JP2006133967A - 車両用表示装置及び車両用表示プログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】運転者に煩わしさを感じさせずに、注意対象物が複数存在する場合にも有効に作用し、また、注意対象物が存在しない場合には車両乗員に悪影響を与えることなく運転注意情報を通知する。
【解決手段】注意喚起情報制御装置5が、運転状況別事故統計情報データベース3から車両の現在地が属するエリア情報に対応する事故統計情報読み込み、ナビゲーション装置2から入力される現在走行中の道路種別、前方の道路種別、並びに、車速と方向指示器作動状態から現在の運転状況を判断し、判断された運転状況に対応する注意喚起映像を選択し、運転者の閾下知覚の範囲内の表示時間で注意喚起映像を表示する。
【選択図】図3

Description

本発明は、注意喚起情報を提示することにより、運転者の安全意識を高める車両用表示装置及び車両用表示プログラムに関する。
従来、車両が走行中である場合に、車両が所定の地点に近づいたときに、所定の地点における過去の交通事故データに基づく運転注意情報を運転者に画像または音声で通知するナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。そして、このようなナビゲーション装置によれば、交通事故が起こりやすい地点において、運転注意情報を車両乗員に通知することにより、運転者の安全意識を高めることができる。
特開2002−195840号公報
しかしながら、上記従来のナビゲーション装置は、所定の地点における運転注意情報が単一の注意対象物に限定されているために、運転者は、通知された注意対象物(例えば、二輪車)にのみ注意を払うようになり、他の対象物(例えば、歩行者)に対しては、注意が払われにくくなるという問題がある。また、実際に注意対象物が存在しなかった場合には、車両乗員が注意対象物を探索する可能性もあり、他の対象物に対する注意は、ますます払われにくくなる。さらに、運転注意情報が通知される地点、すなわち、事故多発地点は、都市部において多く存在する場合があり、事故多発地点が多く存在する道路を走行した場合には、運転注意情報の通知が頻繁に行われることになり、運転者にとって、非常に煩わしいといった問題もある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転注意情報を通知する場合に、運転者に煩わしさを感じさせずに、注意対象物が複数存在する場合にも有効に作用し、また、注意対象物が存在しない場合には車両乗員に悪影響を与えることなく運転注意情報を通知する車両用表示装置及び車両用表示プログラムを提供することにある。
上述の課題を解決するために、本発明に係る車両用表示装置及び車両用表示プログラムは、運転者の閾下知覚の範囲内の時間で注意喚起情報を表示する。
本発明に係る車両用表示装置及び車両用表示プログラムは、運転者の閾下知覚の範囲内の時間に、換言すれば、サブリミナル・セマンティック・プライミングを利用して、注意喚起情報を表示するので、運転者に煩わしさを感じさせず、注意対象物が複数ある場合にも有効に作用し、また、注意対象物がない場合にも運転者に悪影響を与えることがなく運転注意情報を通知することができる。
本発明は、運転注意情報を閾下知覚の範囲内の時間で運転者に通知することにより、プライミング現象による心理学的効果を利用して、効果的に注意喚起を行う。そこで、本発明の実施の形態について説明する前に、プライミング現象について説明を行う。
〔プライミング現象〕
始めに、プライミング現象とは、先行する刺激(以下、先行刺激と略記)が、後続する刺激(以下、後続刺激と略記)の処理に影響を及ぼす現象である。
例えば、先に提示された単語が、後に提示された単語に関する判断に影響を及ぼすことが実証されている。ここで、先行刺激と後続刺激との間に意味的に関連がある場合を、セマンティック・プライミングと呼び、さらに先行刺激が意識されない閾下知覚の状態で与えられた場合をサブリミナル・セマンティック・プライミングと呼ぶ。
サブリミナル・セマンティック・プライミングの効果(以下、プライミング効果と略記)は、先行刺激と後続刺激に意味的な関連がある場合には、後続刺激の処理が促進される点と、先行刺激と後続刺激に意味的な関連がない場合には、後続刺激の処理に影響を与えないという2つの特徴がある。
図1に示すグラフは、Posner & Snyde(Posner,M.I., & Snyder,C.R.R. 1975 Facilitation and inhibition in the processing of signals. In P.M.A.Rabbitt(Ed.) Attention and performance, Volume V. New York: Academic Press.)により行われた実験の結果であり、先述した2つの特徴についての結果を端的に示している。
