JP2006152664A - 水洗大便器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、便器本体2のボウル6を洗浄し、このボウル内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器1であって、給水タンク4からボウルに洗浄水を導くように形成された導水路10と、ボウルの排出口13に接続され、上流部に導気孔30が形成されたトラップ15と、一端が導気孔に連通し、他端が大気に開放されている導気通路24と、を有し、導気通路は、待機時において溜水が溜まるように形成されており、ボウルの洗浄時において、サイホン作用の初期には導気通路内の溜水が導気孔を通ってトラップ内に排水され、ボウル内の水位が降下し、ボウルからトラップ内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排水が終了し、大気が導気通路を通ってトラップ内に導入され始めるように構成されていることを特徴としている。
【選択図】 図2
Description
このトラップに流れ込んだ水がトラップ内に満水になると、トラップ内が負圧になり、いわゆる「サイホン作用」が発生する。このサイホン作用により、ボウル内の溜水は一気にトラップ内に引き込まれ、ボウル内にあった汚物は、溜水と共にトラップ内に引き込まれ、ボウル内が空となり、その後、ボウルは再び封水される。
このボウル内が空となる際、ボウルからトラップ内に空気が入り込んでサイホン作用が消滅する状態、いわゆる「サイホン切れ」の状態が起こる。このサイホン切れの状態では、「ジャー」という洗浄音が所定時間継続した後に、ボウルからトラップ内に空気が強く引き込まれる「ボコ、ボコ」という不快音、いわゆる「サイホン切れ音」が発生する。
従来、このサイホン切れ音を抑制するために、例えば、特許文献1に記載されているように、トラップの途中において溜水面よりも下方の位置に導気孔を形成し、この導気孔に空気が供給されるようにトラップ上端より上方で開口した導気管を導気孔に接続したサイホン便器が知られている。
このようなサイホン便器では、トラップ内が満水となってサイホン作用が発生して負圧状態になると同時に、空気が導気管上端の開口部から導気孔を経てトラップ内に導入されるようになっている。これにより、サイホン作用によるボウル内の溜水をトラップ内へ吸引する力を弱めて、終始ボウル内の水位がトラップの入口の上縁よりも低下しないようにすることで、サイホン切れ音を防ごうとしている。
また、従来のサイホン便器では、洗浄時において終始ボウル内の水位がトラップの入口の上縁よりも低下しないため、ボウル内の溜水をトラップ内へ完全に排水しきれておらず、洗浄が不十分であるという問題もある。
したがって、ボウル内の水位がトラップの入口の上縁よりも下回り、ボウル内からトラップ内へ空気が入り込んでサイホン切れが起こる直前まで、トラップの入口部で洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することが従来から課題となっているが、未だ解決されるに至っていない。
このように構成された本発明の水洗大便器においては、洗浄水が給水手段から導水路によってボウル内の溜水に導かれると、ボウル内の溜水はボウルの排出口からトラップ内に流れてトラップ内で満水となり、サイホン作用を引き起こす。このサイホン作用の初期には、導気通路内の溜水が導気孔を通ってトラップ内に排水され、ボウル内の水位が降下し、ボウルからトラップ内に空気が引き込まれる直前に導気通路内の溜水の排水が終了し、大気が導気通路を通ってトラップ内に導入され始める。したがって、ボウルからトラップ内に空気が引き込まれる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができる。
このように構成された本発明の水洗大便器においては、洗浄水が給水手段から導水路によってボウル内の溜水に導かれると、ボウル内の溜水はボウルの排出口からトラップ内に流れてトラップ内で満水となり、サイホン作用を引き起こす。このサイホン作用の初期には、導気室内の溜水が導気孔を通ってトラップ内に排水され、ボウル内の水位が降下し、ボウルからトラップ内に空気が引き込まれる直前に導気室内の溜水の排水が終了し、大気が吸気管及び導気室を通ってトラップ内に導入され始める。したがって、ボウルからトラップ内に空気が引き込まれる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができる。
これにより、ボウルからトラップ内に空気が引き込まれる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができる。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、図2は、図1に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のA−A断面図であり、図3は、図2に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のB−B断面図である。
