JP2006142708A - ハンダ性に優れた表面処理Al板、それを用いたヒートシンク、およびハンダ性に優れた表面処理Al板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 めっき層の密着性、ハンダの濡れ性、ハンダ強度に優れるとともに、熱放射率や熱伝導率が大きく、ハンダ付けが可能で放熱性が求められるヒートシンクに好適に適用することができる表面処理Al板、それを用いたヒートシンク、およびその表面処理Al板の製造方法を提供する。
【解決手段】 Al基板にZnを置換めっきし、次いでNiめっきし、引き続いてZnめっきした後、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けて表面処理Al板を構成し、この表面処理Al板をヒートシンクに適用する。
【選択図】 図1
【解決手段】 Al基板にZnを置換めっきし、次いでNiめっきし、引き続いてZnめっきした後、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けて表面処理Al板を構成し、この表面処理Al板をヒートシンクに適用する。
【選択図】 図1
Description
本発明は表面処理Al板に関わり、特にハンダの濡れ性、ハンダ強度に優れるとともに、熱放射率や熱伝導率が大きく、ハンダ付けが可能で優れた放熱性が求められるヒートシンクに好適に適用することができる表面処理Al板、それを用いたヒートシンク、およびその表面処理Al板の製造方法に関する。
電子機器の小型化や高密度化にともなって、狭い筐体内部や間隙が殆ど無い状態で装填された部品の温度上昇を抑制する必要が生じている。プリント基板においては、部品の温度上昇を抑制するために、放熱用のヒートシンク2が、図1に示すように発熱体1の少なくとも片面に密着され、プリント基板10の金属面10aにハンダ5を用いてハンダ付けにより接合して設けられる。密着した面が大きいほど熱伝導が大きくなり、放熱効果が高まる。ヒートシンクに用いる材料としては、発熱体から急速に熱を吸収できるように、熱伝導性に優れた材料を用いることが好ましい。また、ヒートシンク2を発熱体1から離れた部分まで延ばして設け、延長部分から放熱するので、ヒートシンクの表面は熱放射性に優れていることが好ましい。なお、図1において、矢印3は熱伝導の方向を示し、矢印4は熱放射の方向を示している。
鋼板ベースの材料からなるヒートシンクの場合は、図1に示すようにプリント基板に直接ハンダ付けして接合することができる。放熱性がさらに要求される場合は、ヒートシンクとして鋼板よりも熱伝導性に優れたAlをベースとする材料を用いることが好ましいが、プリント基板に直接ハンダ付けして接合することが困難であるので、Alベースのヒートシンクに専用のハンダ付けが可能なピンをかしめて取り付け、ピンを介してプリント基板にハンダ付けしている。このようにピンを介して接合する場合はピンとヒートシンクの強固な結合状態が得られず、落下などの衝撃が負荷された場合にヒートシンクがピンからはずれてしまうことがある。そのため、プリント基板とヒートシンクの強固な結合状態が得られるハンダ付けが可能なAl板を得るために、以下に示すような試みが行われている。
例えば特許文献1には、Al板またはAl系合金金属材にNi系めっき層を介してSnめっき層が形成されたハンダ付け性およびめっき密着性に優れたAl系合金金属板が開示されている。このAl系合金金属板においては、溶融Alめっき鋼板などの基材に真空蒸着法を用いてNi系めっきした後、続いてSnめっきを施す。この方法による場合、NiおよびSnをめっきするために真空蒸着法を用いるが、真空装置などの大掛かりな装置が必要であり、また製膜速度が小さく生産性に乏しいため、安価に製造することが困難である。
