JP2006136144A - 無結線式モータ、その駆動制御装置及び無結線式モータの駆動制御装置を使用した電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 Y結線又はΔ結線モータで流すことができない高調波成分を積極的に利用して大きな出力を得ることができる無結線モータ、その駆動制御装置及び無結線モータを使用した電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】 永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有する無結線式モータ12と、各電機子巻線に個別に且つ当該電機子巻線の両端に夫々接続されて駆動信号を供給する一対のインバータ回路34a,34bと、該一対のインバータ回路を駆動制御する駆動制御回路15とを備え、前記各電機子巻線の逆起電力波形及び電流波形の少なくとも一方を疑似矩形波状としている。
【選択図】 図7
【解決手段】 永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有する無結線式モータ12と、各電機子巻線に個別に且つ当該電機子巻線の両端に夫々接続されて駆動信号を供給する一対のインバータ回路34a,34bと、該一対のインバータ回路を駆動制御する駆動制御回路15とを備え、前記各電機子巻線の逆起電力波形及び電流波形の少なくとも一方を疑似矩形波状としている。
【選択図】 図7
Description
本発明は、ステータの電機子巻線を結線することなく独立させた無結線式モータ、その駆動制御装置及び無結線式モータの駆動制御装置を使用した電動パワーステアリング装置に関する。
電動パワーステアリング装置に使用するモータとしては、限られた電源電圧で大きな操舵補助トルクを発生できることが望まれている。
このため、従来、ベクトル制御を用いてモータの各相の相電流指令値を算出すると共に、各相のモータ相電流を検出し、相電流指令値及びモータ相電流に基づいてモータの相電流を制御し、さらにモータ電流として矩形波電流若しくは疑似矩形波電流又はモータ誘起電圧として矩形波電圧若しくは疑似矩形波電圧を用いるようにしたモータ駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−201487号公報(第2頁、第8〜9頁、図1)
このため、従来、ベクトル制御を用いてモータの各相の相電流指令値を算出すると共に、各相のモータ相電流を検出し、相電流指令値及びモータ相電流に基づいてモータの相電流を制御し、さらにモータ電流として矩形波電流若しくは疑似矩形波電流又はモータ誘起電圧として矩形波電圧若しくは疑似矩形波電圧を用いるようにしたモータ駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、モータの駆動制御をモータ電流として矩形波電流若しくは疑似矩形波電流又はモータ誘起電圧として矩形波電圧若しくは疑似矩形波電圧を用いて制御するようしているので、正弦波電流又は正弦波電圧と比較すると、電流ピーク値又は電圧ピーク値が同じであれば矩形波電流又は矩形波電圧の方が実効値が大きくなるため、大きな出力(パワー)を得ることができるものであるが、モータの励磁コイルが互いに結線されているので、例えば3相モータでは、3次高調波を励磁コイルに流すことはできず、高出力を得るには限界があるという未解決の課題がある。
すなわち、励磁コイルがY結線又はΔ結線された3相モータでは、各相に電流を流すためには各励磁コイルの各端子に電圧を印加する必要があり、U、V、Wの各相に1次成分(正弦波)の電流を流すための各端子電圧は以下のようになる。
Iu=I0sinθ Vu=V0sinθ
Iv=I0sin(θ−2π/3) Vv=V0sin(θ−2π/3)
Iw=I0sin(θ+2π/3) Vw=V0sin(θ+2π/3)
Iu=I0sinθ Vu=V0sinθ
Iv=I0sin(θ−2π/3) Vv=V0sin(θ−2π/3)
Iw=I0sin(θ+2π/3) Vw=V0sin(θ+2π/3)
そして、3次高調波を重畳した電流を印加するための各端子電圧は以下のようになる。
Vu=V0sinθ+V1sin3θ
Vv=V0sin(θ−2π/3)+V1sin{3(θ−2π/3)}
=V0sin(θ−2π/3)+V1sin(3θ−2π)
=V0sin(θ−2π/3)+V1sin3θ
Vw=V0sin(θ+2π/3)+V1sin{3(θ+2π/3)}
=V0sin(θ+2π/3)+V1sin(3θ+2π)
=V0sin(θ+2π/3)+V1sin3θ
Vu=V0sinθ+V1sin3θ
Vv=V0sin(θ−2π/3)+V1sin{3(θ−2π/3)}
=V0sin(θ−2π/3)+V1sin(3θ−2π)
=V0sin(θ−2π/3)+V1sin3θ
Vw=V0sin(θ+2π/3)+V1sin{3(θ+2π/3)}
=V0sin(θ+2π/3)+V1sin(3θ+2π)
=V0sin(θ+2π/3)+V1sin3θ
このように、各端子にV1sin3θという同じ電圧を印加することになるため、U、V、Wの各相に3次高調波電流を流すことができない。同様に5相モータでは各相に5次高調波電流を流すことはできない。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、モータとして無結線モータを使用することにより、Y結線又はΔ結線モータで流すことができない高調波成分を積極的に利用して大きな出力を得ることができる無結線モータ、その駆動制御装置及び無結線モータを使用した電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、モータとして無結線モータを使用することにより、Y結線又はΔ結線モータで流すことができない高調波成分を積極的に利用して大きな出力を得ることができる無結線モータ、その駆動制御装置及び無結線モータを使用した電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る無結線モータは、永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有し、各電機子巻線に個別に、当該各電機子巻線の逆起電圧波形及び駆動電流波形の少なくとも一方を疑似矩形波としたことを特徴としている。
また、請求項2に係る無結線式モータは、請求項1に係る発明において、前記疑似矩形波は、正弦波にその高調波成分を重畳して形成されていることを特徴としている。
また、請求項2に係る無結線式モータは、請求項1に係る発明において、前記疑似矩形波は、正弦波にその高調波成分を重畳して形成されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る無結線式モータは、請求項1に係る発明において、前記疑似矩形波は、正弦波信号に、その3次、5次、7次の高調波成分の何れか1つ又は複数を重畳して形成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る無結線式モータは、永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有し、前記各電機子巻線にN次高調波電流を通電可能に構成したことを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る無結線式モータは、永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有し、前記各電機子巻線にN次高調波電流を通電可能に構成したことを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る無結線式モータの駆動制御装置は、永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有する無結線式モータと、各電機子巻線に個別に且つ当該電機子巻線の両端に夫々接続され当該各電機子巻線の電流波形を疑似矩形波状とする一対のインバータ回路と、該一対のインバータ回路を駆動制御する駆動制御回路とを備えていることを特徴としている。
また、請求項6に係る無結線式モータの駆動制御装置は、前記請求項5に係る発明において、前記駆動制御回路は、前記無結線式モータの各電機子巻線の高調波を含む疑似矩形波状の起電圧波形に基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項7に係る無結線式モータの駆動制御装置は、請求項5に係る発明において、前記駆動制御回路は、前記無結線式モータの各電機子巻線に対する相電流指令値に高調波成分を重畳して補正した補正電流指令値に基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項7に係る無結線式モータの駆動制御装置は、請求項5に係る発明において、前記駆動制御回路は、前記無結線式モータの各電機子巻線に対する相電流指令値に高調波成分を重畳して補正した補正電流指令値に基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項8に係る電動パワーステアリング装置は、請求項5に係る発明において、前記無結線式モータの電気角を検出する電気角検出回路を有し、前記駆動制御回路は、前記電気角検出手段で検出した電気角に基づいて高調波成分を重畳した前記無結線式モータの電機子巻線に対する相電流目標値を個別に出力する相電流目標値算出部と、該相電流目標値算出部で算出した各相電流目標値と制御電流指令値とを乗算して前記無結線式モータの電機子巻線に対する相電流指令値を算出する相電流指令値算出部とを有する電流指令値演算部と、前記各電機子巻線の相電流を検出するモータ電流検出回路と、前記相電流指令値及び前記相電流に基づいて各電機子巻線に対する駆動電流を制御する電流制御部とを備えていることを特徴としている。
なおさらに、請求項9に係る無結線モータの駆動制御装置は、請求項8に係る発明において、前記相電流目標値算出部は、前記無結線式モータの電機子巻線における高調波成分を重畳した誘起電圧波形と同一波形の高調波成分を重畳した相電流指令値波形と前記無結線式モータの電気角との関係を記憶した記憶テーブルを有し、前記電気角検出回路で検出した電気角をもとに前記記憶テーブルを参照して相電流目標値を算出するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項10に係る電動パワーステアリング装置は、前記請求項5乃至9の何れか1項に記載の無結線式モータの駆動装置を使用したことを特徴としている。
