JP2006148000A - ガラスセラミック配線基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガラスセラミック製の絶縁基体にリードピンをろう付けし、その後放熱部材をろう付けする際にリードピン接続パッド内に生成される金属間化合物とAg−Cu合金ろう材との熱膨張係数の差が大きいため、リードピン接続パッド内に残留応力が発生し、リードピンに外力が加わった際にリードピン接続パッド部の破壊が発生しやすくなるという問題があった。
【解決手段】 ガラスセラミックスから成る絶縁基体の主面に配線導体が形成されるとともに、前記絶縁基体の一方主面の前記配線導体に、リードピンのヘッド部が活性金属としてTiを含むAg−Cu合金ろう材から成るリードピン接続パッドを介して接続されており、前記絶縁基体の他方主面に、放熱部材が活性金属としてTiを含むAg−Cu合金ろう材から成る放熱部材接続パッドを介して接合されている配線基板であって、前記リードピン接続パッドを、Ag−Cu合金ろう材とNiおよびTiから成る金属間化合物で構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】 ガラスセラミックスから成る絶縁基体の主面に配線導体が形成されるとともに、前記絶縁基体の一方主面の前記配線導体に、リードピンのヘッド部が活性金属としてTiを含むAg−Cu合金ろう材から成るリードピン接続パッドを介して接続されており、前記絶縁基体の他方主面に、放熱部材が活性金属としてTiを含むAg−Cu合金ろう材から成る放熱部材接続パッドを介して接合されている配線基板であって、前記リードピン接続パッドを、Ag−Cu合金ろう材とNiおよびTiから成る金属間化合物で構成する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージや回路基板、電子回路モジュール等に使用される、入出力端子用のリードピンが取着された、所謂ピングリッドアレイ(PGA)用のガラスセラミック配線基板に関する。
従来から、IC,LSI等の半導体集積回路素子等の半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージや、高周波回路や電力回路等を構成する回路基板あるいは電子回路モジュール等には、セラミックスから成る絶縁基体の表面および内部の少なくとも一方に配線導体を有する配線基板が使用されている。この配線基板には、一般的に、リードピン、ボール端子等の端子部材や放熱板、放熱フィン等の放熱部材、あるいは配線基板と蓋体とから成る容器の内部に半導体素子を気密に収容するために、金属製の蓋体を取着するためのシールリング等のシール部材といった金属部材が、配線基板の表面のメタライズ層から成る配線導体にろう材を介して接合されている。
上記の配線基板においては、高周波信号を高速で伝送する上で、配線導体を形成する導体の抵抗が低いことが要求され、絶縁基体にもより低い誘電率が要求されている。
例えば、誘電率が低く高周波用の絶縁基体として好適であるガラスセラミックスを絶縁基体に用い、Cu,Ag,Au等の低抵抗金属のメタライズ層を配線導体として形成した配線基板が多用されている。
一方、配線基板材料をガラスセラミックスとした場合には、ガラスセラミックスはガラス成分を多量に含有することから、その磁器強度は従来のアルミナセラミックス等に比べて低く、また、低抵抗金属は融点が低いことから低温で焼成する必要があるため、メタライズ層から成る配線導体のガラスセラミックスへの接合強度も低いものとなっている。このような配線基板のメタライズパッドにろう材を介してリードピンを接合しピングリッドアレイ型のリードピン付き配線基板とした場合、外部電気回路に配線基板を装着するためにリードピンを外部電気回路のソケットに差し込んだり、外部電気回路に配線基板を装着後に故障や交換等のメンテナンス等が必要となりリードピンを引き抜いたりした際に、リードピンに垂直方向や斜め方向からの外力が働くと、絶縁基体であるガラスセラミックスとメタライズパッドとの界面に破壊応力が発生して、メタライズパッドに剥がれが生じたり、ガラスセラミックスそのものがその破壊応力に屈して破壊されたりして、接合信頼性が低下するという問題点があった。
