JP2006128436A - 永久磁石型モータ - Google Patents
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Abstract
【課題】着磁界が不足した構成の永久磁石型モータを高出力化、または消費電流を削減するため、優れた着磁性と熱安定性を兼備えた磁石が求められる。
【解決手段】R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とするハード磁性材料、並びにハード磁性相(R2Fe14B)とソフト磁性相(αFe、FeB、Fe2B、Fe3B)とのナノコンポジット材料との、少なくとも2種以上の混合材料を結合剤で固めたとき、4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜680kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整した磁石ロータを搭載した永久磁石型モータであり、更に好ましくは、1.6MA/mと4MA/mのバルス磁界で磁化した際の20℃±5degにおける最大エネルギー積(BH)maxの比が0.96以上である磁石ロータを搭載した永久磁石型モータとする。
【選択図】図8
【解決手段】R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とするハード磁性材料、並びにハード磁性相(R2Fe14B)とソフト磁性相(αFe、FeB、Fe2B、Fe3B)とのナノコンポジット材料との、少なくとも2種以上の混合材料を結合剤で固めたとき、4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜680kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整した磁石ロータを搭載した永久磁石型モータであり、更に好ましくは、1.6MA/mと4MA/mのバルス磁界で磁化した際の20℃±5degにおける最大エネルギー積(BH)maxの比が0.96以上である磁石ロータを搭載した永久磁石型モータとする。
【選択図】図8
Description
本発明は永久磁石型モータの高出力化、高効率化の要素に関し、更に詳しくは、不飽和磁化領域に制約された永久磁石界磁において鉄心との空隙に強い静磁界を発生する永久磁石型モータに関する。
J.J.Croat,J.F.Herbst,R.W.Lee and F.E.Pinkerton:J.Appl.Phys.,Vol.55,2078(1984)らにより、R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)希土類−鉄系合金をメルトスパンしたリボンがHCJ>1.2MA/m,残留磁化Jr800mT,最大エネルギー積(BH)max112kJ/m3の磁気特性を有することが明らかになった。
上記、メルトスパンで得られる材料形態はリボンなどの薄帯や、それを粉砕したフレーク状の粉末に制限される。このため、永久磁石型モータなど使用される環状や円弧状のバルクとするには材料形態の変換、つまり何らかの方法で薄帯や粉末を特定形状のバルクに固定化する技術が必要となる。粉末冶金学における基本的な粉末固定手段は常圧焼結であるが、メルトスパンリボンは準安定状態に基づく磁気特性を維持する必要があるため常圧焼結の適用は困難である。そのため、もっぱら3重量%程度のエポキシ樹脂のような結合剤を利用して薄帯や粉末を特定形状のバルクに固定化することが行われた。R.W.Lee,E.G.Brewere and N.A.Shaffel,IEEE Trans.Magn.,Vol.21,1958(1985)では、(BH)max111kJ/m3のメルトスパンリボンを樹脂で固定すると(BH)max72kJ/m3の等方性希土類−鉄系ボンド磁石ができるとした。
1986年、本発明者らは、上記R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)系メルトスパンリボンを粉砕したフレーク状の粉末を樹脂で固定した(BH)max〜72kJ/m3の小口径環状磁石が永久磁石型モータに有用であることを見出し、特開昭62−196057号公報にて明らかにした(例えば、特許文献1参照)。
その後、T.Shimodaらも前記小口径環状磁石とラジアル異方性希土類−コバルト系ボンド磁石との永久磁石型モータ特性を比較検証し、前者が有用であるとした[“SUPPLEMENTARY MATERIAL,“PERMANENT MAGNETS
1988 UPDATE”,Wheeler Associate,INC(1988)](例えば、非特許文献1参照)。
1988 UPDATE”,Wheeler Associate,INC(1988)](例えば、非特許文献1参照)。
