JP2006136341A - 可溶性ldlリセプター - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明はウイルス感染から哺乳動物を防御することができる可溶性LDLリセプターに関し、このものはインターフェロンで処理した細胞または組換えDNA法により単離される。
【解決手段】ヒトWISH細胞をインターフェロンで処理し、種々のクロマトグラフィー法(モノクローナル抗体C7による親和性クロマトグラフィーを含む)により精製することにより可溶性LDLリセプターが産生される。
また、実質的に成熟LDLリセプターのアミノ酸残基4から292に対応するアミノ酸配列を有する可溶性LDLリセプターをコードするDNA分子よりなる発現ベクターで形質転換される細胞株を培養することにより、可溶性LDLリセプターを産生することができる。
可溶性LDLリセプター、そのムテイン、融合蛋白、それらの塩、官能性誘導体および活性画分は、ウイルス感染から哺乳動物を防御するための薬剤組成物の活性成分として使用される。
【選択図】なし

Description

本発明は可溶性低比重リポ蛋白(LDL)リセプター、その産生方法およびそれを含む薬剤組成物に関する。
インターフェロン(INF)は種々の細胞に産生される融合蛋白であり、動物細胞において抗ウイルス状態を誘導する。インターフェロンには抗原性により区別される3つの大きな型(α、βおよびガンマ)がある。INF−αとINF−βはウイルスまたは核酸により誘導される166または165個のアミノ酸残基の関連する蛋白であり、種々の組織の細胞(免疫細胞を含む)により産生される。INF−ガンマは130−143個のアミノ酸残基の蛋白であり、マイトジェン(分裂促進因子)により活性化されたT細胞や大きい顆粒性リンパ球により産生される。IFNの産生は普通一過性であり、誘導物質が消失するとまもなく停止する。これらに関する最近の総説は、テイラーとグロスバーグ(Taylor S.L. and Grossberg S.E.)、Virus Research, 15, 1-26を参照。
これらの3つの充分性状解析されたインターフェロンのほかに、部分的に性状解析されたインターフェロン種がいくつか報告されている。1群のINF−α様(INF−αl)遺伝子および偽遺伝子(pseudogenes)(クラスIIINF−αまたはIFN−オメガとしても知られている)が発見され報告されている(レベル(Revel, M.)、「抗ウイルス薬剤とインターフェロン:その活性の分子学的基礎」("Antiviral Drugs and Interferon : The Molecular Basis of theirActivity")、ベッカー(Y. Becker)編、マルチヌスメイジョフ出版(Martinus MeijhofPubl.)、ボストン、357-434 ;キャポン(Capon, D.J.)ら、1985, Molec. Cell. Biol.,5, 768-779 ;ハウプトマンとスワートリイ(Hauptmann, R. and Swertly,P.)、1985, Nuc. Acid.Res., 13, 4739-4749)。これらは、約172個のアミノ酸残基を有するウイルスで誘導されるインターフェロンであり、リンパ球に産生されるヒトINF−αの天然の混合物中に存在する(アドルフ(Adolf, G.R.)、1990, Virology, 175, 410-417)。
ヒト抹消血の単核球白血球をマイトジェンで処理するとINF−ガンマとIFN−δという名前の新規IFN−様物質(ウィルキンソンとモリス(Wilkinson M. and Morris,A.)、1983, Biochem.Biophys. Res. Comm.111, 498-503)が産生された。IFN−δは耐酸性であり、染色体21のトリソミーを有するヒト繊維芽細胞上でのみ活性がありWISH細胞上では活性がなかった。これは上記の3つの既知のIFN型とは抗原性が異なっていた。
酸に不安定なアルファインターフェロンはいくつかの文献に記載された。酸に不安定なアルファインターフェロンは、最近インフルエンザワクチンを受けたヒトのリンパ球、インフルエンザウイルスでインビトロで刺激されたリンパ球の培養物で誘導された(ブラックウィル(Blackwill, F.R.)ら、1983, J. Exp. Med.,157, 1059-1063)。このタイプのIFNは抗INF−α血清で中和され、マンディンダーバー(Mandin Darby)ウシ腎臓(MDBK)細胞上で活性であった。このような酸に不安定なアルファ型のIFNが全身性ループスエリトマドーデス患者の血清中に存在することが報告された(クリペル(Klippel, J.H.)ら、1985, AnnalsRhem. Disease, 44, 104-108)。酸に不安定なINF−αは、ヒトの抹消血リンパ球のセンダイウイルス誘導によりINF−αと同様に産生された(マツオカ(Matsuoka, H)ら、1985, J. Gen. Virol.,66, 2491-2494)。酸に不安定なINF−αは抹消血単核細胞の培養により自発的に産生された(フィッシャーとルービンシュタイン(Fischer, D.G. and Rubinsein, M.)、1983, Cellular Immunology, 81, 426-434)。
IFN−イプシロンと呼ばれる別のタイプのインターフェロンが、ウイルスに接触した上皮細胞から産生された。これはIFN−βと一緒に産生されたが、上皮細胞上で活性があり、他の細胞では活性がなかった(ジャービスとコソウスキー(Jarvis, A.P. and Kosowsky, D.I.)、1984、米国特許第4,614,651 号)。
他のサイトカインの中で、TNF、IL−6およびIL−1は抗ウイルス活性を示すと報告された(メスタン(Mestan, J.)ら、1986, Nature, 323, 816-819;ウォングとゲデル(Wong, G.H.W. and Goedell, D.) 1986, Nature, 323, 819-822 ;ビリュー(Billiau, A.)、1987, Antiviral Research, 8, 55-70)。TNFは免疫細胞にのみ産生され、IL−1とTNFはINF−βの産生を誘導することにより抗ウイルス活性を示すことが示唆された(ビリュー(Billiau, A.)、前述)。
インターフェロンで誘導される蛋白がいくつか同定されており、そのあるものはIFNの抗ウイルス状態の誘導に有用であることが証明されている。最も良く研究されているのは、(2’−5’)オリゴアデニレートシンセターゼである。これはATPを重合させてppp(A2’−5’p)nA(ここでnは好ましくは2または3であるが、15までの長さでもよい)にする酵素である(ケールとブラウン(Kerr, I.M. and Brown, R.E.)、1978, Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 75, 256-260)。このようなオリゴマーは潜在型のリボヌクレアーゼ(RNASE−F)(これはリボゾームRNAやポリゾームを分解する)を活性化して、ウイルス合成や細胞性蛋白合成を阻害する。別のIFNに誘導される細胞外酵素は2’−5’ホスホジエステラーゼであり、これはtRNAのCCA末端を除去して蛋白合成を阻害する(シュミット(Schmidt, A.)ら、1979, Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 76, 4788-4792)。IFNに誘導される第3の公知の細胞外酵素は70Kd蛋白キナーゼであり、これは開始因子(Initiaation Factor)eIF−2をリン酸化することにより、mRNAの蛋白への翻訳の開始を阻害する(オーツキ(Ohtsuki, K.)ら、1980, Nature,287, 65-67)。他のIFNに誘導される細胞外蛋白には核IFN−応答性因子(nuclear IFN−Responsive Factors)(IRF−1とIRF−2)(これはIFN−応答性遺伝子を制御する);メタロチオネイン(metalothionein)(これは56Kd蛋白であるが、IFNに誘導される抗ウイルス状態での役割は不明である);補体別経路のB因子そして齧歯類のMx遺伝子生成物(これはインフルエンザに対する耐性に関係している)がある(テイラーとグロスバーグ(Taylor, I.L. and Grossberg, S.E.)の総説、1990, VirusResearch, 15, 1-26)。他のIFNに誘導される細胞関連ポリペプチドは、IFN処理と[35S]メチオニンパルス後の2−Dゲル上で同定されたが、これらの蛋白の構造や機能はそれ以上性状解析されなかった(ウェイル(Weil, J.)ら、1983, Nature, 301, 437-439)。クラスIおよびIIのMHC抗原、IgG、Fcリセプターおよび細胞骨格成分などの、IFNに誘導されるいくつかの細胞表面蛋白が同定された(レベル(Revel, M.)の総説、1984、「抗ウイルス薬剤とインターフェロン:その活性の分子学的基礎」("Antiviral Drugs and Interferon : The Molecular Basis of theirActivity")、ベッカー(Y. Becker)編、357-434、マルチヌスメイジョフ出版(Martinus Meijhof Publ.)、ボストン)。
