JP2006128151A - 半導体レーザ装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 第1p型クラッド層20の低不純物濃度層20aと第1p型クラッド層の高不純物濃度層20bと低不純物濃度層20aに接する活性領域層18とにおけるp型不純物の濃度分布が、第1p型クラッド層の高不純物濃度層20bにおいてはp型不純物の濃度が7×1017cm−3と1.1×1018cm−3の間の値にて平均的に平坦で、第1p型クラッド層20と活性領域層18との界面においてはp型不純物の濃度が8×1017cm−3と1.1×1018cm−3の間の値を有し、第1p型クラッド層20に接する活性領域層18においては第1p型クラッド層20と活性領域層18との界面から50nm以内でp型不純物の濃度が5×1017cm−3に低下する半導体レーザ装置。
【選択図】 図1
Description
情報通信機器の主要部品である半導体レーザ装置も、高い出力で、効率の高いレーザ発振が可能で、安価な半導体レーザ装置が求められている。
高速で大容量の記憶装置の一つとしてDVD−R/RW装置の需要が最近高くなっている。DVD−R/RW装置には高出力の半導体レーザ(発光波長が650nm近辺の赤色レーザ)が使用され、情報の高速処理には出力が高く、効率の高いAlGaInP/GaAs系材料を用いた半導体レーザの開発が進められている。
まずn型GaAs基板(以下“n型”を“n−”にて、またp型”を“p−”にて、また不純物添加のないものを“i−”にて表記する。)上にMOCVD法などにより、n−GaAsバッファ層、n−AlGaInPクラッド層、i−AlGaInPの光ガイド層、i−AlGaInPのバリア層とGaInPのウエル層とからなる多重量子井戸(Multiple Quantum Wells、以下“MQW”と表記する。)構造の活性層、i−AlGaInPの光ガイド層、第1p−AlGaInPクラッド層、p−GaInPエッチングストッパ層(以下、ESL層ということがある)、第2p−AlGaInPクラッド層、p−GaInPバンド不連続緩和層、およびp−GaAsキャップ層を順次形成する。
素子抵抗を低減するためには、特にリッジ型の半導体レーザにおいては、一般的にリッジ上部の幅が狭くなるために、主に第2p型クラッド層のp−GaAsキャップ層に近い部分の不純物濃度を高くする必要があり、一方電子のオーバーフローを低減するためには第1p型クラッド層の活性層に近い部分の不純物濃度を高くする必要がある。
このような半導体レーザの公知例としては、発光波長が640nmに設定された半導体レーザにおいて、アンドープ層であるべき上部ガイド層とMQW層へのp型クラッド層のZnが拡散することを防止するために、p型クラッド層に隣接してZnの拡散を見込んだアンドープのオフセット層または/およびZnドープ層に圧縮ひずみを付与することによって、上部ガイド層およびMQW層へのZnの拡散を抑制するという発明が開示されている(例えば、特許文献1 [0034]ないし[0036]、および図11参照)。
またさらに、波長650nmの電流狭窄構造を有する埋込型半導体レーザにおいて、活性層上に設けたAlGaInP系材料からなる第1のpクラッド層、エッチング停止層、第2のpクラッド層、第1のコンタクト層にp型不純物としてMgを用いるとともに第1のコンタクト層の上に設けられたGaAsの第2のコンタクト層のp型不純物をZnとすることにより、AlGaInP系材料からなる半導体層ではp型不純物が基板側の半導体層へと拡散することを抑制できるとともに、GaAsからなる半導体層ではドーピング遅れが防止された構成が開示されている(例えば、特許文献3 [0059]および[0062]、および図2参照)。
しきい値電流の上昇は、室温での特性悪化に止まらず、高温・高出力動作の低下、延いては信頼性の低下につながるので、第1、第2p型クラッド層の不純物濃度を高くするという必要性はありながら、第1、第2p型クラッド層の不純物濃度を高くすることは難しかった。
たとえば、SIMSで測定した従来の第1pクラッド層および活性層における不純物のプロファイルの一例では、不純物の固溶度が大きく拡散定数の小さなMgを用いた場合であるが、第1p型クラッド層の上に設けられたp−ESL層と第1p型クラッド層との界面から10nm程度第1p型クラッド層側に入ったところで1E+18cm−3程度で、ここから第1p型クラッド層と光ガイド層との界面まで不純物濃度は概ね単調に減少し、第1p型クラッド層と光ガイド層との界面のところのMg濃度は5E+17cm−3程度の低い値となり、そして第1p型クラッド層と光ガイド層との界面から光ガイド層の中で急激に減少するというプロファイルを示している。
