JP2006153846A - 鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、記録媒体 - Google Patents

鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、記録媒体 Download PDF

Info

Publication number
JP2006153846A
JP2006153846A JP2005210525A JP2005210525A JP2006153846A JP 2006153846 A JP2006153846 A JP 2006153846A JP 2005210525 A JP2005210525 A JP 2005210525A JP 2005210525 A JP2005210525 A JP 2005210525A JP 2006153846 A JP2006153846 A JP 2006153846A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light component
reflected light
geometry
specular
reflection
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2005210525A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3980608B2 (ja
Inventor
Hiroshi Doshoda
洋 道正田
Yoichi Miyake
洋一 三宅
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2005210525A priority Critical patent/JP3980608B2/ja
Priority to US11/259,166 priority patent/US7417739B2/en
Publication of JP2006153846A publication Critical patent/JP2006153846A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3980608B2 publication Critical patent/JP3980608B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N21/00Investigating or analysing materials by the use of optical means, i.e. using sub-millimetre waves, infrared, visible or ultraviolet light
    • G01N21/17Systems in which incident light is modified in accordance with the properties of the material investigated
    • G01N21/55Specular reflectivity
    • G01N21/57Measuring gloss
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01JMEASUREMENT OF INTENSITY, VELOCITY, SPECTRAL CONTENT, POLARISATION, PHASE OR PULSE CHARACTERISTICS OF INFRARED, VISIBLE OR ULTRAVIOLET LIGHT; COLORIMETRY; RADIATION PYROMETRY
    • G01J3/00Spectrometry; Spectrophotometry; Monochromators; Measuring colours
    • G01J3/46Measurement of colour; Colour measuring devices, e.g. colorimeters
    • G01J3/50Measurement of colour; Colour measuring devices, e.g. colorimeters using electric radiation detectors
    • G01J3/504Goniometric colour measurements, for example measurements of metallic or flake based paints

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)
  • Spectrometry And Color Measurement (AREA)