さらに、等方性希土類−鉄系磁石が永久磁石型モータに有用であるという報告が、W.Baran[“The European Business and Technical Outlook for NdFeB Magnets”,Nov.(1989)].G.X.Huang,W.M.Gao,S.F.Yu[”Application of Melt−Spun Nd−Fe−B Bonded Magnet to the Micro−motor”,Proc. of the 11th International Rare−Earth Magnets and Their Applications,Pittsburgh,USA,pp.583−595,(1990)]などによって明らかにされた(例えば、非特許文献2,3参照)。
よって、当該等方性希土類−鉄系磁石は1990年代から電気電子機器に使用される各種永久磁石型モータの磁石として広く普及し、当該モータの高出力化や小型軽量化に貢献
した。
した。
しかしながら、OA、AV、情報通信機器等に搭載される出力が略1W以下の永久磁石界磁型直流モータ、ブラシレスモータ、ステッピングモータなど、所謂永久磁石型モータは当該電気電子機器の小型軽量化、或いは高機能化に伴って、更なるモータ体格の削減と、それに伴う出力低下や消費電流の抑制が求められる。
しかし、モータの出力と体格にはスケーリング則により、例えば、モータの体格を1/10とすると出力は1/1000となってしまう。とくに本発明が対象とする永久磁石モータでは体格減少に伴う出力低下が顕著なため磁石とモータづくりとの融合を一層進展させる必要がある。
上記、モータ体格減少に伴う出力低下や消費電流の増加にはモータの損失削減、または高出力化が有効である。とくに、本発明の対象となる永久磁石型モータの高出力化への有効な手段は、鉄心との空隙に強い静磁界を発生し得る磁石をモータに搭載することであり、磁石粉末素材の磁気性能を如何にモータ性能に反映させるかが重要である。
個々のモータに適用する磁石の具備すべき条件としては、一般に、1)空隙に必要な静磁界を与え得る磁気特性、2)非可逆減磁に代表される安定性、3)求める形状に応じられる形状任意性、4)磁石粉末素材の安定確保からモータ組立に至るまでの総合的な経済性の4点において整合性を確保する必要がある。
本発明が対象とする出力が略1W以下の永久磁石型モータにおいて、高い整合性を獲得した磁石として、R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とした磁石粉末をエポキシ樹脂で密度略6Mg/m3、相対密度略80%に固めた磁石が広く知られている。ここでR2TM14B系磁石粉末として合金組成Ndx(Fe0.8,Co0.2)balanceB6,(X=11〜16)をエポキシ樹脂で固めた密度略6Mg/m3の磁石の保磁力HCJに対する最大エネルギ−積(BH)max、着磁性、すなわち、1.6MA/mと4MA/mパルス着磁後の(BH)maxの比を図1に示す。図のように、R2TM14Bを主相とする磁石粉末をエポキシ樹脂で固めた磁石の着磁性は保磁力HCJの減少に伴って良化するが、(BH)maxはHCJ1000kA/m付近でピークを示し,それより低いHcJ領域では(BH)maxは減少する。従って、出力が略1W以下の本発明が対象とする永久磁石型モータに搭載する磁石としては、磁石粉末の最適化した製造条件で、HcJが640−800kA/mが得られる合金組成Ndx(Fe0.8,Co0.2)balanceB6,(X=11〜16)において、X=12、すなわち、R2TM14B化学量論組成付近の合金組成の磁石粉末が一般に使用される。
上記のようなR2TM14B化学量論組成付近の磁石粉末で、モータ体格の減少に伴う出力低下や消費電流を抑制する例として、F.Yamashita,Y.Sasaki,H.Fukunaga,“Isotropic Nd−Fe−B Thin Arc−shaped Bonded Magnets for Small DC Motors Prepared by Powder Compacting Press with
Metal Ion−implanted Punches”,日本応用磁気学会誌,Vol.25,No.4−2,pp.683−686(2001)に記載されているように、出力200mW級の永久磁石界磁型直流モータに搭載する円弧状磁石において、合金組成Nd12Fe77Co5B6のR2TM14B化学量論組成付近の磁石粉末とエポキシ樹脂を主成分としたコンパウンドを粉末成形し、当該圧粉体のエポキシ樹脂を加熱硬化した円弧状のボンド磁石が、同一磁石粉末の押出成形磁石を基準としたモータ効率を約8%改善している(例えば、非特許文献4参照)。
特開昭62−196057号公報
["SUPPLEMENTARY MATERIAL,"PERMANENT MAGNETS 1988 UPDATE",Wheeler Associate,INC(1988)]
W.Baran["The European Business and Technical Outlook for NdFeB Magnets",Nov.(1989)].
