JP2006132546A - 筒内噴射型内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃焼室に燃料を直接噴射し、混合気を空気流動でガイドする筒内直接噴射エンジンでは、アイドルのような低回転低負荷における燃焼安定性を確保することが困難であった。また、他の領域でもさらに排気,燃費を向上する要求がある。
【解決手段】上記の課題を解決するために、本発明の内燃機関では先行噴射で燃料噴射弁から点火プラグ方向への燃料噴霧の流動を生成し、当該燃料流動により引き続く後噴射による燃料噴霧を点火プラグへガイドするように燃料噴射時期を制御するリードスプレー制御を行う。
【選択図】図19

Description

本発明は燃焼室に燃料噴射弁(以下インジェクタと称す)によって直接燃料を供給する筒内噴射型内燃機関(以下エンジンと称す)に関するものである。
特開平11−159382号公報には、燃料を直接燃焼室内に噴射する燃料噴射弁(以下インジェクタと称す)を備え、内燃機関(以下エンジンと称す)が低負荷低回転の運転領域にある時に圧縮行程で燃料を噴射することにより混合気を成層化させて燃焼させる筒内噴射エンジンにおいて、成層燃焼を実行する領域内でエンジンの負荷および回転数の少なくとも一方が比較的高い運転領域にあるときに、圧縮行程で燃料を複数回に分割して噴射することにより、成層運転領域を拡大し、燃費を向上させる技術が記載されている。
また特開平7−119507 号公報には、高負荷低回転時の均一燃焼(均質燃焼と同意)領域で燃料を分割噴射して1回当たりの燃料の噴射量を少なくして燃料を効果的に霧化拡散させ、良好な均一燃焼を得る技術が記載されている。
特開平11−159382号公報 特開平7−119507号公報
しかし、上記従来の技術では、機関の始動時の触媒の温度が上がり難く、始動時のエミッションの改善が得られない。
本発明の目的は、機関始動時のエミッションの改善を図るものである。
本発明は上記目的を達成するために、排気管の途中に触媒を備えた筒内噴射型内燃機関において、機関の始動時に圧縮行程以降に燃料を噴射して、希薄燃焼させるよう構成した。
このように構成した本発明では、触媒の早期暖機が可能となり、エミッションの向上を図ることができる。
本発明が適用される筒内噴射エンジンの一つのシステム例を図1および図2に示す。
エンジン30には、2本の吸気管A,Bと、それらをそれぞれ上下に仕切る板20と、この板20の開始点に空気流動制御弁21を設けた。
これらにより、燃焼室内に吸気弁10側から排気弁11側,ピストン31へと向かう順タンブル空気流動50を形成するように構成した。
空気流動50の強度は電子制御されるアクチュエータ21Aでリンク21Bを介して空気流動制御弁21の開度を制御することにより変化させることができるよう構成した。
タンブル空気流動50を保持しやすいようにピストン31の頂面にはタンブル空気流動をガイドするタンブル保存溝50Aを設けた。
点火プラグ32は燃焼室中央部に配置し、燃焼室内に直接燃料を噴射供給するインジェクタ1は燃焼室に設けられた2つの吸気弁10の間に燃料噴射孔をシリンダ側にして水平から約30度上方に傾けて配置した。
インジェクタ1は電磁コイルを備えた電磁弁で構成し、エンジンコントロールユニット(以下ECUと称す)41からの制御信号により開閉制御するよう構成した。
ECU41からの燃料噴射制御信号がインジェクタ駆動回路40に入力されると、後で詳述するインジェクタ1の電磁コイル2がバッテリVBにより付勢され、プランジャ3が引き上げられ、プランジャ3の先端に取付けられている弁体3aが弁座(図示せず)から離れ、図示しない高圧ポンプで加圧された高圧燃料が燃焼室内に噴射される。
燃料はインジェクタ1の弁3aの上流に設けたスワラ4により旋回力が与えられて噴射されるため、燃焼室内圧力が低い吸気行程噴射では中空の円錐噴霧となる。
一方、燃焼室内圧力が高い圧縮行程噴射では噴霧がつぶれて中実噴霧となる。
本実施例では、成層燃焼領域においては図に示すように先行して噴射された噴霧60aがプラグ32方向に拡散してプラグ32付近で留まり、次に噴射された噴霧60bを火種として燃焼するよう構成した。
図中32aは点火コイルで、ECU41からの点火信号を受けて点火プラグ32に点火用スパークを発生させる。
図3(a),(b)に基づき本発明の概要を説明する。
本発明では、圧縮行程の非常に近接した時間に燃料を複数回に分割して噴射する。
スワラ付きインジェクタで一括噴射(1回の燃料噴射タイミングの間に1回の開弁で燃焼に必要な燃料を一括噴射すること)した場合の噴霧は図3(a)のようにL1のペネトレーションを有する。
同じ噴射量を2回に分割して噴射した場合は図3(b)に示すように、一回当たりの噴射量が少なくなるため噴霧の貫通力が小さくなる。
第1噴射のペネトレーションL2と第2噴射のペネトレーションL3の長い方を、一括噴射のペネトレーションL1と比較すると前者のペネトレーションL2(L3)の方が短い。
そして、弁の上流にスワラを備えていないインジェクタと同様の比較すると、同じ燃料供給量、同じ燃料圧力の場合、弁の上流にスワラを備えた本発明の方が同じ噴射量を2回に分割して噴射した場合のペネトレーションの短くなる度合いが大きかった。
また、同一圧力雰囲気中で連続2回噴射を実施すると、第1噴射の噴霧60aが直進力を失って滞留しているところへ第2噴射60bが重なるようにして到達し、全体として狭い領域に高濃度で噴霧が滞留するのが確認できた。
しかし、実際の燃焼室では第1噴射60aと第2噴射60bが噴射されるタイミングにおける燃焼室内圧力は異なる(第1噴射60aの時点の方が第2噴射60bの時点より低い)。
ところで、スワラを備えたインジェクタでは、雰囲気圧力が低いと中空円錐噴霧となり、雰囲気圧力が高いと中実のコンパクトな噴霧となる。