Abstract

【課題】 濃度の薄い画像や低光沢の画像においても、2色性反射モデルによって鏡面光沢度を正確に予測することのできる鏡面光沢予測装置を実現する。
【解決手段】 本発明の鏡面光沢予測装置は、基材と上記基材上に形成された色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおける輝度値を測定し、この測定結果から全ての(他の)ジオメトリにおける鏡面反射光量を予測することによって、鏡面光沢度を予測するものである。鏡面光沢予測装置100は、基材で反射され色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分算出部111と、色材層の内部で反射される内部反射光成分を作成する内部反射光成分作成部112と、色材層の表面で反射される表面反射光成分を作成する表面反射光成分作成部113と、上記各部で作成された各成分を加算することによって試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出部114とを備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子写真方式、インクジェット方式などの印刷方式、あるいは、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷方式によって形成された画像の鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、その制御プログラムを記録した記録媒体に関する。
様々な手法により作製された画像サンプルの質感評価項目の1つとして光沢がある。一般的に、その光沢感は観察環境のジオメトリ(光源、サンプル(以下、画像サンプルを単にサンプルと記す)、受光器の位置関係)により大きく異なり、図2に示すような光源入射方向の天頂角度1及び受光方向の天頂角度2が大きくなるに従い、人は光沢感を強く感じる。この光沢感を定量的な光沢度として評価を行うために、現在、鏡面光沢度計では、サンプル3への光源入射方向の天頂角度1及び受光方向の天頂角度2の組み合わせとして45°や60°などの数種類の限定された構成(JIS Z 8741)が用いられている。この構成は、JIS(Japanese Industrial Standards)などにおいて規格化されている。
しかし、この手法では1つの標準指標となる光沢度を得ることはできるが、偏角反射特性を評価するための十分な定量的データを得ることはできない。これを解決するために、塗装業界などで使用されている偏角分光測色システム(ゴニオフォトスペクトロメータ)などを利用して、偏角反射特性の定量的なデータを得ることが可能である。しかしながら、この偏角分光測色システムを用いた定量的な測定は、測定時間が非常に長く、サンプル形状も限定されるため実用的ではない。
ところで、近年リモートセンシング分野では双方向反射角度依存特性(BRDF:Bidirectional Reflectance Distribution Function)の検討が盛んであり、これらはShaferの2色性反射モデル理論(非特許文献1参照)を基本として考案されている。2色性反射モデル理論では、図3に示すように、物体表面からの反射光は表面反射光(表面反射光成分)4と内部反射光(内部反射光成分)5と呼ばれる2つの成分で構成される。表面反射光4はサンプル3と空気の屈折率の違いによりサンプル3の表面で反射する光であり、光源6の色を持つ。サンプル3内部に入った光は色素粒子3A間で屈折・吸収・散乱を繰り返す。その際に波長に依存して光が色素粒子3Aに吸収されるため、サンプル3からの放射光である内部反射光5はサンプル3の色を持つ。BRDFは目的に応じて様々な提案モデルが使い分けられている。
偏角反射特性を評価する方法として、特許文献1では、BRDFを用いて鏡面反射光量を予測し、既存ジオメトリ以外での光沢度予測も可能としている。
特開2003−329586公報(公開日:2003年11月19日) COLOR Research and application, Vol. 10, No. 4, pp. 210-218, 1985
しかしながら、上記手法では、光沢度計が受光する鏡面反射光量を2色性反射モデル理論のサンプルの表面反射光成分のみで考え、BRDFによって鏡面光沢度を算出している。そのため、高濃度色材で構成された高光沢を生じる画像においては、2色性反射モデル理論の内部反射光成分や色材層の下地からの反射光成分を無視することができるが、色材濃度が薄い画像の場合は下層反射光成分を無視することができず、また、低光沢の画像の場合は内部反射光成分を無視することができず、正確な値を算出することができない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、濃度の薄い画像や低光沢の画像においても、2色性反射モデルによって鏡面光沢度を正確に予測することのできる鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法を実現することにある。
本発明にかかる鏡面光沢予測装置は、上記課題を解決するために、基材と上記基材上に形成された色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおける輝度値を測定し、この測定結果から他のジオメトリにおける鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置であって、複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、所定のジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値および上記下層反射光成分に基づいて、上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を作成する内部反射光成分作成部と、上記のジオメトリとは異なる所定のジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を作成する表面反射光成分作成部と、上記下層反射光成分作成部、上記内部反射光成分作成部、および、上記表面反射光成分作成部で作成された各成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出部とを備えることを特徴としている。
また、本発明に係る別の鏡面光沢予測装置は、上記課題を解決するために、基材と上記基材上に形成された色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおいて測定される輝度値に基づいて他のジオメトリにおける鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置であって、複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分に基づいて、上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を作成する内部反射光成分作成部と、所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を作成する表面反射光成分作成部と、上記下層反射光成分作成部、上記内部反射光成分作成部、および、上記表面反射光成分作成部で作成された各成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出部とを備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、表面反射光成分だけではなく、下層反射光成分および内部反射光成分も考慮して、2色性反射モデルをより有効に活用して試料の鏡面反射光量を求めることによって鏡面光沢度を予測しているため、従来は正確な値を算出することができなかった低濃度の画像サンプルおよび低光沢の画像サンプルにおいても、鏡面光沢度を精度良く評価することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記下層反射光成分作成部は、複数のジオメトリにおいて上記基材のみの輝度値を測定し、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を、測定した輝度値に基づいて算出するものであり、上記内部反射光成分作成部は、非鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値および上記下層反射光成分に基づいて上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他のジオメトリにおける内部反射光成分を予測するものであり、上記表面反射光成分作成部は、鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他の鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を予測するものであることが好ましい。
本発明の鏡面光沢予測装置は、紙やOHPフィルムなどの基材上に、トナー、顔料インク、染料インクなどを含む色材層がサンプル画像として形成された試料の全てのジオメトリの鏡面反射光量を、2色性反射モデルを用いて予測し、この鏡面反射光量から試料の鏡面光沢度を予測するものである。上記鏡面光沢予測装置では、色材層の表面で反射される表面反射光成分だけではなく、色材層の内部で反射された内部反射光成分、および、基材で反射された下層反射光成分をも考慮し、算出された表面反射光成分、内部反射光成分、および、下層反射光成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求めている。
ここで、上記「ジオメトリ」とは、鏡面光沢などを評価するために画像サンプルから反射光量を測定する場合に使用する、光源、画像サンプル、受光器の位置関係のことである。より具体的には、図2に示す入射角度1および受光角度2のことを意味する。ここで、上記入射角度とは、試料に対して入射する光源からの光線と、当該光線が試料平面上に入射する位置における試料平面からの法線ベクトルとがなす角度のことであり、上記受光角度とは、試料平面上で反射された光線と上記法線ベクトルとがなす角度のことである。従って、上記「所定のジオメトリ」とは、入射角度1および受光角度2を任意の角度に設定したもののことである。
また、上記「鏡面反射ジオメトリ」とは、上記所定のジオメトリのうち、入射した光がサンプル上で鏡面反射するときの入射角度と受光角度を有するジオメトリのことであり、図2に示す入射角度1と受光角度2とが同じ角度になるジオメトリのこと言う。
また、上記「非鏡面反射ジオメトリ」とは、上記所定のジオメトリのうち、鏡面反射ジオメトリ以外のあらゆるジオメトリのことを言う。
本発明では、上記のような条件を満たす任意の「鏡面反射ジオメトリ」および「非鏡面反射ジオメトリ」を選択することができる。なお、実施の形態では、非鏡面反射ジオメトリとして、光源入射角度θi=45°、受光角度θr=−60°(図5参照)を選択し、鏡面反射ジオメトリとして、光源入射角度θi=45°、受光角度θr=45°(図5参照)を選択している。
そして、下層反射光成分を算出するために基材のみの輝度値を測定する複数のジオメトリとは、測定環境中の全ての位置を満遍なく含むように、光源入射角度および受光角度を一定角度毎にそれぞれ変更させた場合に取り得る複数のジオメトリのことを意味する。この複数のジオメトリとして具体的には、実施の形態において示す、角度分解能1°で光源入射角度および受光角度を変更させた場合の全てのジオメトリが挙げられる。
また、本明細書中において「全てのジオメトリ」とは、文字通り測定環境におけるあらゆるジオメトリのことを意味しているが、本明細書中では、「測定環境中の全ての位置を満遍なく含むように、光源入射角度および受光角度を一定角度毎に変更させた複数のジオメトリ」という意味でも使用する。この「全てのジオメトリ」として具体的には、実施の形態において示す、角度分解能1°で光源入射角度および受光角度を変更させた場合の全てのジオメトリが挙げられる。また、「全ての鏡面反射ジオメトリ」とは、「全てのジオメトリ」の中でも特に鏡面反射ジオメトリに限定したジオメトリを意味する。
上記の構成によれば、全てのジオメトリの内部反射光成分および表面反射光成分を実測することなく、実測することのできる下層部分(すなわち、基材)のみの反射光成分(すなわち、下層反射光成分)を光源入射角度および受光角度を一定角度毎に変更させた複数のジオメトリ(すなわち、全てのジオメトリ)において測定しておくことで、試料の鏡面反射光量を高精度に算出することができる。さらに、上記の構成によれば、表面反射光成分だけではなく、下層反射光成分および内部反射光成分も考慮して、2色性反射モデルをより有効に活用して試料の鏡面反射光量を求めることによって鏡面光沢度を予測しているため、従来は正確な値を算出することができなかった低濃度の画像サンプルおよび低光沢の画像サンプルにおいても、鏡面光沢度を精度良く評価することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記表面反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いて他の鏡面反射ジオメトリの表面反射光成分を予測することが好ましい。
上記の構成によれば、光の非等方散乱を前提として提案されているTorrance−Sparrowモデルを用いることによって、予め定められた一つの鏡面反射ジオメトリにおける測定結果に基づいて全ての鏡面反射ジオメトリの表面反射光成分を精度良く予測することができる。また、Torrance−Sparrowモデルは、必要とするパラメータが少ないため、容易に利用することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記内部反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてOren−Nayarモデルを用いて他のジオメトリの内部反射光成分を予測することが好ましい。
上記の構成によれば、光の非等方散乱を前提として提案されているOren−Nayarモデルを用いることによって、予め定められた一つの非鏡面反射ジオメトリにおける測定結果に基づいて全てのジオメトリの内部反射光成分を精度良く予測することができる。また、Oren−Nayarモデルは、必要とするパラメータが少ないため、容易に利用することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記下層反射光成分作成部は、上記基材の輝度値の測定結果と、上記色材層の透過率および屈折率とを用いて下層反射光成分を算出することが好ましい。
上記の構成によれば、試料の基材の部分へ到達する光の入射角度および光量、基材の部分から屈折し減衰する反射光量が正確に再現され、下層部分の反射光成分をより高精度に算出することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記内部反射光成分作成部は、上記色材層に含まれる色素粒子間で散乱され放射される拡散反射光成分を予測する拡散反射光成分作成部であるとともに、上記一つの鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記拡散反射光成分に基づいて、上記色素粒子によって反射される色素粒子反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他のジオメトリにおける色素粒子反射光成分を予測する色素粒子反射光成分作成部と、上記色素粒子反射光成分作成部の算出結果と、上記表面反射光成分作成部の算出結果と、上記一つの鏡面反射ジオメトリにおける上記試料の輝度値の測定結果とに基づいて、上記色素粒子反射光成分と上記表面反射光成分との配分割合を決定する形状パラメータ算出部とをさらに備え、上記鏡面反射光量算出部は、上記下層反射光成分作成部、上記拡散反射光成分作成部で作成された各成分、および、上記色素粒子反射光成分作成部および上記表面反射光成分作成部で作成され、上記形状パラメータ算出部によって、配分割合を決定された各成分を加算することによって試料の鏡面反射光量を求めるものであってもよい。
上記の構成によれば、色材層に含まれる色素粒子の径が比較的大きい場合(すなわち、色素粒子が顔料などである場合)の試料の鏡面光沢を精度良く予測することができる。また、上記の構成によれば、下層反射光成分や内部反射光成分を考慮した場合においても十分な予測精度が得られない、低光沢な画像で光沢度が上昇する天頂角度が大きいジオメトリにおいても、試料の鏡面光沢を十分な精度で予測することができる。
上記の鏡面光沢予測装置において、上記表面反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いるとともに、上記Torrance−Sparrowモデルにおいて、反射光成分の広がりを定義するパラメータとして上記試料の表面形状の粗さ変数を用いることが好ましい。
ここで、「試料の表面形状の粗さ変数」とは、具体的には、試料の最表面(色材層表層と空気層の界面)の高さ情報(XYZ座標空間(図5参照)に試料を配置した場合、Z軸方向の長さ)から表面の微小面の傾きを算出し、この微小面の傾きのヒストグラムを作成後、2σ(データの約95.5%)の範囲内で算出した微小面傾きの標準偏差(分布幅)を意味する。
上記の構成によれば、Torrance−Sparrowモデルが光の非等方性散乱を前提として提案されているため、表面反射光成分をより高精度に算出することができる。また、Torrance−Sparrowモデルは、必要とするその他のパラメータが少ないため、容易に利用することができる。さらに、反射光成分の広がりを定義するパラメータとして試料の表面形状の粗さ変数を用いることによって、Torrance−Sparrowモデルを精度良く利用することができる。
上記の鏡面光沢予測装置において、上記色素粒子反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いるとともに、上記Torrance−Sparrowモデルにおいて、反射光成分の広がりを定義するパラメータとして上記試料の濃度分布の粗さ変数を用いることが好ましい。
ここで、「試料の濃度分布の粗さ変数」とは、具体的には、試料の透過画像(XYZ座標空間(図5参照)に試料を配置した場合、例えば、Z軸+側にカメラ(受光部)、−側に光源を配置した時カメラで観測される画像)の各画素の濃度からヒストグラムを作成後、2σ(データの約95.5%)の範囲内で算出した透過濃度の標準偏差(分布幅)を意味する。
上記の構成によれば、Torrance−Sparrowモデルが光の非等方性散乱を前提として提案されているため、色素粒子反射光成分をより高精度に算出することができる。また、Torrance−Sparrowモデルは、必要とするその他のパラメータが少ないため、容易に利用することができる。さらに、反射光成分の広がりを定義するパラメータとして試料の濃度分布の粗さ変数を用いることによって、Torrance−Sparrowモデルを精度良く利用することができる。
本発明に係る鏡面光沢予測装置は、上記課題を解決するために、基材と上記基材上に形成され色素粒子を含む色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおいて測定される輝度値に基づいて他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置であって、複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記所定のジオメトリおよび上記他のジオメトリにおける、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、上記所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分作成部によって算出される上記所定のジオメトリにおける下層反射光成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける、上記色材層に含まれる色素粒子間で散乱され放射される拡散反射光成分、上記色素粒子によって反射される色素粒子反射光成分、および上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出する上層反射光成分作成部と、上記下層反射光成分作成部および上記上層反射光成分作成部によって算出される上記他のジオメトリにおける各成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を算出する鏡面反射光量算出部とを備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、色材層における表面反射光成分だけでなく、基材における下層反射光成分ならびに色材層における拡散反射光成分および色素粒子反射光成分をも考慮して、2色性反射モデルをより有効に活用して試料の鏡面反射光量を求めることによって鏡面光沢度を予測している。このため、従来は正確な値を算出することができなかった低濃度の画像サンプルおよび低光沢の画像サンプルにおいても、鏡面光沢度を精度良く評価することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記上層反射光成分作成部は、2色性反射モデルを用いることによって、上記他のジオメトリにおける上記拡散反射光成分、上記色素粒子反射光成分、および上記表面反射光成分を算出することが好ましい。
2色性反射モデルを用いることによって、上層反射光成分作成部は、拡散反射光成分、色素粒子反射光成分、および表面反射光成分を正確に求めることができ、ひいては鏡面光沢度を精度良く評価することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記下層反射光成分作成部は、少なくとも3種類の所定のジオメトリおよび上記他のジオメトリにおける上記下層反射光成分を算出するものであり、上記上層反射光成分作成部は、上記少なくとも3種類の所定のジオメトリにおいて測定される試料の濃度値および上記下層反射光成分作成部によって算出される上記少なくとも3種類の所定のジオメトリにおける下層反射光成分に基づいて、(a)Oren−Nayarモデルにおけるパラメータおよび(b)上記拡散反射光成分と上記色素粒子反射光成分と上記表面反射光成分との配分割合を求めるパラメータ算出部と、上記配分割合を用いて上記他のジオメトリにおける上記色素粒子反射光成分および上記表面反射光成分を算出するとともに、上記配分割合、上記パラメータ、およびOren−Nayarモデルを用いて上記他のジオメトリにおける上記拡散反射光成分を算出する反射光成分算出部と、を含んでいることが好ましい。
上層反射光成分に含まれる拡散反射光成分、色素粒子反射光成分、表面反射光成分の配分割合は、全体を1とすると2つのパラメータで表すことができる。また、Oren−Nayarモデルを用いて拡散反射光成分を算出するためには、微小面の反射率を表す未知のパラメータを求める必要がある。ここで、上記構成によれば、パラメータ算出部は、上層反射光における各反射光成分を求める際に、少なくとも3種類の所定のジオメトリにおいて測定した試料の濃度値と、その3種類の所定のジオメトリにおける下層反射光成分とを用いている。ここで、上層反射光成分は、鏡面反射光量から下層反射光成分を減算したものである。よって、少なくとも3種類の所定のジオメトリについての3つの条件式が作成できる。これにより、3つの条件式から、Oren−Nayarモデルにおける未知のパラメータ、および配分割合を表す2つのパラメータの全てを求めることができる。つまり、上層反射光成分に含まれる各成分を近似することなく求めることができる。従って、上層反射光成分に含まれる拡散反射光成分、色素粒子反射光成分、および表面反射光成分を正確に求めることができ、ひいては鏡面光沢度を精度良く評価することができる。
本発明の鏡面光沢予測装置において、上記反射光成分算出部は、上記配分割合およびTorrance−Sparrowモデルを用いて上記他のジオメトリにおける上記色素粒子反射光成分および上記表面反射光成分を算出することが好ましい。
Torrance−Sparrowモデルを用いることによって、上層反射光成分に含まれる色素粒子反射光成分および表面反射光成分を正確に求めることができ、ひいては鏡面光沢度を精度良く評価することができる。
本発明にかかる鏡面光沢予測方法は、上記課題を解決するために、基材と上記基材上に形成された色材層とからなる試料の鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測方法であって、光源入射角度および受光角度を一定角度毎に変更させた複数のジオメトリにおいて上記基材のみの輝度値を測定し、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を、測定した輝度値に基づいて算出する下層反射光成分作成工程と、一つの非鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値および上記下層反射光成分に基づいて上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他のジオメトリにおける内部反射光成分を予測する内部反射光成分作成工程と、一つの鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他の鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を予測する表面反射光成分作成工程と、上記の各工程によって得られた下層反射光成分、内部反射光成分、および表面反射光成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出工程とからなることを特徴としている。
本発明の鏡面光沢予測方法は、紙やOHPフィルムなどの基材上に、トナー、顔料インク、染料インクなどを含む色材層がサンプル画像として形成された試料の全てのジオメトリの鏡面光沢成分を、2色性反射モデルを用いて予測するというものである。
上記の方法によれば、表面反射光成分だけではなく、下層反射光成分および内部反射光成分も考慮して、2色性反射モデルを用いて試料の鏡面光沢成分を求めるため、従来は正確な値を算出することができなかった低濃度の画像サンプルおよび低光沢の画像サンプルにおいても、鏡面光沢成分を精度良く算出することができる。
本発明にかかる鏡面光沢予測方法は、上記課題を解決するために、基材と上記基材上に形成され色素粒子を含む色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおいて測定される輝度値に基づいて他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測方法であって、複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、所定のジオメトリおよび上記他のジオメトリにおいて上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分をそれぞれ算出する下層反射光成分作成工程と、上記所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分作成工程において算出される上記所定のジオメトリにおける上記下層反射光成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける、上記色材層に含まれる色素粒子間で散乱され放射される拡散反射光成分、上記色素粒子によって反射される色素粒子反射光成分、および上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出する上層反射光成分作成工程と、上記下層反射光成分作成工程において算出される上記他のジオメトリにおける下層反射光成分および上記上層反射光成分作成工程において算出された各成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を算出する鏡面反射光量算出工程とを備えることを特徴とする。
上記の方法によれば、色材層における表面反射光成分だけでなく、基材における下層反射光成分ならびに色材層における拡散反射光成分および色素粒子反射光成分をも考慮して、2色性反射モデルをより有効に用いて試料の鏡面光沢成分を求めている。このため、従来は正確な値を算出することができなかった低濃度の画像サンプルおよび低光沢の画像サンプルにおいても、鏡面光沢成分を精度良く算出することができる。
なお、上記鏡面光沢予測装置の制御は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各部として動作させることにより上記鏡面光沢予測装置をコンピュータにて実現させる制御プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
すなわち、本発明にかかる制御プログラムは、上述の何れかの構成からなる鏡面光沢予測装置の制御機能をコンピュータで実現するためのものである。また、本発明にかかる記録媒体は、上記制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。この結果、本発明の鏡面光沢予測方法を行うプログラムを記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。
本発明にかかる鏡面光沢予測装置は、以上のように、複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、所定のジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値および上記下層反射光成分に基づいて、上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を作成する内部反射光成分作成部と、上記のジオメトリとは異なる所定のジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を作成する表面反射光成分作成部と、上記下層反射光成分作成部、上記内部反射光成分作成部、および、上記表面反射光成分作成部で作成された各成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出部とを備えている。
また、本発明に係る別の鏡面光沢予測装置は、以上のように、複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記所定のジオメトリおよび上記他のジオメトリにおける、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、上記所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分作成部によって算出される上記所定のジオメトリにおける下層反射光成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける、上記色材層に含まれる色素粒子間で散乱され放射される拡散反射光成分、上記色素粒子によって反射される色素粒子反射光成分、および上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を作成する上層反射光成分作成部と、上記下層反射光成分作成部および上記上層反射光成分作成部によって作成される上記他のジオメトリにおける各成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出部とを備えている。
それゆえ、上記の構成によれば、表面反射光成分だけではなく、下層反射光成分および内部反射光成分も考慮して、2色性反射モデルをより有効に活用して試料の鏡面反射光量を求めることによって鏡面光沢度を予測しているため、従来は正確な値を算出することができなかった低濃度の画像サンプルおよび低光沢の画像サンプルにおいても、鏡面光沢度を精度良く評価することができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施形態について図1ないし図12に基づいて説明すると以下の通りである。本実施の形態では、電子写真方式によって紙(基材)上にとトナー画像(色材層)が形成されたサンプル(試料)の所定のジオメトリにおける(所定の入射角度および受光角度における)輝度値を測定し、この測定結果から他のジオメトリにおける鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置について説明する。なお、本実施の形態では、上記所定のジオメトリとして、一つの鏡面反射ジオメトリと一つの非鏡面反射ジオメトリとを選択して、これらの偏角輝度値を測定する。
まず、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置において、サンプルの鏡面光沢度の予測に用いられる2色性反射(BRDF)モデル理論について説明する。またここでは、上記BRDFモデルを、基材および色材層という2層構造を有する試料の反射光成分を算出する場合に適用する方法について説明する。