そこで、磁器強度の弱いガラスセラミックス等の絶縁基体とメタライズパッドとの界面における破壊を回避する手法として、活性金属としてTiを含有するAg−Cu合金ろう材を用いて、リードピン接合用のメタライズパッドを配線基板に形成せずに、配線基板の内部から下面に導出された配線導体としての貫通導体(ビア導体)が絶縁基体の表面に露出した部位を含む領域にリードピンを直接接合する手法が提案されている。
この手法では、メタライズパッドを介さずに、配線基板の配線導体の一部である貫通導体の絶縁基体の表面に露出した部位とリードピンとを、Tiを含有するAg−Cu合金ろう材から成るリードピン接続パッドを介して直接接続することによって電気的な接続を行なうことができる。また、貫通導体の露出部は通常は直径が約100μm以下と小さいことから、リードピンは実質的には絶縁基体とリードピン接続パッドを介して接合されるため、メタライズパッドと絶縁基体との接合強度に依存することなくリードピンを接合することができ、絶縁基体とメタライズパッドとの間の界面における破壊を回避することができる。
さらに、近年において半導体素子の発熱量は増大する傾向にあり、これに対応するために上記のリードピン付き配線基板に熱伝導率が高いAl合金やCu合金等から成る放熱部材を取着して、放熱性を高めた構造とすることが検討されている。
このようなガラスセラミックスから成る絶縁基体に放熱部材を取着する方法としては、前述のリードピンと同様に、活性金属としてTiを含有するAg−Cu合金ろう材から成る放熱部材接続パッドを介して直接接合する方法が用いられている。
この場合、リードピンと放熱部材を絶縁基体に一括して取着することを容易とするために、ろう材を予め熱処理して加工することによりリボン状とし、冶具での固定を可能としたろう材(プリフォーム材ともいう)を用いることが望ましいが、活性金属としてTiを含有するAg−Cu合金ろう材は、熱処理を行なうと活性金属が酸素あるいは窒素と反応し反応性の高い電子を失うためにその活性が失われてしまうのでリボン化できない。このため、ペースト状のTiを含有するAg−Cu合金ろう材をスクリーン印刷法やグラビア印刷法といった印刷法によってリードピン接続パッドおよび放熱部材接続パッドを形成している。
したがって、リードピンおよび放熱部材を絶縁基体に取着するには、一方主面にリードピン接続パッドまたは放熱部材接続パッドを印刷法により形成してリードピンまたは放熱部材を取着した後に、再度、他方主面にリードピン接続パッドまたは放熱部材接続パッドを印刷法により形成してリードピンまたは放熱部材を取着する、といったように印刷工程および加熱処理を数回繰り返すことによって行なわれている。
特開平8−162563号公報
特開平8−298381号公報
特開平9−18144号公報
しかしながら、上記の方法によれば、放熱部材を先に取着した後にリードピンを取着しようとした場合には、放熱部材と絶縁基体の熱膨張率の差に起因して放熱部材取着後に絶縁基体にそりが発生するために、リードピンを絶縁基体の所望の位置に取着する場合、絶縁基体主面の直径が約100μm以下と小さな貫通導体の露出部にリードピンを正確に取着することが困難であり位置ズレや断線が発生するという問題点があった。
そこで、リードピンを先に絶縁基体へ取着した後に放熱部材を取着することが考えられるが、この場合には、リードピンを接合するためのリードピン接続パッドは2回以上の加熱処理が加えられることになり、以下のような問題を発生させる。
絶縁基体に取着されるリードピンの材質としては、鉄−ニッケル−コバルト合金(Fe−Ni−Co)や鉄−ニッケル合金(Fe−Ni)や銅(Cu)が一般的であるが、これらのリードピンとリードピン接続パッドの間では、1回目の加熱によってリードピンからろう材中へ拡散する鉄(Fe)やコバルト(Co)や銅(Cu)等の元素と、Ag−Cu合金ろう材内の活性金属のTiが反応して鉄−チタン合金(Fe−Ti)やコバルト−チタン合金(Co−Ti)、銅−チタン合金(Cu−Ti)等の金属間化合物が形成され、さらに、2回目の加熱においてはAg−Cu合金ろう材とこれらの金属間化合物の界面において熱膨張率の差による内部応力が発生し残留応力が存在している。