このため実機では、図3(c)のように低圧状態の燃焼室に噴射された中空円錐噴霧の第1噴射の噴霧60aは軽いので空気流動に乗って広く分布し、比較的高圧状態の燃焼室に噴射された中実の第2噴射の噴霧60bは比較的燃料粒が重いことと空気流動が弱まっていることで先行した第1噴射60a程は拡散せず、プラグの周りに集まる。
この雰囲気圧力差によりプラグ周りに濃い混合気層、その周囲に薄い混合気層、という理想的な混合気が形成できた。
また、噴射期間T1が2m秒を超えるような長い場合には、スワラ付きインジェクタから噴射された中空円錐噴霧は、噴霧内外の圧力差により噴霧が釣り鐘型となり、燃料噴霧の広がり角度(θ1,θ2)が狭角化され噴霧の分散が抑えられる。
これに対し、複数回に分割して噴射すると1回当たりの噴射期間が短縮され、噴霧の広がり角度の狭角化を防止でき、燃料を広く分散させることができる(θ1<θ2)。
スワラ付きインジェクタでは一括噴射にするか、2回に分割して噴射するかによって燃料の広がり角度を制御できる。
図4に本発明による噴射方法のパターン、図5に本発明を実施した筒内噴射エンジンの運転領域を示す。
図5は横軸が回転数、縦軸が負荷であり、(1)(2)の領域は均質運転、(3)は弱成層運転、(4)(5)は成層運転を行う領域である。
(1)の高負荷高回転の均質運転領域では、短時間に多量の燃料を噴射する必要があることから、図4(1)のように吸気行程で一括噴射、もしくは排気行程から吸気行程にかけて一括で噴射する。高回転高負荷では燃焼室内の空気流動が強く、噴霧が吸気弁側に集中して空気利用率が悪いが、排気弁側まで到達して混合を促進できるように貫通力が強い一括噴射を行うことで、出力の向上,燃費の改善を図る。
(2)の高負荷低回転の領域では、図4(2)に示すように、吸気行程に複数回に分割して燃料を噴射することで、噴霧の貫通力(ペネトレーション)を低減し、排気側シリンダ壁面やピストン冠面への燃料付着を低減する。
また、1回当たりの噴射期間を短縮することで、第1噴射60aの噴霧角を拡大して混合を促進できる。
(3)は弱成層運転領域で、図4(3)に示すように吸気行程と圧縮行程に分割して噴射する。
吸気行程噴射で周囲に希薄混合気を形成し、圧縮行程噴射の噴霧を点火火種として弱成層燃焼を達成する。
(4)は成層運転領域であるが、そのなかでも比較的高回転領域であり、図4(4)に示すように圧縮行程で一括噴射して成層燃焼する。
(5)の低負荷低回転の成層運転領域では、図4(5)に示す圧縮行程複数回噴射の燃料噴霧を空気流動でガイドすることにより従来のいかなるエンジンでも成層燃焼による安定燃焼が困難とされる領域において、成層燃焼による安定燃焼を実現できた。
この結果、従来より成層燃焼領域が拡大し、燃費低減と、エミッションの改善が図れた。
図4(5)に示す圧縮行程複数回(2回)噴射では図8に示すように、第1噴射は圧縮行程前乃至中期に行い、プラグ近傍に希薄混合気層60aを形成し、第2噴射を圧縮行程中乃至後期に行い、噴霧60bが点火プラグへ到達したときに点火して燃焼させる。
点火プラグに可燃混合気層、その周囲に希薄な混合気層さらに外側に空気層があることで、混合気が効率よく燃焼し、また壁面に混合気が存在しないため、火炎伝播できないクエンチ層からのHCの生成が減少し、HCの排出量が低減できる。
この場合、第2噴射が圧縮行程の後期の空気流動が非常に弱い状況において行われるので従来のシステムであれば噴霧がプラグまで到達する貫通力を持たない。
しかし、本発明では先に説明した理由と、図9に示すように、第1噴射がプラグ方向への流動を生成するため、第2噴射はこの流動に引っ張られる作用の両方で点火プラグまで到達することができる。これより、安定燃焼領域が広がり、燃費が更に向上する。
図4(5)に示す圧縮行程2回噴射で第1噴射と第2噴射のタイミングを非常に近接した時間(1.5ms程度)にすると、図10のように混合気がプラグを通過する時間を延長することができる。
タンブル空気流動により燃料を点火プラグまで搬送するいわゆるタンブルガイドエンジンでは、混合気が点火プラグを通過する期間でのみ点火ができるため、第1噴射と第2噴射のタイミングを最適化すると噴霧が連続して2回通り過ぎ、その両方のタイミングで点火することが可能となり、燃焼安定領域が拡大する。
以上のように、圧縮行程複数回噴射では、第1噴射と第2噴射の間隔を制御することにより、混合気の弱成層化による燃費向上(図11混合気曲線60)と、混合気のプラグ通過時間延長による燃焼安定領域拡大(図11混合気曲線61)、という2つの効果が得られる。
更に、始動時に触媒が十分に暖機されていない状況では、図4(6)に示すように圧縮行程と膨張行程に燃料を噴射する。
圧縮行程で希薄燃焼させ、膨張行程に燃料を噴射し、第1燃焼での余剰空気と燃焼による熱で、2度目の噴霧を燃焼させ、排気温度を向上,触媒暖機時間を低減する。触媒早期活性化により、排気浄化が可能となるため、排気の低減効果がある。
このような領域では空気流そのものが少ないので空気流動による燃料ガイド効果が低いので燃料噴射期間を他の2回噴射領域の噴射期間より長くしてペネトレーションを長くし、プラグ周辺に届き易くする。
始動時の中でもスタータでエンジンを駆動しているような低回転領域では、ピストンが圧縮行程途中で停止している気筒に燃料を噴射して一発目を燃焼させるが、本発明の1噴射タイミング複数回噴射を用いれば、一発目の燃焼から成層燃焼で始動を行う事ができ、HCの発生が少なく、燃費の良い直接燃料噴射装置が得られる。
通常、始動時は燃料圧力が低く噴射率が低いため、噴射期間を通常運転時の数倍長くする必要がある。このため従来の直接燃料噴射装置においては、燃料噴霧のペネトレーションが長くなりすぎて対向壁面への燃料付着が生じたり、燃料が点火タイミング時に点火プラグ位置を通り過ぎたり、またこのような運転状態では燃料の圧力が低くて燃料の微粒化も不十分であるという問題もあって、成層燃焼が実現できず、均質燃焼で始動していた。
