JP2006125994A - インフルエンザウイルス抗原性解析用粒子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い被凝集能を有し、解析を迅速に行うことができ、解析結果のばらつきが少なく、かつ、長期保存性に優れ、大量生産にも適した、従来の赤血球に代わるインフルエンザ抗原性解析用の手段および方法を提供する。
【解決手段】 インフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、それを含むインフルエンザウイルス抗原性解析用キット、ならびに該粒子または該キットを用いることを特徴とするインフルエンザウイルス型決定試験方法。
【選択図】なし
【解決手段】 インフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、それを含むインフルエンザウイルス抗原性解析用キット、ならびに該粒子または該キットを用いることを特徴とするインフルエンザウイルス型決定試験方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、インフルエンザウイルス抗原性解析用粒子に関する。詳細には、本発明は、インフルエンザウイルス受容体機能を有するオリゴ糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とする、インフルエンザウイルス抗原性解析用粒子に関する。
インフルエンザは流行防止に努めなければならない公衆衛生上重要な疾患である。流行防止にはワクチンが重要であるが、毎年流行するウイルスの亜型が異なり、また、その抗原性に変異を起こしやすいウイルスであるので、毎シーズン流行する型と抗原性を予測してワクチン株を選定しなければならない。そのためには迅速な抗原性解析とデータの集積が地球規模で行われることが必要である。現在インフルエンザウイルスの抗原性の解析は、赤血球凝集阻止反応を利用しているが、使用する赤血球の動物種の違い、また同一種であってもロットの違いにより結果に差が出ることが問題となっている。また、生体試料であるため長期保存が困難であり、大量生産にも不向きであった。
このような赤血球凝集阻止反応による解析の問題点を解決するために、インフルエンザウイルス受容体機能を有するオリゴ糖鎖を利用する試みがなされてきた(特許文献1〜4参照)。しかしながら、従来の糖鎖は分枝構造を有すること、糖残基の個数が多いこと(7個またはそれ以上)などから、これらの合成には複雑な工程を要し、大量生産には不向きであった。それゆえ、上記問題のない、従来の赤血球に代わるインフルエンザ抗原性解析用の手段の開発が望まれていた。
なお、本発明に関連する技術として、特許文献1〜4のごときものが存在するが、これらはいずれも本発明を開示するものではなく、上記問題を解決するものでもない。特表2003−535965号公報(特許文献1)には、少なくとも1種のオリゴ糖鎖を包含するインフルエンザウイルスの結合に用いるための物質に関する発明が記載されているが、本発明のようなインフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子については開示がない。特開平7−270417号公報には、抗体または抗原を担持した水不溶性担体に、側鎖に糖類を有する水溶性高分子が導入されてなる免疫測定用試薬に関する発明が記載されているが、やはり、本発明のようなインフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子については開示がない。米国特許第5220008号明細書および第5254676号明細書には(それぞれ特許文献3および特許文献4)、インフルエンザ受容体機能を有する糖鎖重合物が開示されているが、これらも本発明のようなインフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子を開示するものではない。
特表2003−535965号公報
特開平7−270417号公報
米国特許第5220008号明細書
米国特許第5254676号明細書
高い被凝集能を有し、解析を迅速に行うことができ、解析結果のばらつきが少なく、かつ、長期保存性に優れ、大量生産にも適した、従来の赤血球に代わるインフルエンザ抗原性解析用の手段を提供することが、本発明の課題であった。
上記課題に鑑みて、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、インフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させて得られる人工粒子をインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子として用いると、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記ものを提供する:
(1)インフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、
(2)糖鎖の非還元末端糖残基がシアル酸である(1)記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、
(3)糖鎖が下記構造:
Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
または
Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