この実験では、同時に呈示された2文字(例えば、「AA」)が同じかどうかを判断する課題(同時マッチング)が用いられ、そのマッチングすべき2文字を呈示する直前に、先行刺激が呈示される。先行刺激は、マッチング文字対と一致するアルファベット1文字(一致条件、例えば「A」)、あるいは一致しないアルファベット1文字(不一致条件、例えば「Z」)、あるいは中立条件としてプラス記号(+)の何れかである。
図1は、縦軸に、同時マッチング課題における反応時間の促進量(一致条件の反応時間から中立条件の反応時間を減算した時間)及び抑制量(中立条件の反応時間から不一致条件の反応時間を減算した時間)、横軸に、先行刺激と後続刺激の時間間隔(以下、時間間隔と略記)でプロットしたものであり、それぞれの単位は[ms]である。時間間隔が50[ms] 以上になると、一致条件において先行刺激による促進効果があらわれ、後続刺激の処理が速くなることがわかる。
一方、時間間隔が200[ms]以上になると、不一致条件において先行刺激による抑制効果が現れ、後続刺激の処理が遅くなっている。これは、先行刺激が意識されたために、先行刺激に関連する後続刺激を予測した結果、予測がはずれた場合に、処理がかえって遅くなったと考えられる。すなわち、誤情報による悪影響が出ていることになる。
しかし、時間間隔が150[ms]以下の場合は、不一致条件における抑制効果が現れず、誤情報による悪影響が出ていない。これは、先行刺激が意識されていない領域と考えられる。
このように、時間間隔が50[ms]以上150[ms]以下の領域では、一致条件における促進効果のみが現れ、不一致条件における抑制効果が現れない領域が存在する。すなわち、正しい情報による処理の促進のみが得られ、誤情報による悪影響がない情報提示が可能である。
次に、プライミング効果における活性化拡散の効果について説明する。プライミング効果における活性化拡散効果は、一般に、Collins & Loftus(Collins, A. M., Loftus, E. F.: A spreadingactivation theory of semantic processing, Psychological Review, 82, p.407-p.428 (1975).)が提唱した活性化拡散モデルによって説明される。
活性化拡散モデルは、まず人の記憶構造を図2に示すようなネットワーク構造で記述し、意味の近いものは空間的に近くに、遠いものは遠くに配置する。先行刺激により、対応する概念ノード(図2では単語)が活性化されると、その活性化は、リンクを伝わって意味的に近い概念ノードへと広がっていく。
そして、先行刺激と関連のある後続刺激が呈示されると、先行刺激による活性化が広がっているため、後続刺激に対応する概念ノードは、既にある程度、活性化が高まっている。従って、後続刺激を評価するために必要な活性化レベルを超えることは容易となっており、反応が速くなると解釈できる。ここでの先行刺激は、言語刺激であるが、絵刺激についても、同様の効果が確認されている。また、活性化される記憶は、言語情報に対応した意味情報のこともあれば、定型化された行動パターンのこともある(川口潤著、「認知情報処理における文脈効果と自動的処理・意識的処理」、風間書房、1999年、p.183 )。
さらに、先行刺激が意識された場合は、関連のある記憶が活性化されるだけでなく、関連のない記憶が抑制されるのに対し、先行刺激が閾下知覚の場合は、関連のない記憶が抑制されることはなく、さらに、関連のない複数の記憶を同時に活性化することも可能である。
以上がプライミング効果の説明であり、以下に、このプライミング効果を利用した本発明の実施形態について、図面とともに詳述する。
〔車両用表示装置の全体構成〕
始めに、図3を参照して、本発明の第1の実施形態となる車両用表示装置の構成について説明する。
図3に示すように、本発明の第1の実施形態となる車両用表示装置は、車両1に搭載され、主として、ナビゲーション装置2と、運転状況別事故統計情報データベース3と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御コンピュータ)4と、注意喚起情報制御装置5と、表示装置6とを備える。
〔各構成部の詳細〕
ナビゲーション装置2は、車両現在位置、車両の現在位置が属するエリアコード、現在走行中の道路種別、並びに車両前方の道路種別を注意喚起情報制御装置5へ出力する。エリアコードについては、運転状況別事故統計情報データベース3の説明において後述する。