培地に分泌される、IFNに誘導される別の蛋白が文献に開示されており、例えばβ2−ミクログロブリン(細胞表面のクラスIMHC抗原)(ドレイ(Dolei, A.F.)ら、Antiviral Res.,1, 367-373)、プラスミノーゲンアクチベーターおよびリンホトキシン(IFNによりリンパ球中に誘導された)がある(ジョーンズ(Jones, C.M.)ら、1982, J. IFN. Res.,2, 377-386;ワラックとハーン(Wallach, D. and Hahn, T.)、1983, CellularImmunol., 76, 390-396)。INF−ガンマで処理された単球はTNFを放出し、これは全体的な抗ウイルス作用を増強した(ゲラード(Gerrard, T.)ら、1989, J. IFN. Res.,2, 115-124)。INF−ガンマに誘導される分子量30,000(細胞外)の蛋白と分子量25,000(細胞内)の蛋白が記載された(ルスター(Luster A.D.)ら、1988、J. Biol. Chem.263, 12036-12043)が、その役割は求められなかった。
IFNに誘導される多くの蛋白が開示されているが、可溶性LDLリセプターに関連しているものは1つもない。これまでのところ別の蛋白としての可溶性LDLリセプターの存在は開示されていない。全サイズの低比重リポ蛋白リセプター(LDLR)は、膜貫通型の糖蛋白であり、界面活性剤の非存在下では不溶性である。これは822個のアミノ酸残基からなり、分子量は164,000である。その知られている唯一の役割はLDLとVLDLを内部化することである。その構造は数個のドメインよりなり、そのいくつかは他の蛋白と同じである。N−末端リガンド結合ドメインは292個のアミノ酸残基よりなり、7つのシステインに富む不完全リピート(cysteine-rich imperfect repeats)で配置されている。このドメインの後には、EGF前駆体(400個のアミノ酸残基)に相同性の領域、22個のアミノ酸残基の単一の膜貫通型のドメインおよび50個のアミノ酸残基の細胞質ドメインがある(シュナイダー(Schneider, W. J.)ら、J. Biol.Chem. 257, 2664-2673, 1982;ヤマモト(Yamamoto, T.)ら、Cell 39, 27-38, 1984)。しかしLDLリセプターの抗ウイルス性については全く言及されていない。
ヒト繊維芽細胞または上皮細胞をインターフェロンで処理すると、抗ウイルス活性を示す蛋白が産生され、細胞培養液の上清中に蓄積することがわかった。この蛋白は均一になるまで精製され、LDLリセプターの可溶性細胞外領域として同定された。
従って本発明は、可溶性LDLリセプター、そのムテインおよび融合蛋白、それらの塩、官能性誘導体および活性画分を与える。リセプター蛋白の抗ウイルス活性は、例えばWISH羊膜細胞と投与抗原(challenge)としての水泡性口内炎ウイルス(VSV)よりなる系で測定することが便利である。
本発明はまた、蛋白性不純物に対して均一になるまで精製されているLDLリセプターの細胞外部分(750個のアミノ酸残基)に対応する可溶性LDLリセプターを与える。
本発明は特に、少なくとも成熟LDLリセプターのリガンド結合ドメインよりなる(しかしこれに限定されない)可溶性LDLリセプター、そしてさらに詳しくは成熟LDLリセプターの少なくとも4から約292個のアミノ酸残基に対応する可溶性LDLリセプターに関する。
本発明はまた、実質的に図10に示すアミノ酸配列よりなる可溶性LDLリセプターに関する。
別の面で本発明は、可溶性LDLリセプターの調製法、適当な細胞のインターフェロンによる処理、上清からの可溶性LDLリセプターの単離およびその精製に関する。
さらに本発明は、上記蛋白またはその活性ムテインまたは融合蛋白をコードする核酸配列よりなる組換えDNA分子、それらを含む発現ベクターおよびこれで形質転換される宿主細胞、そして形質転換細胞を適当な培地中で培養することよりなる、可溶性LDLリセプター、その活性ムテインまたは融合蛋白を産生するための方法に関する。
可溶性LDLリセプター、そのムテイン、融合蛋白、それらの塩、官能性誘導体および活性画分は、ウイルス感染から哺乳動物を保護するための薬剤組成物の活性成分として使用される。
図1は、添加されたインターフェロンではない抗ウイルス活性の存在の証拠を示す。ヒト羊膜WISH細胞への水泡性口内炎ウイルス(VSV)の細胞変性作用に対する種々のインターフェロンの防御作用は、種々の条件下で測定される。測定は96穴のプレート中で行われ、各列はIFNの連続2倍希釈系列である。左から最初のカラムのIFNの最終濃度は25IU/mlである。上から列1:添加されたINF−αと24時間後に添加されたVSV;列2:添加されたINF−α、24時間後に洗浄された細胞、添加された新鮮なINF−αと添加されたVSV;列3:添加されたINF−α、24時間後に添加された中和性抗INF−α抗体、次に添加したVSV;列4から6と7から9は最初の3つの例と同じものであるが、それぞれINF−αと抗INF−β抗体、およびINF−ガンマと抗INF−ガンマ抗体を使用した。
図2は、TSK−DEAE陰イオン交換カラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。
図3は、ハイドロキシアパタイトバイオゲルHTPカラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。
図4は、スーパーホーマンス(Superformance)TMAE−65−S陰イオン交換HPLCカラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。
図5は、フェニルセファロース疎水性相互作用カラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。
図6は、逆相アクアポア(Aquapore)RP−300HPLCカラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。
図7は、逆相HPLCカラムによる再クロマトグラフィーからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。
図8は、精製操作の最後の工程で得られた種々の画分のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)分析を示す。13%のアクリルアミドゲルが使用され、銀で染色した。レーンは:1−7、限外濾過で濃縮されたRP−300クロマトグラフィー(図7)からの画分10−16の一部(400μl);8、対照試料緩衝液;9、左側に示した分子量マーカー。
図9は、スーパーローズ(Superose)12サイズ排除HPLCカラムからの抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。
図10は、微量配列解析装置(microsequencer)の元々のアウトプットを示す。RP−HPLC(図7)の画分10−12(各0.4ml)をプールし、限外濾過により濃縮し、得られた試料(1μg)を蛋白微量配列解析にかけた。
図11は、図10に示す蛋白微量配列解析装置により得られた配列の探索のアウトプットを示す。
図12は、モノクローナル抗体C7カラムで部分的に精製した可溶性LDLリセプターの免疫親和性クロマトグラフィーからの種々の画分の抗ウイルス活性を示す。バーは:load−カラムにのせたもの;effl.−溶出液(非結合画分);el.1-4−溶出1−4である。
図13は、免疫親和性クロマトグラフィー(図12に示されている)からの種々の画分のウェスタンブロット解析を示す。蛋白はニトロセルロースに電気ブロットされ、モノクローナル抗体C7および125I−蛋白Aで可視化した。レーンは:1、分子量マーカー;2、load;3、非結合;4、洗浄;5、溶出2;6、溶出3;7、モノクローナル抗体C7である。
図14は、種々のインターフェロンによるWISH細胞中の細胞表面LDLリセプターの投与量応答誘導を示す。細胞は19インターフェロンとインキュベートされ、培地に2%胎児牛血清を含む培地、細胞表面LDLリセプターのレベルはモノクローナル抗体C7と125I−蛋白Aにより測定した。
インターフェロンで処理した細胞は培地中に、インターフェロンではない抗ウイルス活性を有する蛋白を分泌することが明らかになった。この蛋白はすべての3つの型のヒトインターフェロンに対する抗体(いずれもNIH標準物質であり中和性モノクローナル抗体である)によっては中和されない。この蛋白はLDLリセプターの細胞外リガンド結合ドメインよりなることが同定された。