[式中、Neu5AcはN−アセチルノイラミン酸残基、Galはガラクトース残基、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基、Glcはグルコース残基を表す]
を有するものである(2)記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、
(4)不溶性担体粒子がラテックス粒子である(1)〜(3)のいずれかに記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子、
(5)糖鎖と不溶性担体粒子とがリンカーにより結合されている(1)〜(4)のいずれか1項記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子、
(6)上の(1)〜(5)のいずれかに記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子を構成成分として含む、インフルエンザウイルス抗原性解析用キット、ならびに
(7)検体から得た試料に対して上の(1)〜(5)のいずれかに記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子または上の(6)記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用キットを使用することを特徴とする、インフルエンザウイルス型決定試験方法。
(1)インフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、
(2)糖鎖の非還元末端糖残基がシアル酸である(1)記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、
(3)糖鎖が下記構造:
Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
または
Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
[式中、Neu5AcはN−アセチルノイラミン酸残基、Galはガラクトース残基、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基、Glcはグルコース残基を表す]
を有するものである(2)記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子、
(4)不溶性担体粒子がラテックス粒子である(1)〜(3)のいずれかに記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子、
(5)糖鎖と不溶性担体粒子とがリンカーにより結合されている(1)〜(4)のいずれか1項記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子、
(6)上の(1)〜(5)のいずれかに記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子を構成成分として含む、インフルエンザウイルス抗原性解析用キット、ならびに
(7)検体から得た試料に対して上の(1)〜(5)のいずれかに記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子または上の(6)記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用キットを使用することを特徴とする、インフルエンザウイルス型決定試験方法。
本発明によれば、高い被凝集能を有し、解析を迅速に行うことができ、解析結果のばらつきが少なく、かつ、長期保存性に優れ、大量生産にも適したインフルエンザ抗原性解析用の手段および方法が提供される。
本発明は、1の態様において、インフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子を提供するものである。本明細書において「インフルエンザウイルス受容体機能を有する糖鎖」とは、インフルエンザウイルスの有する糖蛋白に対して親和性があり、これと結合して凝集反応しうる糖鎖をいう。
本発明のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子のうち、好ましいものは、その糖鎖の非還元末端糖残基がシアル酸となっているものである。このシアル酸の存在が、インフルエンザウイルス受容体機能発揮に大きく関与していることはよく知られている。本明細書において「シアル酸」とは、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)および9−O−アセチル−N−アセチルノイラミン酸(9−O−Ac−Neu5Ac)を包含するものとする。
非還元末端残基がシアル酸であれば、糖鎖中の残りの糖残基の種類は特に限定されず、いずれのものであってもよい。糖鎖中の糖残基は、メチル化、硫酸化、アミノ化、カルボキシル化などにより修飾されていてもよく、あるいは配糖体となっていてもよい。したがって、本明細書において「糖鎖」という場合、これらの修飾体も包含される。また、糖鎖中の糖残基間の結合も特に限定されず、いずれの結合であってもよい。糖残基および糖残基間の結合を種々組み合わせて所望の糖鎖を作成し、これを不溶性担体粒子に結合させて、インフルエンザウイルス以外の様々なウイルス−受容体の結合性の研究に用いることもできる。