G.X.Huang,W.M.Gao,S.F.Yu["Application of Melt−Spun Nd−Fe−B Bonded Magnet to the Micro−motor",Proc. of the 11th International Rare−Earth Magnets and Their Applications,Pittsburgh,USA,pp.583−595,(1990)]
F.Yamashita,Y.Sasaki,H.Fukunaga,"Isotropic Nd−Fe−B Thin Arc−shaped Bonded Magnets for Small DC Motors Prepared by Powder Compacting Press with Metal Ion−implanted Punches",日本応用磁気学会誌,Vol.25,No.4−2,pp.683−686(2001)
Metal Ion−implanted Punches”,日本応用磁気学会誌,Vol.25,No.4−2,pp.683−686(2001)に記載されているように、出力200mW級の永久磁石界磁型直流モータに搭載する円弧状磁石において、合金組成Nd12Fe77Co5B6のR2TM14B化学量論組成付近の磁石粉末とエポキシ樹脂を主成分としたコンパウンドを粉末成形し、当該圧粉体のエポキシ樹脂を加熱硬化した円弧状のボンド磁石が、同一磁石粉末の押出成形磁石を基準としたモータ効率を約8%改善している(例えば、非特許文献4参照)。
本発明はR2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とするハード磁性材料、並びにハード磁性相(R2Fe14B)とソフト磁性相(αFe、FeB、Fe2B、Fe3B)とのナノコンポジット材料との、少なくとも2種以上の混合材料を結合剤で固めたとき、4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜690kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整した磁石を搭載した永久磁石型モータであり、更に好ましくは、1.6MA/mと4MA/mのバルス磁界で磁化した際の20℃±5degにおける最大エネルギー積(BH)maxの比が0.96以上である磁石を搭載した永久磁石型モータである。
しかしながら、上記のような磁石の作製手段のみでは永久磁石型モータの体格減少に伴ったモータ出力の減少は抑制しきれない。例えば、合金組成Nd12Fe77Co5B6磁石粉末とエポキシ樹脂とのコンパウンドを980MPaで圧縮し、当該圧粉体のエポキシ樹脂を加熱硬化して作製したボンド磁石は密度6.0Mg/m3、4MA/mのパルス磁界で磁化した後の(BH)maxは略80kJ/m3が得られる。しかしながら、モータの体格減少が進むと、磁石の磁極間距離の相対的な減少に伴って、モ−タに実装した磁石を十分磁化するに必要な、例えば4MA/mでの磁化が困難となる。この場合、磁石粉末の磁気性能をモータ性能に十分反映させることはできない。例えば、PM型ステップモータではモータの直径の減少(体格の減少)に応じて磁石ロータの外周面の磁極間距離が狭まる。ステッピングモータは1パルス電流に対応する励磁コイルの起磁力により1ステップ角だけ磁石ロータが変位する。したがって、モータ体格に拘らず磁極の数は一般に10、12、24極である。また、磁極数を増加すれば変位角が狭まって分解能が高まる。
モータ直径(体格)の減少や磁極数の増加によって磁極間距離が狭まると磁石を磁化するための励磁電流の通電導体径が細くなる(通常1極あたり1巻きの巻線を施す)。例えば、合金組成Nd12Fe77Co5B6磁石粉末とエポキシ樹脂との磁石に必要なパルス電流波高値Ipは17〜25kA(導体の電流密度〜22kA/mm2)であるが、仮に磁極間距離を1.25mmとすると、パルス電流波高値Ipの許容限界は着磁ヨークの耐久性を考慮すると6.7kA(導体の電流密度〜22kA/mm2)程度に制限される。換言すると、4MA/mのような十分な着磁界による磁化は不可能で、0.6−1.6MA/
m(15−40%)の所謂、不飽和磁化領域で磁石粉末の磁気性能をモータ性能に反映させなければならない。
