JP2006131888A - 不飽和脂肪酸濃縮物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、C16以上の共役不飽和脂肪酸であって少なくとも2種の異性体を含む混合物、及びシス二重結合を有するC16以上の不飽和脂肪酸であって少なくとも2種のシス位置異性体を含む混合物からなる群から選択される混合物(A)から所望の異性体(a)を濃縮した濃縮物を製造する方法であって、混合物(A)とC4-C14の飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合して異性体(a)が溶解した混合溶液を得る工程、該混合溶液から、異性体(a)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、及び異性体(a)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程を含むことを特徴とする前記濃縮物の製造方法を提供する。
Description
その他に、リパーゼの存在下で共役リノール酸の異性体混合物を構成成分とする脂肪酸混合物またはそのグリセリドエステル混合物を、有機溶媒を含まない反応系で共役リノール酸異性体に対する選択反応に付すことを特徴とする共役リノール酸異性体の精製方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、リパーゼ存在下で共役リノール酸異性体混合物とオクタノールとを反応させ、オクタノールエステル画分における共役リノール酸異性体組成比を変えることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。また、リパーゼ存在下で直鎖高級アルコールと選択的エステル化反応させることによって、9c,11t-共役リノール酸含有脂肪酸を得る方法が報告されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これらのリパーゼを用いた方法は、リパーゼが非常に高価である上、リパーゼ存在下での各不飽和脂肪酸異性体とアルコール類、または各不飽和脂肪酸異性体誘導体の加水分解の反応性の違いにより分離する方法であるため、反応生成物と未反応物を分離する操作(例えば、蒸留)が必要であり、さらに分離後も異性体の誘導体については再度加水分解するなどの操作が必要であり、コストがかかる。また、使用するアルコール(例えば、オクタノール)によっては食用に不向きである。
また、本発明は、上記濃縮物を用いるエステル化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のこれらの目的及び他の目的は、以下の記載から明らかとなるであろう。
すなわち、本発明は、C16以上の共役不飽和脂肪酸であって少なくとも2種の異性体を含む混合物、及びシス二重結合を有するC16以上の不飽和脂肪酸であって少なくとも2種のシス位置異性体を含む混合物からなる群から選択される混合物(A)から所望の異性体(a)を濃縮した濃縮物を製造する方法であって、
混合物(A)とC4-C14の飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合して異性体(a)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、及び
異性体(a)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程
を含むことを特徴とする前記濃縮物の製造方法を提供する。
混合物(A)とC4-C14の飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合して異性体(a1)及び異性体(a2)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、及び
異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程
を含むことを特徴とする前記濃縮物の製造方法を提供する。
混合物(A)とC4-C14の飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合して異性体(a1)及び異性体(a2)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶を析出させるか、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、及び
異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶及び異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な溶液を得るため、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶及び異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な溶液を得るための固液分離処理工程
を含むことを特徴とする前記濃縮物の製造方法を提供する。
さらに、得られる濃縮物は食品用途に利用可能であり、濃縮物を用いて製造されたモノグリセライド(MG)、ジグリセライド(DG)、トリグリセライド(TG)などのエステルについても、食品用途に利用できる。