また特許文献2には、アルミニウム基材上に錫または錫合金層が、アルミニウム基材と錫または錫合金層との界面に錫の濃度勾配を形成して被覆されたことを特徴とするハンダ付け性に優れる錫または錫合金層を被覆したアルミニウム材料が開示されている.このアルミニウム材料においては、アルミニウム合金板に錫を電気めっきした後に加熱する、または溶融した錫合金中にアルミニウム合金板を通すことにより、アルミニウム基材と錫または錫合金層との界面に錫の濃度勾配を形成して錫めっきするが、アルミニウム基材と錫または錫合金層との密着性が不十分であり、特に曲げ加工を施した場合に、錫めっき被膜がアルミニウム基材から剥離しやすい欠点を有している。
特開平05−345969号公報
特開平09−291394号公報
本発明は、めっき層の密着性、ハンダの濡れ性、ハンダ強度に優れるとともに、熱放射率や熱伝導率が大きく、ハンダ付けが可能で放熱性が求められるヒートシンクに好適に適用することができる表面処理Al板、それを用いたヒートシンク、およびその表面処理Al板の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の表面処理Al板は、Al基板表面に、基板側から順にZn層、Ni層、Zn層、ハンダ性を向上させる皮膜層を形成してなることを特徴とする。
Al板はハンダ濡れ性に劣り、且つめっきが困難であるが、ハンダ濡れ性に優れているZn層をめっき層の最表層に設けることによりでハンダ性を向上させることができ、且つAl基板に置換めっきによりZn層を形成させ、その上にNi層とZn層をめっきにより形成させることにより、Al板へのNi及びZnの良好なめっきが可能となった。そして、中間にNi層を設けることによって、強度、耐熱性と耐食性が向上する。さらに、その上に、ハンダフラックス性を有し熱放射性を向上させる着色層を設けているので、ハンダ濡れ性に優れるとともに、高いハンダ強度が得られる。
Al板はハンダ濡れ性に劣り、且つめっきが困難であるが、ハンダ濡れ性に優れているZn層をめっき層の最表層に設けることによりでハンダ性を向上させることができ、且つAl基板に置換めっきによりZn層を形成させ、その上にNi層とZn層をめっきにより形成させることにより、Al板へのNi及びZnの良好なめっきが可能となった。そして、中間にNi層を設けることによって、強度、耐熱性と耐食性が向上する。さらに、その上に、ハンダフラックス性を有し熱放射性を向上させる着色層を設けているので、ハンダ濡れ性に優れるとともに、高いハンダ強度が得られる。
本発明の表面処理Al板の他の特徴は、ハンダ性を向上させる皮膜層が着色顔料を含有してなること(請求項2)である。ハンダ性を向上させる皮膜層に着色顔料を含有させることにより、皮膜層の熱放射性を向上させることができる。
また、本発明の表面処理Al板の他の特徴は、上記の表面処理Al板において、ハンダ性を向上させる皮膜層がさらにフッ素化合物を含有してなること(請求項3)である。皮膜層がフッ素化合物を含有することにより、表面の滑り性を向上させて表面に疵が付きにくくなる。
さらに、上記(請求項1〜3)のいずれかの表面処理Al板において、熱放射率が0.1〜0.9であること(請求項4)、メニスコグラフ法によるハンダ濡れ性が10秒以下であること(請求項5〉、熱伝導率が60W/m・K以上であること(請求項6)の何れか一つ以上を満足する特性を備えていることである。
また、本発明の表面処理Al板の他の特徴は、上記の表面処理Al板において、ハンダ性を向上させる皮膜層がさらにフッ素化合物を含有してなること(請求項3)である。皮膜層がフッ素化合物を含有することにより、表面の滑り性を向上させて表面に疵が付きにくくなる。
さらに、上記(請求項1〜3)のいずれかの表面処理Al板において、熱放射率が0.1〜0.9であること(請求項4)、メニスコグラフ法によるハンダ濡れ性が10秒以下であること(請求項5〉、熱伝導率が60W/m・K以上であること(請求項6)の何れか一つ以上を満足する特性を備えていることである。
また、本発明のヒートシンクは、上記(請求項1〜6のいずれか)の表面処理Al板を用いてなるヒートシンク(請求項7)であることを特徴とする。
