JP2006144258A - 建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法およびグラウト噴止治具 - Google Patents

建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法およびグラウト噴止治具 Download PDF

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Abstract

【課題】 建物のPCa製柱の柱頭部に設けられた複数の柱継手部材に容易にグラウトを注入することができるグラウト注入方法を提供する。
【解決手段】 建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法は、建物のPCa製柱3の柱頭部に複数の柱用スリーブ26を設置し、各柱用スリーブにそれぞれ接続された複数の分配ホース42が集合するグラウト分配用部材43を、PCa製柱の柱頭部の内方に配置し、グラウト41をグラウト分配用部材から分配ホースを介して各柱用スリーブに一斉に供給することにより、全箇所の柱用スリーブの内部にほぼ同時にグラウトを注入する。
【選択図】 図8

Description

本発明は、集合住宅など建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法、およびグラウト注入作業時に使用するためのグラウト噴止治具に関する。
多層建物などの建物では、PCa(プレキャストコンクリート)製柱やPCa製梁を柱梁接合部で接合した柱梁接合構造体を使用する場合が多い。たとえば、特許文献1(特公平5−38100号公報)には、コンクリート構造物の構築方法が記載されている。
このコンクリート構造物では、柱用仕口部と梁とが予め一体化されたPCa製水平構造体を、PCa製柱の上に水平方向に取付けている。そして、梁同士は、隣り合う柱と柱の間に位置する梁接合部で現場打ちコンクリートにより接合されている。
一方、特許文献2(特開2003−301526号公報)には、PCa鉛直部材の接合工法が記載されている。この接合工法では、PCa鉛直部材としての柱の脚部に柱継手部材を配置し、この柱継手部材にグラウトを注入するようにしている。
特公平5−38100号公報 特開2003−301526号公報
特許文献1に記載のコンクリート構造物では、PCa製柱の上面から柱主筋の柱用接続鉄筋が上方に突出している。そのため、この柱用接続鉄筋が邪魔になって、PCa製水平構造体をPCa製柱の上部で水平方向に移動させることができなかった。
特許文献2に記載の技術は、柱脚部に柱継手部材を配置し、目地が柱継手部材のすぐ下部に位置している場合の、グラウトを注入する技術である。したがって、柱頭部に柱継手部材を配置し、この柱継手部材のすぐ上部に目地が位置している本発明の構造とは異なっている。したがって、特許文献2に記載の技術を本発明に適用することはできない。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、建物のPCa製柱の柱頭部に設けられた複数の柱継手部材に容易にグラウトを注入することができる建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法を提供することを目的とする。
本発明の目的は、建物の各階でPCa製水平構造体をPCa製柱の上部で水平方向に移動させることができ、また、柱梁接合構造体の柱梁接合部におけるグラウト注入作業の負担を軽減することである。
本発明は、グラウト注入作業時に、柱継手部材のすぐ上部の目地にグラウトが入るのを防止しながら、柱継手部材の内部全体にグラウトを良好に充填することができるグラウト噴止治具を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明にかかる建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法は、建物のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、各柱継手部材にそれぞれ接続された複数の分配ホースが集合するグラウト分配用部材を、PCa製柱の柱頭部の内方に配置し、グラウトをグラウト分配用部材から分配ホースを介して各柱継手部材に一斉に供給することにより、全箇所の柱継手部材の内部にほぼ同時にグラウトを注入する。
このグラウト注入方法において、グラウトを注入する前に予め閉塞部材で柱継手部材の上端開口を塞いだ状態で、グラウトをグラウト分配用部材から分配ホースを介して各柱継手部材に供給することにより、柱継手部材のすぐ上部の目地にはグラウトがほぼもれ出ないようにするのが好ましい。
また、好ましい実施態様にかかる本発明の方法は、柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられ、PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合される建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法であって、下階のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、グラウト分配用部材を、下階のPCa製柱の柱頭部の内方に配置し、上階のPCa製柱の柱主筋の柱用接続鉄筋を柱用仕口部の貫通孔を貫通させ且つ下階のPCa製柱の柱継手部材に挿入して、上下階のPCa製柱を柱梁接合部で柱用仕口部を介して上下に配置している。
本発明にかかるグラウト噴止治具は、柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられ、PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合される建物のPCa製柱におけるグラウト注入時に使用されるグラウト噴止治具であって、下階のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、上階のPCa製柱の柱主筋の柱用接続鉄筋を柱用仕口部の貫通孔を貫通させ且つ下階のPCa製柱の柱継手部材に挿入して、上下階のPCa製柱を柱梁接合部で柱用仕口部を介して上下に配置し、グラウト噴止治具により柱継手部材の上端開口を塞いだ状態で、柱継手部材にグラウトを供給したとき、柱継手部材のすぐ上部の目地にはグラウトがほぼもれ出ずに柱継手部材の内部にグラウトが注入されるようにしている。
