JP2006109732A - 糖代謝調節剤、およびそのスクリーニング方法 - Google Patents

糖代謝調節剤、およびそのスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 糖代謝調節剤、並びに当該調節剤を開発し得る手段の提供。
【解決手段】 Cited2の発現または機能を調節する物質を含有してなる、糖代謝調節剤;被験物質がCited2の発現または機能を調節し得るか否かを評価することを含む、糖代謝を調節し得る物質のスクリーニング方法、および当該方法に有用なスクリーニング用キット;ならびにCited2の特定の多型が糖代謝の調節に関与しているか否かを解析する工程を含む、糖代謝の調節に関連するCited2多型の同定方法、および当該方法により同定される、糖代謝の調節に関連するCited2多型を含むタンパク質・核酸分子など。
【選択図】 なし

Description

本発明は、糖代謝調節剤;糖代謝を調節し得る物質のスクリーニング方法およびスクリーニング用キット;ならびに糖代謝の調節に関連するCited2多型の同定方法、および当該方法により同定されるCited2多型などに関する。
Cited2は、Cited (CBP/p300 interacting transactivator with ED-rich tail) ファミリーに属する転写共役因子であり、p35srj(GenBankアクセッション番号AF109161)およびそのスプライシングバリアントであるMrg1(GenBankアクセッション番号AF129290)としても知られる。Cited2は、Melanocyte-specific gene (Msg1) と高い相同性を示す遺伝子Msg1- related gene (Mrg1) としてクローニングされ (非特許文献1)、転写コアクチベーターCREB結合タンパク質 (CBP)/p300のシステイン−ヒスチジン−リッチ (C/H1) 領域に結合する分子として同定されている (非特許文献2)。Cited2はまた、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓などの種々の組織で発現していることが知られている。
Cited2を欠損するマウスが心臓の形成不全および中枢神経の奇形を呈し胎生致死となることから、Cited2はこれら組織の正常な発生に必要であることが示された(非特許文献3、4)。また、Cited2欠損マウスより樹立された繊維芽細胞の解析から、Cited2が細胞の老化を抑制することが示唆されている(非特許文献5)。
しかしながら、Cited2が糖代謝/糖尿病の病因に関与し得ることは知られていない。
Shiodaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93: 12298-12303 Bhattacheryaら, Genes Dev. (1999) 13: 64-75 Bamforthら, Nat. Genet. (2001) 29: 469-474 Yinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2002) 99: 10488-10493 Krancら, Mol. Cell. Biol. (2003) 21: 7658-7566
本発明は、糖代謝調節剤、並びに当該調節剤を開発し得る手段などを提供することを目的とする。
本発明者らは、Cited2の作用について鋭意検討したところ、Cited2が肝臓における糖代謝を改善し得、以って血糖値を低下させることを見出した。この知見より、本発明者らは、Cited2の発現または機能を調節する物質が、糖代謝の調節に有用であり得ること、並びに糖代謝に関連する疾患の予防・治療薬または研究用試薬を開発するためには、Cited2の発現または機能を調節する物質をスクリーニングすればよいことなどを着想し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の通りである:
〔1〕Cited2の発現または機能を調節する物質を含有してなる、糖代謝調節剤;
〔2〕Cited2の発現または機能を促進する物質を含有してなる糖尿病の予防・治療剤である、上記〔1〕の剤;
〔3〕Cited2の発現または機能を促進する物質が、Cited2、またはCited2をコードする核酸を含む発現ベクターである、上記〔2〕の剤;
〔4〕発現ベクターがアデノウイルスベクターである、上記〔3〕の剤;
〔5〕被験物質がCited2の発現または機能を調節し得るか否かを評価することを含む、糖代謝を調節し得る物質のスクリーニング方法;
〔6〕被験物質がCited2の発現または機能を促進し得るか否かを評価することを含む糖尿病を予防・治療し得る物質のスクリーニング方法である、上記〔5〕の方法;
〔7〕下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、上記〔5〕の方法:
(a)被験物質とCited2の発現を測定可能な細胞とを接触させる工程;
(b)被験物質を接触させた細胞におけるCited2の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるCited2の発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Cited2の発現量を調節する被験物質を選択する工程;
〔8〕工程(c)において、Cited2の発現量を促進する被験物質が、糖尿病を予防・治療し得る物質として選択される、上記〔7〕の方法;
〔9〕Cited2の発現を測定可能な細胞が、肝細胞、脂肪細胞又は筋細胞である、上記〔7〕の方法;
〔10〕上記〔5〕〜〔9〕のいずれかの方法により得られる物質;
〔11〕上記〔5〕〜〔9〕のいずれかの方法により得られる物質を含有してなる、糖代謝調節剤;
〔12〕以下(i)〜(iii)の少なくとも1つを含んでなる、糖代謝を調節し得る物質のスクリーニング用キット:
(i)Cited2をコードする核酸を含む発現ベクター;
(ii)Cited2の発現を測定可能な細胞;あるいは
(iii)Cited2の転写調節領域及び該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現ベクター;
〔13〕Cited2の発現量を測定し得る手段をさらに含む、上記〔12〕のキット;
