伝統的な血圧測定法は、空気袋(ブラダ)を備えたカフ(Cuff;マンシェット(Manschette)とも言う。)により上腕の動脈を阻血した後にカフの圧迫圧力を微速減圧させながら聴診器を用いてコロトコフ音(血管雑音)を検出することによって血圧を測定するコロトコフ法である。この方法では、コロトコフ音が発生する時の血圧が最高血圧(心臓の収縮期の血圧)とされ、コロトコフ音が消失する時の血圧が最低血圧(心臓の拡張期の血圧)とされる。
一方、近年では、エレクトロニクス等の進展により、伝統的なコロトコフ法に代わって、電気電子的に血圧を測定する血圧計が開発されている。この血圧計には、光電容積脈波法やオシロメトリック法(振動法)等の血圧測定手法が利用されている。
この光電容積脈波法は、カフの圧迫圧力を微速変化させながら生体の所定部位に近赤外光を照射してその反射光を光電センサで検出することによって得られる動脈の光電容積脈波から血圧を測定する方法である。この光電容積脈波法では、カフの圧迫圧力を微速減圧する過程で光電容積脈波を測定する場合には、光電容積脈波が出現する時の血圧が最高血圧とされる。
また、オシロメトリック法は、カフの圧迫圧力を微速変化させながらカフの圧力を検出することによって得られる脈波包絡線から血圧を測定する方法である。より詳細に説明すると、オシロメトリック法では、まず、生体の所定部位にカフを装着し、カフの圧迫圧力を加圧することによって所定部位下の動脈を阻血する。その後、カフの圧迫圧力を微速減圧させながらカフの圧力を検出する。
図11は、微速減圧過程におけるカフの圧力の時間的変化を示す図である。図11の横軸は、時間であり、その縦軸は、カフの圧力である。図11において、微速減圧過程のカフの圧力1001には、心拍に応じた複数の微小な圧変動1002が発生する。この微速減圧過程のカフの圧力1001に重畳された微小な圧変動1002は、心拍に基づく脈動によってカフ下の動脈に容積変化が生じるために生じるものである。
即ち、圧迫圧力が最高血圧よりも高い場合には、阻血されるため、脈動による動脈の容積変化が生じないので、微小な圧変動1002は、生じない。圧迫圧力が最高血圧近傍になると、原理的に、脈動による動脈に作用する内圧が動脈に作用している圧迫圧力(外圧)に抗することができるようになることから血流が生じ始め、そのため、脈動による動脈の容積変化が生じ始めて微小な圧変動1002が生じ始める。なお、実際には、カフが丸く膨らむためカフの端部では、動脈を閉塞しきれずに最高血圧以上でも脈波は、検出される。
圧迫圧力が最高血圧から減圧されるに従って血管が次第に広がり、脈動による動脈の容積変化量も次第に大きくなるため、微小な圧変動1002も次第に大きくなる。そして、圧迫圧力が平均血圧になると、微小な圧変動1002が最大になる。さらに圧迫圧力が減圧されると、微小な圧変動1002が次第に小さくなっていく。
これは、動脈壁の力学的特性によるものである。動脈壁は、内膜、中膜及び外膜の3層構造を為しており、弾性線維からなる内膜及び中膜が伸展性に富んでいる一方、膠原線維からなる外膜の伸展性が著しく低い。このため、動脈に作用する内圧が比較的低い領域では、外膜は伸展しないので、動脈壁の伸展性は、主に内膜及び中膜の力学的特性に依存することになる。この結果、動脈の内圧の変化に応じて動脈壁は、充分に伸縮する。一方、動脈に作用する内圧が比較的高い領域では、内膜及び中膜は十分に伸展しこの外側を覆う外膜も伸展するので、動脈壁の伸展性は、伸展性の低い外膜の力学的特性に依存することになる。この結果、動脈の内圧の変化に応じて動脈壁の伸縮は、著しく小さいものとなる。従って、圧迫圧力が平均血圧になると血管の内外圧力差が平均的に0となるので、この付近では内膜及び中膜の伸展性が最も大きくなるため、微小な圧変動1002が最大になる。圧迫圧力が平均血圧を超えてさらに圧迫圧力が減圧されると、動脈壁が膨らむ結果、外膜が支配的に作用して動脈壁が硬くなるため、微小な圧変動1002は、次第に小さくなる。
このため、この微速減圧過程のカフの圧力1001に重畳された微小な圧変動1002を心拍ごとに時系列で並べると、即ち、圧迫圧力に応じて並べると、図12に実線で示すように、最高血圧時の微小な圧変動1002−1から次第にその振幅が大きな微小な圧変動1002−2、1002−3、1002−4、・・・となり、その振幅がピークに達すると、次第にその振幅が小さな微小な圧変動1002となる。この結果、図12に破線で示すように、心拍ごとに時系列で並べた微小な圧変動1002の包絡線1003は、山形となる。ここで、この微小な圧変動1002を脈波といい、微小な圧変動1002の振幅を脈波振幅といい、そして、この包絡線1003を脈波包絡線という。
微速減圧過程のカフの圧力1001に重畳されている微小な圧変動1002は、このような原因によって生じているので、オシロメトリック法は、上述の微速減圧下におけるカフの圧力の検出に続けて、微速減圧させながら検出したこのカフの圧力から脈波を検出し、この検出した脈波から脈波包絡線を生成する。そして、オシロメトリック法は、この生成した脈波包絡線から最高血圧、平均血圧及び最低血圧等の血圧を求める。オシロメトリック法では、脈波包絡線の脈波振幅が最大脈波振幅となる圧迫圧力が平均血圧とされ、平均血圧より高圧側における脈波包絡線の変曲点の圧迫圧力が最高血圧とされ、そして、平均血圧より低圧側における脈波包絡線の変曲点の圧迫圧力が最低血圧とされる。実際には、脈波の変曲点によって最高血圧及び最低血圧を判定することは難しいので、オシロメトリック法による最高血圧及び最低血圧の判定は、コロトコフ法による最高血圧及び最低血圧との一致性が良くなるようにその血圧測定プログラムが工夫されている。
上述の説明から分かるように、圧迫圧力の変化に応じた脈波の脈波振幅の変化(脈波包絡線の形状)は、圧迫圧力の変化に伴う動脈の容積変化、延いては、動脈の実際の力学的特性を反映していると考えられ、物理的な(力学的特性に基づく)動脈の硬さの程度や、動脈硬化及び心疾患等の循環器系疾患を反映したものとなっている。なお、この物理的な(力学的特性に基づく)動脈の硬さの程度(度合い)を本明細書では動脈壁硬化度と呼称することとする。
図13は、各種脈波包絡線を示す図である。図13(a)は、健常者の場合の一例であり、図13(b)は、低血圧(最高血圧が低い状態(例えば100mmHg以下の状態))の場合又は血管が柔らかい(血管壁の柔軟性のよいもの及び内圧に起因する外圧に応じた血管壁の追従性のよいものの少なくとも一方を含む)場合の一例であり、図13(c)は、動脈硬化が進行している場合又は高齢である場合の一例であり、図13(d)は、心臓に疾患がある場合の一例であり、そして、図13(e)は、高血圧であり且つ動脈硬化が進行している場合又は高齢である場合の一例である。
このように脈波包絡線の形状は、動脈の実際の力学的特性を反映していると考えられるため、近年では、オシロメトリック法によって得られる脈波包絡線を用いて動脈の硬さを判定する装置が研究、開発されており、例えば、特許文献1及び非特許文献1がある。
