JP2006118883A - 放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置 - Google Patents
放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2006118883A JP2006118883A JP2004304629A JP2004304629A JP2006118883A JP 2006118883 A JP2006118883 A JP 2006118883A JP 2004304629 A JP2004304629 A JP 2004304629A JP 2004304629 A JP2004304629 A JP 2004304629A JP 2006118883 A JP2006118883 A JP 2006118883A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- waste liquid
- organic waste
- radioactive organic
- radioactive
- zirconia
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Catalysts (AREA)
- Treatment Of Water By Oxidation Or Reduction (AREA)
Abstract
【課題】放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置を提供すること。
【解決手段】β線を放射する有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液を貯留する廃液処理槽2と、廃液処理槽2内に配置され、かつジルコニアに白金を担持させた触媒3とを備え、触媒3に有機炭素(14C)から放射されるβ線が照射され、有機成分を含む放射性有機廃液を分解する。
【選択図】 図1
【解決手段】β線を放射する有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液を貯留する廃液処理槽2と、廃液処理槽2内に配置され、かつジルコニアに白金を担持させた触媒3とを備え、触媒3に有機炭素(14C)から放射されるβ線が照射され、有機成分を含む放射性有機廃液を分解する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置に関し、さらに詳しくは、触媒を用いて放射性有機廃液を分解する放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置に関するものである。
近年、触媒を用いて有機成分を含む物質の分解が実用化されている。この有機成分を含む物質を分解する触媒は、主に金属酸化物により構成されており、光触媒と言われているものである。この光触媒としては、例えば、特許文献1に示すように、二酸化チタン(TiO2)あるいはこの二酸化チタンに白金、銅、マンガン等を担持させたものがある。この特許文献1に示す触媒は、可視光線や紫外線などが照射されることで、有機成分を含む物質を酸化還元反応により分解、すなわちこの有機成分を含む物質を無機化するものである。
触媒が酸化還元反応を行うための能力は、この触媒を構成する金属酸化物のバンドギャップエネルギーの大きさに左右される。つまり、バンドギャップエネルギー(価電子帯と伝導帯とのエネルギーの差)が大きい金属酸化物により構成される触媒は、バンドギャップエネルギーが小さい金属酸化物により構成される触媒よりも酸化還元反応を行うための能力、すなわち有機成分を含む物質に対する分解能力が高いものとなる。
しかし、触媒を構成する金属酸化物のバンドギャップエネルギーが大きくても、この触媒を構成する金属酸化物の価電子帯の電子が伝導帯へと励起させるためには、この触媒にバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーを与えなければ、有機成分を含む物質の分解を行うことができない。つまり、分解性能の高い触媒であっても、エネルギーが低い可視光線や紫外線などをこの触媒に照射しても有機成分を含む物質の分解を行うことができない。
ところで、放射性有機廃液は、有機炭素(14C)から構成される有機成分を微少量含む水溶液である。この有機炭素(14C)は、人体に蓄積されやすく、蓄積された量によっては、人体に悪影響をおよぼす虞があるものである。ここで、放射性有機廃液は、有機成分を含む物質であるため、金属酸化物により構成される光触媒により分解することが可能である。しかしながら、一般に光触媒とされる二酸化チタンのみ、あるいはこの二酸化チタンに白金、銅、マンガン等を担持させた触媒に可視光線や紫外線を照射する方法は、放射性有機廃液が被ばく・汚染拡大防止の目的とした構造の容器内に貯蔵されているため外部から可視光線や紫外線を照射する必要があるため困難である。また、放射性有機廃液を貯蔵する容器内に光源を設置する場合には、光源の保守・点検の際に、被ばくおよび汚染の可能性が存在する。従って、実用上、光触媒に可視光線や紫外線を照射して放射性有機廃液を分解することは困難であった。さらに、金属酸化物である二酸化チタンは、放射性有機廃液による放射線によって可視光線や紫外線と同様に有機成分を分解することが可能であるが、この触媒はエネルギーが低い可視光線や紫外線に反応するものであり、エネルギーの高い放射線に対しては、必ずしも適した触媒ではない。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、有機成分を含む放射性有機廃液を分解する放射性有機廃液処理方法において、ジルコニア(ZrO2)に白金(Pt)を担持させた触媒を前記放射性有機廃液内に配置し、当該ジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持つ放射線を照射することを特徴とする。
