JP2006147547A - マイクロ燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、従来の80℃以下での使用しか出来ない、固体高分子型燃料電池における問題点に鑑み、耐熱性、耐久性、寸法安定性などに優れ、しかも、電解質膜のプロトン導電性が低いこと、膜の強度が弱いことを解決できる燃料電池を提案し、100℃〜300℃という中温度域で運転する高効率な中温型燃料電池を実現させることである。
【解決手段】上記課題は、多孔性基板の細孔内に、燃料極、電解質および空気極を含む燃料電池要素が充填されていることを特徴とする一体型マイクロ燃料電池によって解決される。
【選択図】図2

Description

本発明は、電解質材料を用いて、安定性、プロトン伝導性、強度などの条件を解決できる一体型マイクロ燃料電池に関する。
近年、燃料電池は、発電効率が高くかつ環境特性に優れているため、社会的に大きな課題となっている環境問題やエネルギー問題の解決に貢献できる次世代の発電装置として注目されている。燃料電池は、一般に電解質の種類によりいくつかのタイプに分類されるが、この中でも固体高分子型燃料電池(以下、PEFCと略称する場合がある)は、他のいずれのタイプに比べても小型かつ高出力であり、小規模オンサイト型、移動体(たとえば、車両のパワーソース)用、携帯用等の電源として次世代の主力とされている。
このように、PEFCは、原理的に優れた長所を有しており、実用化に向けた開発が盛んに行われている。このPEFCでは、燃料として通常、水素を用いる。水素は、PEFCのアノード側に設置された触媒によりプロトン(水素イオン)と電子に分解される。このうち、電子は、外部に供給され、電気として使用され、PEFCのカソード側へと循環される。一方、プロトンはプロトン伝導性膜(電解質膜)に供給され、プロトン伝導性膜を通じてカソード側へと移動する。カソード側では、プロトン、循環されてきた電子、および外部から導入される酸素が触媒により結合され、水が生じる。すなわち、PEFC単体で見れば、PEFCは、水素と酸素から水を作る際に電気を取り出す非常にクリーンなエネルギー源である。
燃料電池に供給される水素は、何らかの方法(たとえばメタノール改質による水素抽出)で得た水素を使うのが通常であるが、直接、メタノールなどを燃料電池に導入し、触媒によりメタノール(通常水を併用する)からプロトンと電子を取り出す、直接燃料型燃料電池も盛んに検討されつつある。
ここで、プロトン伝導性膜は、アノードで生じたプロトンをカソード側に伝える役目を持つ。上記の通り、このプロトンの移動は、電子の流れと協奏的に起こるものである。すなわち、PEFCにおいて、高い出力(すなわち高い電流密度)を得るためには、プロトン伝導を十分な量、高速に行う必要がある。従って、プロトン伝導性膜の性能がPEFCの性能を決めてしまうといっても過言ではない。また、プロトン伝導性膜は、プロトンを伝導するだけではなく、アノードとカソードの電気絶縁をする絶縁膜としての役割と、アノード側に供給される燃料がカソード側に漏れないようにする燃料バリア膜としての役割も併せ持つ。
現在、PEFCにおいて使用されている主なプロトン伝導性膜は、パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基を有するフッ素樹脂系膜である。このようなスルホン化フッ素樹脂系膜としては、例えば、Nafion(登録商標)R膜(Du Pont社、特許文献1)、Dow膜(Dow Chemical社、特許文献2)、Aciplex(登録商標)R膜(旭化成工業(株)社、特許文献3)、Flemion(登録商標)R膜(旭硝子(株)社)等が知られている。
これらフッ素樹脂系膜は、燃料電池が使用される湿潤常態化において、130℃近辺にガラス転移温度(Tg)を有しているといわれ、この温度近辺より、いわゆるクリープ現象が起こり、その結果、膜中のプロトン伝導構造が変化し、安定的なプロトン伝導性能が発揮できず、さらには膜が膨潤形態に変成し、ゼリー状となって非常に破損しやすくなり、燃料電池の故障につながる。また高温湿潤状態では、スルホン酸基の脱離が起こり、プロトン伝導性能が大きく低下する。以上のような理由により、現在使用されている安定的に長期使用可能な最高温度は通常80℃とされている。
