JP2006151339A - シートベルトリトラクタ、シートベルト装置、シートベルト装置付車両 - Google Patents

シートベルトリトラクタ、シートベルト装置、シートベルト装置付車両 Download PDF

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Abstract

【課題】 車両に搭載されるシートベルトリトラクタの小型化を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 車両に搭載されるシートベルト装置のリトラクタ130において、モータ133の回転中心である駆動軸と、スプール132の回転中心であるスプール軸と、モータ回転を減速するモータ減速機構の回転中心である減速軸とが、スプール外周面132aの幅方向に沿って概ね同一直線上に配置される構成とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、車両に搭載されるシートベルトリトラクタの構築技術に関するものである。
従来、車両乗員を拘束するシートベルト(ウェビング)によって当該車両乗員の保護を図る構成のシートベルト装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、シートベルト装置において、電動モータによってシートベルトのベルト巻き取り方向またはベルト巻き出し方向へスプール(巻き取り軸)を回転駆動可能なシートベルトリトラクタの構成が開示されている。
特表2003−507252号公報
特許文献1に記載の技術では、シートベルトリトラクタの構造として、スプールに関するシートベルトの巻き取り動作または巻き出し動作を、電動モータによって行う可能性が提示されているが、この種のシートベルト装置の設計に際しては、シートベルトリトラクタを収容する大きさの限られたピラー部分等の形状に対応させて、当該シートベルトリトラクタの小型化を図る一層の技術的探求が要請される。
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両に搭載されるシートベルトリトラクタの小型化を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明が構成される。本発明は、典型的には自動車の車両に搭載されるシートベルトリトラクタに適用することができるが、自動車以外の車両に搭載されるシートベルトリトラクタの構築技術に対し本発明を応用し得る。
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項1に記載のこのシートベルトリトラクタは、スプール、モータ、モータ減速機構、制御手段を少なくとも備える。
本発明のスプールは、シートベルトを、スプール外周面に巻き取る動作と当該スプール外周面から巻き出す動作が可能な円筒形状の部材として構成される。スプールのスプール外周面は、シートベルトの被着面(当接面)として構成される。当該シートベルトは、シートに着座した車両乗員に装着される長尺状のベルトであり、「ウェビング」とも称呼される。典型的には、車両シートに着座した車両乗員を、車両衝突などの乗員拘束時にシートベルトにより拘束することによって当該車両乗員の保護が図られる。
本発明のモータは、スプールを巻き取り方向と巻き出し方向へ回転駆動可能な機能を有するモータとして構成される。このモータは、必要に応じてスプール内またはスプール外の領域に適宜配置される。
本発明のモータ減速機構は、モータの駆動軸とスプールとの間において複数のギアを介してモータ回転を減速する機能を有する。
本発明の制御手段は、モータの動作(回転速度、回転方向など)を制御する手段として構成される。この制御手段は、典型的にはCPU(演算処理装置)、入出力装置、記憶装置、周辺装置等によって構成される。
本発明では、特に、モータの回転中心である駆動軸と、スプールの回転中心であるスプール軸と、モータ減速機構の回転中心である減速軸とが、スプール外周面の幅方向に沿って概ね同一直線上に配置されている。このような構成によれば、モータ減速機構の簡素化及び小型化が図られるとともに、モータ、スプール、モータ減速機構の径方向に関する大きさが抑えられることとなる。シートベルトリトラクタの幅方向の長さは、モータハウジングの長軸方向の長さ、及びスプールのスプール外周面の幅方向の長さと概ね合致しているため、本発明のようにモータ、スプール、モータ減速機構の径方向に関する大きさを抑えることで、シートベルトリトラクタ全体を小型化し軽量化することが可能とされる。