また、この発明では、放射性有機廃液処理装置であって、有機成分を含む放射性有機廃液を貯留する廃液処理槽と、前記廃液処理槽内に配置され、かつジルコニアに白金を担持させた触媒と、前記ジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持つ放射線を照射する照射手段と、を備えることを特徴とする。
これらの発明によれば、白金を担持させたバンドギャップエネルギーの高いジルコニアに高エネルギー、すなわちジルコニアの価電子帯の電子を伝導帯へと励起することができるエネルギーを持つ放射線を照射する。ここで、放射線の照射を受けたジルコニアでは電子の励起が生じるが、このジルコニアは、電気をほとんど流さないため、ジルコニアで構成される触媒の周囲に存在する放射性有機廃液にこの電子の移動が伝搬しない。従って、ジルコニア単体では、放射性有機廃液の分解を行うことは困難である。しかしながら、この発明では、ジルコニアに白金を担持させた触媒を用いるため、ジルコニアで構成される触媒の周囲に存在する放射性有機廃液に電子の移動を伝搬させることができる。従って、ジルコニア単体と比較して、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。また、従来の二酸化チタン(TiO2)あるいはこの二酸化チタンに白金、銅、マンガン等を担持させた触媒では、伝導帯に励起された電子のエネルギーが水の還元には不十分であったが、放射線が照射されたジルコニアの場合は、十分なエネルギーを持つことから、可視光線や紫外線を照射して放射性有機廃液を分解する場合と比較して、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。
また、この発明では、上記放射性有機廃液処理方法において、前記放射性有機廃液の有機成分は、有機炭素(14C)から構成されており、前記有機炭素(14C)が放射するβ線が前記触媒に照射されることを特徴とする。
また、この発明では、放射性有機廃液処理装置であって、β線を放射する有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液を貯留する廃液処理槽と、前記廃液処理槽内に配置され、かつジルコニアに白金を担持させた触媒と、を備えることを特徴とする。
これらの発明によれば、ジルコニアに白金を担持させた触媒には、放射性有機廃液に含まれる有機成分を構成する有機炭素(14C)が放射するβ線が照射される。このβ線は、バンドギャップエネルギーの高いジルコニアの価電子帯の電子を伝導帯に励起させるのに十分なエネルギーの持つ放射線である。従って、ジルコニアに白金を担持させた触媒が有機炭素から構成される有機成分を含む放射性有機廃液内に配置されることで、ジルコニアの価電子帯の電子を伝導帯へと励起することができる。これにより、触媒にこの触媒を構成するジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持つ放射線を照射する照射手段を必要としないので、放射性有機廃液を分解するためのコストを低減することができる。
ここで、触媒反応では、触媒と放射性有機廃液との接触面積を大きくすることにより反応量が増大する。しかしながら、従来の二酸化チタン(TiO2)あるいはこの二酸化チタンに白金、銅、マンガン等を担持させた触媒に可視光線や紫外線を照射する場合では、光路を確保するために触媒を密に配置することが困難であったが、この発明によれば、放射性有機廃液に含まれる有機成分を構成する有機炭素(14C)が放射するβ線を用いることから、触媒を密にすることができる。これにより、触媒と放射性有機廃液との接触面積を大きくすることができ、放射性有機廃液に対する分解能力をさらに向上することができる。
また、この発明では、上記放射性有機廃液処理装置において、前記廃液処理槽と外部設備との間に気液分離装置をさらに備えることを特徴とする。
放射性有機廃液が分解されると有機成分を構成する有機炭素(14C)は、酸化還元反応により、炭酸ガスとなる。この炭酸ガスは、廃液処理槽内の気相部に充満する。ここで、この気相部には、この炭酸ガスのみならず、放射性有機廃液が蒸発することで発生する水蒸気および蒸発した有機成分が充満する。つまり、無機化できていない有機成分が気相部に充満することとなる。しかしながら、この発明によれば、この気相部、すなわち廃液処理槽と外部設備との間に気液分離装置を配置し、この気液分離装置に付着した水蒸気および蒸発した有機成分を再凝縮し、廃液処理槽内に戻すことできる。これにより、無機化できていない有機成分が外部設備に移動することを抑制することができる。