m(15−40%)の所謂、不飽和磁化領域で磁石粉末の磁気性能をモータ性能に反映させなければならない。
一方,着磁界が0.6−1.6MA/mのような不飽和着磁領域では、例えば小原、植田、山下、“Nanocomposite材料を用いたボンド磁石と応用”、日本応用磁気学会 第19回学術講演会、(1995)23aG−9.に記載されているようにR2TM14B磁石粉末に比べて1/2以下の保磁力HcJ値、1.05〜1.07倍の残留磁化Jr値をもつαFe/R2Fe14B系ナノコンポジット磁石粉末をエポキシ樹脂で固めた磁石を検討し、当該磁石の外周面をパルス電流波高値Ip=3kA(導体の電流密度22kA/mm2)、磁極50極(磁極間距離0.8mm)とする、R2Fe14B系磁石粉末をエポキシ樹脂で固めた磁石と比較し、1.18倍の磁束量が得られるとしている。しかしながら、この磁石は初期不可逆減磁に代表される磁気的な安定性に乏しい。したがって、熱安定性を兼備えたmW級出力の永久磁石型モータの小型化・高出力化を実現するための磁石が求められる。
R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とするハード磁性材料、並びにハード磁性相(R2Fe14B)とソフト磁性相(αFe、FeB、Fe2B、Fe3B)とのナノコンポジット材料との、少なくとも2種以上の混合材料を結合剤で固めたとき、4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜680kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整した磁石ロータを搭載した永久磁石型モータであり、更に好ましくは、1.6MA/mと4MA/mのバルス磁界で磁化した際の20℃±5degにおける最大エネルギー積(BH)maxの比が0.96以上である磁石ロータを搭載した永久磁石型モータとする。
本発明によれば減磁率の増大など磁石の熱安定性を抑制しながら、0.8〜1.6MA/mと低い着磁界での着磁性を改善でき、結果として鉄心との空隙に強い静磁界が得られる。したがって、難着磁性の構造をもつ永久磁石型モータの高出力化による消費電力削減、或いは更なる小型軽量化が図れる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明はR2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とするハード磁性材料、並びにハード磁性相(R2Fe14B)とソフト磁性相(αFe、FeB、Fe2B、Fe3B)とのナノコンポジット材料との、少なくとも2種以上の混合材料を結合剤で固めたとき、4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜690kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整した磁石を搭載した永久磁石型モータであり、更に好ましくは、1.6MA/mと4MA/mのバルス磁界で磁化した際の20℃±5degにおける最大エネルギー積(BH)maxの比が0.96以上である磁石を搭載した永久磁石型モータである。
上記、R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とするハード磁性材料、並びにハード磁性相(R2Fe14B)とソフト磁性相(αFe、FeB、Fe2B、Fe3B)とのナノコンポジット材料とは、溶湯合金を急冷し、必要に応じて熱処理により、結晶化した磁石粉末である。
図2(a)(b)(c)は溶湯合金を急冷して磁石粉末を作製する代表的な急冷プロセスの概念図である。図において、(a)はスピニングカップガスアトマイゼーション法(
B.H.Rabin,B.M.Ma,“Recent developments in