また、本発明のように、スプールをモータによって回転駆動する構成によれば、当該スプールをシートベルト巻き取り方向にバネ付勢するスプリング機構を省略することができる。このスプリング機構は、スプールのスプール幅方向に沿って当該スプールに隣接して配置されるのが一般的であるため、当該スプリング機構を省略することによって、スプールのスプール幅方向に関する長さを抑え、シートベルトリトラクタ全体をより小型化することが可能となる。
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項2に記載のこのシートベルトリトラクタでは、請求項1に記載のモータは、スプールの円筒内に収容される構成になっている。本発明のように、スプールの円筒内にモータを収容する構成によれば、シートベルトリトラクタの小型化及び軽量化を図ることができるうえに、モータ駆動時における遮音性向上、電磁波の遮断性向上を図ることが可能となる。
(本発明の第3発明)
前記課題を解決する本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項3に記載のこのシートベルトリトラクタでは、請求項1または請求項2に記載の構成において、モータ減速機構が、複数のギアがモータハウジングの長軸方向と交差する方向に面一状に配置される構成になっている。このような構成によれば、複数のギアの配置構造の工夫によってモータ減速機構の長軸方向に関する長さが抑えられることとなり、当該モータ減速機構まで含めたシートベルトリトラクタ全体としての長軸方向に関する大きさを更に低減することができるため、車両に搭載されるシートベルトリトラクタをより小型化することが可能とされる。
(本発明の第4発明)
前記課題を解決する本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項4に記載のこのシートベルトリトラクタでは、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の構成において、スプール及びモータハウジングが、少なくともスプール内周面とモータハウジング外周面との間に介在するベアリング機構によって相対的に軸支された構成になっている。また、本発明では、当該軸支構造を構成するべく、スプール内周面とモータハウジング外周面との間に介在するベアリング機構以外のベアリング機構を、必要に応じて適宜追加することもできる。このような構成によれば、モータハウジングに対するスプールの相対的な回転動作が、簡便な構成の軸支構造によって許容される。
(本発明の第5発明)
前記課題を解決する本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項5に記載のこのシートベルトリトラクタは、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の構成において、自動車の後席シートの車両乗員に用いることが可能な寸法構成を有する。このような構成によれば、小型化構造を有するシートベルトリトラクタが提供される。なお、このような寸法構成のシートベルトリトラクタは、自動車の後席シート用として車両内の比較的大きさの限られた空間領域に収容されることが可能であるが、後席シート用として小型化構造を有しているところ、もちろん前席シート用として車両内に収容することも可能である。
(本発明の第6発明)
前記課題を解決する本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項6に記載のこのシートベルトリトラクタは、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の構成において、自動車のAピラーよりも車両後方側の後部ピラー内の収容空間に収容される。ここでいう「後部ピラー」は、2列シート配列の自動車の車両においてはBピラーやCピラーがこれに相当し、2列シート配列の自動車の車両においてはBピラーやCピラー、またDピラーなどがこれに相当する。このような構成によれば、大きさの限られた後部ピラー内の収容空間に収容することが可能な小型のシートベルトリトラクタが提供される。
(本発明の第7発明)
前記課題を解決する本発明の第7発明は、請求項7に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項7に記載のこのシートベルトリトラクタは、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の構成において、自動車のシート内の収容空間に収容される。ここでいう「シート」には、前席(前列)の運転席シートや助手席シート、また前席よりも後ろの列の乗員シートが広く包含される。このような構成によれば、大きさの限られたシート内の収容空間に収容することが可能な小型のシートベルトリトラクタが提供される。