また、この発明では、上記放射性有機廃液処理装置において、前記廃液処理槽内に微少気泡を発生するマイクロバブル発生手段をさらに備えることを特徴とする。
この発明によれば、マクロバブル発生手段により発生した微少気泡が放射性有機廃液内を廃液面に向かって移動する。このとき、この微少気泡が放射性有機廃液内で圧壊すると、エネルギーが発生し、この発生したエネルギーによりこの放射性有機廃液が活性化する。また、放射性有機廃液内に微少気泡が発生することで、この放射性有機廃液に対する空気の溶存濃度が上昇し、放射性有機廃液が酸化環境となる。また、微少気泡が移動することで、放射性有機廃液が攪拌される。これらにより、放射性有機廃液に対する分解能力をさらに向上することができる。
また、この発明では、上記放射性有機廃液処理装置において、前記廃液処理槽内の放射性有機廃液を循環させ、当該放射性有機廃液をろ過する廃液循環手段を有することを特徴とする。
廃液処理槽内の放射性有機廃液には、微小粒子が混入している場合や、この放射性有機廃液が分解される際に生成される難溶解性成分である固相成分が混入している場合がある。この微小粒子や固相成分が触媒に付着することで、放射性有機廃液に対する分解能力が低下する虞がある。しかしながら、この発明によれば、マクロバブル発生手段により発生した微少気泡は、その電荷により放射性有機廃液の微小粒子や固相成分を吸着する。この微小粒子や固相成分を吸着した微小気泡を含む放射性有機廃液は、廃液循環手段によりろ過される。つまり、微少気泡に吸着された微小粒子や固相成分は、廃液循環手段により除去される。これにより、放射性有機廃液に対する分解能力が低下する虞を抑制することができる。
この発明にかかる放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置は、ジルコニアに白金を担持させた触媒にジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する放射線、例えばβ線を照射するので、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。ここで、以下に説明では、廃液処理槽内に配置された触媒を用いて放射性有機廃液を分解するが、廃液処理槽に連通する配管、この廃液処理槽の内壁に白金を担持させたジルコニアをコーティングすることや、放射性廃棄物処分施設を処理する埋蔵設備の人工バリア材に白金を担持させたジルコニアを添加することで、放射性有機廃液を分解しても良い。
図1は、この発明にかかる放射性有機廃液処理装置の構成例を示す図である。同図に示すように、この発明にかかる放射性有機廃液処理装置1は、廃液処理槽2と、触媒3と、マイクロバブル発生装置4と、気液分離装置5と、廃液循環装置6とにより構成されている。廃液処理槽2は、円筒形状であり、液相部21と気相部22とにより構成されている。液相部21には、放射性物質である有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液が貯留されている。また、気相部22には、後述する放射性有機廃液を分解することで生成される炭酸ガス、液相部21の放射性有機廃液が蒸発することで発生する水蒸気および蒸発した有機成分が充満する。
触媒3は、廃液処理槽2内に配置されており、白金(Pt)を担持したジルコニア(ZrO2)をコーティングした図示しない有機物分解板により構成されている。この有機物分解板は、複数本が格子状となるように、廃液処理槽2内の液層部21に装荷されている。つまり、触媒3は、放射性有機廃液内に配置されている。ここで、廃液処理槽2内の液層部21に複数本の有機物分解板を格子状に装荷するので、この有機物分解板にコーティングされた白金を担持したジルコニアと放射性有機廃液との接触面積を大きくすることができる。これにより、放射性有機廃液処理装置の放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。
ここで、図2は、ジルコニアと二酸化チタンとの比較例を示す図である。同図に示すように、ジルコニアは、そのバンドギャップエネルギー、すなわちジルコニアの価電子帯と伝導帯とのエネルギーの差が5.0eV程度あり、二酸化チタン(TiO2)のバンドキャップエネルギーの3.2eV程度と比較して大きいものである。つまり、ジルコニアの価電子帯の電子を伝導帯へと励起するには、5.0eV以上のエネルギーを持つ放射線が照射される必要がある。一般に、金属酸化物は、価電子帯と水の酸化電位との間のエネルギー差が大きいほど水に対する酸化力が強くなり、酸化反応が盛んになる。また、伝導帯と水の還元電位との間のエネルギー差が多きいほど水に対する還元力が強くなり、還元反応が盛んになる。つまり、このバンドキャップエネルギーが大きい金属酸化物から構成される触媒は、酸化還元反応を行う能力が高くなるので、ジルコニアを含む触媒は、二酸化チタンを含む触媒よりと比較して、酸化還元反応を行う能力が高いものである。