燃料電池は、その原理において化学反応を用いているため、高温で作動させる方がエネルギー効率は高くなる。すなわち、同じ出力を考えれば、高温で作動可能な装置の方が、より小型で軽量にすることができる。また、高温で作動させると、その排熱をも利用することができるため、いわゆるコジェネレーション(熱電併給)が可能となり、トータルエネルギー効率は飛躍的に向上する。従って、燃料電池の作動温度は、ある程度高い方がよいとされ、通常、100℃以上、特に120℃以上が好ましいとされている。
また、供給される水素が十分に精製されていない場合、アノード側に使用されている触媒が、燃料の不純物(たとえば一酸化炭素)により活性を失う場合があり(いわゆる触媒被毒)、PEFCの寿命を左右する大きな課題となっている。この触媒被毒に関しても、高温で燃料電池を作動させることができれば回避できることが知られており、この点からも燃料電池はより高温で作動させることが好ましいといえる。さらに、より高温での作動が可能となると、触媒自体も従来使用されている白金などの貴金属の純品を使用する必要がなく、種々金属の合金を使用することが可能となり、コストの面、あるいは資源の面からも非常に有利である。
また、直接燃料型燃料電池では、現在、燃料から直接、効率よくプロトンと電子を抽出する種々の検討が行われているが、十分な出力を得るためには、低温では困難であり、高温(たとえば150℃以上)では可能性があるとされている。このように、PEFCは、種々の面からより高温で作動させることが好ましいとされているにもかかわらず、プロトン伝導性膜の耐熱性が前述の通り80℃までであるため、作動温度も80℃までに規制されているのが現状である。
また、燃料電池作動中に起こる反応は、発熱反応であり、作動させると、PEFC内の温度は自発的に上昇する。しかしながら、プロトン伝導性膜は、80℃程度までの耐熱性しか有しないため、80℃以上にならないようにPEFCを冷却する必要がある。冷却は、通常水冷方式がとられ、PEFCのセパレータ部分にこのような冷却の工夫が入れられる。このような冷却手段をとると、PEFCが装置全体として大きく、重くなり、PEFCの本来の特徴である小型、軽量という特徴を十分に生かすことができない。特に、作動限界温度が80℃とすると、冷却手段として最も簡易な水冷方式では、効果的な冷却が困難である。100℃以上での作動が可能であれば、水の蒸発熱として効果的に冷却することができ、更に水を還流させることにより、冷却時に用いる水の量を劇的に低減できるため、装置の小型化、軽量化が達成できる。特に、車両のエネルギー源として用いる場合には、80℃で温度制御する場合と、100℃以上で温度制御する場合とを比較すれば、ラジエータ、冷却水の容量が大きく低減できることから、100℃以上で作動可能なPEFC、すなわち100℃以上の耐熱性があるプロトン伝導性膜が強く望まれている。
以上のように、発電効率、コジェネレーション効率、コスト・資源の面、冷却効率など、種々の面でPEFCの高温作動、すなわちプロトン伝導性膜の高温耐熱が望まれているにもかかわらず、十分なプロトン伝導性と耐熱性を併せ持つプロトン伝導性膜は存在していない。
このような背景のもと、PEFCの運転温度を上昇させるために、これまで、種々の耐熱性のあるプロトン伝導性材料が検討され、提案されている。代表的なものとしては、従来のフッ素系膜の代わりとなる耐熱性の芳香族系高分子材料があり、例えば、ポリベンズイミダゾール(特許文献4)、ポリエーテルスルホン(特許文献5、特許文献6)、ポリエーテルエーテルケトン(特許文献7)等が挙げられる。これらの芳香族系高分子材料は、高温時における構造変化が少ないという利点があるが、一方、芳香族に直接スルホン酸基、カルボン酸基などを導入したものが多く、この場合には、高温において顕著な脱スルホン、脱炭酸が起こる可能性が高く、高温作動膜としては好ましくない。