(本発明の第8発明)
前記課題を解決する本発明の第8発明は、請求項8に記載されたとおりのシートベルトリトラクタである。
請求項8に記載のこのシートベルトリトラクタは、請求項6または請求項7に記載の収容空間において、スプールのスプール外周面が車両前後方向に沿って配置されるとともに、当該スプール外周面の幅方向の長さが、後部ピラー内の収容空間、あるいはシート内の収容空間の車両前後方向に関する長さと概ね合致するように構成されている。このような構成によれば、特に車両前後方向の大きさの限られた後部ピラー内の収容空間、あるいはシート内の収容空間に収容することが可能な小型のシートベルトリトラクタが提供される。
(本発明の第9発明)
前記課題を解決する本発明の第9発明は、請求項9に記載されたとおりのシートベルト装置である。
請求項9に記載のこのシートベルト装置は、請求項1〜8のいずれかに記載のシートベルトリトラクタと、シートに着座した車両乗員に対して装着され、シートベルトリトラクタのスプールのスプール外周面に対し巻き取りまたは巻き出しが可能なシートベルトを少なくとも備える、シートベルト装置として構成される。
このような構成によれば、シートベルトリトラクタを小型化及び軽量化することによって、車両に搭載されるシートベルト装置を小型化及び軽量化することが可能とされる。これにより、車両におけるシートベルト装置の配置場所の自由度が高まる。
(本発明の第10発明)
前記課題を解決する本発明の第10発明は、請求項10に記載されたとおりのシートベルト装置付車両である。
請求項10に記載のこのシートベルト装置付車両は、請求項9に記載のシートベルト装置が、車両内の収容空間、例えばピラー内の収容空間、シート内の収容空間、あるいは車両内のその他の収容空間に収容された構成の車両である。このような構成によれば、小型化されたシートベルト装置が車両内の収容空間に収容された構成の車両が提供される。
以上のように、本発明によれば、特にシートベルトリトラクタの構造に関し、モータの回転中心である駆動軸と、スプールの回転中心であるスプール軸と、モータ減速機構の回転中心である減速軸とを、スプール外周面の幅方向に沿って概ね同一直線上に配置することによって、シートベルトリトラクタの径方向に関する大きさを抑えることができ、これにより車両に搭載されるシートベルトリトラクタ全体の小型化を図るのに有効な技術が提供されることとなった。
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1〜図3を参照しながら、本発明における「シートベルト装置」の一実施の形態であるシートベルト装置100の構成を説明する。
本実施の形態に係る車両搭載用のシートベルト装置100の構成が図1に模式的に示される。
図1に示すように、本実施の形態のシートベルト装置100は、本発明の「シートベルト装置付車両」である自動車車両に搭載される車両用のシートベルト装置であり、シートベルト110、リトラクタ130、ECU150を主体に構成されている。また、車両には、当該車両の衝突予知や衝突発生に関する情報、当該車両の運転状態に関する情報、シートに着座している車両乗員の着座位置や体格に関する情報、周辺の交通状況に関する情報、天候や時間帯に関する情報などの各種の情報を検出して、その検出情報をECU150に対し入力する入力要素170が搭載されている。この入力要素170の検出情報が、常時又は所定時間毎にECU150に伝達され、シートベルト装置100などの動作制御に用いられる。
シートベルト110は、運転席である車両シート10(本発明における「シート」に対応)に着座した車両乗員Cの拘束または拘束解除に用いられる長尺状のベルト(ウェビング)である。このシートベルト110は、車両に対し固定されたリトラクタ130から引き出され、車両乗員Cの乗員肩部領域に設けられたショルダーガイドアンカー111を経由し、トング(タング)112を通ってアウトアンカー114に連結されている。ショルダーガイドアンカー111は、車両乗員Cの乗員肩部領域においてシートベルト110を係止しガイド(誘導)する機能を有する。そして、車体に対し固定されたバックル116にトング(タング)112が挿入されることによって、当該シートベルト110が車両乗員Cに対し装着状態となる。このシートベルト110が、本発明における「シートベルト」に対応している。
リトラクタ130は、後述するスプール132を介してシートベルト110の巻き取り動作ないし巻き出し動作が可能な装置であり、本発明における「シートベルトリトラクタ」に対応している。このリトラクタ130は、図1に示す例では、車両のBピラー12内の収容空間に装着されている。
