しかしながら、従来のリハビリ装置は1運動形態にしか対応していなかったため、運動形態毎にリハビリ装置を準備しなければならないという問題があった。このため、リハビリ装置を設置するために大きなスペースが必要であった。
本発明は上記事実を考慮して、複数形態の運動に対しそれぞれ負荷を与えることができる運動負荷付与装置を得ることが目的である。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る運動負荷付与装置は、装置基部に対し変位可能な複数の変位部を有し、使用者が運動の形態に応じて異なる変位部を変位させる運動入力部と、変位に対する抵抗力を生じる負荷付与装置と、前記運動入力部の1つの変位部の変位を、他の変位部に伝えることなく前記負荷付与装置に伝える変位伝達機構と、を備えている。
請求項1記載の運動負荷付与装置では、運動入力部を構成する複数の変位部のうち1つの変位部に運動が入力される。この運動は、変位伝達機構を介して負荷付与装置に伝達され、負荷付与装置は変位しながら抵抗力を生じる。この抵抗力が使用者の運動に対する負荷として作用し、使用者はこの負荷に抗して運動することで所要の運動効果を得る。このとき、変位伝達機構は別の変位部には変位を伝達しないので、該別の変位部が使用者の運動を阻害することはない。
使用者が別の形態の運動を行なう場合には、運動入力部を構成する別の変位部に運動が入力される。この場合も該別の変位部の変位が負荷付与装置に伝達されることで、使用者は負荷に抗して別形態の運動を行ない別途所要の運動効果を得る。またこのとき、変位伝達機構は他の変位部には変位を伝達しないので、該他の変位部が使用者の運動を阻害することはない。
このように、請求項1記載の運動負荷付与装置では、複数形態の運動に対しそれぞれ負荷を与えることができる。しかも、使用者の運動に対する負荷を与える負荷付与装置が各運動(各変位部の変位)に対し共通であるため、複数の運動に対し負荷を与える機能をコンパクトに構成することが可能である。
請求項2記載の発明に係る運動負荷付与装置は、請求項1記載の運動負荷付与装置において、前記変位伝達機構は、前記運動入力部の各変位部の変位をそれぞれ回転軸の回転運動に変換する複数の運動変換機構と、前記各運動変換機構と回転軸との間にそれぞれ設けられ、該運動変換機構が変換した所定方向の回転を回転軸に伝達し、該回転軸の前記所定方向の回転を運動変換機構に伝達しない複数の一方向クラッチと、を備えて構成されており、前記負荷付与装置は前記回転軸の回転に対する抵抗力を生じる。
請求項2記載の運動負荷付与装置では、各変位部の変位がそれぞれ対応する運動変換機構によって回転軸の所定方向の回転運動に変換される。負荷付与装置は、回転軸の少なくとも所定方向の回転に対する抵抗力を生じるように構成されている。なお、回転軸は、各変位部(運動変換機構)に応じて複数設けられても良く、各変位部に共通のものであっても良いが、装置の小型化のためには共通化することが望ましい。
各運動伝達機構と回転軸との間にはそれぞれ一方向クラッチが配設されており、各一方向クラッチは、運動変換機構(変位部)側からの所定方向の回転を回転軸に伝え、回転軸側からの所定方向の回転を運動変換機構に伝えることがない。このため、使用者の運動によって1つの変位部に変位が入力されているときには、この変位は、対応する運動変換機構及び回転軸を介して負荷付与装置に伝達されて運動に対する負荷が与えられるが、負荷付与装置や回転軸を介して他の変位部(の運動変換機構)に伝達されることは、該他の変位部用の一方向クラッチによって防止される。
請求項3記載の発明に係る運動負荷付与装置は、請求項2記載の運動負荷付与装置において、前記運動変換機構は、前記変位部の往復運動のうち一方向の運動を前記一方向クラッチに所定方向の回転として伝える状態と、前記変位部の往復運動の他方向の運動を前記一方向クラッチに所定方向の回転として伝える状態とを、選択的に切り換え得る。
請求項3記載の運動負荷付装置では、例えば、変位部が上下に往復運動すると仮定すると、運動変換機構は、変位部の上向き運動によって一方向クラッチを所定方向に回転する状態と、変位部の下向き運動によって一方向クラッチを所定方向に回転する状態とを、所望に応じて選択的に切り換える。これにより、変位部の数を増やすことなく、負荷を受けつつ行ない得る運動形態を増やすことができる。
また、上記目的を達成するために請求項4記載の発明に係る運動負荷付与装置は、使用者が行なう第1形態の運動によって変位する第1変位部と、使用者が行なう第2形態の運動によって変位する第2変位部と、使用者が行なう第3形態の運動によって変位する第3変位部と、変位に対する抵抗力を生じる負荷付与装置と、前記第1変位部の変位を前記第2変位部及び第3変位部に伝えることなく前記負荷付与装置に伝え、前記第2変位部の変位を前記第1変位部及び第3変位部に伝えることなく前記負荷付与装置に伝え、かつ前記第3変位部の変位を前記第1変位部及び第2変位部に伝えることなく前記負荷付与装置に伝える変位伝達機構と、を備えている。
請求項4記載の運動負荷付与装置では、使用者が第1形態の運動(例えば、脚の蹴り出し)を行なうと、第1変位部が変位し、この変位は変位伝達機構を介して負荷付与装置に伝達される。負荷付与装置は変位しながら抵抗力を生じる。この抵抗力が使用者の運動に対する負荷として作用し、使用者はこの負荷に抗して運動することが所要の運動効果を得る。このとき、変位伝達機構は第2及び第3変位部には変位を伝達しないので、該第2及び第3変位部が使用者の運動を阻害することはない。