また、これらの芳香族系高分子材料は、フッ素樹脂系膜のように、イオンチャネル構造などをとらない場合が多く、その結果、水が存在すると膜全体が強く膨潤する傾向があり、この乾燥状態と湿潤状態での膜サイズの変化のため、膜−電極接合体の接合部に応力がかかり、膜と電極の接合部がはがれたり、膜が破れたりする可能性が高く、更に、膨潤による膜の強度低下で膜破損が起こる可能性があるという問題がある。さらに、芳香族系高分子材料は、乾燥状態ではいずれも極めて剛直な高分子化合物であるため、膜−電極接合体形成の際、破損等の可能性が高いという問題がある。
一方、プロトン伝導性材料としては、次のような無機材料も提案されている。例えば、南らは、加水分解性シリル化合物中に種々の酸を添加することにより、プロトン伝導性の無機材料を得ている(非特許文献1)。しかしながら、これらの無機材料は、高温でも安定的にプロトン伝導性を示すが、薄膜とした場合には、割れやすく、取り扱いや膜−電極接合体作製が困難であるという問題がある。
そして、こうした問題を克服するために、例えば、プロトン伝導性の無機材料を粉砕してエラストマーと混合する方法(特許文献8)、スルホン酸基含有高分子と混合する方法(特許文献9)等が試みられているが、これらの方法は、いずれもバインダーの高分子物質が無機架橋体とが混合されただけであるため、基本的な熱物性は高分子物質単独と大きな差がなく、高温領域では高分子物質の構造変化が起こり、安定的なプロトン伝導性を示さず、しかも多くの場合、プロトン伝導性も高くない。
以上のように、従来の固体高分子型燃料電池における問題点を改善するために、種々の電解質膜材料についての研究開発が行われてきたにもかかわらず、これまでのところ、高温(例えば100℃以上)で充分な耐久性を有し、機械的性能等の諸物性を満足したプロトン伝導性膜は未だ存在しないのが現状であった。
他方、水素に代えてメタノールを燃料として用いる直接メタノール型燃料電池(以下、DMCFと略称する場合がある)では、メタノールが直接膜に接することになる。現在用いられているNafion(登録商標)などのスルホン化フッ素樹脂系膜では、膜とメタノールの親和性が高く、膜がメタノールを吸収することにより極度に膨潤、場合によっては溶解し、燃料電池の故障の原因となる。また、メタノールは酸素極側に漏れ出し、燃料電池の出力が大きく低下する。これは芳香環含有の電解質膜でも共通した課題である。このように、DMFCにおいても効率的かつ耐久性を有した膜が現在のところ存在していない。
米国特許第4330654号明細書 特開平4−366137号公報 特開平6−342665号公報 特開平9−110982号公報 特開平10−21943号公報 特開平10−45913号公報 特開平9−87510号公報 特開平8−249923号公報 特開平10−69817号公報 特開2003−142122号公報 特開2002−220324号公報 特開2002−083612号公報 Solid State Ionics、74 (1994)、第105頁
本発明は、こうした従来の固体高分子型燃料電池における問題点に鑑み、耐熱性、耐久性、寸法安定性などに優れ、しかも、電解質膜のプロトン導電性が低いこと、膜の強度が弱いことを解決できる燃料電池を提案し、100℃〜300℃という中温度域で運転する高効率な中温型燃料電池を実現させることを目的とする。
本発明者は、上記技術的背景に鑑み、上記課題を解決する方法を鋭意研究を重ねた結果、前記課題は、強度が高く、空孔を持つ材料を支持材にし、空孔内に燃料極、電解質、空気極を一式のマイクロセルとして埋め込む構造であることを特徴とする一体型マイクロ燃料電池によって得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明によると、
(1)多孔性基板の細孔内に、燃料極、電解質および空気極を含む燃料電池要素が充填されていることを特徴とする一体型マイクロ燃料電池;
(2)該多孔性基板が無機材料もしくは耐熱性ポリマーまたはこれらの複合材料から構成されることを特徴とする、上記(1)に記載の一体型マイクロ燃料電池;
(3)100℃〜300℃で作動する電解質を用いることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の一体型マイクロ燃料電池;および
(4)該電解質の厚みが0.1μm〜100μmであることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の一体型マイクロ燃料電池
