JP2006112997A - 特定サンプルスペクトルの変換を用いた多変量解析検量線の作成方法 - Google Patents

特定サンプルスペクトルの変換を用いた多変量解析検量線の作成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 検量線の精度を向上させるためにサンプルスペクトルの一部を変換させた多変量解析検量線の作成方法を提供する。
【解決手段】 近赤外分光器で測定される複数の試料スペクトルをもとに検量線を作成する検量線作成方法であって、
複数試料のスペクトルを測定する工程と
前記測定したスペクトルを解析する工程と
前記解析したスペクトルをファクター/スコア解析しプロットする工程と、
プロットした複数のサンプルスペクトルのうち集団から外れているサンプルスペクトルをスコアプロット上で同一集団と見なせるように所定の方法で変換させる工程と、
前記変換させた状態でのスペクトルと同一集団に属する変換しないサンプルスペクトルをもとに検量線を作成する工程と、
作成した検量線を評価する工程と、
を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、重化学工業プロセスの成分濃度や物理的特性を分光分析する際に用いて好適な検量線の作成方法に関し、特にスペクトルセット中の特定サンプルスペクトルを適当に変換させることにより検量線の精度を向上させた検量線の作成方法に関するものである。
例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)は、一般的なプラスチックであるが酢酸ビニル(VA)の含有量によりその物性が大きく変化する。そのためにVA含有量を変えた多くの製品が製造されている。VA含有量を迅速に測定することは製造コストの削減と品質管理の観点から大きな効果がある。
精度の良い検量線を作成するためにサンプルの母集団から特異サンプルを調べる手段としてアウトライヤ検知がある。
アウトライヤの判定基準には、マハラノビス距離、RMSSR(Root Mean Square Spectral Residual)、NND(Nearest Neighbor Distance)等幾つかがあるが、通常検量線作成時にアウトライヤが検知されると、検量線作成のサンプルセットから除外するのが普通である。
プロセス異常などによりアウトライヤ状態が発生したことを検知する先行技術として、例えば下記のようなものがある。
特開平9−281042号公報
アウトライヤを用いたサンプルスペクトル除外法は、検量線作成精度向上の良い手段であるが、アウトライヤとなったサンプルを含めて精度良く測定する手法にはならない。又アウトライヤの機能は統計的な判別方法であり、必ずしもアウトライヤ条件を満足しないが検量線精度に大きく影響を与えるサンプルも存在する。
又オンライン測定で使用するアウトライヤの判別機能は、オンライン測定において異常値を判別する手段になるが、すでに作成した検量線の母集団に所属するか否かの判別であり、検量線作成時に使用できるものではない
通常アウトライヤ又は検量線の精度に悪影響を与えると判定されたサンプルは上述の従来例のようにアウトライヤとして検量線作成対象からはずすのが一般的である。その場合、
1)測定が出来ないサンプルがある。
2)検量線作成のためのサンプルが少なくなって場合によっては測定レンジが狭くなる。
などの問題点があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、少ないサンプルで、有効な母集団が形成できない場合などに特定サンプルのスペクトルを変換させることによって検量線の精度を向上させた特定サンプルスペクトルの変換を用いた多変量解析検量線の作成方法を提供することにある。
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
近赤外分光器で測定される複数の試料スペクトルをもとに検量線を作成する検量線作成方法であって、
複数試料のスペクトルを測定する工程と
前記測定したスペクトルを解析する工程と
前記解析したスペクトルをファクター/スコア解析しプロットする工程と、
プロットした複数のサンプルスペクトルのうち集団から外れているサンプルスペクトルをスコアプロット上で同一集団と見なせるように所定の方法で変換させる工程と、
前記変換させた状態でのスペクトルと同一集団に属する変換しないサンプルスペクトルをもとに検量線を作成する工程と、
作成した検量線を評価する工程と、
を含むことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の特定サンプルスペクトルの変換を用いたスペクトル変換を用いた多変量解析検量線の作成方法において、
