JP2006143834A - 塑性加工潤滑剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
ホウ酸塩や黒鉛を含まなくとも塑性加工安定性、潤滑性、離型性に優れ、安全で、環境汚染を引起さず、簡易に効率よく製造できる塑性加工潤滑剤を提供する。
【解決手段】
塑性加工潤滑剤は、無機の層状複水酸化物の層間に有機酸の陰イオンがインターカレートされている有機酸インターカレート層状複水酸化物を、含有している。塑性加工潤滑剤は、固形状、粉末状、または懸濁液状であって、アルカリ石鹸および/または金属石鹸を含有していてもよい。塑性加工潤滑剤は、前記有機酸インターカレート層状複水酸化物が、Li、Al3+、Cr3+、Fe3+および/またはCo3+の1価または3価金属イオンと、Mg2+、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Zr2+、Co2+、Ni2+、Fe2+および/またはMn2+の2価金属イオンとを含んでいる。

Description

本発明は、金属原材に外力を加え塑性変形させて所望の形状に加工する伸線や熱間鍛造の際に用いられる潤滑剤に関するものである。
鉄、鋼、ステンレス鋼の金属原材は、その表面金属酸化被膜の酸洗浄や機械的研削がされ、適度な潤滑性や防錆性を付与したり塑性加工し易くしたりするために塑性加工前処理剤により予め被膜で被覆された後、潤滑剤存在下、引抜加工、プレス加工、鍛造加工のような塑性加工により、伸線材、シャフト、ギア等の金属製品になる。
引抜加工により伸線材のような金属製品を形成する際、ホウ酸塩を含有し伸線安定性や潤滑性能を向上させる乾式引抜加工潤滑剤が用いられていた。しかし、ホウ素は植物の成長や人体の生殖機能に対して悪影響を与える元素であることから排水中の含有量が10ppm以下に規制されたため、タルクやマイカ等の層状機能性無機層状物質や消石灰が、ホウ酸塩非含有の塑性加工潤滑剤として汎用されるようになっている。ホウ酸塩非含有塑性加工潤滑剤は、ホウ酸塩含有潤滑剤ほどの伸線安定性や潤滑性能が得られないという問題があった。
また、強度が必要なシャフトやギアの金属製品は、1000℃以上の高温で金属原材を鎚打ちしたり金型で圧縮成型したりして塑性変形させる熱間鍛造により形成される。その際、金属原材と鍛造用の金型や工具等との摩擦を低減させたり、潤滑性や剥離性や冷却性を向上させたりする黒鉛を含有する潤滑剤が用いられていた。しかし、黒鉛の飛散や付着により、金具・塑性加工機・作業場・作業者等の作業環境を汚染していた。黒鉛非含有であって作業環境を汚染し難い熱間鍛造用潤滑剤として、特許文献1にはワックスおよびカルボン酸塩と水とを含有した潤滑剤、特許文献2には炭水化物をモリブデン酸またはモリブデン酸塩と水とを含有する潤滑塑性物、特許文献3にはトリメリット酸塩、アジピン酸塩、オレフィン−無水マレイン酸共重合体塩、および水よりなる潤滑剤が夫々開示されている。一般に黒鉛非含有の熱間鍛造用潤滑剤は、黒鉛ほどの潤滑性、離型性が得られず、汎用性がないという問題があった。
特開平5−125384号公報 特開平7−026280号公報 特開平8−157860号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、ホウ酸塩や黒鉛を含まなくとも塑性加工安定性、潤滑性、離型性に優れ、安全で、環境汚染を引起さず、簡易に効率よく製造できる塑性加工潤滑剤、およびそれを用いた熱間鍛造用潤滑剤を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、無機の層状複水酸化物の層間に有機酸の陰イオンがインターカレートされている有機酸インターカレート層状複水酸化物を、含有していることを特徴とする塑性加工潤滑剤である。
有機酸インターカレート層状複水酸化物は、潤滑性を有したゲストである有機酸が、耐熱性を有したホストである無機の層状複水酸化物に、インターカレートして、ナノレベルで積層を形成したものである。この潤滑剤は、無機の層状複水酸化物単独や有機酸単独では発現し得ない耐熱性と潤滑性との両方を発現するので、熱間金属塑性加工、乃至は冷間金属塑性加工、中でも特に伸線のような引抜加工や、熱間鍛造の際に使用される。
同じく請求項2に係る発明は、アルカリ石鹸および/または金属石鹸を含有していることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工潤滑剤である。
アルカリ石鹸および/または金属石鹸は一層優れた潤滑性を発現させる。アルカリ石鹸は、脂肪酸とアルカリ金属との塩例えばステアリン酸ナトリウムであり、金属石鹸は脂肪酸とアルカリ金属以外の金属との塩例えば脂肪酸カルシウムである。