〔14〕Cited2の特定の多型が糖代謝の調節に関与しているか否かを解析する工程を含む、糖代謝の調節に関連するCited2多型の同定方法;
〔15〕上記〔14〕の方法により同定される、糖代謝の調節に関連するCited2多型を含むタンパク質;
〔16〕上記〔14〕の方法により同定される、糖代謝の調節に関連するCited2多型を含む核酸分子;
〔17〕Cited2をコードする核酸を含むウイルスベクター;
〔18〕アデノウイルスベクターである、上記〔17〕のウイルスベクター。
本発明の調節剤は、例えば、糖代謝に関連する疾患の予防・治療に、あるいは該疾患の研究用試薬として有用であり得る。本発明のスクリーニング方法およびスクリーニング用キットは、例えば、糖代謝に関連する疾患の予防・治療薬、あるいは該疾患の研究用試薬の開発に有用であり得る。本発明の同定方法および当該方法により同定されたCited2多型は、例えば、糖代謝に関連する疾患の発症リスクの判定に有用であり得る。
本発明は、Cited2の発現または機能を調節する物質を含有してなる、糖代謝調節剤を提供する。
一実施形態では、Cited2の発現または機能を調節する物質は、Cited2の発現を促進する物質であり得る。
Cited2の発現とは、Cited2翻訳産物が産生され且つ機能的な状態でその作用部位に局在することをいう。従って、Cited2の発現を促進する物質は、Cited2の転写、転写後調節、翻訳、翻訳後修飾、局在化及びタンパク質フォールディング等の、いかなる段階で作用するものであってもよい。なお、本明細書で使用される場合、Cited2の発現の促進としては、Cited2の補充をも含むものとする。
Cited2の発現を促進する物質の例は、Cited2(タンパク質)、またはCited2をコードする核酸を含む発現ベクターであり得る。
Cited2の発現を促進する物質の他の例は、Cited2の誘導因子または転写活性化因子である。Cited2の誘導因子としては、例えば、サイトカイン(例えば、IL−1α、2、4、6、9、11等のインターロイキン、IFNγ、GM−CSF、エリスロポエチン)、細胞増殖因子(例えば、インスリン、血清、PDGF)が挙げられる。Cited2の転写活性化因子としては、例えば、HIF−1αが挙げられる。
別の実施形態では、Cited2の発現または機能を調節する物質は、Cited2の発現を抑制する物質であり得る。Cited2の発現を抑制する物質は、Cited2の転写、転写後調節、翻訳、翻訳後修飾、局在化及びタンパク質フォールディング等の、いかなる段階で作用するものであってもよい。
Cited2の発現を抑制する物質の例は、Cited2の転写産物、詳細にはmRNAもしくは初期転写産物に対するアンチセンス核酸である。「アンチセンス核酸」とは、標的mRNA(初期転写産物)を発現する細胞の生理的条件下で該標的mRNA(初期転写産物)とハイブリダイズし得る塩基配列からなり、且つハイブリダイズした状態で該標的mRNA(初期転写産物)にコードされるポリペプチドの翻訳を阻害し得る核酸をいう。アンチセンス核酸の種類はDNAであってもRNAであってもよいし、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、天然型のアンチセンス核酸は、細胞中に存在する核酸分解酵素によってそのリン酸ジエステル結合が容易に分解されるので、本発明のアンチセンス核酸は、分解酵素に安定なチオリン酸型(リン酸結合のP=OをP=Sに置換)や2’-O-メチル型等の修飾ヌクレオチドを用いて合成もできる。アンチセンス核酸の設計に重要な他の要素として、水溶性及び細胞膜透過性を高めること等が挙げられるが、これらはリポソームやマイクロスフェアを使用するなどの剤形の工夫によっても克服できる。
アンチセンス核酸の長さは、Cited2の転写産物と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はなく、短いもので約15塩基程度、長いものでmRNA(初期転写産物)の全配列に相補的な配列を含むような配列であってもよい。合成の容易さや抗原性の問題等から、例えば約15塩基以上、好ましくは約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。
アンチセンス核酸の標的配列は、アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、Cited2もしくはその機能的断片の翻訳が阻害される配列であれば特に制限はなく、mRNAの全配列であっても部分配列であってもよいし、あるいは初期転写産物のイントロン部分であってもよいが、アンチセンス核酸としてオリゴヌクレオチドを使用する場合は、標的配列はCited2のmRNAの5’末端からコード領域のC末端までに位置することが望ましい。
さらに、アンチセンス核酸は、Cited2の転写産物とハイブリダイズして翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNA形態のCited2と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、mRNAへの転写を阻害し得るものであってもよい。
Cited2の発現を抑制する物質の別の例は、Cited2転写産物、詳細にはmRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムである。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本発明では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。また、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
Cited2の発現を抑制する物質のさらに別の例は、デコイ核酸である。デコイ核酸とは、転写調節因子が結合する領域を模倣する核酸分子をいい、Cited2の発現を抑制する物質としてのデコイ核酸は、Cited2に対する転写活性化因子が結合する領域を模倣する核酸分子であり得る。Cited2に対する転写活性化因子としては、例えば、HIF−1αが知られているので、デコイ核酸は、HIF−1αの結合領域を模倣するものであり得る。