図1〜図3に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、陶器からなる便器本体2と、この便器本体2の後部に設けられ、上方に延び、かつ便器本体2を洗浄する洗浄水を収容する洗浄水タンク4とを備えている。
便器本体2は、その中央部から前部にかけて形成されたボウル6と、このボウル6の底部に位置するボウル排出口13の後方(下流側)に接続されたトラップ15とを備えている。
また、トラップ15は、その上流端であるトラップ吸込口(トラップ入口)26と、このトラップ吸込口26の下流側に位置するトラップ上側頂部15a及び下側頂部15bとを備え、トラップ吸込口26から上側頂部15a及び下側頂部15bに向かって斜め上方に延びた後、上側頂部15a及び下側頂部15bよりも下流側では下方に延びている。
さらに、ボウル6の上縁にはリム孔12が形成され、ボウル6の正面側下部には、トラップ吸込口26に向かって開口するゼット孔14がボウル排出口13に隣接して形成されている。
導水路10は、その途中で洗浄水導水路10aとゼット導水路10bとに分岐している。洗浄水導水路10aは、ボウル6のリム孔12に連通するように形成されており、ゼット導水路10bは、ボウル6を迂回するようにボウル6の外周に沿って、ゼット孔14を含むように形成されている。このゼット孔14は、ゼット導水路10bを流れた水をトラップ15へ向けて噴き出すようになっている。
さらに、洗浄水タンク4の給水口8には排水弁16が設けられている。ボウル6を洗浄する際に洗浄操作レバー18を回すと、この排水弁16が引き上げられて所定時間給水口8が開放され、洗浄水タンク4内に収容されている洗浄水が導水路10a,10b内に流れるようになっている。
この導気室24bは、トラップ15の吸込口26から上側頂部15aにかけてトラップ15の側面に沿って斜め上方に延びるように形成されている。さらに、導気室24bは、トラップ15の上側頂部15aより上方では、導水路10の側面に沿って斜め上方に延び、導気室24bの上端部は、洗浄水タンク4の底面に形成された吸気孔20を含むように形成されている。吸気孔20と吸気管24aの下端は一致し、吸気管24aと導気室24bは、吸気孔20によってのみ連通しており、洗浄水タンク4内の水が吸気孔20から導気室24b内に浸入しないようになっている。
また、導気孔30は、陶器である便器本体に一体成形された導気室24bの一部に穴あけ加工を行うことによって形成されるため、導気孔30の断面形状については、孔の位置や直径を適宜変更して容易に加工やすい円形断面が好ましい。
また、洗浄待機時の水洗大便器1においては、ボウル6内にほぼトラップ15の下側頂部15bと同じ高さまで溜水が溜まった状態となるが、この状態では、導気室24b内にもトラップ15及び導気孔30を通じてボウル6内の水位と同水位の溜水が溜まるようになっている。ただし、導気室24b内の溜水の容積、ボウル6内の溜水の容積、導気孔30及び吸気管24aの孔の大きさ、吸気管24a及び導気室24b内の気流抵抗等については、サイホン作用が発生してからの導気室24b内の水位降下の速度がボウル6内の水位降下の速度よりも速くなるように調整して設定されている。
一例として、導気孔30の大きさについては、導気孔30の直径を3mm〜30mmに設定するのが好ましく、15mm〜25mmに設定するのが最も好ましい。
図4a〜図4dは、本発明の第1実施形態による水洗大便器1において、洗浄工程開始前から洗浄工程終了までの一連の工程における動作(作用)を説明する断面図である。
ここで、図4a〜図4dにおいて、ボウル6及び導気室24bの水面をそれぞれ実線L1及び二点鎖線L2で示し、水及び空気の流れをそれぞれ実線矢印及び破線矢印で示している。
まず、図4aに示すように、洗浄待機時の水洗大便器1の状態では、ボウル6内、トラップ15内、及び導気室24b内いずれも、ほぼトラップ15の下側頂部15bとほぼ同じ高さまで溜水が溜まっている。
また、洗浄前の洗浄水タンク4内には洗浄水が溜められているが、その水位は、吸気管24aの上端よりもやや下方に位置している。
導水路10内の洗浄水は、洗浄水導水路10aを流れてリム孔12からボウル6の内面に沿って下方に流れる水と、ゼット導水路10bを流れてボウル6を迂回してゼット孔14へ流れる水とに分かれる。
洗浄水導水路10aからリム孔12を経てボウル6内へ流れた洗浄水は、ボウル6の内面を洗浄し、ボウル6内の溜水と共にボウル排出口13からトラップ15内へ流れ込む。 一方、ゼット導水路10bからボウル6を迂回してゼット孔14に流れた水は、このゼット孔14よりトラップ15に向けて噴き出される。
また、導気室24bは、導気孔30によりトラップ15と連通しているため、上述のサイホン作用により、導気室24b内の溜水は導気孔30を経てトラップ15内に引き込まれ、導気室24b内の水位が降下する。