図4には、2層構造を有する試料の反射光成分の分割手法を模式的に示す。図4に示すように、サンプル3は、トナー画像(色材層)からなる上層部分13と紙や透過フィルムなどの基材からなる下層部分12とから構成される。2色性反射(BRDF)モデル理論によれば、上層部分13からの表面反射光成分(Lrs)7および内部反射光成分(Lri)8、下層部分12からの表面反射光成分9および内部反射光成分10が、光源6からの各反射光成分として挙げられ、これらの複合光がサンプル3からの反射光となる。それぞれの反射光成分7〜10をBRDFモデルによって算出するためには、測定不可能であるパラメータを複数推定する必要がある。
しかしながら、下層部分12からの内部反射光成分10を測定することは困難であるため、本発明では下層部分12からの表面反射光成分9と内部反射光成分10を複合和反射光成分として考慮し、下層反射光成分(Lru)11として取り扱う。下層部分12のみの実測データを基にこの下層反射光成分11を算出することによって、様々な画像サンプルにおける正確な鏡面反射光量をBRDFモデルによって算出することを実現する。これにより、上層部分13からの表面反射光成分7、内部反射光成分8及び下層反射光成分11を算出すれば、正確な鏡面反射光量を得ることが可能となる。
本発明において、各反射光成分を算出するための算出式モデルとして有効なBRDFモデルとしては、下記の(1)〜(4)に示すモデルなどが挙げられる。
(1)Wardモデル
参考文献:Ward G.J.,Measuring and modeling anisotropic reflection,Computer Graphics Vol.26,No.2,pp.265−272,1992.
(2)Phongモデル
参考文献:B.Phong,Illumination for computer−generated pictures,Communicationso f the ACM,Vol.18,No.6,pp.311−317,1982.
(3)Oren−Nayarモデル
参考文献:Michael Oren and Shree K.Nayer,Generalization of the Lambertian Model and Implications for Machine Vision,International Journal of ComputerVision,Vol.14,pp.227−251,1995.
(4)Torrance−Sparrowモデル
参考文献:K.E.Torrance and E.M.Sparrow,Theory for Off−Specular Reflection From Roughened Surfaces,J.Opt.Soc.Am.Vol.57,No.9,pp.1105−1114,1967.
上記の各算出式モデルのうち、光の等方散乱を前提として提案されているのが、Wardモデル、Phongモデルであり、光の非等方散乱を前提として提案されているのが、Oren−Nayarモデル、Torrance−Sparrowモデルである。計算式は複雑になるが、光の非等方散乱を含んだ方が正確な値を算出することができるため、本実施の形態では、表面反射光成分7を算出するための算出式モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いており、内部反射光成分8を算出するための算出式モデルとしてOren−Nayarモデルを用いている。
なお、図5には、BRDFモデルにおける幾何学的配置を示し、図6には、BRDFモデルにおける物体表面の幾何学的定義を示す。なお、図2が鏡面反射ジオメトリのみを図示している(図5において、θi=θr,φi+φr=180°)のに対し、図5はxyz軸から表現される3次元のマルチアングルジオメトリ(鏡面反射ジオメトリを含む一般的なジオメトリ)を図示している。また、図6は、Oren−Nayarモデル及びTorrance−Sparrowモデルが光の非等方散乱をモデル化する際に提案されているサンプル表面の近似モデルを示す。ここでは、試料表面は平坦ではなく微小の凹凸から構成されていると考える。このような微小平面の集合として、立体効果及び立体障害を考慮して反射輝度を表現している。
Oren−Nayarモデルを用いて内部反射光成分Lriを算出する場合、まず、下記の式(1)によってOren−Nayarモデル計算値LrONを算出する。
Figure 2006153846
上記の式において、θiは光源方向の天頂角、φiは光源方向の方位角、θrは受光方向の天頂角、φrは受光方向の方位角、σは表面形状の粗さ変数、E0はサンプルへ入射される放射照度、ρはサンプル表面の微小面の反射率、α=max[θr, θi]、β=min[θr, θi]である(図5、図6参照)。
また、Torrance−Sparrowモデルを用いて表面反射光成分Lrsを算出する場合、まず、下記の式(2)によってTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSを算出する。
Figure 2006153846
上記の式において、Fはフレネルの反射率、nはサンプル3の法線ベクトル、sは光源方向ベクトル、vは受光方向ベクトル、aはsとvの2等分ベクトル、θrは受光方向の天頂角、θaはベクトルaの天頂角、φaはベクトルaの方位角、σは表面形状の粗さ変数、E0はサンプルへ入射される放射照度である。また、上記の式において、<x,y>(x、yは任意の数)はベクトルの内積を示す(図5、図6参照)。
続いて、上記の手法を用いて所定のジオメトリにおける輝度の測定値から全てのジオメトリの鏡面反射光量を算出する方法について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
まず、下層反射光成分Lruを算出するために、鏡面反射光成分を算出したいサンプルの上層部分(トナー画像)13のみの透過率を算出する(ステップS1)。ここでの測定ジオメトリは、光源、サンプル、受光器が一直線上に設置されたものである。このようなジオメトリで、サンプルの真上から光源を入射し、サンプルの真下に設置した受光器によって受光される光を、サンプルを透過した光として透過濃度計により計測する。そして、トナー画像が形成されたサンプル(上層部分13と下層部分12からなるサンプル)と下層部分(紙)12のみのサンプルの差分を取ることにより、上層部分13のみの透過濃度Dtを得ることができ、上層部分13(すなわち、トナー画像)のみの透過率TtはTt=10^(−Dt)から算出することができる。
また、以下の工程で用いる上層部分(トナー画像)13の屈折率については、トナーの主成分である樹脂の屈折率(文献値)を用いる。なお、現在の測定理論では、紙上に形成されたトナー層の屈折率を測定することはできないため、本実施の形態では測定することなく、トナーに含有される主成分である樹脂の屈折率(文献値)を使用している。実際に測定しても、ほぼ同じ値になると考えられる。
次に、上層部分13が存在しないサンプル、つまり下層部分12のみのサンプル、本実施の形態の場合は、トナー画像を印字する前の紙や透過フィルムを用意し、この下層部分12のみのサンプルの光源入射方向及び受光方向を高分解能とした偏角輝度値を測定する(ステップS2)。なお、ここでは、測定値空間をCIE1976L(CIE: Commission International de l’Eclairage :国際照明委員会。L: 明度、a、b: 色度)空間とするため、上記偏角輝度値としてLの値を採用する。
これらのデータから下層反射光成分Lruを算出する(ステップS3)。図7は下層反射光成分Lruを算出する時に考慮する光の屈折現象および光量の減衰を概念的に示す模式図である。サンプルへθiの角度で入射した光は空気層15と上層部分13の界面で屈折現象を生じる。この屈折現象はフレネル理論に従い、屈折後の角度θtはフレネルの法則(入射前媒体の屈折率をn1、入射後媒体の屈折率をn2とすると、n1×sinθi=n2×sinθt)により求まる。屈折現象によりトナー層を通過する光は界面で減衰し、そのフレネル透過率Tnは式(3)により表される。
Figure 2006153846
また、上層部分13中を光が通過する際、上層部分13によって光が減衰して下層部分12にまで到達する。その減衰効果はBeer-Lambertの法則(色材層の吸収係数をa、色材層の厚みをd、透過率をTとすると、−logT=a×d)に従う。入射角度が変化することにより、下層部分12まで光が到達するまでに上層部分13を光が通過する光路長が変化する。そこで、この光路長変化に応じた見かけ上の透過率Tt’を計算すると、−logTt’=a×(d/cosθi)となり、この見かけ上の透過率により光の減衰を評価する。
以上から、屈折現象によって下層部分12への光の入射角度が変化した上に、フレネル透過率Tn及び光路長変化に応じた見かけ上の透過率Tt’を用いて、光量の減衰を評価することにより、下層部分12へ到達する光の入射光量が算出できる。このような光学的現象は下層部分12からの反射光が空気層へ放射される場合も同様に生じる。よって、S2で測定した下層部分(紙)のみからなるサンプルの偏角輝度値に、上記のような2回の光の屈折現象及び光の減衰効果(図7参照)を考慮し、全ての入射角度及び受光角度で計算することにより下層反射光成分Lruを算出することができる。ここで、屈折後の入射角度θtが小数点以下の値を有する場合はその前後の角度の値から比例配分を行うことにより補間する。このときの角度の分解能は特に制限はないが、測定装置の角度分解能限界値が1°であることから、ここでは1°とする。なお、鏡面反射光成分の算出をより正確に行うためには、この角度の分解能は1°以下であることが好ましい。
以上のように、屈折率により光が上層部分に入射する方向を求めることができる。また、上層部分で光は吸収され減衰するので、この減衰度合いを透過率から評価する。すなわち、屈折率に基づいて、空気層と上層部分で屈折し入射する光路、及び下層部分(紙)から反射され再び上層部と空気層で屈折する光路を求め、この光路に応じて、透過率より光の減衰を評価する。そして、この値に下層部分(紙)のみからなるサンプルの偏角輝度値を演算(乗算)すると下層反射光成分Lruが得られる。
次に、内部反射光成分Lriを算出するために、表面反射光成分をほとんど含まないある1つのジオメトリにおいて、サンプルの輝度値Lra(CIE1976LのL)を測定する(ステップS4)。このジオメトリを非鏡面反射ジオメトリと呼ぶ。一般的に鏡面反射のジオメトリから外れるほど表面反射光成分は小さくなるため、ここで選択される非鏡面反射ジオメトリは、光源入射角度が大きく、かつ、光源入射位置と受光位置が近いジオメトリが望ましい。
本実施の形態では、ここで選択されるジオメトリの一例として、光源入射角度θiが45°(φiは0°)、受光角度θrが−60°(φrは0°)のジオメトリを選定する。このジオメトリで測定された輝度値Lraから、同じジオメトリで算出された下層反射光成分Lruを除き、さらに表面反射光成分Lrsを0と近似した残りの反射光成分を内部反射光成分Lriとする。このようにして得られた内部反射光成分LriについてOren−Nayarモデルを用いてフィッティングを行う(ステップS5)。ここで、「フィッティング」とは、上記の選択された非鏡面反射ジオメトリで測定された輝度値Lraから算出された内部反射光成分を、Oren−Nayarモデルで表現できるように未知のパラメータを算出し、全てのジオメトリにおける内部反射光成分を求めることを意味する。
このときに用いる表面形状の粗さ変数σ(図5参照)は物理モデル上、反射光成分の広がりを定義するパラメータのため本件では特に意味をもたないので任意の定数(例えば、1や0.5など)とする。E0(図5参照)はサンプルへ入射される放射照度であるが、ここでは測定値空間をCIE1976L空間とし、Lを採用するため100πとする。これらの値からサンプル表面の微小面の反射率ρを推定する。サンプル表面の微小面の反射率ρは、物理モデル上、負の値は持たないので、正の値のみを採用する。
これらの各数値を上記式(1)にあてはめることによって、Oren−Nayarモデルが要求するパラメータを推定することができるので、Oren−Nayarモデル計算値LrONが決まる。サンプル表面の微小面の反射率ρのパラメータ推定によりOren−Nayarモデル計算値LrONの大きさもフィッティングされるために、Oren−Nayarモデル計算値LrONの特別なスケール調整を行うことなく、全てのジオメトリの内部反射光成分Lriを算出することが可能となる。つまり、ここで算出されたLrONが内部反射光成分Lriに相当する。(Lri=LrON)。
最後に表面反射光成分Lrsを算出するために、ある1つの鏡面反射ジオメトリの輝度値Lrbを測定する(ステップS6)。このジオメトリを鏡面反射ジオメトリと呼ぶ。ここで選択される鏡面反射ジオメトリは、光源入射角度が45°(φiは0°)、受光角度が45°(φrは180°)のジオメトリを選定した。なお、本発明ではこの角度に限定されない。このジオメトリで測定された輝度値Lrb(CIE1976LのL)から、同じジオメトリで算出された下層反射光成分Lru及び内部反射光成分Lriを除いた残りの反射光成分を表面反射光成分Lrsとする。このようにして得られた表面反射光成分LrsについてTorrance−Sparrowモデルを用いてフィッティングを行う(ステップS7)。ここで、「フィッティング」とは、上記の選択された鏡面反射ジオメトリで測定された輝度値Lrbから算出された表面反射光成分および色素粒子の反射光成分から、Torrance−Sparrowモデルを用いて全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分および色素粒子の反射光成分を求めることを意味する。Torrance−Sparrowモデルには推定パラメータがなく、要求パラメータを入力すればTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSが決まる。
しかし、このTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSそのままでは、表面反射光成分Lrs(=Lrb)を表現することはできず、Torrance−Sparrowモデル計算値LrTSをスケール調整する必要がある。そこで、Lrs=Lrb=k×LrTSを満たす形状パラメータkの値を算出して、表面反射光成分Lrsを再現することができるTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSの大きさを調整する。このとき、Fは鏡面反射ジオメトリの表面反射を求めるために1とする。以上より、全ての鏡面反射ジオメトリの表面反射光成分Lrsを算出することができる。
以上の工程より、個別の下層反射光成分Lru、内部反射光成分Lri及び表面反射光成分Lrsを算出できる。そして、これらの同じ鏡面反射ジオメトリでの算出値を加算することによって、鏡面反射光成分(鏡面反射光量)Lrを得ることができる(ステップS8)。
なお、上述の鏡面光沢予測方法において、S1〜S3が下層反射光成分作成工程であり、S4〜S5が内部反射光成分作成工程であり、S6〜S7が表面反射光成分作成工程であり、S8が鏡面反射光量算出工程である。
続いて、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置の構成について説明する。本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置は、図8に示すフローチャートに示す処理を行うことによって、全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を算出し、得られた鏡面反射光成分からサンプルの鏡面光沢度を予測するというものである。図1には本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置100の構成を示す。
図1に示すように、鏡面光沢予測装置100は、主要な構成部材として、演算部101、操作入力部102、記憶部103、偏角輝度測定部104を有している。演算部101は、操作入力部102から入力された上層部分(トナー画像)13の屈折率および透過率のデータ、操作入力部102で設定された非鏡面反射ジオメトリ・鏡面反射ジオメトリ、および、偏角輝度測定部104で測定されたサンプルの偏角輝度値に基づいて、サンプルの鏡面反射光成分を算出する。
演算部101内には、全てのジオメトリにおける下層反射光成分(Lru)を算出する下層反射光成分算出部(下層反射光成分作成部)111、1つの非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から内部反射光成分(Lri)を算出し、Oren−Nayarモデルを用いたフィッティングによって全てのジオメトリにおける内部反射光成分を導き出す内部反射光成分作成部112、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から表面反射光成分(Lrs)を算出し、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を導き出す表面反射光成分作成部113、上記の各部によって得られた下層反射光成分(Lru)、内部反射光成分(Lri)、表面反射光成分(Lrs)を加算することによって鏡面反射光成分(鏡面反射光量)(Lr)を算出する鏡面反射光成分算出部(鏡面反射光量算出部)114が備えられている。鏡面反射光成分算出部114では、同じ鏡面反射ジオメトリの各反射光成分同士を加算することによって、全ての鏡面反射ジオメトリにおける鏡面反射光成分を算出する。
また、内部反射光成分作成部112は、1つの非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から内部反射光成分(Lri)を算出するLri算出部141と、Oren−Nayarモデルを用いたフィッティングによって全てのジオメトリにおける内部反射光成分を導き出すLri適合部142とを有している。
また、表面反射光成分作成部113は、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から表面反射光成分(Lrs)を算出するLrs算出部131と、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を導き出すLrs適合部132とを有している。
操作入力部102は、鏡面反射光成分を求めるために必要となる各数値を入力したり、演算部101で演算された結果を示すものである。この操作入力部102は、数値などを入力を行う操作ボタン121と、操作ボタン121によって入力された情報や演算結果を表示する表示部122とから構成されている。
記憶部103は、偏角輝度測定部104での測定結果、および、演算部101での演算結果を記憶するものである。記憶部103の内部には、偏角輝度測定部104によって測定された下層部分(紙)12のみからなるサンプルの偏角輝度値を格納する第1メモリ1(LUT1)151と、演算部101内で算出された各反射光成分の値を格納する第2メモリ(LUT2)152とが備えられている。
偏角輝度測定部104は、下層部分(紙)12のみからなるサンプル、および、下層部分12と上層部分(トナー画像)13の2層構造を有するサンプルの偏角輝度を測定する。なお、偏角輝度測定部104の角度の分解能は1°であり、1°刻みで偏角輝度を測定することができる。しかしながら、鏡面光沢予測装置100を用いて鏡面光沢度を予測する場合、下層部分(紙)12のみからなるサンプルについては1°刻みで偏角輝度を測定するが、下層部分12と上層部分13からなるサンプルについては、1つの鏡面反射ジオメトリと1つの非鏡面反射ジオメトリについて偏角輝度を測定するのみでよい。
続いて、上記の鏡面光沢予測装置100を用いてサンプルの全ての鏡面反射ジオメトリにおける鏡面光沢度を予測する方法について、図1および図8を参照して説明する。
先ず、鏡面光沢成分を測定するために鏡面光沢予測装置100に入力されるサンプル(トナー画像)の上層部分の透過率および屈折率を測定する(図8のS1)。透過率Ttは、透過濃度計を用いて、トナー画像が形成されたサンプル(上層部分13と下層部分12からなるサンプル)と、下層部分(紙)12のみのサンプルについて透過濃度を測定し、これらの差分をとることによって、上層部分13のみの透過濃度Dtを測定したのち、Tt=10^(−Dt)の式から算出する。透過濃度の測定には、例えば、X−rite社製の透過濃度計X−rite820を用いることができる。
また、以下の工程で用いる上層部分(トナー画像)13の屈折率については、トナーの主成分である樹脂の屈折率(文献値)を用いる。
続いて、上記の方法によって測定されたサンプルの上層部分13の透過率及び屈折率を、操作入力部102の操作ボタン121を利用して入力する。図9には、鏡面光沢予測装置100の表示部122に表示されるデータ入力画面の一例を示す。図9に示すデータ入力画には、測定目的サンプルの上層部分の屈折率の入力項目20、透過率の入力項目21、OKボタン22、および、キャンセルボタン23が表示される。OKボタン22、および、キャンセルボタン23はタッチパネル式になっている。操作ボタン121を利用して、上記の方法によって得られた透過率および屈折率を、図9に示す表示部の屈折率の入力項目20、および、透過率の入力項目21に入力する。なお、このデータ入力画面においてキャンセルボタン23を押した場合は、このデータ入力画面から抜け出し測定モードを強制終了する。
そして、サンプルを構成している基材と同じ材質からなる基材(下層部分のみのサンプル)を、装置内の偏角輝度測定部104にセットし、OKボタン22を押す。これによって、偏角輝度測定部104では、下層部分のみのサンプルの偏角輝度(CIE1976LのL)が測定される(図8のS2)。ここで測定された偏角輝度は、記憶部103内の第1メモリ151に保存される。
偏角輝度測定部104としては、例えば、ゴニオフォトスペクトロメータGSP−2S(村上色彩社製)を用いることができる。また、この下層部分のみのサンプルの偏角輝度測定における光源入射角および受光角の角度分解能は、1°とする。そのため、第1メモリ151には、1°刻みの光源入射角および受光角で測定された偏角輝度値が、入射角度および受光角度ごとに対応付けられて格納されている。
次に、下層反射光成分算出部111は、操作入力部102から入力された上層部分の屈折率および透過率と、第1メモリ151に格納された偏角輝度値とに基づいて、上述の屈折理論および減衰理論から全てのジオメトリにおける(ここでは、分解能1°の場合を全てのジオメトリとする)下層反射光成分(Lru)を算出する(図8のS3)。算出された下層反射光成分(Lru)は、記憶部103内の第2メモリ152に保存される。
続いて、非鏡面反射ジオメトリを選択し、この非鏡面反射ジオメトリを操作入力部102から入力し、この非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値を測定する(図8のS4)。測定された偏角輝度値から、1つの非鏡面反射ジオメトリにおける内部反射光成分(Lri)を算出する。そして、ここで算出された1つの非鏡面反射ジオメトリにおける内部反射光成分(Lri)から、Oren−Nayarモデルを用いたフィッティングによって全てのジオメトリにおける内部反射光成分(Lri)を求める(図8のS5)。
さらに、鏡面反射ジオメトリを選択し、この鏡面反射ジオメトリを操作部102から入力し、鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値を測定する(図8のS6)。測定された偏角輝度値から、1つの鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)を算出する。そして、ここで算出された1つの鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)から、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)を求める(図8のS7)。
図10には、選択された非鏡面反射ジオメトリと鏡面反射ジオメトリを入力するために表示部122に表示されるデータ入力画面の一例を示す。ここでは、非鏡面反射ジオメトリと鏡面反射ジオメトリを同時に入力するようになっているが、本発明では必ずしもこれに限定されない。図10に示すデータ入力画面には、非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目30と受光角度の入力項目31、鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目32、受光角度の項目33、OKボタン34、キャンセルボタン35、および、戻るボタン36が表示される。ここで、OKボタン34、キャンセルボタン35、および、戻るボタン36はタッチパネル式になっている。なお、キャンセルボタン35を押した場合は、このデータ入力画面から抜け出し測定モードを強制終了し、戻るボタン36を押した場合は、図9に示すデータ入力画面へ戻る。
非鏡面反射ジオメトリに関する入力項目は、内部反射光成分(Lri)をフィッティングするためのジオメトリを指定し、鏡面反射ジオメトリに関する入力項目は、表面反射光成分(Lrs)をフィッティングするためのジオメトリを指定する。非鏡面反射ジオメトリの入射角度と受光角度は個別に指定する必要があるが、鏡面反射ジオメトリは入射角度と受光角度は等しいため、入射角度のみを入射角度の入力項目32に入力すれば同じ値が受光角度の項目33に表示される。
非鏡面反射ジオメトリおよび鏡面反射ジオメトリを入力し、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部104にセットした後、OKボタン34を押す。すると、上記のS4〜S7の処理が行われ、全てのジオメトリにおける下層反射光成分(Lru)、内部反射光成分(Lri)、表面反射光成分(Lrs)が算出され、これらの値が、同じジオメトリごとに対応付けられて状態で第2メモリ152に格納される。
ここで、全てのジオメトリにおける内部反射光成分(Lri)を導き出す方法について、より具体的に説明する。
まず、図10に示すようなデータ入力画面が表示された表示部122において、入力された非鏡面反射ジオメトリの入射角度および受光角度のデータは、一旦Lri算出部141に送られた後、偏角輝度測定部104へ入力される。偏角輝度測定部104では、入力されたジオメトリにおける偏角輝度(Lra)を測定し、測定値のデータをLri算出部141へ送る。
Lri算出部141では、同じジオメトリで算出された下層反射光成分(Lru)のデータを第2メモリ152内に格納されたデータの中から選択して取得し、上記偏角輝度(Lra)から上記下層反射光成分(Lru)を除く。さらに、ここでは表面反射光成分Lrsを0と近似して残りの反射光成分を内部反射光成分(Lri)とする。
このようにしてLri算出部141で算出された内部反射光成分(Lri)のデータは、Lri適合部142へ送られる。Lri適合部142では、送られた内部反射光成分(Lri)についてOren−Nayarモデルを用いてフィッティングを行う。これによって、全てのジオメトリにおける内部反射光成分(Lri)が導き出され、このデータは、第2メモリ152に保存される。
次に、全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)を導き出す方法について、より具体的に説明する。
まず、図10に示すようなデータ入力画面が表示された表示部122において、入力された鏡面反射ジオメトリの入射角度および受光角度のデータは、一旦Lrs算出部131に送られた後、偏角輝度測定部104へ入力される。偏角輝度測定部104では、入力されたジオメトリにおける偏角輝度(Lrb)を測定し、測定値のデータをLrs算出部131へ送る。
Lrs算出部131では、同じジオメトリで算出された下層反射光成分(Lru)のデータ、および、同じジオメトリで測定された内部反射光成分(Lri)のデータを、第2メモリ152内に格納されたデータの中から選択して取得し、上記偏角輝度(Lrb)から上記下層反射光成分(Lru)および上記内部反射光成分(Lri)を除く。
このようにしてLrs算出部131で算出された表面反射光成分(Lrs)のデータは、Lrs適合部132へ送られる。Lrs適合部132では、送られた表面反射光成分(Lrs)についてTorrance−Sparrowモデルを用いてフィッティングを行う。これによって、全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)が導き出され、このデータは、第2メモリ152に保存される。
以上のような処理を行うことによって、第2メモリ152には、全ての鏡面反射ジオメトリにおける下層反射光成分(Lru)、内部反射光成分(Lri)、表面反射光成分(Lrs)が、ジオメトリごとに対応付けられて格納される。そこで、鏡面反射光成分算出部114では、同じ鏡面反射ジオメトリでの各反射光成分を加算する。これによって、全ての鏡面反射ジオメトリにおける鏡面反射光成分Lrを得ることができる(図8のS8)。
そして、ここで得られた鏡面反射光成分Lrの測定結果のデータは、操作入力部102に送られ、表示部122にて表示される。図11には、このときに表示部122において表される測定結果の画面の一例を示す。
図11に示すように、鏡面反射光成分Lrを測定した後、表示部122には、鏡面反射光成分Lrのグラフ40、鏡面反射ジオメトリの入力項目41、入力項目41に入力したジオメトリの鏡面反射光成分Lrの計算結果42、光沢度閾値の入力項目46、入力項目46に入力した閾値を示す鏡面反射ジオメトリの計算結果47、OKボタン43、キャンセルボタン44及び戻るボタン45が表示される。鏡面反射光成分Lrのグラフ40には、入射角度を10°〜80°まで変化させたときの全ての鏡面反射光成分Lrを一覧できるグラフが表示される。そのため、このグラフ40からサンプルの鏡面反射光成分の角度依存特性を知ることができる。このグラフ40に示す結果は、第2メモリ152に保存されている全ての鏡面反射ジオメトリの下層反射光成分Lru、内部反射光成分Lri、表面反射光成分Lrsを、鏡面反射光成分算出部114にて加算したものである。
また、上記鏡面光沢予測装置100では、図11に示す鏡面反射ジオメトリの入力項目41に任意の角度を入力し、OKボタン43を押すことによって、入力された角度の鏡面反射光成分の値を得ることもできる。ここで得られたこのときの計算値は、鏡面反射光成分Lrのグラフ40の1点に等しい。
一方、光沢度閾値の入力項目46に所望の鏡面反射光成分(ここでは、輝度値に相当する)を入力し、OKボタン43を押すことによって、入力された鏡面反射光成分となる角度が計算結果47に表示される。この計算結果から、入力された鏡面反射光成分以上を有する角度は、ここで得られた角度以上のものが該当することがわかる。つまり、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置100によれば、全ての鏡面反射ジオメトリについての鏡面反射光成分を算出することができるため、どのような鏡面反射ジオメトリ(入射及び受光角度)とした場合に一定以上の鏡面反射光成分値を示すのかということを確認することができる。これは、光沢度の新しい評価基準として有効である。
なお、図11に示す結果画面において、キャンセルボタン44を押した場合は、この結果画面から抜け出し測定モードを強制終了し、戻るボタン45を押した際場合は図10に示すデータ入力画面へ戻る。
また、上記の方法によって予測された鏡面反射光成分値をJIS規格の光沢度へ変換する場合は、標準サンプルとして指定されている標準板(屈折率1.567のガラス板)の値をもとに相対値を求め、光沢度を算出すればよい。
なお、上記の鏡面光沢予測装置100は、コンピュータシステムを用いて実現してもよい。図12には、鏡面光沢予測装置100の機能を有するコンピュータシステム300の構成を示す。
このコンピュータシステム300は、フラットベッドスキャナ・フィルムスキャナ・デジタルカメラなどの画像入力装置301、所定のプログラム(アプリケーションソフトウエア303)がロードされることにより画像処理方法など様々な処理が行われるコンピュータ302、コンピュータ302の処理結果を表示するCRTディスプレイ・液晶ディスプレイなどの画像表示装置304、コンピュータ302の処理結果を紙などに出力するプリンタなどの画像出力装置305より構成される。さらには、ネットワークを介してサーバーなどに接続するための通信手段306としてのネットワークカードやモデム、偏角輝度値を測定するための偏角輝度測定装置307としてのゴニオフォトスペクトロメータ、コンピュータ302に目的とする処理を行わせるために情報の入力を行うキーボード・マウス308、プログラム・データなどを記憶する外部の記憶手段としての外部記憶装置309などが備えられる。