マイクロバブル発生手段であるマイクロバブル発生装置4は、バブル発生本体41と、給気ポンプ42と、給気配管43とにより構成されている。バブル発生本体41は、微少気泡Bを発生するものであり、廃液処理槽2内に複数個配置されている。具体的には、この複数個のバブル発生本体41は、液相部21の触媒3よりも下側、すなわち廃液処理槽2の図示しない底面側に配置されている。また、この複数個のバブル発生本体41は、給気配管43を介して、給気ポンプ42に連結されている。給気ポンプ42は、この給気配管43を介して、複数個のバブル発生本体41に空気を給気するために、外部から空気を吸気するものである。ここで、微少気泡とは、直径が10μm程度である。
気液分離装置5は、その内部に図示しない冷媒が循環しており、この冷媒が廃液処理槽2の気相部22に充満する炭酸ガス、液相部21の放射性有機廃液が蒸発することで発生する水蒸気および蒸発した有機成分と熱交換を行うものである。冷媒との熱交換が行われた水蒸気および蒸発した有機成分は、再凝縮し、液相部22に戻る。この気液分離装置5は、廃液処理槽2の気相部22に設けられた外部設備、例えば排気設備と連通する排気配管23に設けられている。つまり、気液分離装置5は、廃液処理槽2と排気設備との間に備えられている。
廃液循環手段である廃液循環装置6は、ろ過フィルタ61と、廃液循環ポンプ62と、廃液配管63とにより構成されている。なお、廃液配管63の一方の端部は、上記給気配管43と連通している。ろ過フィルタ61は、このろ過フィルタ61を通過する放射性有機廃液に混入する微少粒子および後述する固相成分を除去するものである。ろ過フィルタ61は、廃液処理槽2内と廃液循環ポンプ62とを連通する廃液配管63に設けられている。ここで、この廃液配管63が廃液処理槽2に開口する位置は、液相部21の触媒3よりも上側、すなわち気相部22側で、かつ液相部21と気相部22との境界面である廃液面W近傍でかつこの廃液面Wよりも下側、すなわち液相部側である。廃液循環ポンプ62は、廃液配管63および給気配管43を介して、複数個のバブル発生本体41と連通している。従って、廃液循環ポンプ62から吐出されたろ過フィルタを通過した放射性有機廃液は、給気ポンプ42から吐出された空気とともに、複数個のバブル発生本体41に導入され、廃液処理槽2内に微少気泡Bとともに吐出される。
次に、この発明にかかる放射性有機廃液処理装置1の動作について説明する。図3は、放射性有機廃液の分解の模式図である。同図に示すように、廃液処理槽2内に貯留されている放射性有機廃液に含まれる有機成分を構成する有機炭素(14C)は、放射線であるβ線を放出する。この有機炭素(14C)から放射されるβ線は、ジルコニアのバンドギャップエネルギーである5.0eV以上のエネルギーを持つものである。従って、この放射性有機廃液内に配置された触媒を構成するジルコニアの価電子帯の電子を伝導帯へと励起することができる。ここで、放射線とは、上記β線が含まれる粒子放射線および電磁放射線をいう。この粒子放射線とは、イオン・電子・中性子・陽子・メソンなどの物質粒子が高い運動エネルギーを持って流れるものをいう。電磁放射線とは、γ線、X線などの高エネルギーの電磁波、すなわち極めて波長の短い電磁波をいう。
触媒3による酸化反応は、ジルコニアの価電子帯の電子が伝導帯へ励起することで行われる。具体的には、ジルコニアの価電子帯の電子が伝導帯へ励起すると、この価電子帯では、正孔が生じる。この正孔により、H2OからO2が生成される反応が生じ、放射性有機廃液に含まれる水が酸化される。そして、この酸化された放射性有機廃液に含まれる水、特にO2により、放射性有機廃液に含まれる有機成分が酸化、すなわち放射性有機廃液が分解され、放射性有機廃液が無機化される。なお、放射性有機廃液が分解されることで、この放射性有機廃液に含まれる有機成分を構成する有機炭素(14C)とO2とから炭酸ガス(CO2)が生成される。
一方、触媒3による還元反応は、ジルコニアの価電子帯の電子が伝導帯へ励起され、この電子がジルコニア内を移動し、この電子の移動が触媒3の周囲に存在する放射性有機廃液に伝搬することで、2H+がH2となる反応である。しかし、ジルコニアは、電気をほとんど流さないため、還元反応が起こりにくく、このため酸化反応が起こりにくくなる。従って、ジルコニア単体では、放射性有機廃液の分解を行うことは困難である。そこで、触媒3を構成するジルコニアには、白金が担持されている。この担持されている白金は、ジルコニア内を移動した電子を触媒3の周囲に存在する放射性有機廃液に伝搬させることができる。
図4は、二酸化チタンおよびジルコニアの分解能力を比較する図表である。二酸化チタンおよびジルコニアの分解能力を確認するために、同図に示すような試験を行った。具体的には、ジルコニア(ZrO2)のみの粉末、白金を担持したジルコニア(ZrO2+Pt)の粉末、二酸化チタン(TiO2)のみの粉末、白金を担持した二酸化チタン(TiO2+Pt)の粉末をそれぞれ放射性有機廃液に浸漬し、その分解能力を分解割合(%)として確認した。
同図に示すように、白金を担持したジルコニアの粉末は、エタノールあるいは酢酸を有機形態とする放射性有機廃液の分解を確認することができるが、他の粉末では分解を確認することができなかった。以上のように、ジルコニアに白金を担持させた触媒は、従来の二酸化チタンあるいはこの二酸化チタンに白金、銅、マンガン等を担持させた触媒に可視光線や紫外線を照射して放射性有機廃液を分解する場合と比較して、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。