ここで、上述したように、導気室24b内の溜水の容積、ボウル6内の溜水の容積、導気孔30及び吸気管24aの孔の大きさ、吸気管24a及び導気室24b内の気流抵抗等については、サイホン作用が発生してからの導気室24b内の水位降下の速度がボウル6内の水位降下の速度よりも速くなるように調整して設定されているため、導気室24b内の水位は、ボウル6内の水位よりも速く降下する。
導気孔30からトラップ15内に空気が引き込まれたことにより、その分トラップ15内の負圧が小さくなり、サイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱まる。このとき、ボウル6内の水位は、トラップ吸込口26の上縁よりもわずかに上方に位置しており、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれる直前の状態となっている。
さらに、図4dに示すように、サイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力は弱まりつつも持続しているため、ボウル6内の水位がさらに低下する。ボウル6内の水位がトラップ吸込口26の上縁よりも下回ると、ボウル6の水面L1とトラップ吸込口26の上縁との空間が生じ、ボウル6からトラップ15内へ空気が引き込まれた後、サイホン作用が終了する。
このように、ボウル6内からトラップ15内に空気が引き込まれる際には、すでに導気通路24内の空気が導気孔30からトラップ15内へ導入されており、トラップ15内のサイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱められているため、サイホン切れ音はほとんど聞こえないぐらいに小さい。
この実験の結果の一例では、吸気管24aの開口面積を0.06cm2に設定し、洗浄前の導気室24b内の溜水量が約80cc、洗浄時に導水路10内を通過する大便器用の洗浄水量が10L(リットル)の場合、トラップ15内が満水となってサイホン作用が開始した時から、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれてサイホン作用が終了するまでの時間(以下、「サイホン持続時間」と呼ぶ)が、約4秒となった。
また、トラップ15内でサイホン作用が発生し、導気室24bの導気孔30からトラップ15内に空気が導入され始めるまでの時間は2〜3秒となり、導気室24b内の溜水の排水がサイホン持続時間以内(約4秒以内)に終了し、導気孔30からトラップ15内に空気が導入され始めて、サイホン切れ音が抑制されていることが確認できた。
また、導気室24bの導気孔30からトラップ15内に空気が導入され始めるタイミングが、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれるタイミングよりも速すぎると、サイホン作用によるボウル6内の溜水をトラップ15内へ吸引する力が弱まりすぎて、十分な洗浄力が得られない。一方、導気孔30からトラップ15内に空気が導入され始めるタイミングが、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれるタイミングよりも遅れると、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができない。
したがって、上述した実験結果を踏まえると、サイホン切れ音を抑制するには、好ましくは、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれる1〜2秒前に、導気孔30からトラップ15内に空気が導入され始めるように上記各パラメータを設定するのがよい。
さらに、ボウル6内からトラップ15内に空気が引き込まれる直前に導気室24b内の空気が導気孔30からトラップ15内へ適当なタイミングで導入され始めるため、十分な洗浄時間を確保すると共に、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができる。
図5に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器40は、第1実施形態の水洗大便器1の吸気管24aの上部に空気導入調整弁42をさらに設けた構成となっており、この構成以外の部分については、上述した第1実施形態の構成と同一である。
図6に示すように、本実施形態の水洗大便器40の空気導入調整弁42として、ボールバルブ42aが用いられ、このボールバルブ42aは、ハンドル44aと、これと一体であるボール46aを備えている。
また、ボール46aは、これを貫通する貫通孔48aを備えており、ハンドル44aを回す程度により、ハンドル44aと共に回転するボール46aの回転角度が変わり、ボール46aの貫通孔48aと吸気管24aとの連通具合(ボールバルブ42aの開度)を調整することができるようになっている。