上記のコンピュータシステム300において、本発明の鏡面光沢予測を実施する場合には、コンピュータ302が演算部101としての機能を果たし、偏角輝度測定装置307が偏角輝度測定部104としての機能を果たし、キーボード・マウス308が操作ボタン121としての機能を果たし、画像表示装置304が表示部122としての機能を果たす。また、記憶部103については、外部記憶装置309内に設けられてもよいし、コンピュータ302内に設けられてもよい。
なお、上記実施形態の鏡面光沢予測装置100の演算部101内に備えられた各部11〜114や演算部101が行う各処理工程は、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態の鏡面光沢予測装置100の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、外部記憶装置309としてプログラム読取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読取り可能なプログラムメディアであってもよい。
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等がある。
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施形態について図13ないし図19に基づいて説明すると以下の通りである。上述の実施の形態1では、サンプルを構成する色材層が染料インク、顔料インク、トナーなど色素粒子の大きさを特に限定することなく適用することのできる鏡面光沢予測方法について説明したが、本実施の形態では、色材層に含まれる色素粒子の径が比較的大きい場合(すなわち、色素粒子が顔料インクやトナーなどの顔料である場合)に、試料の鏡面光沢成分をより高精度に算出する鏡面光沢予測方法および鏡面光沢予測装置について説明する。上記顔料としては、顔料インク、トナーなどが挙げられる。
まず、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置において、サンプルの鏡面光沢度の予測に用いられる2色性反射(BRDF)モデル理論について説明する。またここでは、上記BRDFモデルを、基材および顔料であるトナーを色素粒子として含む色材層という2層構造を有する試料の反射光成分を算出する場合に適用する方法について説明する。
図14には、2層構造を有する試料の反射光成分の分割手法を模式的に示す。図14に示すように、サンプル23は、トナー画像(色材層)からなる上層部分34と紙や透過フィルムなどの基材からなる下層部分33とから構成される。2色性反射(BRDF)モデル理論によれば、上層部分34からの表面反射光成分(Lrss)27および内部反射光成分35、下層部分33からの表面反射光成分30および内部反射光成分31が、光源6からの各反射光成分として挙げられ、これらの複合光がサンプル23からの反射光となる。さらに本実施の形態では、上層部分34からの内部反射光成分35は、色素粒子から直接反射される反射光成分(Lrsp)28と色素粒子間の散乱による拡散反射光成分(Lrd)29に分けることができる。それぞれの反射光成分27〜31をBRDFモデルによって算出するためには、測定不可能であるパラメータを複数推定する必要がある。
しかしながら、下層部分33からの内部反射光成分31を測定することは困難であるため、本発明では下層部分33からの表面反射光成分30と内部反射光成分31を複合和反射光成分として考慮し、下層反射光成分(Lru)32として取り扱う。下層部分33のみの実測データを基にこの下層反射光成分32を算出することによって、様々な画像サンプルにおける正確な鏡面反射光量をBRDFモデルによって算出することを実現する。これにより、上層部分34からの表面反射光成分27、色素粒子の反射光成分28、拡散反射光成分29及び下層反射光成分32を算出すれば、正確な鏡面反射光量を得ることが可能となる。
本発明において、各反射光成分を算出するための算出式モデルとして有効なBRDFモデルとしては、上記実施の形態1において示した(1)Wardモデル、(2)Phongモデル、(3)Oren−Nayarモデル、(4)Torrance−Sparrowモデルに示す各モデルが挙げられる。
上記の各算出式モデルのうち、光の等方散乱を前提として提案されているのが、Wardモデル、Phongモデルであり、光の非等方散乱を前提として提案されているのが、Oren−Nayarモデル、Torrance−Sparrowモデルである。計算式は複雑になるが、光の非等方散乱を含んだ方が正確な値を算出することができるため、本実施の形態では、表面反射光成分27および色素粒子の反射光成分28を算出するための算出式モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いており、色素粒子間の散乱による拡散反射光成分29を算出するための算出式モデルとしてOren−Nayarモデルを用いている。
なお、図5には、BRDFモデルにおける幾何学的配置を示し、図6には、BRDFモデルにおける物体表面の幾何学的定義を示す。
Oren−Nayarモデルを用いて拡散反射光成分Lrdを算出する場合、まず、下記の式(1)によってOren−Nayarモデル計算値LrONを算出する。
Figure 2006153846
上記の式において、θiは光源方向の天頂角、φiは光源方向の方位角、θrは受光方向の天頂角、φrは受光方向の方位角、σは表面形状の粗さ変数、E0はサンプルへ入射される放射照度、ρはサンプル表面の微小面の反射率、α=max[θr, θi]、β=min[θr, θi]である(図5、図6参照)。なお、このLrONの算出式は、実施の形態1で用いたものと同じである。
また、表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspを、Torrance−Sparrowモデルを用いて、それぞれのTorrance−Sparrowモデル計算値LrTS(すなわち、LrTSsおよびLrTSp)として、下記の式(2)から算出する。
Figure 2006153846
上記の式において、Fはフレネルの反射率、nはサンプル3の法線ベクトル、sは光源方向ベクトル、vは受光方向ベクトル、aはsとvの2等分ベクトル、θrは受光方向の天頂角、θaはベクトルaの天頂角、φaはベクトルaの方位角、σは表面形状の粗さ変数、E0はサンプルへ入射される放射照度である。また、上記の式において、<x,y>(x、yは任意の数)はベクトルの内積を示す(図5、図6参照)。なお、このLrTSの算出式は、実施の形態1で用いたものと同じである。
続いて、上記の手法を用いて所定のジオメトリにおける輝度の測定値から全てのジオメトリの鏡面反射光量を算出する方法について、図13のフローチャートに基づいて説明する。
まず、下層反射光成分Lruを算出するために、鏡面反射光成分を算出したいサンプルの上層部分(トナー画像)34のみの透過率を算出する(ステップS11)。ここでの測定ジオメトリは、光源、サンプル、受光器が一直線上に設置されたものである。このようなジオメトリで、サンプルの真上から光源を入射し、サンプルの真下に設置した受光器によって受光される光を、サンプルを透過した光として透過濃度計により計測する。そして、トナー画像が形成されたサンプル(上層部分34と下層部分33からなるサンプル)と下層部分(紙)33のみのサンプルの差分を取ることにより、上層部分34のみの透過濃度Dtを得ることができ、上層部分34(すなわち、トナー画像)のみの透過率TtはTt=10^(−Dt)から算出することができる。
また、以下の工程で用いる上層部分(トナー画像)13の屈折率については、トナーの主成分である樹脂の屈折率(文献値)を用いる。
次に、上層部分34が存在しないサンプル、つまり下層部分33のみのサンプル、本実施の形態の場合は、トナー画像を印字する前の紙や透過フィルムを用意し、この下層部分33のみのサンプルの光源入射方向及び受光方向を高分解能とした偏角輝度値を測定する(ステップS12)。なお、ここでは、測定値空間をCIE1976L(CIE: Commission International de l’Eclairage :国際照明委員会。L: 明度、a、b: 色度)空間とするため、上記偏角輝度値としてLの値を採用する。
これらのデータから下層反射光成分Lruを算出する(ステップS13)。図15は下層反射光成分Lruを算出する時に考慮する光の屈折現象および光量の減衰を概念的に示す模式図である。サンプルへθiの角度で入射した光は空気層36と上層部分34の界面で屈折現象を生じる。この屈折現象はフレネル理論に従い、屈折後の角度θtはフレネルの法則(入射前媒体の屈折率をn1、入射後媒体の屈折率をn2とすると、n1×sinθi=n2×sinθt)により求まる。屈折現象によりトナー層を通過する光は界面で減衰し、そのフレネル透過率Tnは式(3)により表される。
Figure 2006153846
また、上層部分34中を光が通過する際、上層部分34によって光が減衰して下層部分33にまで到達する。その減衰効果はBeer-Lambertの法則(色材層の吸収係数をa、色材層の厚みをd、透過率をTとすると、−logT=a×d)に従う。入射角度が変化することにより、下層部分33まで光が到達するまでに上層部分34を光が通過する光路長が変化する。そこで、この光路長変化に応じた見かけ上の透過率Tt’を計算すると、−logTt’=a×(d/cosθi)となり、この見かけ上の透過率により光の減衰を評価する。
以上から、屈折現象によって下層部分33への光の入射角度が変化した上に、フレネル透過率Tn及び光路長変化に応じた見かけ上の透過率Tt’を用いて、光量の減衰を評価することにより、下層部分33へ到達する光の入射光量が算出できる。このような光学的現象は下層部分33からの反射光が空気層へ放射される場合も同様に生じる。よって、S12で測定した下層部分(紙)のみからなるサンプルの偏角輝度値に、上記のような2回の光の屈折現象及び光の減衰効果(図15参照)を考慮し、全ての入射角度及び受光角度で計算することにより下層反射光成分Lruを算出することができる。ここで、屈折後の入射角度θtが小数点以下の値を有する場合はその前後の角度の値から比例配分を行うことにより補間する。このときの角度の分解能は特に制限はないが、測定装置の角度分解能限界値が1°であることから、ここでは1°とする。なお、鏡面反射光成分の算出をより正確に行うためには、この角度の分解能は1°以下であることが好ましい。
次に、拡散反射光成分Lrdを算出するために、表面反射光成分をほとんど含まないある1つのジオメトリにおいて、サンプルの輝度値Lra(CIE1976LのL)を測定する(ステップS14)。このジオメトリを非鏡面反射ジオメトリと呼ぶ。一般的に鏡面反射のジオメトリから外れるほど表面反射光成分は小さくなるため、ここで選択される非鏡面反射ジオメトリは、光源入射角度が大きく、かつ、光源入射位置と受光位置が近いジオメトリが望ましい。本実施の形態では、ここで選択されるジオメトリの一例として、光源入射角度θiが45°(φiは0°)、受光角度θrが−60°(φrは0°)のジオメトリを選定する。
次に、サンプルのトナー画像の濃度分布を測定し、測定値からその粗さ変数σpを算出する(ステップS15)。粗さ変数σpの具体的な算出方法については後述する。
続いて、S14で測定された輝度値Lraから、同じジオメトリで算出された下層反射光成分Lruを除き、さらに表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspを0と近似した残りの反射光成分を拡散反射光成分Lrdとする。このようにして得られた拡散反射光成分LrdについてOren−Nayarモデルを用いてフィッティングを行う(ステップS16)。ここで、「フィッティング」とは、上記の選択された非鏡面反射ジオメトリで測定された輝度値Lraから算出された内部反射光成分を、Oren−Nayarモデルで表現できるように未知のパラメータを算出し、全てのジオメトリにおける内部反射光成分を求めることを意味する。
なお、このときに用いる濃度分布の粗さ変数σ(図5参照)は、上記のS15で測定したサンプルの濃度分布に基づいて算出された粗さ変数σpを採用する。E0(図5参照)はサンプルへ入射される放射照度であるが、ここでは測定値空間をCIE1976L空間とし、Lを採用するため100πとする。これらの値からサンプル表面の微小面の反射率ρを推定する。サンプル表面の微小面の反射率ρは、物理モデル上、負の値は持たないので、正の値のみを採用する。
これらの各数値を上記式(1)にあてはめることによって、Oren−Nayarモデルが要求するパラメータを推定することができるので、Oren−Nayarモデル計算値LrONが決まる。サンプル表面の微小面の反射率ρのパラメータ推定によりOren−Nayarモデル計算値LrONの大きさもフィッティングされるために、Oren−Nayarモデル計算値LrONの特別なスケール調整を行うことなく、全てのジオメトリの拡散反射光成分Lrdを算出することが可能となる。つまり、ここで算出されたLrONが拡散反射光成分Lrdに相当する。(Lrd=LrON)。
次に、表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspを算出するために、ある1つの鏡面反射ジオメトリの輝度値Lrbを測定する(ステップS17)。このジオメトリを鏡面反射ジオメトリと呼ぶ。ここで選択される鏡面反射ジオメトリは、光源入射角度が45°(φiは0°)、受光角度が45°(φrは180°)のジオメトリを選定した。なお、本発明ではこの角度に限定されない。
続いて、サンプルのトナー画像の濃度分布を測定し、測定値からその粗さ変数σpを算出する。また、サンプルの表面形状を測定し、測定値からその粗さ変数σsを算出する(ステップS18)。なお、濃度分布の粗さ変数σpについては、S15で算出したものを用いてもよい。表面形状の粗さ変数σsの具体的な算出方法については後述する。
次に、S17で測定された輝度値Lrb(CIE1976LのL)から、同じジオメトリで算出された下層反射光成分Lru及び拡散反射光成分Lrdを除いた残りの反射光成分を表面反射光成分Lrssと色素粒子の反射光成分Lrspとの複合成分とする。
そして、表面反射光成分Lrssと色素粒子の反射光成分LrspそれぞれについてTorrance−Sparrowモデルを用いて、モデル計算値LrTSを算出する(ステップS19)。
なお、このときに用いるTorrance−Sparrowモデルの粗さ変数σは、物理モデル上反射光成分の広がりを定義するパラメータであるので、表面反射光成分Lrssの場合は、S18で求めた表面形状の粗さ変数σsを採用し、色素粒子の反射光成分Lrspの場合は、S18で求めた濃度分布の粗さ変数σを採用する。E0(図5参照)は、Oren−Nayarモデルと同様に100πとする。Fは、鏡面反射ジオメトリの表面反射を求めるために1とする。Torrance−Sparrowモデルには推定パラメータがなく、要求パラメータを入力すればTorrance−Sparrowモデル計算値LrTS(つまり、表面反射光成分LrssのTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSs、および、色素粒子の反射光成分LrspのTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSp)が決まる。
次に、上記のモデル計算値LrTSsおよびLrTSpから、それぞれの配分を求め、測定した輝度値となるようにフィッティングを行う(ステップS20)。つまり、Lrb=k×LrTSs+(1−k)×LrTSpを満たす形状パラメータkを算出して、表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspの配分割合を決定する。これによって、全ての鏡面反射ジオメトリの表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspを算出することができる。
以上の工程より、個別の下層反射光成分Lru、拡散反射光成分Lrd、表面反射光成分Lrss、および、色素粒子の反射光成分Lrspを算出できる。そして、これらの同じ鏡面反射ジオメトリでの算出値を加算することによって、鏡面反射光成分(鏡面反射光量)Lrを得ることができる(ステップS21)。
上述の鏡面光沢予測方法は、あらゆる画像(低光沢画像、低濃度画像など)を想定したため、測定サンプルを上層部分と下層部分に分離することを前提にしている。しかしながら、特殊な測定サンプルの場合(高濃度かつ高光沢なサンプル)はこれに限らず、上層部分のみの反射光成分(表面反射光成分Lrss、色素粒子の反射光成分Lrsp及び拡散反射光成分Lrd)のみを用いて鏡面反射光成分Lrを算出してもかまわない。なぜならこの場合は、下層反射光成分Lruは少ないため鏡面反射光成分Lrへの影響は小さくなるためである。
なお、上述の鏡面光沢予測方法において、S11〜S13が下層反射光成分作成工程であり、S14〜S16が内部反射光成分作成工程であり、S17〜S19が表面反射光成分作成工程であり、S19が形状パラメータ算出工程であり、S20が鏡面反射光量算出工程である。
続いて、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置の構成について説明する。本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置は、図13に示すフローチャートに示す処理を行うことによって、全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を算出し、得られた鏡面反射光成分からサンプルの鏡面光沢度を予測するというものである。図16には本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置200の構成を示す。
図16に示すように、鏡面光沢予測装置200は、主要な構成部材として、演算部201、操作入力部202、記憶部203、偏角輝度測定部204を有している。
演算部201は、操作入力部202から入力された上層部分(トナー画像)34の屈折率および透過率、サンプルの濃度分布の粗さ変数、サンプルの表面形状の粗さ変数のデータ、操作入力部202で設定された非鏡面反射ジオメトリ・鏡面反射ジオメトリ、および、偏角輝度測定部204で測定されたサンプルの偏角輝度値に基づいて、サンプルの鏡面反射光成分を算出する。
演算部201内には、全てのジオメトリにおける下層反射光成分(Lru)を算出する下層反射光成分算出部(下層反射光成分作成部)211、1つの非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から内部反射光成分を算出し、Oren−Nayarモデルを用いたフィッティングによって全てのジオメトリにおける内部反射光成分の一つである拡散反射光成分(Lrd)を導き出す拡散反射光成分作成部(内部反射光成分作成部)262、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から表面反射光成分(Lrss)を算出し、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を導き出す表面反射光成分作成部213、上記の各部によって得られた各反射光成分を加算することによって鏡面反射光成分(Lr)を算出する鏡面反射光成分算出部(鏡面反射光量算出部)214が備えられている。鏡面反射光成分算出部114では、同じ鏡面反射ジオメトリの各反射光成分同士を加算することによって、全ての鏡面反射ジオメトリにおける鏡面反射光成分を算出する。
本実施の形態では、内部反射光成分35は、色素粒子の反射光成分(Lrsp)28と拡散反射光成分(Lrd)29とに分けられて考えられ、色素粒子の反射光成分(Lrsp)は、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から色素粒子の反射光成分(Lrsp)から算出される。そのため、演算部201内には、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から色素粒子の反射光成分(Lrsp)を算出し、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける色素粒子の反射光成分(Lrsp)を作成するための色素粒子反射光成分作成部261がさらに備えられている。
なお、図示していないが、色素粒子反射光成分作成部261は、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から色素粒子の反射光成分を算出するLrsp算出部と、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける色素粒子の反射光成分を導き出すLrsp適合部とから構成されている。また、拡散反射光成分作成部262は、図示はしていないが、1つの非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から拡散反射光成分を算出するLrd算出部と、Oren−Nayarモデルを用いたフィッティングによって全てのジオメトリにおける拡散反射光成分を導き出すLrd適合部とから構成されている。
また、表面反射光成分作成部113は、図示はしていないが、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から表面反射光成分(Lrss)を算出するLrss算出部と、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を導き出すLrss適合部とから構成されている。
本実施の形態では、1つの鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定値を、表面反射光成分(Lrss)と色素粒子反射光成分(Lrsp)とに配分している。そのため、演算部201内には、表面反射光成分(Lrss)と色素粒子反射光成分(Lrsp)との配分割合を決定する形状パラメータ算出部215がさらに設けられている。
操作入力部202は、鏡面反射光成分を求めるために必要となる各数値を入力したり、演算部201で演算された結果を示すものである。この操作入力部202は、数値などを入力を行う操作ボタン221と、操作ボタン221によって入力された情報や演算結果を表示する表示部222とから構成されている。
記憶部203は、偏角輝度測定部204での測定結果、および、演算部201での演算結果を記憶するものである。記憶部203の内部には、偏角輝度測定部204によって測定された下層部分(紙)33のみからなるサンプルの偏角輝度値を格納する第1メモリ1(LUT1)251と、演算部201内で算出された各反射光成分の値を格納する第2メモリ(LUT2)252とが備えられている。
偏角輝度測定部204は、下層部分(紙)33のみからなるサンプル、および、下層部分33と上層部分(トナー画像)34の2層構造を有するサンプルの偏角輝度を測定する。なお、偏角輝度測定部204の角度の分解能は1°であり、1°刻みで偏角輝度を測定することができる。しかしながら、鏡面光沢予測装置200を用いて鏡面光沢度を予測する場合、下層部分(紙)33のみからなるサンプルについては1°刻みで偏角輝度を測定するが、下層部分33と上層部分34からなるサンプルについては、1つの鏡面反射ジオメトリと1つの非鏡面反射ジオメトリについて偏角輝度を測定するのみでよい。
続いて、上記の鏡面光沢予測装置200を用いてサンプルの全ての鏡面反射ジオメトリにおける鏡面光沢度を予測する方法について、図13および図16を参照して説明する。
先ず、鏡面光沢成分を測定するために鏡面光沢予測装置200に入力されるサンプル(トナー画像)の上層部分の透過率および屈折率を測定する(図11のS1)。透過率Ttは、透過濃度計を用いて、トナー画像が形成されたサンプル(上層部分34と下層部分33からなるサンプル)と、下層部分(紙)33のみのサンプルについて透過濃度を測定し、これらの差分をとることによって、上層部分34のみの透過濃度Dtを測定したのち、Tt=10^(−Dt)の式から算出する。透過濃度の測定には、例えば、X−rite社製の透過濃度計X−rite820を用いることができる。
また、以下の工程で用いる上層部分(トナー画像)13の屈折率については、トナーの主成分である樹脂の屈折率(文献値)を用いる。
続いて、形状測定顕微鏡VK−9500(KEYENCE社製)を用いてトナー層表面の形状測定を行い、取得した高さ情報(サンプルをXY平面とした場合のZ軸方向のデータ)を基にトナー表面の粗さ変数の算出を行う。隣接する画素との高さ情報からトナー層表面の微小面の傾きを算出し、この微小面の傾きのヒストグラムを作成後、2σ(データの約95.5%)の範囲内で微小面傾きの標準偏差を求め、色材層の表面形状の粗さ変数σsとする。
一方、CCDカメラCS−3910(東京電子工業社製)及び光量出力200Wの透過用光源を用いてサンプルの透過画像を取得し、その透過画像データから濃度分布の粗さ変数の算出を行う。CCDカメラと透過用光源の間にサンプルを設置(サンプルをXY平面とした場合のZ軸方向にCCDカメラと透過用光源を設置)し、透過画像を取得する。得られた透過画像の各画素の濃度からヒストグラムを作成後、2σ(データの約95.5%)の範囲内で透過濃度の標準偏差を求め、濃度分布の粗さ変数σpとする。
なお、このサンプルの濃度分布の粗さ変数σp、および、表面形状の粗さ変数σsの測定は、図13のフローチャートではS15、S17において実行しているが、本鏡面光沢予測装置200において鏡面光沢の評価を行う場合には、上記のように予め別の装置で測定しておき、透過率および屈折率と同時に入力する。
そして、上記の方法によって測定されたサンプルの上層部分34の透過率、各粗さ変数σpおよびσs、屈折率を、操作入力部202の操作ボタン221を利用して入力する。図17には、鏡面光沢予測装置200の表示部222に表示されるデータ入力画面の一例を示す。図17に示すデータ入力画には、測定目的サンプルの上層部分の屈折率の入力項目50、透過率の入力項目51、表面形状の粗さ変数の入力項目52、濃度分布の粗さ変数の入力項目53、OKボタン54、および、キャンセルボタン55が表示される。OKボタン54、および、キャンセルボタン55はタッチパネル式になっている。操作ボタン221を利用して、上記の方法によって得られた屈折率、透過率、各粗さ変数σpおよびσsを、図17に示す表示部の屈折率の入力項目50、透過率の入力項目51、表面形状の粗さ変数の入力項目52、および、濃度分布の粗さ変数の入力項目53に入力する。なお、このデータ入力画面においてキャンセルボタン55を押した場合は、このデータ入力画面から抜け出し測定モードを強制終了する。
そして、サンプルを構成している基材と同じ材質からなる基材(下層部分のみのサンプル)を、装置内の偏角輝度測定部204にセットし、OKボタン54を押す。これによって、偏角輝度測定部204では、下層部分のみのサンプルの偏角輝度(CIE1976LのL)が測定される(図13のS12)。ここで測定された偏角輝度は、記憶部203内の第1メモリ251に保存される。
偏角輝度測定部204としては、例えば、ゴニオフォトスペクトロメータGSP−2S(村上色彩社製)を用いることができる。また、この下層部分のみのサンプルの偏角輝度測定における光源入射角および受光角の角度分解能は、1°とする。そのため、第1メモリ251には、1°刻みの光源入射角および受光角度で測定された偏角輝度値が、入射角度および受光角度ごとに対応付けられて格納されている。
次に、下層反射光成分算出部211は、操作入力部202から入力された上層部分の屈折率および透過率と、第1メモリ251に格納された偏角輝度値とに基づいて、上述の屈折理論および減衰理論から全てのジオメトリにおける(ここでは、分解能1°の場合を全てのジオメトリとする)下層反射光成分(Lru)を算出する(図13のS13)。算出された下層反射光成分(Lru)は、記憶部203内の第2メモリ252に保存される。
続いて、非鏡面反射ジオメトリを選択し、この非鏡面反射ジオメトリを操作入力部202から入力し、この非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値を測定する(図13のS14)。測定された偏角輝度値から、1つの非鏡面反射ジオメトリにおける拡散反射光成分(Lrd)を算出する。そして、ここで算出された1つの非鏡面反射ジオメトリにおける拡散反射光成分(Lrd)から、Oren−Nayarモデルを用いたフィッティングによって全てのジオメトリにおける拡散反射光成分(Lrd)を求める(図13のS16)。なお、ここでの拡散反射光成分(Lrd)の算出に用いられる濃度分布の粗さ変数σは、操作入力部202から予め入力されたサンプルの濃度分布の粗さ変数σpである。
さらに、鏡面反射ジオメトリを選択し、この鏡面反射ジオメトリを操作部202から入力し、鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値を測定する(図13のS17)。測定された偏角輝度値から、1つの鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を算出する(図13のS19)。つまり、表面反射光成分LrssのTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSs、および、色素粒子の反射光成分LrspのTorrance−Sparrowモデル計算値LrTSpを算出する。なお、ここでの色素粒子の反射光成分(Lrsp)の算出に用いられる濃度分布の粗さ変数σは、操作入力部202から予め入力されたサンプルの濃度分布の粗さ変数σpである。また、ここでの表面反射光成分(Lrss)の算出に用いられる表面形状の粗さ変数σは、操作入力部202から予め入力されたサンプルの表面形状の粗さ変数σsである。
そして、ここで算出された1つの鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)から、Torrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングによって全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrs)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を求める(図13のS20)。つまり、形状パラメータ算出部215が、上記のモデル計算値LrTSsおよびLrTSpから、それぞれの配分を求め、この配分に基づいて、全ての鏡面反射ジオメトリの表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspを算出する。
図18には、選択された非鏡面反射ジオメトリと鏡面反射ジオメトリを入力するために表示部222に表示されるデータ入力画面の一例を示す。ここでは、非鏡面反射ジオメトリと鏡面反射ジオメトリを同時に入力するようになっているが、本発明では必ずしもこれに限定されない。図18に示すデータ入力画面には、非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目60と受光角度の入力項目61、鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目62、受光角度の項目63、OKボタン64、キャンセルボタン65、および、戻るボタン66が表示される。ここで、OKボタン64、キャンセルボタン65、および、戻るボタン66はタッチパネル式になっている。なお、キャンセルボタン65を押した場合は、このデータ入力画面から抜け出し測定モードを強制終了し、戻るボタン66を押した場合は、図17に示すデータ入力画面へ戻る。
非鏡面反射ジオメトリに関する入力項目は、拡散反射光成分(Lrd)をフィッティングするためのジオメトリを指定し、鏡面反射ジオメトリに関する入力項目は、表面反射光成分(Lrss)およびをフィッティングするためのジオメトリを指定する。非鏡面反射ジオメトリの入射角度と受光角度は個別に指定する必要があるが、鏡面反射ジオメトリは入射角度と受光角度は等しいため、入射角度のみを入射角度の入力項目62に入力すれば同じ値が受光角度の項目63に表示される。
非鏡面反射ジオメトリおよび鏡面反射ジオメトリを入力し、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部204にセットした後、OKボタン64を押す。すると、上記のS14〜S20(但し、S15、S17は予め外部の装置で行われているため除く)の処理が行われ、全てのジオメトリにおける下層反射光成分(Lru)、拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrss)、および、色素粒子の反射光成分(Lrsp)が算出され、これらの値が、同じジオメトリごとに対応付けられて状態で第2メモリ252に格納される。
ここで、全てのジオメトリにおける拡散反射光成分(Lrd)を導き出す方法について、より具体的に説明する。
まず、図18に示すようなデータ入力画面が表示された表示部222において、入力された非鏡面反射ジオメトリの入射角度および受光角度のデータは、一旦Lrd算出部(図示せず)に送られた後、偏角輝度測定部204へ入力される。偏角輝度測定部204では、入力されたジオメトリにおける偏角輝度(Lra)を測定し、測定値のデータをLrd算出部へ送る。