塑性加工潤滑剤中、有機酸インターカレート層状複水酸化物が1〜100重量部、アルカリ石鹸および/または金属石鹸が0〜99重量部の比で含有されていることが好ましい。
同じく請求項3に係る発明は、固形状、粉末状、または懸濁液状であることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤である。
塑性加工潤滑剤は、固形状または粉末状である場合、有機酸インターカレート層状複水酸化物のみからなるものであってもよく、有機酸インターカレート層状複水酸化物を少なくとも1重量%含有するものであってもよい。塑性加工潤滑剤は、懸濁液状である場合、有機酸インターカレート層状複水酸化物を0.001〜20重量%含んでいることが好ましい。
同じく請求項4に係る発明は、前記有機酸インターカレート層状複水酸化物が、Li、Al3+、Cr3+、Fe3+および/またはCo3+の1価または3価金属イオンと、Mg2+、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Zr2+、Co2+、Ni2+、Fe2+および/またはMn2+の2価金属イオンとを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤である。
同じく請求項5に係る発明は、前記有機酸インターカレート層状複水酸化物が、下記化学式(1)
[(M2+)1-x(M3+)x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- ・・・(1)
(式(1)中、M2+は前記2価金属イオン、M3+は前記3価金属イオン、0<x<1、An-はn価の有機酸陰イオン、yH2Oは層間水)
で示されることを特徴とする請求項4に記載の塑性加工潤滑剤である。
同じく請求項6に係る発明は、前記有機酸インターカレート層状複水酸化物が、1価金属イオンおよび/または3価金属イオンを含有する水溶性塩と、2価金属イオンを含有する水溶性塩および/または2価金属の酸化物と、前記有機酸および/またはその金属塩とを混合して調製されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤である。
これにより、前記化学式(1)で示される有機酸インターカレート層状複水酸化物は、簡便に効率的かつ高純度で調製される。1価および/または3価の金属イオンを含有する水溶性塩を0.1〜9モル当量、2価の金属イオンを含有する水溶性塩および/または2価金属の酸化物を0.25〜50モル当量、有機酸および/またはその金属塩を0.1〜9当量用いることが好ましい。
同じく請求項7に係る発明は、前記2価の金属イオンを含有する水溶性塩および/または2価金属の酸化物が、酸化マグネシウムを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の塑性加工潤滑剤である。
同じく請求項8に係る発明は、前記有機酸が、R−COOH(R−は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、無置換またはアルキル基置換フェニル基のいずれか)、R−SOH(R−はR−と同じ)、HOOC−COOH、および/またはHOOC−R−COOH(−R−は炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数2〜24のアルケニレン基、無置換またはアルキル基置換フェニレン基のいずれか)であることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤である。
具体的には、R−COOHはステアリン酸、オレイオン酸、パルミチン酸が挙げられ、R−SOHはドデシル硫酸、ドデシルベンゼン硫酸が挙げられ、HOOC−R−COOHはマレイン酸、フタル酸が挙げられる。
前記化学式(1)で示される有機酸インターカレート層状複水酸化物は、下記化学式(2)
[(M2+)1-x(M3+)x(OH)2x+[Bn- x/n・yH2O]x- ・・・(2)
(式(2)中、M2+は前記2価金属イオン、M3+は前記3価金属イオン、0<x<1、Bn-はCO 2−、NO 、Cl、SO 2−のようなn価の無機陰イオン、yH2Oは層間水)
で示される無機陰イオンがインターカレートされた無機の層状複水酸化物中の無機陰イオンをデインターカレートさせ、その代わりに有機酸陰イオンをインターカレートさせたものであってもよい。無機の層状複水酸化物は、例えば天然粘土鉱物、より具体的にはMg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで示されるハイドロタルサイトのようなMg/Al系層状複水酸化物が挙げられる。
また、前記化学式(1)で示される有機酸インターカレート層状複水酸化物と、前記化学式(2)で示される無機の層状複水酸化物とが混合されていてもよい。