具体的には、ボウル6内の汚物の量が多く、洗浄力が大きい運転モード(以下「大洗浄モード」と呼ぶ)で洗浄工程を行う必要があると使用者が判断した場合には、ボールバルブ42aを閉じるようにハンドル44aを回す。上述した第1実施形態における洗浄工程と同様に、洗浄が開始されると、ボウル6内の水位が降下する共に導気室24b内の水位が降下する。そして、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれる直前に、導気室24b内の水位が導気孔30の上縁に達し、導気室24b内の溜水の排水がほぼ終了し、導気室24b内の空気が導気孔30からトラップ15内に導入され始める。このとき、ボウル6内の水位は、トラップ吸込口26の上縁よりもやや上回る所定位置(以下「大洗浄モード導気位置」)にある。
さらに、サイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱まりつつも継続し、ボウル6内の水位がトラップ吸込口26の上縁よりも下回ると、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれ、サイホン作用が終了する。
ボールバルブ42aが開いた状態では、ボールバルブ42aが閉じた状態よりも導気通路24内を通過できる空気の流量が増える分だけ導気室24b内の水位降下が速くなる。このため、導気室24b内の水位が、ボールバルブ42aが閉じた場合よりも速く導気孔30の上縁に達し、導気室24b内の溜水の排水がほぼ終了し、導気室24b内の空気が導気孔30からトラップ15内に導入され始める。このとき、ボウル6内の水位は、大洗浄モード導気位置よりも上方に位置する所定位置(以下「小洗浄モード導気位置」と呼ぶ)にある。
ボールバルブ42aを閉き、導気通路24を通過する空気の流量を大洗浄モードの場合よりも増やすことにより、導気孔30からトラップ15内に空気が導入されるタイミングを早め、サイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力を大洗浄モードの場合よりも弱める。
さらに、サイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱まりつつも継続し、ボウル6内の水位がトラップ吸込口26の上縁よりも下回ると、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれ、サイホン作用が終了する。
すなわち、洗浄力が必要とされる大洗浄モードの場合には、空気導入調整弁42(ボールバルブ42a)を閉じることにより、空気が導気通路24から導気孔30を経てトラップ15内に引き込まれる直前まで、洗浄に十分なサイホン作用を継続させることができると共に、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することもできる。
一方、洗浄力があまり必要のない小洗浄モードの場合には、ボウル6内に給水される洗浄水量が少なく、サイホン持続時間も短くなり、サイホン切れ音も目立ちやすくなるため、空気導入調整弁42(ボールバルブ42a)を開くことにより、大洗浄モードの場合よりも、導気室24b内の水位を導気孔30の上縁に速く到達させて、トラップ15内のサイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力を早めに弱め、サイホン切れ音を抑制することができる。
また、本実施形態の水洗大便器40によれば、空気導入調整弁42が設けられているため、導気孔30の寸法や形状等にかかわらず、空気導入調整弁42を調整することにより、導気孔30からトラップ15内に空気を導入し始めるタイミングを適度に調整ことができる。
ここで、第2実施形態の変形例による水洗大便器では、空気導入調整弁としてニードルバルブ42bが用いられており、この点のみが第2実施形態の水洗大便器40と異なっている。
図7に示すように、第2実施形態の変形例による水洗大便器のニードルバルブ42bは、ハンドル44bと、これと一体であるニードル46bを備えている。このニードル46bは、ニードルバルブ本体にねじ結合されており、ハンドル44bを所定方向に回転させて、ニードル46bをニードルバルブ本体に対して適宜移動させることにより、吸気管24aに連通するバルブ内の通路48bの開閉具合(ニードルバルブ42bの開度)を調整できるようになっている。
図8に示すように、本発明の第3実施形態による水洗大便器50は、吸気管24aに設けられたモータバルブ52と、このモータバルブ52の開度を制御する制御装置54を備えた構成となっており、これ以外の構成については、上述した第1実施形態の構成と同一である。
本実施形態の水洗大便器50では、制御装置54が洗浄操作レバー18の回転方向を検知し、モータバルブ52の開度を調整することにより、上述した大洗浄モードまたは小洗浄モードのいずれかの運転モードで洗浄工程が行われるようになっている。