本実施例では一燃料噴射タイミングでインジェクタを2回駆動して、1回の噴射燃料を分割して噴射することにより、ペネトレーションを低減することができたので対向壁面への燃料付着を防止でき、また燃料量が少ない分、低い圧力でも燃料が十分霧化され、これにより、一発目の燃焼から成層燃焼で始動を行う事が可能となる。
図7に示すように、ECU41はエンジンに取り付けられた各種センサから、エンジン冷却水温度,エンジン潤滑油温度,エンジン回転数,負荷,スロットル弁開度,クランクシャフトの回転角度,A/F(空燃比センサ出力あるいは酸素濃度検出器出力)などの信号を受けてエンジンの状態を判定し、さらに図6のフローチャートで噴射方法を選定し、噴射時期,噴射期間,点火時期などをインジェクタ駆動回路40や、点火回路32aへ出力する。(図2の32bは点火コイルを示す。)
均質運転時には2回の噴射時期で燃焼室圧力はほとんど変化しないが、成層運転時には図12に示すように燃焼室圧力が変化する。また、その変化割合は噴射時期や、回転数,吸入空気量の関数となるため、条件にあわせた噴射間隔が要求される。
噴射間隔(時間)が同じ場合、(b)を基準条件とすると、吸入空気が多い(a)のような条件では2回目の噴射時の燃焼室圧力が高く、コンパクトな噴霧となるため、1回目の噴霧と2回目の噴霧の間が開いて、分離する可能性がある。
低回転の(c)のような場合は、圧力変化が少ないため、噴霧の定常試験に近い結果が得られると考えられる。
燃焼に最適な混合気を得るために、図13に示すように回転数,吸入空気量が大きくなり、あるいは噴射時期が遅くなるにつれて第1,2噴射の間の噴射休止間隔D1を短縮する。
ただし、D1はインジェクタへ電力を供給する昇圧回路のコンデンサのチャージに必要な時間(約1.5ms)以下となってはならない。
図14に示すように、回転数,吸入空気量が大きくなり、あるいは噴射時期が遅くなるにつれてT2/T3を小さくする。
つまり、T3を延長する。ただし、T2は図15に示す無効噴射パルス幅以下になってはならない。
図15は、噴射期間と燃料流量の関係を示しており、ほぼ比例関係にあることがわかる。だが、噴射期間を短縮するとインジェクタのプランジャの開弁までの遅れや、プランジャの動作が不安定になることなどが原因で、流量に直線性が得られない領域が出現する。
直線性が得られない領域の噴射期間を無効噴射パルス幅と呼び、この領域は使用しない。
この領域に噴射パルス幅(噴射期間)が入る場合は、燃料圧力を低く設定して流量を低減し、その分噴射パルス幅を長くして対応する。
第1の実施例のエンジンにおいては、プラグに到達できる噴霧角得るために広角噴霧型のインジェクタであるスワラ付きインジェクタを用いた。そして比較的長いペネトレーションが要求される低回転低負荷の領域では、圧縮行程複数回噴射を適用した。
第2の実施例を図16に示す。
この実施例では比較的長いペネトレーションを確保できる狭角噴霧あるいは中実噴霧型のインジェクタを使用し、低回転低負荷の噴射期間の短い条件では1噴射タイミング1回噴射とし、中回転でペネトレーションが長くなり過ぎて壁面への付着が問題となる領域で1噴射タイミング2回噴射とした。
狭角噴霧型インジェクタを用いることで、均質高負荷条件でも吸気弁からの強い下降流に負けずに分散しやすい燃料噴霧状態を形成する事ができた。
低負荷条件では噴射パルスが短いため、噴射を2回に分割すると、1回の噴射パルス幅が、無効噴射パルス幅以下になる可能性があるが、このような領域では燃料圧力を低くして噴射パルス幅を長くすることが有効である。
第3の実施例を図17に示す。これは、インジェクタをエンジンヘッドの側面ではなく、燃焼室中心部の点火プラグ横に配置した構造である。成層運転では圧縮行程2回噴射により、ペネトレーションが抑制できるためピストン冠面への付着が低減でき、混合気を2層化でき、理想的な混合状態を得られる。また、燃焼室中心から噴射しているため、噴霧が通過することがなく混合気が中心部に留まるため、広い噴射,点火時期で安定燃焼できる。均質運転では、燃焼室の形状に合った噴霧形状となるため、空気を有効に利用できる。均質運転でも圧縮行程2回噴射によりペネトレーション抑制による壁面付着低減,噴霧拡大による混合の促進が可能である。
昇圧器によってバッテリ電圧を昇圧して高電圧をコイルに印加することで、開弁するインジェクタでは、近接した短時間に複数回インジェクタを開弁するためには、噴射間隔を広く取る必要がある。それはバッテリー電圧から電圧をチャージするための時間が必要であり、十分に電圧がチャージされない場合、2回目の開弁が遅れ、必要噴射量が得られない可能性があるからである。よって約1.5ms以上の間隔が必要である。
バッテリー電圧で駆動可能なインジェクタを用いた場合、電圧チャージが必要ないため、非常に近接した時間で複数回噴射を行うことが可能である。この場合、成層運転の高回転領域でも圧縮行程で近接に2回噴射して、安定領域の拡大を測ることが可能である。
また、上記方法は42Vバッテリー搭載のエンジンにおいてはさらに小さなパルス幅でも燃料流量が不安定にならないので、低負荷領域でも燃料圧力を落とすことなく、複数回噴射することを可能にできる。
以上の実施形態は空気で混合気をガイドして成層化するエンジンに関して記載したが、ピストンキャビティ180で混合気をガイドする図18のような構成でも使える。
図19の冠面がフラットなピストンを備えた筒内噴射エンジンでは、インジェクタ1から噴射した燃料を点火プラグ32へ直撃させて混合気を形成する。
インジェクタ1は、筒内圧力の変化により噴霧形状が変わりにくい例えば中実噴霧型インジェクタを用いる。
特に、点火プラグ方向の噴霧角が変化しないことが重要であり、これにより、噴射時期,回転数の影響を受けることなく点火プラグへ燃料を到達させることができる。
また、ピストンはキャビティを持たないフラットな形状であるため、ピストン冠面の冷却損失,吸気損失を低減でき、燃費向上が図れる。
この構成のエンジンでは、噴霧が点火プラグを通過する時間が短いが、一噴射タイミングでの噴射を複数回に分割してその第1回目と2回目の間隔を適宜設定することで、点火プラグに混合気が存在する時間を延長し、燃焼安定領域を拡大できる。