ECU150は、入力要素170からの入力信号に基づいて、リトラクタ130をはじめ、各種の動作機構に関する制御を行う機能を有し、CPU(演算処理装置)、入出力装置、記憶装置、周辺装置等によって構成されている。特に本実施の形態の説明では、このECU150がリトラクタ130の後述するモータ133に関する制御を行う。具体的には、ECU150が、モータ133の電磁コイルに供給される電力供給量(電磁コイルに通電される電流や電圧の値)や電力供給方向(電磁コイルにおける通電方向)を制御することによって、モータシャフトの回転速度や回転方向が可変とされる。このECU150が、本発明における「制御手段」に対応している。
ここで、図2及び図3を参照しながら、リトラクタ130の詳細な構成を説明する。図2には、図1中のリトラクタ130の断面構造が示され、図3には、図2中のリトラクタ130のA−A線断面矢視図が示される。
図2に示すように、本実施の形態のリトラクタ130は、車体に取り付け固定されるベースフレーム(リトラクタ本体フレーム)131の内部に、スプール(巻き取り軸)132、モータ133、ホールセンサ134、磁気ディスク135、内歯車136、プラネタリギア137、サンギア138、キャリア139、ベアリング140,141が装着される構成になっている。
リトラクタ130のスプール132は、ベースフレーム131に対し回転動作可能に支持される部材であり、本発明における「スプール」に対応している。具体的には、スプール132は、固定側部材である内歯車136との間に介在するベアリング140及び、固定側部材であるモータ133の本体部との間に介在するベアリング141によって、固定側部材に対し回転動作可能な構成とされている。すなわち、スプール132及びモータ133のモータハウジング133aは、スプール外側面と内歯車内側面との間に介在するベアリング機構(ベアリング140)と、スプール内周面とモータハウジング外周面との間に介在するベアリング機構(ベアリング141)とによって相対的に軸支された構成になっている。このような構成によれば、モータハウジング133aに対するスプール132の相対的な回転動作が、簡便な構成の軸支構造によって許容される。
このリトラクタ130では、スプール132のスプール外周面132aにシートベルト110が巻き取られ、あるいはこのスプール132のスプール外周面132aからシートベルト110が巻き出されるようになっている。すなわち、スプール132のスプール外周面132aは、シートベルト110の被着面(当接面)として構成される。詳細については後述するが、モータ133のモータシャフトが、一方の方向に回転動作することによってシートベルト110をスプール132から巻き出す操作がなされ、他方の方向に回転動作することによってシートベルト110をスプール132に巻き取る操作がなされる。
本実施の形態のように、スプール132をモータ133によって回転駆動する構成によれば、当該スプール132をシートベルト巻き取り方向にバネ付勢するスプリング機構を省略することができる。このスプリング機構は、スプール132のスプール幅方向に沿って当該スプールに隣接して配置されるのが一般的であるため、当該スプリング機構を省略することによって、スプール132のスプール幅方向に関する長さを抑え、リトラクタ130全体をより小型化することが可能となる。
このスプール132は、一方の底面が有底で他方の底面が開口した円筒形状に形成されており、その円筒内の中空空間132bに開口側からモータ133が挿入され、収容(内蔵)される構成になっている。スプール132内の中空空間132bにモータ133が収容されたこのモータ収容状態では、モータ133のモータハウジング133aがスプール132のスプール外周面132aの幅方向に沿った長軸方向に延在する。
このモータ収容状態では、モータ133のモータハウジング133aの長軸方向の長さL1と、スプール132のスプール外周面132aの幅方向の長さL2、更にはシートベルト110のシートベルト幅の3つが概ね合致するようになっている。すなわち、本実施の形態では、シートベルト110の規格幅に見合うように、モータハウジング133aの長軸方向の長さ、及びスプール外周面132aの幅方向の長さが設定される。また、図2に示すように、本実施の形態では、スプール132全体としての幅方向の長さが、スプール外周面132aの幅方向の長さとほぼ同じであり、実質的にスプール132全体としての幅方向の長さ、モータハウジング133aの長軸方向の長さL1、スプール外周面132aの幅方向の長さL2、シートベルト110のシートベルト幅の4つが概ね合致することとなる。