前記サンプルスペクトルを変換する方法は、波長シフト、差スペクトル、スケール変換、オフセット、微分を含み、スペクトル前処理の1種又は複数を特定のサンプルスペクトルの変換に用いることを特徴とする。
本発明によれば次のような効果がある。
請求項1、2に記載の発明によれば、
複数試料のスペクトルを測定する工程と
前記測定したスペクトルを解析する工程と
前記解析したスペクトルをファクター/スコア解析しプロットする工程と、
プロットした複数のサンプルスペクトルのうち集団から外れているサンプルスペクトルをスコアプロット上で同一集団と見なせるように所定の方法で変換させる工程と、
前記変換させた状態でのスペクトルと同一集団に属する変換しないサンプルスペクトルをもとに検量線を作成する工程と、
作成した検量線を評価する工程と、
を含んでいるので、検量線の精度を向上させることができる。
図13は本発明で使用したポリエチレン及びポリ酢酸ビニルがランダムに結合したEVAの化学式である。ポリプロピレンーポリエチレンポリマ(PP−PE共重合体)のエチレン濃度測定は、その機械的強度を管理するための重要な指標である。
図1は本発明の検量線作成工程の一実施例を示す工程図である。工程に従って説明する。
工程1において、スペクトル測定工程によりスペクトルを検出する。
工程2において、測定したスペクトルの解析を行う。
工程3において、スペクトル解析を行ったスペクトルをファクター/スコア解析しプロットする。
工程4において、スペクトルの変換(ここでは波長シフト)を行う。
工程5において、スペクトルの変換を行ったものと行わないものを含めて検量線を作成する。
工程6において、検量線の評価を行う。即ち、作成した検量線に対してSECやSECVが小さいかどうかを評価する。評価した検量線においてSECやSECVが大きかった場合は工程2に戻って同様の工程を繰り返す
工程7において、SECやSECVが小さい場合、検量線として使用する。
図2は本発明の実験に用いたEVAのサンプル(Sample No.S1〜S9)を示し、VA(w/w%)はポリエチレンに対する酢酸ビニルの重量比を示している。ここではサンプル1として最小w/w%=0からサンプル9として最大w/w%=41.1までの間の9種類のサンプルを使用した。
図3〜図6は工程2に関するスペクトル解析の説明図であり、図3は図2に示す9種類のEVAのサンプルをそれぞれ160℃で溶融して測定した近赤外スペクトルを示すものであり、横軸は波数(cm−1)、縦軸は吸光度を示している。
図4は図3のスペクトルの※部分を拡大して示すもので、EVA中のVA含有量によりスペクトルのピーク高さが変化していることを示している。4679cm−1のピークではEVA中のVA含有量が低いほどピークが小さくなりVA含有量が高いほどピークが大きくなっている。
図5は2次微分した溶融EVAスペクトルを示している。2次微分をすることによりベースラインは一定となりピークの位置が強調される。EVA含有量によってピーク位置が変化しているのが判る。4679cm−1ではピーク位置はVA含有量によりあまり変化しない(図中イで示す線の傾きがない)が、4981cm−1,5162cm−1では変化(図中ロ,ハで示す線には傾きがある)が見られる。
図6はこのような変化を図にまとめたものである。なお、VA濃度ゼロのところではピークが出ない場合があるので、図中のS2で示すVA=6.3%を基準にしている。
スペクトルのピークはそれぞれ化学の官能基に帰属するが、●印はCH2、○印はCH3,C=O、CHとC=O結合音等に帰属されるピークを示している。図によれば、ピークの帰属により波長のシフトが変わることが判る。
図7は工程3のファクター/スコア解析工程に関する説明図であり、EVAの近赤外スペクトルのスコア分析結果を示している。即ち、複数のスペクトルをファクター解析しスコアプロットした結果を示す。
各サンプルS1〜S9毎に集合体(クラスター)を形成しているのが判る。また、この図ではVA量がゼロ(ポリエチレンのみ)のS1が大きく集団からずれているのが判る。
図8は図7のスコア分析結果をもとにS1が大きくずれた状態でこのS1を含めて作成した検量線である。図中a〜dを付した○印については後述する。
図9〜11は工程4の変換工程に関する説明図であり、図9はS1サンプルを(ヘ)から(ト)の位置に−8cm−1波長をシフトさせた前後のスコア分析結果を示す図である。
波長シフトにより集合体(クラスター)の位置が変化したことが判る。
図10は波長シフト前後のスペクトル5500〜4500cm−1の範囲の一部(※部分)を右下に拡大して示すもので、(リ)で示すスペクトルは(チ)で示すオリジナルのスペクトルを−8cm−1シフトさせた状態を示している。