が提供される。
前述のごとく、中温作動燃料電池の開発は燃料電池の実用化の鍵の一つであり、そのためには、まずは中温領域で使える電解質の開発が不可欠である。しかしながら、これまで安定性、プロトン伝導性、強度の三つの主要な条件を満たすものはない。上記の三つの条件の中で、燃料電池として、電解質材料の安定性は絶対欠かせないが、プロトン伝導性は膜を薄くすることで、また強度は支持材を電解質に取り入れることで解決できる。
しかし、また支持体も薄すぎると強度も落ちるため、ある程度の厚みが必要である。例えば、100℃以下で使用される高分子固体電解質型燃料電池用の高分子固体電解質・電極接合体(特許文献10)の実例として、“Gore-select ”という電解質は10μm程度の多孔質PTFEの支持体にNafion(登録商標)系電解質を複合した膜がよく知られている。しかしながら、このような系では、強度の観点から、実際としては、電解質の膜厚を10μm程度までしか薄くできない。これ以外にも、支持材などの無機材料と電解質を混ぜた研究が数多くあるが、本研究で提案するような中温作動一体型マイクロ燃料電池はない。
電解質と電極の一式を、強度が高く、空孔を持つ支持体の空孔に埋め込むことによって、電解質が限りなく薄くできるとともに、電池としての強度も達成される。これは、支持材の厚み制限によって電解質の厚みが決まってしまうことなく、理論的に電解質の膜厚は自由に制御できるからである。
本発明の、強度が高く、空孔を持つ材料を支持材にし、空孔内に燃料極、電解質、空気極を一式のマイクロセルとして埋め込む構造であることを特徴とする一体型マイクロ燃料電池によって、100℃〜300℃という中温度域で運転する高効率な中温型燃料電池を実現させることが出来る。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の強度が高く、空孔を持つ材料を支持材にし、空孔内に燃料極、電解質、空気極を一式のマイクロセルとして埋め込む構造であることを特徴とする一体型マイクロ燃料電池を、図1に、従来型燃料電池(特許文献11、特許文献12)との対比で示す。
本発明によると、耐熱性が良く、機械的強度に優れた多孔質材を支持材として用い、支持材の細孔の中に電解質(CsH2PO4など)を充填し、さらにその両側から触媒電極を充填することによって、ひとつの孔の中にひとつのマイクロセルが形成される。そして、支持材の気孔率を制御することで無数のマイクロセルを持つ一体型マイクロ燃料電池が得られる。このように得られた一体型マイクロ燃料電池は、電解質層の機械的強度の問題を解決し、さらに、今まで実現できなかった電解質層の極薄化が可能になる。その結果、電極間の距離が短縮され、プロトン伝導性の低い材料でも利用可能となり、電解質材料の選択幅広がる。また、集電材料を薄くすることもできる。さらに、反応温度が中温(100℃〜300℃)であることで、白金系触媒に代替するような安価な触媒が使える可能性もある。また、電解質膜の劣化を引き起こす過酸化水素の発生も抑えられる。このことは燃料電池の実用化に向けて重要な低コスト化へとつながる。このことはデザイン性を重視する自動車などに向いている。
本発明に用いられる多孔性基材は、無機材料または耐熱性ポリマー又はこれらの複合材料から構成されるのがよい。無機材料としては、セラミック、ガラスまたはアルミナ、シリカ、セリア、ジルコニウム等、あるいは、それらの複合材料を使用することが出来る。また、耐熱性ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン又はポリイミド等を用いることができる。また、複合材料の例としては、特に180℃以下で使用する場合には、プリント基板用等に使用されるガラス/エポキシ基板等も使用できる。これらの基板に多孔を設ける方法としては、機械的方法等を含めて、既存の方法を用いることができ、又ハニカムセラミックスとして市販されている基板も使用することができる。