さらに、請求項11に係る電動パワーステアリング装置は、操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、永久磁石を配設したロータ及び該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータを有し、操舵系に対して操舵補助力を発生する無結線式モータと、各電機子巻線に個別に且つ当該電機子結線の両端に夫々接続された当該各電機子巻線の電流波形を疑似矩形波状とする一対のインバータ回路と、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルクに基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を出力する駆動制御回路とを備えていることを特徴としている。
さらに、請求項11に係る電動パワーステアリング装置は、操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、永久磁石を配設したロータ及び該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータを有し、操舵系に対して操舵補助力を発生する無結線式モータと、各電機子巻線に個別に且つ当該電機子結線の両端に夫々接続された当該各電機子巻線の電流波形を疑似矩形波状とする一対のインバータ回路と、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルクに基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を出力する駆動制御回路とを備えていることを特徴としている。
さらにまた、請求項12に係る電動パワーステアリング装置は、請求項11に係る発明において、前記駆動制御回路は、前記無結線式モータの各電機子巻線の高調波を含む逆起電圧波形に対応する各電機子巻線の相電流目標値と前記操舵トルクに基づくトルク指令値とに基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項13に係る電動パワーステアリング装置は、前記請求項11に係る発明において、前記駆動制御回路は、前記操舵トルク検出値に基づいて前記各電機子巻線に対する相電流指令値を算出する相電流指令値演算部と、前記各電機子巻線の相電流を検出するモータ電流検出回路と、前記相電流指令値及び前記相電流に基づいて各電機子巻線に対する駆動電流を制御する電流制御部とを備えていることを特徴としている。
また、請求項14に係る電動パワーステアリング装置は、前記請求項13に係る発明において、前記無結線式モータの電気角を検出する電気角検出回路を有し、前記相電流指令値演算部は、前記電気角に基づいて前記無結線式モータの各電機子巻線に対応する高調波を含む逆起電圧に対応する相電流目標値を算出する相電流目標値算出部と、前記相電流目標値と前記操舵トルク検出値とに基づいて各電機子巻線に対する相電流指令値を算出する相電流指令値算出部とを備えていることを特徴としている。
さらに、請求項15に係る電動パワーステアリング装置は、請求項11に係る発明において、前記駆動制御回路は、前記操舵トルク検出値に基づいて算出した前記無結線式モータの各電機子巻線に対する相電流指令値と、各電機子巻線の電流検出値との偏差に基づいて算出される各電機子巻線に対する指令電圧に、高調波成分を重畳して前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項16に係る電動パワーステアリング装置は、請求項15に係る発明において、前記電流制御部は、前記相電流指令値と前記相電流との偏差に基づいて相電圧指令値を算出する電流制御器と、該電流制御器で算出した相電圧指令値に高調波成分を重畳して補正相電圧指令値を算出する高調波重畳部と、該高調波重畳部の補正相電圧指令値に基づいて前記一対のインバータに供給するパルス幅変調信号でなる制御信号を発生させるパルス幅変調部とで構成されていることを特徴としている。
本発明によれば、永久磁石を配設したロータと、複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有し、各電機子巻線に逆起電圧波形及び駆動電流波形の少なくとも一方を疑似矩形波としたので、結線式モータでは実現不可能であったN相の電機子巻線に正弦波にN次高調波電流を重畳した疑似矩形波の駆動電流を通電可能として、積極的に実効値を向上させて大きな出力(パワー)を得ることができるという効果が得られる。また、逆起電圧波形及び駆動電流波形の双方に高調波を含む疑似矩形波を適用することにより、より実効値を大きくすることができ、より大きな出力を得ることができる。
また、無結線式モータを駆動する駆動制御装置を、駆動制御回路で、電機子巻線の駆動電流波形を高調波を含む疑似矩形波状態とするように電機子巻線に接続されたインバータ回路を駆動するように構成したので、無結線式モータを実効値を向上させて大きな出力で駆動することができる。
さらに、無結線モータを駆動する駆動制御装置を、高調波を含む疑似矩形波形状の誘起電圧波形と同一の波形のN相電流指令値基準指令値を算出し、これに基づいて電流フィードバック制御を行うことにより、ブラシレスDCモータを小型で、トルクリップルが小さく、出力が大きい無結線式モータの駆動制御装置を提供することができるという効果が得られる。
さらに、無結線モータを駆動する駆動制御装置を、高調波を含む疑似矩形波形状の誘起電圧波形と同一の波形のN相電流指令値基準指令値を算出し、これに基づいて電流フィードバック制御を行うことにより、ブラシレスDCモータを小型で、トルクリップルが小さく、出力が大きい無結線式モータの駆動制御装置を提供することができるという効果が得られる。
さらにまた、無結線式モータを使用して電動パワーステアリング装置を構成することにより、ステアリングホイールの急操舵時にも滑らかに追従する操舵補助力を発生してステアリングホイールの操作を違和感なく、且つ騒音の少ない電動パワーステアリング装置を提供することができるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が入力軸2aと出力軸2bとを有するステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
図1は、本発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が入力軸2aと出力軸2bとを有するステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとこのピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ10に連結された操舵補助力を発生する電動機としての無結線式モータ12とを備えている。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ10に連結された操舵補助力を発生する電動機としての無結線式モータ12とを備えている。
操舵トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位をポテンショメータで検出するように構成されている。この操舵トルクセンサ3は、図2に示すように、入力される操舵トルクが零のときには、所定の中立電圧V0 となり、この状態から右切りすると、操舵トルクの増加に応じて中立電圧V0 より増加する電圧となり、操舵トルクが零の状態から左切りすると操舵トルクの増加に応じて中立電圧V0 より減少する電圧となるトルク検出値Tを出力するように構成されている。
また、無結線式モータ12は、図3に示すように、ハウジング21に対して一対の軸受22,23を介して回転軸24が回転可能に支持されている。一対の軸受22,23間で回転軸24の周囲には、円板状の複数枚の電磁鋼板25,26を積層して形成されるロータコア27が装着され、このロータコア27の外周面には、ロータマグネット28が固定されている。ロータマグネット28は、界磁発生用永久磁石としてセグメントマグネットが使用されている。また、図4に示すように、ロータマグネット18の外側には、一端に形成されたフランジ部29aをロータマグネット28の端面と当接させ、ロータマグネット28の飛散及びずれを防止する円筒状のマグネットカバー29が設けられている。そして、これら回転軸24、ロータコア27、ロータマグネット28及びマグネットカバー29はロータ20を構成している。
ハウジング21内には、ロータ20と半径方向に対向するようにしてステータ31が配設されており、ハウジング21の内周面に固定された環状のステータコア32と、ステータコア32に巻回された電機子巻線としての励磁コイル33とを有する。この励磁コイル33は、図5に示すように、例えば三相の励磁コイルLu、Lv及びLwで構成され、これら励磁コイルLu〜Lwは、互いに結線されることなく独立して巻装されて無結線型(開放型)のブラシレスモータ配線とされ、各励磁コイルLu、Lv及びLwの両端間に一対のインバータ回路34a及び34bが接続されて、個別に駆動電流Iu、Iv及びIwが供給される。
インバータ回路34aは、図5に示すように、励磁コイルLu、Lv及びLwに対応して直列に接続されたNチャンネルMOSFETで構成されるスイッチング素子Qua,Qub、Qva,Qvb及びQwa,Qwbを並列に接続された構成を有し、スイッチング素子Qua,Qubの接続点、Qva,Qvbの接続点及びQwa,Qwbの接続点が夫々励磁巻線Lu、Lv及びLwの一方の端子tua、tva及びtwaに接続されている。
また、インバータ回路34bも、インバータ回路34aと同様に、励磁コイルLu、Lv及びLwに対応して直列に接続されたNチャンネルMOSFETで構成されるスイッチング素子Qua′,Qub′、Qva′,Qvb′及びQwa′,Qwb′を並列に接続された構成を有し、スイッチング素子Qua′,Qub′の接続点、Qva′,Qvb′の接続点及びQwa′,Qwb′の接続点が夫々励磁巻線Lu、Lv及びLwの他方の端子tub、tvb及びtwbに接続されている。
そして、インバータ回路34aの上アームを構成するスイッチング素子Qua、Qva及びQwaのゲートに増幅回路Aua、Ava及びAwaを介して後述する駆動制御回路15から出力されるPWM(パルス幅変調)信号Pua、Pva及びPwaが供給され、下アームを構成するスイッチング素子Qub、Qvb及びQwbのゲートに増幅回路Aub、Avb及びAwbを介して後述する駆動制御回路15から出力されるPWM(パルス幅変調)信号Pub、Pvb及びPwbが供給されている。
同様に、インバータ回路34bの上アームを構成するスイッチング素子Qua′、Qva′及びQwa′のゲートに増幅回路Aua′、Ava′及びAwa′を介して後述する駆動制御回路15から出力されるPWM(パルス幅変調)信号Pub、Pvb及びPwbが供給され、下アームを構成するスイッチング素子Qub′、Qvb′及びQwb′のゲートに増幅回路Aub′、Avb′及びAwb′を介して後述する駆動制御回路15から出力されるPWM(パルス幅変調)信号Pua、Pva及びPwaが供給されている。
結局、駆動制御回路15から出力される励磁コイルの相数Nにおける2倍の本数のPWM信号Pua〜Pwa及びPub〜Pwbによって一対のインバータ回路34a及び34bを駆動し、インバータ回路34aとインバータ回路34bとが逆位相駆動される。
