JP2006156229A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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征人 岩永
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Abstract

【課題】非水電解質二次電池の釘刺し安全性を向上させる。
【解決手段】正極と、負極と、前記両電極間に介在するセパレータと、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、前記セパレータの突刺し破断伸びをL(mm)とし、前記セパレータの電池高さ方向の引張り強度をTDF(N)とし、前記セパレータの電池高さ方向に直交する方向の引張り強度をMDF(N)とし、前記セパレータの電池高さ方向の120℃における熱収縮率をTD120(%)とし、前記セパレータの電池高さ方向に直交する方向の120℃における熱収縮率をMD120(%)とするとき、下記式1〜5を全て満たすことを特徴とする。 L≧3.0 …式1 TDF≦8.0 …式2 MDF≧9.8 …式3 TD120≦30 …式4 MD120≦30 …式5
【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関し、特にこのような電池のセパレータの改良に関する。
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化、高エネルギー密度化が要求されている。リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
このような非水電解質二次電池には、電解質成分に可燃性の有機溶媒が用いられている。したがって、極めて高い安全性が求められる。このため、この種の電池のセパレータには、電池温度が異常に上昇した時に、セパレータ母材が溶融して微多孔を閉塞(シャットダウン)するポリオレフィン製微多孔膜が用いられている。微多孔が閉塞されると、正負電極間におけるリチウムイオンの移動が遮断され、更なる電池の暴走が阻止されるので電池の安全性が保たれる。
ここで非水電解質二次電池のセパレータの改良に関しては、例えば特許文献1〜4の技術が提案されている。
特開2000−156216号公報(請求項1、段落0008−0010)) 特開平11−21361号公報(特許請求の範囲、段落0003、0004) 特開平11−21362号公報(特許請求の範囲、段落0004−0006) 特開平11−297298号公報(請求項1、段落0005−0010)
特許文献1は、捲回方向の破断伸びが60%以上且つ捲回軸方向の破断伸びが400%以上であるセパレータを用いる技術である。
この技術によると、セパレータの伸びが大きいので、電池に異常な力が加えられた場合においても、セパレータが局部的に破壊することない。よって、局部的に大電流が流れることによる安全性の低下が防止できるとされる。
しかし、電池が釘刺されセパレータが破断した場合、破断した部分で正負極が直接接触して内部短絡が生じるが、この技術では、このような内部短絡よる発熱によってセパレータが収縮しセパレータの破断面積が拡大する。このため、内部短絡による発熱量がさらに増大するという問題がある。
特許文献2の技術は、厚さ5〜50μm、透気度100〜250秒/100cc、空孔率40〜60%、ピン刺強度350gf/25μm以上、ピン刺深度2.0mm以上、105℃での幅方向の熱収縮率が10%以下の特性を有するセパレータを用いる技術である。
この技術によると、高速での捲回によっても、セパレータにピンホールが発生することがなく、良好に電池を組み立てることができるとされる。
しかし、この技術は、釘刺しに対する安全性を高めようとするものではない。よって、電池の釘刺し事故等に対する安全性の改善が求められる。
特許文献3の技術は、厚さ5〜50μm、透気度250〜1000秒/100cc、空孔率30〜50%、ピン刺強度400gf/25μm以上、ピン刺深度2.0mm以上、105℃での幅方向の熱収縮率が10%以下の特性を有するセパレータを用いる技術である。
この技術によると、多孔性フィルムのピン刺し伸度が向上し、高速での捲回に対しても、セパレータにピンホールが発生することなく、良好に電池を組み立てることができるとされる。
しかし、この技術も、釘刺し事故等に対する安全性が十分でない。