この触媒3により放射性有機廃液が分解され生成される炭酸ガスは、液相部21から気相部22に移動し、この気相部22に充満する。この気相部22に充満した炭酸ガスは、排気配管23に設けられた気液分離装置5を介して排気設備に導入され、この排気設備により処理される。ここで、気相部22には、上記炭酸ガスのみならず、放射性有機廃液が蒸発することで発生する水蒸気および蒸発した有機成分が充満する。つまり、無機化できていない有機成分が気相部22に充満することとなる。
この気相部22に充満する炭酸ガス、水蒸気および蒸発した有機成分は、気液分離装置5に接触する。このとき、水蒸気および蒸発した有機成分と冷媒との熱交換が行われ、この水蒸気および蒸発した有機成分は再凝縮し、液相部22に戻る。これにより、無機化できていない有機成分が排気設備に移動することを抑制することができる。
この廃液処理槽2内には、マイクロバブル発生装置4のバブル発生本体41から微少気泡Bが発生し、この微少気泡Bは、放射性有機廃液内を廃液面Wに向かって移動、すなわち上昇する。ここで、通常の気泡(直径が50μm程度)が廃液面Wに向かって上昇する場合は、その大きさの変化は殆どなく、廃液面Wまで移動し、破裂する。しかし、微少気泡Bは、廃液面Wに向かって上昇するにしたがい小さくなり、放射性有機廃液内で消失、すなわち圧壊する。このように、放射性有機廃液内で圧壊すると、通常の気泡が廃液面Wで破裂する場合よりも大きなエネルギーが発生する。この発生したエネルギーにより、放射性有機廃液が活性化し、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。
また、放射性有機廃液内に微少気泡Bが発生することで、この放射性有機廃液に対する空気の溶存濃度が上昇する。この溶存濃度は、通常の気泡が放射性有機廃液内に発生した場合よりも高くなる。このように、放射性有機廃液に対する空気の溶存濃度が上昇することで、この放射性有機廃液が酸化環境となり、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。
また、放射性有機廃液内をこの微少気泡Bが移動することで、放射性有機廃液が攪拌される。これにより、酸化還元反応を促進することができ、放射性有機廃液に対する分解能力を向上することができる。
また、微少気泡Bは、電荷を帯びている。つまり、この微少気泡Bは、物質を吸着する能力を有するものである。廃液処理槽2内の放射性有機廃液内には、触媒3によりこの放射性有機廃液の分解が行われると、例えば、リンや硫黄などの難溶解性成分である固相成分が生成される場合がある。また、放射性有機廃液内には、廃液処理槽2内に貯留される際に、微小粒子が混入している場合がある。従って、微少気泡Bは、これら固相成分や微小粒子を吸着し、放射性有機廃液内を廃液面Wに向かって移動、すなわち上昇する。これにより、放射性有機廃液の廃液面Wの近傍には、固相成分や微小粒子を吸着した微少気泡Bや、圧壊した微少気泡Bに吸着していた固相成分や微小粒子が浮遊することとなる。
この廃液処理槽2内の放射性有機廃液は、廃液循環装置6により循環する際には、廃液面Wの近傍の放射性有機廃液が廃液循環装置6により循環される。従って、固相成分や微小粒子を吸着した微少気泡Bや、圧壊した微少気泡Bに吸着していた固相成分や微小粒子が浮遊する放射性有機廃液が効率良く廃液循環装置6に流入し、ろ過フィルタ61によりろ過、すなわち微小粒子や固相成分が除去される。これにより、この微小粒子や固相成分が触媒3に付着することで、いわゆる触媒3が被毒して、放射性有機廃液に対する分解能力が低下する虞を抑制することができる。
以上のように、ジルコニアに白金を担持させた触媒3が有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液内に配置されることで、ジルコニアの価電子帯の電子を伝導帯へと励起することができる。これにより、触媒にこの触媒を構成するジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持つ放射線を照射する照射手段を必要としないので、放射性有機廃液を分解するためのコストを低減することができる。
なお、上記実施例においては、放射性有機廃液処理装置1を有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液に用いる場合について説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、この放射性有機廃液処理装置1を有機炭素(14C)から構成されない有機成分を含む放射性有機廃液に用いる場合は、触媒3にジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持つ放射線を照射することができる放射線照射装置を別個備えれば良い。