その後、ボウル6内の水位が降下する共に導気室24b内の水位が降下し、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれる直前に、導気室24b内の水位が導気孔30の上縁に達し、導気室24b内の溜水の排水がほぼ終了する。導気室24b内の空気が導気孔30からトラップ15内に導入され始め、トラップ15内のサイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱められる。このとき、ボウル6内の水位は、トラップ吸込口26の上縁よりもやや上回る大洗浄モード導気位置にある。
さらに、ボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱まりつつも継続し、ボウル6内の水位がトラップ吸込口26の上縁よりも下回ると、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれ、サイホン作用が終了する。
モータバルブ52が開いた状態では、モータバルブ52が閉じた状態よりも導気通路24内を通過できる空気の流量が増える分だけ導気室24b内の水位降下が速くなる。このため、導気室24b内の水位が、モータバルブ52が閉じた場合よりも速く導気孔30の上縁に達し、導気室24b内の溜水の排水がほぼ終了し、導気室24b内の空気が導気孔30からトラップ15内に導入され始める。このとき、ボウル6内の水位は、大洗浄モード導気位置よりも上方に位置する小洗浄モード導気位置にある。
さらに、ボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱まりつつも継続し、ボウル6内の水位がトラップ吸込口26の上縁よりも下回ると、ボウル6からトラップ15内に空気が引き込まれ、サイホン作用が終了する。
また、洗浄モードに応じて、吸気管24aのモータバルブ52を通過して導気孔30からトラップ15内に引き込まれる空気の流量を切り換えることができるため、洗浄に十分なサイホン作用を継続させて洗浄後のサイホン切れ音を抑制されるように、導気孔30からトラップ15内へ空気が導入され始めるタイミングを適度に調整することができる。
なお、本実施形態の水洗大便器50では、使用者の判断によって回転させた洗浄操作レバー18の回転方向を制御装置54が検知し、モータバルブ52の開度を調整することにより、上述した大洗浄モードまたは小洗浄モードのいずれかの運転モードで洗浄工程が行われるような形態について説明したが、このような形態に限定されず、使用者の判断で洗浄操作レバー18を操作する代わりに、例えば、便座にいる使用者の存在を検知するセンサーを設け、このセンサーが検知した情報(例えば、使用者が便座にいる時間の程度等)に応じて、大小の洗浄モードを切り換えると共に、モータバルブの開度を自動調節するようにしてもよい。
図9に示すように、本発明の第4実施形態による水洗大便器50は、第2実施形態の水洗大便器40において便器本体に一体に形成された導気通路24を設ける代わりに、導気パイプ62を設けた構成となっており、これ以外の構成については、上述した第2実施形態と同一である。
本実施形態の水洗大便器50の導気パイプ62は、その上端が吸気孔20に接続され、導気パイプ62の下端は、トラップ吸込口26の側壁に形成された導気孔64に接続されている。また、導気孔64は、トラップ吸込口26の上縁よりも下方に位置している。
さらに、導気パイプ62の形状については、導気孔64からトラップ15の側部と平行にトラップ15の上側頂部15a付近まで延びた後、便器本体2の後方に延び、吸気孔20の真下に差し掛かると上方に曲がり、吸気孔20との接続口まで鉛直方向に延びる曲線形状となっている。
なお、これらの封水面から導気孔64の下端までの深さを封水深さdとすると、一例として、封水深さdを約60mmとし、導気パイプ62の直径が3.0mm〜50mm、導気孔64から封水面までの導気パイプ62の長さを100mmに設定した場合には、導気パイプ62内の封水量は、約70cc〜200ccとなる。
なお、本実施形態の水洗大便器60では、第2実施形態と同様に吸気管24aに空気導入調整弁42を設けた形態について説明したが、このような形態に限定されず、例えば、第3実施形態と同様に、吸気管24aにモータバルブ52を設け、このモータバルブ52の開度を制御装置54により制御するようにしてもよい。
ここで、図10〜図12において、図1〜図3の部分と同一の部分については同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
また、本実施形態の水洗大便器70は、第1〜第4実施形態で説明したようなゼット孔14を備えていないため、洗浄水タンク4の給水口8から導水路80に流れた水は、すべてリム孔82を経てボウル76内に流れるようになっている。