本発明のウイルス抗原性解析用粒子における糖鎖の糖残基の個数は3個ないし6個である。この範囲の糖残基の個数の場合、糖鎖の合成が容易で、大量生産に好適である。糖残基が3個未満の場合、インフルエンザウイルス受容体機能が不十分であり、糖残基が7個以上の場合には糖鎖の合成が困難となり、大量生産性に欠けるので、いずれも好ましくない。
好ましい糖鎖としては、非還元末端シアル酸から2番目の糖残基がガラクトース(Gal)であり、非還元末端残基のシアル酸とα2−6結合またはα2−3結合により結合しているものが挙げられる。シアル酸とGalの間の結合がα2−6結合である場合にはヒトインフルエンザウイルスをより強く認識する糖鎖となり、シアル酸とGalの間の結合がα2−3結合である場合にはトリインフルエンザウイルスをより強く認識する糖鎖となる。
さらに好ましい糖鎖は、非還元末端から2番目の糖残基がGalであり、非還元末端から3番目の糖残基がN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)であり、非還元末端残基のシアル酸とガラクトースがα2−6結合またはα2−3結合により結合しており、非還元末端から2番目のGalが非還元末端から3番目のGlcNAcとβ1−4結合またはβ1−3結合により結合しているものが挙げられる。
また、本発明のウイルス抗原性解析用粒子における糖鎖の非還元末端から3個までの部分がシアリルラクトースであることも好ましい。このシアリルラクトースに糖残基が1個ないし3個結合していてもよい。
本発明のウイルス抗原性解析用粒子における糖鎖の非還元末端シアル酸のうち好ましいのはN−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)である。
本発明のウイルス抗原性解析用粒子における糖鎖のうち、最も好ましいのは下記構造:
Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
または
Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
[式中、Neu5AcはN−アセチルノイラミン酸残基、Galはガラクトース残基、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基、Glcはグルコース残基を表す]
を有するものである。
Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
または
Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
[式中、Neu5AcはN−アセチルノイラミン酸残基、Galはガラクトース残基、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基、Glcはグルコース残基を表す]
を有するものである。
なお、本発明のウイルス抗原性解析用粒子の糖鎖において、Glc、Gal、GlcNAc、Neu5AcはD型である。
上記糖鎖は、公知の方法、例えばグリカール法、固相樹脂ハイブリッド法などの化学合成法、糖転移酵素(例:シアル酸転移酵素、ガラクトース転移酵素)を用いる生化学的方法、あるいは自動糖鎖合成装置などを用いて合成することができる。
本発明のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子に含まれる糖鎖は1種類であってもよく、2種以上であってもよい。糖鎖の種類は、解析すべきインフルエンザウイルスの種類に応じて適宜選択することができる。
本発明のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子は、上記糖鎖の還元末端を不溶性担体粒子に結合させることにより得ることができる。不溶性担体が粒子状であることの利点は、結合表面積が大きくなり、より高感度の解析を行うことができること、取り扱いが容易であることなどである。本明細書において「不溶性担体粒子」は水不溶性の担体粒子をいう。「粒子状」とは、球形のみならず、多面体のものや、任意の形態のものまでも包含する。粒子サイズは使用目的に応じて選択可能であり、典型的には0.1ないし100ミクロン、好ましくは0.5ないし50ミクロン、より好ましくは1ないし10ミクロンの範囲であろう。不溶性担体粒子は、糖鎖または後述するリンカーと結合することのできるものであればよい。また、不溶性担体粒子は、免疫学的に不活性であることが好ましい。かかる不溶性樹脂は種々のものが知られており、市販もされている。本発明のウイルス抗原性解析用粒子に用いる不溶性担体粒子は、例えば、ラテックス粒子、ゼラチン、中空ガラスビーズ、無機微小粒子、天然微小粒子などであってもよい。これらの不溶性担体粒子の材料、形状、サイズは当業者が適宜選択できるものであり、当業者は所望の不溶性担体粒子を容易に入手あるいは作成することができる。本発明のウイルス抗原性解析用粒子の好ましい不溶性担体粒子はラテックス粒子である。ラテックス粒子は保存性に優れ、結合反応も容易である。
上記糖鎖を不溶性担体粒子に結合させる方法としては種々の有機化学的方法が用いられる。糖鎖および不溶性担体粒子の性質を考慮することにより、適切な方法を選択して用いることができる。例えば、Tenta Gel(登録商標)(ドイツRapp Polymere社製)上に直接糖鎖を構築していく方法もある。