また、前記グラウト注入方法に使用されるグラウト噴止治具は、グラウト分配用部材によるグラウト注入作業時には、このグラウト噴止治具を、柱継手部材のすぐ上部の目地に挿入して柱継手部材の上端開口を塞ぐための閉塞部材として使用可能である。
グラウト噴止治具は、分離可能に連結され柱継手部材の上端開口を塞ぐことができる板状の第1のピース部および第2のピース部と、この第1のピース部と第2のピース部とが連結された状態で一本または複数本の柱用接続鉄筋と係合するように、第1のピース部と第2のピース部とに設けられた係合部とを備え、柱継手部材にグラウトを注入するときには柱継手部材内の空気抜きが可能であるのが好ましい。
グラウト噴止治具は、二つのピース部を連結した状態で複数の係合部を有し、一の係合部を他の係合部に対して移動させることにより複数の係合部の間のピッチを調節可能であるのが好ましい。
本発明にかかる建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法は、上述のように構成したので、PCa製柱の柱頭部に設けられた複数の柱継手部材に容易にグラウトを注入することができる。
また、建物の各階でPCa製水平構造体をPCa製柱の上部で水平方向に移動させることができ、且つ、柱梁接合構造体の柱梁接合部におけるグラウト注入作業の負担を軽減することができる。
本発明にかかるグラウト噴止治具は、柱継手部材のすぐ上部の目地にグラウトが入るのを防止しながら、柱継手部材の内部全体にグラウトを良好に充填することができる。
本発明にかかるグラウト注入方法は、建物のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、各柱継手部材にそれぞれ接続された複数の分配ホースが集合するグラウト分配用部材を、PCa製柱の柱頭部の内方に配置し、グラウトをグラウト分配用部材から分配ホースを介して各柱継手部材に一斉に供給することにより、全箇所の柱継手部材の内部にほぼ同時にグラウトを注入するので、複数の柱継手部材に容易にグラウトを注入することができる。
下記の実施例では、このグラウト注入方法を建物の柱梁接合構造体に適用した場合を示している。この実施例では、下階のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、各柱継手部材にそれぞれ接続された複数の分配ホースが集合するグラウト分配用部材を、下階のPCa製柱の柱頭部の内方に配置する。
そして、上階のPCa製柱の柱主筋の柱用接続鉄筋を、柱用仕口部の貫通孔を貫通させ且つ下階のPCa製柱の柱継手部材に挿入して、上下階のPCa製柱を、柱梁接合部で柱用仕口部を介して上下に配置している。
グラウトを注入する前に予め閉塞部材で柱継手部材の上端開口を塞ぎ、グラウトを、グラウト分配用部材から分配ホースを介して各柱継手部材に一斉に供給することにより、柱継手部材のすぐ上部の目地にはグラウトがほぼもれ出ずに、柱継手部材の内部にグラウトを注入する。
下記の実施例の柱梁接合構造体によれば、建物の各階でPCa製水平構造体を、PCa製柱の上部で水平方向に移動させることができる。下記のグラウト注入方法によれば、柱梁接合構造体の柱梁接合部におけるグラウト注入作業の負担を軽減することができる。
また、下記の実施例では、グラウト分配用部材との接続の有無にかかわらず、上下階のPCa製柱を柱梁接合部で柱用仕口部を介して上下に配置し、グラウト噴止治具で柱継手部材の上端開口を塞いだ状態で、グラウトを柱継手部材に供給したとき、柱継手部材のすぐ上部の目地にはグラウトがほぼもれ出ずに、柱継手部材の内部にグラウトが注入されるようにしている。
このグラウト噴止治具により、柱継手部材のすぐ上部の目地にグラウトが入るのを防止しながら、柱継手部材の内部全体にグラウトを良好に充填するという目的を実現している。
下記の実施例では、建物の一種である多層建物について説明しているが、この多層建物としては、集合住宅のほか、事務所ビル,ホテルなどの層状の建物であってもよい。
また、建物の基準階の平面形が、ほぼ正方形の場合を示したが、片廊下方式の板状平面形や、内部に吹き抜け空間を有する形状(たとえば、ロ字形,C字形)でもよい。なお、本発明は、多層建物以外の建物にも適用可能である。
以下、本発明にかかる実施例を、図1ないし図14を参照して説明する。
図1は多層建物の平面図、図2は、前記多層建物の柱梁接合構造体の組立手順を示す正面断面図、図3は、前記柱梁接合構造体の部分拡大正面断面図、図4は、前記柱梁接合構造体の組立手順を示す説明図である。図4(A1)〜(A7)は正面断面図、図4(B1)〜(B7)は、それぞれ図4(A1)〜(A7)の側面断面図である。図5は、前記柱梁接合構造体の組立手順を示す斜視図である。
図1ないし図5に示す集合住宅など多層建物1において、その一つの階(基準階)は、第1の方向としての桁行方向(多層建物1のC方向)と、第1の方向と直交する第2の方向としての梁間方向(D方向)に沿って複数の住戸領域2が配置されている。
多層建物1は、桁行方向Cと梁間方向Dがいずれも6スパンである。ここで、1スパンは、隣接するPCa製柱3,3間のスパンである。多層建物1の柱梁接合構造体(骨組構造体)4は、ラーメン構造体をなしている。
柱梁接合構造体4は、複数のPCa製柱3と、PCa製柱3の間に架設されたPCa製梁とにより構成されている。PCa製梁としての大梁5,大梁5aは、桁行方向Cや梁間方向Dを向いて配置される。
ここで、「柱梁接合構造体」とは、架構と、この架構に一体化した二次的構造部材とで構成され、地震力などの外力に対して構造設計上抵抗し得る構造体をいう。架構は、PCa製柱3,PCa製大梁5,PCa製大梁5a,その他の小型の柱や梁などの線材と、耐震壁の機能を有する壁面構造体や壁ブレースなどの面部材とを組み合わせて構成されている。
PCa製の梁としての大梁5,大梁5aと、PCa製の柱用仕口部6とを予め一体化したPCa製水平構造体7を、PCa製柱3の上に水平方向に取付けることにより、柱梁接合構造体4が構成されている。