このようなリードピン接続パッド内に残留応力を有する状態でリードピン付き配線基板をソケットへ挿抜するなどしてリードピンに外力が加えられた場合、外力と残留応力が相俟って金属間化合物に加わる応力が金属間化合物の破壊強度を超え、Ag−Cu合金ろう材と金属間化合物の界面から、比較的脆い性質を有する金属間化合物へとクラックが進行してしまい、リードピンの電気的および機械的な接合信頼性の低下を引き起こし、場合によっては絶縁基体からリードピンが脱離してしまうという問題点があった。
本発明は、上記の問題点を解決すべく案出されたもので、その目的は、ガラスセラミックスから成る絶縁基体の一方主面にリードピンが接続されており、他方主面に放熱部材が接合されている配線基板において、絶縁基体に取着したリードピンに外力が生じても、実用上耐えうるレベルのリードピンとガラスセラミックスから成る絶縁基体との接合強度を確保できる高信頼性を有した高放熱性のガラスセラミック配線基板を提供することにある。
本発明のガラスセラミック配線基板は、配線導体を有したガラスセラミック製絶縁基体に、第1のろう材で第1の金属部材を接合するとともに、前記第1のろう材よりも溶融温度の低い第2のろう材で第2の金属部材を接合してなるガラスセラミック配線基板であって、前記第1のろう材が、Ag−Cu合金ろう材とNi及びTiから成る金属間化合物とを含んで成ることを特徴とするものである。
また、本発明のガラスセラミックス配線基板は、前記第1の金属部材がリードピンであり、前記第2の金属部材が放熱部材であることを特徴とするものである。
さらに、本発明のガラスセラミックス配線基板は、前記金属間化合物が、前記リードピンの表面に形成されたNi皮膜中のNiを、Tiを含むAg−Cu合金ろう材中に拡散させることにより生成されたものであることを特徴とするものである。
本発明のガラスセラミック配線基板によれば、第1の金属部材を接合するための第1のろう材はAg−Cu合金ろう材およびNiとTiとから成る金属間化合物で構成されるとしたことから、NiおよびTiから成る金属間化合物は内部に双晶を有する結晶構造を取るために、結晶格子に歪が生じた場合、双晶のすべり変形により塑性変形を生じることで歪を緩和することができるため、放熱部材をTiを含むAg−Cu合金ろう材で取着する際に、リードピン接続パッド内に生じる残留応力を双晶のすべり変形によって軽減することができる。この結果、ソケットへ挿抜するなどしてリードピンへ外力が加えられた場合でも、リードピン接続パッド内に生じる残留応力が軽減され、リードピンが切断してしまう大きさの外力が加わった場合でも金属間化合物に加わる応力は金属間化合物の破壊強度を超えることが無く、リードピン接続パッドが破壊してリードピンが絶縁基体から脱離してしまうことがなく、より高いリードピンの接合を得ることが可能となる。
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、第1の金属部材をリードピン、第2の金属部材を放熱部材としたことから放熱性に優れたリードピン付きガラスセラミック配線基板を得ることが可能となる。
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、リードピンの表面に形成された Ni皮膜中のNiを、Tiを含むAg−Cu合金ろう材中に拡散させることによりNiとTiとから成る金属間化合物を生成するとしたことから、リードピンから、Tiを含むAg−Cu合金ろう材中へリードピンを構成元素が拡散し、Ni以外の金属元素とTiから成る金属間化合物が形成することを抑制することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。図1は半導体素子を収容する半導体素子収納用パッケージに本発明のガラスセラミック配線基板を適用した場合の実施の形態の一例を示す断面図である。図1において、1はリードピン、2はリードピン接続パッド、3はガラスセラミック配線基板(以下、配線基板ともいう)、4は半導体素子である。配線基板3のガラスセラミックスから成る絶縁基体5は、上面の中央部に半導体素子4を搭載するための搭載部7を有し、放熱部材接続パッド8の上に放熱部材9が取着されている。