また、水洗大便器1は、導気通路94をさらに備え、この導気通路94は、洗浄水タンク4内に設けられ、上端が大気開放されている吸気管94aと、トラップ86とボウル76の背面との間の空間を利用して形成された導気室94bとによって構成されており、この導気室94bの上端は吸気管94aの下端と接続している。
図11に示すように、吸気管94aには、第2及び第4実施形態と同様に、空気導入調整弁42が設けられているが、この空気導入調整弁42については省略してもよい。
さらに、導気室94bの下端(下流端)は、トラップ86の吸込口(入口)98の上縁に位置し、導気孔100によりトラップ86内と連通している。
導気室94bは、導気孔100からトラップ86の下側頂部86bよりもやや上方の高さ位置にかけてトラップ86の外側上面に沿って上方に延びるように形成され、トラップ86の下側頂部86bよりもやや上方の高さ位置からほぼトラップ86の上側頂部86aの高さ位置にかけて、トラップ86の外側上面からトラップ86の側面に沿って移行して延びるように形成されている。さらに、導気室94bは、ほぼトラップ86の上側頂部86aの高さ位置から吸気管94aの下端にかけて、導水路80の側面に沿って移行して延びるように形成されている。
また、導気室94bにおいて、トラップ86の外側上面からトラップ86の側面に沿って移行する部分には、空気連絡口102が形成されている(図12参照)。
このほぼ四角形状である導気孔100の縦寸法l(図11参照)は、導気通路94の下端部(トラップ吸込口98の天井部)の前後方向の長さが約20mm〜40mmであるため、この長さより短い10mm〜30mmに設定されている。
一方、導気孔100の横幅寸法w(図12参照)は、トラップ86内の横幅が約55mm〜70mmであるため、この寸法よりも短い45mm〜60mmに設定されている。
したがって、これら導気孔100の縦寸法lと横幅寸法wにより得られる面積は、4.5cm2〜18cm2である。
また、洗浄待機時の水洗大便器70においては、ボウル76内にほぼトラップ86の下側頂部86bと同じ高さまで溜水が溜まった状態となるが、この状態では、導気室94b内にもトラップ86及び導気孔100を通じてボウル76内の水位と同水位の溜水が溜まるようになっている。ただし、導気室94b内の溜水の容積、ボウル76内の溜水の容積、導気孔100及び吸気管94aの孔の大きさ、吸気管94a及び導気室94b内の気流抵抗等については、サイホン作用が発生してからの導気室94b内の水位降下の速度がボウル76内の水位降下の速度よりも速くなるように調整して設定されている。
洗浄操作レバー18を回すと、洗浄工程が開始され、排水弁16が引き上げられ、給水口8が所定時間開放され、洗浄水タンク4内に収容されている洗浄水が導水路80内に流れる。導水路80内の洗浄水は、リム孔82を経てボウル76の内面に沿って下方に流れ、ボウル76の内面を洗浄し、ボウル76内の溜水と共にボウル排出口84からトラップ86内へ流れ込む。
また、導気室94bは、導気孔100によりトラップ86と連通しているため、上述したサイホン作用により、導気室94b内の溜水は導気孔100を経てトラップ86内に引き込まれ、導気室94b内の水位が降下する。
ここで、上述したように、導気室94b内の溜水の容積、ボウル76内の溜水の容積、導気孔100及び吸気管94aの孔の大きさ、吸気管94a及び導気室94b内の気流抵抗等については、サイホン作用が発生してからの導気室94b内の水位降下の速度がボウル6内の水位降下の速度よりも速くなるように調整して設定されているため、導気室94b内の水位は、ボウル76内の水位よりも速く降下する。
また、サイホン作用によるボウル76からトラップ86内へ溜水を吸引する力は弱まりつつも持続しているため、ボウル76内の水位がさらに低下する。ボウル76内の水位がトラップ吸込口98の上縁よりも下回ると、ボウル76からトラップ86内に空気が引き込まれた後、サイホン作用が終了する。
ここで、ボウル76内の水位がトラップ吸込口98の上縁よりも下回り、ボウル76からトラップ86内に空気が引き込まれる際には、すでに導気通路94内の空気が導気孔100からトラップ86内へ引き込まれ、トラップ86内のサイホン作用によるボウル76からトラップ86内へ溜水を吸引する力が弱まっているため、サイホン切れ音が抑制されている。
この実験の結果の一例では、吸気管24aの開口面積を0.06cm2に設定し、洗浄前の導気通路94内の溜水量が約80cc、洗浄時に導水路80内を通過する大便器用の洗浄水量が10Lの場合、トラップ86内が満水となり、サイホン作用が開始してから、ボウル76からトラップ86内に空気が引き込まれてサイホン作用が終了するまでのサイホン持続時間は、約4〜6秒となった。
また、トラップ86内でサイホン作用が発生し、導気通路94の導気孔100からトラップ15内に空気が導入され始めるまでの時間は2〜5秒となり、導気通路94内の水位降下がサイホン持続時間以内(約4〜6秒以内)に完了し、導気孔100からトラップ86内に空気が導入されて、サイホン切れ音が抑制されていることが確認できた。