運転状況別事故統計情報データベース3は、車両に搭載されている大容量記憶装置(例えば、HDやDVD-ROM。なお、HDなどデータの書き込みが可能な記憶媒体の場合には、車両と情報通信が可能な車外装置から大容量記憶装置へ最新の事故統計情報に更新が可能。)に格納され、全国を複数の範囲で分割した地域毎の事故統計情報を保持している。運転状況別事故統計情報データベース3は、集計範囲のエリア情報と対応する事故統計情報を格納している。ここで、エリア情報については、図4に示すように、エリア種別とエリアコードで構成される。
エリア種別は、全国を所定のエリア毎に分割した範囲を示しており、例えば、「全国」、「地方」、「都道府県」、「市町村」、「区間」、「ポイント」といった具合に分類され、格納されているデータ(ID番号で識別される。以下、格納データと略記)の範囲を定義している。
エリアコードは、格納データの範囲を一意に特定する識別子であり、ナビゲーション装置2で使用される地図データと共通のフォーマットとなっている。事故統計情報は、各エリアについて、図5に示すような運転状況と事故相手種別の分類からなるクロス集計表形式のフォーマットで構成される。この事故統計情報は、車両が加害者となった過去の事故を集計したものであり、走行状況としては、「カーブ走行」、「合流」、「優先道路進入」、「右折」、「左折」の5つで分類しており、後述する注意喚起情報制御装置5における運転状況判断の結果と対応している。また、エリア情報と事故統計情報は、ID番号により関連づけがされている。
ECU4は、周知の情報処理装置により構成され、エンジン制御や車載用電装機器制御など車両制御全般を実行し、車速や方向指示器作動状態のデータを注意喚起情報制御装置5に出力する。
注意喚起情報制御装置5は、本発明に係る運転状況判断手段、注意喚起情報選択手段、注意喚起情報制御手段として機能し、演算回路、入出力装置、映像出力装置からなる制御装置である。注意喚起情報制御装置5は、ナビゲーション装置2から入力される車両の現在位置が属するエリアコードに基づいて、運転状況別事故統計情報データベース3を検索し、さらに、ナビゲーション装置2から入力される走行中の道路種別、車両前方の道路種別、ならびに、ECU4から入力される車速と方向指示器作動状態から現在の運転状況を判断する。次に、注意喚起情報制御装置5は、判断された運転状況に対応する事故統計情報に基づく注意喚起情報を選択し、運転状況における最適な表示位置を設定し、表示装置6に注意喚起情報を運転者の閾下知覚の範囲で繰り返し表示させる。
表示装置6は、本発明に係る表示手段として機能し、フロントガラスの運転者正面方向に虚像を投影する表示装置であり、運転者の視界を遮らないようになっている。図6に示すように、投影面pは、運転者が正面を向いた状態における視線を中心に左右方向に約20度の範囲をカバーし、裏面反射を防止するために、透明な表面反射コーティングが施し、投影される虚像が2重像とならないようになっている。なお、虚像を表示させる表示ユニットは、インストルメントパネル内部に備えられている。
〔注意喚起情報出力処理〕
次に、図7に示すフローチャートを参照して、注意喚起情報制御装置5が実行する注意喚起情報出力処理について説明する。
図7に示すフローチャートは、車両のエンジンが始動もしくは車両用表示装置の電源がオンになるのに応じて開始となり、ステップS11の処理に進める。
ステップS11では、注意喚起情報制御装置5が、ナビゲーション装置2から入力された車両の現在地が属するエリアコードを基に、運転状況別事故統計情報データベース3を検索する。
例えば、横須賀市の船越交差点付近が現在地の場合に、エリア種別は、地域分けの範囲が大きい順に、全国>関東>神奈川県>横須賀市>船越交差点の5階層に分類されており、ナビゲーション装置2からは、注意喚起情報制御装置5に5階層全てのエリアコードが入力される。そして、注意喚起情報制御装置5は全てのエリアコードと運転状況別事故統計情報データベース3とを照合し、合致するエリアコードの中から地域分けの範囲が最小であるエリアコードを特定して対応するID番号を検索し、次のステップS12へ進める。
ステップS12では、注意喚起情報制御装置5が、ステップS11で検索したID番号に対応する事故統計情報を読み込み、注意喚起情報制御装置5の記憶装置に一時記憶し、次のステップS13へ進める。
ステップS13では、注意喚起情報制御装置5が、ナビゲーション装置2から入力される現在走行中の道路種別、前方の道路種別、並びに、ECU4から入力される車速、方向指示器動作から、現在の運転状況を判断し、予め想定される運転状況と判断した場合はS14へ、予め想定される運転状況以外と判断した場合にはS18へ進める。
ここで、図8に示すフローチャートを参照して、ステップS13において実行される運転状況判断処理について説明する。