このような構成によれば、モータハウジング133aの長軸方向の大きさに見合うように、スプール132のスプール幅を抑え、リトラクタ130全体としての長軸方向に関する大きさを低減することができるため、車両に搭載されるリトラクタ130及びシートベルト装置100を小型化することが可能とされる。これにより、車両におけるリトラクタ130及びシートベルト装置100の配置場所の自由度が高まる。このとき、スプール132のスプール幅の範囲内でモータハウジング133aを極力長軸方向に長くすることによって、より動力性能の高いモータを使用することが可能とされる。
また、本実施の形態のように、スプール132の円筒内にモータ133を収容する構成によれば、リトラクタ130の小型化及び軽量化を図ることができるうえに、モータ駆動時における遮音性向上、電磁波の遮断性向上を図ることが可能となる。
また、本実施の形態では、モータ133のモータハウジング133aの外径(直径)D1と、スプール132のスプール外周面132aの外径D2との比率(D1/D2)が0.8以下となるように構成されるのが好ましい。この比率(D1/D2)は、0.8以下の範囲において適宜設定可能である。例えば、モータ133の外径D1を40[mm]とし、スプール132のスプール外周面132aの外径D2を55[mm]とすることができる。この場合、比率(D1/D2)がおよそ0.73となる。このような構成によれば、モータ133の径方向の大きさに見合うように、スプール132の径方向の大きさを抑えることができ、リトラクタ130全体としての径方向に関する大きさを低減することが可能とされる。
更に、本実施の形態のスプール132は、リトラクタ130の実質的な外形を規定するとともに、少なくともモータ133等の主要なスプール構成要素を収容する「シートベルトリトラクタ本体部(リトラクタハウジング)」を形成している。そして、本実施の形態では、モータ133のモータハウジング133aの容積(モータハウジング133aの占める容積)V1と、スプール132の円筒の容積V2と、シートベルトリトラクタ本体部内の収容容積V3との相関において、V3<V1+V2となるように設定されている。本構成において、スプール132の容積V2は、シートベルトリトラクタ本体部内の収容容積V3と実質的に合致する。また、シートベルトリトラクタ本体部内の収容容積V3は、典型的には巻き取り状態のシートベルト内に形成される空間容積として規定される。容積に関するこのような設定範囲は、スプール及びモータに関する相対的な容積を勘案したうえで、シートベルトリトラクタの小型化を図るのに有効なリトラクタ小型化調整領域として規定される。より好ましくは、V3<(V1+V2)×Nであり、0.5<N<1となるように設定される。また、確実にリトラクタの小型化及び軽量化を図る上においては、V3<(V1+V2)×NにおけるNの設定範囲に関し、更に好ましくは、0.55<N<0.95、更に好ましくは0.55<N<0.85、更に好ましくは0.55<N<0.75を採用することができる。
また、本実施の形態では、モータ133のモータハウジング133aの容積(モータハウジング133aの占める容積)V1と、スプール132の円筒の容積V2との比率(V1/V2)に関しては、当該比率(V1/V2)が4割(概ね0.4)以上で且つ10割(概ね1)を下回るような、容積比率に関するリトラクタ小型化調整領域(本発明における「リトラクタ小型化調整領域」に対応)に設定されている。
上記のようなリトラクタ小型化調整領域は、本実施の形態のスプール132及びモータに関する相対的な容積を勘案したうえで、リトラクタ130の小型化を図るのに有効な領域として規定される。具体的には、図2に示すように、リトラクタ130の幅方向の長さは、モータハウジング133aの長軸方向の長さL1、及びスプール132のスプール外周面132aの幅方向の長さL2と概ね合致しているため、実質的にスプール132やモータ133の径方向の相対的な長さを好適に定めることによって、上記リトラクタ小型化調整領域に対応した各容積の相対的な関係が設定されることとなる。このような構成により、リトラクタの小型化が図られる。特に、本実施の形態のような寸法構成のシートベルトリトラクタ130は、セダンタイプの自動車の後席シート用として車両内の比較的大きさの限られた空間領域に収容されることが可能であるが、後席シート用として小型化構造を有しているところ、もちろん前席シート用として車両内に収容することも可能である。