特許文献1に開示の動脈硬化度測定装置では、オシロメトリック法によって得られた脈波包絡線から、図14に示すように、脈波包絡線上における最高血圧SYSに対応する変曲点a及び最大脈波振幅Amaxの63.2%値に対応する点bの2点を結ぶ直線Cと横軸との成す角θを得て、この角θに基づいて動脈硬化度を判定している。あるいは、脈波包絡線上における最高血圧SYSに対応する変曲点aから最大脈波振幅Amaxの63.2%値に対応する点bに到達するまでの到達時間tを得て、この到達時間tに基づいて動脈硬化度を判定している。あるいは、脈波振幅Aの、カフ圧Pの降圧割合に対する増加率を得て、この増加率に基づいて動脈硬化度を判定している。あるいは、脈波包絡線上における最大脈波振幅Amaxの90%値に対応する2点c、d間の曲線幅Wを得て、最大脈波振幅Amaxと曲線幅Wとの比(Amax/W)を求めて、この比(Amax/W)に基づいて動脈硬化度を判定している。あるいは、最大脈波振幅Amaxと平均血圧MEANとの比(Amax/MEAN)を求めてこの比(Amax/MEAN)に基づいて動脈硬化度を判定している。
また、非特許文献1には、40才男性の解剖例から得た大腿動脈を用いた実験から、式101に示すように、大腿動脈の内圧Piを所定の基準内圧(生理的血圧を考慮して100mmHgとしている)Pisで除した値の対数ln(Pi/Pis)と、大腿動脈の外半径R0を基準内圧Psに対応する外半径Rsで除した値R0/Rsとの間に直線関係のあることが開示されている。
ln(Pi/Pis)=β(R0/Rs−1) ・・・(式101)
なお、係数βは、直線の傾きであり、非特許文献1の著者らは、これをスティフネス・パラメータと呼んでいる。
また、非特許文献1には、式102に示すように、大腿動脈の内圧Pにおける増分△Piと、内圧Piにおける外半径の増分△R0との間に直線関係のあることが開示されている。
β”=(△Pi/Pi)/(△R0/Rs) ・・・(式102)
なお、このβ”を非特許文献1の著者らは、これを修正スティフネス・パラメータと呼んでいる。
そして、臨床では、このスティフネス・パラメータβや修正スティフネス・パラメータβ”は、超音波を用いて頚動脈等から外半径を得ることによって演算されている。即ち、図15に示すように、臨床では、最低血圧から最高血圧までにおける内圧−外半径特性曲線に基づいてスティフネス・パラメータβや修正スティフネス・パラメータβ”は、演算されている。
特開平5−38332号公報
林紘三郎、長沢史朗、鳴尾好人、半田肇「2.動脈壁のスティフネスと弾性」日本材料強度学会誌、1980.第15巻第3号P83−P93
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第1の実施形態の構成)
図1は、第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置の構成を示すブロック図である。図1において、第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Aは、カフ11と、圧迫圧力制御部12と、圧力検出部13と、脈波振幅検出部14と、中央処理部15Aと、出力部16と、連通管17とを備えて構成される。
カフ(cuff)11は、被測定者(生体)の所定部位を圧迫する圧迫帯であり、例えば、生体の上腕部LBに巻回された状態で取り付け可能なゴム製の袋を備えて構成される。圧迫圧力制御部12は、連通管17を介してカフ11に接続され、カフ11の圧迫圧力を変化させるものであり、例えば、カフ11内に気体を供給することによってカフ11内の圧力を加圧する加圧ポンプと、カフ11内の気体を排気することによってカフ11内の圧力を減圧する排気弁とを備えて構成される。圧迫圧力制御部12は、中央処理部15Aの制御信号に従って、カフ11内の圧力が被測定者の予想される最高血圧より高い所定の圧力になるようにカフ11内の圧力を加圧し、その後、徐々にカフ11内の圧力を減圧する。圧力検出部13は、連通管17を介してカフ11に接続され、所定のサンプリング間隔でカフ11内の圧力を検出し、この検出した圧力を中央処理部15Aに出力するものであり、例えば、圧力を電圧に変換することによって圧力を検出する圧力センサと、圧力センサの出力をアナログ信号からディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器(以下、「A/D変換器」と略記する。)とを備えて構成される。脈波振幅検出部14は、動脈の脈波振幅を検出する回路であり、例えば、直流成分等の所定の周波数成分を圧力検出部13の出力からカットするフィルタ回路(ハイパスフィルタ回路又はバンドパスフィルタ回路)を備え、圧力検出部13の出力から所定の周波数成分をカットすることによって脈波信号を生成し、この生成した脈波信号の時間的変化から脈波を生成し、この生成した脈波から脈波振幅を検出する。脈波振幅検出部14は、脈波情報検出部の一例であり、脈波振幅は、脈波情報の一例である。出力部16は、動脈壁硬化度測定装置1Aの動作中の状態や測定結果の動脈壁硬化度Hを出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印字装置等である。
中央処理部15Aは、例えば、マイクロプロセッサ、記憶回路及びその周辺回路を備えて構成されたマイクロコンピュータを備えて構成され、機能的に、生体情報処理部18A、線形変換部19A及び硬化度測定部20Aを備え、圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14及び出力部16を当該機能に応じてそれぞれ制御プログラムに従って制御することにより動脈壁硬化度測定装置1A全体の制御を司るものである。記憶回路は、動脈壁硬化度Hを測定するために動脈壁硬化度測定装置1Aを制御する動脈壁硬化度プログラム等の各種プログラム、及び、各種プログラムの実行に必要なデータ、各種プログラムの実行中や実行後に生じるデータ等の各種データを記憶する。記憶回路は、例えば、マイクロプロセッサの所謂ワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶素子、及び、プログラムやデータ等を記憶する、ROM(Read Only Memory)や書換え可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子を備えて構成される。
