JP2006144187A - 難燃性ポリエステル系人工毛髪 - Google Patents

難燃性ポリエステル系人工毛髪 Download PDF

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JP2006144187A JP2004338194A JP2004338194A JP2006144187A JP 2006144187 A JP2006144187 A JP 2006144187A JP 2004338194 A JP2004338194 A JP 2004338194A JP 2004338194 A JP2004338194 A JP 2004338194A JP 2006144187 A JP2006144187 A JP 2006144187A
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Toshihiro Kowaki
敏弘 小脇
Toshiyuki Masuda
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Abstract

【課題】 通常のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、難燃性、セット性、耐ドリップ性に優れ、繊維の艶がコントロールされたポリエステル系人工毛髪用繊維およびそれを用いた人工毛髪の提供。
【解決手段】 主たる構成単位がアルキレンテレフタレートであり、臭素元素を含有するモノマー成分が共重合されており、前記臭素元素を2.5〜12.5重量%含有する難燃ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、有機微粒子(B)および/または無機微粒子(C)を0.2〜5重量部と、アンチモン化合物微粒子(D)0.5〜10重量部とを溶融混練して得られる組成物から形成された難燃性ポリエステル系繊維を人工毛髪として用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、難燃性ポリエステル系人工毛髪に関する。さらに詳しくは、難燃性、耐熱性、強伸度などの繊維物性を維持しつつ、セット性、耐ドリップ性に優れた人工毛髪に関するものである。
ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなる繊維は、高融点、高弾性率で優れた耐熱性、耐薬品性を有していることから、カーテン、敷物、衣料、毛布、シーツ地、テーブルクロス、椅子張り地、壁装材、人工毛髪、自動車内装資材、屋外用補強材、安全ネットなどに広く使用されている。
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭髪製品においては、従来、人毛や人工毛髪(モダクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維)などが使用されてきている。しかし、人毛の提供は困難になってきており、人工毛髪の重要性が高まってきている。
人工毛髪素材として、難燃性の特徴を生かしてモダクリル繊維が多く使用されてきているが、耐熱性の点では不充分である。
近年、耐熱性に優れたポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルを主成分とする繊維を用いた人工毛髪が提案されるようになってきている。
しかしながら、ポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステルからの繊維は、可燃性素材であるため、耐燃性が不充分である。
従来、ポリエステル繊維の耐燃性を向上させようとする試みは種々なされており、たとえば、後加工によりポリエステル繊維に難燃剤を含浸させる方法や、溶融混練時または紡糸時に難燃剤を練り込む方法や、リン原子を含有する難燃性モノマーを重合時に共重合させる方法などが知られている。
後加工によりポリエステル繊維に難燃剤を含有させる方法としては、ポリエステル繊維に、微粒子のハロゲン化シクロアルカン化合物を含有させる方法(特許文献1)、臭素原子含有アルキルシクロヘキサンを含有させる方法(特許文献2)などが提案されているが、充分な耐燃性を得るために、含有処理温度を150℃以上の高温にすることが必要であったり、含有処理時間を長時間にする必要があったり、あるいは大量の難燃剤を使用しなければならないといった問題や、洗濯やシャンプーすることにより、難燃剤が溶出してしまうといった問題があり、繊維物性の低下や生産性の低下、製造コストがアップするなどの問題が発生する。
また、溶融混練時または紡糸時に難燃剤を練り込む方法としては、ポリエステルにリン酸エステル系難燃剤を溶融混練した組成物を紡糸することにより難燃ポリエステル繊維を得る方法(特許文献3)などが提案されているが、繊維表面にべたつき感があったり、洗濯やシャンプーすることにより、難燃剤が溶出してしまうといった問題がある。
さらに、難燃性モノマーを共重合させる方法でとしては、リン化合物を共重合させたポリエステル繊維(特許文献4、5)、臭素系化合物を共重合又は反応させたポリエステル繊維(特許文献6〜9)などが提案されているが、十分な難燃性を得るためには、共重合量を多くしなければならず、その結果、ポリエステルの耐熱性が大幅に低下し、溶融紡糸が困難になったり、火炎が接近した場合、着火・燃焼はしないが、溶融・ドリップするという問題が発生する。
従来、種々の提案がなされてきているが、人工毛髪に要求される高い耐燃性を確保するためには、いずれの方法においても多量の難燃剤を使用する必要があり、従来のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度などの繊維物性を維持することは困難であった。これらのことから、従来のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度などの繊維物性を維持し、難燃性、セット性、くし通りに優れた人工毛髪は、いまだ得られていないのが実状である。