また、一噴射タイミングでの噴射を複数回に分けることにより、ペネトレーションを短くできるため、排気バルブ側の壁面への燃料付着を低減でき、燃費,排気を改善できる。
実施例ではスワラ付きインジェクタ,中実噴霧型インジェクタに関して述べたが、ホールノズル型のインジェクタやプレートノズル型のインジェクタなども使用できる。
実施例では噴射を2回に分割した例を述べたが、それ以上の回数に分割してもよい。
次に、本発明に用いるスワラ付きインジェクタ及び、バッテリ電圧で駆動されるインジェクタの詳細構成を図20(a),(b),図21(a),(b),(c)に沿って説明する。
図21(a)は、インジェクタのノズル先端部分の拡大図であり、本発明にかかるスワラ117が示されている。スワラ117には、軸方向溝212と径方向溝221と、更に径方向溝221出口部分に環状の室251とが形成されている。
軸方向溝212はスワラ117の円筒の側面を、2つの平行な平面で切り取った平面とノズルの筒状内周面とで囲まれた断面半月上の通路で形成される。
これらの軸方向溝212,径方向溝221は上方より導入される燃料の通路であるが、軸方向溝212を通過した燃料は径方向溝221によって弁軸心に対して偏心して弁座上流の旋回室231に導入される。これにより、燃料にいわゆる旋回力が付与される。ここで、ノズル208から噴射された燃料噴射の拡がり角、すなわち噴射角は、スワラ117に設ける径方向溝221のオフセットL(弁軸心と溝の中心間距離:図20(b)に示される)や溝の幅,深さを調整することで調整ができる。
径方向溝221のオフセットLが小さい場合や、あるいは溝の幅や深さを大きくした場合には旋回流を生じ易くなるが、環状の室251はこの旋回燃料の変動分を緩和する効果がある。
環状室251は、その下流の燃料旋回室231に比べて直径が大きいので、径方向溝
221を通過する燃料の流速を下げた場合でも該径方向溝221のオフセットLを大きくすれば旋回力を増大させることができ、その結果、旋回室を有効に使うことができる。
これにより、未然に変動分を回避できると共に、燃料のミキシングを積極的に促進することができる。
1回の噴射タイミングで弁116が弁座210から2回離れると燃料はその都度縦方向通路212,径方向溝221,環状室251,旋回室231,噴射口190と流れて燃焼室内に噴射される。
第1噴射と第2噴射との間の閉弁区間では燃料は専ら環状室251に滞留して第2噴射の初期から確実に噴射が生じるよう待機している。
この環状溝が無い場合は弁が短時間の間に開閉を繰り返した場合燃料の供給がそれに追いつかず燃料切れを生じることがある。
かくして、本発明に供する燃料噴射弁は1回の噴射タイミングの間に複数回、径方向通路221を通して径方向外側から内側に向かって燃料が供給されるが、高速の分割噴霧によってもまったく燃料の旋回作用に変化が無く、燃料噴口で安定した微粒化作用を奏し、高圧の燃焼室内への安定した燃料噴射が可能となった。
スワラを持たないインジェクタでは実現できない分割噴射での燃料微粒化効果と、高速弁駆動に対する燃料供給応答性を得られた。
次に、図21(a),(b),(c)を用いて本発明に供するインジェクタ及び燃料噴射装置の一実施例について説明する。
図21(a)はインジェクタ1の全体構造を示す断面図(先端ノズル部の拡大図は、図20(a)に示す)、図21(b)は燃料噴射装置(インジェクタ1とインジェクタ駆動回路40)の配線構成を示す模式図である。
まず、図21(a)を用いてインジェクタ1の構造を説明する。
インジェクタ1は、燃料ポンプから加圧された燃料が供給されており、弁体を成すボール弁116とヨークケーシング114側に形成されたシート面(弁座面)210との間で燃料通路の開閉を行い、燃料噴射孔190からの燃料の噴射量を制御している。
ボール弁116はプランジャ115の先端に取り付けられており、シート面210の上流近傍には燃料微粒化のためのスワラ117が具備されている。
ボール弁116の駆動力を発生する手段として、インジェクタ1にはコントロールコイル111とホールドコイル112が具備されており、これらのコイルが通電されると磁束が発生し、コア113,ヨーク114とプランジャ115を通る磁路が形成され、その結果、コア113とプランジャ115との対向する端面間に吸引力が発生する。
これによりプランジャ115及びボール弁116がシート面210から離れる方向に
(図では右側に)変位し、燃料が噴射される。
また、コントロールコイル111とホールドコイル112による吸引力が無いとき(無通電状態)は、リターンスプリング118のばね力でプランジャ115を介してボール弁116がシート面210に押し付けられ、インジェクタ1は閉弁状態となる。
コントロールコイル111とホールドコイル112の一端は、電気的に接続されB端子となっている。また、コントロールコイル111のもう一端はC端子となり、ホールドコイル112のもう一端は、H端子となっている。
B端子にバッテリのプラス端子をつなぎ、C端子,H端子をバッテリのマイナス端子につなぐとコントロールコイル111とホールドコイル112に等しい向き(互いに強め合う向き)の磁束が発生するように、2つのコイルの巻き方,配線が決定されている。
尚、図面では、配線の引き回しを模式的に記述している。
次に、図21(b)を用いてインジェクタ駆動回路100の配線構成を説明する。
インジェクタ1についてはコア113とコントロールコイル111とホールドコイル
112が記載されている。
インジェクタ制御回路100には、バッテリVBよりバッテリ電圧が供給されており、エンジンコントローラ41からの噴射信号に基づき、コントロールコイル111,ホールドコイル112への通電制御を行う。
インジェクタ制御回路100には、ホールドコイル112への通電制御を行うホールドコイルトランジスタON/OFF回路104とコントロールコイル111への通電制御を行うコントロールコイルトランジスタON/OFF回路114とがある。