生体情報処理部18Aは、脈波振幅検出部14で検出した脈波振幅とこの脈波振幅を検出した時点におけるカフ11の圧迫圧力とに基づいて、カフ11の圧迫圧力を変化させる過程で心拍により生体の所定部位(上腕LB)における動脈に生じる変形に基づく第1及び第2生体情報のデータ対を求めるものである。線形変換部19Aは、生体情報処理部18Aで求めた3組以上のデータ対を用いてこの3組以上のデータ対の間における非線形な相互関係を線形な相互関係と成るように変換するものである。硬化度測定部20Aは、線形変換部19Aで変換したデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて動脈の動脈壁硬化度Hを求めるものである。
ここで、第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Aは、第1及び第2生体情報のデータ対からなる特性曲線として脈波包絡線を用い、この脈波包絡線を形成する3組以上のデータ対を後述の第1圧対数変換を用いて線形変換し、その変換後のデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて動脈壁硬化度を求める実施形態である。そのため、生体情報処理部18Aは、脈波処理部181と脈波振幅特性情報記憶部とを備えて構成され、線形変換部19Aは、脈波振幅特性対数線形変換部191Aを備えて構成され、そして、硬化度測定部20Aは、脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定部201Aと脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Aとを備えて構成される。
脈波処理部181は、脈波振幅検出部14で検出した脈波振幅とこの脈波振幅を検出した時点における圧力検出部13で検出した圧迫圧力とを圧−脈波振幅のデータ対として対応付けて脈波振幅特性情報記憶部182に記憶する。
脈波振幅特性情報記憶部182は、脈波処理部181で生成した複数の圧−脈波振幅のデータ対を記憶する。そして、背景技術の説明から分かるように、この複数の圧−脈波振幅のデータ対を圧−脈波振幅座標系にプロットすることによって圧−脈波振幅特性曲線、即ち、脈波包絡線が得られる。なお、圧−脈波振幅特性曲線(脈波包絡線)の圧は、圧迫圧力である。また、第1の実施形態においては、圧迫圧力が第1生体情報に相当し、脈波振幅が第2生体情報に相当する。
脈波振幅特性対数線形変換部191Aは、脈波振幅特性情報記憶部182に記憶されている3組以上の圧−脈波振幅のデータ対を用いて、所定の線形変換アルゴリズムによってこの3組以上のデータ対の間における非線形な相互関係を線形な相互関係と成るように変換する。
脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Aは、脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブルを記憶する。脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブルは、線形変換された圧−脈波振幅のデータ対から得られる直線の傾きαから動脈壁硬化度Hを判定するためのテーブルであり、例えば、本実施形態では、予め統計的に調査することにより得た、線形変換された圧−脈波振幅のデータ対から得られた直線の傾きαと動脈壁硬化度Hとを対応付けたテーブルである。脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定部201Aは、脈波振幅特性対数線形変換部191Aで変換したデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Aに記憶されている脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブルを参照することによって動脈壁硬化度Hを求め、出力部16に出力する。
次に、本実施形態の動作について説明する。
(第1の実施形態の動作)
図2は、第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置の動作を示すフローチャートである。
測定者又は被測定者自身は、動脈壁硬化度測定装置1Aの電源を投入し、被測定者の上腕部LBにカフ11を装着し、そして、動脈壁硬化度の測定を開始すべく、例えば、図略の測定開始スイッチを操作する。
図2において、図略の測定開始スイッチの操作を中央処理部15Aが検出すると、中央処理部15Aは、カフ11内の圧力を開始目標圧力まで急速に加圧すべく圧迫圧力制御部12に制御信号を出力し、圧迫圧力制御部12は、この制御信号に基づいてカフ11内に気体を供給することによってカフ11内を加圧する(S11)。これによって被測定者の上腕部LBがカフ11によって強く圧迫され、カフ11下における動脈の血流が阻血される。
中央処理部15Aは、圧力検出部13で検出した圧力が開始目標圧力、例えば被測定者の予想される最高血圧より高い所定の圧力に到達すると、中央処理部15Aは、カフ11内を徐々に減圧すべく圧迫圧力制御部12に制御信号を出力し、圧迫圧力制御部12は、この制御信号に基づいて徐々にカフ11内の気体を排気することによってカフ11内の微速減圧を開始する(S12)。
次に、脈波振幅検出部14は、圧力検出部13の出力に基づいて一心拍の脈波を測定し、この測定した一心拍の脈波における脈波振幅を検出し、この検出した脈波振幅を生体情報処理部18Aの脈波処理部181に出力する(S13)。即ち、カフ11の微速減圧中において、圧力検出部13は、所定のサンプリング間隔でカフ11の圧力を検出し、この検出したカフ11の圧力を圧迫圧力として脈波振幅検出部14及び脈波処理部181に出力する。脈波振幅検出部14は、圧力検出部13の出力を時系列順にプロットすることによって一心拍の脈波を生成し、この生成した脈波から一心拍の脈波における脈波振幅を検出する。そして、脈波振幅検出部14は、この検出した脈波振幅を脈波処理部181に出力する。
次に、生体情報処理部18Aの脈波処理部181は、脈波振幅検出部14から一心拍の脈波における脈波振幅が入力されると、所定のサンプリング間隔で圧力検出部13から入力されている圧力の中から、この入力された脈波振幅を検出した時点の圧迫圧力を検出する(S14)。
次に、生体情報処理部18Aの脈波処理部181は、脈波振幅とこの脈波振幅を検出した時点における圧迫圧力とのデータ対を脈波振幅特性情報記憶部182に圧−脈波振幅のデータ対として記憶する(S15)。
次に、中央処理部15Aは、圧力検出部13で検出した圧力が終了目標圧力に到達したか否かを判断することによって、カフ11の微速減圧が終了したか否かを判断する(S16)。判断の結果、カフ11の微速減圧が終了していない場合には、中央処理部15Aは、処理を処理S13に戻し、一方、判断の結果、カフ11の微速減圧が終了している場合には、中央処理部15Aは、処理を処理S17を実行する。このように動作することによって、微速減圧中における心拍ごとに圧−脈波振幅のデータ対が測定され、そして、測定された圧−脈波振幅のデータ対が脈波振幅特性情報記憶部182に記憶される。