混合物(A)に含まれるC16以上の共役不飽和脂肪酸としては、共役リノール酸、共役リノレン酸(カタルピン酸、ヤリカリン酸、α−カレンディン酸、β−カレンディン酸、プニカ酸、α−エレオステアリン酸など)、共役アラキドン酸、共役イコサペンタエン酸、共役ドコサヘキサエン酸、オキシ共役ポリエン酸(ディモルフェコリン酸、コリリン酸、アルテミジン酸、カムロレニン酸、リカン酸など)などが挙げられる。好ましくは、C16-C20の共役不飽和脂肪酸であり、より好ましくは共役リノール酸である。
混合物(A)に含まれるシス二重結合を有するC16以上の不飽和脂肪酸としては、ヘキサデセン酸(パルミトオレイン酸など)、オクタデセン酸(オレイン酸、ペテロセリン酸、シス−バクセン酸など)、イコセン酸、テトラコセン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸(リノール酸など)、イコサジエン酸、デコサジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカトリエン酸(リノレン酸など)、イコサテトラエン酸(アラキドン酸など)、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、不飽和ヒドロキシ酸(リシノール酸、オキシリノレン酸など)などが挙げられる。好ましくは、シス二重結合を有するC16-C20の不飽和脂肪酸で、さらに好ましくはオクタデセン酸(オレイン酸、ペテロセリン酸、シス−バクセン酸)である。
混合物(A)としては、混合物(A)中の飽和脂肪酸濃度が20質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
混合物(A)と飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合する場合には、濃縮物において濃縮すべき所望の異性体(a、a1又はa2)が溶解した混合溶液を調製することが好ましい。混合の際には有機溶媒を用いることもできる。ここで、好ましい有機溶媒としては、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトンなど)、炭化水素類(例えばヘキサン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエンなど)、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、プロパノールなど)、含水アルコール、エーテル類(例えばジエチルエーテルなど)、エステル類(例えば酢酸エチルなど)などが挙げられる。沸点以下の温度で脂肪酸を溶解する溶剤で融点が冷却温度よりも低ければ何でもかまわない。より好ましくは、アセトン、ヘキサン、アルコール、含水アルコールなどであり、最も好ましくはアセトン、ヘキサンである。
混合物(A)と飽和脂肪酸(B)1種以上との混合割合は、好ましくは混合物(A)100質量部に対して飽和脂肪酸(B)1種以上が1質量部以上である。より好ましくは、混合物(A)100質量部に対して飽和脂肪酸(B)1種以上が5〜500質量部、さらに好ましくは、混合物(A)100質量部に対して飽和脂肪酸(B)1種以上が10〜300質量部である。
異性体(a)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、
又は
異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、
又は
異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶を析出させるか、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程
を含む。
ここで、「異性体(a、a1又はa2)に富んだ結晶」とは、異性体純度 =(所望の異性体(a、a1又はa2)量または濃度)/(全異性体量または濃度)が、混合物(A)よりも高い結晶を意味し、好ましくは混合物(A)の1.2倍以上であり、より好ましくは1.3倍以上であり、最も好ましくは1.5倍以上である。また、「異性体(a、a1又はa2)が希薄な結晶」とは、異性体純度 =(所望の異性体(a、a1又はa2)量または濃度)/(全異性体量または濃度)が、混合物(A)よりも低い結晶を意味し、好ましくは混合物(A)の0.8倍以下であり、より好ましくは0.7倍以下であり、最も好ましくは0.65倍以下である。
異性体(a)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程、
又は
異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程、
又は
異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶及び異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な溶液を得るため、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶及び異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な溶液を得るための固液分離処理工程
を含む。これにより、所望の異性体を濃縮した濃縮物を得ることができる。
除去方法は、一般的な油脂、脂肪酸について行う方法と同様に行うことができ、蒸留法、界面活性剤分別法、クロマトグラム法などが利用できる。蒸留法が望ましい。
アルコール性水酸基を分子内に少なくとも1つ有する化合物としては、各種モノアルコール、多価アルコール、アミノアルコールなど種々の化合物があげられる。具体的には、短鎖、中鎖、長鎖の飽和、不飽和、直鎖、分岐アルコール、グリコール類、グリセリン、エリスリトール類といった多価アルコールがあげられる。これらのうち、グリセリンが好ましい。