Nd−Fe−B powder”,120th Topical Symposium of the Magnetic Society of Japan,pp.23−28(2001))、(b)はストリップキャスト法(S.Hirosawa,H.Kanekiyo,Y.Shigemoto,T.Miyoshi,”Nd−Fe−B−Based nanocomposite magnets suitable for strip−casting”,Proc. 18th Int.workshop on High−Performance Magnets and Their Applications”Annecy,France,pp.655−667(2004))、(c)はメルトスピニング法を示している。何れもR2TM14B系溶湯合金1を2a(回転カップ)、2b(回転ドラム)、2c(回転ロ−ル)を介して急冷凝固し、必要に応じて適宜熱処理(結晶化)し、R2TM14B相を析出させて磁石粉末とする。
B.H.Rabin,B.M.Ma,“Recent developments in
Nd−Fe−B powder”,120th Topical Symposium of the Magnetic Society of Japan,pp.23−28(2001))、(b)はストリップキャスト法(S.Hirosawa,H.Kanekiyo,Y.Shigemoto,T.Miyoshi,”Nd−Fe−B−Based nanocomposite magnets suitable for strip−casting”,Proc. 18th Int.workshop on High−Performance Magnets and Their Applications”Annecy,France,pp.655−667(2004))、(c)はメルトスピニング法を示している。何れもR2TM14B系溶湯合金1を2a(回転カップ)、2b(回転ドラム)、2c(回転ロ−ル)を介して急冷凝固し、必要に応じて適宜熱処理(結晶化)し、R2TM14B相を析出させて磁石粉末とする。
上記、図2(a)(b)(c)において、原理上冷却速度は(a)<(b)<(c)となり、一般に冷却速度が速い程、結晶化の際に微細なR2TM14B相、或いはαFe、FeB、Fe2B、Fe3B相を析出することができる。R2TM14B相、或いはαFe、FeB、Fe2B、Fe3B相が微細化すると交換結合が高まり、レマネンスエンハンスメント効果により、高残留磁化Jr磁石粉末となる。
一方、図2(a)(b)(c)によって作製した磁石粉末の形状を図3(a)(b)(c)に示す。ただし、図3(a)(b)(c)は、それぞれ図2(a)(b)(c)に対応している。ここで、図3(a)は平均粒子径80μm、残留磁化760mT、保磁力HCJ750kA/mのR2TM14B球状磁石粉末、図3(b)は平均粒子径80μm、残留磁化835mT、保磁力HcJ635kA/mのFeB/R2TM14B塊状磁石粉末、図3(c)は厚さ30〜40μm、残留磁化750−850mT、保磁力HcJ750−1300kA/mのリボンを平均粒子径150μm程度に粉砕したR2TM14Bフレーク状磁石粉末、或いは残留磁化900−970mT、保磁力HCJ320−480kA/mのαFe/R2TM14Bフレーク状磁石粉末である。
本発明にかかる磁石は図2(a)(b)(c)、並びに図3(a)(b)(c)で示した2種以上の形態の磁石粉末を適宜組合せ、少なくとも2種以上の混合材料を結合剤で固めたとき、4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜690kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整した磁石とする。
上記、保磁力HCJと残留磁化Jrの調整は混合材料の割合と結合剤で固めた磁石の密度で調整可能である。例えば、R2TM14Bフレーク状磁石粉末はミクロ的には異なる磁気特性を持つR2TM14B結晶の集合体であり、その磁気特性の分布が広範囲なものが、狭い範囲のものと同様の振る舞いをすると仮定すれば、混合材料を結合剤で固めた磁石もR2TM14Bフレーク状磁石粉末を結合剤で固めた磁石と全く同じ磁気特性を示すことになる。
通常、保磁力の異なる磁石粉末を混合すると減磁曲線に段が生じる場合がある。例えば、R2TM14Bフレ−ク状磁石粉末にフェライト系磁石を混合した場合である。そこで、保磁力HCJが数kA/m異なる磁石粉末を混合した際の減磁曲線について静磁気相互作用の有無と減磁曲線の関係について図4(a)(b)のような計算機シミュレーションを行なった。