Lrd算出部では、同じジオメトリで算出された下層反射光成分(Lru)のデータを第2メモリ252内に格納されたデータの中から選択して取得し、上記偏角輝度(Lra)から上記下層反射光成分(Lru)を除く。さらに、ここでは拡散反射光成分Lrdを0と近似して残りの反射光成分を拡散反射光成分(Lrd)とする。
このようにしてLrd算出部で算出された拡散反射光成分(Lrd)のデータは、Lrd適合部(図示せず)へ送られる。Lrd適合部では、送られた拡散反射光成分(Lrd)についてOren−Nayarモデルを用いてフィッティングを行う。これによって、全てのジオメトリにおける内部反射光成分(Lrd)が導き出され、このデータは、第2メモリs52に保存される。
次に、全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrss)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を導き出す方法について、より具体的に説明する。
まず、図18に示すようなデータ入力画面が表示された表示部222において、入力された鏡面反射ジオメトリの入射角度および受光角度のデータは、一旦Lrss算出部(図示せず)およびLrsp算出部(図示せず)に送られた後、偏角輝度測定部204へ入力される。偏角輝度測定部204では、入力されたジオメトリにおける偏角輝度(Lrb)を測定し、測定値のデータをLrss算出部およびLrsp算出部へ送る。
Lrss算出部では、同じジオメトリで算出された下層反射光成分(Lru)のデータ、および、同じジオメトリで算出された拡散反射光成分(Lrd)のデータを、第2メモリ252内に格納されたデータの中から選択して取得し、上記偏角輝度(Lrb)から上記下層反射光成分(Lru)および上記拡散反射光成分(Lrd)を除き、Torrance−Sparrowモデルを用いて、モデル計算値(LrTSs)を算出する。
また、Lrsp算出部においても、同じジオメトリで算出された下層反射光成分(Lru)のデータ、および、同じジオメトリで算出された拡散反射光成分(Lrd)のデータを、第2メモリ252内に格納されたデータの中から選択して取得し、上記偏角輝度(Lrb)から上記下層反射光成分(Lru)および上記拡散反射光成分(Lrd)を除き、Torrance−Sparrowモデルを用いて、モデル計算値(LrTSp)を算出する。
さらに、形状パラメータ算出部215では、算出された上記モデル計算値(LrTSs)および(LrTSp)と、偏角輝度(Lrb)とから、Lrb=k×LrTSs+(1−k)×LrTSpを満たす形状パラメータkを算出して、表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspの配分割合を決定する。これによって、1つの鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrss)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)が決定する。
以上のようにして算出された表面反射光成分(Lrss)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)のデータは、Lrss適合部(図示せず)あるいはLrsp適合部(図示せず)へそれぞれ送られる。Lrss適合部およびLrsp適合部では、送られた表面反射光成分(Lrss)あるいは色素粒子の反射光成分(Lrsp)についてTorrance−Sparrowモデルを用いてフィッティングを行う。これによって、全ての鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分(Lrss)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)が導き出され、このデータは、第2メモリ252に保存される。
以上のような処理を行うことによって、第2メモリ252には、全ての鏡面反射ジオメトリにおける下層反射光成分(Lru)、拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrss)、および、色素粒子の反射光成分(Lrsp)が、ジオメトリごとに対応付けられて格納される。そこで、鏡面反射光成分算出部214では、同じ鏡面反射ジオメトリでの各反射光成分を加算する。これによって、全ての鏡面反射ジオメトリにおける鏡面反射光成分Lrを得ることができる(図13のS21)。
そして、ここで得られた鏡面反射光成分Lrの測定結果のデータは、操作入力部202に送られ、表示部222にて表示される。図19には、このときに表示部222において表される測定結果の画面の一例を示す。
図19に示すように、鏡面反射光成分Lrを測定した後、表示部222には、鏡面反射光成分Lrのグラフ70、鏡面反射ジオメトリの入力項目71、入力項目71に入力したジオメトリの鏡面反射光成分Lrの計算結果72、光沢度閾値の入力項目73、入力項目73に入力した閾値を示す鏡面反射ジオメトリの計算結果74、OKボタン75、キャンセルボタン76及び戻るボタン77が表示される。鏡面反射光成分Lrのグラフ70には、入射角度を10°〜80°まで変化させたときの全ての鏡面反射光成分Lrを一覧できるグラフが表示される。そのため、このグラフ70からサンプルの鏡面反射光成分の角度依存特性を知ることができる。このグラフ70に示す結果は、第2メモリ252に保存されている全ての鏡面反射ジオメトリの下層反射光成分Lru、拡散反射光成分Lrd、表面反射光成分Lrss、および、色素粒子の反射光成分Lrspを、鏡面反射光成分算出部214にて加算したものである。
また、上記鏡面光沢予測装置200では、図19に示す鏡面反射ジオメトリの入力項目71に任意の角度を入力し、OKボタン75を押すことによって、入力された角度の鏡面反射光成分の値を得ることもできる。ここで得られたこのときの計算値は、鏡面反射光成分Lrのグラフ70の1点に等しい。
一方、光沢度閾値の入力項目73に所望の鏡面反射光成分(ここでは、輝度値に相当する)を入力し、OKボタン75を押すことによって、入力された鏡面反射光成分となる角度が計算結果74に表示される。この計算結果から、入力された鏡面反射光成分以上を有する角度は、ここで得られた角度以上のものが該当することがわかる。つまり、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置200によれば、全ての鏡面反射ジオメトリについての鏡面反射光成分を算出することができるため、どのような鏡面反射ジオメトリ(入射及び受光角度)とした場合に一定以上の鏡面反射光成分値を示すのかということを確認することができる。これは、光沢度の新しい評価基準として有効である。
なお、図19に示す結果画面において、キャンセルボタン76を押した場合は、この結果画面から抜け出し測定モードを強制終了し、戻るボタン77を押した際場合は図18に示すデータ入力画面へ戻る。
また、上記の方法によって予測された鏡面反射光成分値をJIS規格の光沢度へ変換する場合は、標準サンプルとして指定されている標準板(屈折率1.567のガラス板)の値をもとに相対値を求め、光沢度を算出すればよい。
なお、上記の鏡面光沢予測装置200は、コンピュータシステムを用いて実現してもよい。このコンピュータシステムとしては、例えば実施の形態1で説明したコンピュータシステム300(図12参照)と同様の構成のものを採用することができる。
なお、上記実施形態の鏡面光沢予測装置200の演算部201内に備えられた各部21〜215や演算部201が行う各処理工程は、実施の形態1と同様に、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態の鏡面光沢予測装置200の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
〔実施の形態3〕
本発明の第3の実施形態について図24から図28に基づいて説明すると以下の通りである。上述の実施の形態1では、サンプルを構成する色材層が染料インク、顔料インク、トナーなど色素粒子の大きさを特に限定することなく適用することのできる鏡面光沢予測方法について説明したが、本実施の形態では、実施の形態2と同様に、色材層に含まれる色素粒子の径が比較的大きい場合(すなわち、色素粒子が顔料インクやトナーなどの顔料である場合)に、試料の鏡面光沢成分をより高精度に算出する鏡面光沢予測方法および鏡面光沢予測装置について説明する。上記顔料としては、顔料インク、トナーなどが挙げられる。なお、本実施の形態では、上記所定のジオメトリとして、1つの鏡面反射ジオメトリと2つの非鏡面反射ジオメトリとを選択して、これらのジオメトリにおける偏角輝度値を測定する点が上述の実施の形態1および2と異なっている。
まず、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置において、サンプルの鏡面光沢度の予測に用いられる2色性反射(BRDF)モデル理論について説明する。またここでは、上記BRDFモデルを、基材および顔料であるトナーを色素粒子として含む色材層という2層構造を有する試料の反射光成分を算出する場合に適用する方法について説明する。
図14には、2層構造を有する試料の反射光成分の分割手法を模式的に示す。図14に示すように、サンプル23は、トナー画像(色材層)からなる上層部分34と紙や透過フィルムなどの基材からなる下層部分33とから構成される。2色性反射(BRDF)モデル理論によれば、上層部分34からの表面反射光成分(Lrss)27および内部反射光成分35、下層部分33からの表面反射光成分30および内部反射光成分31が、光源6からの各反射光成分として挙げられ、これらの複合光がサンプル23からの反射光となる。さらに本実施の形態では、上層部分34からの内部反射光成分35は、色素粒子から直接反射される反射光成分(Lrsp)28と色素粒子間の散乱による拡散反射光成分(Lrd)29に分けることができる。それぞれの反射光成分27〜31をBRDFモデルによって算出するためには、測定不可能であるパラメータを複数推定する必要がある。
しかしながら、下層部分33からの内部反射光成分31を測定することは困難であるため、本発明では下層部分33からの表面反射光成分30と内部反射光成分31を複合和反射光成分として考慮し、下層反射光成分(Lru)32として取り扱う。下層部分33のみの実測データを基にこの下層反射光成分32を算出することによって、様々な画像サンプルにおける正確な鏡面反射光量をBRDFモデルによって算出することを実現する。これにより、上層部分34からの表面反射光成分27、色素粒子の反射光成分28、拡散反射光成分29および下層反射光成分32を算出すれば、正確な鏡面反射光量を得ることが可能となる。
本発明において、各反射光成分を算出するための算出式モデルとして有効なBRDFモデルとしては、上記実施の形態1において示した(1)Wardモデル、(2)Phongモデル、(3)Oren−Nayarモデル、(4)Torrance−Sparrowモデルに示す各モデルが挙げられる。
上記の各算出式モデルのうち、光の等方散乱を前提として提案されているのが、Wardモデル、Phongモデルであり、光の非等方散乱を前提として提案されているのが、Oren−Nayarモデル、Torrance−Sparrowモデルである。計算式は複雑になるが、光の非等方散乱を含んだ方が正確な値を算出することができるため、本実施の形態では、表面反射光成分27および色素粒子の反射光成分28を算出するための算出式モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いており、色素粒子間の散乱による拡散反射光成分29を算出するための算出式モデルとしてOren−Nayarモデルを用いている。
なお、図5には、BRDFモデルにおける幾何学的配置を示し、図6には、BRDFモデルにおける物体表面の幾何学的定義を示す。
Oren−Nayarモデルを用いて拡散反射光成分Lrdを算出する場合、まず、下記の式(1)によってOren−Nayarモデル計算値LrONを算出する。
Figure 2006153846
上記の式において、θiは光源方向の天頂角、φiは光源方向の方位角、θrは受光方向の天頂角、φrは受光方向の方位角、σは表面形状の粗さ変数、E0はサンプルへ入射される放射照度、ρはサンプル表面の微小面の反射率、α=max[θr, θi]、β=min[θr, θi]である(図5、図6参照)。なお、このLrONの算出式は、実施の形態1,2で用いたものと同じである。
また、表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspを、Torrance−Sparrowモデルを用いて、それぞれのTorrance−Sparrowモデル計算値LrTS(すなわち、LrTSsおよびLrTSp)として、下記の式(2)から算出する。
Figure 2006153846
上記の式において、Fはフレネルの反射率、nはサンプル23の法線ベクトル、sは光源方向ベクトル、vは受光方向ベクトル、aはsとvの2等分ベクトル、θrは受光方向の天頂角、θaはベクトルaの天頂角、φaはベクトルaの方位角、σは表面形状の粗さ変数、E0はサンプルへ入射される放射照度である。また、上記の式において、<x,y>(x、yは任意の数)はベクトルの内積を示す(図5、図6参照)。なお、このLrTSの算出式は、実施の形態1,2で用いたものと同じである。
続いて、上記の手法を用いて所定のジオメトリにおける輝度の測定値から全てのジオメトリの鏡面反射光量を算出する方法について、図24のフローチャートに基づいて説明する。
まず、下層反射光成分Lruを算出するために、鏡面反射光成分を算出したいサンプルの上層部分(トナー画像)34のみの透過率を算出する(ステップS21)。ここでの測定ジオメトリは、光源、サンプル、受光器が一直線上に設置されたものである。このようなジオメトリで、サンプルの真上から光源を入射し、サンプルの真下に設置した受光器によって受光される光を、サンプルを透過した光として透過濃度計により計測する。ここでは、透過濃度計によって、トナー画像が形成されたサンプル(上層部分34と下層部分33からなるサンプル)と下層部分(紙)33のみのサンプルとについて計測し、前者と後者との差分を取ることにより、上層部分34のみの透過濃度Dtを得ることができる。なお、上層部分34(すなわち、トナー画像)のみの透過率TtはTt=10^(−Dt)から算出することができる。
また、以下の工程で用いる上層部分(トナー画像)34の屈折率については、トナーの主成分である樹脂の屈折率(文献値)を用いる。
次に、上層部分34が存在しないサンプル、つまり下層部分33のみのサンプル、本実施の形態の場合は、トナー画像を印字する前の紙や透過フィルムを用意し、この下層部分33のみのサンプルの光源入射方向及び受光方向を高分解能とした偏角輝度値を測定する(ステップS22)。なお、ここでは、測定値空間をCIE1976L(CIE: Commission International de l’Eclairage :国際照明委員会。L: 明度、a、b: 色度)空間とするため、上記偏角輝度値としてLの値を採用する。このときの角度の分解能に特に制限はないが、一般的な測定装置の角度分解能限界値が1°であることから、本実施形態では1°とする。すなわち、本実施形態では、図5に示す各角度を1°ずつずらした全ジオメトリについて偏角輝度値を測定する。なお、鏡面反射光成分の算出をより正確に行うためには、この角度の分解能は1°以下であることが好ましい。
そして、これらのデータから、全てのジオメトリにおける下層反射光成分Lruを算出する(ステップS23)。図15は下層反射光成分Lruを算出する時に考慮する光の屈折現象および光量の減衰を概念的に示す模式図である。サンプルへθiの角度で入射した光は空気層36と上層部分34の界面で屈折現象を生じる。この屈折現象はフレネル理論に従い、屈折後の角度θtはフレネルの法則(入射前媒体の屈折率をn1、入射後媒体の屈折率をn2とすると、n1×sinθi=n2×sinθt)により求まる。屈折現象によりトナー層を通過する光は界面で減衰し、そのフレネル透過率Tnは式(3)により表される。
Figure 2006153846
また、上層部分34中を光が通過する際、上層部分34によって光が減衰して下層部分33にまで到達する。その減衰効果はBeer-Lambertの法則(色材層の吸収係数をa、色材層の厚みをd、透過率をTとすると、−logT=a×d)に従う。入射角度が変化することにより、下層部分33に光が到達するまでに上層部分34を光が通過する光路長が変化する。そこで、この光路長変化に応じた見かけ上の透過率Tt’を計算すると、−logTt’=a×(d/cosθi)となり、この見かけ上の透過率により光の減衰を評価する。
以上から、屈折現象によって下層部分33への光の入射角度が変化した上に、フレネル透過率Tn及び光路長変化に応じた見かけ上の透過率Tt’を用いて、光量の減衰を評価することにより、下層部分33へ到達する光の入射光量が算出できる。このような光学的現象は下層部分33からの反射光が空気層へ放射される場合も同様に生じる。よって、S22で測定した下層部分(紙)のみからなるサンプルの偏角輝度値に、上記のような2回の光の屈折現象及び光の減衰効果(図15参照)を考慮し、全ての入射角度及び受光角度で計算することにより下層反射光成分Lruを算出することができる。ここで、屈折後の入射角度θtが小数点以下の値を有する場合はその前後の角度の値から比例配分を行うことにより補間する。このときの角度の分解能は特に制限はないが、測定装置の角度分解能限界値が1°であることから、ここでは1°とする。なお、鏡面反射光成分の算出をより正確に行うためには、この角度の分解能は1°以下であることが好ましい。
次に、表面反射光成分をほとんど含まないある1つのジオメトリにおいて、サンプルの輝度値Lra(CIE1976LのL)を測定する(ステップS24)。このジオメトリを第1非鏡面反射ジオメトリと呼ぶ。一般的に鏡面反射のジオメトリから外れるほど表面反射光成分は小さくなるため、ここで選択される第1非鏡面反射ジオメトリは、光源入射角度が大きく、かつ、光源入射位置と受光位置とが近いジオメトリが望ましい。本実施の形態では、第1非鏡面反射ジオメトリの一例として、光源入射角度θiが45°(φiは0°)、受光角度θrが−60°(φrは0°)のジオメトリを選定する。
さらに、表面反射光成分を少し含むある1つのジオメトリにおいて、サンプルの輝度値Lrc(CIE1976LのL)を測定する(ステップS25)。このジオメトリを第2非鏡面反射ジオメトリと呼ぶ。ここで選択される第2非鏡面反射ジオメトリは、第1非鏡面反射ジオメトリと鏡面反射ジオメトリとの間に位置し、かつ、いずれのジオメトリにも近すぎないほぼ中間のジオメトリであることが望ましい。本実施の形態では、第2非鏡面反射ジオメトリの一例として、光源入射角度θiが45°(φiは0°)、受光角度θrが0°(φrは0°)のジオメトリを選定する。
そして、ある1つの鏡面反射ジオメトリにおいて、サンプルの輝度値Lrb(CIE1976LのL)を測定する(ステップS26)。このジオメトリを鏡面反射ジオメトリと呼ぶ。ここで選択される鏡面反射ジオメトリは、光源入射角度が45°(φiは0°)、受光角度が45°(φrは180°)のジオメトリを選定した。なお、本発明ではこの角度に限定されない。
次に、サンプルのトナー画像の濃度分布を測定し、測定値からその粗さ変数σpを算出する(ステップS27)。続いて、また、サンプルの表面形状を測定し、測定値からその粗さ変数σsを算出する(ステップS28)。粗さ変数σp及び表面形状の粗さ変数σsの具体的な算出方法については後述する。
続いて、S24で測定された輝度値Lra、S25で測定された輝度値Lrc、及びS26で測定された輝度値Lrbに、Torrance−Sparrowモデル及びOren−Nayarモデルを用いてフィッティングを行う(ステップS29)。このフィッティング過程について、以下詳述する。
上述したLra、Lrb、Lrcは何れも、表面反射光成分Lrssと、色素粒子反射光成分Lrspと、拡散反射光成分Lrdと、下層反射光成分Lruとの和である。よって、Lra、Lrb、またはLrcからLruを除いた成分は何れも、LrssとLrspとLrdとの和(すなわち上層反射光成分)に相当する。
ここで、上層反射光成分(すなわち、LrssとLrspとLrdとの和)に含まれる表面反射光成分と色素粒子反射光成分と拡散反射光成分との配分割合を決定するために、パラメータkss、ksp、およびkdを導入する。ただし、
kss+ksp+kd=1 ・・・・(4)
である。この場合、上層反射光成分は、Torrance−Sparrowモデル及びOren−Nayarモデルを用いて次の式(5)
Lrss+Lrsp+Lrd=kss×LrTSs+ksp×LrTSp+kd×LrON ・・・・(5)
のように表すことができる。ただし、式(5)において、LrTSsは表面反射光成分LrssのTorrance−Sparrowモデル計算値であり、LrTSpは色素粒子反射光成分LrspのTorrance−Sparrowモデル計算値であり、LrONは拡散反射光成分LrdのOren−Nayarモデル計算値である。
なお、このときに用いるTorrance−Sparrowモデルの粗さ変数σは、物理モデル上反射光成分の広がりを定義するパラメータであるので、表面反射光成分Lrssの場合は、ステップS28で求めた表面形状の粗さ変数σsを採用し、色素粒子の反射光成分Lrspの場合は、ステップS27で求めた濃度分布の粗さ変数σpを採用する。また、Oren−Nayarモデルの粗さ変数σには、ステップS27で求めた濃度分布の粗さ変数σpを採用する。E0(図5参照)はサンプルへ入射される放射照度であるが、ここでは測定値空間をCIE1976L空間とし、Lを採用するため100πとする。Fは、鏡面反射ジオメトリの表面反射を求めるために1とする。
そして、式(5)の左辺に、測定したLraから、ステップS23で算出された第1非鏡面ジオメトリにおけるLruを除いた成分(すなわち、Lra−Lru)を代入し、右辺の各モデル式に、第1非鏡面ジオメトリに対応するθi、θr、φi、φrを代入して、式(6)を作成する。
同様に、式(5)の左辺に、測定したLrcから、ステップS23で算出された第2非鏡面ジオメトリにおけるLruを除いた成分(すなわち、Lrc−Lru)を代入し、右辺の各モデル式に、第2非鏡面ジオメトリに対応するθi、θr、φi、φrを代入して、式(7)を作成する。
さらに、式(5)の左辺に、測定したLrbから、ステップS23で算出された鏡面ジオメトリにおけるLruを除いた成分(すなわち、Lrb−Lru)を代入し、右辺の各モデル式に、鏡面ジオメトリに対応するθi、θr、φi、φrを代入して、式(8)を作成する。
そして、式(6)〜(8)と式(4)とを解くことによって、Oren−Nayarモデルにおける未知のパラメータρと、配分割合を示すパラメータkss、ksp、kdを決定する(ステップS29)。なお、サンプル表面の微小面の反射率ρは、物理モデル上、負の値は持たないので、正の値のみを採用する(ρ>0)。
以上のようにして決定されたOren−Nayarモデルにおけるパラメータρおよび配分割合を示すパラメータkss、ksp、kdを用いることによって、全てのジオメトリにおける表面反射光成分Lrss、色素粒子反射光成分Lrsp、および拡散反射光成分Lrdを算出する(ステップS30)。
より詳細には、
Lrss=kss×LrTSs
Lrsp=ksp×LrTSp
Lrd =kd×LrON
であり、上記の各式に含まれるモデル計算式に、全てのジオメトリに対応するθi、θr、φi、φrを代入することによって、全てのジオメトリにおける上層表面反射光成分Lrss、色素粒子反射光成分Lrsp、および拡散反射光成分Lrdを算出する。
そして、同一のジオメトリにおけるステップ23で求めた下層反射光成分LruならびにステップS30で求めた上層表面反射光成分Lrss、色素粒子反射光成分Lrsp、および拡散反射光成分Lrdを加算することによって、鏡面反射光成分(鏡面反射光量)Lrを求めることができる。この鏡面反射光成分Lrは全てのジオメトリについて求める(ステップS31)。
なお、上述した実施の形態2では、拡散反射光成分Lrdの計算(ステップS16)の際に、Lrss及びLrspをともに0と近似したのに対して、本実施の形態ではこのような近似を用いていない。これにより、本実施の形態では、より精確に各反射光成分ならびに鏡面反射光量を求めることができるようになっている。
上述の鏡面光沢予測方法は、あらゆる画像(低光沢画像、低濃度画像など)を想定したため、測定サンプルを上層部分と下層部分に分離することを前提にしている。しかしながら、特殊な測定サンプルの場合(高濃度かつ高光沢なサンプル)はこれに限らず、上層部分のみの反射光成分(表面反射光成分Lrss、色素粒子の反射光成分Lrsp及び拡散反射光成分Lrd)のみを用いて鏡面反射光成分Lrを算出してもかまわない。なぜならこの場合は、下層反射光成分Lruは少ないため鏡面反射光成分Lrへの影響は小さくなるためである。
また、本実施の形態では、ステップS31においてあらゆるジオメトリにおける鏡面反射光成分Lrを算出するために、ステップS22において全てのジオメトリにおける偏角輝度値を測定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ある1つの所望のジオメトリにおける鏡面反射光成分のみを算出したい場合、ステップS22では、所望のジオメトリ、第1非鏡面反射ジオメトリ、第2非鏡面反射ジオメトリ、及び鏡面反射ジオメトリのそれぞれに対応する各ジオメトリにおける偏角輝度値を測定すれば十分である。なお、「所望のジオメトリ、第1非鏡面ジオメトリ、第2非鏡面ジオメトリ、及び鏡面ジオメトリのそれぞれに対応する各ジオメトリ」とは、上層部分34における屈折率を考慮したジオメトリであって、より詳細には、所望のジオメトリ、第1非鏡面ジオメトリ、第2非鏡面ジオメトリ、および鏡面ジオメトリのそれぞれにおいて試料に光線を入射させ、反射した光線を受光部によって測定する際に、実際に下層部分33に光線が入射する入射角度で、かつ、受光部に入射する光が下層部分33において反射した反射角度からなるジオメトリのことをいう。また、この場合、ステップS30、S31においても、所望のジオメトリにおける各反射光成分を算出すればよい。このことは、上述した実施の形態1および2についても同様である。
なお、上述の鏡面光沢予測方法において、ステップS21〜S23が下層反射光成分作成工程であり、ステップS24〜S30が上層反射光成分作成工程であり、ステップS31が鏡面反射光量算出工程である。
続いて、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置の構成について説明する。本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置は、図24に示すフローチャートに示す処理を行うことによって、全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を算出し、得られた鏡面反射光成分からサンプルの鏡面光沢度を予測するというものである。図25には本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置400の構成を示す。
図25に示すように、鏡面光沢予測装置400は、主要な構成部材として、演算部401、操作入力部402、記憶部403、偏角輝度測定部404を有している。
演算部401は、操作入力部402から入力された上層部分(トナー画像)34の屈折率および透過率、サンプルの濃度分布の粗さ変数、サンプルの表面形状の粗さ変数のデータ、操作入力部402で設定された第1非鏡面反射ジオメトリ・第2非鏡面反射ジオメトリ・鏡面反射ジオメトリ、および、偏角輝度測定部404で測定されたサンプルの偏角輝度値に基づいて、サンプルの鏡面反射光成分を算出する。
より詳細には、演算部401内には、下層反射光成分(Lru)を算出する下層反射光成分算出部(下層反射光成分作成部)411、拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrss)、および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を算出する上層反射光成分算出部(上層反射光成分作成部)412、鏡面反射光成分(Lr)を算出する鏡面反射光成分算出部(鏡面反射光量算出部)414が備わっている。
下層反射光成分算出部411は、操作入力部402から入力された各種データおよび偏角輝度測定部404によって測定された下層部分のみの偏角輝度値に基づいて、全てのジオメトリにおける下層反射光成分(Lru)を算出する。
また、鏡面反射光成分算出部414は、同一のジオメトリについて下層反射光成分算出部411および上層反射光成分算出部412によって算出された各反射光成分を加算することによって、そのジオメトリにおける鏡面反射光成分(Lr)を算出する。なお、本実施の形態において、鏡面反射光成分算出部414は、全てのジオメトリにおける鏡面反射光成分を算出する。
上層反射光成分算出部412は、1つの鏡面ジオメトリおよび2つの非鏡面ジオメトリにおける下層部分のみの偏角輝度値の測定結果に基づいて、拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrss)、および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を全てのジオメトリについて算出する。より詳細には、上層反射光成分算出部412は、形状パラメータ算出部(パラメータ算出部)415および反射光成分算出部416を含んでおり、形状パラメータ算出部415は、1つの鏡面反射ジオメトリ及び2つの非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値の測定結果から、上述したOren−Nayarモデルにおける未知のパラメータρ、および上層反射光成分に含まれる拡散反射光成分、表面反射光成分、色素粒子の反射光成分の配分割合を示すkss、ksp、kdを算出し、反射光成分算出部は、パラメータρ、kss、ksp、kdを用いて、全てのジオメトリにおける拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrss)、および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を算出する。
操作入力部402は、鏡面反射光成分を求めるために必要となる各数値を入力したり、演算部401で演算された結果を示すものである。この操作入力部402は、数値などの入力を行う操作ボタン421と、操作ボタン421によって入力された情報や演算結果を表示する表示部422とから構成されている。
記憶部403は、偏角輝度測定部404での測定結果、および、演算部401での演算結果を記憶するものである。記憶部403の内部には、偏角輝度測定部404によって測定された下層部分(紙)33のみからなるサンプルの偏角輝度値を格納する第1メモリ(LUT1)451と、演算部401内で算出された各反射光成分の値を格納する第2メモリ(LUT2)452とが備えられている。
偏角輝度測定部404は、下層部分(紙)33のみからなるサンプル、および、下層部分33と上層部分(トナー画像)34の2層構造を有するサンプルの偏角輝度を測定する。なお、偏角輝度測定部404の角度の分解能は1°であり、1°刻みで偏角輝度を測定することができる。しかしながら、鏡面光沢予測装置400を用いて鏡面光沢度を予測する場合、下層部分(紙)33のみからなるサンプルについては1°刻みで偏角輝度を測定するが、下層部分33と上層部分34からなるサンプルについては、1つの鏡面反射ジオメトリと2つの非鏡面反射ジオメトリについて偏角輝度を測定するのみでよい。
続いて、上記の鏡面光沢予測装置400を用いてサンプルの全ての鏡面反射ジオメトリにおける鏡面光沢度を予測する方法について、図24および図25を参照して説明する。
先ず、鏡面光沢成分を測定するために鏡面光沢予測装置400に入力されるサンプル(トナー画像)の上層部分の透過率を予め透過濃度計によって測定しておく(図24のS1)。透過率Ttは、透過濃度計を用いて、トナー画像が形成されたサンプル(上層部分34および下層部分33からなるサンプル)と、下層部分(紙)33のみのサンプルとについて透過濃度を測定し、これらの差分をとることによって、上層部分34のみの透過濃度Dtを測定し、その後、Tt=10^(−Dt)の式から算出する。透過濃度の測定には、例えば、X−rite社製の透過濃度計X−rite820を用いることができる。
なお、上層部分34の透過率の算出は、図24のフローチャートではS21において実行しているが、本鏡面光沢予測装置400において鏡面光沢の評価を行う場合には、上記のように予め別の装置で測定しておき、操作入力部402から入力する。
続いて、形状測定顕微鏡VK−9500(KEYENCE社製)などを用いてトナー層表面の形状測定を行い、取得した高さ情報(サンプルをXY平面とした場合のZ軸方向のデータ)を基にトナー表面の粗さ変数の算出を行う。隣接する画素との高さ情報からトナー層表面の微小面の傾きを算出し、この微小面の傾きのヒストグラムを作成後、2σ(データの約95.5%)の範囲内で微小面傾きの標準偏差を求め、色材層の表面形状の粗さ変数σsとする。