この可溶性LDLリセプターは、任意のインターフェロンに対して応答して抗ウイルス状態に入る哺乳動物細胞により培地中に分泌される。例としては、羊水から得られる繊維芽細胞または上皮細胞がある(例えばU細胞、WISH細胞)。
インターフェロンと異なり、可溶性LDLリセプターは細胞中に抗ウイルス状態を誘導しないが、それ自身が抗ウイルス性である。すなわち可溶性LDLリセプターとウイルスで同時に処理された細胞は溶解しないが、ウイルスのみまたはウイルスとINF−ガンマで同時に処理した細胞は感染し12時間後に溶解する。これはINF−ガンマで処理した細胞が抗ウイルス状態が確立されるには約10時間かかるため、INF−ガンマはウイルスに対する防御能を直ちには与えないことを示している。これに対して可溶性LDLリセプターは細胞に添加された時直ちに細胞を防御する。
サイズ排除クロマトグラフィーで試験すると、可溶性LDLリセプターの見かけの分子量は約40,000である。
可溶性LDLリセプターの産生のためには、培養して増殖させた適当な細胞を適当な培地中でIFNで処理して、37℃で数時間インキュベートする。こうして産生された可溶性LDLリセプターは培地中に分泌され、上清から単離される。適当な細胞とはインターフェロンに応答して抗ウイルス状態に入ることができる細胞である。INF−α、INF−βおよびINF−ガンマでも同様の結果が得られたが、INF−ガンマは可溶性LDLリセプターの抗ウイルス活性測定の条件下(可溶性LDLリセプターの添加と培養細胞へのウイルス抗原投与を同時に行う)では抗ウイルス活性を示さないため、INF−ガンマが好ましい。
本発明の好適な実施態様において、ヒトWISH細胞は、血清代替物を補足したMEM中でINF−ガンマとともに処理され、次に37℃でさらにインキュベートされる。17時間後に可溶性LDLリセプターの最も高い力価が得られた。次に可溶性LDLリセプターを含有する細胞の上清を採取し公知の方法で濃縮する(例えば限外濾過または半固体性ポリエチレングリコール20,000に対する透析)。次に濃縮した上清をクロマトグラフィー法で精製する。
好適な実施態様において、精製された可溶性LDLリセプターは以下の工程よりなる方法により産生される:
a. WISH細胞をコンフルーエントになるまで培養し、無血清培地中で30U/mlのINF−ガンマで細胞を誘導し、17時間後に細胞上清を集める;
b. 例えば分子量カットオフが約10,000の膜で限外濾過して、上記上清を約30倍濃縮する;
c. 工程(b)の濃縮した上清を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけて抗ウイルス性因子の部分精製活性画分を得る;
d. 工程(c)の部分精製画分をハイドロキシアパタイトのクロマトグラフィーにかけて抗ウイルス性因子の部分精製画分を得る;
e. 工程(d)の部分精製画分を陰イオンHPLCにかけて抗ウイルス性因子の部分精製画分を得る;
f. 工程(e)の部分精製画分を疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけて抗ウイルス性因子の部分精製画分を得る;そして
g. 工程(f)の部分精製画分を大体中性のpHで逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけて部分精製抗ウイルス性因子を得る。次にこの工程を繰り返して均一な抗ウイルス性因子(ヒトWISH細胞に対する水泡性口内炎ウイルス(VSV)による細胞変性作用を阻害する能力により規定される)を得る。
工程(c)のイオン交換クロマトグラフィーはpH約8でTSK−DEAEカラム上で行い、塩濃度を上昇させて溶出する。ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーは好ましくはバイオゲルHTPカラム(バイオラッド(BioRad)、米国)でpH6.8で行い、リン酸緩衝液で溶出する。陰イオン交換HPLCは好ましくは、スーパーホルマンス(Superformance)TMAEカラムでTSK−DEAEと同様の方法で行う。疎水性相互作用クロマトグラフィーは好ましくは、フェニルセファロースカラムで塩濃度を減少させて溶出する。逆相HPLCは好ましくはアクアポア(Aquapore)RP300カラムでpH7.5で、アセトニトリルの濃度勾配で行う。
別の好適な実施態様において、可溶性LDLリセプターは上記実施態様の工程a、bおよびcよりなる方法で精製し、次に可溶性LDLリセプターに対するモノクローナル抗体のカラムで免疫親和性クロマトグラフィーを行う。
モノクローナル抗体は好ましくはハイブリドーマC7(ATCC、CRL1691)より作成されるものである。部分精製した可溶性LDLリセプターを中性のpHでカラムにかけ、カラムを0.5MのNaClで中性で洗浄し50mMのNaCO(pH11)により精製された状態で溶出され、直ちに中和される。
好ましくはすべての精製操作においてクロマトグラフィーは蛋白濃度を追跡して行う(280nmでの吸光度、または代表的画分とフルオレスカミンとの「オンライン」の反応の蛍光)。各画分の抗ウイルス活性は、本明細書に記載の生物活性測定法に従ってWISH細胞中のVSV−誘導CPE(細胞変性作用)の阻害により求められる。
本明細書において「ムテイン」("muteins")という用語は、天然の可溶性LDLリセプターの1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基により置換されているか、または1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が可溶性LDLリセプターの天然の配列に添加されていて、得られる生成物の抗ウイルス活性を大きく変えることのないものを意味する。これらのムテインは公知の合成法および/または部位特異的突然変異誘発、または適当な任意の他の公知の方法により調製される。
「融合蛋白」という用語は、可溶性LDLリセプターまたはムテインに他の蛋白が融合しており、体内での滞在時間がより長いポリペプチドを意味する。すなわち可溶性LDLリセプターは他の蛋白、ポリペプチドなど(例えば免疫グロブリンまたはその断片)に融合される。
本明細書において「塩」という用語は、可溶性LDLリセプター、ムテインおよびこれらの融合蛋白のカルボニル基の塩およびアミノ基の付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は当該分野で公知の方法で作成され、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第三鉄または亜鉛などの無機塩、および例えばアミン(トリエチルアミン)、アルギニンまたはリジン、ピペリジン、プロカインなどとの有機塩がある。酸付加塩としては、例えば塩酸または硫酸のような鉱酸との塩、および例えば酢酸またはシュウ酸のような有機酸との塩がある。
本明細書において「官能性誘導体」とは、可溶性LDLリセプターおよびその融合蛋白やムテインの誘導体(これらは当該分野で公知の方法により、N−末端またはC−末端上の残基にある側鎖として存在する官能基から調製される)を包含し、これらが薬剤として許容されるものである限り、すなわち蛋白の活性を損なわずこれらを含む組成物に有害な性質を与えることがない限り、これらは本発明に含まれる。これらの誘導体には例えばポリエチレングリコール側鎖があり、これは抗原性部位を隠してしまい、体内での可溶性LDLリセプターの滞在時間を延長する。他の誘導体としては、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニウムまたは第1級または第2級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えばアルカノイルまたはカルボキシルアロイル基)と形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、またはアシル部分と形成される遊離ヒドロキシ基(例えばセリンまたはスレオニン残基)のO−アシル誘導体がある。「官能性誘導体」という用語にはまた、決定された配列より長いかまたは短いアミノ酸配列を有する蛋白(ただしこれらがウイルス感染を阻害する能力を有する限り)が含まれる。
可溶性LDLリセプター、その融合蛋白およびムテインの「活性画分」として、該蛋白分子自身または関連分子またはそこに結合した残基(例えば糖またはリン酸塩残基、または蛋白分子または糖残基の凝集物)のポリペプチド鎖の任意の断片または前駆体が、ウイルス感染を阻害する能力を有する限り、本発明に包含される。
本発明はまた、可溶性LDLリセプター、融合蛋白、ムテインまたはこれらの活性画分をコードするヌクレオチド配列よりなるDNA分子、該DNA分子を有する複製可能な発現ビーイクル(vehicle)、これで形質転換した宿主およびこのような形質転換宿主により産生された蛋白に関する。「DNA分子」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAおよびこれらの組合せを含む。