本実施の形態のモータ133は、いわゆる「インナーロータ型のブラシレスモータ」と称呼されるタイプの電動モータとして構成される。このモータ133が、本発明における「モータ」に対応している。このモータ133は、モータハウジング133a内において、磁石をロータ(回転子)にして内側に収容するとともに、巻線をステータ(固定子)にして外側に配置し、ロータの回転に伴ってモータシャフトが回転するように構成されている。また、このモータ133には、モータハウジング133a側にホールセンサ(磁気位置検出センサ)134が装着され、ロータ側に磁気ディスク135が装着されている。当該ホールセンサ134及び磁気ディスク135の協働によって、ロータの位置が検出され、この検出情報から得られるシートベルト110の巻き出し量または巻き取り量に基づいて、モータ回転数やモータ負荷に関する制御が可能とされる。このように、本実施の形態では、モータ133におけるロータの位置検出手段が、シートベルト110の巻き出し量または巻き取り量を検出する手段として兼用化されている。従って、このモータ133のような構成のブラシレスモータを用いることによって、ロータの回転速度及び回転方向、シートベルト110の巻き出し量または巻き取り量などの検知する特別なセンサ類が必要とならず合理的である。また、このモータ133のような構成のブラシレスモータは、本体の小型化、出力の向上、放熱性の向上を得るのに効果的である。
図2及び図3に示すように、このモータ133のモータシャフトは、サンギア138を有する構成になっており、このサンギア138の外周に3つのプラネタリギア137が係合するように構成されている。更に、これらプラネタリギア137の外周は、内歯車136の内周に係合するように構成されている。すなわち、プラネタリギア137は、内歯車136とサンギア138との間に介在する、いわゆる「遊星ギア」と称呼されるギアとして構成される。また、この内歯車136にキャリア139が止着されており、更にこのキャリア139に対しスプール132が連結されている。上記の内歯車136、プラネタリギア137、サンギア138は、モータ133の減速機構(本発明における「モータ減速機構」に対応)を構成するものであり、本実施の形態では、このモータ減速機構がモータハウジング133aの長軸方向に沿って当該モータハウジング133aに隣接して配置されている。また、本実施の形態では、このモータ減速機構を構成する複数のギアが、モータシャフトの軸方向と直交する方向に面一状に並んで配置されている。このような構成によれば、複数のギアの配置構造の工夫によってモータ減速機構の長軸方向に関する長さが抑えられることとなり、当該モータ減速機構まで含めたリトラクタ130全体としての長軸方向に関する大きさを更に低減することができるため、車両に搭載されるリトラクタ130及びシートベルト装置100をより小型化することが可能とされる。
また、本実施の形態では、スプール外周面132aの幅方向に関する第1の長さと、モータハウジング133aの長軸方向に関する長さ及びモータ減速機構の長軸方向に関する長さを合わせた第2の長さ、更にはシートベルト110のシートベルト幅の3つが概ね合致するようになっている。すなわち、本実施の形態では、シートベルト110の規格幅に見合うように、第1の長さ及び第2の長さが設定される。また、図2に示すように、本実施の形態では、スプール132全体としての幅方向の長さが、スプール外周面132aの幅方向の長さとほぼ同じであり、実質的にスプール132全体としての幅方向の長さ、第1の長さ、第2の長さ、シートベルト110のシートベルト幅の4つが概ね合致することとなる。このような構成によれば、モータハウジング133a及びモータ減速機構を合わせた長軸方向の大きさに見合うように、スプール132のスプール幅を抑え、シートベルトリトラクタ全体としての長軸方向に関する大きさを低減することができる。
また、本実施の形態では、モータ133の回転中心である駆動軸(モータシャフト)、スプール132の回転中心であるスプール軸、減速機構を構成するサンギア138の回転中心である減速軸は、スプール外周面132aの幅方向に沿って概ね同一直線上に並んで配置されている。このような構成によれば、モータ減速機構の簡素化及び小型化が図られるとともに、モータ133、スプール132、モータ減速機構の径方向に関する大きさが抑えられることとなり、リトラクタ全体を小型化し軽量化することが可能とされる。
上記リトラクタ130の構成において、モータ133のモータシャフトが回転動作すると、サンギア138に係合する3つのプラネタリギア137は、サンギア138の減速軸(モータ133の駆動軸)の軸まわりに回転動作し、これによりキャリア139を介してスプール132が回転動作することとなる。例えば、図3において、サンギア138が減速軸を中心にして右回りに回転動作するとき、3つのプラネタリギア137は、サンギア138とのギア外周と内歯車136のギア内周との間において、左方向に自転しつつこのサンギア138の周りを右回りに公転するように回転動作する。反対に、サンギア138が減速軸を中心にして左回りに回転動作するとき、3つのプラネタリギア137は、サンギア138とのギア外周と内歯車136のギア内周との間において、右方向に自転しつつこのサンギア138の周りを左回りに公転するように回転動作する。このとき、モータ133の回転数は数分の1に減速され、反対にトルクは強められてスプール132に伝達される。スプール132に伝達された回転力によって、当該スプール132の外周面におけるシートベルト110の巻き取り動作または巻き出し動作がなされることとなる。このような構成によれば、モータ減速機構を簡素化することができ、リトラクタ全体の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