さらに、本発明の表面処理Al板の製造方法は、Al基板にZnを置換めっきし、次いでNiめっきし、引き続いてZnめっきした後、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けることを特徴とするものである。
また、本発明の表面処理Al板の製造方法の他の特徴点は、上記の表面処理Al板の製造方法において、着色顔料を含有するハンダ性を向上させる皮膜層を設けること(請求項9)である。そして、前記ハンダ性を向上させる皮膜層にさらにフッ素化合物を含有すること(請求項10)を特徴とし、さらに上記(請求項8〜10)の表面処理Al板の製造方法において、Zn置換めっきを第一置換めっきと第二置換めっきの2回に分けて行うこと(請求項11)を特徴とする。Zn置換めっきを2回に分けて行なうことによって、Zn層をAl板表面に均一に形成することができる。
また、本発明の表面処理Al板の製造方法の他の特徴点は、上記の表面処理Al板の製造方法において、着色顔料を含有するハンダ性を向上させる皮膜層を設けること(請求項9)である。そして、前記ハンダ性を向上させる皮膜層にさらにフッ素化合物を含有すること(請求項10)を特徴とし、さらに上記(請求項8〜10)の表面処理Al板の製造方法において、Zn置換めっきを第一置換めっきと第二置換めっきの2回に分けて行うこと(請求項11)を特徴とする。Zn置換めっきを2回に分けて行なうことによって、Zn層をAl板表面に均一に形成することができる。
本発明の表面処理Al板は、Al基板表面に置換めっきによりZn層を形成させ、その上にNi層とZn層をめっきにより形成させているので、Al板とめっき層の密着性に優れている。まためっき層の最表層としてZn層を設け、その上にハンダフラックス性を有し熱放射性を向上させる着色層を設けているので、ハンダ濡れ性に優れるとともに、高いハンダ強度が得られる。また、この着色層はフッ素化合物を含有することによって、滑り性がよく、加工時の搬送やハンドリングに際して庇が付きにくい。さらに基板がAl板であるので熱伝導率が大きく、放熱性に優れている。そのため、本発明の表面処理Al板は、ハンダ付けが可能な放熱性に優れたヒートシンクとして好適に適用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面処理Al板の基板となるAlとしては、純Al板およびJIS規格の1000系、2000系、3000系、5000系、6000系、7000系のいずれのAl合金板も用いることができる。これらのAl合金板を脱脂し、次いで酸性エッチングし、引き続きスマットを除去した後、Znを置換めっきする。Znの置換めっきは、硝酸浸漬処理を行った後に実施するが、第一Zn置換めっき処理、第二Zn置換めっき処理の2回の工程に分けて行なってもよい。この場合、各工程の処理後には水洗処理を実施する。この第一Zn置換めっき処理および第二Zn置換めっき処理により形成するZnめっき層は、この置換めっき処理後にNiめっきを施す際にわずかに溶解するので、Zn層の皮膜量としてはNiめっき後の状態で5〜500mg/m2であることが好ましく、30〜300mg/m2であることがより好ましい。皮膜量は処理液中のZnイオン濃度および第二Zn置換めっき処理において処理液中に浸漬する時間を適宜選択して調整する。皮膜量が5mg/m2未満であるとZn層の上に形成するNiめっき層との密着性に乏しくなり、曲げ加工を施した際にめっき層が剥離しやすくなる。一方、皮膜量が500mg/m2を超えるとNiめっきが不均一になり、ハンダ強度が低下する。