それぞれのトランジスタON/OFF回路は、ホールドコイル電流検出抵抗103R,コントロールコイル電流検出抵抗113Rで検出された、それぞれのコイルへの電流情報を共有し、これらの情報と、エンジンコントローラ1からの噴射信号を基準とした信号処理回路120の出力に応じてホールドコイル用パワートランジスタ102t,コントロールコイル用パワートランジスタ112tに通電信号を送る。
ホールドコイル用パワートランジスタ102t,コントロールコイル用パワートランジスタ112tがオンになると、ホールドコイル112とコントロールコイル111にバッテリVBの電圧が印加されることになる。
101R,111Rは、それぞれホールドコイル112とコントロールコイル111の内部抵抗及び駆動回路の等価抵抗である。
コントロールコイル111とホールドコイル112は、それぞれ異なった電気特性となっている。これはコントロールコイル111とホールドコイル112が、それぞれ閉弁・開弁・開弁保持・閉弁の各段階においての役割が違うからである。
コントロールコイル111は、この実施例においては、専ら開弁初期状態で使うコイルであり、ホールドコイル112は開弁保持状態で使うコイルである。
以下、それぞれの違いを述べる。
まず、開弁時にコイルに要求される特性を以下に示す。
開弁時には、前述のリターンスプリング118によるセット荷重と、加圧された燃料による燃圧がボール弁に働くため、開弁動作に対して大きな阻止力が働く。
電磁力が、これらの力に打ち勝つ大きさに到達した時点で、初めてプランジャ115が変位を始める。
従って、力を発生するのに必要な時間は、開弁遅れに影響を及ぼすため、できるだけ短くする必要がある。
起磁力は、コイルの巻数N(T)に流入電流I(A)を掛け合わせた値U(=NI)であり、微少時間Δtに到達できる磁気力の評価に適用できる。
駆動回路の内部抵抗がゼロの場合は、巻数を少なくすればするほど、インダクタンス成分と抵抗成分が小さくなり、たくさん電流が流れ、結果として微小時間Δtの間に到達できる起磁力は大きくなる。
起磁力はコイルの巻数が減少すれば減少するが、コイルのインダクタンスが巻数Nの2乗に比例するため、巻数の減少による起磁力の減少よりもインダクタンスの減少による電流の増加が大きいことが分かった。
すなわち、バッテリ電圧等、低電圧で駆動して開弁時に大きな磁気力を得るためには、巻数で起磁力を稼ぐより電流で起磁力を稼ぐほうが応答性向上には望ましいと考えられる。
しかしながら、実際には駆動回路内部には内部抵抗が存在し、到達起磁力の最大値に制限を加えると同時に、最適な巻き数が駆動回路内部抵抗値により変化する。
さらに、電流の流れ易さは、インジェクタ内のコイルのみならず、制御回路側の内部抵抗,スイッチングデバイスの抵抗,電圧降下にも影響される。
このため、制御回路側の内部抵抗,スイッチングデバイスの抵抗,電圧降下は極力小さくする必要がある。
開弁時のコイル、すなわち本実施例のコントロールコイル111とこのコイル111のパワートランジスタ112tは、以下のように構成する。
まず、コントロールコイル111の巻線径は、抵抗率の小さい太い巻線とする。
また、パワートランジスタ112tはバイポーラ、CMOSまたはバイCMOSとすることにより通電時のON抵抗を低減し、コントロールコイル回路の等価内部抵抗111Rを低減する。
さらに、そのような構成に基づき決定される内部抵抗111Rの抵抗値に応じて到達起磁力が最も大きい近辺の巻き数とする。
通常、開弁保持動作では、開弁時に比べ小さな起磁力で弁体を開状態に保持できる。
これは、開弁により燃料が噴射されボール弁16の前後で圧力がバランスし、燃圧による力が小さくなると同時に、コア113,ヨーク114とプランジャ115のエアギャップが小さくなるため、空間ギャップの磁束密度が上昇し起磁力を有効に使えるためである。
さらに開弁保持に続く閉弁時は、電圧印加を中止することにより開弁保持時の起磁力が低下し、磁気力が低下していき、スプリング118のセット荷重以下になると閉弁動作を始めるのであるが、開弁保持時の起磁力が大き過ぎると、閉弁遅れに繋がる。
従って開弁保持時には、保持限界に近い、低い起磁力で保持しておく必要がある。
開弁保持時のコイル、すなわち本実施例のホールドコイル112とこのホールドコイル112のパワートランジスタ102は、以下のように構成する。まず、ホールドコイル
112は一般にその内部抵抗を特別に小さくする必要はなく、スペースファクタを優先して線径を選べばよい。
本実施例においては、開弁時にコイルに要求される特性をコントロールコイル111に持たせ、開弁保持時にコイルに要求される特性をホールドコイル112に持たせ、単純に切り換えて通電することにより、それぞれの段階において、理想的な動作を可能とする。
さらに上述のコントロールコイル111と、ホールドコイル112のコア113,ヨーク114への配置は、コントロールコイル111をプランジャ115に近いほうに配置するほうが望ましい。
これは、コア113,ヨーク114およびプランジャ115で構成される磁気回路において、磁束が集中するのはコイル近辺であり、特に大きな磁気力が要求される開弁時に、大きな起磁力が早期に投入されるコントロールコイル111をプランジャ115に近い配置にするほうが有利だからである。
本実施例では性能基準となる広いダイナミックレンジを達成することができる。
ダイナミックレンジ拡大のためには、最小噴射流量を低く抑える必要がある。噴射量は、噴射信号のオン時間により制御され、最小噴射流量を与える噴射信号は極限まで短くなる。この短い噴射信号に対して開弁,閉弁遅れを低減する必要があるが、本実施例においては、以下のように構成している。
コントロールコイル111の通電はTpにて中止されるが、ホールドコイル112の通電は噴射信号が立ち下がる、すなわちTpを過ぎて閉弁指令まで続けられる。