処理S17において、微速減圧が終了すると、中央処理部15Aは、カフ11内の圧力を略大気圧に戻すべく圧迫圧力制御部12に制御信号を出力し、圧迫圧力制御部12は、この制御信号に基づいてカフ11内の気体を急速排気することによってカフ11内を略大気圧まで減圧する。これによって被測定者の上腕部LBがカフ11の圧迫から開放される。
次に、線形変換部19Aの脈波振幅特性対数線形変換部191Aは、生体情報処理部18Aの脈波振幅特性情報記憶部182に記憶されている3組以上の圧−脈波振幅のデータ対を用いて、所定の線形変換アルゴリズムによって3組以上の圧−脈波振幅のデータ対の間における相互関係が線形に成るように変換する(S18)。
ここで、発明者らは、所定の圧迫圧力Cを基準圧迫圧力Csとすると共にこの基準圧迫圧力Csにおける脈波振幅Aを基準脈波振幅Asとする場合に、圧迫圧力Cを基準圧迫圧力Csで除した値C/Csの自然対数ln(C/Cs)と、脈波振幅Aを基準脈波振幅Asで除した値A/Asとの間に直線関係が成立し、その直線の傾きαが動脈壁硬化度Hをよく反映することを見出した。
そのため、圧−脈波振幅のデータ対を(Cn,An)と表示することとすると、この第1圧対数変換による線形変換は、まず、基準圧迫圧力Csを脈波包絡線の脈波振幅Aが最大脈波振幅Amaxとなる圧迫圧力Cとする。従って、基準脈波振幅Asは、最大脈波振幅Amaxである。次に、圧−脈波振幅のデータ対(Cn,An)をこれら基準圧迫圧力Cs及び基準脈波振幅Asでそれぞれ除(割り算)し、圧迫圧力Cnを基準圧迫圧力Csで除した値Cn/Csとこれに対応する脈波振幅Anを基準脈波振幅Asで除した値An/Asとのデータ対(Cn/Cs,An/As)を求める。次に、圧迫圧力Cnを基準圧迫圧力Csで除した値Cn/Csの自然対数ln(Cn/Cs)を求め、圧迫圧力Cnを基準圧迫圧力Csで除した値Cn/Csの自然対数ln(Cn/Cs)とこれに対応する脈波振幅Anを基準脈波振幅Asで除した値An/Asとのデータ対(ln(Cn/Cs),An/As)を求める。
ここで、横軸の座標原点をAs/AsにすべくAn/Asより1を減算し、(An/As−1)を横軸に、ln(Cn/Cs)を縦軸として(An/As−1)−(ln(Cn/Cs))平面座標系にデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)をプロットする。図3は、各領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),A/As−1)のグラフを示す図である。図3(A)は、最大脈波振幅Amax(=基準脈波振幅As)に対応する基準圧迫圧力Csより高圧側領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)のグラフであり、図3(B)は、最大脈波振幅Amax(=基準脈波振幅As)に対応する基準圧迫圧力Csより低圧側領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)のグラフである。
次に、硬化度測定部20Aの脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定部201Aは、脈波振幅特性対数線形変換部191Aで変換したデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)から直線を求め、この求めた直線の傾きαに基づいて脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Aに記憶されている脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定テーブルを参照することによって動脈壁硬化度Hを判定する(S19)。
ここで、図3(A)に示す高圧側領域における3組以上のデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)の各点から直線を求めて、その直線の傾きαhを求めてもよく、また、図3(B)に示す低圧側領域における3組以上のデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)の各点から直線を求めて、その直線の傾きαlを求めてもよいが、高圧側領域及び低圧側領域における3組以上のデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)の各点から直線を求めてもよい。そのために、例えば、図3(A)に示す高圧側領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)を縦軸に対して折り返して、図3(B)に示す低圧側領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)を合わせると、図4に示すグラフとなり、このグラフの直線を求め、その直線の傾きαを求める。図4は、全体領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),A/As−1)のグラフを示す図である。なお、図3(B)に示す低圧側領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)を縦軸に対して折り返して、図3(A)に示す高圧側領域におけるデータ対(ln(Cn/Cs),An/As−1)を合わせて、このグラフの直線を求め、その直線の傾き−αを求めてもよい。また、各データ対からの誤差を最も小さくする観点から、これらの直線は、例えば、最小二乗法を用いて求めてもよい。
そして、硬化度測定部20Aの脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定部201Aは、この判定した動脈壁硬化度Hを出力部16に出力する(S20)。
このように第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Aは、阻血状態から微速減圧することによって脈波を得ているので、広範囲の圧迫圧力が動脈に印加された場合における動脈の力学的特性を反映した脈波包絡線(データ対)を得ることができる。また、動脈壁硬化度測定装置1Aは、脈波包絡線の曲線形状そのものの形から動脈壁硬化度Hを判定するのではなく、脈波包絡線の曲線形状を線形変換し、線形変換して得られた直線の傾きαから判定しているので、容易に正確に動脈壁硬化度Hを判定することができる。そして、3組以上のデータ対からこの直線の傾きαを得ているので、脈波包絡線の曲線形状をより良く反映したものとなり、より精度良く動脈壁硬化度Hを測定し得る。
次に、別の実施形態について説明する。
(第2の実施形態の構成)