塑性加工潤滑剤は、必要に応じて増粘剤、造膜剤(バインダー)、潤滑添加剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、防食剤、消泡剤で例示される添加剤が含有されていてもよい。
増粘剤として、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子化合物が挙げられる。造膜剤(バインダー)として、アクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、スチレン−アクリル系、エチレン−酢酸ビニル系等の水溶性樹脂エマルション、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
同じく請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の塑性加工潤滑剤を含んでいることを特徴とする熱間鍛造用潤滑剤である。
石灰石鹸のような塑性加工前処理剤により予め被膜で被覆された金属原材例えば鉄、鋼、ステンレス鋼に、この塑性加工潤滑剤または熱間鍛造用潤滑剤が、塗布、噴霧、浸漬等により付され、必要に応じ乾燥された後、塑性加工が施される。
引抜や熱間鍛造の塑性加工の際に本発明の潤滑剤を用いると、ホウ酸塩や黒鉛を用いなくとも、それらを用いた潤滑剤と同等以上の優れた塑性加工安定性、潤滑性、離型性が得られるうえ、有害物質を含有しないので安全であり、また飛散しないので作業環境汚染を引起さない。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
先ず、3価金属イオン含有水溶性塩と酸化マグネシウムと脂肪酸塩とを用いて、有機酸インターカレート層状複水酸化物懸濁液を調製した例を、調製例1に示す。
(調製例1)
アルミン酸ナトリウム0.066molを300ml脱イオン水に溶解し、四つ口フラスコに仕込んだ。それに、550℃でか焼した酸化マグネシウム0.11molを添加し、5分間撹拌し、アルミン酸ナトリウムと酸化マグネシウムとの懸濁液を得た。次に0.066mol工業用ステアリン酸ナトリウム水溶液1000mlを入れた四つ口フラスコに、前記アルミン酸ナトリウムと酸化マグネシウムとの懸濁液を注ぎ入れ、80℃で加熱しながら3時間撹拌して熟成させて、潤滑剤として有機酸インターカレート層状複水酸化物懸濁液を得た。この時、反応溶液のpH値は11〜12であった。この懸濁液中の有効成分である有機酸インターカレート層状複水酸化物の濃度は、13重量%であった。この有機酸インターカレート層状複水酸化物は、Mg2+およびAl3+を原子吸光度分析法、有機酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で夫々定量したところ、
Mg2.8Al1.0(OH)7.6(Stearate)1.0・4.0H
という組成式で示されるステアリン酸インターカレート層状複水酸化物(LDH/ST : Layered Double Hydroxide/Stearate)であると同定された。
実施例1〜2は、調製例1で得た有機酸インターカレート層状複水酸化物懸濁液を用いて本発明を適用する熱間鍛造用潤滑剤を試作した例を示し、比較例1〜4は、本発明を適用外の潤滑剤を試作した例を示す。
(実施例1〜2)
有機酸インターカレート層状複水酸化物懸濁液、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩(イソバン)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(HEC)、スチレン/無水マレイン酸コポリマー(SMA1440)および水の各成分を、表1に記載の比率で混合した後、ホモミキサーを用いて平均粒径10μm以下になるまで微細化させて、実施例1〜2の熱間鍛造用潤滑剤を得た。
(比較例1〜4)
表1に記載の比率で各成分を混合した後、ホモミキサーを用いて平均粒径10μm以下になるまで微細化させて、比較例1〜4の潤滑剤を得た。
(塑性加工性能評価)
実施例1〜2の熱間鍛造用潤滑剤および比較例1〜4の潤滑剤を用いて、リング圧縮評価試験により塑性加工性能を評価した。
リング圧縮評価試験は、リング状試験片を平行平面工具でプレスして圧縮変形させ、圧縮率と変形前後の内径比とから摩擦係数を求めるという方法で行われる。試験には、炭素鋼S45C製の16φ×8φ×8mmのリング状試験片を用いた。リング状試験片を、高周波加熱装置により1000℃以上に加熱し、プレス圧50トンでプレスした。プレス後のリング圧縮率は30〜50%の範囲で行なった。プレスに用いられる金型は、コードヒーターにより約200℃に維持され、スプレーにより実施例1〜2と比較例1〜4の潤滑剤を夫々均一に塗布されたものである。