図4(a)(b)におけるモデルは低HCJと高HCJ磁石粉末がモザイク状に混合された磁石であって、縦・横・高さ方向に無限に繰り返されていると仮定した。そして、個々の粉末の大きさ800nm、1つの磁石粉末は512個のR2TM14B結晶粒で構成され、
それら個々の結晶粒子径は100nmとした。また、相互作用としては以下のものを考慮した。モデル1(静磁気相互作用:あり、結晶粒間交換相互作用:同じ粉末内にある結晶についてのみ考慮)、モデル2(静磁気相互作用:なし、結晶粒間交換相互作用:同じ粉末内にある結晶についてのみ考慮)としたとき、図4(a)(b)のように、静磁気相互作用で減磁曲線の2段化がある程度抑制される。また、本計算機シミュレーションではモデル1の保磁力HCJが995kA/m、モデル2の保磁力HCJが1130kA/mと、むしろ静磁気相互作用をなしとしたモデル2の保磁力HCJが大きくなり、減磁曲線の2段化が見られる。どの程度の2段化が抑制されるかは、保磁力HCJの大きさにもよるが、この結果からは、数kA/m程度の保磁力HCJの差であれば、静磁気相互作用の効果があると言える。したがって、ある程度の保磁力HCJに差をもった異種磁石粉末の混合によって4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜690kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整できることを示している。
それら個々の結晶粒子径は100nmとした。また、相互作用としては以下のものを考慮した。モデル1(静磁気相互作用:あり、結晶粒間交換相互作用:同じ粉末内にある結晶についてのみ考慮)、モデル2(静磁気相互作用:なし、結晶粒間交換相互作用:同じ粉末内にある結晶についてのみ考慮)としたとき、図4(a)(b)のように、静磁気相互作用で減磁曲線の2段化がある程度抑制される。また、本計算機シミュレーションではモデル1の保磁力HCJが995kA/m、モデル2の保磁力HCJが1130kA/mと、むしろ静磁気相互作用をなしとしたモデル2の保磁力HCJが大きくなり、減磁曲線の2段化が見られる。どの程度の2段化が抑制されるかは、保磁力HCJの大きさにもよるが、この結果からは、数kA/m程度の保磁力HCJの差であれば、静磁気相互作用の効果があると言える。したがって、ある程度の保磁力HCJに差をもった異種磁石粉末の混合によって4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜690kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整できることを示している。
図5は図2(c)、図3(c)に対応する溶湯合金をメルトスパンしたフレーク状磁石粉末を4MA/mパルス着磁したのちの20℃±5degにおける保磁力HCJと残留磁化Jrの関係を示す特性図である。図から明らかなように、保磁力HCJと残留磁化Jrはトレードオフの関係にあり、αFe/R2TM14B磁石粉末は低HCJ高Jr領域、R2TM14B化学量論組成付近のR2TM14B磁石粉末は中間域、化学量論組成よりもRリッチなR2TM14B磁石粉末は高HCJ低Jr領域となっている。ここで、R2TM14B化学量論組成付近のR2TM14B磁石粉末は本発明にかかる保磁力HCJ調整範囲よりも高HCJ側になっている。そこで、図5の高HCJと低HCJ磁石粉末を混合して本発明にかかる保磁力HCJ調整範囲内に調整する。また、その際、混合粉末を結合剤で固めた磁石の密度は残留磁化Jrが690mT以上となるように調整する。仮に、混合磁石粉末の真密度を7.5Mg/m3とすれば磁石密度6Mg/m3のとき、相対密度は約80%であるから、混合磁石粉末の残留磁化Jrとしては862.5mT程度の値となる。図から、混合磁石粉末の保磁力HCJと残留磁化Jrの調整は困難ではない。
なお、図2(a)(b)、図3(a)(b)に示したR2TM14B球状磁石粉末やFeB/R2TM14B塊状磁石粉末を適宜加えると磁石の耐食性や組織変化に基づく永久減磁など永久磁石型モータの耐久性向上する効果がある。
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[磁石特性]図5に示したNd11Fe81.5Co2B5.5のαFe/R2TM14B磁石粉末、Nd14Fe80B6のNdリッチR2TM14B磁石粉末を混合し、2wt.%のエポキシ樹脂を結合剤として980MPaで圧縮固化して本発明例、並びに比較例にかかる直径5mm、高さ5mm、密度5.85〜5.90Mg/m3の磁石を作製した。