以上のように、この発明にかかる放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置は、有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液を分解するのに有用であり、特に、放射性有機廃液に対する分解能力を向上するのに適している。
1 放射性有機廃液処理装置
2 廃液処理槽
21 液相部
22 気相部
23 排気配管
3 触媒
4 マイクロバブル発生装置
41 バブル発生本体
42 給気ポンプ
43 給気配管
5 気液分離装置
6 廃液循環装置
61 ろ過フィルタ
62 廃液循環ポンプ
63 廃液配管
2 廃液処理槽
21 液相部
22 気相部
23 排気配管
3 触媒
4 マイクロバブル発生装置
41 バブル発生本体
42 給気ポンプ
43 給気配管
5 気液分離装置
6 廃液循環装置
61 ろ過フィルタ
62 廃液循環ポンプ
63 廃液配管
Claims (7)
- 有機成分を含む放射性有機廃液を分解する放射性有機廃液処理方法において、
ジルコニアに白金を担持させた触媒を前記放射性有機廃液内に配置し、当該ジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持つ放射線を照射することを特徴とする放射性有機廃液処理方法。 - 前記放射性有機廃液の有機成分は、有機炭素(14C)から構成されており、前記有機炭素(14C)が放射するβ線が前記触媒に照射されることを特徴とする請求項1に記載の放射性有機廃液処理方法。
- 有機成分を含む放射性有機廃液を貯留する廃液処理槽と、
前記廃液処理槽内に配置され、かつジルコニアに白金を担持させた触媒と、
前記ジルコニアのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持つ放射線を照射する照射手段と、
を備えることを特徴とする放射性有機廃液処理装置。 - β線を放射する有機炭素(14C)から構成される有機成分を含む放射性有機廃液を貯留する廃液処理槽と、
前記廃液処理槽内に配置され、かつジルコニアに白金を担持させた触媒と、
を備えることを特徴とする放射性有機廃液処理装置。 - 前記廃液処理槽と外部設備との間に気液分離装置をさらに備えることを特徴とする請求項3または4に記載の放射性有機廃液処理装置。
- 前記廃液処理槽内に微少気泡を発生するマイクロバブル発生手段をさらに備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに記載の放射性有機廃液処理装置。
- 前記廃液処理槽内の放射性有機廃液を循環させ、当該放射性有機廃液をろ過する廃液循環手段を有することを特徴とする請求項6に記載の放射性有機廃液処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004304629A JP2006118883A (ja) | 2004-10-19 | 2004-10-19 | 放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004304629A JP2006118883A (ja) | 2004-10-19 | 2004-10-19 | 放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006118883A true JP2006118883A (ja) | 2006-05-11 |
Family
ID=36536921
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2004304629A Withdrawn JP2006118883A (ja) | 2004-10-19 | 2004-10-19 | 放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006118883A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012185013A (ja) * | 2011-03-04 | 2012-09-27 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | 放射性廃液の処理方法およびその処理装置 |
JP2020076780A (ja) * | 2018-11-07 | 2020-05-21 | コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュートKorea Atomic Energy Research Institute | 放射性廃液の処理方法 |
WO2023204370A1 (en) * | 2022-04-18 | 2023-10-26 | Korea Atomic Energy Research Institute | Apparatus and method to remove tritium from high volumetric wastewaters |
-
2004
- 2004-10-19 JP JP2004304629A patent/JP2006118883A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012185013A (ja) * | 2011-03-04 | 2012-09-27 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | 放射性廃液の処理方法およびその処理装置 |