摩擦係数の算出法は、H.Kudo,Proc.5th Jap.Nat.Congr.Apple.Mech.,p.75(1955)に記載の工藤の理論式に従った。リング圧縮評価試験を3回行って算出した摩擦係数の平均値を、表1に示す。
Figure 2006143834
表1から明らかなとおり、ステアリン酸インターカレート層状複水酸化物(LDH/ST)を含有する実施例1および2の熱間鍛造用潤滑剤は、それを含有しない比較例1〜4の潤滑剤よりも最大で0.04も摩擦係数が低かった。
実施例1および2の熱間鍛造用潤滑剤は、黒鉛を含有する比較例2の潤滑剤よりも、摩擦係数が低くて潤滑性が優れ、さらに離型性が優れ、飛散せずに作業環境汚染を引起さないものであった。
実施例1および2の熱間鍛造用潤滑剤は、非黒鉛系として従来汎用されていたイソフタル酸ナトリウムを含有する比較例3の潤滑剤よりも、摩擦係数が低くて潤滑性が優れていた。
また、実施例1および2の熱間鍛造用潤滑剤は、層間に炭酸イオンがインターカレートしているハイドロタルサイトを含有する比較例4の潤滑剤よりも、摩擦係数が低くて潤滑性が優れていた。このことは、ハイドロタルサイトに存在しない有機酸陰イオンが優れた潤滑性を発現させていることを示している。
次に、有機酸インターカレート層状複水酸化物粉末を調製した例を調製例2に示す。
(調製例2)
調製例1で得た有機酸インターカレート層状複水酸化物懸濁液中の固体を、減圧濾過により分離し、ろ液が中性になるまで脱イオン水で洗浄した。得られた固体を105℃で乾燥機により乾燥させた。次に、500メッシュ篩での通過率が約50%となるように粉砕し、潤滑剤として有機酸インターカレート層状複水酸化物粉末を得た。この有機酸インターカレート層状複水酸化物は、同じくMg2+およびAl3+を原子吸光度分析法、有機酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で夫々定量したところ、
Mg2.8Al1.0(OH)7.6(Stearate)1.0・4.0H
という組成式で示されるステアリン酸インターカレート層状複水酸化物(LDH/ST)であると同定された。
実施例3〜4は、調製例2で得た有機酸インターカレート層状複水酸化物粉末を用いて本発明を適用する粉末状の塑性加工潤滑剤を試作した例を示し、比較例5〜8は、本発明を適用外の潤滑剤を試作した例を示す。
(実施例3)
工業用ステアリン酸200g(0.72mol)と、水35gとを、ステンレス製反応容器(容量100L)に仕込み、加熱した。内容物が80℃になった時点で、液体苛性ソーダ58.8g(0.72mol)水溶液を加えて中和した。中和が完了しアルカリ石鹸が得られた後に、調製例2で得た有機酸インターカレート層状複水酸化物粉末213gを加えた。それの水分が2%以下になるまで加熱しながら攪拌した後、内容物を取り出して冷却した。500メッシュ篩による通過率が50%程度になるように粉砕し、粉末状の塑性加工潤滑剤を得た。この潤滑剤中の有機酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で定量したところ75%であった。
(実施例4)
牛脂硬化油300g(0.72mol)を、ステンレス製反応容器(容量100L)に仕込み、加熱した。内容物が130〜140℃になった時点で、消石灰383gを加えた。内容物に粘性が生じるまで加熱しながら攪拌した。粘性が生じて金属石鹸が得られてから、調製例2で得た有機酸インターカレート層状複水酸化物粉末100gを加え、内容物が硬くなるまで反応させた後、内容物を取り出して冷却した。500メッシュ篩による通過率が50%程度になるように粉砕し、粉末状の塑性加工潤滑剤を得た。この潤滑剤中の有機酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で定量したところ45%であった。
(比較例5)
工業用ステアリン酸200(0.72mol)と、水35gとを、ステンレス製反応容器(容量100L)に仕込み、加熱した。内容物が80℃になった時点で、液体苛性ソーダ58.8g(0.72mol)を加え中和した。中和が完了した後に、四ホウ酸ナトリウム10水和物86gと亜硝酸ナトリウム3gとを加えた。それの水分が2%以下になるまで加熱しながら攪拌した後、内容物を取り出して冷却した。500メッシュ篩いによる通過率が50%程度になるように粉砕し、粉末状のホウ酸塩含有潤滑剤を得た。この潤滑剤中の脂肪酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で定量したところ75%であった。
(比較例6)