特公平3−57990号公報 特公平1−24913号公報 特開平9−268423号公報 特開平3−27105号公報 特開平5−339805号公報 特開昭50−82160号公報 特開昭49−54494号公報 特公平08−19568号公報 特開昭52−132118号公報
本発明は、前述のごとき従来の問題を解決した、通常のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、難燃性、セット性、耐ドリップ性に優れ、さらに、繊維の艶がコントロールされた難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、主たる構成単位がアルキレンテレフタレートであり、臭素元素を含有するモノマー成分が共重合されており、臭素元素を2.5〜12.5重量%含有する難燃ポリエステル樹脂と、有機微粒子および/または無機微粒子とを溶融紡糸することにより、通常のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、難燃性、セット性、耐ドリップ性に優れ、さらに、繊維の艶がコントロールされた難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、主たる構成単位がアルキレンテレフタレートであり、臭素元素を含有するモノマー成分が共重合されており、前記臭素元素を2.5〜12.5重量%含有する難燃ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、有機微粒子(B)および/または無機微粒子(C)0.2〜5重量部を溶融混練して得られる組成物から形成された難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪であり、好ましくは、臭素元素を含有するモノマー成分が、一般式(1)〜(4):
Figure 2006144187
(式中、Xはメチレン基、イソプロピリデン基、スルホニル基、mは1〜16の整数を示す)
Figure 2006144187
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、xは1〜4の整数を示す)
Figure 2006144187
(式中、R2は水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、yは1〜4の整数を示す)
Figure 2006144187
(式中、R3は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)
で表される臭素含有化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種である前記人工毛髪、さらに、有機微粒子(B)および/または無機微粒子(C)を混合して、繊維表面に微細な突起を形成することを特徴とし、(B)成分が、ポリアリレート、ポリアミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、(C)成分が炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、また(A)〜(C)成分からなる組成物に、アンチモン化合物微粒子(D)0.5〜10重量部が難燃助剤として混合され、(D)成分が三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種である前記人工毛髪に関する。
また、前記難燃性ポリエステル系繊維は非捲縮生糸状であり、原着されており、単繊維繊度が10〜100dtexであることが好ましい。
本発明によると、通常のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、難燃性、セット性、耐ドリップ性に優れ、繊維の艶がコントロールされたポリエステル系繊維およびそれを用いた人工毛髪が得られる。
本発明の難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪は、主たる構成単位がアルキレンテレフタレートであり、前記臭素元素を含有するモノマー成分が共重合されており、臭素元素を2.5〜12.5重量%含有する難燃ポリエステル樹脂(A)に、有機微粒子(B)および/または無機微粒子(C)を溶融混練して得られる組成物から形成されたものである。
本発明に用いられる難燃ポリエステル樹脂(A)は、主たる構成単位がアルキレンテレフタレートであり、臭素元素を含有するモノマー成分が共重合されている。
前記主たる構成単位とは、アルキレンテレフタレートを、60モル%以上含有することをいう。
前記主たる構成単位としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどであり、臭素含有モノマー以外の少量の他の共重合成分を含有していてもよい。
前記他の共重合成分としては、たとえばイソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸、それらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸、その誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルなどがあげられる。
前記難燃ポリエステル樹脂(A)は、通常、主体となるテレフタル酸および/またはその誘導体(たとえばテレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの重合体に少量の共重合成分を含有させて反応させることにより製造するのが、安定性、操作の簡便性の点から好ましいが、主体となるテレフタル酸および/またはその誘導体(たとえばテレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの混合物に、さらに少量の共重合成分であるモノマーまたはオリゴマー成分を含有させたものを重合させることにより製造してもよい。
前記難燃ポリエステル樹脂(A)は、主体となるポリアルキレンテレフタレートの主鎖および/または側鎖に前記共重合成分が重縮合していればよく、共重合の仕方などには特別な限定はない。