また、使用者が第2形態の運動(例えば、膝曲げ)を行なうと、第2変位部が変位し、この変位は変位伝達機構を介して負荷付与装置に伝達されるが、第1及び第3変位部には伝達されない。同様に、使用者が第3形態の運動(例えば、股開き)を行なうと、第3変位部が変位し、この変位は変位伝達機構を介して負荷付与装置に伝達されるが、第1及び第2変位部に伝達されない。これらの場合も、負荷付与装置には各変位が伝達され、使用者は負荷に抗して別形態の運動を行ない別途所要の運動効果を得る。
このように、請求項4記載の運動負荷付与装置では、少なくとも3形態の運動に対しそれぞれ負荷を与えることができる。しかも、使用者の運動に対する負荷を与える負荷付与装置が各形態運動(第1乃至第3変位部の変位)に対し共通であるため、複数の運動に対し負荷を与える機能をコンパクトに構成することが可能である。
請求項5記載の発明に係る運動負荷付与装置は、請求項4記載の運動負荷付与装置において、前記変位伝達機構は、前記第1変位部の変位を所定方向の回転運動に変換する第1運動変換機構と、前記第2変位部の変位を前記所定方向の回転運動に変換する第2運動変換機構と、前記第3変位部の変位を前記所定方向の回転運動に変換する第3運動変換機構と、前記第1運動変換機構から入力される前記所定方向の回転を第1回転軸に伝え、前記第1回転軸から入力される前記所定方向の回転を前記第1運動変換機構に伝えない第1一方向クラッチと、前記第2運動変換機構から入力される前記所定方向の回転を第2回転軸に伝え、前記第2回転軸から入力される前記所定方向の回転を前記第2運動変換機構に伝えない第2一方向クラッチと、前記第3運動変換機構から入力される前記所定方向の回転を第3回転軸に伝え、前記第3回転軸から入力される前記所定方向の回転を前記第3運動変換機構に伝えない第3一方向クラッチとを備えて構成され、前負荷付与装置は、前記第1回転軸、第2回転軸、及び第3回転軸の前記所定方向の回転運動に対する抵抗力を生じるブレーキ装置である。
請求項5記載の運動負荷付与装置では、使用者が第1形態の運動を行なって第1変位部が変位すると、この変位が第1運動変換機構及び第1一方向クラッチを介して第1回転軸に所定方向の回転として伝達され、負荷付与装置であるブレーキ装置が第1回転軸の所定方向の回転に対し抵抗力を付与する。このとき、直接的又は間接的にブレーキ装置に接続されている第2回転軸及び第3回転軸が所定方向に回転するが、この回転は、第2一方向クラッチが第2回転軸と第2運動変換機構とを切り離すと共に、第3一方向クラッチが第3回転軸と第3運動変換機構とを切り離すことによって、第2変位部又は第3変位部に伝達されることがない。同様に、使用者が第2形態の運動を行なう場合には第1変位部及び第3変位部が変位することがなく、使用者が第3形態の運動を行なう場合には第1変位部及び第2変位部が変位することがない。
請求項6記載の発明に係る運動負荷付与装置は、請求項5記載の運動負荷付与装置において、前記第1回転軸、第2回転軸、及び第3回転軸を、共通の回転軸とした。
請求項6記載の運動負荷付与装置では、第1乃至第3変位部の変位が第1乃至第3運動変換機構によって共通の回転軸の回転に変換される構成であるため、例えば各一方向クラッチを同軸上に配置することができ、装置全体を一層コンパクトに構成することが可能である。
請求項7記載の発明に係る運動負荷付与装置は、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の運動負荷付与装置において、前負荷付与装置は、変位に対し生じる抵抗力の大きさを変化させることが可能である。
請求項7記載の運動負荷付与装置では、運動に負荷を与える負荷付与装置が変位に対する抵抗力を可変であるため、例えば、使用者の体力に応じて適切な負荷を付与することが可能である。なお、変位に対し生じる抵抗力を変化させる可変負荷付与機構としては、例えば、電磁ブレーキ装置、可変オリフィスを有するダンパ、電気粘性流体(ER流体)や磁性流体等を用いた可変ブレーキや可変ダンパ等を用いることができる。
請求項8記載の発明に係る運動負荷付与装置は、請求項5乃至請求項7の何れか1項記載の運動負荷付与装置において、前記第1乃至第3運動変換機構の少なくとも1つは、対応する前記変位部の往復運動のうち一方向の運動を対応する前記一方向クラッチに所定方向の回転として伝える状態と、対応する前記変位部の往復運動の他方向の運動を対応する前記一方向クラッチに所定方向の回転として伝える状態とを、選択的に切り換え得る。
請求項8記載の運動負荷付装置では、例えば、第1乃至第3変位部の何れか左右に往復運動すると仮定すると、この変位部に対応する運動変換機構は、変位部の右向き運動によって一方向クラッチを所定方向に回転する状態と、変位部の左向き運動によって一方向クラッチを所定方向に回転する状態とを、所望に応じて選択的に切り換える。これにより、変位部の数を増やすことなく、負荷を受けつつ行ない得る運動形態を増やすことができる。
以上説明したように本発明に係る運動負荷付与装置は、複数形態の運動に対しそれぞれ負荷を与えることができるという優れた効果を有する。
本発明の実施形態に係る運動負荷付与装置としてのリハビリ装置10について、図1乃至図8に基づいて説明する。なお、図中適宜示す矢印A方向を装置前方向、矢印B方向を装置上方向、矢印C方向を装置右方向として説明することとする。