ここで、各励磁コイルLu、Lv及びLwの等価回路は、図6に示すように、励磁コイルLuについては、端子tua及びtub間に抵抗R0′、インダクタンスL0′、逆起電圧eu(=ω×Kt′×sin(ωt))が直列に配列されたものとなり、端子tuaの端子電圧VuaはVua=V0×sin(ωt+α)、端子tubの端子電圧vubはVub=V0×sin(ωt−π+α)であり、端子間電圧VuabはVuab=2×V0×sin(ωt+α)となり、相電流IuはIu=I0′×sin(ωt)となる。
ここで、各励磁コイルLu、Lv及びLwの等価回路は、図6に示すように、励磁コイルLuについては、端子tua及びtub間に抵抗R0′、インダクタンスL0′、逆起電圧eu(=ω×Kt′×sin(ωt))が直列に配列されたものとなり、端子tuaの端子電圧VuaはVua=V0×sin(ωt+α)、端子tubの端子電圧vubはVub=V0×sin(ωt−π+α)であり、端子間電圧VuabはVuab=2×V0×sin(ωt+α)となり、相電流IuはIu=I0′×sin(ωt)となる。
同様に、励磁コイルLvについては、端子tva及びtvb間に抵抗R0′、インダクタンスL0′、逆起電圧eu(=ω×Kt′×sin(ωt−2π/3))が直列に配列されたものとなり、端子tvaの端子電圧VvaはVva=V0×sin(ωt−2π/3+α)、端子tubの端子電圧VvbはVvb=V0×sin(ωt−2π/3−π+α)であり、端子間電圧VvabはVvab=2×V0×sin(ωt−2π/3+α)となり、相電流IvはIv=I0′×sin(ωt−2π/3)となる。
同様に、励磁コイルLwについては、端子twa及びtwb間に抵抗R0′、インダクタンスL0′、逆起電圧eu(=ω×Kt′×sin(ωt−4π/3))が直列に配列されたものとなり、端子twaの端子電圧VwaはVwa=V0×sin(ωt−4π/3+α)、端子tubの端子電圧VwbはVwb=V0×sin(ωt−4π/3−π+α)であり、端子間電圧VwabはVwab=2×V0×sin(ωt−4π/3+α)となり、相電流IwはIw=I0′×sin(ωt−4π/3)となる。
また、モータ定数としては従来のY結線式モータのモータ定数、従来のΔ結線式モータのモータ定数、要求性能を満たすような独自のモータ定数の何れかに設計されて、無結線式の3相ブラシレスモータが構成されている。ここで、無結線式モータ12の誘起電圧波形は、後述するように正弦波にその3次高調波、5次高調波を重畳した疑似矩形波となるように、ロータ20の磁石の着磁、ステータ31の巻線の巻き方が設定されている。
さらに、一方の軸受22の近傍には、ロータ20の位相検知部35が配置されている。この位相検知部35は、回転軸24に取付けられた環状の位相検出用永久磁石36と、この永久磁石36と対向し、ハウジング21側に固定された位相検出素子37とから構成されている。この位相検知部35は、モータ12が機械的な整流子(ブラシとコンミテータ)を含まないブラシレスモータであるため、ロータ20の位相を検知して、駆動回路15の制御により位相に応じて励磁コイル33に通電するためのものである。また、位相検知部としては、レゾルバやエンコーダなどを用いることもできる。
そして、操舵トルクセンサ3から出力されるトルク検出値Tは、図1に示すように駆動制御回路15に入力される。この駆動制御回路15には、トルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速検出値Vと、モータ電流検出部51u〜51wで検出した無結線式モータ12の各励磁コイルLu〜Lwに流れる駆動電流Iu〜Iwと、位相検知部34で検出したロータ20の位相検知信号が入力される。
この駆動制御回路15は、図7に示すように、無結線式モータ12の各電機子巻線に対する相電流指令値Iu*、Iv*及びIw*を演算する相電流指令値演算部40と、この相電流指令値演算部40からの各相電流指令値Iu*、Iv*及びIw*と電流検出回路51u、51v及び51wからのモータ相電流Iu、Iv及びIwとに基づいて電流フィードバック制御を行う電流制御部50と、この電流制御部50から出力される各相指令電圧Vu、Vv及びVwに基づいてインバータ34a,34bを駆動するPWM信号を出力するPWM制御部60とを備えている。
相電流指令値演算部40は、位相検知部35で検出されたロータ20の位相を電気角θに変換する電気角変換部41と、この電気角変換部41から出力される電気角θに基づいて無結線式モータ12の各電機子巻線Lu、Lv及びLwに対する相電流目標値Iut、Ivt及びIwtを算出する相電流目標値算出部42u、42v及び42wと、操舵トルクセンサ3で検出された操舵トルクTと車速センサ18で検出された車速検出値Vとに基づいて目標補助操舵トルクTtを算出する目標補助操舵トルク算出部43と、相電流目標値算出部42u、42v及び42wから出力される相電流目標値Iut、Ivt及びIwtに目標補助操舵トルク算出部43で算出された目標補助操舵トルクTtを乗算する乗算器44u、44v及び44wとを備えている。
ここで、相電流目標値算出部42uは、図8(a)に図示する正弦波に3次、5次高調波を重畳して角を丸くした台形波状の疑似矩形波に形成された無結線式モータ12の電機子巻線Lu〜Lwの誘起電圧波形と同一波形となる図8(b)に示す相電流目標値を電気角θと共に記憶した相電流目標値算出用記憶テーブルを有し、電気角変換部41から入力される電気角θをもとに記憶テーブルを参照して該当する相電流目標値Iutを算出し、これを乗算器44uに出力する。
同様に、相電流目標値算出部42v及び42wの夫々は、相電流目標値算出部42uの記憶テーブルの波形に対して位相が120°及び240°ずれた相電流目標値の波形を電気角θと共に記憶した記憶テーブルを有し、電気角変換部41から入力される電気角θをもとに記憶テーブルを参照して該当する相電流目標値Ivt及びIwtを算出し、これらを夫々乗算器44v及び44wに出力する。
また、目標補助操舵トルク算出部43は、図7中に示したように、横軸に操舵トルクTを、縦軸に目標補助操舵トルクTtを夫々とり、車速検出値Vをパラメータとした特性線図を記憶した目標補助操舵トルク算出用記憶テーブルを有し、操舵トルクセンサ3から入力される操舵トルクTと車速センサ1から入力される車速検出値Vとをもとに目標補助操舵トルク算出用記憶テーブルを参照して目標補助操舵トルクTtを算出し、算出した目標補助操舵トルクTtを乗算器44u〜44wに供給する。
ここで、正弦波に3次高調波及び5次高調波を重畳した相電流目標値Iut〜Iwtを算出するためには、入力を目標補助操舵トルクTtと、無結線式モータ12の電気角θとし、これらに基づいて内部演算で出力の式(出力=トルク×回転速度=電流×電圧)を満たすように各相電流目標値Iut〜Iwtを演算する。
ところで、無結線式モータの性能を最大限に引き出すには、正弦波に3次高調波を重畳する必要があるが、従来のベクトル制御では、3相モータで3n次成分の電流を流すことができないように、従来の2相/3相変換を有するベクトル制御では3n相次成分の電流指令値を算出することができない。
ところで、無結線式モータの性能を最大限に引き出すには、正弦波に3次高調波を重畳する必要があるが、従来のベクトル制御では、3相モータで3n次成分の電流を流すことができないように、従来の2相/3相変換を有するベクトル制御では3n相次成分の電流指令値を算出することができない。
そこで、モータの出力はトルク×回転速度=電流×電圧であるので、逆起電圧波形と電流波形との正弦波に3次高調波及び5次高調波を重畳した疑似矩形波は以下のように表される。
Eu=E1*sin(θ)+E3*sin(3*θ)+E5*sin(5*θ)
Ev=E1*sin(θ-2/3*PI)+E3*sin(3*(θ-2/3*PI))+E5*sin(5*(θ-2/3*PI))
Ew=E1*sin(θ+2/3*PI)+E3*sin(3*(θ+2/3*PI))+E5*sin(5*(θ+2/3*PI))
Iu=I1*sin(θ)+I3*sin(3*θ)+I5*sin(5*θ)
Iv=I1*sin(θ-2/3*PI)+I3*sin(3*(θ-2/3*PI))+I5*sin(5*(θ-2/3*PI))
Iw=I1*sin(θ+2/3*PI)+I3*sin(3*(θ+2/3*PI))+I5*sin(5*(θ+2/3*PI))
一方、モータの出力は、
Eu=E1*sin(θ)+E3*sin(3*θ)+E5*sin(5*θ)
Ev=E1*sin(θ-2/3*PI)+E3*sin(3*(θ-2/3*PI))+E5*sin(5*(θ-2/3*PI))
Ew=E1*sin(θ+2/3*PI)+E3*sin(3*(θ+2/3*PI))+E5*sin(5*(θ+2/3*PI))
Iu=I1*sin(θ)+I3*sin(3*θ)+I5*sin(5*θ)
Iv=I1*sin(θ-2/3*PI)+I3*sin(3*(θ-2/3*PI))+I5*sin(5*(θ-2/3*PI))
Iw=I1*sin(θ+2/3*PI)+I3*sin(3*(θ+2/3*PI))+I5*sin(5*(θ+2/3*PI))
一方、モータの出力は、
となる。出力が一定値であればトルクリップルがない。つまり、cos(6θ)を含む項が“0”になればトルクリップルのない一定出力が得られる。
逆起電圧波形はモータを設計する時点で決定するため、逆起電圧の1,3,5次成分E1,E3,E5は既知である。
逆起電圧波形はモータを設計する時点で決定するため、逆起電圧の1,3,5次成分E1,E3,E5は既知である。
したがって、cos(6θ)を含む項を“0”にするように電流の1,3,5次成分I1,I3,I5を決めれば、トルクリップルのない相電流目標値を算出することができる。
相電流目標値の1,3,5次成分I1,I3,I5の振幅は目標操舵トルクTtによって決まるが、その比I1:I3:I5は逆起電圧の1,3,5次成分E1,E3,E5とcos(6θ)を含む項を“0”にする条件より、予め求めることができる。
相電流目標値の1,3,5次成分I1,I3,I5の振幅は目標操舵トルクTtによって決まるが、その比I1:I3:I5は逆起電圧の1,3,5次成分E1,E3,E5とcos(6θ)を含む項を“0”にする条件より、予め求めることができる。
具体例として、図8は逆起電圧波形(a)に対してトルクリップルのない電流波形(b)を予め求めた例である。
より具体的に説明すると、cos(6θ)を含む項を“0”にする条件、E1・E3+E3・I3+E5・I1=0を満たす相電流目標値は一意に求まらない。
そこで、電流波形と逆起電圧波形とを同一形状にするという条件で拘束する。
すなわち、I1=aE1,I3=aE3,I5=aE5として、
aE1・E5+aE3・E3+aE5・E1=0
E32=−2E1・E5
より具体的に説明すると、cos(6θ)を含む項を“0”にする条件、E1・E3+E3・I3+E5・I1=0を満たす相電流目標値は一意に求まらない。
そこで、電流波形と逆起電圧波形とを同一形状にするという条件で拘束する。