組換え可溶性LDLリセプターの産生は別の方法により行われる。1つの方法では、プラスミッドpLDLR−2(ヤマモト(Yamamoto)ら、前述)から可溶性LDLリセプターの公知のcDNAを取る。このDNAを適当なオリゴヌクレオチドで部位特異的突然変異誘発をさせ、停止コドンとポリアデニル化コドンを成熟LDLリセプターのコドン292の後ろに挿入する。次にこの作成体を当該分野で公知の方法により適当に作成された発現ベクターに挿入する(マニアチス(Maniatis)らを参照、前述)。合成DNAリンカーまたは平滑末端(blunt end)結合法を用いて、ホモポリマーテーリング法または制限結合法により、2本鎖cDNAをプラスミッドベクターに結合させる。DNAリガーゼを用いてDNA分子を結合させ、アルカリ性ホスファターゼで処理して好ましくない結合を避ける。
LDLリセプターのリガンド結合ドメインと、例えばIgG2重鎖の定常領域よりなる融合蛋白の産生は、以下のようにして行う:pLDLRのDNAを部位特異的突然変異誘発により、成熟LDLリセプターのコドン292のすぐ後ろにユニークな(唯一の)制限部位を導入する。IgG2重鎖の定常領域を有するプラスミッド(例えばpRKCO42Fc2(ビルン(Byrn R.A.)ら、1990, Nature(ロンドン)344, 667-670)を部位特異的突然変異誘発により、IgG2重鎖のAsp216のできるだけ近くに、融合蛋白の段階で翻訳が可能であるように、同じユニークな制限部位を導入する。5’の非翻訳配列を含みリーダーとLDLリセプターの大体最初の295アミノ酸よりなるdsDNAを、突然変異したpLDLリセプターのEcoRIとユニークな制限部位での消化により調製する。突然変異pRKCO42Fc2は同様に消化されて、プラスミッドとIgG1を有する大きな断片を産生する。次にこの2つの断片を結合して、LDLリセプターのN−末端の約295個のアミノ酸とIgG2重鎖(ヒンジ領域とCH2およびCH3ドメイン)のC−末端の約227個のアミノ酸よりなるポリペプチドをコードする新しいプラスミッドを作成する。EcoRIによる消化によりプラスミッドから、融合蛋白をコードするDNAを単離し、次に有効な発現ベクターに挿入する。
可溶性LDLリセプター、そのムテインまたは融合蛋白を発現することを可能にするために、発現ベクターは遺伝子発現と蛋白産生を可能にするように目的の蛋白をコードするDNAに結合した転写および翻訳制御情報を有する特異的ヌクレオチド配列を含むべきである。まず遺伝子が転写されるために、遺伝子の前にRNAポリメラーゼに認識されるプロモーターがなければならない(ここにポリメラーゼが結合し転写過程が開始される)。このようなプロモーターは種々使用されており、これらは異なる効率で作用する(強いプロモーターおよび弱いプロモーター)。これらは原核細胞および有核細胞で異なる。
本発明で使用されるプロモーターは構成性(例えばバクテリオファージラムダのintプロモーター、pBR322のβ−ラクタマーゼ遺伝子のbla遺伝子、およびpPR325のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のCATプロモーターなど)、または誘導性(例えばバクテリオファージラムダの主要な右プロモーターおよび左プロモーター(PLとPR)を含む原核プロモーター、大腸菌のtrp、recA、lac2、ompFおよびgalプロモーター、またはtrp−lacハイブリッドプロモーターなど)でもよい(グリック(Glick, B.R.)、1987、J. Ind. Microbiol. 1:277-282)。
原核細胞で高レベルの遺伝子発現を達成するためには、強いプロモーターを使用して多量のmRNAを産生させる以外に、リボゾーム結合部位を用いてmRNAが有効に翻訳されていることを確保することが必要である。1つの例は、開始コドンから適当に位置しており、16SRNAの3’末端配列に相補的なシャインダルガルノ配列(SD配列)である。
原核宿主には、宿主の性質により異なる転写および翻訳制御配列が使用される。これらはウイルス(例えばアデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サルウイルスなど)由来であり、ここでは高レベルの発現をする特定の遺伝子に関連した制御シグナルがある。例としてはヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどがある。抑制と活性化を可能にする転写開始制御シグナルが選択され、こうして遺伝子の発現が制御される。
本発明の可溶性LDLリセプターまたはその断片またはムテインまたはこれらの融合蛋白をコードするヌクレオチド配列、および機能的に結合した転写および翻訳制御シグナルよりなるDNA分子は、目的の遺伝子配列を宿主細胞染色体へ取り込むことができるベクターに挿入される。導入されたDNAを染色体中へ安定的に取り込む細胞を選択することができるように、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1つまたはそれ以上のマーカーを使用する。このマーカーは栄養素要求性宿主(autotrophic host)に原栄養性(prototrophy)、殺生物剤(biocide)耐性(例えば抗生物質、銅などの重金属に対する耐性など)を与えることもできる。選択マーカーは発現されるDNA遺伝子配列に直接結合しているかまたはコトランスフェクション(cotransfection)により細胞内へ導入される。1本鎖結合性蛋白mRNAの最適な合成のためには追加の要素も必要であり、これらの要素にはスプライスシグナル、および転写プロモーター、エンハンサー、そして停止シグナルがある。このような要素を導入しているcDNA発現ベクターには、オカヤマ(Okayama, H.), 1983, Mol. Cel. Biol. 3:280に記載されたものがある。
好適な実施態様において、導入されたDNA分子は受容性宿主中で自律増殖が可能なプラスミッドまたはウイルスベクターに取り込まれる。特定のプラスミッドまたはウイルスベクターの選択に重要な因子は:ベクターを含む受容性細胞が容易に認識され、ベクターを含まない受容性細胞から容易に選択されること;特定の宿主におけるベクターのコピー数が好ましいこと;そしてベクターが異なる宿主細胞間を「往復」("shuttle")できることが好ましい。
好適な原核性ベクターには、大腸菌中で複製が可能なもの(例えばpBR322、ColE1、pSC101、pACYC184など)(マニアチス(Maniatis)ら、前述);バシルス(Bacillus)のプラスミッド(例えばpC194、pC221、pT127など)(グリクザン(Gryczan, T.)、「バシルスの分子生物学」("The Molecular Biology of the Bacilli")、アカデミックプレス、ニューヨーク(1982)、307-322);pIJ101などのストレプトミセス(Streptomyces)のプラスミッド(ケンダル(Kendall, K.J.)ら、(1987) J. Bacteriol. 169:4177-4183):φC31のようなストレプトミセス(Streptomyces)のバクテリオファージ(チャター(Chater, KF.)ら、「アクチノミセターレス生物学に関する第6回国際シンポジウム」("Sixth International Symposium on
ActinomycetalesBiology")、アカデミアイカイド(Akademiai Kaido)、ブダペスト(Budapest)、ハンガリー、(1986) 43-54)、およびシュードモナス(Pseudomonas)のプラスミッド(ジョン(John, J.F.)ら、(1986) Rev. Infect. Dis. 8:693-704、およびツザキ(Tzaki, K.)(1978) Jpn. J. Bacteriol. 33:729-742)がある。
好適な真核プラスミッドには、BPV、バクシニア(vaccinia)、SV40、2−ミクロンサークル(2-micron circle)など、またはこれらの誘導体がある。このようなプラスミッドは当該分野で公知である(ボツスタイン(Botstein, D.)ら、(1982) Miami Wint Symp.19:265-274;ブローチ(Broach, JR.)、「酵母サッカロミセスの分子生物学:ライフサイクルと遺伝」("The Molecular Biologyof the Yeast Saccharomyces:Life Cycleand Inheritance")、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring HarborLaboraory)、コールドスプリングハーバー(Cold SpringHarbor)、ニューヨーク、445-470 (1981);ブローチ(Broach, JR.)、(1982) Cell 28:203-204;ボロン(Bollon, D.P.)ら、(1980) J. Clin. Hematol.Oncol. 10: 39-48;マニアチス(Maniatis T.