エステル化の条件は、例えば、特開平13−169795号公報や特開平15−113396号公報などに記載の条件に準じて行うことができる。一例をあげると、基質の合計質量、すなわちアルコール性水酸基を有する化合物と不飽和脂肪酸異性体濃縮物の合計質量に対して、リパーゼを0.1〜2質量%添加し、30〜60℃で24〜72時間反応させる。この際、反応系を減圧にしてエステル化により生じる水を除去しながら反応を行うのがよい。
この実施例で用いる材料及び分析装置は以下の通りである。
(1)材料
共役リノール酸 CLA80HG 日清オイリオグループ株式会社
ヘキサン酸(C6:0) 東京化成工業株式会社
オクタン酸(C8:0) 東京化成工業株式会社
デカン酸(C10:0) 東京化成工業株式会社
ラウリン酸(C12:0) 東京化成工業株式会社
ミリスチン酸(C14:0) 東京化成工業株式会社
パルミチン酸(C16:0) 東京化成工業株式会社
アセトン(特級) ナカライテスク株式会社
トルエン(特級) 和光純薬工業株式会社
ヘキサン(特級) 和光純薬工業株式会社
エタノール(特級) 和光純薬工業株式会社
グリセリン 和光純薬工業株式会社
14%3フッ化ホウ素メタノール錯体メタノール溶液
和光純薬工業株式会社
リパーゼQLM 名糖産業株式会社
リパーゼRM 当社出願特許 特願平2004-114443により製造
(2)分析装置
ガスクロマトグラフィー(GC-2010) 株式会社 島津製作所 製
カラム ; DB-23 30 m×0.25 μm×0.25 mm Agilent Technologies社製
(1)異性体分析方法
試料25mgに1mLのトルエンと2mLの14%3フッ化ホウ素メタノール錯体メタノール溶液を加えて、40℃で10分間加熱する。反応後、飽和食塩水を3mL加えて氷冷し、2mLのヘキサンを加えてメチルエステルを抽出する。ヘキサン抽出液を硫酸ナトリウムにて乾燥し、得られたメチルエステル混合物をDB-23(Agilent Technologies)30 m×0.25 μm×0.25 mmをもちいたGLCにて分析を行った。
(2)GLC分析条件
機器 GC-2010(株式会社 島津製作所)
カラム DB-23(Agilent Technologies) 30 m×0.25 μm×0.25 mm
検出器 FID
キャリアガス He(1mL/min)
スプリット比 100:1
カラム温度℃ 130℃ → 220 ℃(2 ℃/min)
注入口温度 250 ℃
検出器温度 250 ℃
以下において用いられる異性体純度とは、下記式によって与えられる量である。
異性体純度 =(所望の異性体量または濃度)/(全異性体量または濃度)
また、共役リノール酸の異性体について、下記の記号を用いる。
9c11t:9−シス,11−トランス共役リノール酸
10t12c:10−トランス,12−シス共役リノール酸
9c11c:9−シス,11シス共役リノール酸
10c12c:10−シス,12−シス共役リノール酸
tt:9−トランス,11−トランス共役リノール酸と10−トランス,12−トランス共役リノール酸の合計
また、オクタデセン酸(18:1)の異性体について、下記の記号を用いる。
18:1 : オクタデセン酸
n9:オレイン酸
n11:シス−バクセン酸
検討には、2つの異なるロットのCLA80HGを用いた。それぞれの組成を表1に示す。
共役リノール酸 CLA80HG-1 500gにアセトン1500gを加えて溶解し、これを-20℃で一晩攪拌しながら冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別し、固形部および液状部のアセトンを留去し、固形部1を19g、液状部1を480g得た。CLA異性体の結果を表2に、オクタデセン酸異性体の結果を表3に示す。CLAについては固形部、液状部ともに異性体純度に変化は見られず異性体濃縮物は得られなかった。特に、固形部は非常に収量が少ないにもかかわらず異性体濃縮物は得られなかったので、本状件で異性体純度の向上は望めない。オクタデセン酸については、固形部にシス−バクセン酸の濃縮(1.26倍)が見られた。しかし、固形部は収量が非常に低く、これ以上の異性体純度向上は困難である。
CLA80HG-1 20gにアセトン60gを加えて溶解し、これを-30℃で一晩冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別し、固形部および液状部のアセトンを留去し、固形部2を6.7g、液状部2を12.5g得た。CLA異性体の結果を表4に、オクタデセン酸異性体の結果を表5に示す。CLAについては、固形部、液状部ともに異性体純度に変化は見られず異性体濃縮物は得られなかった。オクタデセン酸についても、固形部、液状部ともに異性体純度に変化は見られず異性体濃縮物は得られなかった。
比較例1で得られた液状部1 10gにアセトン30g加え溶解し、これを-30℃で一晩冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別した後、固形部と液状部のアセトンを留去し、固形部3を4.0g、液状部3を5.5g得た。CLA異性体の結果を表6にオクタデセン酸異性体の結果を表7に示す。CLAについては固形部、液状部ともに異性体純度におおきな変化は見られず、異性体濃縮物は得られなかった。オクタデセン酸についても、固形部、液状部ともに異性体純度におおきな変化は見られず、異性体濃縮物は得られなかった。
CLA80HG-2 3500gにアセトン3500gを加えて溶解した。これを攪拌しながら一晩-15℃に冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別し、固形部および液状部のアセトンを留去し、固形部4を230g、液状部4を3260g得た。CLA異性体の結果を表8にオクタデセン酸異性体の結果を表9に示す。