糖鎖と不溶性担体粒子との間にリンカーを介在させて糖鎖と不溶性担体粒子を結合させてもよい。リンカーも種々のものが知られており、糖鎖および不溶性担体粒子の特性を考慮することにより、適宜選択して用いることができる。リンカーは、免疫学的に不活性であることが好ましい。リンカーの例としては、脂質(リポソーム、セラミド)、ポリアクリルアミドなど、あるいは樹脂を主体としたバックボーンなどが挙げられる。リンカーはウシ血清アルブミンなどの蛋白であってもよい。リンカーが蛋白である場合には、糖鎖を有しないものが好ましい。例えば、インフルエンザウイルス受容体機能を有する糖鎖としてNeu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcを用い、不溶性担体粒子としてラテックス粒子を用いる場合において、リンカーはウシ血清アルブミンであってもよい。
さらに本発明は、上記インフルエンザウイルス抗原性解析粒子を構成成分として含む、インフルエンザウイルス抗原性解析用キットを提供するものである。該キットは、上記インフルエンザウイルス抗原性解析粒子のほかにリファレンス抗原、マイクロタイタープレート、被検ウイルス希釈用バッファーなどを含んでいてもよい。通常、キットには取扱説明書を添付する。
さらに本発明は、検体から得た試料に対して本発明のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子またはインフルエンザウイルス抗原性解析用キットを使用することを特徴とする、インフルエンザウイルス抗原解析方法、とりわけインフルエンザウイルス型決定試験方法を提供するものである。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
材料と方法
凝集反応に用いたインフルエンザウイルスは、A/Moscow/13/98、A/New Caledonia/20/99、A/Panama/2007/99、A/Kumamoto/102/02、B/Shangdong/07/97、B/Johannesburg/5/99株については、国立感染症研究所よりインフルエンザウイルス同定キットとして配布されるウイルス同定用のリファレンス抗原を用いた。AもしくはB/Osaka/で始まる株名で示される分離株については、当研究所で患者検体からMDCK細胞を用いて分離したウイルスを用いた。
使用糖鎖LS−Tetrasaccharide a(LSTa:Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3GAlβ1−4Glc)およびLS−Tetrasaccharide c(LSTc:Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3GAlβ1−4Glc)はそれぞれDextra laboratories,Ltd.とSIGMAより購入した。
ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションV、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)はSIGMAより、2−モルホリノエタンスルホン酸一水和物(MES)、NaBH3CNは和光純薬株式会社より、COOH官能基を有するラテックス粒子(CM−MPs)はPolysciences,Inc.より購入し実験に用いた。溶液は特に断りのない限り、溶媒として蒸留水を用いた。
凝集反応に用いたインフルエンザウイルスは、A/Moscow/13/98、A/New Caledonia/20/99、A/Panama/2007/99、A/Kumamoto/102/02、B/Shangdong/07/97、B/Johannesburg/5/99株については、国立感染症研究所よりインフルエンザウイルス同定キットとして配布されるウイルス同定用のリファレンス抗原を用いた。AもしくはB/Osaka/で始まる株名で示される分離株については、当研究所で患者検体からMDCK細胞を用いて分離したウイルスを用いた。
使用糖鎖LS−Tetrasaccharide a(LSTa:Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3GAlβ1−4Glc)およびLS−Tetrasaccharide c(LSTc:Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3GAlβ1−4Glc)はそれぞれDextra laboratories,Ltd.とSIGMAより購入した。
ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションV、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)、N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)はSIGMAより、2−モルホリノエタンスルホン酸一水和物(MES)、NaBH3CNは和光純薬株式会社より、COOH官能基を有するラテックス粒子(CM−MPs)はPolysciences,Inc.より購入し実験に用いた。溶液は特に断りのない限り、溶媒として蒸留水を用いた。
糖鎖とBSAの結合はGamian,A.,らの示した方法(Can. J. Microbiol. 1991 Vol 37 p.233-237)にて作成した。すなわち、LSTaまたはLSTc 2.0mgとBSA 2.14mgは0.2Mリン酸バッファー pH8.7 300μlにて溶解し55℃で1時間加温後、NaBH3CN 5.2mgを添加して55℃で24時間撹拌した。24時間後、蒸留水にて透析し、凍結乾燥し、糖−蛋白複合体2.6mgを得た。