)、「細胞生物学:総合論文、第3巻:遺伝子発現」("Cell Biology:A Comprehensive Treatise, Vol. 3: Gene Expression")、アカデミックプレス(Adademic Press)、ニューヨーク、563-608(1980))。
作成体を含むベクターまたはDNA配列が発現のためにいったん調製されると、保存ベクターは任意の種々の適当な手段により適当な宿主細胞に導入される(例えば形質転換、トランスフェクション、リポフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション(electroporation)、リン酸カルシウム沈澱法、直接微量注入(microinjectiion)など)。
本発明で使用される宿主細胞は原核性でも真核性でもよい。好適な原核宿主細胞は大腸菌(E.coli)、バシルス(Bacillus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)などの細菌である。最も好適な原核宿主は大腸菌である。特に関係がある細菌宿主は大腸菌K12株294(ATCC 31446)、大腸菌X1776(ATCC 31537)、大腸菌W3110(F- 、ラムダ- 、原栄養性(ATCC 27325))、および他の腸内細菌(サルモネラティフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチアナルセサンス(Serratia narcescens)、および種々のシュードモナス(Pseudomonas)種である。このような条件下ではこの蛋白はグリコシル化されない。原核宿主はレプリコンや発現プラスミッド中の調節配列と融和性でなければならない。
しかし可溶性LDLリセプターはシステインに富む蛋白であるため、原核宿主より真核宿主が好ましい。哺乳動物細胞は翻訳後に蛋白に対して正しい折り畳み(folding)、正しいジスルフィド結合形成および正しい部位でのグリコシル化などの修飾を可能にするため、好適な真核宿主は哺乳動物細胞(例えばヒト、サル、マウスおよびチャイニーズハムスターオバリー(CHO)細胞)である。また酵母細胞や昆虫細胞は翻訳後のペプチド修飾(高マンノースグリコシル化を含む)が可能である。酵母や昆虫細胞での目的の蛋白の産生に使用される強いプロモーター配列や高コピー数のプラスミッドを用いる、多くの組換えDNA戦略が存在する。酵母細胞はクローン化哺乳動物遺伝子上のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチドを分泌する。
ベクターの導入の後には、宿主細胞はベクター含有細胞の増殖を選択する選択培地中で増殖される。クローン化遺伝子配列が発現されると、可溶性LDLリセプター、融合蛋白、またはムテインまたはこれらの断片が産生される。次に発現された蛋白は単離され、抽出、沈澱、クロマトグラフィー、電気泳動など、またはカラム中のゲルマトリックスに固定化された抗可溶性LDLリセプターモノクローナル抗体(例えばハイブリドーマC7,ゲルシーゲル(Belsiege U.)ら、J. Biol.Chem., 256, 11923-11931, 1981)を用いる親和性クロマトグラフィーなどの通常の方法などの任意の従来法により精製される。上記組換え可溶性LDLリセプターを含む粗調製物をカラムに通すと、可溶性LDLリセプターは特異的抗体によりカラムに結合し、不純物はカラムを通過する。洗浄後高pH(例えばpH11)でゲルから蛋白を溶出する。
可溶性LDLリセプター、そのムテイン、融合蛋白およびこれらの塩、官能性誘導体、およびこれらの活性画分は、哺乳動物においてウイルス疾患の治療に有効である。
本発明は、単独の活性成分としてまたは他の抗ウイルス剤(例えばインターフェロン)とともに、薬剤として許容される担体、本発明の可溶性LDLリセプター、その活性ムテイン、融合蛋白およびこれらの塩、官能性誘導体、およびこれらの活性画分よりなる薬剤組成物に関する。これらの組成物はウイルス疾患に対して使用される。投与法は同様の薬剤に対して使用される任意の方法でよく、治療すべき症状に依存する(例えば全身性のウイルス血症の場合は静脈内または筋肉内または皮下、また局所感染の場合は局所注射または局所投与、または連続的な注入など)。
本発明の薬剤は、可溶性LDLリセプター、その誘導体を単独または他の抗ウイルス剤と組合せて、薬剤として許容される担体、安定剤および賦形剤を混合し、投与型(例えば投与バイアル中で凍結乾燥)で、投与用に調製される。投与すべき活性化合物の量は、投与経路、治療すべき疾患および患者の状態に依存する。例えば局所投与は、体重に対して全身性のウイルス血症の場合の静脈内注入より少量の蛋白でよい。
以下の非限定例により本発明を例示する。
例1:可溶性LDLリセプターの抗ウイルス活性の予備的同定
IFNで誘導した細胞の上清中の未知の抗ウイルス因子の存在は種々の実験で証明された。
抗ウイルス作用は、ヒトWISH細胞と抗原投与としてのVSVを用いるウイルス細胞変性作用(CPE)測定法(ルービンスアイン(Rubinstein, S)ら、(1981) J. Virol. 37:755-758)により測定した。最初の試験はINF−α、INF−βおよびINF−ガンマを用いて行い、3つのすべてのIFNに対して同様の結果が得られた。
図1に示した実験(表1に要約されている)では、ヒト羊膜WISH細胞(ATC CCCL−25)を96穴マイクロタイタープレートに接種した。数時間後10%胎児牛血清を補足したMEM(最小基本培地)中のINF−α、INF−βおよびINF−ガンマの50U/mlから始まる連続2倍希釈系列を、(上から)それぞれ1−3、4−6および7−9列の細胞のモノレーヤーに添加し、細胞を37℃で一晩インキュベートした。列1、5および9の培地は取らなかった。列2、6および10の培地を吸引し、細胞モノレーヤーを1回洗浄し、新鮮な培地を加えた。列3、7および11では培地を各IFNの新鮮な希釈物で置換し、それぞれ列4、8および12ではINF−α、INF−β(NIH標準物質)に対する中和性抗体およびINF−ガンマに対する中和性抗体(モノクローナル抗体166.5、ノビック(Novick)ら、(1983) EMBO 3(2), 1527)を加えた。増殖培地中のVSVをすべてウェル(穴)に添加した。感染した培養物をさらに一晩インキュベートし、次にウイルス細胞変性作用の程度を目視により評価できるようにクリスタルバイオレットで染色した。
(表1)

表1:IFN作用における抗ウイルス因子の役割

図1 処理(1) 50%CPE 単位/ml(2) 活性%
の列 の希釈倍率

1 INF−α 24 時間、標準測定法 400 1000 100
2 INF−α 24 時間、洗浄 100 250 25
3 INF−α 24 時間、IFNを置換 200 250 25
4 INF−α 24 時間、中和 300 375 37
5 INF−β 24 時間、標準測定法 400 1000 100
6 INF−β 24 時間、洗浄 200 500 50
7 INF−β 24 時間、IFNを置換 400 1000 100
8 INF−β 24 時間、中和 400 1000 100
9 INF−γ 24 時間、標準測定法 800 1000 100
10 INF−γ 24 時間、洗浄 200 250 25
11 INF−γ 24 時間、IFNを置換 400 500 50
12 INF−γ 24 時間、中和 800 1000 100


(1) 標準測定法では、96穴マイクロタイタープレート中のWISH細胞のモノレーヤーに、(列1、5および9)IFNを連続2倍希釈系列で加えた(図1の右から左)。24時間後にVSVを加え、18時間後細胞を固定し染色した。他の場合は、VSVの抗原投与の直前に、洗浄(列2、6および10)、新鮮な培地中のIFNで置換(列3、7および11)または抗IFN中和性抗体の添加(列4、8および12)を行った。
(2) IFN標準物質(列1、5および9)の力価を1000U/mlとした。
まず50%CPEを与えたNIH標準物質IFN(列1、5および9)の希釈率を求めた。図1の列2、6および10に示すように、24時間後とVSV抗原投与の直前に洗浄すると、3つのすべてのIFNの力価が有意に低下した。IFNの新鮮な希釈物で培地を置換するとINF−α(列3)とINF−ガンマ(列1)による防御のレベルが低下したが、INF−β(列7)では低下しなかった。IFNに24時間接触させた後に増殖培地に中和性抗IFN抗体を添加すると、INF−α(列4)の活性にはほんのわずかの影響しか与えず、INF−βとINF−ガンマ(それぞれ列8と12)の活性には全く影響を与えなかった。