基板の厚みとしては、電池としての機械的強度を維持するため、0.1mm〜5mmが好ましい。0.1mm以下であると、電池としての強度が弱くなり、5mm以上はコスト的にも必要ない。また、細孔径としては10μm〜数1000μmが好ましい。10μm以下であると、細孔へ電解質と電極を埋め込む際の制御が難しく、又数1000μm以上であると電池の強度が不足する問題が生じる。特に好ましい範囲は50μm〜2mmである。
本発明に用いられる電解質用プロトン伝導性膜の素材例としては、中、高温用材料として、特開2004−281271号、同2004−235125号、同2004−006142号、同2003−331644号、同2003−281933号、同2003−253010号、同2003−217341号、同2003−206402号、同2003−157863号、同2003−137527号、同2003−132732号、同2003−068326号、同2002−124271号、同2002−110194号、同2002−097272号、同2001−213987号、同2000−235812号、同2000−090946号明細書等に記載のプロトン伝導性材料や(Solid State Ionics 162- 163 (2003) 237- 245、CHEM. COMMUN., (2003), 368-369、Macromolecules 2003, 36, 9691-9693、Electrochimica Acta 48 (2003) 2411-2415、Solid State Ionics 154- 155 (2002) 679- 685、Solid State Ionics 150 (2002) 309- 315、Solid State Ionics 154- 155 (2002) 707- 712、Advanced Materials Volume 14, Issue 20 , Pages 1490 - 1492、Journal of The Electrochemical Society, 150 (1) A112-A116 (2003)、Electrochimica Acta, v 48, , Dec 15, (2003), p 4271-4276、Electrochemical and Solid-State Letters, 6 (12) A282-A285 (2003)、Journal of The Electrochemical Society, 147 (1) 34-37 (2000)、NATURE VOL 410 19 APRIL (2001)、Electrochemistry Communications 5 (2003) 862-866, Electrochemical and Solid-State Letters, 4 (4) A31-A34 (2001)、Solid State Ionics 145 2001 101-107、Solid State Ionics 145 2001 85-92、Solid State Ionics 125 (1999) 333-337、SCIENCE V 303 (2004) p68、Chem. Mater. 2004, 16, 604-607、Chem. Mater.(2003), 15, 5044-5050)などに記載のプロトン伝導性材料やリン酸ドープポリベンゾイミダゾール(PBI)、(PVPA+ヘテロサイクル)などの酸―アルカリ錯体を含むポリマー、カルボキシル基などの酸基を含むトリカルボキシブチルホスホン酸ジルコニウム(Zr(PBTC))等の安定性の高い素材が挙げられる。具体的には、例えば、CsH2PO4、Zr(PBTC)、スルホン化したPEEK(Polyetheretherketone)が好ましい。電解質の膜厚は、出来る限り薄いことが好ましいが、電解質材料のプロトン伝導性により決定され、0.1μm〜200μmの範囲が望ましい。0.1μm以下では膜の強度やガスの透過性に問題が生じる可能性があり、200μm以上では抵抗が高くなりすぎる。