上記構成のシートベルト装置100において、リトラクタ130のモータ133の動作制御は、車両乗員に対する拘束または拘束解除を行う際に用いられ、図1中の入力要素170からの各種の入力信号の基づき、ECU150により適宜実施される。すなわち、本実施の形態のシートベルト装置100は、入力要素170からの入力信号に基づいてECU150がモータ133の動作を制御し、これによってシートベルト110の張力を調節し、車両乗員の拘束状態を調節する機能を有しており、車両における乗員拘束システムを構成するものである。具体的には、以下の第1〜第5の形態を採用することができる。
第1の形態(装着モード)として、車両乗員がトング(タング)112を持ってシートベルト110のバックル116を装着する操作において、車両乗員がシートベルト110を引き出し易くするように、モータ133の動作をベルト巻き出し方向に制御する。これにより、シートベルト引き出し時の負荷と動作を軽減することが可能となる。
また、第2の形態(フィットモード)として、シートベルト装着状態において、シートベルト110に所定の張力が作用するように、モータ133の動作をベルト巻き取り方向に制御する。これにより、シートベルト引き出し時に生じた弛みをなくすことが可能となる。また、必要に応じて、モータ133の動作をベルト巻き取り方向またはベルト巻き出し方向に微調整制御することによって、シートベルト装着中のフィット感を調整することができる。
また、第3の形態(プリリワインド(拘束)モード)として、シートベルト装着状態において、シートベルト110に強めの張力が作用するように、モータ133の動作をベルト巻き取り方向に制御する。これにより、車両衝突や急制動などによる車両乗員の姿勢変化を拘束し保護徹底が図られる。
また、第4の形態(警告モード)として、シートベルト装着状態において、危険や事故発生を予知すると、シートベルト110に作用する張力を調節して車両乗員に注意を促すように、モータ133の動作をベルト巻き取り方向またはベルト巻き出し方向に制御する。例えば、シートベルト110に作用する張力の強い状態と弱い状態を所定回数繰り返す。これにより、車両乗員の居眠り防止、衝突防止などが可能とされる。
また、第5の形態(格納モード)として、車両乗員がバックル116からトング(タング)112を脱着する操作において、車両乗員がシートベルト110を格納し易くするように、モータ133の動作をベルト巻き取り方向に制御する。これにより、シートベルト格納時の負荷と動作を軽減することが可能となる。
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記実施の形態では、運転席に着座する車両乗員に対し使用され、Bピラー内の収容空間に収容されるリトラクタ130について記載したが、助手席をはじめ後部座席に着座する車両乗員に対し使用されるリトラクタの構造に本発明を適用することもできる。本発明のリトラクタの構造を後部座席に着座する車両乗員に対し用いる場合、当該リトラクタは、2列シート配列の自動車の車両においてはCピラー内の収容空間に収容され、3列シート配列の自動車の車両においてはCピラーやDピラー内の収容空間に収容される。特に、CピラーやDピラー内の収容空間は車両前後方向の大きさが制限されることがあり、このような場合には、本実施の形態のリトラクタ130のように幅方向の大きさに関しコンパクト化されたリトラクタは、とりわけ効果的である。
また、上記実施の形態では、リトラクタ130を車両ピラー内の収容空間に収容する場合について記載したが、本発明では、車両内の各部位のうち、車両ピラー以外の収容空間にリトラクタを収容するように構成することもできる。例えば、前席(前列)の運転席シートや助手席シート、また前席よりも後ろの列の乗員シートにつき、これらシートの内部に収容空間を設け、この収容空間に本実施の形態のリトラクタ130を収容する構成が可能である。当該シートは、車両ピラーと同様に車両前後方向の大きさが制限されることがあり、このような場合には、本実施の形態のリトラクタ130のように幅方向の大きさに関しコンパクト化されたリトラクタは、とりわけ効果的である。