図6(a)は本発明例1〜3、並びに比較例1〜3にかかる磁石を4MA/mのパルス磁界で磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJに対し、着磁性と初期減磁率の関係をプロットした特性図である。ただし、ここで言う着磁性とは1.6MA/mと4MA/mのパルス磁界で磁化した際の20℃±5degにおける(BH)maxの比を、一方の初期減磁率とは120℃の大気中に磁石を1時間暴露した前後の20℃±5degにおける磁束量の変化率である。図から明らかなように、4MA/mで磁化した際の20℃±5degでの保磁力HCJを本発明例1〜3のように、610〜690kA/mの範囲に調整すると、1.6MA/mと十分な着磁磁界が与えられないモータにおいても飽和磁化Isの96%を越える磁化が可能となる。また、本発明例1〜3のように保磁力HCJを610〜690kA/mの範囲に調整することで、着磁性を向上した状態でも初期減磁率の増加を抑制できる。一方、図6(b)は保磁力HCJと密度5.85〜5.90Mg/m3磁石の残
留磁化Jrの関係を示す特性図である。図5からも予測されるように、保磁力HCJを610〜690kA/mの範囲に調整すると、同一磁石密度であれば化学量論組成付近のR2TM14B磁石粉末よりも高い残留磁化Jrが得られる。なお、圧縮成形磁石の密度は一般的に6Mg/m3が作製できる。また、残留磁化Jrは密度に依存するので、その値を690mTに調整することは比較的容易である。
留磁化Jrの関係を示す特性図である。図5からも予測されるように、保磁力HCJを610〜690kA/mの範囲に調整すると、同一磁石密度であれば化学量論組成付近のR2TM14B磁石粉末よりも高い残留磁化Jrが得られる。なお、圧縮成形磁石の密度は一般的に6Mg/m3が作製できる。また、残留磁化Jrは密度に依存するので、その値を690mTに調整することは比較的容易である。
本発明例にかかる保磁力HCJ610から690kA/m、残留磁化Jr690mT以上の磁石を0.8から1.6MA/mで磁化した際に得られる磁束量はR2TM14B化学量論組成付近の磁石粉末を樹脂で固めた保磁力HCJ735kA/m、残留磁化Jr683mTの磁石に比べ、120℃で1hrs高温暴露したのちの20℃±5degにおける磁束量は110〜125%増加した。
以上のように、本発明によれば減磁率の増大など磁石の熱安定性を抑制しながら、0.8〜1.6MA/mと低い着磁界での着磁性を改善でき、結果として鉄心との空隙に強い静磁界が得られる。したがって、難着磁性の構造をもつ永久磁石型モータの高出力化による消費電力削減、或いは更なる小型軽量化が図れる。
[モータ特性]図7は本発明にかかる永久磁石型モータの一種であるステッピングモータ、並びに当該磁石の斜視外観図である。ただし、図中3は直径4mm、長さ4.1mmの中空環状磁石、4は磁石3の中空孔に回転軸を挿入して組立てしたモータ、5はモータ回転軸と直結したリードスクリューである。なお、磁石3の外周面は略1.6MA/mのパルス磁界によって10極の多極着磁が施してある。
図6(a)(b)で示した本発明例1、2、及び比較例1、3で上記直径4mm、長さ4.1mmの中空環状磁石を作製し、回転軸を挿入、磁石外周面にパルス電流波高値Ip=8kAで10極着磁を施し、磁石ロータ、ステッピングモータとした。この磁石ロータ、並びにモータを120℃の大気中に1hr暴露した。磁石ロータは高温暴露前後の20℃±5degにおける磁束変化を測定し、減磁率を求めた。また、モータでは高温暴露後のパルスレート600、および1000pps(pulse per secont)におけるプルイントルクを測定した。
図8は本発明例1、2、及び比較例1、3にかかる磁石の保磁力HCJに対するモータのトルクと多極着磁磁石ロータの減磁率の関係を示す。図から明らかなように、磁石特性を反映し、低磁界領域での多極着磁磁石ロータの減磁率も本発明の保磁力HCJ調整範囲下限610kA/mに達していないと減磁率が急激に増した。例えば、比較例1のような磁石ロータでは着磁性は良いが、減磁率が大きいために高温暴露後でのモータのトルクは低下した。一方、比較例3のようなR2TM14B化学量論組成付近の磁石粉末を使用した磁石ロータでは高温暴露における減磁率は少ないものの、着磁性の低下によって十分な磁化が得られていないため、モータのトルクは低下した。