図11(a)は最も集団から離れたS1サンプルのスペクトルを波長シフトさせてそのスペクトルをS1サンプルスペクトルの代わりに使用した各検量線のSECV(Standard Error of Cross Validation)とSEC(Standard Error of Calibration)の変化を示したものである。
図11(a)において、縦軸はSECV/SEC(%)、横軸は波長シフト量である。図の(イ)で示す点はS1のサンプルスペクトルを10cm−1ずらして残りのサンプルスペクトルS1〜S9の同じものを使用したときの検量線作成の誤差を示すものであり、S1サンプルのスペクトルを前後にシフトさせたときの検量線の誤差を示している。
図11(b)では波数シフトが0の場合のSECVは0.521%,SECが0.423%で、相関関数(Correlation Coefficient)が0.999475となっている。そして、波数を0±12cm−1シフトさせた場合、最良のものは波数を−8cm−1シフトさせたときのもので、SECVが0.35%,SECが0.323%となり、相関関数が改良されている。
図12は工程5に関する説明図であり、サンプルS1の波数を−8cm−1シフトさせた状態での検量線作成結果である。図8の検量線に比較して(ホ)で示すVA=20%以下の予測精度(a〜dで示す部分)が図12ではa’〜d’で示すように向上していることがわかる。なお、図12で示すように検量線の精度が向上し誤差の少ないものであればそのまま使用するが、必ずしも誤差が少なくなるとは限らない。その場合は、再び工程2に戻ってスペクトルの解析を行い工程6までを繰り返してより誤差の少ない検量線を作成する。
以上説明したように、本発明によれば検量線作成用のサンプルセット中検量線に影響を与えているサンプルを見つけ、波長をシフトさせることにより検量線の制度を改善することができる。
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。本実施例ではスペクトルを変形させる手段として波長シフトを用いたが、例えば、差スペクトル、スケール変換、オフセット、微分等スペクトル前処理の一種又は複数種を特定サンプルスペクトルに使用することができる。従って本発明は上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
本発明の特定サンプルスペクトルの変換を用いた多変量解析検量線作成方法の一実施例を示す工程図である。 本発明の実験に用いたサンプルを示す図である。 EVAのサンプルを溶融して測定した近赤外スペクトルを示す図である。 図3のスペクトルの部分拡大図を示す図である。 2次微分した溶融EVAスペクトルを示す図である。 EVA含有量によってピーク位置が変化している状態を示す図である。 連続測定したEVAの近赤外スペクトルのスコア分析結果を示す図である。 検量線作成結果を示す図である。 S1サンプルを(ヘ)から(ト)の位置に波長シフトさせた前後のスコア解析結果である。 波長シフト前後のスペクトル5500〜4500cm−1の範囲の一部を拡大したものである。 S1サンプルのスペクトルを波長シフトさせ、そのスペクトルをS1サンプルスペクトルの代わりに使用した各検量線のSECVとSECの変化を示す図である。 検量線作成結果を示す図である。 ポリエチレン及びポリ酢酸ビニルがランダムに結合したEVAの化学式を示す図である。

Claims (2)

  1. 近赤外分光器で測定される複数の試料スペクトルをもとに検量線を作成する検量線作成方法であって、
    複数試料のスペクトルを測定する工程と
    前記測定したスペクトルを解析する工程と
    前記解析したスペクトルをファクター/スコア解析しプロットする工程と、
    プロットした複数のサンプルスペクトルのうち集団から外れているサンプルスペクトルをスコアプロット上で同一集団と見なせるように所定の方法で変換させる工程と、
    前記変換させた状態でのスペクトルと同一集団に属する変換しないサンプルスペクトルをもとに検量線を作成する工程と、
    作成した検量線を評価する工程と、
    を含むことを特徴とする特定サンプルスペクトルの変換を用いた多変量解析検量線の作成方法。
  2. 前記サンプルスペクトルを変換する方法は、波長シフト、差スペクトル、スケール変換、オフセット、微分を含み、スペクトル前処理の1種又は複数を特定のサンプルスペクトルの変換に用いることを特徴とする請求項1に記載の特定サンプルスペクトルの変換を用いた多変量解析検量線の作成方法。
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