図1には、リハビリ装置10の全体構成が斜視図にて示されている。この図に示される如く、リハビリ装置10は、運動入力部12と、負荷付与装置14と、運動入力部12の運動を負荷付与装置14に伝達する運動伝達部16とを含んで構成されている。運動入力部12は、脚の蹴り出し、膝曲げ、股開きの3形態の運動に対応しており、リハビリ装置10は、これら3形態のリハビリ運動を1台で行なわせる(各運動に対し負荷を付与する)ことができる構成とされている。以下、具体的に説明する。
図1に示される如く、リハビリ装置10は、装置基部としてのベース部18を備えている。ベース部18の後端側からは、左右一対の着座部支持柱20が立設されており、該左右一対の着座部支持柱20上には着座部22が設けられている。着座部22は、水平面に沿う座部22Aと、座部22Aの後端に連結された背部22Bとを含んで構成されており、ベース部18に対する前後方向の位置、座部22Aに対する背部22Bの角度等をそれぞれ適宜調節可能とされている。この着座部22は、リハビリ装置10における使用者が上記3形態の運動を行なう際に着座(姿勢保持)する部分とされている。
(運動入力部の構成)
そして、着座部22の前方に、使用者が上記3形態の下肢の運動を行なうための運動入力部12が配設されている。運動入力部12は、上記3形態の運動に対応した3つの運動入力要素、すなわち、脚の蹴り出し運動が入力される第1変位部としての蹴出用プレート24、膝曲げ運動が入力される第2変位部としての膝曲用ロッド26、及び股開き運動が入力される第3変位部としての左右一対の開脚用プレート28を備えている。
図1及び図2に示される如く、蹴出用プレート24は、略矩形平板状に形成されており、下端が上端よりも後方(使用者側)に位置するように鉛直方向に対し若干傾斜して配置されている。この蹴出用プレート24は、ベース部18に対し前後方向に相対移動可能に支持されている。具体的には、蹴出用プレート24の右側部には前後方向に沿って長手のスライドロッド30が固定されており、スライドロッド30は、その後端側の一部がベース部18に固定されたスライドシリンダ32にスライド可能に挿入されている。これにより、蹴出用プレート24がベース部18に対し前後方向に相対移動可能である構成が実現されている。本実施形態では、スライドシリンダ32は、その後端部が右側の着座部支持柱20に固定されると共に、その前端部がベース部18から立設されたシリンダ支持柱34に固定されている。
図1及び図3に示される如く、膝曲用ロッド26は、左右方向に長手の棒状部材であり、後端側が左右方向に沿う回動軸36廻りに回動自在とされた回動アーム38の前端側に固定的に設けられている。これにより、膝曲用ロッド26は、回動軸36廻りに回動可能とされている。回動軸36は、その両端において、シリンダ支持柱34と該シリンダ支持柱34の左側に隣接するプーリ支持柱40とによって回転自在に軸支されている。
図1に示される如く、左右一対の開脚用プレート28は、正面視で互いに対称となる略L(逆L)字状に形成されており、それぞれ水平面に沿う脚載部28Aと脚載部28Aの左右方向外端から上向きに立設された荷重受け部28Bとを有して形成されている。図4に示される如く、各開脚用プレート28は、それぞれの脚載部28A下面側に、それぞれ座部22Aの下側に配置され後端が該座部22Aに鉛直軸42A廻りに回動可能な回動アーム42の前端が取り付けられている。これにより、左右一対の開脚用プレート28は、それぞれ対応する回動アーム42の鉛直軸42A廻りに回動して互いに略左右方向に接離する構成である。
(負荷付与装置の構成)
図1に示される如く、負荷付与装置14は、可変負荷付与手段としての電磁ブレーキ44を備えている。電磁ブレーキ44は、ベース部18に対し相対運動不能に固定される固定部44Aと、固定部44A(ベース部18)に対し回転する受動回転部44Bとを有し、付加される電磁力に応じて受動回転部44Bの固定部44Aに対する回転抵抗を変化させる構成とされている。本実施形態では、電磁ブレーキ44は、一対の着座部支持柱20間に架け渡された左右方向に長手の支軸46によってベース部18に対し支持されている。受動回転部44Bは支軸46廻りに回転可能とされている。
また、一対の着座部支持柱20の前方に設けられた左右一対の主軸支持柱48には、左右方向に長手、すなわち支軸46と平行とされた主回転軸50が、その軸線廻りの回転自在に軸支されている。図7にも示される如く、この主回転軸50には、円板状に形成された回転伝達部材52が同軸的に回転可能に固定されており、回転伝達部材52は電磁ブレーキ44の受動回転部44Bに回転伝達可能に連結されている。この連結は、例えば、互いの外周面を摩擦接触させる、互いの外周面に設けた歯を噛み合わせる、互いの外周面に無端ベルトを巻き掛ける等の構造を採ることができる。
これにより、主回転軸50を軸線廻りに回転すると、電磁ブレーキ44の受動回転部44Bが抵抗力を生じつつ固定部44Aに対し回転する構成とされている。すなわち、負荷付与装置14は、主回転軸50の回転に対する負荷を付与する構成とされている。この主回転軸50が、本発明における「回転軸」、「第1回転軸」、「第2回転軸」、「第3回転軸」にそれぞれ相当する。
電磁ブレーキ44により与える負荷(荷重)は、例えば、リハビリ装置10の図示しない操作パネルの操作によって使用者やリハビリ指導者等が任意に設定(運動前、又は運動中に設定)しても良く、実際の運動の負荷や速度等に応じて自動的に制御(例えば、フィードバックやフィードフォワード制御等)されるようにしても良い。