本発明の表面処理Al板の基板となるAlとしては、純Al板およびJIS規格の1000系、2000系、3000系、5000系、6000系、7000系のいずれのAl合金板も用いることができる。これらのAl合金板を脱脂し、次いで酸性エッチングし、引き続きスマットを除去した後、Znを置換めっきする。Znの置換めっきは、硝酸浸漬処理を行った後に実施するが、第一Zn置換めっき処理、第二Zn置換めっき処理の2回の工程に分けて行なってもよい。この場合、各工程の処理後には水洗処理を実施する。この第一Zn置換めっき処理および第二Zn置換めっき処理により形成するZnめっき層は、この置換めっき処理後にNiめっきを施す際にわずかに溶解するので、Zn層の皮膜量としてはNiめっき後の状態で5〜500mg/m2であることが好ましく、30〜300mg/m2であることがより好ましい。皮膜量は処理液中のZnイオン濃度および第二Zn置換めっき処理において処理液中に浸漬する時間を適宜選択して調整する。皮膜量が5mg/m2未満であるとZn層の上に形成するNiめっき層との密着性に乏しくなり、曲げ加工を施した際にめっき層が剥離しやすくなる。一方、皮膜量が500mg/m2を超えるとNiめっきが不均一になり、ハンダ強度が低下する。
次いでこのようにして形成されたZn層の上にNi層をめっきにより形成する。Niめつきは電気めっき法または無電解めっき法のいずれを用いて形成してもよい。無電解めっき法を用いる場合は、還元剤としてP化合物やB化合物を用いるので、Niめっき皮膜はNi−P合金やNi−B合金からなる皮膜として形成するが、電気めっき法による純Niからなる皮膜と同様に、めっき皮膜のAl基板に対する密着性や、優れたハンダ濡れ性およびハンダ強度が得られる。このようにして得られるNi層は、皮膜量として0.2〜50g/m2であることが好ましく、1〜10g/m2であることがより好ましい。皮膜量が0.2g/m2未満であるとNi層がZn層の全面を均一に被覆することができないので十分なハンダ強度が得られない。一方、皮膜量が50g/m2を超えるとハンダ濡れ性およびハンダ強度の向上効果が飽和し、コスト的に有利でなくなる。
引き続いてNi層上にZn層をめっきにより形成する。Znめっきは電気めっき法または無電解めっき法のいずれを用いて形成してもよい.Znめっきの皮膜量は0.2〜20g/m2であることが好ましく、1〜10g/m2であることがより好ましい。皮膜量が0.2g/m2未満であると非活性のフラックスを用いた場合にハンダが濡れにくくなる。一方、皮膜量が20g/m2を超えるとハンダ濡れ性およびハンダ強度の向上効果が飽和し、コスト的に有利でなくなる。
以上のようにしてAl基板上にZn層、Ni層、Zn層を形成した後、Alの融点以下の温度に加熱して、Al基板とZn層、Zn層とNi層、Ni層とZn層、またはAl基板とZn層とNi層、Zn層とNi層とZn層をそれぞれ相互拡散させることにより、Al基板とめっき層、および各めっき層同士の密着強度を向上させることもできる。
このようにしてZn層、Ni層、Zn層を形成した後、さらにZn層上にフラックス効果を有するハンダ性を向上させる皮膜層を設ける。すなわち、耐食性を向上させるために水分散性シリカや防錆剤を含有させた水系樹脂、好ましくは水系ウレタン樹脂または水溶性ロジンを含有させた水系アクリル樹脂を塗布し、乾燥させて処理皮膜を形成する。これらの処理皮膜はフラックス効果を有しており、ハンダ濡れ性も向上させる。またこのハンダ性を向上させる皮膜層に熱放射性を向上させるために着色顔料を含有させてもよい。さらに、滑り性を付与して加工時の搬送やハンドリングに際して滑り性を向上させて表面に疵が付きにくくするために四フッ化エチレンなどのフッ素化合物を含有させてもよい。水系樹脂の濃度は100〜900g/Lであることが好ましく、着色顔料は樹脂中に樹脂の固形分に対して50重量%以下で含有していることが好ましい。50重量%を超えて含有しているとハンダ濡れ性およびハンダ強度が不良となる。乾燥後の処理皮膜の厚さは0.05〜10μmであることが好ましい。0.05μm未満では放熱性の向上効果に乏しく、10μmを超えると熱伝導性が損なわれるようになり、放熱性を向上させることができなくなる。このように、Zn層上に熱放射性を向上させる層を設けることにより、ヒートシンクとして用いた場合の放熱性を向上させることができる。