閉弁開始時においては、各コイル111及び112の電流値が小さいほど磁束の立ち下がりが早く行われ閉弁遅れの短縮に有利である。
特にホールドコイル112は、コントロールコイル111に比べ起磁力の立ち下がりが遅いので、ホールドコイル112の電流は、必要最低限とすることが望ましい。
コントロールコイル111の電圧印加後微小時間に到達する起磁力が、開弁動作に必要な磁気力を発生するのに十分であるようにホールドコイル112の電気特性を決定する。
ホールドコイル112への通電開始は、噴射信号入力と同時でなくても良く、遅れてからでも十分である。ホールドコイル112の噴射信号立ち下がり時の到達電流は、噴射信号と同時に通電を開始する場合より低くすることができる。
このように、ホールドコイル12への通電を遅らせることにより、噴射信号立ち下がり時、即ち閉弁指令時の電流を低減することができ、閉弁遅れを短縮することができる。
本発明では、このように特性が決定されたコントロールコイル111,ホールドコイル112には1回の噴射タイミングにおいて2回の電流通流遮断が生じる。
このように構成された燃料噴射装置は次のように動作する(図21(c)参照)。
ECU41が機関の運転状態に応じて複数回噴射の指令Tsgを駆動回路40に出力する。
駆動回路40は第1噴射T2のために、信号処理回路120から回路114を介してコントロールコイル用トランジスタ112tとホールドコイル用トランジスタ102tをオンする。バッテリから見たときの総合電流は図20(c)の下側の図に太い線で示されている。トランジスタ112tは通電から時間t2が経過した後にOFFされる。トランジスタ102tは第1噴射期間T2の間ずっとON状態に制御される。これによって両コイルの起磁力の総和で開弁した弁はコイル111の保持力で開弁状態が維持される。この間燃料はスワラを通って噴射口から燃焼室内に噴射される。
時間T2が経過すると、トランジスタ102tへの通電も断たれるのでコイルは消磁されプランジャ115がリターンスプリング118で押し戻されて弁116は弁座120に着座し、燃料噴口を塞ぐ。
しかしながら、わずかな閉弁区間t4の後、駆動回路40は第2噴射T3のために、再び信号処理回路120から回路114を介してコントロールコイル用トランジスタ112tとホールドコイル用トランジスタ102tをオンする。
バッテリから見たときの総合電流は図20(c)の下側の図(左)に太い線で示されている。
トランジスタ112tは通電から時間t3が経過した後にOFFされる。
トランジスタ102tは第2噴射期間T3の間ずっとON状態に制御される。これによって両コイルの起磁力の総和で開弁した弁はコイル111の保持力で開弁状態が維持される。この間燃料はスワラを通って噴射口から燃焼室内に噴射される。
時間T3が経過すると、トランジスタ112tへの通電も断たれるのでコイルは消磁されプランジャ115がリターンスプリング118で押し戻されて弁116は弁座120に着座し、燃料噴口を塞ぎ第2回目の噴射が終了する。
この実施例ではインジェクタは高速で駆動されるにもかかわらず電源電圧で駆動できる。
しかも開弁後はわずかな保持電流で保持するため1噴射タイミングの間に2回あるいはそれ以上インジェクタを開閉動作させても電力消費は少なくて済む。
尚、バッテリVBが42ボルトバッテリになれば電圧が高くなった分駆動電流を下げたり、電流を同じにしておく場合はコイルの巻き数を減じることができインジェクタを小さくできる。
以上説明した複数の種類のインジェクタはそれぞれの特徴を併せ持ったインジェクタとして構成できる。つまり、スワラ付きインジェクタを2コイル型のバッテリ駆動インジェクタで構成することができる。中実噴霧あるいは狭角噴霧型のインジェクタを2コイル型のバッテリ駆動インジェクタで構成することができる。
いずれのインジェクタを用いた場合にも図22に示す如く、その先端に燃料噴射方向をプラグ側に変更する変更要素199を備えた偏向噴霧型のインジェクタとすることができる。この実施例では変更要素199はインジェクタの中心軸線h1に対してプラグ取付け方向に角度δだけ中心軸線が傾斜した燃料導出通路198を有する突出部として構成した。
このインジェクタによれば1回の噴射タイミングの間に少なくとも2つの偏向噴霧がプラグに向かって供給されることになる。
本構成によれば空気やピストンのキャビティのようなガイド機構が不要になる。
従って、冠面のフラットなピストンと組み合わせて用いることができる。
また、吸気ポートにタンブル空気流動生成装置を設ける必要もなくなる。
本実施例により解決しようとする課題は以下の通りである。
筒内噴射型内燃機関に従来使われているインジェクタはコンデンサを含む高電圧発生装置で駆動されているため、インジェクタを1回の噴射タイミングの間に複数回開閉駆動する場合、各噴射の間の閉弁区間の間にコンデンサをチャージする時間が必要であり、噴射間隔を小さくすることができず、エンジンの高回転領域で燃焼行程の時間が短い場合には1回の噴射タイミングの間に複数回噴射させることができないという問題がある。
更に、従来技術ではスタータが駆動されているような内燃機関の運転領域での成層燃焼については論じられていない。これはこのような状態で成層燃焼させて燃焼に失敗すると通常の何倍ものHCが排出され、厳しいヨーロッパの排気ガス規制をクリアできなくなるから、燃焼に失敗しないように濃い空燃比で始動させる狙いによるものである。
しかし、濃い空燃比で始動するとそれだけHCは多く排出される。
また、上記従来技術では1回の燃料噴射タイミングに複数回インジェクタを駆動するに当たり電力の消費が激しいことについて考慮されていない。
本発明の目的の一つは、成層燃焼領域を従来より広げ、燃費の向上,エミッションの改善を図ることにある。
本実施例の目的は、1回の噴射タイミングの間に複数回噴射させる運転領域を拡大して燃費の向上,エミッションの改善を図ることにある。