得られた糖蛋白は0.3Mリン酸ナトリウムバッファー pH7.4に1mg/1mLになるよう溶解し、粒子との結合に用いるまで凍結保存した。
得られた糖蛋白は0.3Mリン酸ナトリウムバッファー pH7.4に1mg/1mLになるよう溶解し、粒子との結合に用いるまで凍結保存した。
CM−MPs(直径1μm、2.5%溶液)との結合は、まず、2.5% CM−MPs 160μl、500mM MES溶液(pH6.1)40μl、NHS(50mg/ml溶液)92μl、EDAC(10mg/ml溶液)16μl、蒸留水92μlをあらかじめ混和後、ロータリーシェーカーにて回転撹拌を室温30分行い官能基の活性化を行った。粒子は遠心沈殿(15000rpm、5分)し、上清を廃棄後、50mM MES溶液500mlにて再浮遊させ、再度遠心沈殿させて洗浄した。その後、500mM MES溶液20μl、保存糖蛋白80μl、蒸留水100μlを添加し、室温1時間回転撹拌して糖蛋白との結合を行った。作成粒子は前述のように洗浄し、0.14M NaCl、0.1% BSA添加0.1M グリシンNaOHバッファー(pH8.1)8mlに浮遊させ、0.05%溶液を試験に用いた。
従来法との比較として用いた血球である、モルモット、ニワトリ、ヒト(O型)については、採血後アルセバ液に浮遊させ冷蔵保存し、使用時に0.5%(ニワトリ)または0.7%(モルモット、ヒト)になるようPhosphate buffered saline(PBS、pH7.2)中に調製し、使用した。
赤血球凝集反応(HA反応)、赤血球凝集抑制反応(HI反応)は、定法に従った。すなわち赤血球凝集反応(HA反応)は、96ウェルマイクロプレートを用い、全ウェルにPBSを50μl分注した後、H列に各被検ウイルス液を50μlずつ添加した。添加された被検ウイルス液は、ウェル内で充分に混和後50μlを分取し、G列のウェルへと添加し、さらに混和後、F列へと添加することを繰り返し、HからA列への2倍階段希釈を各行作成した(図1)。作成後、全ウェルに調整した赤血球液を等量(50μl)添加し、プレートミキサーにて混和、4℃で18時間静置したのち、判定に供した。
赤血球凝集抑制反応(HI反応)は、HA反応の結果、凝集が認められる最大のウイルス液の希釈倍数を1単位ととったときの、8倍濃い濃度(8単位)にPBSを用いて調製したウイルス液を使用した。まず、96ウェルマイクロプレートの全ウェルに25μlずつPBSを分注した。次いで、インフルエンザウイルス同定キットに含まれる、フェレット感染血清、またはヒツジ高度免疫血清を1列目に25μlずつ添加し、1〜12列まで順に2倍階段希釈を行った。各行1〜12列には8単位のウイルス液を25μlずつ添加し(図2)、25℃1時間静置後、調製赤血球液を50μl添加し4℃で18時間静置し、判定に供した。
粒子凝集反応(PA反応)、粒子凝集抑制反応(PI反応)はHA,HI反応と同様の試験を赤血球液の代わりに0.05%糖蛋白結合ラテックス粒子液を用いて行った。
赤血球凝集反応(HA反応)、赤血球凝集抑制反応(HI反応)は、定法に従った。すなわち赤血球凝集反応(HA反応)は、96ウェルマイクロプレートを用い、全ウェルにPBSを50μl分注した後、H列に各被検ウイルス液を50μlずつ添加した。添加された被検ウイルス液は、ウェル内で充分に混和後50μlを分取し、G列のウェルへと添加し、さらに混和後、F列へと添加することを繰り返し、HからA列への2倍階段希釈を各行作成した(図1)。作成後、全ウェルに調整した赤血球液を等量(50μl)添加し、プレートミキサーにて混和、4℃で18時間静置したのち、判定に供した。
赤血球凝集抑制反応(HI反応)は、HA反応の結果、凝集が認められる最大のウイルス液の希釈倍数を1単位ととったときの、8倍濃い濃度(8単位)にPBSを用いて調製したウイルス液を使用した。まず、96ウェルマイクロプレートの全ウェルに25μlずつPBSを分注した。次いで、インフルエンザウイルス同定キットに含まれる、フェレット感染血清、またはヒツジ高度免疫血清を1列目に25μlずつ添加し、1〜12列まで順に2倍階段希釈を行った。各行1〜12列には8単位のウイルス液を25μlずつ添加し(図2)、25℃1時間静置後、調製赤血球液を50μl添加し4℃で18時間静置し、判定に供した。
粒子凝集反応(PA反応)、粒子凝集抑制反応(PI反応)はHA,HI反応と同様の試験を赤血球液の代わりに0.05%糖蛋白結合ラテックス粒子液を用いて行った。
結果1.リファレンス抗原を用いて行ったPA反応の、HA反応との比較
赤血球はヒトO型血球を用い、LSTa−BSA−CM−MPs、LSTc−BSA−CM−MPs、対照としてBSAのみを粒子と結合させたBSA−CM−MPsを用いて比較検討を行った(図3)。
LSTaはトリ型のインフルエンザウイルスのレセプターであると言われているので、LSTa−BSA−CM−MPsを用いた凝集反応の結果、ヒト社会で流行しているウイルス株では、一部凝集されない株があった(図3−b)。ヒト型のレセプターと言われるLSTc−BSA−CM−MPsとヒトO型血球の凝集反応の結果を比較すると、ほぼ同等の成績が得られた(図3−a、c)。また、BSAのみを粒子に結合させたBSA−CM−MPsでは凝集は見られず(図3−d)、BSAに結合させた糖鎖の種類が凝集には重要であることが分かった。
赤血球はヒトO型血球を用い、LSTa−BSA−CM−MPs、LSTc−BSA−CM−MPs、対照としてBSAのみを粒子と結合させたBSA−CM−MPsを用いて比較検討を行った(図3)。