このようにして得られる本発明の表面処理AL板は、60W/m・K以上の熱伝導率を有しており、熱伝導性に優れたヒートシンクとして発熱体から熱を効率的に吸収して放熱することができるが、Zn層上にハンダ性を向上させる皮膜層、特に着色顔料を含有させたハンダ性を向上させる皮膜層を設けることにより、放熱性をさらに向上させることができる。Al基板上にZn層、Ni層、Zn層を形成した本発明の表面処理Al板の熱放射率は0.05〜0.1前後であるが、ハンダ性を向上させる皮膜層を設けることにより、熱放射率は0.1〜0.9程度まで向上させることができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
[供試板の作成]
Al合金板(JIS 5052 H19、板厚0.5mm)をめっき基板として、アルカリ液中で脱脂し、次いで硫酸中に浸漬するエッチング処理を施し、引き続いて硝酸中で脱スマット処理を施した後、水酸化ナトリウム:150g/L、ロッシェル塩:50g/L、酸化亜鉛:25g/L、塩化第一鉄:1.5g/Lを含む処理液中に浸漬する第一Zn置換めっき処理を行い、次いで400g/Lの硝酸水溶液中に浸漬して置換析出したZnを除去した後、第一Zn置換めっき処理で用いたのと同一の処理液中に浸漬して第二Zn置換めっき処理を行った。この第二Zn置換めっき処理において、浸漬時間を種々変化させて、表1に示す皮膜量のZn層を形成したZnめっきAl板を得た。
[供試板の作成]
Al合金板(JIS 5052 H19、板厚0.5mm)をめっき基板として、アルカリ液中で脱脂し、次いで硫酸中に浸漬するエッチング処理を施し、引き続いて硝酸中で脱スマット処理を施した後、水酸化ナトリウム:150g/L、ロッシェル塩:50g/L、酸化亜鉛:25g/L、塩化第一鉄:1.5g/Lを含む処理液中に浸漬する第一Zn置換めっき処理を行い、次いで400g/Lの硝酸水溶液中に浸漬して置換析出したZnを除去した後、第一Zn置換めっき処理で用いたのと同一の処理液中に浸漬して第二Zn置換めっき処理を行った。この第二Zn置換めっき処理において、浸漬時間を種々変化させて、表1に示す皮膜量のZn層を形成したZnめっきAl板を得た。
次いで、ZnめっきAl板に無電解めっき法を用いて、Zn層上にNi−12重量%P合金めっき皮膜を、表1に示す皮膜量で形成した。引き続いてZn層とNi層を形成したAl板に電解めっき法を用いてNi層上に純Znめっき皮膜を、表1に示す皮膜量で形成して供試板とした。一部の供試板については、これらのめっきを施した後、350℃に加熱し、Al板とめっき層および各めっき層同士を相互拡散させる拡散熱処理を施した。その後Znめっき層上に表2に示す液組成の処理液を用いてハンダ性を向上させる皮膜層を形成した。
また、比較用として、上記のAl合金板にZn置換めっき層を設けずに直接Niめっき層およびZnめっき層を設け、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けた供試板、上記のAl合金板にZn置換めっき層を設けずにZnめっき層のみを設け、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けた供試板、上記のAl合金板にZn置換めっき層を設けずにNiめっき層のみを設け、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けた供試板、低炭素鋼板(板厚0.5mm)にZnめっき層のみを設け、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けた供試板を作成した。
〔供試板の特性評価]
上記のようにして得られた供試板を、下記の特性について評価した。
(ハンダ濡れ性)
メニスコグラフ法(MIL−STD−883B)により、SOLDERCHECKER(MODEL SAT−5000、RHESCA製)を使用し、上記の各供試板から切り出した幅7mmの試片をフラックス(EC−19S−8、タムラ化研製)に浸漬し、その後250℃に保持したハンダ浴(JIS Z 3282:H60A)に前記のフラックスを塗布した試片を、浸漬速度2mm/秒で2mm浸漬し、ハンダが濡れるまでの時間(ゼロクロスタイム)を測定し、下記に示す基準でハンダ濡れ性を評価した。短時間であるほどハンダ濡れ性が良好であることを示す。