特許文献4の技術は、平均孔径0.01〜0.2μm、空孔率30〜80%、長さ方向の強度5kg/mm2以上、幅方向の強度2kg/mm2以下、幅方向の伸び率が90%以下の特性を有するセパレータを用いる技術である。
この技術によると、電池の変形によりセパレータが破膜しても電流が局所的に集中することがないので、急激な温度上昇を防止できるとされる。
しかしながら、この技術は、上記特許文献1と同様に、内部短絡によりセパレータの破断部分の面積が拡大するため、発熱量の増大を十分に防止できないという問題がある。
本発明は、以上に鑑みなされたものであって、電池が釘刺しされる等の過酷な状況においても、安全性が保持される非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、正極と、負極と、前記両電極間に介在するセパレータと、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、前記セパレータの突刺し破断伸びをL(mm)とし、前記セパレータの電池高さ方向の引張り強度をTDF(N)とし、前記セパレータの電池高さ方向に直交する方向の引張り強度をMDF(N)とし、前記セパレータの電池高さ方向の120℃における熱収縮率をTD120(%)とし、前記セパレータの電池高さ方向に直交する方向の120℃における熱収縮率をMD120(%)とするとき、下記式1〜5を全て満たすことを特徴とする。
L≧3.0 …式1
TDF≦8.0 …式2
MDF≧9.8 …式3
TD120≦30 …式4
MD120≦30 …式5
上記構成では、突刺し破断伸びが3.0mm以上と大きいので、電池が釘刺しされたとき、セパレータが大きく伸びる。よって、釘刺しにより当該部分のセパレータが破断したとき、釘の周囲の電極破断部分をセパレータが覆う。このため、釘刺しによる内部短絡により電池が発熱した場合、セパレータ母材の溶融により上記破断部分を含む広い領域において微孔が閉鎖されリチウムイオンの移動がシャットダウンされるので、電池のさらなる発熱が抑制される。これにより電池の安全性が高まる。
また、電池高さ方向(TD方向)の破断強度が小さく(8.0N以下)、電池高さ方向に直交する方向(MD方向)の破断強度が大きい(9.8N以上)。このため、釘刺し時に破断強度が小さい方向に直交する方向(MD方向に平行な方向)に、より大きく破断して当該破断部分において正負極が直接接触して内部短絡するが、このようにセパレータがより大きく破断すると、一点集中的に大電流が流れることがない。よって、一点集中的に大電流が流れることによる急激な発熱が抑制される分、電池の安全性が高まる。
また、熱収縮率がTD方向、MD方向ともに30%以下と小さいため、内部短絡による発熱によりセパレータが大きく収縮しない。よって内部短絡領域の拡張による内部発熱量の増大を招かないので、更に安全性が向上する。
また、巻回型電極体を作製する場合、MD方向が巻回方向となるのであるが、MD方向の破断強度が高いため、電極の巻き取り工程で加えられるテンションによってセパレータが破断することがない。
上記本発明によると、釘刺し事故に対する安全性に優れた非水電解質二次電池を実現することができる。
本発明を実施するための最良の形態を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
(実験例1−3、比較例1−9)
〈正極の作製〉
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、N−メチルピロリドンとを混合して正極活物質スラリーとした。この正極活物質スラリーをアルミニウム製の正極集電体(厚み15μm)の両面に塗布し、乾燥・圧延して正極を作製した。
〈負極の作製〉
負極活物質としての黒鉛と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とを混合して負極合剤を調製した。この負極合剤に水を添加、混合してスラリーとした。この後、このスラリーを銅箔製の負極集電体(厚み10μm)の両面に塗布し、乾燥・圧延して負極を作製した。
〈電極体の作製〉
上記正極及び負極を、下記表1に示すように物性の異なるポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して巻回することにより、渦巻電極体を作製した。なお、巻き取り工程で加えられるテンションによって、セパレータが破断することはなかった。