一方、CCDカメラCS−3910(東京電子工業社製)及び光量出力200Wの透過用光源などを用いてサンプルの透過画像を取得し、その透過画像データから濃度分布の粗さ変数の算出を行う。CCDカメラと透過用光源の間にサンプルを設置(サンプルをXY平面とした場合のZ軸方向にCCDカメラと透過用光源を設置)し、透過画像を取得する。得られた透過画像の各画素の濃度からヒストグラムを作成後、2σ(データの約95.5%)の範囲内で透過濃度の標準偏差を求め、濃度分布の粗さ変数σpとする。
なお、このサンプルの濃度分布の粗さ変数σp、および、表面形状の粗さ変数σsの測定は、図24のフローチャートではS27、S28において実行しているが、本鏡面光沢予測装置400において鏡面光沢の評価を行う場合には、上記のように予め別の装置で測定しておき、透過率および屈折率と同時に入力する。
そして、上記の方法によって測定されたサンプルの上層部分34の透過率、各粗さ変数σpおよびσs、及び屈折率を、操作入力部402の操作ボタン421を利用して入力する。図26には、鏡面光沢予測装置400の表示部422に表示されるデータ入力画面の一例を示す。図27に示すデータ入力画面には、測定目的サンプルの上層部分の屈折率の入力項目R20、透過率(Tt)の入力項目R21、表面形状の粗さ変数(σs)の入力項目R22、濃度分布の粗さ変数(σp)の入力項目R23、OKボタンR24、および、キャンセルボタンR25が表示される。OKボタンR24、および、キャンセルボタンR25はタッチパネル式になっている。操作ボタン421を利用して、上記の方法によって得られた屈折率、透過率Tt、各粗さ変数σpおよびσsを、図26に示す表示部の屈折率の入力項目R20、透過率の入力項目R21、表面形状の粗さ変数の入力項目R22、および、濃度分布の粗さ変数の入力項目R23に入力する。なお、このデータ入力画面においてキャンセルボタンR25を押した場合は、このデータ入力画面から抜け出し測定モードを強制終了する。
そして、サンプルを構成している基材と同じ材質からなる基材(下層部分のみのサンプル)を、装置内の偏角輝度測定部404にセットし、OKボタンR24を押す。これによって、偏角輝度測定部404では、下層部分のみのサンプルの偏角輝度(CIE1976LのL)が測定される(図24のS22)。ここで測定された偏角輝度は、記憶部403内の第1メモリ451に保存される。
偏角輝度測定部404としては、例えば、ゴニオフォトスペクトロメータGSP−2S(村上色彩社製)を用いることができる。また、この下層部分のみのサンプルの偏角輝度測定における光源入射角および受光角の角度分解能は、1°とする。そのため、第1メモリ451には、1°刻みの光源入射角および受光角度で測定された偏角輝度値が、入射角度および受光角度ごとに対応付けられて格納されている。
次に、下層反射光成分算出部411は、操作入力部402から入力された上層部分の屈折率および透過率と、第1メモリ451に格納された偏角輝度値とに基づいて、上述の屈折理論および減衰理論から全てのジオメトリにおける(ここでは、分解能1°の場合を全てのジオメトリとする)下層反射光成分(Lru)を算出する(図8のS23)。算出された下層反射光成分(Lru)は、記憶部403内の第2メモリ452に保存される。
次に、第1非鏡面反射ジオメトリを選択し、第1非鏡面反射ジオメトリの入射角度および受光角度を操作入力部402から入力する。その結果、偏角輝度測定部404が、第1非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値Lraを測定する(図8のS24)。続いて、第2非鏡面反射ジオメトリを選択し、第2非鏡面反射ジオメトリの入射角度および受光角度を操作入力部402から入力し、この非鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値Lrcを測定する(図24のS25)。そして、さらに鏡面反射ジオメトリを選択し、この鏡面反射ジオメトリの入射角度および受光角度を操作入力部402から入力し、鏡面反射ジオメトリにおける偏角輝度値Lrbを測定する(図24のS26)。
図27に、選択された第1非鏡面反射ジオメトリ、第2非鏡面反射ジオメトリ、および鏡面反射ジオメトリを入力するために表示部422に表示されるデータ入力画面の一例を示す。ここでは、第1非鏡面反射ジオメトリ、第2非鏡面反射ジオメトリ、および鏡面反射ジオメトリを同時に入力するようになっているが、本発明では必ずしもこれに限定されない。図27に示すデータ入力画面には、第1非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目R30と受光角度の入力項目R31、第2非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目R37と受光角度の入力項目R38、鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目R32、受光角度の項目R33、OKボタンR34、キャンセルボタンR35、および、戻るボタンR36が表示される。ここで、OKボタンR34、キャンセルボタンR35、および戻るボタンR36はタッチパネル式になっている。なお、キャンセルボタンR35を押した場合は、このデータ入力画面から抜け出し測定モードを強制終了し、戻るボタンR36を押した場合は、図27に示すデータ入力画面へ戻る。
なお、第1非鏡面反射ジオメトリおよび第2非鏡面反射ジオメトリの入射角度と受光角度は個別に指定する必要があるが、鏡面反射ジオメトリは入射角度と受光角度とが等しいため、入射角度のみを入射角度の入力項目R32に入力すれば同じ値が受光角度の項目R33に表示され、設定される。
このようにして、第1非鏡面反射ジオメトリ、第2非鏡面反射ジオメトリ、および鏡面反射ジオメトリを入力し、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部404にセットした後、OKボタンR34を押すと、上述した各ジオメトリにおける偏角輝度値Lra、Lrb、Lrcの測定が行われる。
そして、測定された各ジオメトリにおける偏角輝度値Lra、Lrb、Lrcは、上層反射光成分算出部412に送られる。上層反射光成分算出部412は、受け取った偏角輝度値Lra、Lrb、Lrcに基づいて、Oren−NayarモデルおよびTorrance−Sparrowモデルを用いたフィッティングを行い、全てのジオメトリにおける拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrs)および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を算出する(ステップS29、S30)。
より詳細に説明すると以下の通りである。まず、偏角輝度測定部404によって測定された偏角輝度値が、上層反射光成分算出部412の形状パラメータ算出部415に送られる。また、形状パラメータ算出部415は、第1非鏡面反射ジオメトリ、第2非鏡面反射ジオメトリ、鏡面反射ジオメトリにおける下層反射光成分Lruを第2メモリ452から取得する。また、操作入力部402から、粗さ変数σpおよびσsが形状パラメータ算出部415に送られる。そして、形状パラメータ算出部415は、上述した方法によってフィッティングを行い、Oren−Nayarモデルにおける微小面の反射率を表すパラメータρならびに拡散反射光成分、表面反射光成分、および色素粒子の反射光成分の配分割合を表すパラメータkss、ksp、kdを算出する(ステップS29)。
求められたρ、kss、ksp、kdは、形状パラメータ算出部415から反射光成分算出部416に送られ、反射光成分算出部416は、全てのジオメトリについて、上述した方法によって拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrs)、および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を算出する(ステップS30)。そして、反射光成分算出部416は、求めた各反射光成分をジオメトリごとに対応付けて第2メモリ452に格納する。
その後、鏡面反射光成分算出部414は、それぞれのジオメトリごとに、第2メモリ452から下層反射光成分(Lru)、拡散反射光成分(Lrd)、表面反射光成分(Lrs)、および色素粒子の反射光成分(Lrsp)を取得し、これらの各成分を加算することによって鏡面反射光成分(Lr)を算出する(ステップS31)。なお、本実施の形態において、鏡面反射光成分(Lr)は全てのジオメトリについて算出される。そして、算出された全てのジオメトリにおける鏡面反射光成分(Lr)は、操作入力部402の表示部422に送られ、表示部422によってユーザに結果が通知される。このときに表示部422において表される測定結果の画面の一例を図28に示す。
図28に示すように、鏡面反射光成分Lrを算出した後、表示部422には、鏡面反射光成分LrのグラフR40、鏡面反射ジオメトリの入力項目R41、入力項目R41に入力したジオメトリの鏡面反射光成分Lrの計算結果R42、光沢度閾値の入力項目R46、入力項目R46に入力した閾値を示す鏡面反射ジオメトリの計算結果R47、OKボタンR43、キャンセルボタンR44及び戻るボタンR45が表示される。鏡面反射光成分LrのグラフR40には、入射角度を10°〜80°まで変化させたときの全ての鏡面反射光成分Lrを一覧できるグラフが表示される。そのため、ユーザは、このグラフR40からサンプルの鏡面反射光成分の角度依存特性を知ることができる。このグラフR40に示す結果は、第2メモリ452に保存されている全ての鏡面反射ジオメトリの下層反射光成分Lru、拡散反射光成分Lrd、表面反射光成分Lrss、および、色素粒子の反射光成分Lrspを、鏡面反射光成分算出部414にて加算したものである。
また、上記鏡面光沢予測装置400では、図28に示す鏡面反射ジオメトリの入力項目R41に任意の角度を入力し、OKボタンR43を押すことによって、入力された角度の鏡面反射光成分の値を得ることもできる。ここで得られたこのときの計算値は、鏡面反射光成分LrのグラフR40上の1点のデータに等しい。
一方、光沢度閾値の入力項目R46に所望の鏡面反射光成分(ここでは、輝度値に相当する)を入力し、OKボタンR43を押すことによって、入力された鏡面反射光成分となる角度が計算結果R47に表示される。この計算結果から、入力された鏡面反射光成分以上を有する角度は、ここで得られた角度以上のものが該当することがわかる。つまり、本実施の形態にかかる鏡面光沢予測装置400によれば、全ての鏡面反射ジオメトリについての鏡面反射光成分を算出することができるため、どのような鏡面反射ジオメトリ(入射及び受光角度)とした場合に一定以上の鏡面反射光成分値を示すのかということを確認することができる。これは、光沢度の新しい評価基準として有効である。
なお、図28に示す結果画面において、キャンセルボタンR44を押した場合は、この結果画面から抜け出し測定モードを強制終了し、戻るボタンR45を押した際場合は図27に示すデータ入力画面へ戻る。
また、上記の方法によって予測された鏡面反射光成分値をJIS規格の光沢度へ変換する場合は、標準サンプルとして指定されている標準板(屈折率1.567のガラス板)の値を基に相対値を求め、光沢度を算出すればよい。
なお、上記の鏡面光沢予測装置400は、コンピュータシステムを用いて実現してもよい。このコンピュータシステムとしては、例えば実施の形態1で説明したコンピュータシステム300(図12参照)と同様の構成のものを採用することができる。
なお、上記実施形態の鏡面光沢予測装置400の演算部401内に備えられた下層反射光成分算出部411、上層反射光成分算出部412、鏡面反射光成分算出部414や、演算部401が行う各処理工程は、実施の形態1と同様に、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態の鏡面光沢予測装置400の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1〕
本実施例では、基材であるコート紙上に高濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態1にかかる鏡面光沢予測装置100を用いて鏡面光沢の評価を行った。
まず、図9に示すデータ入力画面の屈折率の入力項目20に1.55と入力し、透過率の入力項目21に6.4%と入力するとともに、偏角輝度測定部104にコート紙のみのサンプルをセットし、偏角輝度測定を行った。続いて、図10に示すデータ入力画面の非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目30に45°と入力し、受光角度の入力項目31に−60°と入力し、鏡面反射ジオメトリの入射角の入力項目32に45°と入力するとともに、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部104にセットし、偏角輝度測定を行った。
その結果、図11のグラフ40に表示されたグラフを図20(a)に示す。図20(a)に示すグラフでは、横軸が鏡面反射ジオメトリの入射及び受光角度であり、縦軸が鏡面反射光成分を輝度値(CIE1976LのL)として表したものである。なお、本実施例では、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。図20(a)のグラフには、本発明の手法を用いて計算した結果が実線で示し、実測した結果を点線で示す。図に示すように、この2つの結果はほぼ同じ挙動を示しており、本発明の手法の精度が高いことがわかった。
〔実施例2〕
本実施例では、基材であるコート紙上に低濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態1にかかる鏡面光沢予測装置100を用いて鏡面光沢の評価を行った。
まず、図9に示すデータ入力画面の屈折率の入力項目20に1.55と入力し、透過率の入力項目21に15%と入力するとともに、偏角輝度測定部104にコート紙のみのサンプルをセットし、偏角輝度測定を行った。続いて、図10に示すデータ入力画面の非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目30に45°と入力し、受光角度の入力項目31に−60°と入力し、鏡面反射ジオメトリの入射角の入力項目32に45°と入力するとともに、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部104にセットし、偏角輝度測定を行った。
その結果、図11のグラフ40に表示されたグラフを図20(b)に示す。図20(b)に示すグラフでは、横軸が鏡面反射ジオメトリの入射及び受光角度であり、縦軸が鏡面反射光成分を輝度値(CIE1976LのL)として表したものである。なお、本実施例では、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。図20(b)のグラフには、本発明の手法を用いて計算した結果が実線で示し、実測した結果を点線で示す。図に示すように、この2つの結果はほぼ同じ挙動を示していた。これによって、トナー濃度が低下し、紙の反射輝度成分の影響が大きくなった場合においても本発明の手法の精度が高いことがわかった。
〔実施例3〕
本実施例では、基材として67g/mの紙、あるいは、128g/mの紙を使用し、これらの紙上に高濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態1にかかる鏡面光沢予測装置100を用いて鏡面光沢の評価を行った。
ここでも、上記の実施例1,2と同じ手順で鏡面光沢の評価を行ったが、67g/mの紙を用いた場合には、図9に示す透過率の入力項目21に7.5%と入力し、128g/mの紙を用いた場合には、図9に示す透過率の入力項目21に7.2%と入力した。67g/mの紙を用いた場合結果を図21(a)に示し、128g/mの紙を用いた場合結果を図21(b)に示す。なお、本実施例でも、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。
この図に示すように、本実施例でも全ての角度で計算結果と実測値がほぼ同じ挙動を示した。また、コート紙を用いた場合と比べ、角度変化による輝度値の変化量が少ないという結果になった。これはトナー層表面の凹凸が粗くなったために、表面反射光成分Lrsが広く分散し、結果的に内部反射光成分Lriの影響が大きくなったためである。このように、内部反射光成分Lriの影響が大きくなった場合においても本手法の予測精度が高いことがわかった。
〔実施例4〕
本実施例では、基材であるコート紙上に高濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態2にかかる鏡面光沢予測装置200を用いて鏡面光沢の評価を行った。
まず、図17に示すデータ入力画面の屈折率の入力項目50に1.55と入力し、透過率の入力項目51に6.4%と入力し、表面の粗さの入力項目52に0.205と入力し、濃度の粗さの入力項目53に0.037と入力するとともに、偏角輝度測定部204にコート紙のみのサンプルをセットし、偏角輝度測定を行った。
続いて、図18に示すデータ入力画面の非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目60に45°と入力し、受光角度の入力項目61に−60°と入力し、鏡面反射ジオメトリの入射角の入力項目62に45°と入力するとともに、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部204にセットし、偏角輝度測定を行った。
その結果、図19のグラフ70に表示されたグラフを図22(a)に示す。図22(a)に示すグラフでは、横軸が鏡面反射ジオメトリの入射及び受光角度であり、縦軸が鏡面反射光成分を輝度値(CIE1976LのL)として表したものである。なお、本実施例では、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。図22(a)のグラフには、本発明の手法を用いて計算した結果が実線で示し、実測した結果を点線で示す。図に示すように、この2つの結果はほぼ同じ挙動を示しており、本発明の手法の精度が高いことがわかった。
なお、図20(a)と図22(a)とを比較すればわかるように、同じ条件で実施の形態1にかかる鏡面光沢予測装置100を用いて鏡面光沢を評価した実施例1よりも、本実施例における結果の方が、実測値により近い値を算出することができたことがわかる。つまり、この結果から、本実施例にかかる手法の精度が実施例1と比較してより高いことが確認できた。
〔実施例5〕
本実施例では、基材であるコート紙上に低濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態2にかかる鏡面光沢予測装置200を用いて鏡面光沢の評価を行った。
まず、図17に示すデータ入力画面の屈折率の入力項目50に1.55と入力し、透過率の入力項目51に15%と入力し、表面の粗さの入力項目52に0.222と入力し、濃度の粗さの入力項目53に0.047と入力するとともに、偏角輝度測定部204にコート紙のみのサンプルをセットし、偏角輝度測定を行った。
続いて、図18に示すデータ入力画面の非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目60に45°と入力し、受光角度の入力項目61に−60°と入力し、鏡面反射ジオメトリの入射角の入力項目62に45°と入力するとともに、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部204にセットし、偏角輝度測定を行った。
その結果、図19のグラフ70に表示されたグラフを図22(b)に示す。図22(b)に示すグラフでは、横軸が鏡面反射ジオメトリの入射及び受光角度であり、縦軸が鏡面反射光成分を輝度値(CIE1976LのL)として表したものである。なお、本実施例では、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。図22(b)のグラフには、本発明の手法を用いて計算した結果が実線で示し、実測した結果を点線で示す。図に示すように、この2つの結果はほぼ同じ挙動を示していた。これによって、トナー濃度が低下し、紙の反射輝度成分の影響が大きくなった場合においても本発明の手法の精度が高いことがわかった。
なお、図20(b)と図22(b)とを比較すればわかるように、同じ条件で実施の形態1にかかる鏡面光沢予測装置100を用いて鏡面光沢を評価した実施例2よりも、本実施例における結果の方が、実測値により近い値を算出することができたことがわかる。つまり、この結果から、本実施例にかかる手法の精度が実施例2と比較してより高いことが確認できた。
〔実施例6〕
本実施例では、基材として67g/mの紙、あるいは、128g/mの紙を使用し、これらの紙上に高濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態2にかかる鏡面光沢予測装置200を用いて鏡面光沢の評価を行った。
ここでも、上記の実施例4,5と同じ手順で鏡面光沢の評価を行ったが、67g/mの紙を用いた場合には、図17に示す透過率の入力項目51に7.5%と入力し、128g/mの紙を用いた場合には、図17に示す透過率の入力項目51に7.2%と入力した。67g/mの紙を用いた場合結果を図23(a)に示し、128g/mの紙を用いた場合結果を図23(b)に示す。なお、本実施例でも、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。
この図に示すように、本実施例でも全ての角度で計算結果と実測値がほぼ同じ挙動を示した。また、コート紙を用いた場合と比べ、角度変化による輝度値の変化量が少ないという結果になった。これはトナー層表面の凹凸が粗くなったために、表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspが広く分散し、結果的に拡散反射光成分Lrdの影響が大きくなったためである。このように、拡散反射光成分Lrdの影響が大きくなった場合においても本手法の予測精度が高いことがわかった。
なお、図21と図23とを比較すればわかるように、同じ条件で実施の形態1にかかる鏡面光沢予測装置100を用いて鏡面光沢を評価した実施例3よりも、本実施例における結果の方が、実測値により近い値を算出することができたことがわかる。つまり、この結果から、本実施例にかかる手法の精度が実施例3と比較してより高いことが確認できた。
〔実施例7〕
本実施例では、基材であるコート紙上に高濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態3にかかる鏡面光沢予測装置400を用いて鏡面光沢の評価を行った。
まず、図26に示すデータ入力画面の屈折率の入力項目R20に1.55と入力し、透過率の入力項目R21に6.4%と入力し、表面の粗さの入力項目R22に0.205と入力し、濃度の粗さの入力項目R23に0.037と入力するとともに、偏角輝度測定部404にコート紙のみのサンプルをセットし、偏角輝度測定を行った。
続いて、図27に示すデータ入力画面の第1非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目R30に45°、受光角度の入力項目R31に−60°と入力し、第2非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目R37に45°、受光角度の入力項目R38に0°と入力し、鏡面反射ジオメトリの入射角の入力項目R32に45°と入力するとともに、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部404にセットし、偏角輝度測定を行った。
その結果、図28のグラフR40に表示されたグラフを図29(a)に示す。図29(a)は、高濃度トナーサンプルを用いた場合の結果を示している。図29(a)に示すグラフでは、横軸が鏡面反射ジオメトリの入射及び受光角度であり、縦軸が鏡面反射光成分を輝度値(CIE1976LのL)として表したものである。なお、本実施例では、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。図29(a)のグラフには、本発明の手法を用いて計算した結果が実線で示し、実測した結果を点線で示す。図に示すように、この2つの結果はほぼ同じ挙動を示しており、本発明の手法の精度が高いことがわかった。
〔実施例8〕
本実施例では、基材であるコート紙上に低濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態3にかかる鏡面光沢予測装置400を用いて鏡面光沢の評価を行った。
まず、図26に示すデータ入力画面の屈折率の入力項目R20に1.55と入力し、透過率の入力項目R21に15%と入力し、表面の粗さの入力項目R22に0.222と入力し、濃度の粗さの入力項目R23に0.047と入力するとともに、偏角輝度測定部404にコート紙のみのサンプルをセットし、偏角輝度測定を行った。
続いて、図27に示すデータ入力画面の第1非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目R30に45°、受光角度の入力項目R31に−60°と入力し、第2非鏡面反射ジオメトリの入射角度の入力項目R37に45°、受光角度の入力項目R38に0°と入力し、鏡面反射ジオメトリの入射角の入力項目R32に45°と入力するとともに、トナー画像が形成されたサンプルを偏角輝度測定部404にセットし、偏角輝度測定を行った。
その結果、図28のグラフR40に表示されたグラフを図29(b)に示す。図29(b)は、実施例7と比べて低濃度トナーサンプルを用いた場合の結果を示している。図29(b)に示すグラフでは、横軸が鏡面反射ジオメトリの入射及び受光角度であり、縦軸が鏡面反射光成分を輝度値(CIE1976LのL)として表したものである。なお、本実施例では、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。図29(b)のグラフには、本発明の手法を用いて計算した結果が実線で示し、実測した結果を点線で示す。図に示すように、この2つの結果はほぼ同じ挙動を示していた。これによって、トナー濃度が低下し、紙の反射輝度成分の影響が大きくなった場合においても本発明の手法の精度が高いことがわかった。
〔実施例9〕
本実施例では、基材として67g/mの紙、あるいは、128g/mの紙を使用し、これらの紙上に高濃度のトナーを用いた色材層を形成したサンプルについて、実施の形態3にかかる鏡面光沢予測装置400を用いて鏡面光沢の評価を行った。
ここでも、上記の実施例7、8と同じ手順で鏡面光沢の評価を行ったが、67g/mの紙を用いた場合には、図26に示す透過率の入力項目R21に7.5%と入力し、128g/mの紙を用いた場合には、図26に示す透過率の入力項目R21に7.2%と入力した。67g/mの紙を用いた場合結果を図30(a)に示し、128g/mの紙を用いた場合結果を図30(b)に示す。なお、本実施例でも、同じサンプルについてゴニオフォトスペクトロメータを用いて全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を実測し、比較を行った。
この図に示すように、本実施例でも全ての角度で計算結果と実測値がほぼ同じ挙動を示した。また、コート紙を用いた場合と比べ、角度変化による輝度値の変化量が少ないという結果になった。これはトナー層表面の凹凸が粗くなったために、表面反射光成分Lrssおよび色素粒子の反射光成分Lrspが広く分散し、結果的に拡散反射光成分Lrdの影響が大きくなったためである。このように、拡散反射光成分Lrdの影響が大きくなった場合においても本手法の予測精度が高いことがわかった。
本発明は、様々な手法によって作製された画像の鏡面光沢度を精度良く評価することができるため、画質の評価に利用することができる。
本発明の実施の形態1にかかる鏡面光沢予測装置の構成を示すブロック図である。 鏡面反射ジオメトリを示す模式図である。 2色性反射モデル理論を説明するための模式図である。 実施の形態1において、2層構造を有する試料の反射光成分の分割手法を示す模式図である。 BRDFモデルにおける幾何学的配置を示す模式図である。 BRDFモデルにおける物体表面の幾何学的定義を示す模式図である。 実施の形態1において、下層反射光成分を算出するときに考慮する光の屈折現象および光量の減衰を概念的に示す模式図である。 実施の形態1において、所定のジオメトリにおける輝度の測定値から全てのジオメトリの鏡面反射光成分を算出する処理の流れを示すフローチャートである。 図1に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示されるデータ入力画面の一例を示す模式図である。 図1に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示されるデータ入力画面の他の例を示す模式図である。 図1に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示される測定結果の画面の例を示す模式図である。 図1に示す鏡面光沢予測装置の機能を有するコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。 実施の形態2において、所定のジオメトリにおける輝度の測定値から全ての鏡面反射ジオメトリの鏡面反射光成分を算出する処理の流れを示すフローチャートである。 実施の形態2において、2層構造を有する試料の反射光成分の分割手法を示す模式図である。 実施の形態2において、下層反射光成分を算出するときに考慮する光の屈折現象および光量の減衰を概念的に示す模式図である。 本発明の実施の形態2にかかる鏡面光沢予測装置の構成を示すブロック図である。 図16に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示されるデータ入力画面の一例を示す模式図である。 図16に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示されるデータ入力画面の他の例を示す模式図である。 図16に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示される測定結果の画面の例を示す模式図である。 (a)は実施例1(高濃度トナーサンプルを用いた鏡面光沢予測)の結果を示すグラフであり、(b)は実施例2(低濃度トナーサンプルを用いた鏡面光沢予測)の結果を示すグラフである。 (a)および(b)は、実施例3の結果を示すグラフである。 (a)は実施例4(高濃度トナーサンプルを用いた鏡面光沢予測)の結果を示すグラフであり、(b)は実施例5(低濃度トナーサンプルを用いた鏡面光沢予測)の結果を示すグラフである。 (a)および(b)は、実施例6の結果を示すグラフである。 実施の形態3において、所定のジオメトリにおける輝度の測定値から全てのジオメトリの鏡面反射光成分を算出する処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の実施の形態3にかかる鏡面光沢予測装置の構成を示すブロック図である。 図25に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示されるデータ入力画面の一例を示す模式図である。 図25に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示されるデータ入力画面の他の例を示す模式図である。 図25に示す鏡面光沢予測装置の表示部に表示される測定結果の画面の例を示す模式図である。 (a)は実施例7(高濃度トナーサンプルを用いた鏡面光沢予測)の結果を示すグラフであり、(b)は実施例8(低濃度トナーサンプルを用いた鏡面光沢予測)の結果を示すグラフである。 (a)および(b)は、実施例9の結果を示すグラフである。
符号の説明
100・200 鏡面光沢予測装置
101・201 演算部
102・202 操作入力部
104・204 偏角輝度測定部
111・211 下層反射光成分算出部(下層反射光成分作成部)
112 内部反射光成分作成部
113・213 表面反射光成分作成部
114・214 鏡面反射光成分算出部(鏡面反射光量算出部)
103・203 記憶部
215 形状パラメータ算出部
261 色素粒子反射光成分作成部
262 拡散反射光成分作成部(内部反射光成分作成部)
300 コンピュータシステム
400 鏡面光沢予測装置
401 演算部
402 操作入力部
403 記憶部
404 偏角輝度測定部
411 下層反射光成分算出部(下層反射光成分作成部)
412 上層反射光成分算出部(上層反射光成分作成部)
414 鏡面反射光成分算出部(鏡面反射光量算出部)
415 形状パラメータ算出部(パラメータ算出部)
416 反射光成分算出部