JP2020076780A (ja) * | 2018-11-07 | 2020-05-21 | コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュートKorea Atomic Energy Research Institute | 放射性廃液の処理方法 |
JP7065819B2 (ja) | 2018-11-07 | 2022-05-12 | コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート | 放射性廃液の処理方法 |
WO2023204370A1 (en) * | 2022-04-18 | 2023-10-26 | Korea Atomic Energy Research Institute | Apparatus and method to remove tritium from high volumetric wastewaters |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Al-Ekabi et al. | Kinetics studies in heterogeneous photocatalysis. I. Photocatalytic degradation of chlorinated phenols in aerated aqueous solutions over titania supported on a glass matrix | |
Anju et al. | Zinc oxide mediated sonophotocatalytic degradation of phenol in water | |
Jyothi et al. | Ultrasound (US), Ultraviolet light (UV) and combination (US+ UV) assisted semiconductor catalysed degradation of organic pollutants in water: Oscillation in the concentration of hydrogen peroxide formed in situ | |
JP5578593B2 (ja) | 可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤並びに環境汚染有機物質の光分解法 | |
JP2010036148A (ja) | ガス吸収塔による揮発性有機化合物の除去システム | |
JP2007222696A (ja) | マイクロ波反応用の触媒カラム及びそれを用いた分解処理方法 | |
KR20080050316A (ko) | 각종 산업 폐수 중 난분해성 유기물의 처리방법 및 이를위한 처리장치 | |
JP2006118883A (ja) | 放射性有機廃液処理方法および放射性有機廃液処理装置 | |
Ahmed et al. | Advances in ultrasound-assisted synthesis of photocatalysts and sonophotocatalytic processes: A review | |
JP5816027B2 (ja) | 量子触媒およびその製造方法 | |
JP2005526599A (ja) | 燐光を発する固体と組み合わせた光触媒を用いて流体を処理するための反応器及び方法 | |
JP4691526B2 (ja) | 放射性廃棄物の処理方法 | |
JPH08183602A (ja) | 水素製造方法 | |
JP2001070935A (ja) | 光触媒を用いた水処理方法及び装置 | |
JP5424297B2 (ja) | 貴金属の回収方法と機能材料の製造方法、並びに機能材料を用いた強酸化性金属イオン含有水溶液の処理方法 | |
JP2007105060A (ja) | 液中ダイオキシン類の分解処理方法 | |
JP2006281005A (ja) | 光触媒を用いた水処理装置及び水処理方法 | |
JP6514884B2 (ja) | 二酸化炭素還元装置および還元方法 | |
JP2002239397A (ja) | 放射線エネルギ変換方法及び装置 | |
JP2000237774A (ja) | オゾン/紫外線隔式循環装置 | |
JP6309293B2 (ja) | 二酸化炭素還元装置および還元方法 | |
JP2000210659A (ja) | 気泡収縮を利用した液体処理方法および処理装置 | |
JPH05209997A (ja) | 除染廃液中のキレート剤の分解方法 | |
JP4551723B2 (ja) | 廃棄物処理方法および光触媒材料 | |
WO2023171524A1 (ja) | 発電方法及び発電システム |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20080108 |