PCa製水平構造体7は、柱用仕口部6に大梁5と大梁5aが固定されて、全体がプレキャストコンクリートにより一体的に形成されている。このようなPCa製水平構造体7を使用すれば、柱梁接合部8での現場打ちコンクリートをなくすることができる。
PCa製水平構造体7の一つの柱用仕口部6には、複数(たとえば、二本,三本または四本)の大梁5,大梁5aが、平面視で直線状,L字状,T字状または十字状に配置されている。柱用仕口部6には、PCa製柱3が接合されて仕口となる。
柱用仕口部6には、複数の貫通孔29が上下方向に貫通形成されて所定の配列で配置されている。貫通孔29の内径は、柱主筋27の柱用接続鉄筋28の外径より大きい。
なお、変形例として、貫通孔29内にシース管を埋め込んでもよく、このようにすれば、貫通孔29に柱用接続鉄筋28を挿入する作業が容易になるので好ましい。
また、他の変形例として、PCa製水平構造体が複数(たとえば、二つ)の柱用仕口部6を有し、この複数の柱用仕口部6の間に大梁5(または、大梁5a)を一体的に固定し、各柱用仕口部6に、さらに別の梁(大梁や小梁)を所定方向に向けて一体的に固定した場合であってもよい。
PCa製水平構造体7を構成する柱用仕口部6は、柱梁接合部8で少なくとも下階のPCa製柱3に直接的に接合されている。
すなわち、多層建物1の最上階以外の各階におけるPCa製水平構造体7では、柱用仕口部6は、柱梁接合部8で下階(その階のこと)のPCa製柱3と上階のPCa製柱3の両方に直接的に接合されている。
最上階の上部に設置されるPCa製水平構造体7では、柱用仕口部6は、柱梁接合部8で下階(最上階のこと)のPCa製柱3に直接的に接合されている。
各階において、大梁5同士(および、大梁5a同士)は、隣り合うPCa製柱3とPCa製柱3との間(たとえば、ほぼ中央部)に位置する少なくとも一つの梁接合部9で直接的に接合されて、PCa製柱3とPCa製柱3とで両端が支持される梁を構成している。
ここで、柱梁接合部8や梁接合部9における「直接的に接合」とは、現場打ちコンクリートを使用せず、継手部材などを用いて柱や梁を直接接合することをいう。
このように、PCa製柱3と各種のPCa製水平構造体7とを組み合わせることにより、柱梁接合構造体4が構成されている。この柱梁接合構造体4ではPCa製水平構造体7を使用したので、柱梁接合部8における現場打ちコンクリートと梁接合部9における現場打ちコンクリートの作業のほとんど全部または全部を省略することができ、現場作業が大幅に軽減される。
一方の大梁5の一方の梁端部15には、複数の梁継手部材としての梁用スリーブ16が埋込まれている。他方の大梁5の他方の梁端部17から、梁主筋18の梁用接続鉄筋19が突出している。すなわち、大梁5自体に着目すると、各大梁5の一方の梁端部15には梁用スリーブ16が埋込まれ、他方の梁端部17には梁用接続鉄筋19が突出して設けられている。
そして、一方のPCa製水平構造体7の梁用接続鉄筋19を、他方のPCa製水平構造体7の梁用スリーブ16に挿入して固定することにより、大梁5同士を梁接合部9で接合している。これは大梁5aの場合も同様である。
これにより、梁接合部9における現場打ちコンクリートの作業を省略して、現場作業を大幅に軽減することができる。
柱梁接合部8において、下階のPCa製柱3の柱頭部25には、複数の柱継手部材としての柱用スリーブ26が埋込まれている。柱用接続鉄筋28を、柱用仕口部6の貫通孔29を貫通させ、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入して、上下階のPCa製柱3,3同士が、柱梁接合部8で柱用仕口部6を介して接合される。
したがって、柱梁接合部8における現場打ちコンクリートの作業を省略して、現場作業を大幅に軽減することができる。
柱継手部材は、下階のPCa製柱3の柱主筋27と、上階のPCa製柱3の柱用接続鉄筋28とを接合するための部材である。梁継手部材は、一方の大梁5(または、大梁5a)の梁主筋18と、他方の大梁5(または、大梁5a)の梁用接続鉄筋19とを接合するための部材である。
これらの柱継手部材,梁継手部材には、たとえば異形鉄筋(柱主筋27または梁主筋18)同士をグラウト(たとえば、モルタル)を介して一体化するスリーブ状の継手金具などの機械式継手金具が使用される。
PCa製柱3は、柱用接続鉄筋28を柱脚部30から下方に突出させた、いわゆる「逆挿し柱」である。最上階以外の各階において、上階のPCa製柱3をPCa製水平構造体7の柱用仕口部6上に配置する際に、上階のPCa製柱3を下降させて、その柱用接続鉄筋28を、柱用仕口部6の貫通孔29を貫通させ、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入している。
このように、柱主筋27と柱用接続鉄筋28をPCa製柱3に予め取付けているので、上階のPCa製柱3を柱用仕口部6の直上で下降させれば、上階のPCa製柱3の柱用接続鉄筋28が貫通孔29を貫通し、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入される。したがって、柱梁接合部8における現場組立作業がさらに軽減される。
最上階および最上階以外の各階において、PCa製水平構造体7を所定のPCa製柱3の上に取付ける以前には、このPCa製柱3の柱頭部25上には、PCa製水平構造体7を水平方向(桁行方向Cまたは梁間方向D)に移動させるためのスペースが確保されている。
すなわち、PCa製柱3は「逆挿し柱」なので、その柱頭部25の上面では、柱用接続鉄筋は上方に突出していない。したがって、PCa製水平構造体7がPCa製柱3の上部で水平移動するときに、柱用接続鉄筋が邪魔になることはない。なお、PCa製水平構造体7の水平移動の邪魔にならなければ、若干の柱用接続鉄筋が柱頭部25から上方に突出している場合であってもよい。
柱梁接合構造体4では、多層建物1の各階で、PCa製水平構造体7をPCa製柱3の上部で水平方向に移動させることにより、大梁5同士(および、大梁5a同士)を梁接合部9で直接的に接合している。これにより、梁接合部9における現場打ちコンクリートをなくすることができる。
次に、多層建物1のPCa製柱3におけるグラウト注入方法と、グラウト噴止治具(以下、噴止治具と記載)40について説明する。