ステップS1310では、注意喚起情報制御装置5が、ナビゲーション装置2から入力された現在走行中の道路種別から、カーブ走行か否かを判定し、カーブ走行中であれば、ステップS1311で現在の運転状況を「カーブ走行」と判断し、次のステップS14に進める。一方、カーブ走行中でなければ、注意喚起情報制御装置5が運転状況判断処理をステップS1312に進める。
ステップS1312では、注意喚起情報制御装置5が、ナビゲーション装置2から入力される前方の道路種別から、前方の所定の距離L1以内(例えば、L1=30[m])に、合流地点が存在するか否かを判定し、合流地点が存在すれば、ステップS1313で現在の運転状況を「合流」と判断し、ステップS14に進める。一方、合流地点が存在しない場合には、注意喚起情報制御装置5が運転状況判断処理をステップS1314に進める。
ステップS1314では、注意喚起情報制御装置5が、ECU4から入力される方向指示器作動状態から、方向指示器が作動しているか否かを判定し、作動している場合はステップS1315に進める。一方、方向指示器が作動していない場合は、ステップS1321で予め想定された運転状況以外に該当すると判断して、注意喚起情報制御装置5が運転状況判断処理をステップS18に進める。
ステップS1315では、注意喚起情報制御装置5が、方向指示器が作動している状況において、ECU4から入力される車速から、車速が所定の速度V1以上(例えば、V1=30[km/h])か否かを判定し、V1以上であれば、ステップS1316で現在の運転状況として「車線変更」と判断し、ステップS14に進める。一方、車速がV1未満の場合は、注意喚起情報制御装置5が運転状況判断処理をステップS1317に進める。
ステップS1317では、注意喚起情報制御装置5が、ナビゲーション装置2から入力される前方の道路種別から、前方の所定の距離L1以内に、交差点が存在するか否かを判定し、交差点が存在する場合は、現在の運転状況を右左折の何れかと判断し、ステップS1318に進める。一方、交差点が存在しない場合は、ステップS1321で想定された運転状況以外に該当すると判断して、注意喚起情報制御装置5が運転状況判断処理をステップS18に進める。なお、この実施の形態では、ステップS1317において、注意喚起情報制御装置5は、前方の所定の距離L1以内に交差点が存在するか否かを判定したが、図9に示すフローチャートのように、注意喚起情報制御装置5が交差点以外の右左折にも対応できるように、このステップS1317の処理を省略してもよい。
ステップS1318では、注意喚起情報制御装置5が、ステップS1319で「右折」と判断し、左方向であれば、ステップS1320で「左折」と判断しステップS14に進める。ここまでが、ステップS13における運転状況判断処理の説明である。以降、注意喚起情報出力処理のステップS14以後の処理について説明する。
ステップS14では、注意喚起情報制御装置5が、一時記憶した運転状況別事故統計情報から、現在の運転状況に対応する事故相手種別の中で、最も件数の多い事故相手種別を一つ抽出する。例えば、図5を例として、現在の運転状況が「左折」だったとすると、注意喚起情報制御装置5は、左折時の事故相手種別の中で最も件数の多い「自転車」を事故相手種別として抽出する。ここで、複数の事故相手種別が同数で最多の場合は、注意喚起情報制御装置5は、任意に一方を選択すればよい。このようにして、注意喚起情報制御装置5は、最も確率の高い事故相手種別を一つ抽出し、次のステップS15へ進める。
ステップS15では、注意喚起情報制御装置5が、ステップS14で抽出された事故相手種別に対応する注意喚起情報映像を選択する。例えば、先述のステップS14で、事故相手種別として「自転車」が抽出された場合、注意喚起情報制御装置5は、運転者に注意喚起する「自転車注意」という文字映像を選択し、次のステップS16へ進める。なお、この実施形態では、注意喚起情報制御装置5が文字映像を選択したが、同様の内容を示すアイコン(例えば、簡単な自転車の絵)で表現しても、同様の効果を得ることができる。
ステップS16では、注意喚起情報制御装置5が、ステップS15で選択された注意喚起映像を、現在の運転状況に応じた表示位置に設定する。なお、注意喚起映像の表示位置は、運転者の正面に対して、現在の運転状況において、運転者が視線を配分する割合が多い側にオフセットさせて表示する。例えば、左折時の場合は、注意喚起情報制御装置5は、図10に示すように左側にオフセットさせ、右カーブ走行中の場合は、図11に示すように右側にオフセットさせて表示する。また、例えば、優先道路への進入時のような場合のように、現在の運転状況において、運転者が視線を配分する割合が左右に偏らない、もしくは、偏るか否か運転状況だけでは判断できない場合、注意喚起情報映像は、運転者の正面に表示する。これにより、実際の運転状況において、運転者が視線を向ける側に、対応する注意喚起情報映像が表示されることになり、注意喚起情報映像が、運転者の視野の中心に入りやすくなる。表示位置設定後に、次のステップS17へ進める。