特にDVD用に用いられる650nm帯の半導体レーザ素子においては、発光ビーム径を小さく絞る必要があるために、活性層と光ガイド層との全体の厚みを50〜100nm程度まで薄くする必要があり、このため素子の製造工程中の熱処理におけるp型不純物の拡散を最小限に抑えたいという理由による。
さらに、第1pクラッド層の上に、第2pクラッド層を介して配設されている高不純物濃度層であるバンド不連続緩和層やキャップ層からのp型不純物の拡散のために、第1pクラッド層の厚み中央付近からp−ESL層側におけるp型不純物の濃度は設定値よりも上昇している。
また第1、第2p型クラッド層のキャリア濃度を高くすることは、単に活性層内への不純物拡散を促すというだけではない。すなわちレーザ光は活性層だけではなく第1、第2p型クラッド層内まで拡がるために、第1、第2p型クラッド層のキャリア濃度が1.5×1018cm−3を越えるとフリーキャリアによる光吸収を受けるために発光効率が低下する。このために従来の半導体レーザにおけるp型クラッド層中のキャリア濃度設定はp型不純物としてZnを用いた場合に6E17cm−3〜9E17cm−3程度、またMgを用いた場合にでも0.9E18cm−3〜1.3E18cm−3程度にするのが通例であり、このとき活性層近傍の不純物プロファイル(SIMS)は活性層近傍で不純物濃度が低下するプロファイルにならざるを得なかった。
従って、第1p型クラッド層と光ガイド層が直接接触している場合においては、第1p型クラッド層と光ガイド層との界面のところの不純物濃度が低下せざるを得ず、高温・高出力時における半導体レーザ素子の素子特性が必ずしもよくない場合があり、信頼性の低下につながる場合があるという問題点があった。
図1はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の斜視図、図2はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の活性層近傍の部分断面図である。以下の図において図1および図2と同じ符号は、同じものか相当のものであることを示す。
図1において、650nm帯のリッジ導波路型の赤色レーザダイオード(以下、レーザダイオードをLDという)10は、DVD−R/RW装置に用いられるものである。
赤色LD10は、このn−GaAs基板12上に順次配設された、n−GaAsのバッファ層14、n−AlGaInPのn型クラッド層16、活性領域層18、p−AlGaInPの第1p型クラッド層20の第1の部分としての低不純物濃度層20a、第1p型クラッド層20の第2の部分としての高不純物濃度層20b、p−GaInPのp−ESL層22、p−AlGaInPの第2p型クラッド層24、p−GaInPのバンド不連続緩和層26、およびp−GaAsのキャップ層28により構成される。
第2pクラッド層24、バンド不連続緩和層26、およびキャップ層28は、MQW活性層144の中央部上に所定の幅で光の導波方向に延在するリッヂ導波路を形成する。このリッヂ導波路の両側はp−ESL層22が延在し、第1p型クラッド層20の高不純物濃度層20bをp−ESL層22が覆っている。
図2において、活性領域層18は、MQW構造の活性層182と、この活性層182とn型クラッド層16との間に配設されたi−AlGaInPの第1光ガイド層180と、活性層182と第1p型クラッド層20の低不純物濃度層20aとの間に配設されたi−AlGaInPの第2光ガイド層184とから構成されている。
すなわちn型クラッド層16に接して第1光ガイド層180が配設され、この上にi−GaInPのウエル層182aが配設され、さらにウエル層182aの上にi−AlGaInPのバリア層182bが配設される。
ウエル層182aとバリア層182bとは交互に配設され、最上層のウエル層182aの上に第2光ガイド層184が配設され、この第2光ガイド層184に接して第1p型クラッド層20の低不純物濃度層20aが配設される。
MQW活性層182は、n−GaAs基板12と格子整合しi−GaInPにより形成されるウエル層182を有し、MQW活性層182のフォトルミネッセンスの波長が、室温における測定にて630〜660nmとなるように形成される。
なおこの実施の形態では活性層182がMQW構造になっているが単層の量子井戸構造でもよい。