本発明に用いられる臭素元素を含有するモノマー成分にはとくに限定はなく、(A)成分と共重合可能な一般に用いられている反応型臭素含有難燃剤であれば使用することができる。反応型臭素含有難燃剤としては、前記一般式(1)〜(4)で表される臭素系化合物などが挙げられ、具体例としては、
Figure 2006144187
Figure 2006144187
Figure 2006144187
Figure 2006144187
などの臭素含有化合物が挙げられる。
前記臭素元素を含有するモノマー成分の共重合量は、(A)成分中に、臭素元素の含有量で2.5〜12.5重量%の範囲であり、3.5〜11.0重量%がより好ましく、5〜10.重量%がさらに好ましい。共重合量が2.5重量%より少ないと難燃効果が得られ難くなり、12.5重量%より多いと機械的特性や紡糸加工性が低下したり、接炎した場合にドリップしやすくなる傾向がある。臭素元素を含有するモノマー成分を共重合させる熱可塑性共重合ポリエステルの製造は、公知の方法を用いることができ、ジカルボン酸およびその誘導体とジオール成分およびその誘導体と臭素元素を含有するモノマー成分を混合し重縮合する方法や熱可塑性ポリエステルをエチレングリコールなどのジオール成分を用いて解重合し、解重合時に臭素元素を含有するモノマー成分を混在させ、再度、重縮合させて共重合体を得る方法などが好ましく、例えば、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールと臭素元素を含有するモノマー成分を特定の比率で混合し、三酸化アンチモンまたは二酸化ゲルマニウムを触媒量加え、加熱してエステル交換反応させ、低分子量重合体を生成させた後に、反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させて製造することができる。
(A)成分の固有粘度としては、0.65〜1.05、さらには0.7〜1.0であるのが好ましい。固有粘度が0.65未満の場合、得られる人工毛髪が接炎した場合にドリップしやすくなる傾向が生じ、1.05をこえるものは、反応性の低下により合成しにくくなる傾向が生じる。
本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は、有機微粒子(B)および/または無機微粒子(C)を混合して、繊維表面に微細な突起を形成し、繊維表面の光沢、つやを調整することができる。
(B)成分としては、主成分である(A)成分と相溶しないか、部分的に相溶しない構造を有する有機樹脂成分であれば使用することができ、たとえば、ポリアリレート、ポリアミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレンなどが好ましく用いられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定的に光沢調整効果を発現するためには、耐熱性、分散性の点から架橋ポリエステル粒子、架橋アクリル粒子が好ましい。
前記架橋ポリエステル粒子は、不飽和ポリエステルとビニル系単量体を水分散させ、架橋硬化させることで得られる。ここで使用される不飽和ポリエステルとしては、とくに限定はなく、たとえば、α,β−不飽和酸もしくはそれと飽和酸との混合物と二価アルコールもしくは三価アルコールとを重合させたものなどを挙げることができる。不飽和酸としては、たとえば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などが、飽和酸としてはたとえば、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、およびセバチン酸などが挙げられる。また、二価アルコールおよび三価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。一方、ビニル系単量体としては、とくに限定はなく、たとえば、スチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、アクリル酸、メチルアクリレート、アクリロニトリル、エチルアクリレート、およびジアリルフタレートなどが挙げられる。
前記架橋アクリル粒子は、アクリル系単量体と架橋剤を水分散させ、架橋硬化させることで得られる。ここで使用されるアクリル系の単量体としては、アクリル酸、アクリル酸の誘導体、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、あるいはメタクリル酸、メタクリル酸の誘導体、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの1分子中に1個のビニル基を有するビニル系単量体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組合せて使用することができる。また、架橋剤としては1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体であればいずれでもよいが、1分子中に2個のビニル基を有するものが好ましい。架橋剤として好ましい単量体としては例えば、ジビニルベンゼン、グリコールとメタクリル酸あるいはアクリル酸との反応生成物、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートなどがあるが、これらに限定されるものではない。架橋剤の添加量は、ビニル基を1個有する単量体100重量部に対して0.02〜5重量部が好ましい。重合開始剤としては、過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましく、例えば、過酸化ベンゾイル、過安息香酸2−エチルヘキシル、過酸化ジtert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドなどが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、ビニル基を1個有する単量体100重量部に対して0.05〜10重量部使用されるのが好ましい。