図5は、第2の実施形態における動脈壁硬化度測定装置の構成を示すブロック図である。図5において、第2の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Bは、カフ11と、圧迫圧力制御部12と、圧力検出部13と、脈波振幅検出部14と、中央処理部15Bと、出力部16と、連通管17とを備えて構成される。
これら第2の実施形態におけるカフ11、圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14、出力部16及び連通管17は、第1の実施形態におけるカフ11、圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14、出力部16及び連通管17とそれぞれ同様であるので、その説明を省略する。中央処理部15Bは、例えば、マイクロプロセッサ、記憶回路及びその周辺回路を備えて構成されたマイクロコンピュータを備えて構成され、機能的に、脈波振幅検出部14で検出した脈波振幅とこの脈波振幅を検出した時点における圧力部の圧迫圧力とに基づいて、カフ11の圧迫圧力を変化させる過程で心拍により生体の所定部位における動脈に生じる変形に基づく第1及び第2生体情報のデータ対を求める生体情報処理部17B、生体情報処理部17Bで求めた3組以上のデータ対を用いてこの3組以上のデータ対の間における非線形な相互関係を線形な相互関係と成るように変換する線形変換部19B、及び、線形変換部19Bで変換したデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて動脈の動脈壁硬化度Hを求める硬化度測定部20Bを備え、制御プログラムに従い圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14及び出力部16を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって動脈壁硬化度測定装置1B全体の制御を司るものである。
ここで、第2の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Bは、生体情報として圧−脈波振幅のデータ対(脈波包絡線)から得た圧−内容積特性曲線を用い、この圧−内容積特性曲線を形成する3組以上のデータ対を後述の第2圧対数変換を用いて線形変換し、その変換後のデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて動脈壁硬化度Hを求める実施形態である。そのため、生体情報処理部18Bは、脈波処理部181と脈波振幅特性情報記憶部182と圧−内容積特性変換部183と圧−内容積特性情報記憶部184とを備えて構成され、線形変換部19Bは、圧−内容積特性対数線形変換部191Bを備えて構成され、そして、硬化度測定部20Bは、圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定部201Bと圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Bとを備えて構成される。
脈波処理部181及び脈波振幅特性情報記憶部182は、第1の実施形態で説明した脈波処理部181及び脈波振幅特性情報記憶部182とそれぞれ同様であるので、その説明を省略する。圧−内容積特性変換部183は、脈波振幅特性情報記憶部182に記憶されている圧−脈波振幅のデータ対から圧−内容積のデータ対に変換するものである。この圧−脈波振幅のデータ対(脈波包絡線上のデータ対)から圧−内容積のデータ対(圧−内容積特性曲線上のデータ対)への変換は、公知の処理、例えば、特開平5−305061号公報や特開平7−124129号公報等に開示の処理を用いるので、その説明を省略する。圧−内容積特性情報記憶部184は、圧−内容積特性変換部183で生成した複数の圧−内容積のデータ対を記憶する。そして、この複数の圧−内容積のデータ対を圧−内容積座標系にプロットすることによって圧−内容積特性曲線が得られる。なお、圧−内容積特性曲線の圧は、動脈の内外圧力差である。また、第2の実施形態においては、この動脈の内外圧力差が第1生体情報に相当し、動脈の内容積が第2生体情報に相当する。
圧−内容積特性対数線形変換部191Bは、圧−内容積特性情報記憶部184に記憶されている3組以上の圧−内容積のデータ対を用いて、所定の線形変換アルゴリズムによってこの3組以上のデータ対に間における非線形な相互関係を線形な相互関係と成るように変換する。
圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Bは、圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブルを記憶する。圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブルは、線形変換された圧−内容積のデータ対から得られる直線の傾きαから動脈壁硬化度Hを判定するためのテーブルであり、例えば、本実施形態では、予め統計的に調査することにより得た、線形変換された圧−内容積のデータ対から得られた直線の傾きαと動脈壁硬化度Hとを対応付けたテーブルである。圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定部201Bは、圧−内容積特性対数線形変換部191Bで変換したデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Bに記憶されている圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブルを参照することによって動脈壁硬化度Hを求め、出力部16に出力する。
次に、本実施形態の動作について説明する。
(第2の実施形態の動作)
図6は、第2の実施形態における動脈壁硬化度測定装置の動作を示すフローチャートである。図7は、圧−内容積特性曲線を示す図である。図7の横軸は、内外圧力差を示し、その縦軸は、内容積を示す。
測定者又は被測定者自身は、動脈壁硬化度測定装置1Bの電源を投入し、被測定者の上腕部LBにカフ11を装着し、そして、動脈壁硬化度Hの測定を開始すべく、例えば、図略の測定開始スイッチを操作する。
図6において、図略の測定開始スイッチの操作を中央処理部15Bが検出した後に実行される、開始目標圧力までカフ11の急速加圧処理(S31)から、カフ11の微速減圧の開始処理(S32)、脈波の測定、脈波振幅の検出処理(S33)、脈波振幅検出時の圧迫圧力の検出処理(S34)、圧−脈波振幅のデータ対の記憶処理(S35)及び微速減圧の終了判定処理(S36)を介して急速排気処理(S37)に至る各処理は、第1の実施形態における開始目標圧力までカフ11の急速加圧処理(S11)から、カフ11の微速減圧の開始処理(S12)、脈波の測定、脈波振幅の検出処理(S13)、脈波振幅検出時の圧迫圧力の検出処理(S14)、圧−脈波振幅のデータ対の記憶処理(S15)及び微速減圧の終了判定処理(S16)を介して急速排気処理(S17)に至る各処理とそれぞれ同様であるので、その説明を省略する。