CLAについては固形部、液状部ともに異性体純度に大きな変化は見られず異性体濃縮物は得られなかった。オクタデセン酸については、固形部にシス−バクセン酸の濃縮(1.25倍)が見られた。しかし、固形部は収量が非常に低く、これ以上の異性体純度向上は困難である。
異性体分離実験には、添加する飽和脂肪酸の効果をより明確なものにするため、飽和脂肪酸をできるだけ除去したもの、すなわち一度冷却晶析を行い固形部を除去した液状部を用いた。
比較例1で得られた液状部1に各種飽和脂肪酸とアセトンを加えて混合溶液を調製し、これらを各温度に冷却しながら一晩静置した。次いでデカンテーションにて固形部と液状部を分離した後アセトンを留去した。晶析条件および収量の結果を表10に、異性体純度や脂肪酸組成の結果を表11に示す。固形部の異性体純度はオクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸でおおきな変化が見られ、オクタン酸では9c11t体の異性体濃縮物が、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸では10t12C体の異性体濃縮物が得られた。固形部に濃縮される異性体が、オクタン酸では9c11t体であったが、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸では10t12c体であった。固形部に含まれる添加脂肪酸を見ると、オクタン酸は他の脂肪酸と比較して非常に低い。添加飽和脂肪酸の析出量と異性体の種類に相関が見られた。液状部の異性体純度はオクタン酸、デカン酸でおおきな変化が見られ、オクタン酸では10t12c体の異性体濃縮物が、デカン酸では9c11t体の異性体濃縮物が得られた。
比較例4で得られた液状部4 8.0gとヘキサン酸 2.0gにアセトン30g加えて混合溶液を調製し、-30℃で一晩冷却した。次いでデカンテーションにて固形部と液状部を分離した後アセトンを留去した。固形部5を1.7gと液状部5を8.2g得た。結果を表12に示す。固形部の異性体純度に大きな変化がみられた。実施例1のオクタン酸と同様に、固形部には9c11tが濃縮され、添加脂肪酸の析出が非常に少なかった。液状部には、10t12c体が濃縮された。
比較例4で得られた液状部4にデカン酸とアセトンを加えて混合溶液を調製し、これらを攪拌しながら各温度にて3時間冷却した。次いで固形部と液状部を減圧濾過にて分離した後にアセトンを留去した。晶析条件および収量の結果を表13に、異性体純度や脂肪酸組成の結果を表14に示す。
液状部4とデカン酸の添加比率(液状部4/デカン酸)が7/3から2/8までの比率では固形部に10t12c体の異性体純度の向上がみられた。特に7/3から4/6の比率で大きな向上が見られた。液状部では7/3から4/6の比率で9c11t体の異性体純度の向上がみられた。特に6/4から4/6の比率で大きな向上が見られた。添加比率が5/5の条件では冷却温度を下げると固形部の10t12c異性体純度が下がるが、液状部の9c11t異性体純度が向上した。
比較例4で得られた液状部4とデカン酸を重量比率が6/4になるように測りとり(溶質)、アセトン(溶媒)を加えて混合溶液を調製し、これらを攪拌しながら各温度にて3時間冷却した。次いで固形部と液状部を減圧濾過にて分離した後にアセトンを留去した。晶析条件および収量の結果を表15に、異性体純度や脂肪酸組成の結果を表16に示す。
溶質とアセトンの比率(溶質/アセトン)がどの値でも、固形部では10t12c体の、液状部では9c11t体の異性体純度が向上した。
比較例4で得られた液状部4にデカン酸と各種溶剤を加えて混合溶液を調製し、これらを各温度に冷却しながら一晩静置した。次いでデカンテーションにて固形部と液状部を分離した後溶剤を留去した。晶析条件および収量の結果を表17に、異性体純度や脂肪酸組成の結果を表18に示す。
使用した3種類の溶媒すべての固形部の10t12c体の異性体純度の向上がみられた。
比較例4で得られた液状部4 10gとオクタン酸 90gにアセトン300gを加えて混合溶液を調整し、これを-25℃にて攪拌しながら10時間冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別した後アセトンを留去し、固形部6を19gと液状部6を78g得た。分析結果を表19に示す。
固形部、液状部ともに異性体純度が変化し、固形部の9c11t体の濃度が大きく向上した。液状部の10t12c体の異性体純度も向上した。
液状部1 100gとデカン酸 100gにアセトン600g加えて混合溶液を調整し、これを-35℃にて攪拌しながら3時間冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別した後アセトンを留去し、固形部7を105gと液状部7を95gを得た。結果を表20に示す。固形部、液状部ともに異性体純度が大きく変化し、固形部に10t12C体が液状部に9c11t体が濃縮され、それぞれの異性体濃縮物を得た。
実施例7で得られた固形部7から70gをはかりとり、温度100から150℃、真空度3torrにてデカン酸を留去し、濃縮物1を31g得た。結果を表21に示す。中鎖脂肪酸の除去工程では異性体純度に変化はなく分解や異性化は見られなかった。CLA80HG-1と比較すると濃縮物1の10t12c純度は1.4倍に上昇しているが、共役脂肪酸濃度はわずかに低下している。これはパルミチン酸、ステアリン酸が固形部へと濃縮されたためである。濃縮原料に含まれる飽和脂肪酸は少ない方が望ましい。