すなわち、I1=aE1,I3=aE3,I5=aE5として、
aE1・E5+aE3・E3+aE5・E1=0
E32=−2E1・E5
上記関係式を満足するようにモータの逆起電圧波形を設計し、これと同じ電流波形を出力すれば、トルクリップルのない相電流目標値を得ることができる。
逆起電圧E1〜E5はモータ回転速度ωに比例するので、モータの出力の式は以下のように表すことができる。
T=K1・I1+K3・I3+K5・I5
ここで、K1〜K5は上述の手順で予め求められる定数である。相電流指令値の振幅は目標操舵トルクTtによって決まる。
したがって、各相の相電流指令値は、目標操舵トルクTtと電気角θとを入力として、図7に示す電流指令値演算部40で算出することができる。
逆起電圧E1〜E5はモータ回転速度ωに比例するので、モータの出力の式は以下のように表すことができる。
T=K1・I1+K3・I3+K5・I5
ここで、K1〜K5は上述の手順で予め求められる定数である。相電流指令値の振幅は目標操舵トルクTtによって決まる。
したがって、各相の相電流指令値は、目標操舵トルクTtと電気角θとを入力として、図7に示す電流指令値演算部40で算出することができる。
また、電流制御部50は、ベクトル制御相指令値算出部40から供給される電流指令値Iu*,Iv*,Iw*から電流検出回路51u、51v、51wで検出した各励磁コイルLu、Lv、Lwに流れるモータ相電流Iu、Iv、Iwを減算して各相電流誤差ΔIu、ΔIv、ΔIwを求める減算器52u、52v及び50wと、求めた各相電流誤差ΔIu、ΔIv、ΔIwに対して比例積分制御を行って指令電圧Vu、Vv、Vwを算出するPI制御部53とを備えている。
さらに、PWM制御部60は、上述したPI制御部53から出力される指令電圧Vu、Vv、Vwが入力され、これら指令電圧Vu、Vv、Vwに応じたデューティ比のPWM信号Pua、Pva、Pwb及びそのオン・オフを反転したPWM信号Pub、Pvb、Pwbを形成し、これらをインバータ回路34a及び34bに供給することにより、これらインバータ回路34a及び34bによって無結線モータ12の各励磁コイルLu、Lv及びLwに個別に各相指令電流を供給し、無結線式モータ12を回転駆動する。このため、無結線式モータ12で、操舵トルクセンサ3で検出した操舵トルク検出値Tに応じた必要とする操舵補助力を発生させる。
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、車両が停車していると共に、無結線式モータ12も停止しており、ステアリングホイール1が操舵されておらず、操舵トルクセンサ3で検出される操舵トルクTが“0”であるものとすると、この状態では、操舵トルクTが“0”であるので、目標補助操舵トルク算出部43で算出される目標補助操舵トルクTtも零となり、これが乗算器44u〜44wに供給される。
今、車両が停車していると共に、無結線式モータ12も停止しており、ステアリングホイール1が操舵されておらず、操舵トルクセンサ3で検出される操舵トルクTが“0”であるものとすると、この状態では、操舵トルクTが“0”であるので、目標補助操舵トルク算出部43で算出される目標補助操舵トルクTtも零となり、これが乗算器44u〜44wに供給される。
このとき、無結線式モータ12の位相検知部35で検出されるロータ20の位相が電気角変換部41に供給されて、このときの電気角θが例えば0°であるものとすると、相電流目標値算出部42uから出力される相電流目標値Iutは“0”、相電流目標値算出部42vから出力される相電流目標値Ivtは相電流目標値Iutに対して位相が120°遅れているので−Imaxとなり、相電流目標値算出部42wから出力される相電流目標値Iwtは相電流目標値Iutに対して位相が120°進んでいるので+Imaxとなっている。
そして、これら相電流目標値Iut、Ivt及びIwtが乗算器44u、44v及び44wに供給されるが、これら乗算器44u、44v及び44wには、上述したように、“0”の目標補助操舵トルクTtが入力されているので、これら乗算器44u、44v及び44wから出力される相電流指令値Iu*、Iv*及びIw*は“0”となり、これらが電流制御部50に供給される。
この電流制御部50には、電流センサ51u、51v及び51wで検出された無結線式モータ12の相電流検出値Iu、Iv及びIwが入力されているが、無結線式モータ12が停止しているので、相電流検出値Iu、Iv及びIwも“0”となっており、これらが電流制御部50の減算器52u、52v及び52wに供給される。
このため、減算器52u、52v及び52wから出力される電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwも“0”となるので、PI制御部53から出力される指令電圧Vu、Vv及びVwも“0”となって、PWM制御部60から出力されるPWM信号のデューティ比が50%となり、無結線式モータ12への駆動電流の供給が停止されて、無結線式モータ12が停止状態を維持する。
このため、減算器52u、52v及び52wから出力される電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwも“0”となるので、PI制御部53から出力される指令電圧Vu、Vv及びVwも“0”となって、PWM制御部60から出力されるPWM信号のデューティ比が50%となり、無結線式モータ12への駆動電流の供給が停止されて、無結線式モータ12が停止状態を維持する。
この車両の停車状態での無結線式モータ12の停止状態から運転者がステアリングホイール1を例えば右操舵する所謂据え切りを行うと、これに応じて操舵トルクセンサ3から運転者の操舵トルクに対応する操舵トルクTが出力され、これが目標補助操舵トルク算出部43に供給されるので、この目標操舵トルク算出部43から比較的大きな目標補助操舵トルクTtが乗算器44u、44v及び44wに出力される。
このとき、相電流目標値算出部42u、42v及び42wから無結線式モータ12の電気角θに応じた正弦波に3次高調波及び5次高調波を重畳した角が丸みを帯びた台形波状態の疑似矩形波となる互いに120°ずつ位相が異なる相電流目標値Iut、Ivt及びIwtが乗算器44u、44v及び44wに出力される。
このため、乗算器44u、44v及び44wで、相電流目標値Iut、Ivt及びIwtに目標補助操舵トルクTtを乗算して、振幅が目標補助操舵トルクTtとなる相電流指令値Iu*、Iv*及びIw*が算出され、これが電流制御部50の減算器52u、52v及び52wに供給される。
このため、乗算器44u、44v及び44wで、相電流目標値Iut、Ivt及びIwtに目標補助操舵トルクTtを乗算して、振幅が目標補助操舵トルクTtとなる相電流指令値Iu*、Iv*及びIw*が算出され、これが電流制御部50の減算器52u、52v及び52wに供給される。
このとき、無結線式モータ12が停止しているので、電流センサ51u、51v及び51wから出力される相電流Iu、Iv及びIwは“0”を維持しているので、減算器52u、52v及び52wから相電流指令値Iu*、Iv*及びIw*が電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwとしてPI制御部53に出力され、このPI制御部53で比例・積分演算が行われて指令電圧Vu、Vv及びVwが算出され、これがPWM制御部60に出力される。
このため、PWM制御部60から正弦波にその3次及び5次高調波を重畳した疑似矩形波状の誘起電圧波形と等しい正弦波にその3次及び5次高調波を重畳した疑似相電流波形となる相電流Iu、Iv及びIwが各電機子巻線Lu、Lv及びLwに供給される。このため、無結線式モータ12で操舵トルクTに基づく目標補助操舵トルクTtに応じた補助操舵力を発生し、この補助操舵力を減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2に伝達することができ、運転者が軽い操舵を行うことができる。
このとき、モータが従来のY結線式モータやΔ結線式モータのように励磁コイルの一端又は両端を互いに接続したものではなく、3相ブラシレスモータを形成する各励磁コイルLu〜Lwが互いに結線されることなく独立して巻装された無結線式モータ12であるので、各励磁コイルLu〜Lwで個別に通電制御を行うことが可能であることから、3次及び5次高調波を含む疑似矩形波電流を、何ら制限を受けることなく通電することができる。したがって、モータ電流波形は、図8(b)に示すように、逆起電圧波形と同様の正弦波に対して幅広で角を落として丸みのある疑似矩形波とすることができる。
このため、無結線式モータ12の出力は、出力=電流×電圧=トルク×回転速度であるので、正弦波の逆起電圧及び駆動電流を使用する場合に比較して実効値を格段に向上させることができ、大きな出力を得ることができると共に、トルクリップルのない一定出力を得ることができる。
これに対して、前述した従来例では、逆起電圧波形は、図8(c)に示すように、本実施形態と略同様の疑似矩形波とすることができるが、モータの励磁コイルに3次高調波成分を流すことができないので、電流波形は図8(d)に示すように、幅狭の疑似矩形波となり、面積が小さくなって実効値が正弦波よりは良いが本実施形態に比較すると低下することになり、出力もその分減少することになる。
これに対して、前述した従来例では、逆起電圧波形は、図8(c)に示すように、本実施形態と略同様の疑似矩形波とすることができるが、モータの励磁コイルに3次高調波成分を流すことができないので、電流波形は図8(d)に示すように、幅狭の疑似矩形波となり、面積が小さくなって実効値が正弦波よりは良いが本実施形態に比較すると低下することになり、出力もその分減少することになる。
このように、第1の実施形態では、無結線モータ20の励磁コイルLu〜Lwの逆起電圧波形及び駆動電流波形を共に3次高調波を含む疑似矩形波とすることができ、実効値を向上させて、大きな出力を得ることができる。すなわち、3次高調波は、疑似矩形波をフーリエ級数展開した際の係数が1次成分の次に大きいので、正弦波にその3次高調波を重畳することにより、実効値を上げるための効率が最もよくなり、大きな出力を得ることができる。
また、無結線式モータ12を使用して、各励磁コイルの両端に夫々インバータ回路34a及び34bを接続し、これらインバータ回路34a及び34bを逆相駆動することにより、前述したように各励磁コイルの端子間電圧Vuab、Vvab及びVwabは、下記(1)式、(2)式及び(3)式で表される。
Vun=2×V0×sin(ωt+α) …………(1)
Vvn=2×V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(2)
Vwn=2×V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(3)
Vun=2×V0×sin(ωt+α) …………(1)
Vvn=2×V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(2)