絶縁基体5は、ガラスセラミックスの焼結体から成る、例えば四角形状の板状体であり、その表面および内部の少なくとも表面に配線導体6を有している。このような配線基板3は、例えば以下のようにして製作される。
まず、セラミック粉末,有機バインダ,溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて硬度や強度を調整するための所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルムや紙等の支持体上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等のシート成型方法によりセラミックグリーンシートを作製する。
ガラスセラミックスから成る絶縁基体5を得るためのセラミック粉末としては、例えばSiO2−Al2O3−MgO−ZnO−B2O3,SiO2−B2O3−Al2O3−NaO2,SiO2−B2O3−K2O−Al2O3−NaO等の硼珪酸ガラスのような低熱膨張係数のガラス粉末とアルミナ,コーディエライト,石英ガラス,ムライトのようなフィラー粉末とを混合したものを用いればよく、要求される特性に合わせてその種類や組合せ、含有量は適宜選択される。
より具体的には、30〜55質量%のSiO2、15〜40質量%のAl2O3、3〜25質量%のMgO、2〜15質量のZnO、2〜15質量%のB2O3を含有するガラス粉末64.5〜98.5質量%と、コーディエライト粉末0.5〜20質量%と、ムライト、アノーサイト、スラウソナイト、セルジアン、石英ガラスの群から選ばれる少なくとも1種のフィラー粉末1〜35質量%とを含有するものがある。このガラス粉末を1050℃以下の熱処理を施すことにより、少なくともコーディエライトを結晶相として析出させ、さらにコーディエライトとともに、ガーナイト、スピネル、ムライトの群から選ばれる少なくとも1種を結晶相として析出させることによって、絶縁基体5の低熱膨張化、低誘電率化、低ヤング率化を達成することができる。低熱膨張化と低ヤング率化により1次実装と2次実装の信頼性の向上が達成されるのでより好ましいものとなる。
次に、このセラミックグリーンシートに、導体材料の粉末をペースト化した導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷するか、あるいは所定パターン形状の金属箔を転写する等の方法を用いて、配線導体6を形成する。
導体ペーストの導体材料としては、ガラスセラミックス焼結体に対しては、Cu,Ag,Ag−Pt,Ag−Pd,Au等が好適に用いられる。
なお、この配線導体6には、絶縁基体5の上面と下面とにそれぞれ配置された導体パターン同士を絶縁基体5の内部で接続するためのビア導体やスルーホール導体等といった貫通導体の部分も含まれる。この貫通導体は、例えば、パンチング加工等によりセラミックグリーンシートに形成した貫通孔に導体ペーストを充填することによって形成される。
次に、配線導体6を形成したセラミックグリーンシートを複数枚積層し、所定の温度(ガラスセラミックスの場合であれば約900℃)で焼成することによって、配線基板3が製作される。
そして、配線基板3の下面の、配線導体6としての貫通導体が絶縁基体5の表面に露出した部位を含む領域に、活性金属としてTiを含有するAg−Cu合金ろう材をペースト化したものをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷しリードピン接続パッド2を形成し、ネイルヘッド型のリードピン1と配線基板3の配線導体6および絶縁基体5とを、リードピン接続パッド2を介してろう付けする。
Ag−Cu合金ろう材は、BAg−8(JIS Z−3261:72質量%Ag−28質量%Cu)ろう材を始めとして、Agが60〜80質量%でCuが20〜40質量%の組成から成るAg−Cu合金ろう材に、活性金属であるTiを、金属または水素化物の状態で外添加で2〜10質量%添加したものが用いられる。