IFNは特異的細胞表面リセプターとの相互作用の後に細胞内に抗ウイルス状態を誘導するため、抗ウイルス状態が確立したらこれらを除去しても細胞はウイルスに対して防御され続ける。従って抗ウイルス状態の確立の後にIFNを除去しても見かけのIFNの力価は変化しないと考えられる。しかし上記の実験ではウイルスを抗原投与(列2、6および10)する前に培地を置換すると、特定のIFN試料の見かけの抗ウイルス力価は、有意に低かった。培地を新鮮なIFNで置換した場合も、INF−α(列3)とINF−ガンマ(列11)では防御のレベルは、置換しない場合よりも低かった。従って培地はウイルス感染から細胞を防御する非インターフェロン成分を有していた。
IFNの添加後に細胞をインキュベートし、増殖培地を置換することなくウイルス抗原投与の前に抗IFN中和抗体を添加すると、INF−αの抗ウイルス活性のみわずかに低下した(列4)がINF−βまたはINF−ガンマ(それぞれ列8と12)の活性は低下しなかった。これらの結果は、IFN含有培地を除去した時観察された活性の低下はIFN分子の除去によるのではなく、むしろ充分な抗ウイルス防御能を与えるのに必要な他の分子の除去によることを示唆している。
IFNのCPE低下測定法においてインビトロで、培地中の抗ウイルス活性の増強が証明された。IFN抗ウイルス活性においてインビボでも活性細胞外成分がある役割を果たしている可能性がある。分泌された成分が連続的に除去されている全身性の疾患でIFNを使用するとき、このような因子の投与はIFNの作用を大いに増強するかも知れない。
例2:抗ウイルス蛋白の産生と精製
2.1 粗抗ウイルス蛋白の産生
スピナーフラスコ中のフィブラセルディスク(Fibracell discs)(ステリリン(Sterilin)、英国)上で、10%胎児牛血清(FCS)を補足したMEMよりなる培地中で、コンフルーエントになるまでヒト羊膜細胞WISH(ATCCCCL−25)を増殖させた。コンフルーエントのところで培地を捨て、ディスクを無血清MEMで数回洗浄した。次に細胞を、蛋白を含まない血清代替物ADC−1(1:50、バイオロジカルインダストリーズ(Biological Industries)、ベイトヘメック(Beit Haemek)、イスラエル)、ヘペス20mM、インスリン0.2μg/mlおよびINF−ガンマ(30U/ml)を補足したMEM(1.3リットル)中でインキュベートした。37℃で17時間インキュベートを続けた。次に培地を集め、遠心分離し(5000×g、15分)、上清を集め、使用するまで短時間(24時間まで)4℃で無菌条件下で保存したか、または−20℃に保存した。蛋白を含まない培地とINF−ガンマをさらに加えることにより、培養細胞を産生のために連続的に使用することができた。
2.2 粗抗ウイルス因子の濃縮
抗ウイルス性因子はポリエチレングリコール20,000に対して透析するか、または限外濾過により濃縮することができる。上記工程2.1の粗細胞上清(1.5リットル)を分子量カットオフが10,000のポリスルホン膜(PTGCミニタンプレート)を用いてミニタン(Minitan)装置(ミリポア(Millipore)、米国)中で限外濾過して約30倍濃縮した。粗保持物(retentate)をホウ酸ナトリウム緩衝液、20mM、pH8(緩衝液A)で洗浄し、容量を約50mlにした。この物質を直ちに使用するかまたは使用するまで−20℃に保存した。
2.3 TSK−DEAEでのクロマトグラフィー
TSK−DEAEカラム(2.5×33cm、トーソー(Tosoh)、日本)を緩衝液Aで平衡化させた。上記のミニタン工程2.2からの濃縮抗ウイルス性因子を、流速8ml/分でカラムにかけた。次にカラムを緩衝液Aで洗浄し、緩衝液A中の50、100、200および500mMのNaClで段階的に溶出した。12mlの画分を集め生物測定法で測定した。カラムを280nmの吸光度により追跡した(図2)。200mMのNaClで溶出した蛋白のピークは、中和性の抗INF−ガンマモノクローナル抗体No.166−5の存在下で試験した時抗ウイルス活性を有していた。これを集め、YM−10膜(分子量カットオフ10,000、アミコン(Amicon)、米国)の限外濾過により約20mlの容量に濃縮した。この物質を使用するまで−20℃に保存した。
2.4 ハイドロキシアパタイトのクロマトグラフィー
ハイドロキシアパタイトバイオゲルTHPカラム(2.5×4cm、バイオラッド(BioRad)、米国)を水で平衡化させた。工程2.3の濃縮した0.2MのNaClの蛋白ピーク(166mg)を、流速2ml/分でバイオゲルHTPカラムにかけた。カラムを水で洗浄し、15mMのリン酸ナトリウム、pH6.8で溶出した。2mlの画分を集め、抗ウイルス活性を試験した。カラムを280nmの吸光度で追跡した(図3)。抗ウイルス活性は15mMのリン酸ナトリウム溶出液中で見いだされ、これを集め限外濾過により濃縮した。
2.5 陰イオン交換HPLC
陰イオン交換HPLCカラム(スーパーホルマンス(Superformance)−TMAE−650S、イー・メルク(E. Merck)、ドイツ)を緩衝液Aであらかじめ平衡化させた。工程2.4からの73mgの蛋白を含有する濃縮したプールを遠心分離(10,000×g、5分)し、上清を流速1ml/分でカラムにかけた。カラムを緩衝液Aで洗浄し、次に緩衝液A中の50、100、200および500mMのNaClで段階的に溶出した。2.5mlの画分を集め、抗ウイルス活性を測定した。カラムを280nmの吸光度で追跡した(図4)。活性は200mMのNaCl画分で溶出した。この画分を集め使用するまで−20℃で保存した。
2.6 疎水性相互作用クロマトグラフィー
フェニルセファロースカラム(1.5×6.5cm、ファルマシア(Pharmacia)、スエーデン)を緩衝液A中の1.5MのNaClで平衡化させた。工程2.5の200mMのリン酸ナトリウムの蛋白ピーク(10mg)を1.5MのNaClにし、フェニルセファロースカラムにかけた(1ml/分)。カラムを緩衝液A中1.5MのNaClで洗浄し、非結合ピークを集めた。カラムを緩衝液A中の1MのNaCl、緩衝液Aおよび CH3CN/50%緩衝液Aで段階的に溶出した。抗ウイルス活性は非結合画分(1.5MのNaCl)で得られた。カラムを280nmで追跡した(図5)。
2.7 逆相HPLC
工程2.6の非結合のプールした画分(1.2mg)を、20mMヘペス緩衝液pH7.5であらかじめ平衡化したアクアポアRP300RP−HPLCカラム(4.6×30mm)にかけた。カラムを洗浄し、同じ緩衝液中のアセトニトリル勾配により流速0.5ml/分で溶出した。1mlの画分を集め、抗ウイルス活性を試験した。抗ウイルス活性は14%アセトニトリルで溶出し、蛋白ピークに関連していた。しかしこのピークは隣接するピークから完全に分離はしなかった(図6)。カラムはフルオレスカミンを基礎とするカラム後の反応系により追跡した(スタインとモシェラ(Stein S. and Moschera J.)、1981, Methods in Enzymology, 79:7-16)。
活性画分(56μg)をプールし、20mMヘペス緩衝液pH7.5で2倍希釈し、アクアポアRP300カラムで再クロマトグラフィーをした(図7)。各画分の少量(400μl)を限外濾過により濃縮し、ドデシル硫酸ナトリウムとβ−メルカプトエタノールの存在下でポリアクリルアミド(13%)ゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけた。蛋白バンドは銀染色により目視できるようにした。レーンは:レーン1−7、HPLCの10−16の画分;レーン8、対照試料緩衝液;レーン9、左側に示した分子量マーカー(図8)。
例3:抗ウイルス性因子の性状解析
3.1 抗ウイルス活性の生物測定法
この測定法は、IFN活性を測定するために使用される細胞変性作用(CPE)阻害測定法に類似している(ルービンスタイン(Rubinstein S.)ら、(1981) J. Virol. 37:755-758)。抗ウイルス活性はヒトINF−βのNIH標準物質に対して較正されている。これはまたINF−α標準物質でも較正してあるが、INF−ガンマ(これはこれらの測定条件下ではウイルスから細胞を防御しない)では較正していない。以下の方法が使用される。