本実施例の別の目的は、1回の燃料噴射タイミングに複数回インジェクタを開閉駆動しても電力消費を少なく抑えることにある。
本実施例は上記目的のいずれか一つを達成するために、
第1に、燃料噴射弁は開弁起動状態とその後の開弁保持状態とで電磁コイルに流れる電流の状態が変化するように構成し、且つ1回の燃料噴射タイミングの間に、開弁起動状態と開弁保持状態のサイクルが、少なくとも2回繰り返されるように構成した。
第2に、燃料噴射弁に2つの電磁コイルを設け、その噴射弁の開弁起動状態とその後の開弁保持状態とで2つの電磁コイルに流れる電流の状態が切り替わるように構成し、且つ1回の燃料噴射タイミングの間に、開弁起動状態と開弁保持状態のサイクルが、少なくとも2回繰り返され、その都度電流の流れる状態が切り替わるよう構成した。
第3に、第1,2の構成において1回の噴射タイミングの間に、開弁起動状態と開弁保持状態のサイクルが、所定の閉弁区間を挟んで少なくとも2回繰り返されるよう構成される。
第4に、燃料噴射弁は燃料通路を開閉する弁体と弁座を有し、且つこの弁座の上流に燃料に旋回力を付与する半径方向外側から内側に向かう放射状の燃料通路を有し、当該燃料通路には1回の燃料噴射タイミングの間に少なくとも2回の半径方向外側から内側に向かう燃料の流れが形成されるように構成した。
さらに、スタータ駆動中に、燃料噴射弁が1回の燃料噴射タイミングの間に少なくとも2回燃料通路を開閉するように構成した。
第5に、燃料噴射弁はペネトレーションの長い噴霧状態とペネトレーションの短い噴霧状態に切替えられるように構成し、成層燃焼状態ではペネトレーションの短い噴霧状態に切替え、均質燃焼状態ではペネトレーションの長い噴霧状態に切替え、且つペネトレーションが短い状態では1回の噴射タイミングの間に少なくとも2回燃料を噴射するように構成した。
第6に、燃料噴射弁は燃料噴射孔部に燃料噴霧をプラグの方向に変更する変更要素を含んでおり、且つ当該変更要素から、1回の噴射タイミングの間に少なくとも2回点火プラグに向けて燃料を噴射するよう構成した。
第7に、吸気ポートに設けた空気流動生成装置により燃焼室内に空気流動を生成し、燃料噴射弁から燃焼に必要な燃料を複数回に分割して噴射し、空気流動で複数回の燃料噴霧を点火プラグ方向へガイドするよう構成した。
ものである。
本実施例の実施の態様は以下の通りである。
(実施の態様1)
燃料を直接燃焼室内に噴射する燃料噴射弁を備えた筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は電磁コイルを有し、当該電磁コイルは前記噴射弁の開弁起動状態とその後の開弁保持状態とで電流の流れる状態が変化するように構成されており、
且つ、1回の燃料噴射タイミングの間に、開弁起動状態と開弁保持状態のサイクルが、少なくとも2回繰り返される筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置。
(実施の態様2)
燃料を直接燃焼室内に噴射する燃料噴射弁を備えた筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は2つの電磁コイルを有し、当該2つの電磁コイルは前記噴射弁の開弁起動状態とその後の開弁保持状態とで電流の流れる状態が切り替わるように構成されており、且つ、1回の燃料噴射タイミングの間に、開弁起動状態と開弁保持状態のサイクルが、少なくとも2回繰り返されるように電流の流れる状態が切り替わる筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置。
(実施の態様3)
実施の態様1,2において、1回の噴射タイミングの間に、開弁起動状態と開弁保持状態のサイクルが、所定の閉弁区間を挟んで少なくとも2回繰り返される筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置。
(実施の態様4)
燃料を直接燃焼室内に噴射する燃料噴射弁を備えた筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は燃料通路を開閉する弁体と弁座を有し、且つこの弁座の上流に燃料に旋回力を付与する半径方向外側から内側に向かう放射状の燃料通路を有し、当該燃料通路には1回の燃料噴射タイミングの間に少なくとも2回の半径方向外側から内側に向かう燃料の流れが形成される筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置。
(実施の態様5)
スタータによって起動され、且つ燃料を直接燃焼室内に噴射する燃料噴射弁を備えた筒内噴射型内燃機関の燃料制御方法において、
前記スタータ駆動中に、前記燃料噴射弁が1回の燃料噴射タイミングの間に少なくとも2回燃料通路を開閉するように構成した筒内噴射型内燃機関の燃料制御方法。
(実施の態様6)
燃料を直接燃焼室内に噴射する燃料噴射弁を備え、成層燃焼状態と均質燃焼状態に燃焼状態を切り替えられるように構成した筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁はペネトレーションの長い噴霧状態とペネトレーションの短い噴霧状態に切替えられるように構成し、前記成層燃焼状態のうちの特定の成層燃焼領域ではペネトレーションの短い噴霧状態に切替え、前記均質燃焼状態のうちの特定の成層燃焼領域ではペネトレーションの長い噴霧状態に切替え、且つペネトレーションが短い状態では1回の噴射タイミングの間に少なくとも2回燃料を噴射するように構成した筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置。
(実施の態様7)