図6は、柱梁接合部8の拡大断面図で、グラウト注入前の状態を示している。図7は、図6のVII−VII線矢視図、図8は、図6相当図で、グラウト注入中の状態を示している。図9は、噴止治具40を取付けるときの状態を説明するための平面図である。
図10は、本実施例の変形例を示す図で、図6相当図、図11は図10のXI−XI線矢視図、図12(A),(B)は、それぞれ噴止治具40の平面図,正面図、図13は、噴止治具40の一方のピース部の分解図、図14は、本実施例に対する比較例を示す図で、図7相当図である。
本発明のグラウト注入方法の基本的構成は、図8,図10に示すように、多層建物1のPCa製柱3の柱頭部25に複数の柱用スリーブ26を設置し、各柱用スリーブ26にそれぞれ接続された複数の分配ホース42が集合するグラウト分配用部材43(または、43a)を、PCa製柱3の柱頭部25の内方に配置し、グラウト41をグラウト分配用部材43(または、43a)から分配ホース42を介して各柱用スリーブ26に一斉に供給することにより、全箇所の柱用スリーブ26の内部にほぼ同時にグラウト41を注入している。
本実施例ではこのグラウト注入方法を使用している。すなわち、図3,図6〜図11に示すように、柱梁接合構造体4においてグラウト41を注入する場合、下階のPCa製柱3の柱頭部25に複数の柱用スリーブ26が設置されている。
グラウト分配用部材43(または、43a)を、下階のPCa製柱3の柱頭部25の内方に配置する。グラウト分配用部材43(または、43a)には、各柱用スリーブ26にそれぞれ接続された複数の分配ホース42が集合している。
上階のPCa製柱3の柱主筋27の柱用接続鉄筋28を、柱用仕口部6の貫通孔29を貫通させ、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入する。これにより、上下階のPCa製柱3,3が、柱梁接合部8で柱用仕口部6を介して上下に配置される。
すると、柱用スリーブ26の上端部では、柱用接続鉄筋28と柱用スリーブ26との間に円環状の上端開口44が形成されている。グラウトを注入する前に予め、閉塞部材としての噴止治具40で柱用スリーブ26の上端開口44を塞いでおく。
噴止治具40は、何度でも再使用可能なので好ましいが、変形例として、グラウトを注入する前に予め、閉塞部材としてのキャップで柱用スリーブ26の上端開口44を塞ぐようにし、このキャップは再使用せずにグラウトに埋め込むようにしてもよい。
次いで、グラウト41を、供給ホース48に供給し、グラウト分配用部材43(または、43a)から分配ホース42を介して各柱用スリーブ26に一斉に供給する。これにより、柱用スリーブ26のすぐ上部の目地45にはグラウト41がほぼもれ出ずに、全箇所の柱用スリーブ26の内部にほぼ同時にグラウト41が注入される。
図8は、一番左側の柱用スリーブ26には、グラウト41が注入されている途中で、他の残りの柱用スリーブ26には、すでにグラウト41が満たされた状態を示している。
このようなグラウト注入方法によれば、柱梁接合構造体4の柱梁接合部8におけるグラウト注入作業の負担を軽減することができる。グラウト分配用部材43(または、43a)を使用した集合充填方式なので、一本ずつの充填と比較して施工効率がよい。
グラウト分配用部材43(または、43a)は、平面視で多角形または円形の中空筒状で、内部が密閉された構造を有している。本実施例のグラウト分配用部材43(または、43a)は、八角形の中空筒状をなし、上部と下部にそれぞれ蓋46と底板47が取付けられ、内部が密閉された構造である。
グラウト分配用部材43(または、43a)には、一つの供給ホース48と、複数の分配ホース42とが接続されている。グラウト分配用部材43(または、43a)の多角形の側板49と蓋46(または、側板49のみ)には、複数の分配用接続口50が取付けられ、底板47には一つの供給用接続口51が取付けられている。
グラウト分配用部材43(図6〜図8)は、二段構造を有し、合計で17個の分配用接続口50が取付けられており、分配用接続口50を介して17本の分配ホース42が集合している。
供給ホース48の一端は供給用接続口51に接続され、供給ホース48の他端は、PCa製柱3の外周面より外方まで延びている。供給ホース48には、重力またはポンプの圧力によりグラウト41を供給可能である。供給ホース48は一つなので、ポンプなどとの接続作業,取外し作業が容易である。
分配用接続口50には分配ホース42が接続されており、複数の分配ホース42は、グラウト分配用部材43,43aを中心として、外方に向かってたこ足状に延びている。分配ホース42の外方側端部は、柱用スリーブ26の下部に設けられた接続口52に接続されている。
本実施例に示すPCa製柱3の柱頭部25には、合計で36個の柱用スリーブ26が設置されており、そのうちの17個の柱用スリーブ26とグラウト分配用部材43とが、分配ホース42で接続されている。
残りの19個の柱用スリーブ26には、供給管53がそれぞれ個別に接続されている。この供給管53は、PCa製柱3の主として外周近くに配置された柱用スリーブ26に一端が接続され、他端がPCa製柱3の外方まで延びており、供給管53を介してグラウトが柱用スリーブ26に供給されるようになっている。
図示するPCa製柱3は、平面視で矩形状をなして四つの面S1,S2,S3,S4を有しており、そのうちの三つの面S2〜S4は、タイル54で仕上げられる仕上げ面S2〜S4になっている。
もし仮に、図14に示すように、グラウト分配用部材を使用しない場合には、すべての柱用スリーブ26に個別に供給管53を接続する必要がある。また、三つの仕上げ面S2〜S4にも供給管53を誘導せざるを得ないので、仕上げ面S2〜S4に多くの供給管53が設置されることになる。
その結果、供給管53にグラウトを供給する作業と、仕上げ面S2〜S4をタイル54などで仕上げたり補修するのに足場施工が必要になり、また、仕上げ作業も面倒である。
これに対して本発明では、グラウト分配用部材43(または、43a)を使用してグラウト注入を行うので、たとえば、三つの仕上げ面S2〜S4のうち二つの仕上げ面S2,S4のみに若干の数の供給管53を誘導すればよい。