Vwn=2×V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(3)
一方、同一構成のY結線モータの場合は等価回路が図9に示すように、各励磁コイルLu、Lv及びLwの一端が互いに接続された中性点の電圧VnがVn=0(V)であるので、各励磁コイルLu、Lv、Lwの端子間電圧Vun、Vvn及びVwnは下記(4)式、(5)式及び(6)式で表される。
Vun=V0×sin(ωt+α) …………(4)
Vvn=V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(5)
Vwn=V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(6)
Vun=V0×sin(ωt+α) …………(4)
Vvn=V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(5)
Vwn=V0×sin(ωt−2π/3+α) …………(6)
このため、励磁コイルLuを例にとると、本発明による無結線式モータ12の端子電圧Vua、Vub、端子間電圧Vuabは図10(a)に示すようになり、従来のY結線式モータの場合の端子電圧Vu、端子電圧Vv、端子間電圧Vuv及び中性点電圧Vnは図10(b)に示すようになる。一方、本発明による無結線式モータ12の端子間電圧Vuab、Vvab、Vwabは図11(a)に示すようになり、従来のY結線式モータの場合のコイル両端電圧Vun、Vvn、Vwnは図11(b)に示すようになる。
これら図10及び図11から明らかなように、励磁コイルの両端に印加できる電圧振幅を比較した場合、無結線式モータ12はY結線式モータを2倍の電源電圧で駆動した場合と同等の効果が得られる。したがって、バッテリー電圧Vbを同一とした場合、無結線式モータでは励磁コイルLu〜Lwの駆動電圧を向上できるので、ステアリングホイール1を急操舵した場合に、電圧不足を生じることなく、最適な操舵補助力を発生させて円滑な操舵を行うことができる。
同様に、従来のΔ結線式モータの場合は、等価回路が図12に示すようになり、端子間電圧Vuv、Vvw及びVwuはY結線式モータの√3倍となるが、端子間電流が1/√3となり、本発明による無結線式モータ12の励磁コイルLu〜Lwのコイル電流が図13(a)に示すように規定電流を有効に使用できるのに対し、Δ結線式モータのコイル電流Iuv、Ivw、Iwu及び相電流Iu、Iv、Iwは図13(b)に示すようになり、各相電流Iu、Iv、Iwが規定電流の1/√3となり、結局無結線式モータ12ではΔ結線式モータを√3倍のモータ電流で通電したことと同等の効果が得られる。この結果、無結線式モータは励磁コイルのコイル電流を向上できるので、高トルク化を図ることができる。
したがって、Y結線式モータとΔ結線式モータとを等価変換すると下記表1に示す関係式で表すことができる。
したがって、Y結線式モータとΔ結線式モータとを等価変換すると下記表1に示す関係式で表すことができる。
この関係式を用いて、等価交換されたY結線式モータ及びΔ結線式モータを、無結線式モータとした場合のモータ出力と電流特性は、Y結線式モータのモータ定数で、無結線式モータに変更した場合のモータ出力特性は、図14に示すように、破線図示のY結線式モータの回転速度に対して無結線式モータの回転速度は実線図示のように最大電流で規制された最大トルクからトルクが減少するに応じて回転速度の増加分が多くなることになり、回転速度を向上させることができる。
また、Δ結線モータのモータ定数で、無結線式モータに変更した場合のモータ出力特性は、図15に示すように、破線図示のΔ結線式モータのトルク特性に対して、無結線式モータでは回転数が最大回転数から減少するに応じてトルクの増加分が多くなることになり、この分トルクを向上させることができる。
さらに、Y結線式モータとΔ結線式モータの中間モータ定数で、無結線式モータに変更した場合のモータ出力特性は図16に示すように、破線図示の従来モータの回転速度特性に対して、無結線式モータの場合には実線図示のように回転速度及びトルクの双方を向上させることができる。
さらに、Y結線式モータとΔ結線式モータの中間モータ定数で、無結線式モータに変更した場合のモータ出力特性は図16に示すように、破線図示の従来モータの回転速度特性に対して、無結線式モータの場合には実線図示のように回転速度及びトルクの双方を向上させることができる。
このため、電動パワーステアリング装置に無結線式モータ12を適用した場合に、必要とする特性に合わせてモータ定数を設定することにより、必要とする任意のモータ出力特性を得ることができる。
また、第1の実施形態のように、PWM制御部60から出力されるPWM信号Pua、〜Pwaがインバータ回路34aの上アーム部及びインバータ回路34bの下アーム部に夫々供給され、残りのPWM信号Pub〜Pwbがインバータ回路34aの下アーム部及インバータ回路34bの上アーム部に夫々供給することにより、1つの駆動制御回路15で2つのインバータ回路34a及び34bを互いに逆極性で駆動することができ、全体の回路構成を簡易小型化することができると共に、駆動制御回路15を構成するマイクロコンピュータ、デジタル信号処理装置、デジタルIC等を簡略化することができる。
また、第1の実施形態のように、PWM制御部60から出力されるPWM信号Pua、〜Pwaがインバータ回路34aの上アーム部及びインバータ回路34bの下アーム部に夫々供給され、残りのPWM信号Pub〜Pwbがインバータ回路34aの下アーム部及インバータ回路34bの上アーム部に夫々供給することにより、1つの駆動制御回路15で2つのインバータ回路34a及び34bを互いに逆極性で駆動することができ、全体の回路構成を簡易小型化することができると共に、駆動制御回路15を構成するマイクロコンピュータ、デジタル信号処理装置、デジタルIC等を簡略化することができる。
以上説明したように、本発明のモータ及びその駆動制御装置は、モータの高速回転時にもモータの端子電圧が飽和せず、トルクリップルを最小にする制御が可能となる。このため、本発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合、急速ハンドル操舵が滑らかに実行可能となり、運転手にハンドルの振動などの違和感を与えないという優れた効果がある。
なお、上記第1の実施形態においては、無結線式モータの誘起電圧波形と駆動電流波形とを同一の疑似矩形波状とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、誘起電圧波形又は駆動電流波形を位相及び形状は変化させず、振幅のみを変化させるようにしても上記第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記第1の実施形態においては、疑似矩形波を正弦波に3次及び5次高調波を重畳して形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、7次以上の高次高調波を重畳するようにしても良く、3次、5次、7次……の高調波の1つ又は複数を組み合わせて正弦波に重畳するようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態においては、疑似矩形波を正弦波に3次及び5次高調波を重畳して形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、7次以上の高次高調波を重畳するようにしても良く、3次、5次、7次……の高調波の1つ又は複数を組み合わせて正弦波に重畳するようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態を図17及び図18について説明する。
この第2の実施形態は、駆動制御回路15に疑似ベクトル制御を適用して制御するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図17に示すように、駆動制御回路15において、ベクトル制御相指令値算出回路70で、ベクトル制御の優れた特性を利用してベクトル制御d、q成分の電流指令値を決定した後、この電流指令値を各励磁コイルLu〜Lwに対応した各相電流指令値に変換すると共に、電流制御部80でd、q制御ではなく、全て相制御で閉じるような構成としている。よって、電流指令値を算出する段階ではベクトル制御の理論を利用しているので、本制御方式を疑似ベクトル制御(Pseudo Vector Control 以下、「PVC制御」と称す)と呼ぶ。
この第2の実施形態は、駆動制御回路15に疑似ベクトル制御を適用して制御するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図17に示すように、駆動制御回路15において、ベクトル制御相指令値算出回路70で、ベクトル制御の優れた特性を利用してベクトル制御d、q成分の電流指令値を決定した後、この電流指令値を各励磁コイルLu〜Lwに対応した各相電流指令値に変換すると共に、電流制御部80でd、q制御ではなく、全て相制御で閉じるような構成としている。よって、電流指令値を算出する段階ではベクトル制御の理論を利用しているので、本制御方式を疑似ベクトル制御(Pseudo Vector Control 以下、「PVC制御」と称す)と呼ぶ。
ベクトル制御相指令値算出回路70は、各励磁コイルLu〜Lwに対する各相逆起電圧算出部としての換算部41と、d軸及びq軸電圧算出部としての3相/2相変換部72と、q軸の電流指令値Iq*を算出するq軸指令電流算出部73と、各相電流指令値算出部としての2相/3相変換部44と、d軸の電流指令値Id*を算出するd軸指令電流算出部75と、操舵トルク検出値Tと車速検出値Vとから補助操舵するために必要な操舵トルク指令値T*を算出するトルク指令値演算部76と、この操舵トルク指令値T*に基づいて無結線式モータ12へのベース角速度ωbを換算する換算部77とを備えている。
このベクトル制御相電流指令値算出部70では、位相検知部35で検出されたロータ20の位相を電気角変換部78で電気角θeに変換すると共に、この電気角θeを微分回路79で微分して電気角速度ωeを算出し、これら電気角θe及び電気角速度ωeでなるロータ位置検出信号と、前述した第1の実施形態における目標補助操舵トルク算出部43に対応するトルク指令値演算部76で演算された操舵トルク指令値T*とが入力され、ベクトル制御による相指令値信号を算出する。
すなわち、ロータ20の電気角θe及び電気角速度ωeを換算部71に入力し、換算部41に格納されている換算表に基づいて各相の逆起電圧eu、ev、ewが算出される。逆起電圧eu、ev、ewは、正弦波に3次、5次高調波を重畳した図8(a)に示すように角を丸くした台形波状の疑似矩形波であり、各N(N=3,5)次高調波の周波数はモータ電気角速度ωeにNを乗じたものである。