そして、生体情報検出部17Bの圧−内容積特性変換部183は、公知の手法により、脈波振幅特性情報記憶部182に記憶されている圧−脈波振幅のデータ対から圧−内容積のデータ対に変換し、圧−内容積のデータ対を圧−内容積特性情報記憶部184に記憶する(S38)。
圧−内容積特性の圧は、動脈の内外圧力差、即ち、平均血圧−圧迫圧力である。背景技術で説明したように、動脈の内外圧力差が負の領域では、主に内膜及び中膜の力学的特性に依存することとなるため、圧迫圧力の減少に従って内容積は徐々に大きくなり、内外圧力差の単位変化に対する内容積の変化の割合も徐々に大きくなり、そして、動脈の内外圧力差=0の点(平均血圧−圧迫圧力=0の点)の付近では、内膜及び中膜の進展性が最も大きくなるため、内外圧力差の単位変化に対する内容積の変化の割合も最大となる。動脈の内外圧力差が正の領域では、主に中膜の力学的特性に依存する場合から中膜及び外膜の複合的な特性に依存する場合を経て主に外膜の力学的特性に依存する場合に移行することとなるため、圧迫圧力の減少に従って、内外圧力差の単位変化に対する内容積の変化の割合も徐々に小さくなり、内容積は、圧迫圧力の減少に従ってあまり増加しなくなる。従って、圧−内容積特性曲線は、図7に示すように、内外圧力差の増加(圧迫圧力の減少)に従って内容積が0から所定の内容積値まで増加する単調増加関数であるが、内外圧力差の単位変化に対する内容積の変化の割合は、内外圧力差の増加に従って、その内外圧力差が負の領域では内外圧力差の増加に従って徐々に大きくなり、動脈の内外圧力差=0の点の付近で最大となり、その後、動脈の内外圧力差が正の領域では徐々に小さくなる。そのため、圧−内容積特性曲線の形状は、図7に示すように、0から急激に立上り、内外圧力差=0で最大の傾きとなって、その後、なだらかな右肩上がりの曲線である。そして、特に、内外圧力差が正の領域では、同じ内外圧力差において柔らかい動脈ではその内容積が硬い動脈よりも大きくなるので、柔らかい動脈の圧−内容積特性曲線sは、図7で実線で示すようになり、硬い動脈の圧−内容積特性曲線hは、図7で破線で示すようになる。
次に、線形変換部19Bの圧−内容積特性対数線形変換部191Bは、生体情報処理部18Bの圧−内容積特性情報記憶部184に記憶されている3組以上の圧−内容積のデータ対を用いて、所定の線形変換アルゴリズムによって3組以上の圧−内容積のデータ対の間における相互関係が線形に成るように変換する(S39)。
ここで、発明者らは、所定の内外圧力差Pを基準内外圧力差Psとすると共にこの基準内外圧力差Psにおける内容積Vを基準内容積Vsとする場合に、内外圧力差Pを基準内外圧力差Psで除した値P/Psの自然対数ln(P/Ps)と、内容積Vを基準内容積Vsで除した値V/Vsとの間に直線関係が成立し、その直線の傾きαが動脈壁硬化度Hをよく反映することを見出した。
正の領域における3組以上のデータ対を用いる場合には、不都合はないが、図7に示す圧−内容積特性曲線をそのまま用いると負の領域においては対数を求めることができないので、圧−内容積特性曲線が全て正の値と成るように横軸の正方向に圧−内容積特性曲線が平行移動するように座標変換する。そして、この座標変換後の圧−内容積のデータ対を(Pn’,Vn)と表示することとすると、この第2圧対数変換による線形変換は、まず、任意に内外圧力差P’を基準内外圧力差Psとし、この基準内外圧力差Psに対応する内容積Vnを基準内容積Vsとする。次に、圧−内容積のデータ対(Pn’,Vn)をこれら基準内外圧力差Ps及び基準内容積Vsでそれぞれ除(割り算)し、内外圧力差Pn’を基準内外圧力差Psで除した値Pn’/Psとこれに対応する内容積Vnを基準内容積Vsで除した値Vn/Vsとのデータ対(Pn’/Ps,Vn/Vs)を求める。次に、内外圧力差Pn’を基準内外圧力差Psで除した値Pn’/Psの自然対数ln(Pn’/Ps)を求め、内外圧力差Pn’を基準内外圧力差Psで除した値の自然対数ln(Pn’/Ps)とこれに対応する内容積Vnを基準内容積Vsで除した値Vn/Vsとのデータ対(ln(Pn’/Ps),Vn/Vs)を求める。
次に、硬化度測定部20Bの圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定部201Bは、圧−内容積特性対数線形変換部191Bで変換したデータ対から直線を求めて、この求めた直線の傾きαに基づいて圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Bに記憶されている圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定テーブルを参照することによって動脈壁硬化度Hを判定する(S40)。また、各データ対からの誤差を最も小さくする観点から、このデータ対から直線は、例えば、最小二乗法を用いて求めてもよい。
そして、硬化度測定部20Bの圧−内容積特性対数動脈壁硬化度判定部201Bは、この判定した動脈壁硬化度Hを出力部16に出力する(S41)。
このように第2の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Bは、阻血状態から微速減圧することによって得られた脈波に基づいて圧−内容積特性曲線を得ているので、広範囲の圧迫圧力が動脈に印加された場合における動脈の力学的特性を反映した圧−内容積特性曲線を得ることができる。また、動脈壁硬化度測定装置1Bは、圧−内容積特性曲線の曲線形状そのものの形から動脈壁硬化度Hを判定するのではなく、圧−内容積特性曲線の曲線形状を線形変換し、線形変換して得られた直線の傾きαから判定しているので、容易に正確に動脈壁硬化度Hを判定することができる。そして、3組以上のデータ対からこの直線の傾きαを得ているので、圧−内容積特性曲線の曲線形状をより良く反映したものとなり、より精度良く動脈壁硬化度Hを測定し得る。
次に、別の実施形態について説明する。
(第3の実施形態の構成)
図8は、第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置の構成を示すブロック図である。図8において、第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Cは、カフ11と、圧迫圧力制御部12と、圧力検出部13と、脈波振幅検出部14と、中央処理部15Cと、出力部16と、連通管17とを備えて構成される。