他方では、本発明の保磁力HCJ調整範囲610〜690kA/mで、4MA/mパルス着磁後の残留磁化Jrが690mTを越える本発明にかかる磁石ロータ、並びにモータは高温暴露による減磁率の増加が抑制され、しかも、着磁性も良好であるから、モータとして高温暴露された後も高いトルクが得られる。例えば、本発明にかかる永久磁石型モータの600ppsにおけるトルクを、R2TM14B化学量論組成付近の磁石粉末を使用した永久磁石型モータと比較すると1.13〜1.15倍となった。
以上のように、本発明によれば減磁率の増大など磁石の熱安定性を抑制しながら、0.8〜1.6MA/mと低い着磁界での着磁性を改善でき、結果として鉄心との空隙に強い静磁界が得られる。したがって、難着磁性の構造をもつ永久磁石型モータの高出力化によ
る消費電力削減、或いは更なる小型軽量化が図れる。
る消費電力削減、或いは更なる小型軽量化が図れる。
本発明は、難着磁性の構造をもつ永久磁石型モータの高出力化による消費電力削減、或いは更なる小型軽量化などに有用である。
1 R2TM14B系溶湯合金
1’ 溶湯材料の急冷材料
2a 回転カップ
2b 回転ドラム
2c 回転ロ−ル
3 中空環状磁石
4 磁石1の中空孔に回転軸を挿入して組立てしたモータ
5 モータ回転軸と直結したリードスクリュー
1’ 溶湯材料の急冷材料
2a 回転カップ
2b 回転ドラム
2c 回転ロ−ル
3 中空環状磁石
4 磁石1の中空孔に回転軸を挿入して組立てしたモータ
5 モータ回転軸と直結したリードスクリュー
Claims (2)
- R2TM14B(RはNd/Pr,TMはFe/Co)を主相とするハード磁性材料、並びにハード磁性相(R2TM14B)とソフト磁性相(αFe、FeB、Fe2B、Fe3B)とのナノコンポジット材料との混合材料を結合剤で固めたとき、4MA/mで磁化した際の20℃±5degの保磁力HCJが610〜690kA/m、残留磁化Jrが690mT以上となるように調整した磁石を搭載した永久磁石型モータ。
- 1.6MA/mと4MA/mで磁化した際の20℃±5degにおける最大エネルギー積(BH)maxの比が0.96以上である磁石を搭載した請求項1記載の永久磁石型モータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004315459A JP2006128436A (ja) | 2004-10-29 | 2004-10-29 | 永久磁石型モータ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004315459A JP2006128436A (ja) | 2004-10-29 | 2004-10-29 | 永久磁石型モータ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006128436A true JP2006128436A (ja) | 2006-05-18 |
Family
ID=36722809
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2004315459A Pending JP2006128436A (ja) | 2004-10-29 | 2004-10-29 | 永久磁石型モータ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2006128436A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011229218A (ja) * | 2010-04-15 | 2011-11-10 | Minebea Co Ltd | 積層磁石膜可動子 |
-
2004
- 2004-10-29 JP JP2004315459A patent/JP2006128436A/ja active Pending
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