牛脂硬化油300g(0.72mol)をステンレス製反応容器(容量100L)に仕込み、加熱した。内容物が130〜140℃になった時点で、消石灰245gを加えた。内容物に粘性が生じるまで加熱しながら攪拌した。粘性が生じてから、タルクであるミクロエースL−1(日本タルク(株)製;商品名)100gを加え、内容物が硬くなるまで反応させた後、内容物を取り出して冷却した。500メッシュ篩による通過率が50%程度になるように粉砕し、粉末状のタルク含有潤滑剤を得た。この潤滑剤中の有機酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で定量したところ45%であった。
(比較例7)
牛脂硬化油300g(0.72mol)をステンレス製反応容器(容量100L)に仕込み、加熱した。内容物が130〜140℃になった時点で、消石灰245gを加えた。内容物に粘性が生じるまで加熱しながら攪拌した。粘性が生じてから、マイカであるソマシフ(協和化学(株)製;商品名)100gを加え、内容物が硬くなるまで反応させた後、取り出して冷却した。500メッシュ篩による通過率が50%程度になるように粉砕し、粉末状のマイカ含有潤滑剤を得た。この潤滑剤中の有機酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で定量したところ45%であった。
(比較例8)
牛脂硬化油300g(0.72mol)をステンレス製反応容器(容量100L)に仕込み、加熱した。内容物が130〜140℃になった時点で、消石灰を245g加えた。内容物に粘性が生じるまで加熱しながら攪拌した。粘性が生じてから、更に消石灰100gを加えて、内容物が硬くなるまで反応させた後、取り出して冷却した。500メッシュ篩による通過率が50%程度になるように粉砕し、粉末状の消石灰含有潤滑剤を得た。この潤滑剤中の脂肪酸を酸性条件下遊離させる酸分解法で定量したところ45%であった。
(引抜性能評価)
実施例3〜4の粉末状の塑性加工潤滑剤および比較例5〜8の粉末状の潤滑剤を用いて伸線材の引抜力測定試験を行うことにより、引抜性能を評価した。
引抜力測定試験は以下の手順で行った。金属原材である伸線材72A材を、約80℃に加熱した前処理剤である石灰石鹸ライトコートM−10(共栄社化学(株)製;商品名)の10重量%含有水懸濁液に10分間浸漬し、10分間80℃で加熱乾燥することにより、膜被覆した。その後、さらに、実施例3〜4の粉末状の塑性加工潤滑剤または比較例5〜8の粉末状の潤滑剤をダイスボックス内に投入し、単釜伸線機によりダイスを通して伸線速度40m/分で伸線して、2.8φmmのものを2.5φmmに、2.5φmmのものを2.25φmmに、さらに2.25φmmのものを2.0φmmに縮径した。伸線時の平均引抜力と、平均引抜力変動幅(引抜曲線が示す極大値と極小値との差)とを測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2006143834
表2から明らかなとおり、実施例3〜4の粉末状の塑性加工潤滑剤を用いると、平均引抜力、平均引抜力変動幅ともに、比較例5〜8のような従来汎用されていたホウ酸塩・マイカ・タルクまたは消石灰を含有する潤滑剤を用いた場合と比較し、同等か相当小さかった。実施例3〜4の粉末状の塑性加工潤滑剤は、安定して伸線させ易いものであった。
(伸線状態観察)
前記引抜性能評価と同様に伸線した際、伸線材上の潤滑剤の形態と伸線状況とを観察した。その結果を表3に示す。
(潤滑剤付着量測定)
前記引抜性能評価と同様に伸線した後、夫々の伸線された伸線材について潤滑剤付着量を以下の手順により測定した。
伸線後の伸線材60gを10%クロム酸水溶液に浸し、30分間60℃で加熱した。これを60℃の脱イオン水で2回洗浄し、さらにアセトンで洗浄した後、冷却して伸線材の重量を測定し、
潤滑剤付着量(g/m)=(クロム酸洗浄前伸線材重量−クロム酸洗浄後伸線材重量)/(510/伸線材の径)×クロム酸洗浄前伸線材重量×10−6
の式により潤滑剤付着量を算出した。その結果を表3に示す。
(表面粗さ測定)
クロム酸洗浄後に伸線材の任意の3箇所の表面をレーザー顕微鏡(×400倍)で観察し、表面粗さを測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2006143834
実施例3の粉末状の塑性加工潤滑剤を用いると、2.8φmmから2.5φmmへの伸線の際に、比較例5のホウ酸塩含有潤滑剤を用いた場合に比べ、付着量に殆んど差が見られないが、より多くのフレークが発生していた。実施例3の潤滑剤は、伸線材上でフィルム状に展着しているのに対し、比較例5の潤滑剤は、伸線材上で部分的に粉状に展着していた。2.5φmmから2.25φmm、2.25φmmから2.0φmmへの伸線の際に、実施例3と比較例5との潤滑剤を用いても、伸線の性能は同等であった。また何れも伸線時に単釜が鳴らず、ダイスから摩擦音が生じず、安定に伸線材を得ることができた。