これら第3の実施形態におけるカフ11、圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14、出力部16及び連通管17は、第1の実施形態におけるカフ11、圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14、出力部16及び連通管17とそれぞれ同様であるので、その説明を省略する。中央処理部15Cは、例えば、マイクロプロセッサ、記憶回路及びその周辺回路を備えて構成されたマイクロコンピュータを備えて構成され、機能的に、第2の実施形態と同様の生体情報処理部18B、生体情報処理部18Bで求めた3組以上のデータ対を用いてこの3組以上のデータ対の間における非線形な相互関係を線形な相互関係と成るように変換する線形変換部19C、及び、線形変換部19Cで変換したデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて動脈の動脈壁硬化度Hを求める硬化度測定部20Cを備え、制御プログラムに従い圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14及び出力部16を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって動脈壁硬化度測定装置1C全体の制御を司るものである。
ここで、第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Cは、生体情報として圧−脈波振幅のデータ対(脈波包絡線)から得た圧−内容積特性曲線を用い、この圧−内容積特性曲線を形成する3組以上のデータ対を線形変換し、その変換後のデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて動脈壁硬化度Hを求める実施形態であるが、第2の実施形態では、線形変換に第2圧対数変換を用いたが第3の実施形態では、後述の差分変換を用いる。そのため、生体情報処理部18Bは、第2の実施形態と同様の脈波処理部181と脈波振幅特性情報記憶部182と圧−内容積特性変換部183と圧−内容積特性情報記憶部184とを備えて構成され、線形変換部19Cは、圧−内容積特性差分線形変換部191Cを備えて構成され、そして、硬化度測定部20Cは、圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定部201Cと圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Cとを備えて構成される。
圧−内容積特性差分線形変換部191Cは、圧−内容積特性情報記憶部184に記憶されている3組以上の圧−内容積のデータ対を用いて、所定の線形変換アルゴリズムによってこの3組以上のデータ対に間における非線形な相互関係を線形な相互関係と成るように変換する。
圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Cは、圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定テーブルを記憶する。圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定テーブルは、線形変換された圧−内容積のデータ対から得られる直線の傾きαから動脈壁硬化度Hを判定するためのテーブルであり、例えば、本実施形態では、予め統計的に調査することにより得た、線形変換された圧−内容積のデータ対から得られた直線の傾きαと動脈壁硬化度Hとを対応付けたテーブルである。圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定部201Cは、圧−内容積特性差分線形変換部191Cで変換したデータ対から得られた直線の傾きαに基づいて圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定テーブル記憶部202Cに記憶されている圧−内容積特性差分動脈壁硬化度判定テーブルを参照することによって動脈壁硬化度Hを求め、出力部16に出力する。
次に、本実施形態の動作について説明する。
(第3の実施形態の動作)
第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Cの動作は、第2の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Bの図6に示す動作において、圧−内容積のデータ対の線形変換処理(S39)の処理方法が異なる点を除き、第2の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Bの図6に示す動作と同様である。このため、第3の実施形態における圧−内容積のデータ対の線形変換処理のみ以下に説明する。
ここで、発明者らは、所定の内外圧力差Pを基準内外圧力差Psとすると共にこの基準内外圧力差Psにおける内容積Vを基準内容積Vsとする場合に、内外圧力差Pを基準内外圧力差Psで減算した値△P(=P−Ps)の基準内外圧力差Psに対する比△P/Psと、内容積Vを基準内容積Vsで減算した値△V(=V−Vs)の基準内容積Vsに対する比△V/Vsとの間に直線関係が成立し、その直線の傾きαが動脈壁硬化度Hをよく反映することを見出した。
よって、圧−内容積のデータ対を(Pn,Vn)と表示することとすると、この差分変換による線形変換は、まず、任意に内外圧力差Pを基準内外圧力差Psとし、この基準内外圧力差Psに対応する内容積Vnを基準内容積Vsとする。次に、圧−内容積のデータ対(Pn,Vn)をこれら基準内外圧力差Ps及び基準内容積Vsでそれぞれ除算し、内外圧力差Pnを基準内外圧力差Psで減算した値△Pn(=Pn−Ps)の基準内外圧力差Psに対する比△P/Psとこれに対応する内容積Vnを基準内容積Vsで減算した値△Vn(=Vn−Vs)の基準内容積Vsに対する比△Vn/Vsとのデータ対(△Pn/Ps,△Vn/Vs)を求める。
このように第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Cは、阻血状態から微速減圧することによって得られた脈波に基づいて圧−内容積特性曲線を得ているので、広範囲の圧迫圧力が動脈に印加された場合における動脈の力学的特性を反映した圧−内容積特性曲線を得ることができる。また、動脈壁硬化度測定装置1Cは、圧−内容積特性曲線の曲線形状そのものの形から動脈壁硬化度Hを判定するのではなく、圧−内容積特性曲線の曲線形状を線形変換し、線形変換して得られた直線の傾きαから判定しているので、容易に正確に動脈壁硬化度Hを判定することができる。そして、3組以上のデータ対からこの直線の傾きαを得ているので、圧−内容積特性曲線の曲線形状をより良く反映したものとなり、より精度良く動脈壁硬化度Hを測定し得る。
なお、第3の実施形態においては、差分変換による線形変換を圧−内容積のデータ対に対して適用したが、圧−脈波振幅のデータ対に対しても同様に適用することができる。