燃料極の材料としては、従来公知の材料から選択することができる。一般的に、反応表面積を広げるために、電極材料に電解質を混ぜたものが使われている。例えば、燃料極として、白金や白金合金を担持したカーボンに電解質を混ぜたものが使用可能であり、更に、Pt代替触媒(Ni、Fe、Co、Snとそれらの合金、など)や酸化物(SnO2、MnO2、NiPOxなど)助触媒との組み合わせ等に電解質を加えたものも使用可能である。これらの材料から調製したペースとを細孔に注入し、80℃〜300℃の温度範囲で、30分〜2時間加熱しすることが望ましい。また、触媒を担持する電子導電材として、多孔質のカーボン粒子以外に炭素繊維(VGCFなど)、カーボンナノファイバーやチューブなども使える。更に炭素の他の材料からなる電子導電材、例えばチオフェン系導電性有機材料、ポリアセチレン系導電性高分子、In2O3系導電材なども使用できる。
空気極の材料も、従来公知の材料から選択することができる。例えば、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)又はクロム(Cr)、及びこれらの任意の組合せに係る金属や、La0.3Co0.73、La0.7Sr0.3CrO3、La0.7Sr0.3FeO3、La0.7Sr0.3MnO3又はLa0.7Sr0.3CrO3、及びこれらの任意の組合せに係るランタン複合酸化物を含むものに電解質をまぜたものを使用できる。また、触媒反応活性と電子伝導性を持つ白金や白金合金を担持したカーボンも使用可能であり、更に、Pt代替触媒(Ni、Fe、Co、Snとそれらの合金、など)や酸化物(SnO2、MnO2、NiPOxなど)助触媒との組み合わせ等も可能である。また、電子導電材として、多孔質のカーボン粒子以外に炭素繊維(VGCFなど)、カーボンナノファイバーやチューブなども使える。更に炭素の他の材料からなる電子導電材、例えばチオフェン系導電性有機材料、ポリアセチレン系導電性高分子、In2O3系導電材なども使用できる。これらの粉末は、上記燃料極と同様にスラリーやペーストとして、コーティング等により、多孔中に注入する方法で作製するのが好ましい。
図2に、一体型マイクロ燃料電池の構造図を示す。具体的には、一つの細孔に電解質がつめられていて、細孔の両端から電極材を細孔にある電解質の中に挿入し、膜の中央に電極材料の含まない領域、つまりごく薄い電解質が形成される。各電極、電解質材料のマイクロセル中への作製方法に関しては、電極材料の場合には前述したごとく、スラリーやペーストの状態で埋め込むことが好ましいが、電解質の場合には、材料によって作製法が異なる。大別して、水やアルコールなど溶媒に溶けるもの、例えばCsH2PO4、の場合、この種のマイクロセルの作り方は、1)支持体の細孔に電解質を緻密に埋め込む方法、2)電極材料に溶媒を混ぜて、電解質の両側から塗布する方法等、がある。2)のプロセスによる方法を適用すると、均一に埋め込んだ電解質の一部が溶け、電極材料に混ざり込むことで、細孔内は薄い緻密電解質の層とその両側に、触媒(Ptなど)、電子導電材(炭素)、電解質が混ざった電極となる層からなるマイクロセルが形成される。この方法では、容易に薄い電解質を形成させることができ、抵抗が低く、かつ、強度のあるマイクロセルの作製が可能となる。一方、簡単に溶媒に解けない電解質の場合は、電解質を埋め込む深さを制御するため、細孔へ溶媒に溶ける充填材等をいれることが好ましい。また、電解質膜を細孔内で重合させることも好ましい。これからの方法で電解質の膜厚は0.1μm〜数mmの範囲に制御することが可能である。
次に、各電極、電解質材料のマイクロセル中への作製方法について、実施例をもとに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例1
本発明による燃料電池単セルの構成
図2において、燃料電池単セルはマトリックス、電解質、アノード電極、カソード電極および集電材から構成されている。
マトリックス材は、日本ガイシ(株)製のハニセラム(細孔径約1.5mm、厚さ2mm)を用いた。電解質はリン酸二水素セシウムを用いた。アノード電極とカソード電極はともに田中貴金属(株)製の白金ペースト(商品名:TR−7905)を用いた。集電材は白金メッシュ(製造業者:田中貴金属(株)、商品名:PTアミ)を用いた。
単セルの作製方法