(運動伝達部の構成)
運動伝達部16は、運動入力部12の上記各運動、すなわち蹴出用プレート24の前後方向の直線運動、膝曲用ロッド26の回動軸36廻りの回動、及び一対の開脚用プレート28の対称的な回動(接離)を主回転軸50に伝達するようになっている。また、運動伝達部16は、主回転軸50に伝達された回転を、運動が入力されていない運動入力要素(蹴出用プレート24、膝曲用ロッド26、開脚用プレート28)に伝達しないように構成されている。以下、具体的に説明する。
図1及び図7に示される如く、主回転軸50には、蹴出用ワンウェイクラッチ54、膝曲用ワンウェイクラッチ56、開脚用ワンウェイクラッチ58が並列して設けられている。各ワンウェイクラッチ54、56、58は、それぞれ同じ構造とされている。図8に模式図にて示される如く、各ワンウェイクラッチ54、56、58は、主回転軸50に同軸的に一体回転するように連結されるクラッチ軸60と、クラッチ軸60に対し同軸的な回転自在に支持されたハウジング(アウタロータ)62と、クラッチ軸60に固定的に設けられハウジング62内に収容された外歯ラチェット64と、ハウジング62の内周側にに支軸66A廻りの回動可能に軸支され該ハウジング62が矢印D方向に回転する状態で外歯ラチェット64と噛合って該矢印D方向の回転をクラッチ軸60に伝達するパウル66とを備えて構成されている。
また、各ワンウェイクラッチ54、56、58は、ハウジング62が矢印Dと反対向きの矢印E方向に回転する状態では、パウル66が外歯ラチェット64に噛み合うことがなく、該矢印E方向の回転がクラッチ軸60には伝達されない構成とされている。そして、各ワンウェイクラッチ54、56、58は、クラッチ軸60が矢印D方向に回転する状態では、パウル66が外歯ラチェット64に噛み合うことがなく、該矢印D方向の回転がハウジング62には伝達されない構成である。
以上により、運動伝達部16は、蹴出用ワンウェイクラッチ54のハウジング62が矢印D方向に回転すると、該蹴出用ワンウェイクラッチ54のクラッチ軸60が、主回転軸50及び他のワンウェイクラッチ56、58のクラッチ軸60と共に矢印D方向に回転するが、該他のワンウェイクラッチ56、58のハウジング62は矢印D方向に(矢印E方向にも)回転しない構成とされている。同様に、運動伝達部16は、膝曲用ワンウェイクラッチ56のハウジング62が矢印D方向に回転すると、主回転軸50は矢印D方向に回転するが、該他のワンウェイクラッチ54、58のハウジング62は矢印D及び矢印E方向に回転しせず、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62が矢印D方向に回転すると、主回転軸50は矢印D方向に回転するが、該他のワンウェイクラッチ54、56のハウジング62は矢印D及び矢印E方向に回転しない構成とされている。
そして、図1及び図2に示される如く、運動伝達部16は、蹴出用プレート24の前方への直線運動を蹴出用ワンウェイクラッチ54のハウジング62の矢印D方向への回転運動に変換する、運動変換機構としてのベルト部材68を備えている。ベルト部材68は、蹴出用ワンウェイクラッチ54のハウジング62の外周に巻き回されると共に自由端(前端)が蹴出用プレート24に固定されている。これにより、蹴出用プレート24が前方に移動すると、ベルト部材68が蹴出用ワンウェイクラッチ54のハウジング62から巻き出される如くして該ハウジング62を矢印D方向に回転する構成である。
また、図1及び図3に示される如く、運動伝達部16は、膝曲用ロッド26の回動軸36廻りの略下向き(図3に矢印Fにて示す向き)の回動を膝曲用ワンウェイクラッチ56のハウジング62の矢印D方向への回転運動に変換する、運動変換機構70を備えている。運動変換機構70は、プーリ支持柱40の上端で回動軸36の回動が同じ方向に伝達されるように支持されたプーリ72と、該プーリ72及び膝曲用ワンウェイクラッチ56のハウジング62の各外周に巻き掛けられた無端ベルト74とで構成されている。これにより、膝曲用ロッド26が矢印F方向に回動すると、プーリ72も矢印F方向に回動又は回転し、無端ベルト74が矢印G方向に無限起動運動することで、膝曲用ワンウェイクラッチ56のハウジング62を矢印D方向に回転する構成である。
さらに、図1及び図5に示される如く、運動伝達部16は、左右の開脚用プレート28が互いに左右方向に離間する方向の運動を開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62の矢印D方向への回転運動に変換する、運動変換機構76を備えている。運動変換機構76は、一端が右側の開脚用プレート28(脚載部28A)の下部に固定されると共に他端が左側の開脚用プレート28の下部に固定されたベルト部材78と、該ベルト部材78の中間部が巻き掛けられた可動プーリ80とを備えている。これにより、1つの開脚用プレート28すなわち長さ一定であるベルト部材78の支持点が互いに離間すると、可動プーリ80が上方に移動するようになっている。可動プーリ80を上下方向にスライド可能に支持するガイド部材を設けても良い。