さらに赤色LD14の各層の不純物濃度と層の厚みは概ね次のとおりである。
バッファ層14はSiの不純物濃度は5E17cm−3〜2E18cm−3程度であり、層の厚み0.5〜1.5μm程度である。
nクラッド層16のSiの不純物濃度は1E17cm−3〜1E18cm−3程度であり、層の厚み1μm〜3μm程度である。
活性領域層18の第1光ガイド層180および第2光ガイド層184は層の厚みが10nm〜100nm程度であり、バリア層182bは層の厚みが3nm〜10nm程度、ウエル層182aは層の厚みが5nm〜10nm程度である。活性領域層18は基本的には不純物添加を行わない。
第1p型クラッド層20の層の厚みは通常0.3μm〜0.5μm程度である。この実施の形態では、第1p型クラッド層20の層の厚みは約0.4μm程度である。第1p型クラッド層20は不純物濃度が高く平均的に一様である高不純物濃度層20bと活性領域層18に向かって不純物濃度が単調に減少してゆく低不純物濃度層20aとから構成されている。
活性層182から第1p型クラッド層20への電子のオーバーフローを抑制するとともにp型不純物が活性層182に拡散することを防止し、活性層182に非発光中心を増加させないようにするためには、第1p型クラッド層20と活性領域層18におけるp型不純物、たとえばMg、の不純物濃度分布のプロファイルが重要な指標になる。
赤色LD10においては、第1p型クラッド層20の高不純物濃度層20bの不純物濃度は7E17cm−3と1.1E18cm−3との間の平均的に平坦な値であり、この高不純物濃度層20bから低不純物濃度層20aを経て低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面の不純物濃度が8E17cm−3と1.1E18cm−3との間の値を有し、第2光ガイド層184においては低不純物濃度層20aからのp型不純物の拡散により0.02μm程度は低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面の不純物濃度と同程度の不純物濃度が保たれるが、界面からの深さがさらに深くなると急激に不純物濃度低下し、界面から50nm以内で5E17cm−3に低下する。
第2p型クラッド層24の層の厚みは1μm〜3μm程度で、Mgの不純物濃度は5E17cm−3〜2E18cm−3程度である。
バンド不連続緩和層26のMgの不純物濃度は1E17cm−3〜3E18cm−3程度であり、層の厚みは0.1μm程度である。
キャップ層28はコンタクト層としての機能をも果たすので、Mgの不純物濃度は1E19cm−3〜3E19cm−3程度であり、層の厚みは0.1μm〜0.5μm程度である。
n−GaAs基板12の裏面側には金属製のn電極30が配設され、キャップ層28の上には金属製のp電極32が配設されている。
このために、活性層182から第1p型クラッド層20への電子のオーバーフローが抑制される。またp型クラッド層でのフリーキャリアによる光吸収を少なくできて発光効率の低下が抑制される。
さらに、第2光ガイド層184においては低不純物濃度層20aからのp型不純物の拡散により0.02μm程度は低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面の不純物濃度と同程度の不純物濃度が保たれるが、界面からの深さがさらに深くなると急激に不純物濃度低下し、界面から50nm以内で5E17cm−3に低下するので、p型不純物の活性層182への拡散が抑制されている。
このため活性層182における非発光中心の増加が抑制されている。
従って、赤色LD10においては、しきい値電流が低くなり、延いては室温での特性が良好であるのみならず、高温・高出力時における信頼性が高くなる。
まず、赤色LD10の製造に当たって、第1p型クラッド層20と活性領域層18の希望するp型不純物の不純物濃度分布のプロファイルを設定する。このプロファイルは、高温・高出力動作時における赤色LDの特性がもっとも良好になるように計算された第1p型クラッド層20と活性領域層18の不純物プロファイルである。
この実施の形態の赤色LD10においては、第1p型クラッド層20の高不純物濃度層20bの不純物濃度は7E17cm−3と1.1E18cm−3との間で平均的に平坦な値を有し、低不純物濃度層20aを経て単調に減少し、低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面の不純物濃度が8E17cm−3と1.1E18cm−3との間の値を有し、低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面から50nm以内で5E17cm−3に低下するp型不純物の不純物濃度分布のプロファイルを設定する。