マトリックス材であるハニセラムの細孔に70℃において部分的に凝固した飽和リン酸二水素セシウム水溶液を詰めた。室温で24時間、空気中で水分を蒸発させ電解質リン酸二水素セシウム結晶が乾燥した後、その片面にアノード電極である白金ペーストと塗布し、集電材である白金メッシュを貼り付けて、120℃で1時間乾燥した。最後に、そのもう片面にカソード電極である白金ペーストを塗布し、集電材である白金メッシュを貼り付けて、120℃で1時間乾燥した。
試験条件
試験温度 235℃
アノード電極側ガス 水素(H2
カソード電極側ガス 空気
アノード電極側ガス流量 50SCCM
カソード電極側ガス流量 50SCCM
アノード電極側ガスPH2O 0.3
例1における試験では十分な強度を持つセルができた。その開放起電力が1V程度であり、電解質の厚みが約0.08mmである。本発明の構造によって、電解質が薄くても高温で発電が出来る強度の強いセルが出来た。
例2
図3において、燃料電池単セルはマトリックス、電解質、アノード電極、カソード電極および集電材から構成されている。
マトリックス材として、ニッカトー株式会社製のアルミナに貫通孔を開けたものを用いた(孔径1.0mm、厚さ0.5mm)。電解質としてリン酸二水素セシウムを用いた。アノード電極およびカソード電極として、田中貴金属株式会社製の白金ペースト(商品名:TR−7905)を用いた。集電材として白金メッシュ(製造業者:田中貴金属(株)、商品名:PTアミ)を用いた。
単セルの作製方法
室温において、マトリックス材である貫通孔を開けたアルミナを、リン酸二水素セシウム水溶液中に浸し、空気中で水分を蒸発させて、細孔中に電解質リン酸二水素セシウム結晶を形成させた。電解質の厚みは約0.08mmであった。その後、前述した電解質の片面にアノード電極である白金ペーストを塗布し、集電材である白金メッシュを貼り付けて、120℃で1時間乾燥した。最後に、前述した電解質の反対面にカソード電極である白金ペーストを塗布し、集電材である白金ペーストを貼り付けて、120℃で1時間乾燥した。
試験条件
試験温度 235℃〜265℃
アノード電極側ガス 水素(H2
カソード電極側ガス 空気
アノード電極側ガス流量 200SCCM
カソード電極側ガス流量 200SCCM
アノード電極側ガスPH2O 0.3
例2における試験では十分な強度をもつセルができた。作製した燃料電池セルの起電力の温度依存性を図4に示す。その開放起電力は理論起電力に近い1V程度のものが得られた。また、電流電圧特性を測定した結果、0.4Vの電圧において最大で約7.0×10−4A/cmの電流密度を確認した。したがって、本発明の構造によって、電解質が薄くても高温で発電可能な強度の高いセルが確認できた。
一体型マイクロ燃料電池および従来型燃料電池を示す概略図である。 一体型マイクロ燃料電池の構造を示す概略図である。 貫通孔内に生成したリン酸二水素セシウム結晶の構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 例2で作製した燃料電池セルの起電力の温度依存性を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 多孔性基板の細孔内に、燃料極、電解質および空気極を含む燃料電池要素が充填されていることを特徴とする一体型マイクロ燃料電池。
  2. 該多孔性基板が無機材料もしくは耐熱性ポリマーまたはこれらの複合材料から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の一体型マイクロ燃料電池。
  3. 100℃〜300℃で作動する電解質を用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の一体型マイクロ燃料電池。
  4. 該電解質の厚みが0.1μm〜100μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の一体型マイクロ燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011108573A (ja) * 2009-11-20 2011-06-02 Fuji Electric Holdings Co Ltd 固体電解質形燃料電池およびその製造方法

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