Claims (17)

  1. 基材と上記基材上に形成された色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおける輝度値を測定し、この測定結果から他のジオメトリにおける鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置であって、
    複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、
    所定のジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値および上記下層反射光成分に基づいて、上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を作成する内部反射光成分作成部と、
    所定のジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を作成する表面反射光成分作成部と、
    上記下層反射光成分作成部、上記内部反射光成分作成部、および、上記表面反射光成分作成部で作成された各成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出部とを備えることを特徴とする鏡面光沢予測装置。
  2. 上記鏡面光沢予測装置において、
    上記下層反射光成分作成部は、複数のジオメトリにおいて上記基材のみの輝度値を測定し、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を、測定した輝度値に基づいて算出するものであり、
    上記内部反射光成分作成部は、非鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値および上記下層反射光成分に基づいて上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他のジオメトリにおける内部反射光成分を予測するものであり、
    上記表面反射光成分作成部は、鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他の鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を予測するものであることを特徴とする請求項1に記載の鏡面光沢予測装置。
  3. 上記表面反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いて他のジオメトリの表面反射光成分を予測することを特徴とする請求項2に記載の鏡面光沢予測装置。
  4. 上記内部反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてOren−Nayarモデルを用いて他のジオメトリの内部反射光成分を予測することを特徴とする請求項2に記載の鏡面光沢予測装置。
  5. 上記下層反射光成分作成部は、上記基材の輝度値の測定結果と、上記色材層の透過率および屈折率とを用いて下層反射光成分を算出することを特徴とする請求項2に記載の鏡面光沢予測装置。
  6. 上記内部反射光成分作成部は、上記色材層に含まれる色素粒子間で散乱され放射される拡散反射光成分を予測する拡散反射光成分作成部であるとともに、
    上記一つの鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記拡散反射光成分に基づいて、上記色素粒子によって反射される色素粒子反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他のジオメトリにおける色素粒子反射光成分を予測する色素粒子反射光成分作成部と、
    上記色素粒子反射光成分作成部の算出結果と、上記表面反射光成分作成部の算出結果と、上記一つの鏡面反射ジオメトリにおける上記試料の輝度値の測定結果とに基づいて、上記色素粒子反射光成分と上記表面反射光成分との配分割合を決定する形状パラメータ算出部とをさらに備え、
    上記鏡面反射光量算出部は、上記下層反射光成分作成部、上記拡散反射光成分作成部で作成された各成分、および、上記色素粒子反射光成分作成部および上記表面反射光成分作成部で作成され、上記形状パラメータ算出部によって、配分割合を決定された各成分を加算することによって試料の鏡面反射光量を求めることを特徴とする請求項2に記載の鏡面光沢予測装置。
  7. 上記表面反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いるとともに、上記Torrance−Sparrowモデルにおいて、反射光成分の広がりを定義するパラメータとして上記試料の表面形状の粗さ変数を用いることを特徴とする請求項6に記載の鏡面光沢予測装置。
  8. 上記色素粒子反射光成分作成部は、上記2色性反射モデルとしてTorrance−Sparrowモデルを用いるとともに、上記Torrance−Sparrowモデルにおいて、反射光成分の広がりを定義するパラメータとして上記試料の濃度分布の粗さ変数を用いることを特徴とする請求項6に記載の鏡面光沢予測装置。
  9. 基材と上記基材上に形成された色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおいて測定される輝度値に基づいて他のジオメトリにおける鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置であって、
    複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、
    所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分に基づいて、上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を作成する内部反射光成分作成部と、
    所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を作成する表面反射光成分作成部と、
    上記下層反射光成分作成部、上記内部反射光成分作成部、および、上記表面反射光成分作成部で作成された各成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出部とを備えることを特徴とする鏡面光沢予測装置。
  10. 基材と上記基材上に形成され色素粒子を含む色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおいて測定される輝度値に基づいて他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測装置であって、
    複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、上記所定のジオメトリおよび上記他のジオメトリにおける、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を算出する下層反射光成分作成部と、
    上記所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分作成部によって算出される上記所定のジオメトリにおける下層反射光成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける、上記色材層に含まれる色素粒子間で散乱され放射される拡散反射光成分、上記色素粒子によって反射される色素粒子反射光成分、および上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出する上層反射光成分作成部と、
    上記下層反射光成分作成部および上記上層反射光成分作成部によって算出される上記他のジオメトリにおける各成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を算出する鏡面反射光量算出部とを備えることを特徴とする鏡面光沢予測装置。
  11. 上記上層反射光成分作成部は、2色性反射モデルを用いることによって、上記他のジオメトリにおける上記拡散反射光成分、上記色素粒子反射光成分、および上記表面反射光成分を算出することを特徴とする請求項10に記載の鏡面光沢予測装置。
  12. 上記下層反射光成分作成部は、少なくとも3種類の所定のジオメトリおよび上記他のジオメトリにおける上記下層反射光成分を算出するものであり、
    上記上層反射光成分作成部は、
    上記少なくとも3種類の所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分作成部によって算出される上記少なくとも3種類の所定のジオメトリにおける下層反射光成分に基づいて、(a)Oren−Nayarモデルにおけるパラメータおよび(b)上記拡散反射光成分と上記色素粒子反射光成分と上記表面反射光成分との配分割合を求めるパラメータ算出部と、
    上記配分割合を用いて上記他のジオメトリにおける上記色素粒子反射光成分および上記表面反射光成分を算出するとともに、上記配分割合、上記パラメータ、およびOren−Nayarモデルを用いて上記他のジオメトリにおける上記拡散反射光成分を算出する反射光成分算出部と、
    を含んでいることを特徴とする請求項11に記載の鏡面光沢予測装置。
  13. 上記反射光成分算出部は、上記配分割合およびTorrance−Sparrowモデルを用いて上記他のジオメトリにおける上記色素粒子反射光成分および上記表面反射光成分を算出することを特徴とする請求項12に記載の鏡面光沢予測装置。
  14. 基材と上記基材上に形成された色材層とからなる試料の鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測方法であって、
    光源入射角度および受光角度を一定角度毎に変更させた複数のジオメトリにおいて上記基材のみの輝度値を測定し、上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分を、測定した輝度値に基づいて算出する下層反射光成分作成工程と、
    一つの非鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値および上記下層反射光成分に基づいて上記色材層の内部で反射される内部反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他のジオメトリにおける内部反射光成分を予測する内部反射光成分作成工程と、
    一つの鏡面反射ジオメトリにおいて試料の輝度値を測定し、測定した輝度値、上記下層反射光成分、および上記内部反射光成分に基づいて、上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出した後、2色性反射モデルを用いて他の鏡面反射ジオメトリにおける表面反射光成分を予測する表面反射光成分作成工程と、
    上記の各工程によって得られた下層反射光成分、内部反射光成分、および表面反射光成分に基づいて試料の鏡面反射光量を求める鏡面反射光量算出工程と
    からなることを特徴とする鏡面光沢予測方法。
  15. 基材と上記基材上に形成され色素粒子を含む色材層とからなる試料の所定のジオメトリにおいて測定される輝度値に基づいて他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を予測することによって鏡面光沢度を予測する鏡面光沢予測方法であって、
    複数のジオメトリにおいて測定される上記基材のみの輝度値に基づいて、所定のジオメトリおよび上記他のジオメトリにおいて上記基材で反射され上記色材層を透過して放射される下層反射光成分をそれぞれ算出する下層反射光成分作成工程と、
    上記所定のジオメトリにおいて測定される試料の輝度値および上記下層反射光成分作成工程において算出される上記所定のジオメトリにおける上記下層反射光成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける、上記色材層に含まれる色素粒子間で散乱され放射される拡散反射光成分、上記色素粒子によって反射される色素粒子反射光成分、および上記色材層の表面で反射される表面反射光成分を算出する上層反射光成分作成工程と、
    上記下層反射光成分作成工程において算出される上記他のジオメトリにおける下層反射光成分および上記上層反射光成分作成工程において算出された各成分に基づいて、上記他のジオメトリにおける試料の鏡面反射光量を算出する鏡面反射光量算出工程とを備えることを特徴とする鏡面光沢予測装置。
  16. 請求項1から13の何れか1項に記載の鏡面光沢予測装置を動作させるための制御プログラムであって、コンピュータを上記各部として機能させるための制御プログラム。
  17. 請求項16に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
JP2005210525A 2004-10-29 2005-07-20 鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、記録媒体 Active JP3980608B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005210525A JP3980608B2 (ja) 2004-10-29 2005-07-20 鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、記録媒体
US11/259,166 US7417739B2 (en) 2004-10-29 2005-10-27 Specular gloss simulation device, specular gloss simulation method, control program for specular gloss simulation device and storage medium thereof