図3はこの発明の一実施の形態にかかる半導体レーザのp型不純物の濃度分布の設定プロファイルを示す模式図である。
図3において縦軸はMgの不純物濃度で、横軸は第1p型クラッド層20と活性領域層18の層位置である。また図3における距離dは低不純物濃度層20aの層厚みに相当し、低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面におけるMgの不純物濃度と製造条件により適宜決定される。
図4はこの発明の一実施の形態にかかる半導体レーザの原料ガスの流量設定を示す模式図である。図4において、縦軸はCp2Mgの流量で、横軸は層の位置である。
図4に示されたp型クラッド層を形成する際のp型不純物を含む原料ガスの流量設定の特徴とするところは、第1p型クラッド層20としてのp−AlGaInP層の成長を行うMOCVD中において、従来のように単に第2光ガイド層184としてのi−AlGaInP層近傍における低不純物濃度層20aの形成に際してCp2Mgの流量を低くし、所定の時間後さらに一段Cp2Mgの流量を高めて一定に保つのではなく、この実施の形態においては低不純物濃度層20aの形成の際にCp2Mgの流量を、たとえば40cc/min程度に低くした後、高不純物濃度層20bの形成に際して第2光ガイド層184から離れるに従って、Cp2Mgの流量の最大値をたとえば60cc/min程度にして、多段階にCp2Mgの流量を上下させることにより、p型不純物の拡散も含めて結果的に高不純物濃度層20bの不純物濃度は7E17cm−3と1.1E18cm−3との間で平均的に平坦な値を有することを意図するものである。
このときのMOCVD成長の成長温度は例えば700℃、成長圧力は例えば100mbar等の条件で処理を行い、各層を形成するための原料ガスとして、例えば、トリメチルインジウム(Trimethyl indium : TMI)、トリメチルガリウム(Trimethyl gallium : TMG)、トリメチルアルミニウム(Trimethyl aluminum : TMA )、フォスフィン(Phosphine : PH3)、アルシン(Arsine : AsH3)、シラン(Silane : SiH4)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cyclopentadienylt Mg : Cp2Mg)、等を用いる。これらの原料ガスをマスフローコントローラー(Mass Flow Controller : MFC)用いて流量を制御し所望の各層の組成を得る。
これにより低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面の不純物濃度を8E17cm−3と1.1E18cm−3との間の値にすることができ、活性層182からの電子のオーバーフローを抑制するとともに活性層内への拡散を抑制することができる。たとえば一つの目安としては低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面から20nmの距離内に不純物濃度を5E+17cm−3に低下させることができる。
この後さらに、エッチングにより、第2p型クラッド層24としてのp−AlGaInP層、バンド不連続緩和層26としてのp−GaInP層、キャップ層28としてのp−GaAs層からなるリッジ導波路を形成し、n−GaAs基板12の裏面上にn電極30を、キャップ層28としてのp−GaAs層の上にp電極32を、それぞれ形成する。
この赤色LD10の製造方法においては、低不純物濃度層20aの形成に際してCp2Mgの流量を低くし、高不純物濃度層20bの形成に際して第2光ガイド層184から離れるに従って、多段階にCp2Mgの流量を上下させるもので、これによりp型不純物の拡散も含めて結果的にp型不純物の不純物濃度が7E17cm−3と1.1E18cm−3との間で平均的に平坦な値を有する高不純物濃度層20bを形成することができる。
従ってこの製造方法により、しきい値電流が低く、室温での特性が良好であるのみならず、高温・高出力時における信頼性の高い赤色LDを簡単な工程で製造できる。