また、運動変換機構76は、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62の外周に巻き回されると共に自由端(前端)が可動プーリ80に固定されたベルト部材82と、可動プーリ80と上記ハウジング62との間に設けられたプーリ84、86とを備えている。可動プーリ80の略直下に設けられたプーリ84は、前後方向に沿う軸線を有し、ベルト部材82が巻き掛けられ可動プーリ80との間におけるベルト部材82の張力方向を上下方向に維持する構成とされている。プーリ84の右方に設けられたプーリ86は、上下方向に沿う軸線を有し、プーリ84との間におけるベルト部材82の張力方向を左右方向に維持すると共に、上記ハウジング62との間におけるベルト部材82の張力方向を略前後方向に維持する構成とされている。すなわち、運動変換機構76は、可動プーリ80の上方への直線運動を2つのプーリ84、86によってハウジング62の接線方向に沿うベルト部材82の巻き出し運動に変換する構成とされている。プーリ84、86は、ベース部18に立設されたプーリ支持台88に支持されている。
以上により、図6に示される如く、左右一対の開脚用プレート28が左右方向に互いに離間すると、可動プーリ80が上方に移動し、この運動はベルト部材82が開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62から巻き出される如き運動に変換され、該ハウジング62を矢印D方向に回転する構成である。
(復元手段)
さらに、リハビリ装置10は、上記各形態の運動を行なった後、装置を初期位置に復帰させる復元手段を備えている。すなわち、復元手段は、前方に蹴り出された蹴出用プレート24を後方の初期値に復帰させ、回動軸36廻りの矢印F方向(略下向き)に回動した膝曲用ロッド26を略上方の初期位置に復帰させ、互いに左右方向に離間した一対の開脚用プレート28を互いに近接した初期位置に復帰させる構成とされている。
そして、本実施形態では、復元手段として、各ワンウェイクラッチ54、56、58のハウジング62にそれぞれ設けられ、かつ各ハウジング62をベース部18に対し矢印E方向に付勢する定荷重ばね装置90、92、94を備えている(図2、3、5参照)。これらの定荷重ばね装置90、92、94の復元力によって上記各運動入力要素が初期位置に復帰する構成である。なお、図示は省略するが、各運動入力要素が初期位置を超えて復元方向に移動しないように、適宜ストッパ等が設けられている。
また、上記の通り各ハウジング62の矢印E方向の回動は主回転軸50には伝達されないため、電磁ブレーキ44のブレーキ力が各運動入力要素の復元を阻害しない構成とされている。さらに、各ハウジングを矢印E方向に付勢する定荷重ばね装置の90、92、94の付勢力(復元力)は、それぞれ各形態の運動に対する抵抗力として作用するが、該付勢力は各運動入力要素の復元に要する程度(上記の通り電磁ブレーキ44のブレーキは作用しない)に、すなわちリハビリ運動に必要な負荷に対し十分に小さく設定されている。また、各運動の変位に対し定荷重ばね装置90、92、94の復元力が殆ど変化しないため、運動中の使用者に違和感を与えたり、該違和感を与えないために電磁ブレーキ44の制御を複雑化したりすることがない構成とされている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
上記構成のリハビリ装置10では、脚蹴り出し運動を行なう際には、着座部22に着座し背部22Bで背を支持された使用者は、膝を曲げた状態から該膝を伸ばしつつ、足の裏を接触させている蹴出用プレート24を前方に蹴り出す。これにより、図2に示される如く、スライドロッド30及びスライドシリンダ32を介しベース部18に支持された蹴出用プレート24は、ベース部18に対し前方に移動する。このとき、ベルト部材68が蹴出用ワンウェイクラッチ54のハウジング62から巻き出され、該ハウジング62がクラッチ軸60すなわち主回転軸50と共に矢印D方向に回転する。この回転は回転伝達部材52を介して電磁ブレーキ44の受動回転部44Bに伝達され、電磁ブレーキ44は受動回転部44Bの回転に対する抵抗力を生じる。この抵抗力が、使用者の脚蹴り出し運動に対する負荷として作用する。すなわち使用者は、電磁ブレーキ44にて付与される負荷に抗して脚蹴り出し振動を行なう。
一方、主回転軸50の矢印D方向の回転は、膝曲用及び開脚用ワンウェイクラッチ56、58の各ハウジング62には伝達されず、脚蹴り出し運動に伴って膝曲用ロッド26、開脚用プレート28がベース部18に対し変位することがない。すなわち、膝曲用ロッド26、開脚用プレート28が脚蹴り出し運動を阻害することがない。
使用者が蹴り出し動作を停止すると、蹴出用プレート24の前方への移動、蹴出用ワンウェイクラッチ54のハウジング62すなわち主回転軸50の矢印D方向の回動が停止する。すると、蹴出用ワンウェイクラッチ54のハウジング62は、定荷重ばね装置90の復元力によって矢印E方向に回転する。矢印E方向に回転するハウジング62は、ベルト部材68を巻き取りながら蹴出用プレート24を後方へ移動する。このとき、使用者は脚の引き戻しに伴ってリハビリ装置10から負荷を受けることがなく、若しくは定荷重ばね装置90の復元力で脚の引き戻しが促される。すなわち、リハビリ装置10では、単なる錘式のリハビリ装置のように所要の運動後の復帰動作時にも運動時と同じ負荷が作用し続けること(負荷に抗しつつ復帰動作を行なう必要)がなく、リハビリ装置10の使用者は、リハビリに必要な所要の運動(脚蹴り出し運動の他、以下に説明する膝曲げ運動、及び股開き運動)のみを効率よく行なうことができる。