このAg−Cu合金ろう材を介してリードピン1を絶縁基体5に接合するには、例えば、Ag−Cu合金ろう材の粉末に有機溶剤、バインダおよび溶媒を合わせて5〜15質量%を外添加で混合して得たろう材ペーストを、配線導体6が露出した部位、例えば貫通導体の露出した端面を含む絶縁基体5の表面に、スクリーン印刷法等によりリードピン1を取着する部位に対応した所定パターンで印刷しリードピン接続パッド2を形成し、これにリードピン1のヘッド1aを載置して、これを真空中または中性雰囲気中もしくは還元雰囲気中でAg−Cu合金ろう材の溶融温度に合わせた所定温度(例えば約800℃)で加熱処理し、Ag−Cu合金ろう材を溶融させて、配線導体6および絶縁基体5とリードピン1をろう付け接合する。
次に、絶縁基板3上面の半導体素子4の搭載部7および表面に配線導体6が露出していない部位に放熱部材接続パッド9をスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により形成し、放熱部材8と配線基板3の絶縁基体5とを放熱部材接続パッド8を介してリードピン1と同様の方法でろう付けする。
ここで、リードピン接続パッド2はAg−Cu合金ろう材とNiおよびTiから成る金属間化合物で構成されていることが重要である。NiおよびTiからなる金属間化合物は双晶を有する結晶構造であるという特徴がある。
リードピン1のろう付け接合において、リードピン接続パッド2中に形成される金属間化合物がNiおよびTiから成る金属間化合物であると、NiおよびTiから成る金属間化合物は内部に双晶を有する結晶構造であることから、放熱部材8をろう付けした際の残留応力を、この双晶がすべり変形することにより軽減することができる。このため、リードピン1にリードピン1が切断してしまう大きさの外力が加わった場合でも金属間化合物に加わる応力は金属間化合物の破壊強度を超えることが無く、リードピン接続パッド2が破壊してリードピン1が絶縁基体5から脱離してしまうことを防止できる。
これに対して、リードピン接続パッド2中に形成された金属間化合物がNi以外の金属元素とTiから成る金属間化合物の場合では結晶構造中に双晶が存在しないため、双晶のすべり変形による残留応力の軽減が生じないため、リードピン1に外力が加えられた場合、外力と残留応力が相俟って金属間化合物に加わる応力が金属間化合物の破壊強度を超え、リードピン接続パッド2が破壊しリードピン1が絶縁基体5から脱離してしまう。
リードピン接続パッド2をAg−Cu合金ろう材とNiおよびTiから成る金属間化合物で構成されたものとするには、リードピン1に予め1μm以上の厚みのNi表面層を形成したものを用いることが好ましい。
リードピン1にNi表面層を形成しておくと、ろう付けの間にリードピン1のNi表面層からリードピン接続パッド2へとNiが拡散する。リードピン接続パッド2中へ拡散したNiはリードピン接続パッド2中の活性金属であるNiと化学結合し、NiおよびTiから成る金属間化合物がリードピン接続パッド2中に形成される。このNiおよびTiから成る金属間化合物は内部に双晶を有する結晶構造をもつために、リードピン接続パッド2内において残留応力が発生した場合には双晶のすべり変形によって残留応力の軽減効果を示す。
さらに、Ni表面層はろう付け時にリードピン1からリードピン接続パッド2へとリードピン1の構成元素が拡散しNi以外の金属元素とTiから成る金属間化合物が形成することを抑制することができる。
リードピン1のNi表面層厚みが1μmより薄い場合には、リードピン1の表面を良好に被覆することが難しくなり、リードピン1を構成する元素がリードピン接続パッド2へと拡散することを防止しにくくなる。その結果、リードピン接続パッド2中にNi以外の金属元素とTiから成る金属間化合物が形成されてしまう。したがって、Ni表面層の厚みは1μm以上が好ましい。なお、Ni表面層の厚みはリードピン1からの構成元素の拡散を抑制するという観点からは1μm以上あれば良いが、Ni表面層が厚くなりすぎるとリードピン1のNi表面層に内在される残留応力が大きくなり、Ni表面層にクラックや剥がれが発生しやすくなるため、Ni表面層厚みの上限は20μm程度が望ましい。