したがって、上述した実験結果を踏まえると、サイホン切れ音の抑制するには、好ましくは、ボウル76からトラップ86内に空気が引き込まれる1〜2秒前に、導気孔100からトラップ86内に空気が導入され始めるように上記各パラメータを設定するのがよい。
さらに、ボウル76内からトラップ86内に空気が引き込まれる直前に導気室94b内の空気が導気孔100からトラップ86内へ適当なタイミングで導入され始めるため、十分な洗浄時間を確保すると共に、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができる。
また、第2及び第4実施形態の水洗大便器と同様に、ボウル76内の汚物の量に応じて、空気導入調整弁42を調整することもでき、大洗浄モードや小洗浄モードを適当に選択して洗浄工程を行うことができる。
また、本実施形態の水洗大便器70においては、導気孔100の形状がほぼ四角形状である形態について説明したが、このような形態に限定されず、例えば、導気孔100の横断面形状が円形である形態についても適用可能である。
2,72 便器本体
4 洗浄水タンク
6,76 ボウル
8 給水口
10,80 導水路
12,82 リム孔
13,84 ボウル排出口
14 ゼット孔
15,86 トラップ
16 排水弁
18 洗浄操作レバー
20 吸気孔
24,94 導気通路
24a,94a 吸気管
24b,94b 導気室
26 トラップ吸込口
28 仕切壁
30,64,100 導気孔
42 空気導入調整弁
52 モータバルブ
54 制御装置
62 導気パイプ
102 空気連絡口
Claims (8)
- 便器本体のボウルを洗浄し、このボウル内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器であって、
給水手段から上記ボウルに洗浄水を導くように形成された導水路と、
上記ボウルの排出口に接続され、上流部に導気孔が形成されたトラップと、
一端が導気孔に連通し、他端が大気に開放されている導気通路と、
を有し、
上記導気通路は、待機時において溜水が溜まるように形成されており、上記ボウルの洗浄時において、サイホン作用の初期には上記導気通路内の溜水が上記導気孔を通って上記トラップ内に排水され、上記ボウル内の水位が降下し、上記ボウルから上記トラップ内に空気が引き込まれる直前に上記導気通路内の溜水の排水が終了し、大気が上記導気通路を通って上記トラップ内に導入され始めるように構成されていることを特徴とする水洗大便器。 - 便器本体のボウルを洗浄し、このボウル内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器であって、
給水手段から上記ボウルに洗浄水を導くように形成された導水路と、
上記ボウルの排出口に接続され、上流部に導気孔が形成されたトラップと、
一端が導気孔に連通し、他端が大気に開放されている導気通路と、
を有し、
上記導気通路は、少なくとも一部が上記トラップに隣接して形成され、一端が導気孔に連通する導気室と、この導気室の端部に一端が接続され、他端が大気に開放されている吸気管と、を有し、
上記ボウルの洗浄時において、サイホン作用の初期には上記導気室内の溜水が上記導気孔を通って上記トラップ内に排水され、上記導気室内の溜水の排水が終了すると、大気が上記吸気管及び上記導気室を通って上記トラップ内に導入され始めるように構成されていることを特徴とする水洗大便器。 - 上記導気室は、上記トラップと上記ボウルとの間の空間を利用して一体に形成されている請求項2記載の水洗大便器。
- 上記導気通路は、管部材により形成されている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
- 上記導水路は、上記ボウルの排出口に隣接して設けられ、上記トラップに水を噴き出すゼット孔を含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
- 上記ボウルから上記トラップ内に空気が引き込まれる所定時間前に、上記導気通路内の溜水の排水が終了し、大気が上記導気通路を通って上記トラップ内に導入され始める請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。
- 上記導気通路には、上記導気孔から上記トラップ内へ導入される空気の量を調整する空気導入調整手段が設けられ、この空気導入調整手段は、上記導気孔から上記トラップ内へ空気が導入され始めるタイミングを調整するように構成されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
- さらに、上記空気導入調整手段の開度を制御する制御手段を有し、この制御手段は、洗浄モードに応じて、上記空気導入調整手段を通過する流量を切り換えるように構成されている請求項7記載の水洗大便器。
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