その結果、足場施工が不要かまたは簡素なものでよくなり、また、供給管53に対するグラウトの供給作業と、タイル54などによる仕上げ作業や補修作業が軽減される。なお、面S1は仕上げ面ではないので、供給管53が面S1に誘導されていても、足場施工と仕上げ作業などは不要である。
図10,図11に示す変形例では、四段構造のグラウト分配用部材43aの場合を示している。このグラウト分配用部材43aでは、分配用接続口50の数が、上述のグラウト分配用部材43における分配用接続口50の数と比べてほぼ倍増している。
このグラウト分配用部材43aは、全部(ここでは、36個)の柱用スリーブ26のうち、そのほとんど(ここでは、32個)の柱用スリーブ26に、分配ホース42が接続される。
したがって、タイル54を貼り付ける三つの面S2〜S4には、供給管53を誘導する必要がなくなる。その結果、足場施工が不要で、また、面S2〜S4をタイル54などで仕上げる仕上げ作業,補修作業も容易になる。
なお、分配ホース42の届かない位置にある残りの(ここでは、4個の)柱用スリーブ26には、供給管53が接続されている。これら供給管53は仕上げ作業の不要な面S1に誘導されているので、仕上げ作業と足場施工は不要である。
次に、柱梁接合構造体4におけるグラウト注入時に使用される噴止治具40について説明する。
図8〜図10,図12,図13に示すように、上下階のPCa製柱3,3を、柱梁接合部8で柱用仕口部6を介して上下に配置した状態で、噴止治具40は、柱用スリーブ26の上端開口44を塞いで、グラウトの噴出を防止(グラウトを噴止)することができる。
グラウト分配用部材43,43aによるグラウト注入作業時には、噴止治具40を閉塞部材として使用可能である。噴止治具40は、柱用スリーブ26のすぐ上部の目地45に挿入され、柱用スリーブ26の上端開口44を塞いでグラウトを噴止する機能を有している。
すなわち、グラウト分配用部材43,43aに分配ホース42を介して接続された柱用スリーブ26の上端開口44と、供給管53が接続された残りの柱用スリーブ26の上端開口44とが、噴止治具40により塞がれる。
また、噴止治具40は、複数個使用されてすべての柱用スリーブ26に取付けられ、上端開口44を塞ぐ状態で、柱用スリーブ26内の空気抜きができるようになっている。
噴止治具40は、そのほぼ全体が鉄製であるが、合成樹脂により形成すれば軽量化して取扱いが容易になるので好ましい。
柱用スリーブ26にグラウト41を供給したとき、噴止治具40が予め上端開口44を塞いでいるので、柱用スリーブ26のすぐ上部の目地45にはグラウト41がほぼもれ出ずに、柱用スリーブ26の内部にグラウト41が注入される。
これにより、柱用スリーブ26のすぐ上部の目地45にグラウト41が侵入するのを防止しながら、柱用スリーブ26の内部全体にグラウト41が良好に充填される。柱用スリーブ26にグラウト41を充填する際に、この柱用スリーブ26のすぐ上部の目地45にグラウト41がもれ出て目地45の一部を塞いでしまうと、後日行う予定の柱用仕口部6の上下の目地55,45と内部の貫通孔29とにグラウトを注入する作業の邪魔になるからである。
グラウト41は、グラウト分配用部材43,43aから分配ホース42を介して各柱用スリーブ26に一斉に供給される。このとき、噴止治具40が、柱用スリーブ26の上端開口44を塞いでいるので、グラウト分配用部材43,43a内のグラウト41は、比較的流れやすい一つまたは複数の分配ホース42を通る。そして、このグラウト41は、接続口52から柱用スリーブ26内に注入された後、柱用スリーブ26内を下方から上方に上昇していく。
このとき、噴止治具40が空気抜きの機能を有しているので、柱用スリーブ26の上端までグラウト41が注入されて、柱用スリーブ26の内部全体にグラウト41が充填される。
噴止治具40が上端開口44を塞いでいるので、グラウト41はそれ以上は注入されず、噴止治具40のところからは、グラウト41自体はもれ出ずに、グラウト41中の水分のみが目地45内にもれ出てくる。
こうして、その柱用スリーブ26にグラウト41が満たされると、その柱用スリーブ26は、内部圧力が上昇してそれ以上はグラウト41は注入されない。一方、まだグラウト41が満たされていない他の柱用スリーブ26内の圧力は、充填済みの柱用スリーブ26の内部圧力より低い。したがって、グラウト41は、他の分配ホース42を介して他の柱用スリーブ26に供給され、同じようにして充填される。
このようにして、グラウト分配用部材43,43aに接続されているすべての柱用スリーブ26のそれぞれの内部全体に、グラウト41が順次充填される。
また、グラウト分配用部材43,43aに接続されていない他の柱用スリーブ26には、供給管53からグラウト41を供給することになる。この供給管53が接続された柱用スリーブ26も、その上端開口44が噴止治具40により塞がれているので、各柱用スリーブ26にグラウト41を充填することができる。
こうして、PCa製柱3に設けられたすべての柱用スリーブ26の内部全体に、グラウト41を充填することができる。
柱用スリーブ26にグラウト41が充填されたことは、柱用スリーブ26の上端開口44のところから、グラウト41の水分が目地45にもれ出て、目地45の一部が濡れていることを目視により容易に確認することができる。また、目地45の一部が濡れているところを写真撮影すれば、その部分の柱用スリーブ26におけるグラウト41の充填完了の証拠写真として記録に残すこともできる。
上端開口44は噴止治具40で塞がれているので、目地45内にはグラウト41がもれ出ることはない。したがって、目地45は邪魔ものがなく空の状態なので、後の工程で目地45などにグラウトを良好に充填することができる。
噴止治具40は、分離可能に連結され柱用スリーブ26の上端開口44を塞ぐことができる板状の第1のピース部61および第2のピース部62と、この第1のピース部61と第2のピース62とが連結された状態で一本または複数本(ここでは、二本)の柱用接続鉄筋28と係合するように、第1のピース部61と第2のピース62に設けられた係合部63とを備えている。
第1のピース部61と第2のピース部62が互いに分離可能なので、目地45の狭いスペースに噴止治具40を容易に挿入,取り出しできる。係合部63が柱用接続鉄筋28と係合するので、上端開口44を係合部63と二つのピース部61,62とで塞いで、目地45にグラウト41が入るのを防止することができる。