なお、セパレータの物性は、延伸条件や厚みを変更することによって制御した。
〈電解液の調整〉
非水溶媒としてのエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1(25℃)で混合し、電解質塩としてのLiPF6を1M(モル/リットル)となるように溶解して、電解液となした。
〈電池の組み立て〉
円筒型外装缶に上記電極体を挿入した後、上記電解液を注液し、外装缶の開口部を封口することにより、直径18mm、高さ650mmの実施例1に係る非水電解質二次電池を作製した。
〔セパレータの物性測定〕
セパレータの物性を、以下の試験により測定した。
〈突刺し伸び〉
図1(a),(b)に示すように、直径11mmの貫通穴4と、貫通穴4の周囲に設置された、セパレータ固定用のOリング(図示せず)を備えた金属性冶具2で、セパレータ3を固定する。次いで、貫通穴4の中心軸に沿って、直径1.0mm、先端直径0.5mmの針1を2.0mm/秒の速度でセパレータ3に対して垂直に突刺した。そして、セパレータ3が破断するまでの釘1の移動距離L(mm)を測定し、これを突刺し伸びとした。この結果を下記表1に示す。
〈破断強度〉
セパレータを測定方向50mm、幅方向10mmに切り取り、チャック間隔を25mmとし、200mm/分の速度で引張り、破断時の強度(N)を測定した。この結果を下記表1に示す。
〈熱収縮率〉
セパレータを測定方向26mm、幅方向50mmに切り取り、熱収縮率測定方向と垂直な方向の両端部を26mmの間隔を空けてテープで固定し、120℃の恒温槽に30分放置し、下記式により熱収縮率を求めた。この結果を下記表1に示す。
熱収縮率(%)=(初期長さ−加熱後長さ)÷初期長さ×100
〔釘刺し安全性試験〕
上記で作製した各電池を、定電流−定電圧法で4.4Vとなるまで充電し、その後直径2.5mmで、先端が鋭利な鉄製の釘を、15mm/秒の速度で電池の中心軸に向かって突刺し、電池を貫通させた。このとき、電池内で発煙が生じなかったものを可(○)、発煙が生じたものを不可(×)と評価した。この結果を下記表1に示す。なお、この電池は、通常4.2V以下で使用するものである。
Figure 2006156229
上記表1から、突刺し伸びが3.0〜3.5mmである実施例1〜3では、釘刺し安全性が良(発煙なし)であったのに対し、突刺し伸びが2.0〜2.8mmである比較例1〜6では、釘刺し安全性が不可(発煙有り)であった。
このことは、次のように考えられる。実施例1〜3では、突刺し破断伸びが3.0mm以上と大きいため、釘刺しを行った場合に、セパレータが破断する前に大きく伸び、破断したときに釘の周囲の電極破断部分をセパレータが覆う。このため、電池の温度が異常上昇したときには、電極破断部分を覆うセパレータがシャットダウンするので、電池のさらなる発熱が抑制される。
他方、比較例1〜6では、突刺し破断伸びが2.8mm以下と小さいため、釘刺しを行った場合に、セパレータが破断する前の伸びが小さく、破断したときに釘の周囲の電極破断部分がセパレータにより十分に覆われない。このため、シャットダウンを起こす領域が小さく、発熱反応を十分に抑制できない。よって、電池発熱量が高いままとなり、発煙に至る。
また、TD方向の破断強度が5.2〜5.3N、MD方向の破断強度が37.5〜40.3Nである実施例1〜3では、釘刺し安全性が良(発煙なし)であったのに対し、TD方向の破断強度が8.6〜23.5Nである比較例1〜4、比較例8、およびMD方向の破断強度が8.4Nである比較例9では、釘刺し安全性が不可(発煙有り)であった。
このことは、次のように考えられる。実施例1〜3では、TD方向の破断強度が5.2〜5.3Nと小さく、MD方向の破断強度が37.5〜40.3Nと大きいため、セパレータが破断した場合に、セパレータがMD方向に平行に、長距離にわたって裂けやすくなる。このため、内部短絡領域がMD方向に大きく拡がった形状となり、局所的に内部短絡することがない。このため、局所的に大電流が流れて高発熱することがなく、発煙が生じない。
他方、比較例1〜4、比較例8では、TD方向の破断強度が8.6〜23.5Nと、上記実施例1〜3に比較し大きいため、セパレータが破断した場合に、セパレータがMD方向に短距離しか裂けないため、内部短絡領域が狭い(局所的内部短絡)。このため、内部短絡領域に大電流が流れ、異常発熱して発煙が生じる。