実施例7で得られた液状部7から70gをはかりとり、温度100から150℃、真空度3torrにてデカン酸を留去し、濃縮物2を31.5g得た。結果を表22に示す。中鎖脂肪酸の除去工程では異性体純度に変化はなく分解や異性化は見られなかった。CLA80HG-1と比較すると濃縮物2の9c11t純度は1.44倍に上昇している。
液状部4 50gとデカン酸 50gにアセトン300g加えて混合溶液を調整し、これを-35℃にて攪拌しながら3時間冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別した後アセトンを留去し、固形部8を53gと液状部8を46gを得た。CLA異性体の濃縮結果を表23に、オクタデセン酸異性体の濃縮結果を表24に示す。
共役リノール酸の異性体については、固形部、液状部ともに異性体純度が大きく変化し、固形部に10t12C体が液状部に9c11t体が濃縮され、それぞれの異性体濃縮物を得た。
オクタデセン酸の異性体については、固形部のシス−バクセン酸(n11)の異性体純度が大きく向上(1.79倍)し、その向上率は、固形部の収率が50%以上と非常に高いにもかかわらず、比較例1や4で見られた濃縮効果(1.26倍)よりも高かった。
実施例10で得られた固形部8 53gにアセトン159g加えて混合溶液を調整し、これを-35℃にて攪拌しながら3時間冷却した。次いで減圧濾過にて固形部と液状部に分別した後アセトンを留去し、固形部9を15gと液状部9を37gを得た。結果を表25に示す。固形部、液状部ともに異性体純度が変化し、固形部に10t12C体が液状部に9c11t体が濃縮された。晶析および固液分離を繰り返した結果、固形部の10t12c体異性体純度は更に向上し、高度に濃縮された(1.73倍)濃縮物を得た。
攪拌機付き反応容器に、グリセリン2g及び実施例4で得た共役脂肪酸混合物18gを加え、これに、撹拌下、リパーゼQLM 40mg、リパーゼRM 160mgを添加した。60℃で10トールにて24時間反応させ、トリグリセライド18gを得た。得られたトリグリセライドはトリグリセライド濃度95%、酸価3.1であった。
Claims (22)
- C16以上の共役不飽和脂肪酸であって少なくとも2種の異性体を含む混合物、及びシス二重結合を有するC16以上の不飽和脂肪酸であって少なくとも2種のシス位置異性体を含む混合物からなる群から選択される混合物(A)から所望の異性体(a)を濃縮した濃縮物を製造する方法であって、
混合物(A)とC4-C14の飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合して異性体(a)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、及び
異性体(a)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程
を含むことを特徴とする前記濃縮物の製造方法。 - C16以上の共役不飽和脂肪酸であって少なくとも3種の異性体を含む混合物、及びシス二重結合を有するC16以上の不飽和脂肪酸であって少なくとも3種のシス位置異性体を含む混合物からなる群から選択される混合物(A)から所望の異性体(a1)及び異性体(a2)を濃縮した濃縮物を製造する方法であって、
混合物(A)とC4-C14の飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合して異性体(a1)及び異性体(a2)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、及び
異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程
を含むことを特徴とする前記濃縮物の製造方法。 - C16以上の共役不飽和脂肪酸であって少なくとも2種の異性体を含む混合物、及びシス二重結合を有するC16以上の不飽和脂肪酸であって少なくとも2種のシス位置異性体を含む混合物からなる群から選択される混合物(A)から所望の異性体(a1)を濃縮した濃縮物及び異性体(a2)を濃縮した濃縮物を製造する方法であって、
混合物(A)とC4-C14の飽和脂肪酸(B)1種以上とを混合して異性体(a1)及び異性体(a2)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶を析出させるか、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、及び
異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶及び異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な溶液を得るため、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶及び異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な溶液を得るための固液分離処理工程
を含むことを特徴とする前記濃縮物の製造方法。 - 固液分離処理工程後、飽和脂肪酸(B)を除去処理する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 混合物(A)及び飽和脂肪酸(B)1種以上を混合する際に有機溶媒を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 固液分離処理工程後、有機溶媒及び飽和脂肪酸(B)を除去処理する工程を含む請求項5に記載の製造方法。