柱用スリーブ26にグラウト41を注入するときには、柱用スリーブ26内の空気は噴止治具40のところから抜けるので、柱用スリーブ26の内部全体にグラウト41を良好に充填することができる。
噴止治具40は、二つのピース部61,62を連結した状態で複数(ここでは、二つ)の係合部63を有し、一の係合部63(図9,図12の右側の係合部63)を他の係合部63(ここでは、図9,図12の左側の係合部63)に対して相対的に移動させれば、複数(ここでは、二つ)の係合部63の間のピッチPを調節可能である。
ピッチPを調節可能なので(図9)、二つの柱用接続鉄筋28間のピッチに一致するように、各係合部63の位置を調節することができる。
なお、噴止治具40が、二つの係合部63を有している場合を示しているが、三つ以上の係合部63を有して、隣り合う係合部63の間のピッチPを調節可能にしてもよい。
この噴止治具40によれば、一台の噴止治具40で複数箇所(ここでは、二箇所)の柱用スリーブ26の上端開口44を塞ぐことができる。したがって、PCa製柱3の外面側に近い位置とそれより奥の位置との二箇所の上端開口44を同時に塞ぐことが可能になって施工効率が高まり、また、噴止治具40の台数を少なくすることができる。こうして、すべての上端開口44が噴止治具40で塞がれる。
第1のピース部61と第2のピース部62は、それぞれ板状のピース65a〜65dを有している。二つのピース部61,62は、板状の連結用ピース65eにより連結されて、蝶型ボルトナット65fにより締結固定可能になっている。
ピース65aの先端部側には、一の係合部63を有するピース65cが固定されている。他の係合部63を有するピース65bは、ピース65aに対してその長手方向に相対的に移動調節可能に重なりあっている。
連結用ピース65eは、一方のピース部61または62に支持されて揺動操作可能である。このように、二つのピース61,62を連結用ピース65eで容易に連結,連結解除できるので、目地45の寸法が狭く且つ多くの柱用接続鉄筋28が配設されていても、噴止治具40を所望の柱用接続鉄筋28に容易に着脱することができる。
ピース65b,65cの各係合部63には、それぞれスポンジ状でパッキンの機能を有するピース65dが貼り付けられている。係合部63と柱用接続鉄筋28の間の隙間が、ピース65dによりシールされるので、グラウト41が目地45に侵入するのを防止することができる。
連結用ピース65eを揺動操作し、ピース65bをピース65aに対してスライドさせ、蝶型ボルトナット65fを締め付けたり緩めたりする操作を行うことにより、噴止治具40の組立,分解,ピッチPの調整を、それぞれ自在に行うことができる。
次に、各階における柱梁接合構造体4の組立手順について、図3ないし図5を参照して説明する。
図3ないし図5において、下階(ここでは、基準階)ではPCa製柱3の施工が完了し、全てのPCa製柱3の柱頭部25上は、柱主筋,柱用接続鉄筋などは突出しておらず何もない状態になっている(図4(A1),(B1))。
なお、現場工事の手順として、下階における全てのPCa製柱3の施工が完了したのちPCa製水平構造体7を取付けるのが好ましいが、一部のPCa製柱3の取付けが完了していない場合であってもよい。また、下階に床スラブ31が打設された場合を図示しているが、床スラブ31や壁躯体の施工は柱梁接合構造体4を構築した後であってもよい。
まず、一のPCa製水平構造体7をPCa製柱3の上に水平方向(たとえば、桁行方向C)に取付ける(図4(A2),(B2),図5(A))。このPCa製水平構造体7は、柱用仕口部6に対して二つの大梁5と一つの大梁5aとが平面視でT字状をなして一体的に取付けられている。大梁5と大梁5aには、床スラブ31を打設するための多数の鉄筋32が、予め水平方向に突出して設けられている。
この一のPCa製水平構造体7の柱用仕口部6を、PCa製柱3の直上に位置させた状態で、PCa製水平構造体7を矢印E1に示すように下降させて、柱用仕口部6をPCa製柱3上に載置する。
この一のPCa製水平構造体7が位置決めされると、PCa製柱3の柱頭部25に配置された複数の柱用スリーブ26の位置に、柱用仕口部6の複数の貫通孔29の位置が一致した状態になっている。
こうして、一のPCa製水平構造体7が位置決めされた後、これと隣り合う他のPCa製水平構造体7を組み込む(図4(A3),(B3),図5(B))。すなわち、他のPCa製水平構造体7を、隣りのPCa製柱3の上方で、且つ一のPCa製水平構造体7とは平面視で所定距離以上離れた位置に供給する。
次に、他のPCa製水平構造体7を、一のPCa製水平構造体7とほぼ同じ高さ位置まで下降させながら(矢印E2)、PCa製柱3の上で水平方向(たとえば、桁行方向C)に移動させる(矢印E3)。このとき、PCa製柱3の上には柱用接続鉄筋は突出していないので、柱用接続鉄筋が、他のPCa製水平構造体7の水平移動動作の邪魔になることはない。
他のPCa製水平構造体7の水平移動方向(たとえば、桁行方向C)は、これから接合しようとする梁接合部9における梁用接続鉄筋19や梁用スリーブ16の方向と平行な方向である。他のPCa製水平構造体7をこの水平移動方向に移動させて、梁用接続鉄筋19を梁用スリーブ16に挿入する。
こうして、取付け済みの一のPCa製水平構造体7の大梁5に設けられた梁用接続鉄筋19に、他のPCa製水平構造体7の大梁5に設けられた梁用スリーブ16が係合する。その結果、両方の大梁5,5同士が、梁接合部9で直接的に接合された梁を構成する(図4(A4), (B4),図5(C))。
次に、さらに他のPCa製水平構造体としての大梁5aを、矢印E4に示すように水平方向(たとえば、桁行方向Cと直交する梁間方向D)に移動させて、取付け済みの一のPCa製水平構造体7の大梁5aと梁接合部9で直接的に接合する。
これと同様に、さらに他のPCa製水平構造体としての大梁5aを、矢印E5に示すように水平方向(たとえば、梁間方向D)に移動させて、取付済みの他のPCa製水平構造体7の大梁5aと梁接合部9で直接的に接合する(図4(A4), (B4),図5(C),(D))。このとき、各梁接合部9では、梁用接続鉄筋19に梁用スリーブ16が係合する。
こうして接合された二つの大梁5aは、二つのPCa製柱3上にそれぞれ取付けられた二つのPCa製水平構造体7の大梁5に対して、平面視で直角に配置される。