(C)成分としては、繊維の透明性、発色性への影響から、(A)成分の屈折率に近い屈折率を有するものが好ましく、たとえば、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカなどが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでは、球形に近い微粒子のほうが光沢調整効果が高く、酸化ケイ素、酸化ケイ素を主体とした複合粒子などが好ましい。本発明に用いられる(C)成分は、必要に応じてエポキシ化合物、シラン化合物、イソシアネート化合物、チタネート化合物等で表面処理されてもよい。(B)成分、(C)成分の平均粒子系は0.5〜10μmが好ましく、1から9μmがより好ましく、1.5〜8μmがさらに好ましい。
本発明の(D)成分に用いられるアンチモン化合物微粒子にはとくに限定はなく、一般に用いられているものを使用することができる。
アンチモン化合物微粒子の具体例としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アンチモン化合物微粒子が混合された難燃性ポリエステル系繊維の紡糸加工性の点から、アンチモン酸ナトリウムが好ましい。アンチモン化合物の平均粒子径は0.5〜15μm以下が好ましく、1〜12μmがより好ましく、1.5〜10μmがさらに好ましい。
(D)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対し、0.5〜10重量部が好ましく、0.6〜9重量部がより好ましく、0.7〜8重量部がさらに好ましい。使用量が0.5重量部より少ないと、難燃効果の向上が小さく、10重量部より多いと、加工安定性、外観性、透明性が損なわれる。
本発明に使用する難燃性ポリエステル系組成物は、たとえば、(A)、(B)および/または(C)成分をドライブレンドしたのち、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練することにより製造することができる。
前記混練機の例としては、たとえば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどがあげられる。これらのうちでは、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪は、前記難燃性ポリエステル系組成物を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより製造することができる。
すなわち、たとえば、押出機、ギアポンプ、口金などの温度を270〜310℃とし、溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒を通過させたのち、ガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度や長さ、冷却風の温度や吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間、引取速度は、吐出量および口金の孔数によって適宜調整することができる。
得られた未延伸糸は熱延伸されるが、延伸は未延伸糸を一旦巻き取ってから延伸する2工程法および巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。熱延伸は、1段延伸法または2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
本発明の難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪には、必要に応じて、(B)成分以外の難燃剤、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、可塑剤、潤滑剤などの各種添加剤を含有させることができる。顔料を含有させることにより、原着繊維を得ることができる。
このようにして得られる本発明の難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪は、非捲縮生糸状の繊維であり、その繊度は、通常、10〜100dtex、さらには20〜90dtexであるのが、人工毛髪用に適している。また、人工毛髪用繊維としては、160〜200℃で美容熱器具(ヘアーアイロン)が使用できる耐熱性を有しており、着火しにくく、自己消火性を有している。
本発明の難燃性ポリエステル系繊維が原着されている場合、そのまま使用することができるが、原着されていない場合、通常の難燃性ポリエステル系繊維と同様の条件で染色することができる。
染色に使用される顔料、染料、助剤などとしては、耐候性および難燃性のよいものが好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は、美容熱器具(ヘアーアイロン)を用いたカールセット性に優れ、カールの保持性にも優れる。また、繊維表面の凹凸により、適度に艶消されており、人工毛髪として使用することができる。さらに、繊維表面処理剤、柔軟剤などの油剤を使用し、触感、風合を付与して、より人毛に近づけることができる。
また、本発明の難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪は、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維など、他の人工毛髪素材と併用してもよいし、人毛と併用してもよい。
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛などの頭髪製品に使用される人毛は、一般に、キューティクルの処理や脱色および染色されており、触感、くし通りを確保するために、シリコーン系の繊維表面処理剤、柔軟剤を使用しているため、未処理の人毛とは異なり易燃性であるが、本発明の難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪と人毛とを人毛混率60%以下で混合した場合、良好な難燃性を示す。
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、特性値の測定法は、以下のとおりである。