そして、リハビリ装置10が脚蹴り出し運動に対し付与する負荷は、使用者の体力等に合わせて予め設定されるか、制御回路によって自動的に適切な負荷に制御される。これにより、使用者は、リハビリに必要な所定回数の脚蹴り出し運動を行なうことができる。このように使用者に合わせて負荷を調整(制御)する点については、以下に説明する膝曲げ運動、及び股開き運動でも同様である。
膝曲げ運動を行なう際には、座部22Aに着座している使用者は、膝を伸ばし又は軽く曲げて脚を前下方に投げ出した如き状態から、脚の膝下部分裏側(所謂ふくらはぎ)で膝曲用ロッド26を略下方に押下しつつ膝を曲げる。これにより、図3に示される如く、回動アーム38を介して回動軸36廻りに回動可能に支持されている膝曲用ロッド26は、プーリ72と共に回動軸36廻りの矢印F方向に回動する。このとき、プーリ72及び膝曲用ワンウェイクラッチ56のハウジング62に巻き掛けられている無端ベルト74が矢印G方向に無限起動運動し、該ハウジング62がクラッチ軸60すなわち主回転軸50と共に矢印D方向に回転する。この回転は回転伝達部材52を介して電磁ブレーキ44の受動回転部44Bに伝達され、電磁ブレーキ44は受動回転部44Bの回転に対する抵抗力を生じる。この抵抗力が、使用者の膝曲運動に対する負荷として作用する。
一方、主回転軸50の矢印D方向の回転は、蹴出用及び開脚用ワンウェイクラッチ54、58の各ハウジング62には伝達されず、膝曲げ運動に伴って蹴出用プレート24、開脚用プレート28がベース部18に対し変位することがない。すなわち、蹴出用プレート24、開脚用プレート28が膝曲げ運動を阻害することがない。
使用者が膝曲動作を停止すると、膝曲用ロッド26の矢印F方向への回動、膝曲用ワンウェイクラッチ56のハウジング62すなわち主回転軸50の矢印D方向の回動が停止する。すると、膝曲用ワンウェイクラッチ56のハウジング62は、定荷重ばね装置92の復元力によって矢印E方向に回転する。矢印E方向に回転するハウジング62は、無端ベルト74を矢印Gとは反対向きに無限起動運動させながらプーリ72すなわち膝曲用ロッド26を回動軸36廻りの矢印Fと反対方向に回動させる。このとき、使用者は膝伸ばし(膝下部の引き上げ)動作に伴ってリハビリ装置10から負荷を受けることがなく、若しくは定荷重ばね装置92の復元力で膝伸ばし動作が促される。使用者は、以上の膝曲げ運動を所定に回数だけ繰り返す。
股開き運動を行なう際には、座部22Aに着座している使用者は、それぞれ開脚用プレート28の脚載部28A上に載せた両脚をほぼ閉じた状態から、大腿部の外側部分で対応する荷重受け部28Bを左右方向外側に押圧しつつ股開き動作を行なう(開脚する)。これにより、図6に示される如く、一対の開脚用プレート28が互いに左右方向に離間し、両端がそれぞれ異なる開脚用プレート28に固定されたベルト部材78の中間部に巻き掛けられている可動プーリ80が上方に移動する。この可動プーリ80に一端が固定されているベルト部材82は、プーリ84、86によって張力方向を変換され、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62から巻き出され、該ハウジング62をクラッチ軸60すなわち主回転軸50と共に矢印D方向に回転させる。この回転は回転伝達部材52を介して電磁ブレーキ44の受動回転部44Bに伝達され、電磁ブレーキ44は受動回転部44Bの回転に対する抵抗力を生じる。この抵抗力が、使用者の股開き運動に対する負荷として作用する。
一方、主回転軸50の矢印D方向の回転は、蹴出用及び膝曲用ワンウェイクラッチ54、56の各ハウジング62には伝達されず、股開き運動に伴って蹴出用プレート24、膝曲用ロッド26がベース部18に対し変位することがない。すなわち、蹴出用プレート24、膝曲用ロッド26が股開き運動を阻害することがない。
使用者が股開き動作を停止すると、一対の開脚用プレート28の左右方向の回動(互いの離間)、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62すなわち主回転軸50の矢印D方向の回動が停止する。すると、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62は、定荷重ばね装置94の復元力によって矢印E方向に回転する。矢印E方向に回転するハウジング62は、ベルト部材68を巻き取りながら可動プーリ80を下方に引き下げ、ベルト部材78の張力(の分力)によって左右一対の開脚用プレートを互いに近接させる。このとき、使用者は股閉じ(閉脚)動作に伴ってリハビリ装置10から負荷を受けることがなく、若しくは定荷重ばね装置94の復元力で股閉じ動作が促される。使用者は、以上の股開き運動を所定に回数だけ繰り返す。
以上説明したように、本実施の形態に係るリハビリ装置10では、3形態の運動に伴う変位がそれぞれ運動入力要素(蹴出用プレート24、膝曲用ロッド26、及び一対の開脚用プレート28)を有する運動入力部12を備え、1つの運動を行なっている(1つの運動入力要素に変位を入力している)ときには他の運動動に対応する運動入力要素が変位しないように構成されているため、1台で3形態のリハビリ運動を行なうことができる。
このように、本実施形態に係るリハビリ装置10では、3形態のリハビリ運動に対しそれぞれ負荷を与えることができる。