また、上記実施の形態では、スプール132の中空空間132bにモータ133が収容される場合について記載したが、本発明では、モータ133をスプール132外に配置する構成を用いることも可能である。
また、上記実施の形態では、自動車に装着されるシートベルト装置の構成について記載したが、自動車をはじめ、航空機、船舶、電車等の各種の車両に装着されるシートベルト装置の構成に本発明を適用することができる。
本実施の形態に係る車両搭載用のシートベルト装置100の構成を模式的に示す図である。 図1中のリトラクタ130の断面構造を示す図である。 図2中のリトラクタ130のA−A線断面矢視図である。
符号の説明
10…車両シート
12…Bピラー
100…シートベルト装置
111…ショルダーガイドアンカー
112…トング(タング)
114…アウトアンカー
116…バックル
110…シートベルト
130…リトラクタ
131…ベースフレーム
132…スプール
132a…スプール外周面
132b…中空空間
133…モータ
133a…モータハウジング
134…ホールセンサ
135…磁気ディスク
136…内歯車
137…プラネタリギア
138…サンギア
139…キャリア
140,141…ベアリング
150…ECU
170…入力要素
C…車両乗員

Claims (10)

  1. シートに着座した車両乗員に対して装着されるシートベルトを、スプール外周面に巻き取る動作と当該スプール外周面から巻き出す動作が可能な円筒形状のスプールと、
    前記スプールを巻き取り方向と巻き出し方向へ回転駆動可能なモータと、
    前記モータの駆動軸と前記スプールとの間において複数のギアを介してモータ回転を減速するモータ減速機構と、
    前記モータの動作を制御する制御手段と、
    を備え、
    前記モータの回転中心である駆動軸と、前記スプールの回転中心であるスプール軸と、前記モータ減速機構の回転中心である減速軸とが、前記スプール外周面の幅方向に沿って概ね同一直線上に配置されていることを特徴とする、シートベルトリトラクタ。
  2. 請求項1に記載のシートベルトリトラクタであって、
    前記スプールの円筒内に前記モータを収容する構成のシートベルトリトラクタ。
  3. 請求項1または2に記載のシートベルトリトラクタであって、
    前記モータ減速機構は、複数のギアが前記モータハウジングの長軸方向と交差する方向に面一状に配置される構成であることを特徴とする、シートベルトリトラクタ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のシートベルトリトラクタであって、
    前記スプール及びモータハウジングは、スプール内周面とモータハウジング外周面との間に介在するベアリング機構によって相対的に軸支された構成であることを特徴とする、シートベルトリトラクタ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のシートベルトリトラクタであって、
    自動車の後席シートの車両乗員に用いることが可能な寸法構成を有することを特徴とする、シートベルトリトラクタ。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のシートベルトリトラクタであって、
    自動車のAピラーよりも車両後方側の後部ピラー内の収容空間に収容される構成であることを特徴とする、シートベルトリトラクタ。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のシートベルトリトラクタであって、
    自動車のシート内の収容空間に収容される構成であることを特徴とする、シートベルトリトラクタ。
  8. 請求項6または7に記載のシートベルトリトラクタであって、
    前記収容空間において、前記スプールのスプール外周面が車両前後方向に沿って配置されるとともに、当該スプール外周面の幅方向の長さが、前記収容空間の車両前後方向に関する長さと概ね合致するように構成されていることを特徴とする、シートベルトリトラクタ。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のシートベルトリトラクタと、
    シートに着座した車両乗員に対して装着され、前記シートベルトリトラクタのスプールのスプール外周面に対し巻き取りまたは巻き出しが可能なシートベルトと、
    を備える、シートベルト装置。
  10. 請求項9に記載のシートベルト装置が、車両内の収容空間に収容された構成のシートベルト装置付車両。
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