/10
グラフト率(%)=m/(X−m)×100
なお、質量平均分子量Mwは、東ソー(株)製GPCを用いて測定し、標準ポリスチレン換算法にて算出した。
<合成例1:ゴム含有グラフト共重合体(A−1)の製造>
オートクレーブに、表1に示す原料を仕込み、60℃に加熱してポリブタジエン50部にスチレン35部とアクリロニトリル15部とを含浸させた。そして、60℃に保持したまま30分間放置した後、その中に硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖およびクメンハイドロパーオキサイドを150分かけて連続添加し、続いて70℃に昇温し、これを1時間保って反応を完結させて重合体ラテックスを得た。
次いで、この重合体ラテックスに硫酸を添加して、重合体を凝固させ、充分水洗後、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(A−1)を得た。
そして、得られたゴム含有グラフト共重合体(A−1)のグラフト鎖の質量平均分子量、グラフト率を測定してグラフト密度を求めた。
Figure 2006160782
<合成例2:ゴム含有グラフト共重合体(A−2)の製造>
ポリブタジエンの添加量を65部、スチレンの量を24部、アクリロニトリルの量を11部としたこと以外は合成例1と同様にしてゴム含有グラフト共重合体(A−2)を得た。
<合成例3:ゴム含有グラフト共重合体(A−3)の製造>
ポリブタジエンとして、ゲル含有量60質量%のものを使用したこと以外は合成例1と同様にしてゴム含有グラフト共重合体(A−3)を得た。
<合成例4:ゴム含有グラフト共重合体(A−4)の製造>
ポリブタジエンとして、ゲル含有量95質量%のものを使用したこと以外は合成例1と同様にしてゴム含有グラフト共重合体(A−4)を得た。
<合成例5:ビニル共重合体(B−1)の製造>
窒素置換した反応器に表2に示す原料を添加し、60℃で5時間加熱後、120℃に昇温し、続いて4時間反応させて重合を完結させた。その際の最終転化率は96%であり、得られたビニル共重合体(B−1)の質量平均分子量は60000、アクリロニトリル含有量は24.2%であった。
Figure 2006160782
<合成例6:ビニル共重合体(B−2)の製造>
スチレンの量を27部、アクリロニトリルの量を73部、t−ドデシルメルカプタンの量を0.75部にしたこと以外は合成例5と同様に重合してビニル共重合体(B−2)を得た。その際の最終転化率は96%で、得られたビニル共重合体(B−2)の質量平均分子量は73000、アクリロニトリル含有量は27.2%であった。
<合成例7:ビニル共重合体(B−3)の製造>
スチレンの量を26部、アクリロニトリルの量を74部、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4部にしたこと以外は合成例5と同様に重合してビニル共重合体(B−3)を得た。その際の最終転化率は98%で、得られたビニル共重合体(B−3)の質量平均分子量は105000、アクリロニトリル含有量は26.3%であった。
<合成例8:ビニル共重合体(B−4)の製造>
スチレンの量を36部、アクリロニトリルの量を64部、t−ドデシルメルカプタンの量を1.1部にしたこと以外は合成例5と同様に重合してビニル共重合体(B−4)を得た。その際の最終転化率は95%で、得られたビニル共重合体(B−4)の質量平均分子量は55000、アクリロニトリル含有量は34.1%であった。
<合成例9:ビニル共重合体(B−5)の製造>
スチレンの量を17部、アクリロニトリルの量を83部、t−ドデシルメルカプタンの量を0.4部にしたこと以外は合成例5と同様に重合してビニル共重合体(B−5)を得た。その際の最終転化率は95%で、得られたビニル共重合体(B−5)の質量平均分子量は90000、アクリロニトリル含有量は16.0%であった。
<実施例1〜3、比較例1〜6>
上記方法にて得られた各重合体を表3に示す割合で配合し、1.5質量部の滑剤(花王ワックス「EB−G」花王(株)製)と共にヘンシェルミキサにより混合した。これにより得られた混合物を、2軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX−44)により220℃で溶融混合し、ペレット化して熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を以下のように評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2006160782
各種物性:東芝機械(株)製2オンス射出成形機にて射出温度235℃で成形し、ISO試験法に従い測定した。
(a)メルトボリュームレート:ISO 1133(温度;220℃、荷重;98N)
シャルピー衝撃強度:ISO 179
(b)引張強度:ISO 527
(c)曲げ弾性率:ISO 178
(d)シルバー発生射出速度:リッド金型(自動車メーターパネル型)を備えた8オンス射出成形機(住友重機械工業(株)製)を用い、射出温度250℃、金型温度50℃にて、異なる射出速度で成形した。そして、目視にて成形品上のシルバーの有無を確認し、シルバーが発生した最低の射出速度を調べた。シルバーが発生する射出速度が速いほどシルバー発生が抑制されたものであると判断する。
(e)塗装性:東芝機械(株)製2オンス射出成形機にて射出温度200℃で平板テストピース(160mm×60mm、肉厚2.5mm)を成形し、常温にて2液ウレタン系塗料(レタンPG60:関西ペイント社製)をスプレー塗装した。得られた塗装成形品の主にゲート付近に現れる吸い込み現象を肉眼で観察して以下の判断基準で評価した。
○:吸い込み現象は全く発生せず
△:吸い込み現象が一部発生
×:吸い込み現象が著しく発生
特定のグラフト共重合体と特定のビニル共重合体とを特定量含有した実施例1〜3の熱可塑性樹脂組成物は、高流動であり、耐衝撃性および塗装性に優れ、シルバー発生が抑制されていた。
比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)のグラフト密度が3%未満であったので、耐衝撃性が低かった。
比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体のゲル含量が70%未満であったので塗装性が低かった。
比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体のゲル含量が85%を超えていたのでシルバー発生を抑えにくかった。
比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、マトリックス樹脂(B)が、質量平均分子量が80000を超えたビニル共重合体のみからなっていたため、流動性および塗装性が低く、シルバー発生も抑制困難であった。
比較例5の熱可塑性樹脂組成物は、マトリックス樹脂(B)が、質量平均分子量が55000未満であると共にアクリロニトリル含有率が30%超えたビニル共重合体のみからなっていたため、流動性および塗装性が低く、シルバー発生も抑制困難であった。
比較例6の熱可塑性樹脂組成物は、マトリックス樹脂(B)が、質量平均分子量が80000を超えると共にアクリロニトリル含有率が20%未満のビニル共重合体のみからなっていたため、流動性および塗装性が低く、シルバー発生も抑制困難であった。

Claims (2)

  1. ゲル含有量が70〜85%であるゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位がグラフト密度3〜15%の範囲でグラフトしたゴム含有グラフト共重合体(A)20〜40質量部と、
    芳香族ビニル単量体単位およびシアン化ビニル単量体単位を含むマトリックス樹脂(B)80〜60質量部とを含有し(ゴム含有グラフト共重合体(A)とマトリックス樹脂(B)の合計は100質量部である。)、
    マトリックス樹脂(B)は、質量平均分子量(Mw)が55000〜80000であると共にシアン化ビニル単量体単位含有率が20〜30質量%であるビニル共重合体を50質量%以上含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
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