また、上記3形態のリハビリ運動に対し、共通の負荷付与装置である電磁ブレーキ44が抵抗力を生じて負荷を与えるため、換言すれば、各形態の運動を単一の電磁ブレーキ44に伝達する運動伝達部16を備えるため、従来のリハビリ装置3台分の機能を有するリハビリ装置10を全体としてコンパクトに構成することが実現された。特に、運動伝達部16は、共通の主回転軸50に各種運動(の変位)を伝達するように構成されているため、各ワンウェイクラッチ54、56、58を同軸上に配置することができ、リハビリ装置10が一層コンパクトに構成されている。また、回転伝達部材52も1つで足りる。
さらに、リハビリ装置10では、負荷付与装置として電磁ブレーキ44を備えるため、使用者の体力等に応じて運動負荷を変化させることができる。これにより、例えば運動負荷を適性に制御して使用者が行なうリハビリ運動の回数を保証することが可能となる。また、運動中に負荷を動的に変化させてリハビリ効果を向上することや、制御データをリハビリ記録(負荷や繰り返し数)等のリハビリデータ(の一部)に変換して記録を残すこと等も可能となる。
(股開き用の運動変換機構の変形例)
次に、上記した開脚用プレート28と回動アーム42と運動変換機構76との組み合わせで構成される股開き運動機構に代わる、股開き運動機構100について、図9及び図10に基づいて説明する。なお、上記実施形態と基本的に同一の部品・部分については、上記実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図9(A)に示される如く、股開き運動機構100は、左右一対の開脚用プレート28に代えて、運動入力部12を構成する第3変位部としての左右一対の開閉脚用プレート102を備えている。各開閉脚用プレート102は、それぞれ水平面に沿う脚載部102Aと、脚載部102Aの左右方向外端から上向きに立設された開脚荷重受け部102Bと、脚載部102Aの左右方向内端から上向きに立設された閉脚荷重受け部102Cとを有して形成されている。
各開閉脚用プレート102は、それぞれの脚載部102A下面側に回動アーム42の前端が取り付けられている。これにより、左右一対の開脚用プレート28は、それぞれ対応する回動アーム42の鉛直軸42A廻りに回動して互いに略左右方向に接離する構成である。また、各回動アーム42の鉛直軸42Aには、それぞれ平歯車104が同軸的かつ一体的に回転可能に取り付けられている。各平歯車104は、互いに噛合わされている。これにより、左右の回動アーム42すなわち開閉脚用プレート102は、対応する鉛直軸42A廻りに互いに連動しつつ回動する構成とされている。また、各平歯車104は、一対の回動アーム42が前後方向に沿って互いに平行となる状態を取り得るように、前後方向に沿う中心線に対し対称に運動するように噛み合わされている。
そして、股開き運動機構100は、左右の回動アーム42の鉛直軸42A廻りの互いに連動した回動を開脚用ワンウェイクラッチ58に伝達する運動変換機構106を備えている。運動変換機構106は、鉛直軸42Aと同軸的かつ回動アーム42とは独立して回転(回動)可能に支持(図示省略)された円板部材108を備えている。円板部材108には、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62の外周に巻き回されたベルト部材110の自由端が固定されている。また、股開き運動機構100は、円板部材の108の回転に伴って該円板部材108にベルト部材110を巻き取らせるためのガイドプーリ111を備えている。この実施形態では、ベルト部材110を挟むように一対のガイドプーリ111が設けられている。
この円板部材108における回転中心から離間した位置には、連結孔112が設けられている。連結孔112は、一方の回動アーム42に設けられた連結孔114に嵌合した連結ピン116が嵌合するようになっている。この連結ピン116を介して回動アーム42の回動が円板部材108に伝達される構成である。そして、この実施形態では、円板部材108には、複数(3つ)の連結孔112が周方向に離間して配置されており、開脚に伴って負荷を与える股開き機運動と、閉脚に伴って負荷を与える股閉じ運動とを行ない得る構成を実現している。
具体的には、図9(A)で連結ピン116が嵌合している112Aは、ベルト部材110がすべて円板部材108から巻き出された状態で、一対の回動アーム42が前後方向に沿って(股開き運動の初期位置に)位置するように配置されている。この状態から一対の回動アーム42を矢印Hにして示す開脚方向に回動すると、図9(B)に示される如く円板部材108が矢印I方向に回転してベルト部材110を巻き取り、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62が矢印D方向に回転し、電磁ブレーキ44の負荷が作用するようになっている。
一方、図10(A)で連結ピン116が嵌合している112Bは、ベルト部材110がすべて円板部材108から巻き出された状態で、一対の回動アーム42の成す角が所定角度(略90°)となる位置(股閉じ運動の初期位置)に位置するように配置されている。この状態から一対の回動アーム42を矢印Jにして示す閉脚方向に回動すると、図10(B)に示される如く円板部材108が矢印K方向に回転してベルト部材110を巻き取り、開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62が矢印D方向に回転し、電磁ブレーキ44の負荷が作用するようになっている。