モータの電気角速度はモータの実速度をω、磁極数をPとすると、P/2×ωで表される。次に、逆起電圧eu、ev、ewはd−q電圧算出部としての3相/2相変換部42で下記(7)式及び(8)式に基づいて、d軸及びq成分の電圧ed及びeqに変換される。
モータの電気角速度はモータの実速度をω、磁極数をPとすると、P/2×ωで表される。次に、逆起電圧eu、ev、ewはd−q電圧算出部としての3相/2相変換部42で下記(7)式及び(8)式に基づいて、d軸及びq成分の電圧ed及びeqに変換される。
一方、d軸の電流指令値Id*の算出は、換算部77からのベース角速度ωb、微分回路78からの電気角速度ωe、トルク指令値演算部76からの操舵トルク指令値T*を入力としてd軸指令電流算出部75で下記(9)式に従って算出される。但し、Ktはトルク係数、ωbはモータのベース角速度で、ベース角速度ωbは操舵トルク検出値Tを入力として換算部77で求めている。
Id*=−|T/Kt|・sin(acos(ωb/ωm) …………(9)
Id*=−|T/Kt|・sin(acos(ωb/ωm) …………(9)
上記(9)式のacos(ωb/ωm)の項に監視、モータの回転速度が高速でない場合、つまり無結線式モータ12の機械角速度ωmがベース角速度ωbより低速次の場合は、ωm<ωbとなるのでacos(ωb/ωm)=0となり、よってId*=0となる。しかし、高速回転時、つまり機械角速度ωmがベース角速度ωbより高速になると、電流指令値Id*の値が現れて、弱め開示制御を始める。上記(9)式に表されるように、電流指令値Id*は無結線式モータ12の回転速度によって変化するため、高速度回転時の制御をつなぎ目なく円滑に行うことが可能であるという優れた効果がある。
また、別の効果としてモータ端子電圧の飽和の問題に関しても効果がある。モータの相電圧Vは、一般的に、
V=E+R・I+L(di/dt) …………(10)
で表される。ここで、Eは逆起電圧、Rは固定抵抗、Lはインダクタンスであり、逆起電圧Eはモータが高速回転になるほど大きくなり、バッテリー電圧などの電源電圧は固定であるから、モータの制御に利用できる電圧範囲が狭くなる。この電圧飽和に達する角速度がベース角速度ωbで、電圧飽和が生じるとPWM制御のデューティ比が100%に達し、それ以上は電流指令値に追従できなくなり、その結果トルクリップルが大きくなる。
V=E+R・I+L(di/dt) …………(10)
で表される。ここで、Eは逆起電圧、Rは固定抵抗、Lはインダクタンスであり、逆起電圧Eはモータが高速回転になるほど大きくなり、バッテリー電圧などの電源電圧は固定であるから、モータの制御に利用できる電圧範囲が狭くなる。この電圧飽和に達する角速度がベース角速度ωbで、電圧飽和が生じるとPWM制御のデューティ比が100%に達し、それ以上は電流指令値に追従できなくなり、その結果トルクリップルが大きくなる。
しかし、上記(9)式で表される電流指令値Id*は極性が負であり、上記(10)式のL(di/dt)に関する電流指令値Id*の誘起電圧成分は、逆起電圧Eと極性が反対となる。よって、高速回転になるほど値が大きくなる逆起電圧Eを、電流指令値Id*によって誘起される電圧で減じる効果を示す。その結果、無結線式モータ12が高速回転になっても、電流指令値Id*の効果によってモータを制御できる電圧範囲が広くなる。つまり、電流指令値Id*の制御による弱め界磁制御によってモータの制御電圧は飽和せず、制御できる範囲が広くなり、モータの高速回転時にもトルクリップルが大きくなることを防止できる効果がある。
上述の電流指令値Id*の算出に関する回路系のブロック構成が図18である。図18において、トルク指令値演算部76から入力される操舵トルク指令値T*は換算部77及びトルク係数部75dに入力され、モータ12の電気角速度ωeは機械角算出部45aに入力される。機械角算出回路75aはモータの電気角速度ωeからモータの機械角速度ωm(=ωe/P)を算出し、acos算出部75bに入力する。また、換算部77は、操舵トルク指令値T*をベース角速度ωbに換算してacos算出部75bに入力し、トルク係数部75dは操舵トルク指令値T*を係数lqb(=T*/Kt)に換算して絶対値部75eに入力する。acos算出部75bは入力された機械角速度ωm及びベース角速度ωbを基に、進角Φ=acos(ωb/ωm)を算出してsin算出部75cに入力する。sin算出部75cは、入力された進角ΦからsinΦを求めて−1倍する乗算器75fに入力し、乗算器75fはsin算出部75cからの進角Φと、絶対値部75eからの絶対値|Iqb|とを乗算して−1倍して電流指令値Id*を求める。下記(11)式によって電流指令値Id*が求められ、これがd軸指令電流算出部75の出力となる。
Id*=−|Iqb|×sin(acos(ωb/ωm))…………(11)
上記(11)式に従って算出された電流指令値Id*は、q軸指令電流算出部73及び2相/3相変換部74に入力される。
Id*=−|Iqb|×sin(acos(ωb/ωm))…………(11)
上記(11)式に従って算出された電流指令値Id*は、q軸指令電流算出部73及び2相/3相変換部74に入力される。
一方、q軸の電流指令値Iq*はq軸指令電流算出部73において、2相電圧ed及びeq、電気角速度ωe(=ωm×P)、d軸の電流指令値Id*を基に下記(12)及び(13)式で示すモータ出力方程式に基づいて算出される。即ち、モータ出力方程式は
T×ωm=3/2(ed×Id+eq×Iq)…………(12)
である。したがって、この(12)式にId=Id*,Iq=Iq*を代入すると
Iq*=2/3(T×ωm−ed×Id*)/eq………(13)
となる。また、電流指令値Id*には前記(11)式で算出した値を代入すれば良い。
T×ωm=3/2(ed×Id+eq×Iq)…………(12)
である。したがって、この(12)式にId=Id*,Iq=Iq*を代入すると
Iq*=2/3(T×ωm−ed×Id*)/eq………(13)
となる。また、電流指令値Id*には前記(11)式で算出した値を代入すれば良い。
上記(13)式で示されるように、電流指令値Iq*は、モータの出力は電力に相当するというモータの出力方程式から導かれているため、電流指令値Iq*を容易に演算することができる。また、必要な操舵トルク指令値Tを得るための電流指令値Id*とバランスのとれた最適な電流指令値Iq*を演算することができる。したがって、モータの高速回転時にもモータの端子電圧が飽和せず、トルクリップルを最小にする制御が可能となる。
本発明では上述したように電流指令値Id*及びIq*を入力として2相/3相変換部74で電流指令値Iu*,Iv*,Iw*を算出し、これらが電流制御部80に供給される。
この電流制御部80では、ベクトル制御相指令値算出部70から供給される電流指令値Iu*,Iv*,Iw*から電流検出回路51u、51v、51wで検出した各励磁コイルLu、Lv、Lwに流れるモータ相電流Iu、Iv、Iwを減算して各相電流誤差ΔIu、ΔIv、ΔIwを求める減算器82u、82v及び82wと、求めた各相電流誤差ΔIu、ΔIv、ΔIwに対して比例積分制御を行って指令電圧Vu、Vv、Vwを算出するPI制御部83とを備えている。
この電流制御部80では、ベクトル制御相指令値算出部70から供給される電流指令値Iu*,Iv*,Iw*から電流検出回路51u、51v、51wで検出した各励磁コイルLu、Lv、Lwに流れるモータ相電流Iu、Iv、Iwを減算して各相電流誤差ΔIu、ΔIv、ΔIwを求める減算器82u、82v及び82wと、求めた各相電流誤差ΔIu、ΔIv、ΔIwに対して比例積分制御を行って指令電圧Vu、Vv、Vwを算出するPI制御部83とを備えている。
そして、PI制御部83から出力される指令電圧Vu、Vv、Vwが第1の実施形態と同様にPWM制御部60に供給され、このPWM制御部60で指令電圧Vu、Vv、Vwに応じたデューティ比のPWM信号Pua、Pva、Pwb及びそのオン・オフを反転したPWM信号Pub、Pvb、Pwbを形成し、これらをインバータ回路34a及び34bに供給することにより、これらインバータ回路34a及び34bによって無結線モータ12の各励磁コイルLu、Lv及びLwに個別に各相指令電流を供給し、無結線式モータ12を回転駆動する。このため、無結線式モータ12で、操舵トルクセンサ3で検出した操舵トルク検出値Tに応じた必要とする操舵補助力を発生させる。
このとき、ベクトル制御相指令値算出部70の2相/3相変換部74から出力される各相電流指令値Iu*、Iv*、Iw*は、前述したように、換算部71で算出される無結線式モータ12の逆起電圧eu、ev、ewbは、正弦波に3次及び5次高調波を重畳した図8(a)に示すように角を丸くした台形状の疑似矩形波であるが、これに基づいて形成される相電流指令値Iu*、Iv*、Iw*は2相/3相変換部74を有するので、3次高調波成分の電流指令値を算出することができず、正弦波に3次高調波成分を除く5次高調波を重畳した図8(d)に示す疑似矩形波となる。
このため、前述した第1の実施形態と比較して、無結線式モータ12の励磁コイルLu、Lv及びLwに通電する駆動電流波形の幅が狭くなって、実効値が若干低下するが、十分な実効値を確保して、無結線式モータ12を駆動することができ、前述した第1の実施形態のように、無結線式モータの電機子巻線をY結線又はΔ結線に対応させることにより、従来のY結線式モータの2倍の電源電圧で回転駆動して、急操舵した場合に、電圧不足を生じることなく最適な操舵補助力を発生させて円滑な操舵を行うことを可能としたり、又は従来のΔ結線式モータに比較して√3倍のモータ電流を通電して高トルクかを図ったり、Y結線式モータとΔ結線式モータの中間のモータ定数で、無結線式モータに変更することにより、回転速度及びトルクの双方を向上させたりすることができる。
このため、電動パワーステアリング装置に無結線式モータ12を適用した場合に、必要とする特性に合わせてモータ定数を設定することにより、必要とする任意のモータ出力特性を得ることができる。
また、第2の実施形態では、従来技術のd、q制御によるフィードバック制御と異なり、フィードバック制御が各相制御のみで実行されている点で全く異なる。この結果、従来技術では、u相で発生した非線形要素が、従来のd、q制御によるフィードバック制御を実行する過程で、v,w各相まで分散して正しく補正制御できなくなる問題があったが、本実施形態ではu相の非線形要素はu相のみでフィードバック制御され、v相、w相には分散されないので、正しく補正制御できる。
また、第2の実施形態では、従来技術のd、q制御によるフィードバック制御と異なり、フィードバック制御が各相制御のみで実行されている点で全く異なる。この結果、従来技術では、u相で発生した非線形要素が、従来のd、q制御によるフィードバック制御を実行する過程で、v,w各相まで分散して正しく補正制御できなくなる問題があったが、本実施形態ではu相の非線形要素はu相のみでフィードバック制御され、v相、w相には分散されないので、正しく補正制御できる。
このようなPVC制御を使用することにより、制御に含まれる非線形要素を各相に分離した状態でモータを制御でき、その結果トルクリップルの少ない、騒音が小さいモータ制御が可能になる。このため、電動パワーステアリング装置に適用した場合には、駐車時や緊急操舵においても騒音が小さく、スムーズで振動の少ないハンドル操作が可能になる。