リードピン1にNi表面層を形成する方法としては、蒸着法やめっき法を用いることができるが、特に、めっき法を用いることが、Ni表面層を比較的短時間で安価に形成できるという観点からは好ましい。
なお、本発明のガラスセラミック配線基板3に用いられるリードピン1の材質、ピン部の長さ、ヘッド部1aの厚み等は、外部電気回路のソケットの形状や接続方法等に応じて選択が可能である。例えば、半導体素子収納用パッケージに適用するリードピン1であれば、Fe−Ni合金やFe−Ni−Co合金製のものが使用され、ピン部の長さとしては1〜6mm程度の範囲のものが使用される。
また、放熱部材8の材質、形状も配線基板3の形状に応じて選択が可能である。例えば、半導体素子収納用パッケージに適用する放熱部材8であれば、Al合金やCu合金製のものが使用され、放熱板高さとしては5〜50mm程度の範囲のものが使用される。
以上のようにして、リードピン1と絶縁基体5とを接合することにより、リードピン1に外力が加わっても、絶縁基体5とリードピン1のリードピン接続パッド2を介した接合部において高い接合強度を確保することができ、良好なろう付け状態でリードピン1が接合されたガラスセラミック配線基板3を得ることが可能となる。
なお、本発明の配線基板3においては、絶縁基体5の表面に形成される配線導体6のリードピン1が接合されない部位の表面、および貫通導体の露出する表面のリードピン1が接合されない部位には、絶縁基体5とリードピン1との接合前あるいは接合後に、耐蝕性に優れ、かつAg−Cu合金ろう材2との濡れ性が良好なNiやAu等の金属層が1〜20μmの厚みでめっき法等により被着されていてもよい。
Niめっき層は、例えばPを4〜12質量%程度含有する無電解Ni−Pめっき層から成る。このようなNiめっき層は、まず、配線導体6が形成された絶縁基体5を界面活性剤と塩酸水溶液とから成る温度が25〜50℃の酸性の洗浄液に1〜5分間浸漬して、配線導体6の露出した表面を清浄とし、次にこれを純水で洗浄した後、塩化パラジウム,水酸化カリウム,エチレンジアミンテトラアセティクアシッドから成る温度が25〜40℃のパラジウム活性液中に1〜5分間程度浸漬して、配線導体6の表面にパラジウム触媒を付着させ、次にこれを純水で洗浄した後、硫酸ニッケル,クエン酸ナトリウム,酢酸ナトリウム,次亜リン酸ナトリウム,塩化アンモニウムから成る温度が50〜90℃の無電解Niめっき液中に、2〜60分間浸漬することによって、配線導体6の露出した表面に被着される。
なお、Niめっき層は、その厚みが1μm未満では、絶縁基体5の表面に形成された配線導体6の表面、図2に示す例では半導体素子4の電極が接続される電極パッド8となる部位の表面を良好に被覆することができず、配線導体6の露出した表面に酸化や変色をきたす傾向にある。他方、20μmを超えると、Niめっき層の内部応力によりNiめっき層にクラックや剥がれが発生しやすい。従って、Niめっき層の厚みは1〜20μmの範囲が好ましい。
また、Niめっき層を上述のように無電解Ni−Pめっきにより形成する場合、Niめっき層中のPの含有量が4質量%未満であると、配線導体6の露出した表面にNiめっき層を被着させる際にNiめっきの析出速度が遅くなり、所定の厚みのNiめっき層を得るために長時間を要することとなるので生産性が極めて悪くなる。他方、12質量%を超えると、Niめっき層上に被着させるAuめっき層との反応性が悪くなり、Niめっき層をAuめっき層で良好に被覆することが困難となる傾向にある。従って、Niめっき層中のPの含有量は4〜12質量%の範囲が好ましい。
特に、絶縁基体5とリードピン1との接合後に無電解めっき法によりNi−Pめっきを施すときには、リードピン接続パッド2の周りの絶縁基体5上にNiめっきが析出してしまい、隣接する配線導体6同士が短絡する場合がある。これを防止するには、Ag−Cu合金ろう材2ペースト中の樹脂バインダ量を少なくして、絶縁基体5の表面における炭素の残留を減らして絶縁基体5の表面にNiめっきが被着する要因を減らすか、めっきの前処理の段階で絶縁基体5の表面をエッチングすることにより、ろう付け時に溶融、気化してリードピン接続パッド2の周りの絶縁基体5の表面に付着したAgやCuといったろう材成分を除去するといった対策を施せばよい。