図5はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の斜視図、図6はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の活性層近傍の部分断面図である。なお図6は図5におけるVI−VI断面における断面図である。
図5および図6において、赤色LD50の基本構成は実施の形態1における赤色LD10と同じであるが、赤色LD50においては赤色LD10の高不純物濃度層20bを第1p型クラッド層の低不純物濃度層20aに近接する第3の部分としての高不純物濃度層21aと、この高不純物濃度層21aに隣接し低不純物濃度層20aから離れた第4の部分としての不純物貯留層21bとの二つの層に分ける構成にしたものである。その他の構成は赤色レーザ10と同様である。
なおこの不純物貯留層21bはp−ESL層22、第2p型クラッド層24、バンド不連続緩和層26およびキャップ層28から拡散されるp型不純物を、高不純物濃度層21aや低不純物濃度層20a、さらには活性領域層18へ拡散することを抑止するという目的を達成すればよいことから、p−ESL層22、第2p型クラッド層24、バンド不連続緩和層26およびキャップ層28などの各層の不純物濃度との組み合わせ次第で、20nm〜300nmというかなり広い層厚みを選択することができる。
そしてp型不純物の拡散の後における不純物貯留層21bの不純物濃度を、高不純物濃度層21aよりも少し低くなるようにし、不純物貯留層21bと高不純物濃度層21aとをあわせた高不純物濃度層20b全体の不純物濃度が7E17cm−3と1.1E18cm−3との間の値で平均的に平坦になるように構成されている。
この赤色LD50の製造方法は赤色LD10の製造方法と基本的に同じである。
第1p型クラッド層20とこれに接する活性領域層18におけるp型不純物、たとえばMgの不純物濃度分布の設定プロファイルを示す模式図も図3と同じでよい。
赤色LD50の製造方法が赤色LD10の製造方法と異なる点は、Mgの不純物濃度分布の設定プロファイルを実現するための、Mgを含む原料ガスの流量設定が異なる。
図7はこの発明の一実施の形態にかかる半導体レーザの原料ガスの流量設定を示す模式図である。図7において、縦軸はCp2Mgの流量で、横軸は層の位置である。
なお図7においては、不純物貯留層21bのCp2Mgの流量を0cc/minとしているが、必ずしも0cc/minにする必要はなく、p−ESL層22、第2p型クラッド層24、バンド不連続緩和層26およびキャップ層28の不純物濃度に対応した高不純物濃度層21aにおける流量より低い流量、たとえば不純物貯留層21bの成長時の不純物濃度が5E+17cm−3以下になるような流量であればよい。
図8はSIMSによるMgのプロファイルで、Mgのプロファイルと各層の位置関係を明確にするために、参考のためAlの強度分布が記載されている。
図8の左の縦軸がAlGaInPにおけるMgの濃度、右の縦軸はAl元素の測定強度、横軸は各層の位置関係を表す厚み寸法である。
図8からわかるようにp−ESL層22に接して不純物貯留層21bが配設され、不純物貯留層21bに接して高不純物濃度層21aが配設され、さらに高不純物濃度層21aに接して低不純物濃度層20aが配設され、この低不純物濃度層20aに接して活性領域層18(ここでは第2光ガイド層184)が配設されている。
この不純物貯留層21bにおけるMgの局所的変位を除いた濃度分布が下に凹んだ形状をし、この高不純物濃度層21aの不純物濃度は不純物貯留層21bのそれよりも高い不純物濃度でかつ上に凸の形状をし、平均的に9E+17cm−3と1.2E+18cm−3との間の値でほぼ平坦に推移している。
この結果、p−ESL層22、第2p型クラッド層24、バンド不連続緩和層26およびキャップ層28からのMgの拡散の影響が少なくなるので、高不純物濃度層21aと低不純物濃度層20aとの不純物濃度分布がより厳密に制御可能となり、低不純物濃度層20aの不純物濃度は高不純物濃度層21aのそれに連続し比較的緩い傾斜で低下し、低不純物濃度層20aと第2光ガイド層184との界面の不純物濃度は概ね8E+17cm−3〜9E+17cm−3の高い値を示している。
活性領域層18内においては、低不純物濃度層20aと活性領域層18の界面から大略20nmの深さまで不純物濃度は8E+17cm−3〜9E+17cm−3の値が保持されるが、ここから急激に減少し低不純物濃度層20aと活性領域層18の界面から30nm以内で5E+17cm−3以下に減少している。