次に、本発明の第3の実施形態を図19について説明する。
この第3の実施形態では、駆動制御回路15の構成を全てベクトル制御で行うようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図19に示すように、前述した第2の実施形態におけるベクトル制御相電流指令値算出部70の2相/3相変換部74が省略されていると共に、電流検出器51u、51v及び51wで検出したモータ電流Iu、Iv、Iwを入力し、これらをq軸及びd軸の検出電流Idq及びIddに変換する3相/2相変換部90が設けられ、さらに電流制御部80が以下のように変更されていることを除いては図17と同様の構成を有し、図17との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
この第3の実施形態では、駆動制御回路15の構成を全てベクトル制御で行うようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図19に示すように、前述した第2の実施形態におけるベクトル制御相電流指令値算出部70の2相/3相変換部74が省略されていると共に、電流検出器51u、51v及び51wで検出したモータ電流Iu、Iv、Iwを入力し、これらをq軸及びd軸の検出電流Idq及びIddに変換する3相/2相変換部90が設けられ、さらに電流制御部80が以下のように変更されていることを除いては図17と同様の構成を有し、図17との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
電流制御部80は、ベクトル制御相指令値算出部70のq軸指令電流算出部73から出力されるq軸指令電流Iq*及びd軸指令電流算出部75から出力されるd軸指令電流Id*が一方の入力側に、3相/2相変換部90から出力される検出電流Idq及びIddが他方の入力側に供給されて、両者の電流誤差ΔIq及びΔIdを算出する減算器82q及び82dと、これら減算器82q及び82dから出力される電流誤差ΔIq及びΔIdに対して比例積分制御を行って指令電圧Vq及びVdを算出するPI制御部84と、このPI制御部84から出力される指令電圧Vq及びVdを三相指令電圧Vu、Vv及びVwに変換する2相/3相変換部85とを備えている。そして、2相/3相変換部85から出力される3相指令電圧Vu、Vv及びVwがPWM制御部60に供給される。
この第3の実施形態によると、ベクトル制御相指令値算出部70では、前述した第2の実施形態と同様に、換算部71で算出される正弦波に3次、5次及び7次高調波を重畳した逆起電圧eu、ev及びewを算出し、これを3相/2相変換部72で指令電圧ed及びeqに変換してからq軸指令電流算出部73で操舵トルク指令値T*に応じたq軸指令電流Iq*を算出すると共に、d軸指令値電流算出部75で操舵トルク指令値T*に応じたd軸指令電流Id*を算出する。
そして、これらq軸指令電流Iq*及びd軸指令電流Id*を電流制御部80に出力する。この電流制御部80では、ベクトル制御相電流指令値算出部70から入力されるq軸指令電流Iq*及びd軸指令電流Id*と、電流検出器51u、51v及び51wで検出した電流検出値Iu、Iv及びIwを3相/2相変換部90で変換した検出電流Idq及びIddとが減算器82q及び82uに供給されるので、これら減算器82q及び82uから電流誤差ΔIq及びΔIdが出力される。これら電流偏差ΔIq及びΔIdがPI制御部84で比例積分演算されて指令電圧Vq及びVdが算出され、これら指令電流Vq及びVdが2相/3相変換部85で三相電圧Vu、Vv及びVwに変化され、これらがPWM制御部60に供給されるので、このPWM制御部60で指令電圧Vu、Vv、Vwに応じたデューティ比のPWM信号Pua、Pva、Pwb及びそのオン・オフを反転したPWM信号Pub、Pvb、Pwbを形成し、これらをインバータ回路34a及び34bに供給することにより、これらインバータ回路34a及び34bによって無結線モータ12の各励磁コイルLu、Lv及びLwに個別に各相指令電流を供給し、無結線式モータ12を回転駆動する。このため、無結線式モータ12で、操舵トルクセンサ3で検出した操舵トルク検出値Tに応じた必要とする操舵補助力を発生させる。
このため、上記第3の実施形態でも、前述した第2の実施形態と同様に、無結線式モータ12の励磁コイルLu〜Lwの逆起電圧及び駆動電流の波形を、正弦波に3次高調波を除く5次,7次の高調波を重畳した疑似矩形波とすることができ、無結線式モータ12の実効値を向上させて大きな出力を得ることができる。
次に、本発明の第4の実施形態を図19について説明する。
この第4の実施形態は、ベクトル制御相電流算出部70を省略して、通常の電動パワーステアリング装置の駆動制御回路を適用し、電流制御部80で高調波を重畳するようにしたものである。
すなわち、第4の実施形態では、図20に示すように、駆動制御回路15が電流指令値演算部100と、電流制御部110と、PWM制御部60とで構成されている。
この第4の実施形態は、ベクトル制御相電流算出部70を省略して、通常の電動パワーステアリング装置の駆動制御回路を適用し、電流制御部80で高調波を重畳するようにしたものである。
すなわち、第4の実施形態では、図20に示すように、駆動制御回路15が電流指令値演算部100と、電流制御部110と、PWM制御部60とで構成されている。
電流指令値演算部100は、操舵トルクセンサ3で検出した操舵トルク検出値T及び車速センサ18で検出した車速検出値Vが入力され、これらに基づいて車速検出値Vをパラメータとして操舵トルク検出値T及び操舵補助指令値T*との関係を示す特性線図で構成される操舵補助指令値算出テーブルを参照して操舵補助指令値T*を算出する操舵補助指令値演算部101と、各種補償値を算出する補償部102と、操舵補助指令値演算部101から出力される操舵補助指令値T*と補償部102から出力される補償値Cを加算してトルク指令値T*′を算出する加算器103と、この加算器103から出力されるトルク指令値T*′をq軸電流指令値Iq*に変換するq軸指令電流算出部104とで構成されている。
ここで、補償部102は、車両のヨーの収斂性を改善するために、ステアリングホイール1が振れ回る動作に対してブレーキをかける制御を行う収斂性制御部105、モータ慣性を加減速させるトルクを操舵トルク検出値Tから排除し、慣性感の操舵感とする慣性補償部106、モータ角速度ωeと操舵トルク検出値Tに基づいてセルフアライニングトルク(SAT)を推定して路面情報及び外乱の影響を排除する制御を行うSAT制御部107とを少なくとも有し、収斂性制御部105の制御値、慣性補償部106の補償値及びSAT制御部107の制御値を夫々加算器108及び109で加算されて補償値として加算器103に供給する。
また、電流制御部110は、“0”に設定されたd軸指令電流Id*と電流検出器51u〜51wで検出した電流検出値Iu〜Iwをd軸及びq軸の電流検出値に変換する3相/2相変換部90からのd軸検出電流Iddとが入力されて両者の電流誤差ΔIdを算出する減算器111dと、q軸電流指令値算出部104で算出されたq軸指令電流Iq*と3相/2相変換部90からのq軸検出電流Idqが入力されて両者の電流誤差ΔIqを算出する減算器111qと、これら減算器111d及び111qから出力される電流誤差ΔId及びΔIqに対して比例積分演算を行って指令電圧Vd及びVqを算出するPI制御部112と、このPI制御部112から出力される指令電圧Vd及びVqを三相指令電圧Vu、Vv及びVwに変換する2相/3相変換部113と、PI制御部112から出力される指令電圧Vd及びVqに基づいて5次高調波成分V5を演算する5次高調波成分演算部114と、2相/3相変換部113から出力される三相指令電圧Vu、Vv及びVwに5次高調波成分演算部54で演算した5次高調波成分V5を加算する加算器115u、115及び115wとを備えている。そして、加算器115u、115v及び115wから出力される5次高調波成分V5を重畳した三相指令電圧Vu′、Vv′及びVw′がPWM制御部60に供給される。
ここで、5次高調波成分演算部114では、入力される指令電圧Vd及びVqに基づいた下記(14)式の演算を行って5次高調波成分V5を算出する。
V5=√(2/3)√{Vd2+(−Vq)2}sin5(θ+φ) ……(14)
ここで、Vq≠0のときφ=tan-1{Vd/(−Vq)}であり、Vq=0のときφ=1π/2である。
V5=√(2/3)√{Vd2+(−Vq)2}sin5(θ+φ) ……(14)
ここで、Vq≠0のときφ=tan-1{Vd/(−Vq)}であり、Vq=0のときφ=1π/2である。
この第4の実施形態によると、電流制御部110で算出する三相指令電圧Vu、Vv及びVwに正弦波の5次高調波成分を重畳して三相指令電圧Vu′、Vv′及びVw′を算出し、これをPWM制御部60に供給するので、無結線式モータ12の各励磁コイルLu〜Lwに前述した図8(d)に示す5次高調波を重畳した駆動電流を通電することができ、実行値を向上させて、大きな出力を得ることができる。
なお、上記第4の実施形態では、電流制御部110で5次高調波成分を重畳する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電流指令値演算部100側で5次高調波成分を重畳させるようにしてもよい。
また、上記第4の実施形態においては、5次高調波成分演算部114で5次高調波成分V5を演算する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、7次、9次等の高調波成分も演算して、これらを重畳することもできる。
また、上記第4の実施形態においては、5次高調波成分演算部114で5次高調波成分V5を演算する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、7次、9次等の高調波成分も演算して、これらを重畳することもできる。
さらに、上記各実施形態においては、駆動制御回路15とインバータ回路34a及び34bを図5に示すように接続した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、インバータ回路34a及び34bに対して個別に駆動制御回路15を設けて、両インバータ回路34a及び34bを個別に逆位相で制御するようにしてもよい。
さらにまた、上記各実施形態においては、インバータ回路34a及び34bを夫々6つのスイッチング素子を有する構成とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図21に示すように、各励磁コイルLu、Lv及びLw毎に4つのスイッチング素子Q1〜Q4を設けたHブリッジ回路Hu、Hv及びHwを構成し、各Hブリッジ回路Hu、Hv及びHwのスイッチング素子Q1〜Q4をPWM制御部60で駆動制御することにより、前述した第1〜第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