ステップS17では、注意喚起情報制御装置5が、注意喚起映像の表示時間間隔を設定し、表示装置6が、表示時間間隔を設定後に注意喚起映像を表示する。先に述べたプライミング効果を得るために、注意喚起映像は、運転者の意識に注意喚起映像が上らないように、閾下知覚の範囲内の時間で繰り返し表示を実行する必要がある。例えば、図12(a)、(b)、(c)を参照し説明すると、最初に150[ms]程度で注意喚起情報の文字映像を表示し(図12(a))、その後、後述する逆行性マスキング効果を得るために、文字映像が表示されていた箇所に、ノイズ映像として、ドット列を50[ms]程度表示する(図12(b))。次に、800[ms]程度のインターバルを経て(図12(c))、繰り返し表示を行う。すなわち、表示の繰り返し周期は、約1秒となる。注意喚起映像の表示がされると、次のステップS19へ進める。
ステップS19では、注意喚起情報制御装置5が、車両のエンジンが停止または車両用表示装置の電源がオフ状態になったか否かを判断し、車両のエンジンが停止または車両用表示装置の電源がオフ状態であれば注意喚起映像出力処理を終了し、そうでなければ、ステップS11に進み、注意喚起映像出力処理は繰り返し実行される。
ここで、逆行性マスキングの効果について説明する。人は、視覚で得たイメージを、一旦、感覚貯蔵庫(Neisser, U. Cognitive psychology. New York: Appleton-CenturyCrofts.,1967)にバッファリングした後、記号化を行っていると言われている。従って、先行刺激を閾下知覚の範囲で呈示しようとして、短時間表示を行ったとしても、人は感覚貯蔵庫にバッファリングされたイメージからの読み出しが可能であるため、意識に上ってしまう可能性がある。
しかし、短時間表示の後に、ノイズ映像を呈示すると、感覚貯蔵庫のイメージが上書きされ、バッファリングされた先行刺激を消去することができ、意識に上りにくくなる。これが逆行性マスキングの効果である。逆行性マスキングを行わないで、先行刺激の呈示時間を短くすることで、閾下知覚を行おうとすると、呈示時間が数十[ms]となり、閾下知覚も行われなくなり、プライミング効果を得ることは出来ない。つまり、逆行性マスキングを行えば、先行刺激の呈示時間を数100[ms]程度にしても意識に上らないようにすることが可能で、閾下知覚が十分に行えるようになり、プライミング効果を得やすくなる。すなわち、逆行性マスキングは、閾下知覚の範囲時間を広げる効果がある。
図12(b)で示されるドット列は、各文字表示範囲の4隅に点を配置したもので、感覚貯蔵庫にバッファリングされた注意喚起情報の文字列を、効果的に上書き消去することができる。このノイズ映像は、50[ms]程度の短時間で表示されるため、ノイズ映像自体を運転者が意識することはほとんどなく、逆行性マスキングの効果により、先行刺激である注意喚起情報の表示(図12(a))も、運転者に意識されなくなる。
また、この繰り返し表示が行われている間、表示が行われていることを運転者に意識させるための作動表示として、丸形のインジケータ画像qを常時表示画面に出力してもよい。インジケータ画像qは、運転者の注意を引きすぎないよう、サイズ、色、形状を抑えるべきであり、具体的には、視角にして5[mrad]以下、緑系または青系の色、鋭角な角がない丸形、四角形がよい。このような動作表示により、運転者は、注意喚起の映像自体は意識できないが、注意喚起情報が表示されていることを意識できるようになり、表示装置6の表示領域方向、すなわち前方に軽く注意が向けられ、注意喚起情報の閾下知覚が確実に行われるようになる。
なお、本実施例では、作動表示をインジケータ画像として表示装置6に表示したが、これとは別に発光ダイオード等の専用インジケータ部を設け、注意喚起情報の繰り返し表示が行われている間、点灯させる方式としてもよい。
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態による車両用表示装置によれば、注意喚起情報制御装置5が、運転状況別事故統計情報データベース3から車両の現在地が属するエリア情報に対応する事故統計情報読み込み、ナビゲーション装置2から入力される現在走行中の道路種別、前方の道路種別、並びに、車速と方向指示器作動状態から現在の運転状況を判断し、判断された運転状況に対応する注意喚起映像を選択し、運転者の閾下知覚の範囲内の表示時間で注意喚起映像を表示する。
すなわち、本発明の第1の実施形態による車両用表示装置は、運転者の閾下知覚の表示時間に注意喚起情報を表示することにより、心理学的効果であるプライミング効果を利用して注意喚起情報を運転者に通知するので、運転者に煩わしさを感じさせず注意対象物が複数ある場合にも有効に作用し、また、注意対象物がない場合にも運転者に悪影響を与えることがなく運転注意情報を通知することができる。