このため従来構造では、不純物濃度の高いバンド不連続緩和層26およびキャップ層28からの不純物拡散が活性領域層18近傍の第1pクラッド層の不純物濃度分布に影響し、第1p型クラッド層20と活性領域層18との界面近傍における所定の不純物濃度の設定およびその実現を困難にしていたのであるが、不純物貯留層21bが配設されたことにより、バンド不連続緩和層26およびキャップ層28からの拡散によるp型不純物が不純物貯留層21bに貯留し、活性領域層18近傍の第1p型クラッド層20の不純物濃度分布に与える影響が少なくなり、第1p型クラッド層20と活性領域層18との所定の不純物分布を実現するための、第1p型クラッド層20と活性領域層18との界面近傍におけるp型不純物の流量設定が厳密にまた容易に行うことが可能となる。
このため第1p型クラッド層20と活性領域層とが直接接触する構成において、活性領域層から第1p型クラッド層への電子のオーバーフローが抑制され、またフリーキャリアによる光吸収を少なくできるとともに活性層へのp型不純物の拡散を抑制することができ、活性層における非発光中心の増加を抑制することができ、しきい値電流が低い赤色LDを構成することができる。
延いては室温での特性が良好であるのみならず、高温・高出力時における信頼性の高い半導体レーザ装置を構成することができる。
図9はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の斜視図、図10はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の活性層近傍の部分断面図である。なお図10は図9におけるX−X断面における断面図である。
図9および図10において、赤色LD60の基本構成は実施の形態2における赤色LD50と同じであるが、赤色LD60においては第2p型クラッド層24を第1p型クラッド層20に近いp−ESL層22に接触した低不純物濃度層24aとバンド不連続緩和層26に近接する高不純物濃度層24bと二つの層に分ける構成にしたものである。その他の構成は赤色レーザ50と同様である。
図9に示されたリッジ導波路型の赤色レーザ60においては、第2p型クラッド層24がリッジ状になっており、光導波路の幅が狭い。従ってこの部分で抵抗成分が増加し素子抵抗が大きくなる。このためこの部分で不純物濃度を高くすることが必要である。
低不純物濃度層24aのp型不純物、たとえばMgの不純物濃度は5E17cm−3〜2E18cm−3程度である。
なおこの実施の形態では、第2p型クラッド層24を低不純物濃度層24aと高不純物濃度層24bの二つの層に分けて構成したが、第2p型クラッド層24すべてを高不純物濃度層24bと同様のMgの不純物濃度にしてもよい。
この高不純物濃度層24bも活性層182へのMgの不純物拡散を促進する要因になる。
従って、赤色LD60におけるように第1p型クラッド層20に不純物貯留層21bを設けることにより、活性層182へのMgの不純物拡散を抑制することができる。
延いてはしきい値電流が低く、室温での特性が良好であるのみならず、高温・高出力時における信頼性の高いリッジ型半導体レーザ装置を構成することができる。
図11はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の斜視図、図12はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の活性層近傍の部分断面図である。なお図12は図11におけるXII−XII断面における断面図である。
図11はリッジ埋込型の赤色LD70である。
図11および図12において示されたリッジ埋込型の赤色LD70においては導波路リッジがn型半導体層や絶縁体層などからなる電流狭窄層72により埋め込まれた電流狭窄構造を有している。他の各層の構成は半導体LD10と同様である。
このような、リッジ埋込型の赤色LD70においても、リッジ導波路型の半導体LD10と同様の効果を奏する。
なおこの実施の形態では電流狭窄構造以外の各層の構成を半導体LD10とした場合について説明したが、電流狭窄構造以外の各層の構成を実施の形態2および3で説明した構成にしてもよい。
Claims (6)
- 半導体基板と、
この半導体基板の上に配設されたn型クラッド層と、
このn型クラッド層の上に配設され、量子井戸を含む活性層とこの活性層を挟み活性層の上と下に配設された光ガイド層とを有する活性領域層と、
この活性領域層の上に、この活性領域層と接して配設された第1p型クラッド層と、を備えるとともに、