ここで、Ag−Cu合金ろう材2のペースト中の樹脂バインダ量としては、以上のような理由および印刷性の観点から、8〜12質量%の割合で外添加するのがよい。さらに、無電解めっきによるめっき層の耐熱性および変色性の低下を改善するためには、めっき後に400℃以上で加熱処理することにより、めっき層を緻密化させることが効果的である。
そして、本発明のガラスセラミック配線基板3は、搭載部7上にエポキシ樹脂やAgエポキシ樹脂等を用いて半導体素子4を搭載し、半導体素子4上の電極と、絶縁基体5の搭載部7の近傍に配線導体6の一部として形成された電極パッド8とを、Au,Cu,Al等の金属細線(ボンディングワイヤ)で電気的に接続した後、CuやAl等から成る金属製または酸化アルミニウム質焼結体等のセラミック製の蓋体9を、エポキシ樹脂等の樹脂やAu−Sn合金,Au−Ge合金といったろう材等による接着、または溶接によって取着し封止することによって、リードピン1に外力が加えられた場合でもリードピン接続パッド2から破壊することのない電気的接合信頼性の高く高放熱性の電子装置となる。
本発明のガラスセラミック配線基板の実施例について以下に説明する。
まず、44質量%のSiO2、28質量%のAl2O3、11質量%のMgO、5質量%のZnO、5質量%のB2O3、6質量%のCaO、1質量%のBaOを含有するガラス粉末85質量%と、フィラー粉末としてコーディエライト粉末5質量%と、ムライト粉末10質量%とに、有機バインダ、有機溶剤、可塑剤、分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルムの支持体上にドクターブレード法によりセラミックグリーンシートを作製した。
次に、このセラミックグリーンシートにパンチング加工により貫通孔を形成し、導体ペーストを充填することによってビア導体を形成した。
次に、Cu粉末をペースト化した導体ペーストをスクリーン印刷法より印刷して配線導体を形成した。
次に、これらのビア導体と配線導体を形成したセラミックグリーンシートを複数枚積層し、950℃の温度で焼成することによってガラスセラミックスから成る絶縁基体を製作した。
次に、これら各種の絶縁基体の表面に、Ag72質量%とCu28質量%とから成るAg−Cu合金ろう材(BAg−8)に活性金属としてのTiH2を3質量%および樹脂バインダを10質量%の割合で外添加した活性金属含有Ag−Cu合金ろう材のろう材ペーストを、リードピン接続パッドとしてスクリーン印刷し、ろう付け後の直径が0.90mmとなるように形成した。
次に、このリードピン接続パッドを介して、ピン部の直径が0.20mm、ヘッド部の厚みが0.15mm、ヘッド部の直径が0.45mmであるFe−Ni−Co合金製のリードピンにNi表面層としてNiめっきを施したものを真空炉中で最高温度800℃を15分保持することにより接合した。
また、同様にピン部の直径が0.20mm、ヘッド部の厚みが0.15mm、ヘッド部の直径が0.45mmであるFe−Ni合金製のリードピンにNi表面層としてNiめっきを施したものを真空炉中で最高温度800℃を15分保持することにより接合した。
次に、リードピンを取着した絶縁基体の他方主面に、Ag72質量%とCu28質量%とから成るAg−Cu合金ろう材(BAg−8)に活性金属としてのTiH2を3質量%および樹脂バインダを10質量%の割合で外添加した活性金属含有Ag−Cu合金ろう材のろう材ペーストを、放熱部材接続パッドとしてスクリーン印刷し、Cu合金製の放熱部材をリードピンと同様の方法にて接合した。
その後、このリードピンの接合強度(45°引っ張り強度)を、45°上方に10mm/分の速度で引っ張る引っ張り試験により評価した。
なお、リードピンについて、45°引っ張り強度(破壊強度)が15N以上であればリードピンは折り曲げに耐え得るが、45°引っ張り強度が15N未満しかない場合、リードピンに外力が加わった際にリードピンが折れ曲がる前にリードピン接続パッドが破壊してしまうため、ソケット挿入時にリードピンが取れるといった不具合が発生することとなる。これより、接合強度の判断基準として、45°引っ張り強度が15N以上であれば実用上問題ないとした。その結果を表1に示す。