- 混合物(A)と飽和脂肪酸(B)1種以上との混合割合が、混合物(A)100質量部に対して飽和脂肪酸(B)1種以上が1質量部以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 異性体(a)、異性体(a1)又は異性体(a2)が4〜16位にシス配置を有する不飽和脂肪酸である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 混合物(A)が、シス配置の位置が異性体(a)、異性体(a1)又は異性体(a2)と2位以上異なる不飽和脂肪酸を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 混合物(A)が共役リノール酸の少なくとも2種の異性体を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 混合物(A)が9−シス,11−トランス共役リノール酸及び10−トランス,12−シス共役リノール酸を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- 飽和脂肪酸(B)がC6-C14の飽和脂肪酸である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
- 飽和脂肪酸(B)がC8又はC10の飽和脂肪酸である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
- 異性体(a)、異性体(a1)又は異性体(a2)が共役リノール酸である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
- 異性体(a)、異性体(a1)又は異性体(a2)が9−シス,11−トランス共役リノール酸又は10−トランス,12−シス共役リノール酸である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1、4〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られた濃縮物と、飽和脂肪酸(B)1種以上及び/又は有機溶媒とを混合して異性体(a)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、
異性体(a)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程
を1回以上繰り返すことを特徴とする異性体(a)を濃縮した濃縮物の製造方法:ここで、前記固液分離処理工程後に、飽和脂肪酸(B)及び/又は有機溶媒を除去処理する工程を含んでもよい。 - 請求項2、4〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られた濃縮物と、飽和脂肪酸(B)1種以上及び/又は有機溶媒とを混合して異性体(a1)及び異性体(a2)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を析出させるか、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、
異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ結晶を得るため、又は異性体(a1)及び異性体(a2)が希薄な結晶を取り除いて異性体(a1)及び異性体(a2)に富んだ溶液を得るための固液分離処理工程
を1回以上繰り返すことを特徴とする異性体(a1)及び異性体(a2)を濃縮した濃縮物の製造方法:ここで、前記固液分離処理工程後に、飽和脂肪酸(B)及び/又は有機溶媒を除去処理する工程を含んでもよい。 - 請求項3〜15のいずれか1項に記載の製造方法により得られた1種の濃縮物と、飽和脂肪酸(B)1種以上及び/又は有機溶媒とを混合して異性体(a1)及び異性体(a2)が溶解した混合溶液を得る工程、
該混合溶液から、異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶を析出させるか、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶を析出させる晶析処理工程、
異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な結晶及び異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な溶液を得るため、又は異性体(a2)に富み、かつ、異性体(a1)が希薄な結晶及び異性体(a1)に富み、かつ、異性体(a2)が希薄な溶液を得るための固液分離処理工程
を1回以上繰り返すことを特徴とする異性体(a1)を濃縮した濃縮物及び異性体(a2)を濃縮した濃縮物の製造方法:ここで、前記固液分離処理工程後に、飽和脂肪酸(B)及び/又は有機溶媒を除去処理する工程を含んでもよい。 - 前記有機溶媒がアセトンまたはヘキサンである、請求項5〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
- 混合物(A)中の飽和脂肪酸濃度が20質量%以下である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
- アルコール性水酸基を分子内に少なくとも1つ有する化合物を、請求項1〜20のいずれか1項記載の製造方法によって得た不飽和脂肪酸濃縮物でエステル化することを特徴とするエステル化物の製造方法。
- アルコール性水酸基を分子内に少なくとも1つ有する化合物がグリセリンである請求項21記載の製造方法。
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