また、実施例4の粉末状の塑性加工潤滑剤も、伸線材上でフィルム状に展着し、伸線時に単釜が鳴らず、ダイスから摩擦音が生じず、安定に伸線材を得ることができた。
一方、比較例6のタルク含有潤滑剤も、比較例7のマイカ含有潤滑剤も、伸線材上で粉状に展着しており、伸線材とダイスとを直接接触させてしまうため、伸線時に摩擦音を生じさせ、また伸線材に多数の傷を生じさせ、安定に伸線させることができなかった。
比較例8の消石灰含有潤滑剤は、伸線材上で粉状に展着していたものの、伸線時に摩擦音など生じずに安定に伸線できた。しかし、この潤滑剤は、その付着量が実施例3、4よりも多いうえ、伸線後に伸線材に振動を与えると容易に剥がれ落ち、粉塵を生じ周囲を汚染した。
以上の結果から明らかなとおり、実施例3、4のような有機酸インターカレート層状複水酸化物とアルカリ石鹸や金属石鹸とを含有する粉末状の塑性加工潤滑剤は、ホウ酸塩を含有する潤滑剤と同等以上の伸線安定性および潤滑性能を発現し、またホウ酸塩の代替となるタルクやマイカや消石灰のような機能性無機層状物質を含有する潤滑剤よりも優れた潤滑性能を有していた。
本発明の塑性加工潤滑剤は、金属原材の引抜加工やプレス加工のような塑性加工の際、それに用いられる金型や工具に付して、使用される。この潤滑剤を含む熱間鍛造用潤滑剤は、強度が要求される自動車のシャフトやギアを金属原材から熱間鍛造して塑性加工する際に、使用される。

Claims (9)

  1. 無機の層状複水酸化物の層間に有機酸の陰イオンがインターカレートされている有機酸インターカレート層状複水酸化物を、含有していることを特徴とする塑性加工潤滑剤。
  2. アルカリ石鹸および/または金属石鹸を含有していることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工潤滑剤。
  3. 固形状、粉末状、または懸濁液状であることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤。
  4. 前記有機酸インターカレート層状複水酸化物が、Li、Al3+、Cr3+、Fe3+および/またはCo3+の1価または3価金属イオンと、Mg2+、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Zr2+、Co2+、Ni2+、Fe2+および/またはMn2+の2価金属イオンとを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤。
  5. 前記有機酸インターカレート層状複水酸化物が、下記化学式(1)
    [(M2+)1-x(M3+)x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x- ・・・(1)
    (式(1)中、M2+は前記2価金属イオン、M3+は前記3価金属イオン、0<x<1、An-はn価の有機酸陰イオン、yH2Oは層間水)
    で示されることを特徴とする請求項4に記載の塑性加工潤滑剤。
  6. 前記有機酸インターカレート層状複水酸化物が、1価金属イオンおよび/または3価金属イオンを含有する水溶性塩と、2価金属イオンを含有する水溶性塩および/または2価金属の酸化物と、前記有機酸および/またはその金属塩とを混合して調製されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤。
  7. 前記2価の金属イオンを含有する水溶性塩および/または2価金属の酸化物が、酸化マグネシウムを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の塑性加工潤滑剤。
  8. 前記有機酸が、R−COOH(R−は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、無置換またはアルキル基置換フェニル基のいずれか)、R−SOH(R−はR−と同じ)、HOOC−COOH、および/またはHOOC−R−COOH(−R−は炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数2〜24のアルケニレン基、無置換またはアルキル基置換フェニレン基のいずれか)であることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工潤滑剤。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の塑性加工潤滑剤を含んでいることを特徴とする熱間鍛造用潤滑剤。
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