上述のようにして、PCa製水平構造体を水平方向に移動させ、大梁5同士(および、大梁5a同士)を梁接合部9で直接的に接合している。
なお、図4,図5では、大梁5に対して直角に取付けられる二つのPCa製水平構造体が大梁5aのみにより構成された場合を示しているが、PCa製水平構造体は、大梁5のみにより構成された場合、柱用仕口部に大梁(または、小梁)が一体的に取付けられた場合などであってもよい。この柱用仕口部に大梁(または、小梁)が取付けられた場合には、柱用仕口部が、さらに他のPCa製柱の上に位置決めされることになる。
図1中の符号A1,A2,A3,A4,・・・は、その階におけるPCa製水平構造体7を組み込む際のPCa製水平構造体7の順番を示している。また、隣り合うPCa製水平構造体7の間の梁接合部9における矢印Eは、次に組み込むPCa製水平構造体7の水平移動方向を示している。
たとえば、最初のPCa製水平構造体7を、符号A1に示すように位置決めする。この最初のPCa製水平構造体7は平面視でL字状をなして、その柱用仕口部6がPCa製柱3の上に位置決めされている。
次いで、平面視で直線状をなす二番目のPCa製水平構造体7(符号A2)を、矢印Eに示すように水平方向(ここでは、桁行方向C)に移動させ、PCa製柱3上に位置決めして、大梁5同士を梁接合部9で直接的に接合する。
次に、平面視でT字状をなす三番目のPCa製水平構造体7(符号A3)を、矢印Eに示すように水平方向(ここでは、桁行方向C)に移動して、PCa製柱3上に位置決めし、大梁5同士を梁接合部9で直接的に接合する。
次いで、平面視で直線状をなす四番目のPCa製水平構造体7(符号A4)を、矢印Eに示すように水平方向(ここでは、梁間方向D)に移動して、PCa製柱3上に位置決めし、大梁5同士を梁接合部9で直接的に接合する。その後は同じようにして、その階における多数のPCa製水平構造体7が順次組み立られる。
このようにして、PCa製水平構造体7を水平方向の一方向のみ(桁行方向Cまたは梁間方向D)に移動させて、梁接合部9で大梁5同士(および、大梁5a同士)を直接的に接合している。
ところで、隣り合うPCa製水平構造体7の間の梁接合部のうち、どうしても大梁5同士(または、大梁5a同士)を直接的に接合することができない箇所が必然的に生じる。これは、PCa製水平構造体7の水平移動方向が、その箇所の梁接合部における梁用接続鉄筋19と梁用スリーブ16との係合方向に対して直角になるからである。
このような箇所は、現場打ちコンクリートによる接合部となり、図1中の黒三角印Bで示されており、図1の例では9箇所の現場打ちコンクリート接合部が生じている。この現場打ちコンクリート接合部では、コンクリートを現場打ちして大梁5同士(および、大梁5a同士)を接合することになる。
次に、矢印E6に示すように、一のPCa製水平構造体7上に上階のPCa製柱(逆挿し柱)3を取付ける(図4(A5),(B5),図5(E))。その後、矢印E7に示すように、他のPCa製水平構造体7上に、他の上階のPCa製柱(逆挿し柱)3を取付ける(図4(A6),(B6),図5(F))。
これらPCa製柱3には、柱用接続鉄筋28が、柱脚部30から下方に突出して設けられている。上階のPCa製柱3は、柱用仕口部6の直上に配置されたのち真っ直ぐ下方に移動することにより(矢印E6,E7)、柱用仕口部6上に載置されて位置決めされる。すると、上階のPCa製柱3の柱用接続鉄筋28は、柱用仕口部6の貫通孔29を貫通し、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入される。
こうして、その階(下階,基準階)および上階の柱梁接合構造体4やPCa製柱3の一部(または、全部)の組立が完了した後、柱頭部25の柱用スリーブ26に、本発明方法でグラウト41を注入(圧入充填の場合を含む)して固定する。
その後、各柱梁接合部8における目地(柱用スリーブ26のすぐ上部の目地45と、柱用仕口部6の上部の目地55)と、柱用仕口部6の貫通孔29などにも、グラウト41を注入して固定する。
柱用スリーブ26にグラウト41を注入する場合には、下階のPCa製柱3の柱頭部25の内方に、予めグラウト分配用部材43,43aを配置しておく。このグラウト分配用部材43,43aには、柱用スリーブ26と接続された複数の分配ホース42を、集合状態で接続する。また、グラウト41を注入する前に、柱頭部25のすべての柱用スリーブ26の上端開口44を、予め噴止治具40で塞いでおく。
次いで、グラウト41を、供給ホース48でグラウト分配用部材43,43aに供給する。すると、グラウト41は、グラウト分配用部材43,43aから分配ホース42を介して各柱用スリーブ26に一斉に供給される。
分配ホース42が接続されていない残りの柱用スリーブ26には、供給管53を介してグラウト41を供給する。供給ホース48と供給管53には、グラウト41が重力またはポンプの圧送により供給される。
こうして、すべての柱用スリーブ26に、ほぼ同時にグラウト41が充填される。その上端開口44は噴止治具40で塞がれているので、目地45にはグラウト41がほぼもれ出ずに、柱用スリーブ26の内部全体にグラウト41を良好に充填することができる。
これと同様に、各梁接合部9においても、目地および梁用スリーブ16にグラウトを注入(圧入充填を含む)して固定する(図4(A7),(B7))。
このように、各階における柱梁接合部8および梁接合部9では、グラウトを注入する作業のみを行えばよいので、コンクリートの現場打ち作業は不要になる。
したがって、現場打ちコンクリートのための型枠や配筋が不要で、これらの作業のための足場を仮設する必要もない。その結果、現場作業が大幅に軽減され、超高層の建物の建設にも好都合である。
柱梁接合部8や梁接合部9に充填されるグラウトの強度が高いので、十分な接合強度が発揮される。グラウトのうちたとえばモルタルは、現場打ちコンクリートと比べると、硬化して十分な強度が発現するまでの時間が短時間(たとえば、3日間)なので、柱梁接合構造体4を構築するのに要する期間が短縮される。
現場作業の負担が軽減し、組み立てに要する期間も短縮されるので、工程管理が容易になるとともに建設コストも低減される。