(強度および伸度)
インテスコ社製、INTESCO Model 201型を用いて、フィラメントの引張強伸度を測定する。長さ40mmのフィラメント1本をとり、フィラメントの両端10mmを、接着剤を糊付けした両面テープを貼り付けた台紙(薄紙)で挟み、一晩風乾させて、長さ20mmの試料を作製する。試験機に試料を装着し、温度24℃、湿度80%以下、荷重3.4×10-3N×繊度(dtex)、引張速度20mm/分で試験を行ない、強伸度を測定する。同じ条件で試験を10回繰り返し、平均値をフィラメントの強伸度とする。
(難燃性)
繊度約50dtexのフィラメントを150mmの長さに切り、0.7gを束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに固定して垂直に垂らす。有効長120mmの固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎させ、燃焼させて評価した。
−燃焼性−
◎:残炎時間が0秒(着火しない)。
○:3秒未満。
△:3〜10。
×:10秒以上。
−耐ドリップ性−
◎:ドリップ数が0。
○:5以下。
△:6〜10。
×:11以上。
(光沢)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを太陽光のもと、目視により評価する。
◎:人毛に等しいレベルに光沢が調整されている。
○:適度に光沢が調整されている。
△:若干光沢が多すぎる、または、若干光沢が少なすぎる。
×:光沢が多すぎる、または、光沢が少なすぎる。
(触感)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを手で触り、フィラメント表面のベタツキ感を評価する。
○:ベタツキ感なし。
△:若干ベタツキ感がある。
×:ベタツキ感がある。
(くし通り)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントに繊維表面処理剤として、PO/EOランダム共重合体(分子量20000)とカチオン系帯電防止剤を50/50の比率で含む3%水溶液に浸漬し、それぞれ0.1%が付着するようにし、80℃で5分間乾燥させる。処理されたトウフィラメントにくし(デルリン樹脂製)を通し、くしの通り易さを評価する。
○:ほとんど抵抗ない(軽い)。
△:若干抵抗がある(重い)。
×:かなり抵抗がある、または、途中で引っかかる。
(アイロンセット性)
ヘアーアイロンによるカールセットのしやすさ、カール形状の保持性の指標である。フィラメントを180℃に加熱したヘアーアイロンにかるく挟み、3回扱き予熱する。このときのフィラメント間の融着、櫛通り、フィラメントの縮れ、糸切れを目視評価する。つぎに、予熱したフィラメントをヘアーアイロンに捲きつけ、10秒間保持し、アイロンを引き抜く。このときの抜きやすさ(ロッドアウト性)、抜いたときのカールの保持性を目視評価する。
−融着−
○:なし。
△:若干あり。
×:あり。
−縮れ/糸切れ−
○:なし。
△:若干あり。
×:あり。
−ロッドアウト−
○:アイロンロッドが抵抗なく抜ける。
△:若干抵抗がある。
×:抵抗があり、抜け難い。
−セット性−
○:セットが付きやすく、カールが安定している。
△:セットは付く安いが、若干カールが崩れる。
×:セットが付き難い、または、カールが崩れる。
次に本実施例に用いる(A)成分の製造例1〜7を示す。
(製造例1〜7)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール69部、酢酸カルシウム1水塩0.06部をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で4時間かけて140℃から230℃まで昇温して生成するグリコールを系外に留出させながらエステル交換反応を行なった。得られた生成物に表1に示す臭素元素含有モノマーA〜Dを所定の臭素元素含有量になるように添加した後、250℃で反応させた。続いて、0.5部のトリメチルホスフェートと0.3部の酢酸カルシウム1水塩とを8.5部のエチレングリコール中で、全還流下120℃で60分間反応せしめて得たリン酸ジエステルカルシウム塩の溶液に0.57部の酢酸カルシウム1水塩を溶解させ、三酸化アンチモン0.04部と共に重合缶に移した。次いで、1時間かけて760mmHgから31mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて230℃から285℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度285℃で表1に示す固有粘度(IV)に到達するまで重縮合を継続した。
Figure 2006144187
*1:
Figure 2006144187
*2:
Figure 2006144187
*3:
Figure 2006144187
*4:
Figure 2006144187
(実施例1〜7)
製造例1〜4で得られた難燃ポリエステル樹脂(A)を水分量100ppm以下に乾燥し、有機微粒子(B)、無機微粒子(C)およびアンチモン化合物微粒子(D)を、表2に示す比率で混合し、さらに、着色用ポリエステルペレットPESM6100 BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%、ポリエステルは(A)成分に含まれる)2部を添加してドライブレンドし、二軸押出機に供給し、280℃で溶融混練し、ペレット化したのちに、水分量100ppm以下に乾燥させた。ついで、溶融紡糸機を用いて280℃でノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、口金下30mmの位置に設置した水温50℃の水浴中で冷却し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で延伸を行ない、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行ない、単繊維繊度が50dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。得られた繊維を用いて、強伸度、難燃性、光沢、触感、くし通り、アイロンセット性を評価した結果を表4に示す。