表1より、リードピンに1um以上のNiめっきを施し、リードピン接続パッドがAg−Cu合金ろう材とNiおよびTiから構成される本発明のガラスセラミック配線基板(試料No3〜5,8〜10)は、リードピンの45°引っ張り強度が最小値でも15N以上であり、十分な接合強度であった。また、破壊の状態は、リードピン接続パッド内部ではなく、ピン部で切断されたものであった。
一方、リードピンに施したNiめっきの厚みが1um未満で、リードピン接続パッド内にFeおよびTiから成る金属間化合物やCoおよびTiから成る金属間化合物が生成される試料No1,2,6,7は、リードピンの45°引っ張り強度の平均値が15N未満であり、いずれもリードピン接続パッド内部の金属間化合物とAg−Cu合金ろう材の界面を基点としたリードピン接続パッド破壊が生じた。
以上より、本発明の構成のガラスセラミック配線基板を用いることで、実用上問題ない接合強度を得ることができ、リードピンに外力が加わった際にも高い接合信頼性を有し、また、高放熱性を有するガラスセラミック配線基板を得ることができた。
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何ら差し支えない。例えば、上記実施の形態では、本発明のガラスセラミック配線基板を半導体素子収納用パッケージに適用した例を示したが、混成集積回路基板等の他の用途に適用してもよい。
1・・・リードピン
1a・・・ヘッド部
2・・・リードピン接続パッド
3・・・ガラスセラミック配線基板
4・・・半導体素子
5・・・絶縁基体
6・・・配線導体
7・・・半導体素子搭載部
8・・・放熱部材
9・・・放熱部材接続パッド
1a・・・ヘッド部
2・・・リードピン接続パッド
3・・・ガラスセラミック配線基板
4・・・半導体素子
5・・・絶縁基体
6・・・配線導体
7・・・半導体素子搭載部
8・・・放熱部材
9・・・放熱部材接続パッド
Claims (3)
- 配線導体を有したガラスセラミック製絶縁基体に、第1のろう材で第1の金属部材を接合するとともに、前記第1のろう材よりも溶融温度の低い第2のろう材で第2の金属部材を接合してなるガラスセラミック配線基板であって、前記第1のろう材が、Ag−Cu合金ろう材とNi及びTiから成る金属間化合物とを含んで成ることを特徴とするガラスセラミック配線基板。
- 前記第1の金属部材がリードピンであり、前記第2の金属部材が放熱部材であることを特徴とする請求項1に記載のガラスセラミック配線基板。
- 前記金属間化合物が、前記リードピンの表面に形成されたNi皮膜中のNiを、Tiを含むAg−Cu合金ろう材中に拡散させることにより生成されたものであることを特徴とする請求項2に記載のガラスセラミック配線基板。
Priority Applications (1)
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JP2004338870A JP2006148000A (ja) | 2004-11-24 | 2004-11-24 | ガラスセラミック配線基板 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2016125674A1 (ja) * | 2015-02-02 | 2016-08-11 | 株式会社村田製作所 | 半導体モジュールおよび半導体モジュールの製造方法 |
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2004
- 2004-11-24 JP JP2004338870A patent/JP2006148000A/ja active Pending
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JPWO2016125674A1 (ja) * | 2015-02-02 | 2017-10-12 | 株式会社村田製作所 | 半導体モジュールおよび半導体モジュールの製造方法 |
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