96穴平底プレート中で10%FCSを補足したMEMの100μl中で45,000細胞/ウェルを接種して、コンフルーエントなモノレーヤーのWISH細胞を第1日目に調製する。プレートを5%CO中で37℃でインキュベートする。第2日目に抗ウイルス性因子の試料を別のプレート中で連続2倍希釈をする(100μl)。1000U/mlのINF−ガンマを中和するのに充分な中和性モノクローナル抗INF−ガンマ抗体(166−5)を各ウェルに加え、溶液をWISH細胞とともにプレートに移し、次に直ちに適当な量(下記)の保存VSV(50μl)で抗原投与する。プレートを37℃で一晩インキュベートした。測定は標準物質INF−βで較正されている。第3日目に、ウイルス抗原投与の約20時間後に対照ウェル中の細胞変性作用を顕微鏡で観察する。これが80%以上の場合、プレートの水を切ってモノレーヤーをクリスタルバイオレット(70%メタノール水溶液中で0.5%)で染色し、多量の水道水で洗浄し、顕微鏡下で観察して終点を求める。この測定のためのVSVの適当な量は、測定条件下で標準INF−βの連続2倍希釈に加えられた場合、20−24時間のインキュベート後約3−6U/mlのINF−β希釈で50%CPEを与える、保存VSVの希釈率である。
3.2 抗ウイルス性因子は蛋白である
抗ウイルス性因子が蛋白であることを証明するために3つの実験を行った。
a. 分子量>10,000。抗ウイルス活性はPEG20,000に対する透析およびカットオフ10,000ダルトンの膜の限外濾過により濃縮できることは、この抗ウイルス性因子が巨大分子であることを示している。
b. 熱に対する不安定性。モノ(Mono)Q陰イオン交換工程(例2の工程2.5と同じ)からの活性画分を、100℃の浴中で10分加熱し抗ウイルス活性を試験した。この処理の後には活性は認められなかった。表2を参照。
c. トリプシン感受性。モノ(Mono)Q陰イオン交換工程からの活性画分を蛋白:酵素比5:1で、TPCK−処理したトリプシン(ワーシントン(Worthington))で室温でインキュベートした。対照画分はトリプシンなしで同様に保存し、対照トリプシンを同様にして作成した。抗ウイルス活性の66%はトリプシン処理により失われたため、抗ウイルス性因子はトリプシン感受性であると結論された。
d. 抗ウイルス性因子はインターフェロンではない。インターフェロンは細胞内に、インターフェロンの除去後も続く抗ウイルス状態を誘導する蛋白であると規定される。細胞をモノQ工程からの抗ウイルス性因子含有培地と24時間インキュベートし、培地を除去し、細胞を洗浄してVSVで抗原投与した。従って抗ウイルス性因子はインターフェロンではなく、その作用機構はインターフェロンのものとは異なると結論された。
e. 抗ウイルス性因子はおそらく分解性酵素ではない。抗ウイルス性因子の作用部位と作用様式はいまだに未知である。これらの問題を明らかにするために、異なるウイルスでさらに試験が必要である。この因子がウイルスを分解する酵素(例えば蛋白分解性酵素)であるか否かを試験するために、1つの簡単な実験を行った。この目的のためにVSVを、この因子の連続2倍希釈系列と37℃で異なる時間インキュベートした。次にウシMDBK細胞をウェルに加え、CPEの程度を求めた。VSVは抗ウイルス性因子の添加の直後に細胞と混合された時、または抗ウイルス性因子と37℃で5時間あらかじめインキュベートされた時、VSVは同定度のCPEを与えることが見いだされた。従って抗ウイルス性因子はおそらくウイルス分解性酵素ではないと結論された。
(表2)

表2:抗ウイルス性因子の熱とトリプシンに対する感受性

試料 活性
U/ml %
保存(モノQ)抗ウイルス性因子、一晩、室温 75 100
保存抗ウイルス性因子+トリプシン、一晩、室温 25 33
保存抗ウイルス性因子(モノQ)、室温、10分 65 100
保存抗ウイルス性因子、100℃、10分 0 0
3.3 抗ウイルス性因子のサイズ排除クロマトグラフィー
TSK−DEAE工程からの抗ウイルス性因子(0.4ml)を、ほとんど生理的条件下でリン酸緩衝化生理食塩水中でサイズ排除カラム(スーパーローズ12、1×30cm、ファルマシア(Pharmacia))で分画した。カラムをあらかじめ平衡化し、流速0.5ml/分でリン酸緩衝化生理食塩水で溶出した。1mlの画分を集め、各画分について抗ウイルス活性を測定した。カラムを280nmで追跡した(図9)。カラムは分子量マーカーとしてのウシ血清アルブミン(67K)とカルボニックアンヒドラーゼ(carbonic anhydrase)(30K)で較正した。抗ウイルス活性は見かけの分子量40,000のピークで溶出することが見いだされた。しかしこのピークは広めであった。
3.4 抗ウイルス性因子の種特異性
抗ウイルス性因子はヒトWISH細胞上で活性であることが見いだされた。これはまたウシMDBK細胞および齧歯類L細胞上で活性があることが見いだされた。従ってこの因子は種特異性はないと結論された。
3.5 蛋白配列解析と抗ウイルス性因子の同定
最後のRP−HPLC工程(例2の2.7を参照)からの画分10−12の少量(400μl)をプールし、限外濾過で濃縮し、濃縮物(0.5μg)をモデル475蛋白微量配列解析装置(アプライドバイオシルテムズ(Applied Biosystems)、米国)で微量配列解析をした。この系で同定した得られたN−末端15個のアミノ酸残基の配列を図10に示す。サイクル10のアミノ酸は同定しなかったが、サイクル3のProはあまり自信がなく同定した(ピコモル比で示されている)。
得られたアミノ酸配列をNBRF蛋白データバンクと比較し、前駆体LDLリセプターの残基25(成熟LDLリセプターの残基4)から始まるヒト低比重リポ蛋白(LDL)リセプターのN−末端配列と100%同じであった。サイクル3、10および15のアミノ酸は、予備的修飾なしには同定できないシステイン残基であるため、配列解析装置では正しく同定されなかった。単離されたリセプターと公知のLDLリセプターの同一性を図11にしめす。
分子量の推定のために用いた2つの方法によれば、本発明の可溶性抗ウイルス性蛋白の分子量は29,000または40,000である。従って抗ウイルス性蛋白はLDLリセプターのN−末端システインの豊富なドメインに対応すると結論された。エッサー(Esser)(エッサー(Esser V.)ら、(1988), J. Biol.Chem. 263, 13282-13290)によれば、292個のアミノ酸残基のシステインに富むN−末端ドメインは、LDLリセプターのリガンド結合ドメインであり、その計算された分子量はグリコシル化の程度により約33,000−38,000である。
例4:抗ウイルス性因子の免疫親和性クロマトグラフィー
抗ウイルス性因子とsLDLRの最も直接的な証明は、モノクローナル抗体C7カラムでの粗抗ウイルス性蛋白の親和性クロマトグラフィーにより得られた。この抗体はウシおよびヒトLDLRのリガンド結合ドメインに対するものである。(バイシーゲル(Beisiegel, U.)ら、(1981) J. Biol. Chem.,256, 11923-11931)。ハイブリドーマC7(ATCC、CRL1691)をマウスで腹水として増殖させ、硫酸アンモニウム分画法により免疫グロブリンを単離した。C7免疫グロブリン(19mg)を1mlのアガロースに結合させた。TSK−DEAE工程("load"(「のせた量」)、14ml、37.8mg蛋白、2800単位)の200mMのNaCl画分からの部分精製したAVHを、このカラムにかけた。溶出液("effl.")を集め、カラムをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の0.5Mの食塩70mlで洗浄し("wash")、次にPBS(30ml)で洗浄した。次にカラムを50mMのNa2CO3(pH11)で溶出し(el.2およびel.3)、回収率は32%であった(図12)。溶出した画分の蛋白の量は0.15mgであり、精製の程度は83であった。SDS−PAGEと銀染色により多くのバンドが得られた。しかしモノクローナル抗体C7のウェスタンブロット(ゲルは非還元条件下)では(図13)、load画分、effluent画分そしてwash画分にもリセプターは検出されなかった(それぞれレーン2、3および4)。しかしel.2とel.3では(レーン5と6)可溶性LDLリセプターの28Kのバンドが得られた。またel.2とel.3では弱い40Kバンドと100Kバンド(これらはおそらくLDLリセプターの大きな細胞外断片であろう)を含む高分子量バンドが見られた。200Kの近くの強いバンドはC7試料(レーン7)と同一であったため、おそらくカラムから漏れたモノクローナル抗体C7であり、蛋白Aと反応したのであろう。
例5:インターフェロンによる細胞表面LDLRの誘導