Figure 2006144187
*5:架橋アクリル粒子、平均粒子径1.8μm、綜研化学(株)製
*6:架橋アクリル粒子、平均粒子径10μm、綜研化学(株)製
*7:メラミン樹脂/シリカ複合体、平均粒子径1.9μm、日産化学(株)製
*8:球状微粉末シリカ、平均粒子径4μm、富士シリシア(株)製
*9:アンチモン酸ナトリウム、平均粒子系3.5〜5.5μm、日産化学(株)製
(比較例1〜3)
製造例5〜7で得られた難燃ポリエステル樹脂(A)を水分量100ppm以下に乾燥し、無機微粒子(C)を、表3に示す比率で混合し、さらに、着色用ポリエステルペレットPESM6100 BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%、ポリエステルは(A)成分に含まれる)2部を添加してドライブレンドし、二軸押出機に供給し、280℃で溶融混練し、ペレット化したのちに、水分量100ppm以下に乾燥させた。ついで、溶融紡糸機を用いて280℃でノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、口金下30mmの位置に設置した水温50℃の水浴中で冷却し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で延伸を行ない、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行ない、単繊維繊度が50dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
Figure 2006144187
*10:酸化チタン、平均粒子系0.15μm、石原産業(株)製
*11: シリカ、平均粒子系2〜3μm、UNIMIN(株)製
得られた繊維を用いて、強伸度、難燃性、光沢、触感、くし通り、アイロンセット性を評価した結果を表4に示す。
Figure 2006144187
表4に示したように、比較例に対し、実施例では、臭素元素を含有するモノマーが共重合されている難燃ポリエステル樹脂に、有機微粒子および/または無機微粒子を溶融混練した組成物を使用することで、繊維物性、難燃性、触感、くし通り、アイロンセット性等の低下がなく、発色を損なわずに、光沢が抑制されることが確認された。従って本発明に係る難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪は、従来の人工毛髪に比べポリエステルの機械的特性、熱的特性を維持しつつ、難燃性、触感、くし通り、アイロンセット性、光沢が改善されており、人工毛髪として有効に用いることが可能になることを確認した。

Claims (9)

  1. 主たる構成単位がアルキレンテレフタレートであり、臭素元素を含有するモノマー成分が共重合されており、前記臭素元素を2.5〜12.5重量%含有する難燃ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、有機微粒子(B)および/または無機微粒子(C)0.2〜5重量部を溶融混練して得られる組成物から形成された難燃性ポリエステル系繊維からなる人工毛髪。
  2. 臭素元素を含有するモノマー成分が、一般式(1)〜(4):
    Figure 2006144187
    (式中、Xはメチレン基、イソプロピリデン基、スルホニル基、mは1〜16の整数を示す)
    Figure 2006144187
    (式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、xは1〜4の整数を示す)
    Figure 2006144187
    (式中、R2は水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、yは1〜4の整数を示す)
    Figure 2006144187
    (式中、R3は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)
    で表される臭素含有化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の人工毛髪。
  3. (B)成分が、ポリアリレート、ポリアミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の人工毛髪。
  4. (C)成分が、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカよりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の人工毛髪。
  5. (A)〜(C)成分からなる組成物に、アンチモン化合物微粒子(D)0.5〜10重量部が難燃助剤として混合された請求項1〜4のいずれかに記載の人工毛髪。
  6. (D)成分のアンチモン化合物微粒子が、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項5記載の人工毛髪。
  7. 前記難燃性ポリエステル系繊維が、非捲縮生糸状である請求項1〜6のいずれかに記載の人工毛髪。
  8. 前記難燃性ポリエステル系繊維が、原着されている請求項1〜7のいずれかに記載の人工毛髪。
  9. 単繊維繊度が10〜100dtexである請求項1〜8のいずれかに記載の人工毛髪。
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JP2008031565A (ja) * 2006-07-26 2008-02-14 Artnature Co Ltd ポリエステル系人工毛髪及びその製造方法
KR100986956B1 (ko) 2004-04-12 2010-10-12 카네카 코포레이션 모발용 합성 섬유에 권축을 부여하는 방법 및 장치

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