さらにまた、上記各実施形態においては、インバータ回路34a及び34bを夫々6つのスイッチング素子を有する構成とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図21に示すように、各励磁コイルLu、Lv及びLw毎に4つのスイッチング素子Q1〜Q4を設けたHブリッジ回路Hu、Hv及びHwを構成し、各Hブリッジ回路Hu、Hv及びHwのスイッチング素子Q1〜Q4をPWM制御部60で駆動制御することにより、前述した第1〜第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なおさらに、上記各実施形態においては、本発明を無結線式の3相ブラシレスモータに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数N(Nは3以上の整数)相のブラシレスモータ又は他のモータに適用することもできる。
また、上記各実施形態においては、本発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の駆動モータを有する任意の装置に本発明を適用することができる。
また、上記各実施形態においては、本発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の駆動モータを有する任意の装置に本発明を適用することができる。
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…操舵トルクセンサ、8…ステアリングギヤ、10…操舵補助機構、12…無結線式モータ、15…駆動制御回路、16…バッテリー、17…イグニッションキー、18…車速センサ、20…ロータ、21…ハウジング、27…ロータコア、28…ロータマグネット、31…ステータ、33…励磁コイル、Lu,Lv,Lw…三相励磁コイル、34a,34b…インバータ回路、35…位相検知部、40…相電流指令値演算部、41…電気各変換部、42u〜42w…相電流目標値算出部、43…目標操舵補助トルク算出部、44u〜44w…乗算器、50…電流制御部、51u〜51w…電流検出器、52u〜52w…減算器、53…PI制御部、60…PWM制御部、70…ベクトル制御相電流指令値算出部、71…換算部、72…3相/2相変換部、73…q軸指令電流算出部、74…2相/3相変換部、75…d軸指令電流算出部、76…トルク指令値演算部、78…電気角変換部、79…微分回路、80…電流制御部、82u〜82w…減算器、83…PI制御部、90…3相/2変換部、100…電流指令値演算部、101…操舵補助指令値演算部、102…補償部、103…加算器、104…電流指令値演算部、110…電流制御部、111u〜111w…加算器、112…PI制御部、113…2相/3相変換部、114…5次高調波成分演算部、115u〜115w…加算器、H1〜H4…Hブリッジ回路
Claims (16)
- 永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有し、各電機子巻線に個別に、当該各電機子巻線の逆起電圧波形及び駆動電流波形の少なくとも一方を疑似矩形波としたことを特徴とする無結線式モータ。
- 前記疑似矩形波は、正弦波にその高調波成分を重畳して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無結線式モータ。
- 前記疑似矩形波は、正弦波信号に、その3次、5次、7次の高調波成分の何れか1つ又は複数を重畳して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無結線式モータ。
- 永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有し、前記各電機子巻線にN次高調波電流を通電可能に構成したことを特徴とする無結線式モータ。
- 永久磁石を配設したロータと、該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータとを有する無結線式モータと、各電機子巻線に個別に且つ当該電機子巻線の両端に夫々接続され当該各電機子巻線の電流波形を疑似矩形波状とする駆動信号を供給する一対のインバータ回路と、該一対のインバータ回路を駆動制御する駆動制御回路とを備えていることを特徴とする無結線式モータの駆動制御装置。
- 前記駆動制御回路は、前記無結線式モータの各電機子巻線の高調波を含む疑似矩形波状の起電圧波形に基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の無結線式モータの駆動制御装置。
- 前記駆動制御回路は、前記無結線式モータの各電機子巻線に対する相電流指令値に高調波成分を重畳して補正した補正電流指令値に基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の無結線式モータの駆動制御装置。
- 前記無結線式モータの電気角を検出する電気角検出回路を有し、前記駆動制御回路は、前記電気角検出手段で検出した電気角に基づいて高調波成分を重畳した前記無結線式モータの電機子巻線に対する相電流目標値を個別に出力する相電流目標値算出部と、該相電流目標値算出部で算出した各相電流目標値と制御電流指令値とを乗算して前記無結線式モータの電機子巻線に対する相電流指令値を算出する相電流指令値算出部とを有する電流指令値演算部と、前記各電機子巻線の相電流を検出するモータ電流検出回路と、前記相電流指令値及び前記相電流に基づいて各電機子巻線に対する駆動電流を制御する電流制御部とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の無結線式モータの駆動制御装置。
- 前記相電流目標値算出部は、前記無結線式モータの電機子巻線における高調波成分を重畳した誘起電圧波形と同一波形の高調波成分を重畳した相電流指令値波形と前記無結線式モータの電気角との関係を記憶した記憶テーブルを有し、前記電気角検出回路で検出した電気角をもとに前記記憶テーブルを参照して相電流目標値を算出するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の無結線式モータの駆動制御装置。
- 前記請求項5乃至9の何れか1項に記載の無結線式モータの駆動装置を使用したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
- 操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、永久磁石を配設したロータ及び該ロータと対向して複数N相の電機子巻線を互いに独立して配設したステータを有し、操舵系に対して操舵補助力を発生する無結線式モータと、各電機子巻線に個別に且つ当該電機子結線の両端に夫々接続された当該各電機子巻線の電流波形を疑似矩形波状とする一対のインバータ回路と、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルクに基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を出力する駆動制御回路とを備えていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
- 前記駆動制御回路は、前記無結線式モータの各電機子巻線の高調波を含む逆起電圧波形に対応する各電機子巻線の相電流目標値と前記操舵トルクに基づくトルク指令値とに基づいて前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記駆動制御回路は、前記操舵トルク検出値に基づいて前記各電機子巻線に対する相電流指令値を算出する相電流指令値演算部と、前記各電機子巻線の相電流を検出するモータ電流検出回路と、前記相電流指令値及び前記相電流に基づいて各電機子巻線に対する駆動電流を制御する電流制御部とを備えていることを特徴とする請求項11に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記無結線式モータの電気角を検出する電気角検出回路を有し、前記相電流指令値演算部は、前記電気角に基づいて前記無結線式モータの各電機子巻線に対応する高調波を含む逆起電圧に対応する相電流目標値を算出する相電流目標値算出部と、前記相電流目標値と前記操舵トルク検出値とに基づいて各電機子巻線に対する相電流指令値を算出する相電流指令値算出部とを備えていることを特徴とする請求項13に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記駆動制御回路は、前記操舵トルク検出値に基づいて算出した前記無結線式モータの各電機子巻線に対する相電流指令値と、各電機子巻線の電流検出値との偏差に基づいて算出される各電機子巻線に対する指令電圧に、高調波成分を重畳して前記一対のインバータに対する制御信号を形成するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流制御部は、前記相電流指令値と前記相電流との偏差に基づいて相電圧指令値を算出する電流制御器と、該電流制御器で算出した相電圧指令値に高調波成分を重畳して補正相電圧指令値を算出する高調波重畳部と、該高調波重畳部の補正相電圧指令値に基づいて前記一対のインバータに供給するパルス幅変調信号でなる制御信号を発生させるパルス幅変調部とで構成されていることを特徴とする請求項13に記載の電動パワーステアリング装置。
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JP2010057278A (ja) * | 2008-08-28 | 2010-03-11 | Mitsuba Corp | ブラシレスモータ |
JP2012135100A (ja) * | 2010-12-21 | 2012-07-12 | Hitachi Ltd | 同期モータ制御装置および制御方法 |
US9748887B2 (en) | 2015-01-14 | 2017-08-29 | Hitachi, Ltd. | Permanent magnet synchronous motor and winding-switching motor driving device, and refrigeration air conditioner and electric vehicle using same |
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-
2004
- 2004-11-08 JP JP2004323320A patent/JP2006136144A/ja active Pending
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