ここで、図7から分かるように、柔らかい動脈における圧−内容積特性曲線sと硬い動脈における圧−内容積特性曲線hとは、内外圧力差が0以上の領域において顕著に差が生じる。そこで、上述の第2及び第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1B、1Cにおいて、動脈壁硬化度Hを求めるために用いる3組以上の圧−内容積のデータ対は、内外圧力差が0であるデータ対を含む内外圧力差が0以上の正領域に係るデータ対であるとよい。あるいは、圧−内容積特性曲線を求める基礎となった脈波包絡線で考えると、上述の第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Aにおいて、動脈壁硬化度Hを求めるために用いる3組以上の圧−脈波振幅のデータ対は、脈波振幅が最大であるデータ対を含む脈波振幅が最大となる場合の圧迫圧力より低圧側領域に係るデータ対であるとよい。このような3組以上のデータ対を用いると、直線の傾きαが動脈壁硬化度Hの相違をより適切に反映した値となり、より精度よく動脈壁硬化度Hを測定することができる。
そして、上述の第1乃至第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1A、1B、1Cは、微速減圧過程におけるカフ11内の圧力を圧力検出部13で検出することによって脈波を測定したが、圧力検出部13の代わりに、赤外光を発光する赤外光発光部と該赤外光を受光して受光量を検出する赤外光受光部とを備え、赤外光発光部から動脈に照射された赤外光の反射光を赤外光受光部で受光するようにこれら赤外線発光部及び赤外線受光部を配置した赤外光検出部を用い、この赤外光検出部で微速減圧過程における赤外光の光量を検出することによって脈波を測定するように構成してもよい。赤外光発光部は、例えば、赤外線発光ダイオードであり、赤外光受光部は、例えば、赤外線ホトダイオードである。
また、上述の第1乃至第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1A、1B、1Cは、カフ11内の圧力が被測定者の予想される最高血圧より高い所定の圧力になるようにカフ11内の圧力を加圧してその後の微速減圧過程において脈波を測定するように構成したが、カフ11内の圧力が被測定者の予想される最高血圧より高い所定の圧力になるまで、徐々にカフ11内の圧力を加圧する微速加圧過程において脈波を測定するように構成してもよい。この場合におけるカフ11の圧力における時間変化の一例を図9に示す。
一方、背景技術で説明したように、脈波包絡線から血圧を測定することができるので、上述の第1乃至第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1A、1B、1Cに、脈波包絡線から血圧を測定する血圧測定部をさらに備え、血圧を測定することができるようにしてもよい。このように構成することにより、動脈壁硬化度Hを測定するためのカフ11、圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14、脈波処理部181及び脈波振幅特性情報記憶部182を血圧を測定するために兼用することができ、血圧測定機能付きの動脈壁硬化度測定装置をコンパクトに低廉に構成することができる。
その一例として、第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Aに血圧測定機能を付加した動脈壁硬化度測定装置2を説明すると、図10に示すように、この動脈壁硬化度測定装置2は、カフ11と、圧迫圧力制御部12と、圧力検出部13と、脈波振幅検出部14と、中央処理部15Dと、出力部16と、連通管17とを備えて構成される。
中央処理部15Dは、例えば、マイクロプロセッサ、記憶回路及びその周辺回路を備えて構成されたマイクロコンピュータを備えて構成され、機能的に、第1の実施形態と同様の生体情報処理部18A、線形変換部19A及び硬化度測定部20Aを備え、さらに、機能的に血圧測定部21を備え、制御プログラムに従い圧迫圧力制御部12、圧力検出部13、脈波振幅検出部14及び出力部16を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって動脈壁硬化度測定装置1D全体の制御を司るものである。
血圧測定部21は、生体情報処理部18Aの脈波振幅特性情報記憶部182に記憶されている、圧−脈波振幅のデータ対から脈波包絡線を求め、この求めた脈波包絡線から所定の血圧を求め、この求めた血圧を出力部16に出力するものである。所定の血圧は、例えば、平均血圧、最高血圧及び最低血圧である。背景技術の説明から分かるように、平均血圧は、脈波包絡線の脈波振幅が最大脈波振幅となる圧迫圧力から測定され、最高血圧は、この平均血圧より高圧側における脈波包絡線の変曲点の圧迫圧力から測定され、そして、最低血圧は、平均血圧より低圧側における脈波包絡線の変曲点の圧迫圧力から測定される。
そして、同一の血圧であっても動脈壁硬化度Hに応じて脈波包絡線の形状が異なるため、上述の第1乃至第3の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1A、1B、1Cに、脈波包絡線から血圧を測定する血圧測定部に加えて、この血圧測定部で測定した血圧を動脈壁硬化度Hに応じて補正する血圧補正部をさらに備えてもよい。このように構成することによって、血圧をより精度よく測定することができる。
その一例として、第1の実施形態における動脈壁硬化度測定装置1Aに動脈壁硬化度Hによって血圧を補正する血圧測定機能を付加した動脈壁硬化度測定装置2’を説明すると、図10に破線で示すように、中央処理部15Dにさらに機能的に血圧補正部22が備えられる。血圧補正部22は、補正関数又は補正テーブルを用いて、血圧測定部21で測定した血圧を硬化度測定部20Aの脈波振幅特性対数動脈壁硬化度判定部201Aで測定した動脈壁硬化度Hに応じて補正し、この補正した血圧を出力部16に出力するものである。補正関数及び補正テーブルは、例えば、本実施形態では、予め統計的に調査することにより得た、血圧と動脈壁硬化度Hと補正値とを対応付けたものである。
そして、上述の第1の実施形態では、第1生体情報として圧迫圧力を用い第2生体情報として脈波振幅を用い、上述の第2及び第3の実施形態では、第1生体情報として内外圧力差を用い第2生体情報として動脈の内容積を用いて、動脈壁硬化度Hを求めたが、脈波面積Sと脈波振幅とは相関するので、脈波振幅の代わりに脈波面積Sを用いてもよい。つまり、第1生体情報として圧迫圧力を用い第2生体情報として脈波面積Sを用いて動脈壁硬化度Hを求めてもよい。脈波面積Sは、脈波及び横軸(圧迫圧力)によって囲まれた面積である。一例を示すと、図12に示す脈波1002−4の脈波面積Sは、斜線で示す部分の面積となる。このように構成することによって、信号対雑音比(Signal to Noise Ratio、SN比)が向上してより精度よく動脈壁硬化度Hを求めることができる。