柱梁接合部8や梁接合部9で接合作業のための型枠,配筋,足場が不要なので、これらの作業を行うための床スラブ31は打設されていなくてもよい。したがって、図2(A)〜(D)に示すように、多層建物1の主要構造体である柱梁接合構造体4のみを、床スラブ31や壁躯体などの施工に先行して立ち上げることができる。すなわち、いわば鉄骨造の多層建物と同じような組み立て手順で、柱梁接合構造体4を1階から最上階まで各階毎に順次組立施工することができる。
本実施例では、現場でコンクリート打ちを行う箇所が9箇所発生するが、従来必要であった現場打ちコンクリートの箇所と比べて大幅に少なくなっているので、現場作業の負担が軽減する。
現場打ちコンクリート接合部となる箇所は9箇所と少ないので、この9箇所では、コンクリートが硬化して所定の強度を発現するまで補強用の鉄骨部材などを仮設して大梁5同士(および、大梁5a同士)を仮に接合しておけばよい。そして、その階(基準階,下階)における柱梁接合構造体4の組立が完了した後、上階での柱梁接合構造体4の組立工程に順次移行することができる。
このようにすれば、床スラブや壁躯体の施工を待たなくても、柱梁接合構造体のみを先行して立ち上げることができる。なお、補強用に仮設した鉄骨部材などは、後日取り除けばよい。
以上、本発明の実施例(変形例を含む)を説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
本発明は、集合住宅などの多層建物を構成する柱梁接合構造体の柱梁接合部におけるグラウト注入作業の軽減に有効である。
図1ないし図14は本発明の実施例を説明する図で、図1は多層建物の平面図である。 前記多層建物の柱梁接合構造体の組立手順を示す正面断面図である。 前記柱梁接合構造体の部分拡大正面断面図である。 前記柱梁接合構造体の組立手順を示す説明図である。 前記柱梁接合構造体の組立手順を示す斜視図である。 柱梁接合部の拡大断面図で、グラウト注入前の状態を示している。 図6のVII−VII線矢視図である。 図6相当図で、グラウト注入中の状態を示している。 グラウト噴止治具を取付けるときの状態を説明するための平面図である。 本実施例の変形例を示す図で、図6相当図である。 図10のXI−XI線矢視図である。 図12(A),(B)は、それぞれグラウト噴止治具の平面図,正面図である。 グラウト噴止治具の一方のピース部の分解図である。 本実施例に対する比較例を示す図で、図7相当図である。
符号の説明
1 多層建物(建物)
3 PCa製柱
4 柱梁接合構造体
5,5a 大梁(梁)
6 柱用仕口部
7 PCa製水平構造体
8 柱梁接合部
18 梁主筋
25 柱頭部
26 柱用スリーブ(柱継手部材)
27 柱主筋
28 柱用接続鉄筋
29 貫通孔
40 グラウト噴止治具(閉塞部材)
41 グラウト
42 分配ホース
43,43a グラウト分配用部材
44 上端開口
45 目地

Claims (5)

  1. 建物のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、
    各柱継手部材にそれぞれ接続された複数の分配ホースが集合するグラウト分配用部材を、PCa製柱の柱頭部の内方に配置し、
    グラウトをグラウト分配用部材から分配ホースを介して各柱継手部材に一斉に供給することにより、
    全箇所の柱継手部材の内部にほぼ同時にグラウトを注入するようにしたことを特徴とする建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法。
  2. グラウトを注入する前に予め閉塞部材で柱継手部材の上端開口を塞いだ状態で、グラウトをグラウト分配用部材から分配ホースを介して各柱継手部材に供給することにより、柱継手部材のすぐ上部の目地にはグラウトがほぼもれ出ないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法。
  3. 柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられ、
    PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合される建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法であって、
    下階のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、
    グラウト分配用部材を、下階のPCa製柱の柱頭部の内方に配置し、
    上階のPCa製柱の柱主筋の柱用接続鉄筋を柱用仕口部の貫通孔を貫通させ且つ下階のPCa製柱の柱継手部材に挿入して、上下階のPCa製柱を柱梁接合部で柱用仕口部を介して上下に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の建物のPCa製柱におけるグラウト注入方法。
  4. 柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられ、
    PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合される建物のPCa製柱におけるグラウト注入時に使用されるグラウト噴止治具であって、
    下階のPCa製柱の柱頭部に複数の柱継手部材を設置し、上階のPCa製柱の柱主筋の柱用接続鉄筋を柱用仕口部の貫通孔を貫通させ且つ下階のPCa製柱の柱継手部材に挿入して、上下階のPCa製柱を柱梁接合部で柱用仕口部を介して上下に配置し、
    グラウト噴止治具により柱継手部材の上端開口を塞いだ状態で、柱継手部材にグラウトを供給したとき、柱継手部材のすぐ上部の目地にはグラウトがほぼもれ出ずに柱継手部材の内部にグラウトが注入されるようにしたことを特徴とするグラウト噴止治具。
  5. 請求項1,2または3に記載のグラウト注入方法に使用されるグラウト噴止治具であって、
    グラウト分配用部材によるグラウト注入作業時には、このグラウト噴止治具を、柱継手部材のすぐ上部の目地に挿入して柱継手部材の上端開口を塞ぐための閉塞部材として使用可能であることを特徴とするグラウト噴止治具。
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