また、比較例9では、MD方向の破断強度が8.4Nと、上記実施例1〜3に比較し小さいため、セパレータが破断した場合に、セパレータがMD方向に短距離しか裂けないため、内部短絡領域が狭い。このため、内部短絡領域に大電流が流れ、異常発熱して発煙が生じる。また、MD方向の破断強度が小さ過ぎると、電極の巻き取り工程で加えられるテンションによってセパレータが破断することがあるため、生産上問題がある。
このため、TD方向の破断強度は、好ましくは8.6N未満とし、より好ましくは、8.0N以下とし、また、MD方向の破断強度は、好ましくは8.4Nより大きいとし、より好ましくは9.8N以上とする。
また、TD方向の熱収縮率が15.4〜17.7%且つMD方向の熱収縮率が16.2〜21.5%である実施例1〜3では、釘刺し安全性が良(発煙なし)であったのに対し、TD方向の熱収縮率が31.5%、MD方向の熱収縮率が27.8%である比較例5、及びTD方向の熱収縮率が31.5%、MD方向の熱収縮率が32.2%である比較例7では、釘刺し安全性が不可(発煙有り)であった。
このことは、次のように考えられる。実施例1〜3では、TD方向及びMD方向の熱収縮率がそれぞれ17.7%以下、21.5%以下と小さいため、内部短絡による発熱によって熱収縮しにくく、内部短絡領域が拡張しにくいため、内部短絡発熱量の増大が抑制され、これによる発煙が生じない。
他方、比較例5、比較例7では、TD方向及びMD方向の熱収縮率の少なくとも一方が31.5%以上と、上記実施例1〜3に比較し大きいため、内部短絡による発熱によって大きく熱収縮して、内部短絡領域が拡張する。これにより再度内部短絡が生じ、内部短絡発熱量が増大して、発煙が生じる。
以上から、TD方向及びMD方向の熱収縮率の双方を好ましくは31.5%未満とし、より好ましくは30%以下とする。
(その他の事項)
本発明は、円筒型外装缶以外に、角型外装缶、コイン型外装体、ラミネート外装体を用いることができる。
また、上記物性を満たすものであれば、セパレータとしてポリエチレン以外に、ポリプロピレン等を用いることができる。
以上に説明したように、本発明によれば、セパレータの物性を改良することにより、釘刺し等の過酷な状況における安全性を飛躍的に向上させることができるという優れた効果を奏する。したがって、産業上の利用可能性は大きい。
図1は、突刺し破断伸び試験装置を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は断面図である。
符号の説明
1 針
2 治具
3 セパレータ
4 貫通穴

Claims (1)

  1. 正極と、負極と、前記両電極間に介在するセパレータと、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池において、
    前記セパレータの突刺し破断伸びをL(mm)とし、前記セパレータの電池高さ方向の引張り強度をTDF(N)とし、前記セパレータの電池高さ方向に直交する方向の引張り強度をMDF(N)とし、前記セパレータの電池高さ方向の120℃における熱収縮率をTD120(%)とし、前記セパレータの電池高さ方向に直交する方向の120℃における熱収縮率をMD120(%)とするとき、下記式1〜5を全て満たす、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池。
    L≧3.0 …式1
    TDF≦8.0 …式2
    MDF≧9.8 …式3
    TD120≦30 …式4
    MD120≦30 …式5


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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014197486A (ja) * 2013-03-29 2014-10-16 株式会社豊田自動織機 蓄電装置
JP5973674B1 (ja) * 2014-10-10 2016-08-23 住友化学株式会社 積層体、積層体を含む非水電解液二次電池用セパレータ、および非水電解液二次電池
JP5973675B1 (ja) * 2014-10-10 2016-08-23 住友化学株式会社 積層体、積層体を含む非水電解液二次電池用セパレータ、および非水電解液二次電池

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