◎:5秒未満
○:5〜7秒未満
△:7〜10秒未満
×:10秒以上
上記のようにして得られた供試板を、下記の特性について評価した。
(ハンダ濡れ性)
メニスコグラフ法(MIL−STD−883B)により、SOLDERCHECKER(MODEL SAT−5000、RHESCA製)を使用し、上記の各供試板から切り出した幅7mmの試片をフラックス(EC−19S−8、タムラ化研製)に浸漬し、その後250℃に保持したハンダ浴(JIS Z 3282:H60A)に前記のフラックスを塗布した試片を、浸漬速度2mm/秒で2mm浸漬し、ハンダが濡れるまでの時間(ゼロクロスタイム)を測定し、下記に示す基準でハンダ濡れ性を評価した。短時間であるほどハンダ濡れ性が良好であることを示す。
◎:5秒未満
○:5〜7秒未満
△:7〜10秒未満
×:10秒以上
[ハンダ強度]
上記の各供試板から切り出した幅7mm、長さ50mmの試片をL字型に折り曲げた2つの切り出し片を、評価面を向かい合わせてT字状になるように重ね、T字の縦棒の部分に厚さ0.5mmの銅板を挟み、T字の縦棒の下部に0.5mmの空隙部を形成した試片を作成した。この試片の空隙部に上記のハンダ濡れ性の評価に用いたのと同様のフラックスを塗布した後、SOLDERCHECKER(MODEL SAT−5000、RHESCA製)を用い、250℃に保持したハンダ浴(JIS Z 3282:H60A)に試片の空隙部を10mmの深さまで浸漬し5秒間保持して空隙部にハンダを充填した後取り出し、Tビール試験片とした。次いでテンシロンを用い、Tビール試験片のT字の横棒の部分をチャックで挟んで引っ張ってT字の縦棒の部分のハンダ充填部を引き剥がし、このときの引張強度をハンダ強度として測定し、下記の基準でハンダ強度の優劣を評価した。
◎:4kgf/7mm以上
○:3〜4kgf/7mm未満
△:1〜3kgf/7mm未満
×:1kgf/7mm未満
上記の各供試板から切り出した幅7mm、長さ50mmの試片をL字型に折り曲げた2つの切り出し片を、評価面を向かい合わせてT字状になるように重ね、T字の縦棒の部分に厚さ0.5mmの銅板を挟み、T字の縦棒の下部に0.5mmの空隙部を形成した試片を作成した。この試片の空隙部に上記のハンダ濡れ性の評価に用いたのと同様のフラックスを塗布した後、SOLDERCHECKER(MODEL SAT−5000、RHESCA製)を用い、250℃に保持したハンダ浴(JIS Z 3282:H60A)に試片の空隙部を10mmの深さまで浸漬し5秒間保持して空隙部にハンダを充填した後取り出し、Tビール試験片とした。次いでテンシロンを用い、Tビール試験片のT字の横棒の部分をチャックで挟んで引っ張ってT字の縦棒の部分のハンダ充填部を引き剥がし、このときの引張強度をハンダ強度として測定し、下記の基準でハンダ強度の優劣を評価した。
◎:4kgf/7mm以上
○:3〜4kgf/7mm未満
△:1〜3kgf/7mm未満
×:1kgf/7mm未満
[めっき皮膜の密着性]
上記の各供試板から幅15mm、長さ50mmの試験片を切り出して90°折り曲げ、折り曲げ部にスコッチテープを貼り付け、次いで引き剥がした後、めっき皮膜の剥離の有無を肉眼観察し、下記の基準でめっき皮膜の密着性を評価した。
○:剥離は認められない。
×:剥離が認められる。
上記の各供試板から幅15mm、長さ50mmの試験片を切り出して90°折り曲げ、折り曲げ部にスコッチテープを貼り付け、次いで引き剥がした後、めっき皮膜の剥離の有無を肉眼観察し、下記の基準でめっき皮膜の密着性を評価した。
○:剥離は認められない。
×:剥離が認められる。
[放熱性]
上記の各供試板から幅5mm、長さ10mmの試験片を切り出し、光交流法熱定数測定装置(PIT−R2型、真空理工製)を用いて熱伝導率を測定した。また、放射率計(D and SARED放射率計、京都電子工業製)を用いて熱放射率を測定し、下記に示す基準で放熱性を評価した。
◎:熱伝導率60W/m・K以上でかつ熱放射率0.20以上
○:熱伝導率60W/m・K以上でかつ熱放射率0.05〜0.20未満