次に、図13を参照して、本発明の第2の実施形態となる車両表示装置の構成について説明する。
〔車両用表示装置の全体構成〕
図13に示すように、本発明の第2の実施形態となる車両用表示装置は、車両側に設けられた車載表示装置A(以下、装置Aと略記。)と装置Aと情報通信可能な車外事故統計情報データベースB(以下、データベースBと略記)で構成される。装置Aは車両に搭載され、主として、ナビゲーション装置2と、ECU4と、注意喚起情報制御装置5と、表示装置6と、受信装置8とを備える。一方、データベースBは主として、運転状況別事故統計情報データベース3と、送信装置7とを備える。
〔車載表示装置の各構成部の詳細〕
装置Aにおいて、ナビゲーション装置2と、ECU4と、注意喚起情報制御装置5と、表示装置6の構成は、本発明の第1の実施形態となる車両用表示装置におけるナビゲーション装置2と、ECU4と、注意喚起情報制御装置5と、表示装置6は同じ構成であるので、以下ではその説明を省略し、受信装置8について説明する。
受信装置8は、送信装置7から車両の現在位置が属するエリアの事故統計情報など、後述する注意喚起情報出力処理に必要なデータの受信を行う。
〔車外事故統計情報データベースの各構成部の詳細〕
データベースBにおいて、運転状況別事故統計情報データベース3と本発明の第1の実施形態となる車両用表示装置における運転状況別事故統計情報データベース3は同じ構成であるので、以下では説明を省略し、送信装置7について説明する。
送信装置7は、受信装置8に車両の現在位置が属するエリアの事故統計情報など、後述する注意喚起情報出力処理に必要なデータの送信を行う。
〔注意喚起情報出力処理〕
次に、図14に示すフローチャートを参照して、注意喚起情報制御装置5が実行する注意喚起情報出力処理について説明する。なお、ステップS22からステップS28までの注意喚起情報出力処理は、本発明の第1の実施形態における、ステップS13からステップS19までと同様であるので、以下ではその説明を省略する。
図14に示すフローチャートは、車両のエンジンが始動もしくは車両用表示装置の電源がオンになるのに応じて開始となり、ステップS21の処理に進める。
ステップS21では、受信装置8が、データベースBの送信装置7から送信される、車両の現在位置に属するエリアの事故統計情報を受信し、受信した事故統計情報を注意喚起情報制御装置5が記憶した後、ステップS22へ進める。
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる車両用表示装置によれば、ナビゲーション装置2、ECU4、注意喚起情報制御装置5、表示装置6、受信装置8は車載表示装置A側に設けられ、運転状況別事故統計情報データベース3、送信装置7は外部事故統計情報データベースB側に設けられているために、車両側に搭載される車両表示装置の部品点数を削減することが出来る。なお、外部に運転状況別事故統計情報データベース3を設けていることにより、データベースの内容を常に最新の状態に更新し、車両が事故統計情報を得られる利点もある。
また、運転状況の判断を「車線変更」のみに限定すれば、ナビゲーション装置2の現在位置同定機能は不要となるために、更なる、部品点数の削減ができると共に、簡単な構成によって本発明に係る車両用表示装置を実現できることができる。この場合、図15に示すように、車両表示装置は、主として、車両1に搭載されるECU4と、注意喚起情報制御装置5と、表示装置6の構成となる。
ここで、図16に示すフローチャートを参照して、運転状況の判断処理が「車線変更」のみの場合に、注意喚起情報制御装置5が実行する注意喚起映像出力処理について説明する。なお、ステップS33からステップS37までの注意喚起情報出力処理は、本発明の第1の実施形態における、ステップS14からステップS19までと同様であるので、以下ではその説明を省略する。
ステップS31では、注意喚起情報制御装置5が、ECU4から入力される方向指示器作動状態から、方向指示器が作動しているかどうか否かを判定し、作動している場合はステップS32へ進める。一方、方向指示器が作動していない場合には、予め想定される運転状況以外に該当すると判断して、注意喚起情報制御装置5が注意喚起情報出力処理をステップS37へ進める。
ステップS32では、注意喚起情報制御装置5が、ECU4から入力される車速から、車速が所定の速度V1以上(例えば、V1=30km/h)か否かを判定し、V1以上であれば、現在の運転状況として「車線変更」と判断し、ステップS33へ進める。一方、車速がV1未満の場合は、注意喚起情報制御装置5が注意喚起情報出力処理をステップS37へ進める。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