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004316933 2004-10-29
JP2005210525A JP3980608B2 (ja) 2004-10-29 2005-07-20 鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、記録媒体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006153846A true JP2006153846A (ja) 2006-06-15
JP3980608B2 JP3980608B2 (ja) 2007-09-26

Family

ID=36261413

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005210525A Active JP3980608B2 (ja) 2004-10-29 2005-07-20 鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、記録媒体

Country Status (2)

Country Link
US (1) US7417739B2 (ja)
JP (1) JP3980608B2 (ja)

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008010592A1 (fr) * 2006-07-21 2008-01-24 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Procédé pour estimer une réflectance
WO2009060536A1 (ja) * 2007-11-09 2009-05-14 Cosmostechno Corporation 自動車の塗装診断方法
JP2009180703A (ja) * 2008-02-01 2009-08-13 Canon Inc 情報処理装置および方法
JP2011244157A (ja) * 2010-05-17 2011-12-01 Canon Inc 画像処理装置及び画像処理方法
WO2012051285A1 (en) * 2010-10-15 2012-04-19 E. I. Du Pont De Nemours And Company Process for predicting gloss of low gloss coating by wet color measurement
WO2012051290A3 (en) * 2010-10-15 2012-06-14 E. I. Du Pont De Nemours And Company Device for predicting gloss of low gloss coating by wet color measurement
JP2013507608A (ja) * 2009-10-08 2013-03-04 テクノロジアン タトキマスケスクス ヴィーティーティー 物品及びその表面の特性を決定するための測定機器及び方法
WO2013067220A1 (en) * 2011-11-01 2013-05-10 U.S. Coatings Ip Co. Llc Process for predicting metallic gloss of coating resulting from coating compositions by wet color measurement
JP2014092501A (ja) * 2012-11-06 2014-05-19 Toppan Printing Co Ltd 反射率計測装置及び反射率計測方法及び反射率計測プログラム
JP2017207367A (ja) * 2016-05-18 2017-11-24 キヤノン株式会社 情報処理装置、反射特性を導出する方法、プログラム、反射特性プロファイル
JP2020114646A (ja) * 2019-01-17 2020-07-30 株式会社リコー 印刷結果予測方法及び印刷結果予測プログラム

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8224018B2 (en) * 2006-01-23 2012-07-17 Digimarc Corporation Sensing data from physical objects
US8077905B2 (en) 2006-01-23 2011-12-13 Digimarc Corporation Capturing physical feature data
US8215553B2 (en) * 2006-11-15 2012-07-10 Digimarc Corporation Physical credentials and related methods
US7763876B2 (en) * 2007-04-06 2010-07-27 Xerox Corporation Gloss and differential gloss measuring system
US7764893B2 (en) * 2008-01-31 2010-07-27 Xerox Corporation Use of customer documents for gloss measurements
GB201011459D0 (en) * 2010-07-07 2010-08-25 Melys Diagnostics Ltd Optical element, assembly and method for determining analyte concentration
JP5685867B2 (ja) * 2010-09-08 2015-03-18 富士ゼロックス株式会社 画像読み取り装置および画像形成装置
JP5696843B2 (ja) * 2011-03-23 2015-04-08 株式会社リコー 電子写真用オーバーコート組成物の評価方法、並びに電子写真用オーバーコート組成物、電子写真形成方法、及び電子写真形成装置
JP2014077664A (ja) * 2012-10-09 2014-05-01 Ricoh Co Ltd 光沢性評価方法及び光沢性評価装置
JP5851461B2 (ja) * 2013-08-30 2016-02-03 本田技研工業株式会社 意匠層データ作成装置及び方法並びに意匠シュミレーション装置
EP3842792A1 (en) * 2019-12-26 2021-06-30 Dukane IAS, LLC Methods for measuring spectral absorption by objects

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0420846A (ja) 1990-05-16 1992-01-24 Toyo Ink Mfg Co Ltd 光沢測定方法および装置
JP3183769B2 (ja) * 1994-02-23 2001-07-09 大日本スクリーン製造株式会社 カラー印刷物の再現方法
JP2003329586A (ja) 2002-03-07 2003-11-19 Ricoh Co Ltd 鏡面光沢度予測方法及び鏡面光沢度予測装置
JP4111040B2 (ja) 2003-04-11 2008-07-02 富士ゼロックス株式会社 光沢評価方法および装置

Cited By (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8035817B2 (en) 2006-07-21 2011-10-11 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Method for estimating reflectance
WO2008010592A1 (fr) * 2006-07-21 2008-01-24 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Procédé pour estimer une réflectance
JP4868258B2 (ja) * 2006-07-21 2012-02-01 トヨタ自動車株式会社 反射率推定方法
WO2009060536A1 (ja) * 2007-11-09 2009-05-14 Cosmostechno Corporation 自動車の塗装診断方法
JP2009180703A (ja) * 2008-02-01 2009-08-13 Canon Inc 情報処理装置および方法
JP2013507608A (ja) * 2009-10-08 2013-03-04 テクノロジアン タトキマスケスクス ヴィーティーティー 物品及びその表面の特性を決定するための測定機器及び方法
JP2011244157A (ja) * 2010-05-17 2011-12-01 Canon Inc 画像処理装置及び画像処理方法
WO2012051290A3 (en) * 2010-10-15 2012-06-14 E. I. Du Pont De Nemours And Company Device for predicting gloss of low gloss coating by wet color measurement
WO2012051285A1 (en) * 2010-10-15 2012-04-19 E. I. Du Pont De Nemours And Company Process for predicting gloss of low gloss coating by wet color measurement
WO2013067220A1 (en) * 2011-11-01 2013-05-10 U.S. Coatings Ip Co. Llc Process for predicting metallic gloss of coating resulting from coating compositions by wet color measurement
CN104136913A (zh) * 2011-11-01 2014-11-05 涂层国外知识产权有限公司 利用湿色测量预测由涂料成分得到的涂料金属光泽的方法
DE112012004576B4 (de) 2011-11-01 2022-05-05 Coatings Foreign Ip Co. Llc Verfahren zur Vorhersage metallischen Glanzes einer Beschichtung resultierend von Beschichtungszusammensetzungen durch Nassfarbmessungen
JP2014092501A (ja) * 2012-11-06 2014-05-19 Toppan Printing Co Ltd 反射率計測装置及び反射率計測方法及び反射率計測プログラム
JP2017207367A (ja) * 2016-05-18 2017-11-24 キヤノン株式会社 情報処理装置、反射特性を導出する方法、プログラム、反射特性プロファイル
JP2020114646A (ja) * 2019-01-17 2020-07-30 株式会社リコー 印刷結果予測方法及び印刷結果予測プログラム
JP7176419B2 (ja) 2019-01-17 2022-11-22 株式会社リコー 印刷結果予測方法及び印刷結果予測プログラム

Also Published As

Publication number Publication date
US7417739B2 (en) 2008-08-26
JP3980608B2 (ja) 2007-09-26
US20060092412A1 (en) 2006-05-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3980608B2 (ja) 鏡面光沢予測装置、鏡面光沢予測方法、鏡面光沢予測装置の制御プログラム、および、記録媒体
US10606545B2 (en) Display apparatus, scanner, and non-transitory computer readable medium
Ghosh et al. BRDF acquisition with basis illumination
US20230260237A1 (en) Visualizing the appearance of at least two materials
US20210310870A1 (en) Apparatus and Method for Effect Pigment Identification
JP2010114506A (ja) 質感情報データ取得装置及びそれを備える表示制御システム
US20230343051A1 (en) Visualizing the appearances of at least two materials
CN100494986C (zh) 镜面光泽预测装置、镜面光泽预测方法、控制程序及介质
US20230260193A1 (en) Generating a destination texture from a plurality of source textures
Sole et al. Measurement and rendering of complex non-diffuse and goniochromatic packaging materials
JP2007256211A (ja) 情報処理装置、反射光量算出方法、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体
Golhin et al. BRDF representation in response to the build orientation in 3D-printed digital materials
JP7409014B2 (ja) 表示装置
Filip et al. Image-based appearance acquisition of effect coatings
CN110192099A (zh) 测量装置、信息处理装置、信息处理方法和程序
CN108335351B (zh) 一种基于定向统计分析的brdf色域映射方法
EP4209998A1 (en) Method, computer and computer program for modifying texture images
Medina et al. Objective colorimetric validation of perceptually realistic rendering: a study of paint coating materials
Huang et al. A Perceptually Uniform Gloss Space for Translucent Materials
JP2022119427A (ja) 計算装置、計算方法およびプログラム
Öztürk et al. Polynomial Approximation of Blinn-Phong Model.
Herranz Perceptual Modeling and Reproduction of Gloss
Gałaj et al. A Study on Image Comparison Metrics for Atmospheric Scattering Phenomenon Rendering
Fores et al. An abridged goniometer for material appearance measurements
Fores Herranz Perceptual Modeling and Reproduction of Gloss

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070216

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070313

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070510

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070626

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070627

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3980608

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100706

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110706

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110706

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120706

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120706

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130706

Year of fee payment: 6