LSTaはトリ型のインフルエンザウイルスのレセプターであると言われているので、LSTa−BSA−CM−MPsを用いた凝集反応の結果、ヒト社会で流行しているウイルス株では、一部凝集されない株があった(図3−b)。ヒト型のレセプターと言われるLSTc−BSA−CM−MPsとヒトO型血球の凝集反応の結果を比較すると、ほぼ同等の成績が得られた(図3−a、c)。また、BSAのみを粒子に結合させたBSA−CM−MPsでは凝集は見られず(図3−d)、BSAに結合させた糖鎖の種類が凝集には重要であることが分かった。
結果2.分離ウイルス株を用いて行ったPA反応の、HA反応との比較
次に組織培養である、MDCK細胞を用いて分離したウイルス株を用いて凝集反応を比較した。ヒトO型血球とLSTc−BSA−CM−MPsとの凝集反応の結果を比較すると、ほぼ同等の成績が得られた(図4)。
次に組織培養である、MDCK細胞を用いて分離したウイルス株を用いて凝集反応を比較した。ヒトO型血球とLSTc−BSA−CM−MPsとの凝集反応の結果を比較すると、ほぼ同等の成績が得られた(図4)。
結果3.作成3ヶ月後のLSTc−BSA−CM−MPsを用いた凝集反応の結果
作成後、3ヶ月を経過したLSTc−BSA−CM−MPsを用いて凝集反応を行ったが、作成直後と同様の安定した凝集性を示した(データ示さず)。
作成後、3ヶ月を経過したLSTc−BSA−CM−MPsを用いて凝集反応を行ったが、作成直後と同様の安定した凝集性を示した(データ示さず)。
結果4.リファレンス抗原を用いて行ったHI反応とPI反応の比較
HA、PAにてそれぞれ得られた8単位抗原を作成して、凝集抑制反応を行った(表1)。リファレンス抗原と、それに対応する感染血清(または免疫血清)によるHI価(ホモ価)はA型ではHI価に比べ22〜24倍低い値であったが、B型では2倍高い値となった。この結果より、糖鎖とウイルスの結合は特異的な抗体の存在により阻害されることが示された。実際に抗原解析に使用する際には、ホモ価と分離株とのHI価の比較を行うので、作成した人工粒子は凝集抑制反応にも使用できることが分かった。
HA、PAにてそれぞれ得られた8単位抗原を作成して、凝集抑制反応を行った(表1)。リファレンス抗原と、それに対応する感染血清(または免疫血清)によるHI価(ホモ価)はA型ではHI価に比べ22〜24倍低い値であったが、B型では2倍高い値となった。この結果より、糖鎖とウイルスの結合は特異的な抗体の存在により阻害されることが示された。実際に抗原解析に使用する際には、ホモ価と分離株とのHI価の比較を行うので、作成した人工粒子は凝集抑制反応にも使用できることが分かった。
以上のことより、作成した本発明のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子は、インフルエンザウイルスの抗原解析に現在用いられている赤血球に代わる安定な人工粒子として使用できることがわかった。また、他の糖鎖を同様に結合させることで、様々なウイルス-受容体の結合性の研究に用いることも可能である。
本発明は、インフルエンザウイルスに関する医薬品開発、公衆衛生、研究用の試薬やキットとして利用可能である。
Claims (7)
- インフルエンザウイルス受容体機能を有する3個ないし6個の糖残基からなる糖鎖を不溶性担体粒子に結合させたことを特徴とするインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子。
- 糖鎖の非還元末端糖残基がシアル酸である請求項1記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子。
- 糖鎖が下記構造:
Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
または
Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
[式中、Neu5AcはN−アセチルノイラミン酸残基、Galはガラクトース残基、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基、Glcはグルコース残基を表す]
を有するものである請求項2記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用粒子。 - 不溶性担体粒子がラテックス粒子である請求項1〜3のいずれか1項記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子。
- 糖鎖と不溶性担体粒子とがリンカーにより結合されている請求項1〜4のいずれか1項記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子を構成成分として含む、インフルエンザウイルス抗原性解析用キット。
- 検体から得た試料に対して請求項1〜5のいずれか1項記載のインフルエンザウイルス抗原性解析粒子または請求項6記載のインフルエンザウイルス抗原性解析用キットを使用することを特徴とする、インフルエンザウイルス型決定試験方法。
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JP2015522825A (ja) * | 2012-07-18 | 2015-08-06 | セラノス, インコーポレイテッド | 凝集の検出および測定のための方法 |
-
2004
- 2004-10-28 JP JP2004314291A patent/JP2006125994A/ja active Pending
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