このように、股開き運動機構100の運動変換機構106は、円板部材108への連結ピン116の連結位置に応じて、股開き運動に負荷を与える状態と、股閉じ運動に負荷を与える状態とを選択的に切り換える構成とされている。また、連結孔112Aと連結孔112Bとの間に配置された第3の連結孔112Cは、股開き運動又は股閉じ運動の開始位置を変更して運動範囲を狭める際に用いられる。
次に、本変形例に係る股開き運動機構100を備えたリハビリ装置10における上記実施形態とは異なる作用を説明する。
上記構成の股開き運動機構100では、股開き運動を行なう際には、先ず連結ピン116を円板部材108の連結孔112Aに嵌合する。その後、座部22Aに着座している使用者は、それぞれ開閉脚用プレート102の脚載部102A上に載せた両脚をほぼ閉じた状態(図9(A)参照)から、大腿部の外側部分で対応する開脚荷重受け部102Bを左右方向外側に押圧しつつ股開き動作を行なう(開脚する)。これにより、図9(B)に示される如く左右の回動アーム42が互いに連動しつつ離間するように矢印H方向に回動し、円板部材108が矢印I方向に回転する。すると、ベルト部材110は、円板部材108の外周部に巻き取られつつ開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62から巻き出され、該ハウジング62を矢印D方向に回転させる。この回転は回転伝達部材52を介して電磁ブレーキ44の受動回転部44Bに伝達され、電磁ブレーキ44は受動回転部44Bの回転に対する抵抗力を生じる。この抵抗力が、使用者の股開き運動に対する負荷として作用する。このとき、上記実施形態と同様に股開き運動に伴って蹴出用プレート24、膝曲用ロッド26がベース部18に対し変位することがない。
一方、股閉じ運動を行なう際には、先ず連結ピン116を円板部材108の連結孔112Bに嵌合する。その後、座部22Aに着座している使用者は、それぞれ開閉脚用プレート102の脚載部102A上に載せた両脚を開いた状態(図10(A)参照)から、大腿部の内側部分で対応する閉脚荷重受け部102Cを左右方向内側に押圧しつつ股閉じ動作を行なう(閉脚する)。これにより、図10(B)に示される如く左右の回動アーム42が互いに連動しつつ離間するように矢印J方向に回動し、円板部材108が矢印K方向に回転する。すると、ベルト部材110は、円板部材108の外周部に巻き取られつつ開脚用ワンウェイクラッチ58のハウジング62から巻き出され、該ハウジング62を矢印D方向に回転させる。この回転は回転伝達部材52を介して電磁ブレーキ44の受動回転部44Bに伝達され、電磁ブレーキ44は受動回転部44Bの回転に対する抵抗力を生じる。この抵抗力が、使用者の股開き運動に対する負荷として作用する。このとき、上記実施形態と同様に股開き運動に伴って蹴出用プレート24、膝曲用ロッド26がベース部18に対し変位することがない。
したがって、開脚用プレート28と回動アーム42と運動変換機構76との組み合わせで構成される股開き運動機構に代えて、股開き運動機構100を備えたリハビリ装置10によっても、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。また、股開き運動機構100では、股開き運動と股閉じ運動とを選択的に切り換えて行なうことができるため、1台で4形態のリハビリ運動に対し負荷を与えることができる。すなわち、この変形例では、変位部の数を増やすことなく、負荷を受けつつ行ない得る運動形態を増やすことが実現された。なお、股開き運動機構100では、股閉じ運動にも負荷を与え得る構成例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば円板部材108に連結孔112A又は連結孔112Bのみを設け股開き又は股閉じ運動の専用機構として構成しても良い。この場合、円板部材108には予めベルト部材110を巻き掛けて(巻き回して)ガイドプーリ111を要しない構成とすることもできる。また、この変形例では、運動に対する負荷を与える方向の切換機構を股開き、股閉じ運動の切り換えに適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、本機構を膝曲運動と膝伸ばし運動との切換に適用しても良い。
なお、上記実施形態又は変形例では、リハビリ装置10が代表的なリハビリ運動である上記3形態又は4形態のリハビリ運動に対し負荷を与える構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、2形態又は5形態以上の運動に対し負荷を与えるようにしても良い。また、本発明における運動負荷付与装置は、リハビリ用途に用いられる構成には限定されず、各種運動用に適用することができる。さらに、本発明における運動負荷付与装置が負荷を与える運動は使用者の下肢の運動に限られないことは言うまでもない。
また、上記実施形態又は変形例では、各形態の運動に伴う運動入力要素の変位が共通の主回転軸50に伝達される(電磁ブレーキ44の上流で共通化される)構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、各形態の運動に伴う変位がそれぞれ別個に電磁ブレーキ44に伝達されるようにしても良い。
さらに、上記実施形態又は変形例では、負荷付与装置として電磁ブレーキ44を備えた構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、電磁ブレーキ44に代えてER流体等を用いた負荷可変ブレーキ等を設けても良い。