可溶性LDLリセプターも細胞表面リセプターも同じ遺伝子を有するため、インターフェロンが可溶性LDLリセプターを誘導する能力は、これが細胞表面LDLリセプターも誘導することができることを示唆する。完全なサイズのLDLリセプターを誘導することができるか否かを試験するために、コンフルーエントにまで増殖させたWISH細胞を、2%胎児牛血清を含む培地中で種々のインターフェロンと培養した。細胞を洗浄し、モノクローナル抗体C7と4℃で2時間インキュベートし、洗浄し、125I−蛋白A(約80,000dpm)と4℃で2時間インキュベートし、トリプシンで集め計測した。経時変化の実験ではINF−ガンマ(100U/ml)によるLDLリセプターの最大の誘導は5時間と23時間の間で起きた。次にWISH細胞を異なるインターフェロンと19時間培養して用量応答試験を行った。その結果INF−ガンマはLDLリセプターの最も強力な誘導体であり、最大の誘導は10−50U/mlで見られた。INF−αはより弱い誘導体であり、INF−βは全くLDLリセプターを誘導体しなかった(図14)。蛋白合成阻害剤シクロヘキシミドの存在下ではLDLリセプターの誘導もその基礎レベルも消失していた。
添加されたインターフェロンではない抗ウイルス活性の存在の証拠を示す。 TSK−DEAE陰イオン交換カラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。 ハイドロキシアパタイトバイオゲルHTPカラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。 スーパーホーマンス(Superformance)TMAE−65−S陰イオン交換HPLCカラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。 フェニルセファロース疎水性相互作用カラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。 逆相アクアポア(Aquapore)RP−300HPLCカラムからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。 逆相HPLCカラムによる再クロマトグラフィーからの蛋白と抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。 精製操作の最後の工程で得られた種々の画分のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)分析を示す。13%のアクリルアミドゲルが使用され、銀で染色した。レーンは:1−7、限外濾過で濃縮されたRP−300クロマトグラフィー(図7)からの画分10−16の一部(400μl);8、対照試料緩衝液;9、左側に示した分子量マーカー。 スーパーローズ(Superose)12サイズ排除HPLCカラムからの抗ウイルス活性の溶出パターンを示す。 微量配列解析装置(microsequencer)の元々のアウトプットを示す。RP−HPLC(図7)の画分10−12(各0.4ml)をプールし、限外濾過により濃縮し、得られた試料(1μg)を蛋白微量配列解析にかけた。 図10に示す蛋白微量配列解析装置により得られた配列の探索のアウトプットを示す。 モノクローナル抗体C7カラムで部分的に精製した可溶性LDLリセプターの免疫親和性クロマトグラフィーからの種々の画分の抗ウイルス活性を示す。バーは:load−カラムにのせたもの;effl.−溶出液(非結合画分);el.1-4−溶出1−4である。 免疫親和性クロマトグラフィー(図12に示されている)からの種々の画分のウェスタンブロット解析を示す。蛋白はニトロセルロースに電気ブロットされ、モノクローナル抗体C7および125I−蛋白Aで可視化した。レーンは:1、分子量マーカー;2、load;3、非結合;4、洗浄;5、溶出2;6、溶出3;7、モノクローナル抗体C7である。 種々のインターフェロンによるWISH細胞中の細胞表面LDLリセプターの投与量応答誘導を示す。細胞は19 インターフェロンとインキュベートされ、培地に2%胎児牛血清を含む培地、細胞表面LDLリセプターのレベルはモノクローナル抗体C7と125I−蛋白Aにより測定した。

Claims (23)

  1. 可溶性LDLリセプター蛋白、そのムテインと融合蛋白、それらの塩、官能性誘導体および活性画分。
  2. 蛋白性不純物に対して均一になるまで精製されている、請求項1に記載の可溶性LDLリセプター。
  3. 実質的に成熟LDLリセプターの細胞外ドメインよりなる、請求項1または2に記載の可溶性LDLリセプター。
  4. 実質的に成熟LDLリセプターのリガンド結合ドメインよりなる、請求項1または2に記載の可溶性LDLリセプター。
  5. 実質的に成熟LDLリセプターのアミノ酸残基4から約292に対応するアミノ酸配列を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の可溶性LDLリセプター。
  6. 実質的に図10に示すアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の可溶性LDLリセプター。
  7. 適当な細胞のインターフェロンによる処理、その上清からの可溶性LDLリセプターの単離およびそれらの精製よりなる、前記請求項のいずれか1項に記載の可溶性LDLリセプターの調製法。
  8. 使用される細胞はインターフェロンに応答して抗ウイルス状態に入ることができるものである、請求項7に記載の方法。
  9. インターフェロンはインターフェロン−ガンマである、請求項8に記載の方法。
  10. 以下の工程よりなる請求項7に記載の方法:
    a) インターフェロンに応答して抗ウイルス状態に入ることができる細胞をコンフルーエントになるまで増殖させて;
    b) 細胞をインターフェロンで誘導し;
    c) 培養上清を採取し;
    d) 上清を濃縮し;
    e) 工程d)の濃縮した上清を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけて;
    f) 工程e)で得られた画分をハイドロキシアパタイトのクロマトグラフィーにかけて;
    g) 工程f)で得られた画分を陰イオンHPLCにかけて;
    h) 工程g)で得られた画分を疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけて;
    i) 工程h)で得られた画分を逆相HPLCにかけて;
    k) 工程i)を繰り返して均一になるまで精製された可溶性LDLリセプターを得る。
  11. 1つまたはそれ以上のクロマトグラフィー工程は、抗LDLリセプターモノクローナル抗体カラムの免疫親和性クロマトグラフィーで置換される、請求項10に記載の方法。
  12. モノクローナル抗体はC7(ATCC、CRL1691)であり、可溶性リセプターは高いpHで溶出される、請求項11に記載の方法。
  13. ヒトWISH細胞が使用される請求項10に記載の方法。
  14. 実質的に成熟LDLリセプターのリガンド結合ドメインのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する可溶性LDLリセプターをコードするDNA分子。
  15. 実質的に成熟LDLリセプターのアミノ酸残基4から292に対応するアミノ酸配列を有する可溶性LDLリセプターをコードする、請求項14に記載のDNA分子。
  16. 図10のアミノ酸配列を含む可溶性LDLリセプターをコードする、請求項14に記載のDNA分子。
  17. 請求項11から13までのいずれか1項に記載のDNA分子にハイブリダイズし、可溶性LDLリセプターをコードするDNA分子。
  18. 請求項14から17までのいずれか1項に記載のDNA分子よりなる発現ベクター。
  19. 請求項18に記載の発現ベクターで形質転換される細胞株。
  20. 請求項19に記載の形質転換細胞株を培養し、培地から可溶性LDLリセプターを回収することよりなる、組換え可溶性LDLリセプターの産生方法。
  21. 随時薬剤として許容される担体を一緒に含む、可溶性LDLリセプター、そのムテインおよび融合蛋白、それらの塩、官能性誘導体および活性画分よりなる薬剤組成物。
  22. 別の抗ウイルス剤をさらに含む、請求項21に記載の薬剤組成物。
  23. 別の抗ウイルス剤はインターフェロンである、請求項22に記載の薬剤組成物。
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