本発明で利用されるプライミング効果に関する実験結果を示すグラフである。 本発明で利用されるプライミングに効果における活性化拡散モデルのイメージ図である。 本発明の第1の実施形態に係る車両用表示装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態に係るナビゲーション装置の地図データと運転状況別事故統計情報データベースデータのフォーマットの対応関係を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る運転状況別事故統計情報データベースの事故統計情報のデータフォーマット例を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る表示装置における投影面を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る注意喚起情報出力処理を示すフローチャート図である。 本発明の第1の実施形態に係る注意喚起情報出力処理中の運転状況判断処理を示すフローチャート図である。 本発明の第1の実施形態に係る注意喚起情報出力処理中の運転状況判断処理の応用例を示すフローチャート図である。 本発明の第1の実施形態に係る注意喚起映像の表示例を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る注意喚起映像の表示例を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る注意喚起映像の表示時間の一例を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る車両用表示装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施形態に係る注意喚起情報出力処理を示すフローチャート図である。 本発明の第2の実施形態に係る車両用表示装置の応用例の構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施形態に係る注意喚起情報出力処理の応用例を示すフローチャート図である。
符号の説明
1:車両
2:ナビゲーション装置
3:運転状況別事故統計情報データベース
4:ECU
5:注意喚起情報制御装置
6:表示装置
7:送信装置
8:受信装置
p:投影面
q:インジケータまたはインジケータ画像
A:車両側表示装置
B:外部事故統計情報データベース

Claims (7)

  1. 車両の運転状況を判断する運転状況判断手段と、
    前記運転状況判断手段により判断された運転状況に対応する注意喚起情報を選択する注意喚起情報選択手段と、
    注意喚起情報を運転者に表示する表示手段と、
    前記注意喚起情報選択手段により選択された注意喚起情報を前記車両の運転者の閾下知覚の範囲内の時間で表示するように前記表示手段を制御する注意喚起情報制御手段と、
    を備える車両用表示装置。
  2. 前記注意喚起情報制御手段は、前記注意喚起情報を運転者の閾下知覚の範囲内の時間に表示後、ノイズ情報を所定の時間表示し、前記注意喚起情報とノイズ情報を交互に一定間隔の時間で繰り返し表示するように前記表示手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
  3. 前記運転状況判断手段は、車両の現在位置情報に基づいて車両の運転状況を判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
  4. 前記運転状況判断手段は、ウィンカー情報及び車速に基づいて車両の運転状況を判断することを特徴とする請求項1から請求項3いずれかに記載の車両用表示装置。
  5. 前記注意喚起情報選択手段は、車両の運転状況別毎の事故統計情報を対象物別毎に記憶しているデータベースを参照することにより、注意喚起情報を選択することを特徴とする請求項1から請求項4いずれかに記載の車両用表示装置。
  6. 前記データベースは、車両と情報通信可能な車外の処理装置側に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車両用表示装置。
  7. 車両の運転状況を判断する処理と、
    判断された運転状況に対応する注意喚起情報を選択する処理と、
    前記選択された注意喚起情報を前記車両の運転者の閾下知覚の範囲内の時間で表示する処理と、
    をコンピュータに実行させることを特徴とする車両用表示プログラム。
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