△:熱伝導率40〜60W/m・K未満
×:熱伝導率40W/m・K未満
これらの結果を表3に示す。
上記の各供試板から幅5mm、長さ10mmの試験片を切り出し、光交流法熱定数測定装置(PIT−R2型、真空理工製)を用いて熱伝導率を測定した。また、放射率計(D and SARED放射率計、京都電子工業製)を用いて熱放射率を測定し、下記に示す基準で放熱性を評価した。
◎:熱伝導率60W/m・K以上でかつ熱放射率0.20以上
○:熱伝導率60W/m・K以上でかつ熱放射率0.05〜0.20未満
△:熱伝導率40〜60W/m・K未満
×:熱伝導率40W/m・K未満
これらの結果を表3に示す。
その結果、表3に示すように、Al板にZn層、Ni層、Zn層を形成し、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けてなる本発明の表面処理Al板はハンダの濡れ性に優れ、ハンダ強度が高く、かつ熱伝導率が大きく放熱性に優れている。そのため、本発明の表面処理Al板はハンダ付けが可能な放熱性に優れたヒートシンクとして好適に適用できる。
Al基板表面に置換めっきによりZn層を形成させ、その上にNi層とZn層をめっきにより形成させ、さらにその上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けた本発明の表面処理Al板は、Al板とめっき層の密着性に優れており、めっき層の最表層としてZn層を設け、さらにZn層上にハンダフラックス性を有し熱放射性に向上させる皮膜層を設けているので、ハンダ濡れ性に優れるとともに、高いハンダ強度が得られる。また基板がAl板であるので熱伝導率が大きく、放熱性を向上させることができる。そのため、本発明の表面処理Al板は、ハンダ付けが可能で放熱性が求められるヒートシンクに好適に適用することができる。
1 発熱体
2 ヒートシンク
3 熱伝導の方向
4 放熱の方向
5 ハンダ
10 プリント基板
10a 金属面
2 ヒートシンク
3 熱伝導の方向
4 放熱の方向
5 ハンダ
10 プリント基板
10a 金属面
Claims (11)
- Al基板表面に、基板側から順にZn層、Ni層、Zn層、ハンダ性を向上させる皮膜層を形成してなる、表面処理Al板。
- ハンダ性を向上させる皮膜層が着色顔料を含有してなる、請求項1に記載の表面処理Al板。
- ハンダ性を向上させる皮膜層がさらにフッ素化合物を含有してなる、請求項2に記載の表面処理Al板。
- 熱放射率が0.1〜0.9である、請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理Al板。
- メニスコグラフ法によるハンダ濡れ性が10秒以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理Al板。
- 熱伝導率が60W/m・K以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理Al板。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理Al板を用いてなるヒートシンク。
- Al基板にZnを置換めっきし、次いでNiめっきし、引き続いてZnめっきした後、その上にハンダ性を向上させる皮膜層を設けることを特徴とする、表面処理Al板の製造方法。
- 着色顔料を含有するハンダ性を向上させる皮膜層を設けることを特徴とする、請求項8に記載の表面処理Al板の製造方法。
- さらにフッ素化合物を含有するハンダ性を向上させる皮膜層を設けることを特徴とする、請求項9に記載の表面処理Al板の製造方法。
- Zn置換めっきを第一置換めっきと第二置換めっきの2回に分けて行うことを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の表面処理Al板の製造方法。
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