上記第1p型クラッド層における上記活性領域層に接する第1の部分とこの第1の部分を介して上記活性領域層に隣接する上記第1p型クラッド層の第2の部分と上記第1p型クラッド層の第1の部分に接する上記活性領域層とにおけるp型不純物の局所的変位を除いた濃度分布が、上記第1p型クラッド層の第2の部分においてはp型不純物の濃度が7×1017cm−3と1.1×1018cm−3の間の値にて平均的に平坦で、第1p型クラッド層の第1の部分においてはp型不純物の濃度が一様に減少し、第1p型クラッド層と活性領域との界面においてはp型不純物の濃度が8×1017cm−3と1.1×1018cm−3の間の値を有し、上記第1p型クラッド層に接する上記活性領域層においては第1p型クラッド層と活性領域層との界面から50nm以内でp型不純物の濃度が5×1017cm−3に低下することを特徴とした半導体レーザ装置。 - 第1p型クラッド層の第2の部分の一部であって第1p型クラッド層の第1の部分に近接する第3の部分がp型不純物の第1の濃度を有し、第1p型クラッド層の第2の部分の一部であって上記第3の部分を介して上記第1の部分に隣接した第4の部分が上記第3の部分の第1の濃度よりも低いp型不純物の第2の濃度を有し、第1p型クラッド層の第2の部分におけるp型不純物の局所的変位を除いた濃度分布が上記第1の濃度と第2の濃度により平均的に平坦であることを特徴とした請求項1記載の半導体レーザ装置。
- 第1p型クラッド層の上にさらに第2p型クラッド層が配設されるとともに、この第2p型クラッド層の上記第1p型クラッド層からより離れた側の界面に近接した一部に上記第1p型クラッド層のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有する層を配設したことを特徴とする請求項2記載の半導体レーザ装置。
- 量子井戸を含む活性層とこの活性層を挟み活性層の上と下に配設された光ガイド層とを有する活性領域層と、この活性領域層の上にこの活性領域層と接して配設された第1p型クラッド層とを備えた半導体レーザ装置において、第1p型クラッド層における上記活性領域層に接する第1の部分とこの第1の部分を介して上記活性領域層に隣接する上記第1p型クラッド層の第2の部分と上記第1p型クラッド層の第1の部分に接する上記活性領域層とにおけるp型不純物の局所的変位を除いた濃度分布が、上記第1p型クラッド層の第2の部分においてはp型不純物の濃度が7×1017cm−3と1.1×1018cm−3の間の値にて平均的に平坦で、第1p型クラッド層の第1の部分においてはp型不純物の濃度が一様に減少し、第1p型クラッド層と活性領域との界面においてはp型不純物の濃度が8×1017cm−3と1.1×1018cm−3の間の値を有し、上記第1p型クラッド層に接する上記活性領域層においては第1p型クラッド層と活性領域層との界面から50nm以内でp型不純物の濃度が5×1017cm−3に低下する不純物濃度分布を設定するとともに、第1p型クラッド層の気相結晶成長を行う際のp型不純物を含む原料ガスの流量がp型不純物の拡散を考慮して上記第1p型クラッド層の第2の部分において多段階に高下する流量設定を行う第1の工程と、
半導体基板上に活性領域層を形成した後、第1の工程において定めたp型不純物を含む原料ガスの流量設定に基づき、気相結晶成長により第1p型クラッド層を形成する第2の工程と、
を含む半導体レーザ装置の製造方法。 - 第1の工程において、第1p型クラッド層のp型不純物を含む原料ガスの流量設定を、第1p型クラッド層の第1の部分の流量が第1p型クラッド層の第2の部分の一部であって第1p型クラッド層の第1の部分に近接する第3の部分の流量より少なく、第1p型クラッド層の第2の部分の一部であって上記第3の部分を介して上記第1の部分に隣接した第4の部分の流量が上記第3の部分の流量より少なくしたことを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ装置の製造方法、
- 第1p型クラッド層の上に、第1p型クラッド層からより離れた側の界面に近接した一部に上記第1p型クラッド層のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度の層を有する第2p型クラッド層を形成する第3の工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
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