燃料を直接燃焼室内に噴射する燃料噴射弁と、当Y燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧に着火する点火プラグを備えた筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は、当該燃料噴射弁の燃料噴射孔部に燃料噴霧を前記プラグの方向に変更する変更要素を含んでおり、且つ当該変更要素から、1回の噴射タイミングの間に少なくとも2回前記点火プラグに向けて燃料を噴射する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射装置。
(実施の態様8)
空気が吸入される燃焼室と、前記燃焼室に直接燃料を供給する燃料噴射弁と、燃料に点火する点火プラグと、燃焼室容積を変化させるピストンを有し、吸気ポートに設けた流動生成装置により燃焼室内に空気流動を生成し、それにより噴霧を点火プラグ方向へガイドするよう構成し、更に前記燃料噴射弁から燃焼に必要な燃料を複数回に分割して噴射するよう制御する噴射制御手段を設けた筒内噴射型内燃機関。
(実施の態様9)
前記噴射制御手段は、低回転低負荷の成層運転領域において燃料を圧縮行程に複数回に分割して噴射するよう制御する実施の態様8に記載の筒内噴射型内燃機関。
(実施の態様10)
前記噴射制御手段は、複数回に分割した噴霧がとぎれることなく連続的に前記点火プラグを通過するように各回の噴射時期を制御する実施の態様8または9に記載の筒内噴射型内燃機関。
(実施の態様11)
前記噴射制御手段は、先行噴射で燃料噴射弁から点火プラグ方向への燃料噴霧の流動を生成し、当該燃料流動により引き続く後噴射による燃料噴霧を点火プラグへガイドするように燃料噴射時期を制御する実施の態様8乃至10のいずれかに記載の筒内噴射型内燃機関。
(実施の態様12)
前記噴射制御手段は、機関の低回転低負荷時には前記燃料噴射弁から1回の燃料噴射タイミングの間に1回の開弁で燃料を噴射するよう制御し、前記燃料噴射弁は当該燃料噴霧が点火プラグへ到達するだけのペネトレーションを持つ狭角型燃料噴射弁を用いた実施の態様8乃至11のいずれかに記載の筒内噴射型内燃機関。
(実施の態様13)
前記燃料噴射弁は燃焼室中央に設けられ、燃焼室上部から燃焼室内へ向けて燃料を噴射するものである実施の態様8乃至12のいずれかに記載の筒内噴射型内燃機関。
(実施の態様14)
前記燃料噴射弁は上流スワラ型燃料噴射弁を用いた実施の態様8乃至13のいずれかに記載の筒内噴射型内燃機関。
(実施の態様15)
前記燃料噴射弁は内燃機関に搭載されたバッテリーの発生電圧以下の電圧で駆動する燃料噴射弁を用いた実施の態様8乃至14のいずれかに記載の筒内噴射型内燃機関。
タンブルガイド筒内噴射エンジン斜視図。 タンブルガイド筒内噴射エンジン断面図。 (a),(b),(c)は一括噴射と2回噴射の噴霧特性の相違を説明するための図面。 各運転領域における噴射方法を説明するための図面。 回転数−負荷による噴射方法マップ。 噴射方法選択のフローチャート。 エンジンコントロールユニットの構成を説明するための図面。 2回噴射による弱成層混合気分布(第一と第二噴射の間隔大)を説明するための図面。 第一噴射により生成されるプラグ方向への空気流動を説明するための図面。 2回噴射による弱成層混合気分布(第一と第二噴射の間隔小)を説明するための図面。 クランク角度とプラグ付近混合気濃度の関係を説明するための図面。 噴射時の筒内圧力が噴霧に与える影響を説明するための図面。 噴射間隔D1の最適値を説明するための図面。 噴射比率T1/T2の最適値を説明するための図面。 噴射期間と燃料流量の関係を説明するための図面。 タンブルガイド筒内噴射エンジンに狭角噴霧のインジェクタを適用した場合の説明をするための図面。 直上噴射筒内噴射エンジンに2回噴射を適用した場合の説明をするための図面。 壁ガイド筒内噴射エンジンに2回噴射を適用した場合の説明をするための図面。 フラットピストン型筒内噴射エンジンに2回噴射を適用した場合の説明をするための図面。 (a),(b)はインジェクタの主要部を説明するための図面。 (a)はインジェクタの構成を説明するための図面、(b)はインジェクタの制御回路の構成を説明するための図面、(c)はインジェクタの動作を説明するための図面。 偏向噴霧型インジェクタの主要部を説明するための図面。
符号の説明
1…インジェクタ、2…コイル、3…プランジャ、4…スワラ、10…吸気弁、21…空気流動制御弁、30…エンジン、31…ピストン、32…点火プラグ、50…空気流動、60…噴霧、111…排気弁。

Claims (6)

  1. 燃料を直接燃焼室に噴射する燃料噴射弁を備え、且つ排気管の途中に触媒を備えた筒内噴射型内燃機関において、
    機関の始動時に圧縮行程以降に燃料を噴射して、希薄燃焼させることを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
  2. 請求項1に記載のものにおいて、機関の圧縮行程と引き続く膨張行程に燃料を噴射することを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
  3. 請求項2に記載のものにおいて、前記燃料噴射時間は他の2回噴射運転領域における燃料噴射時間より長いことを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
  4. 請求項2,3のいずれかに記載のものにおいて、スタータ起動時には最初に圧縮工程中の気筒で連続して2回、燃料を噴射することを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のものにおいて、始動時に成層燃焼することを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
  6. 請求項1に記載したものにおいて、高負荷運転時には吸入行程噴射で均質燃焼させることを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
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