デコイ核酸としては、例えば、リン酸ジエステル結合部分の酸素原子を硫黄原子で置換したチオリン酸ジエステル結合を有するオリゴヌクレオチド(S−オリゴ)、又はリン酸ジエステル結合を電荷を持たないメチルホスフェート基で置換したオリゴヌクレオチドなど、生体内でオリゴヌクレオチドが分解を受けにくくするために改変したオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。デコイ核酸は転写活性化因子が結合する領域と完全に一致していてもよいが、Cited2に対する転写活性化因子が結合し得る程度の同一性を保持していればよい。デコイ核酸の長さは転写活性化因子が結合する限り特に制限されない。また、デコイ核酸は、同一領域を反復して含んでいてもよい。
Cited2の発現を抑制する物質のさらに別の例は、Cited2転写産物、詳細にはmRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な二本鎖オリゴRNA、いわゆるsiRNAである。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が動物細胞でも起こることが確認されたことから[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として注目されている。siRNAとしては、後述の通り自ら合成したものを使用できるが、市販のものを用いてもよい(例えば、ヒトMrg1 siRNA:sc−35959/マウスMrg−1 siRNA:sc−35960(Santa Cruz Biotechnology Inc.より入手可能))。
アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、例えば、Cited2のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてCited2転写産物、詳細にはmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製できる。デコイ核酸、siRNAは、例えば、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製できる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
Cited2の発現を抑制する物質の別の例は、Cited2に対する抗体である。該抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の免疫学的手法により作製できる。また、該抗体は、抗体のフラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、)、組換え抗体(例えば、単鎖抗体)であってもよい。さらに、該抗体をコードする核酸(プロモーター活性を有する核酸に機能可能に連結されたもの)もまた、Cited2の発現を抑制する物質として好ましい。
例えば、ポリクローナル抗体は、Cited2あるいはそのフラグメント(必要に応じて、ウシ血清アルブミン、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)等のキャリアタンパク質に架橋した複合体とすることもできる)を抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法(例えば、渡邊武、細胞融合法の原理とモノクローナル抗体の作成、谷内昭、高橋利忠編、「モノクローナル抗体とがん―基礎と臨床―」、第2-14頁、サイエンスフォーラム出版、1985年)により作成することができる。例えば、マウスに該因子を市販のアジュバントと共に2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS-1, P3X63Ag8など)を細胞融合して該因子に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG法[J. Immunol. Methods,81(2): 223-228 (1985)]でも電圧パルス法[Hybridoma, 7(6): 627-633 (1988)]であってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得できる。
しかしながら、ヒトにおける治療効果と安全性を考慮すると、本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化又はヒト型抗体であってもよい。キメラ抗体は、例えば「実験医学(臨時増刊号), Vol.6, No.10, 1988」、特公平3-73280号公報等を、ヒト化抗体は、例えば特表平4-506458号公報、特開昭62-296890号公報等を、ヒト抗体は、例えば「Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997」、「Nature Genetics, Vol.7, p.13-21, 1994」、特表平4-504365号公報、国際出願公開WO94/25585号公報、「日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年」、「Nature, Vol.368, p.856-859, 1994」、特表平6-500233号公報等を参考にそれぞれ作製することができる。
さらに別の実施形態では、Cited2の発現又は機能を調節する物質は、Cited2の機能を抑制する物質であり得る。Cited2の機能を抑制する物質としては、Cited2の作用を妨げ得る物質である限り特に限定されないが、Cited2のドミナントネガティブ変異体、該変異体をコードする核酸を含む発現ベクターが例示される。
Cited2のドミナントネガティブ変異体とは、Cited2に対する変異の導入によりその活性が低減したものをいう。該ドミナントネガティブ変異体は、天然のCited2と競合することで間接的にその活性を阻害することができる。該ドミナントネガティブ変異体は、Cited2をコードする核酸に変異を導入することによって作製することができる。変異としては、例えば、機能性部位における、当該部位が担う機能の低下をもたらすようなアミノ酸の変異(例えば、1以上のアミノ酸の欠失、置換、付加)が挙げられる。詳細には、Cited2のドミナントネガティブ変異体としては、実質的にp300/CBP結合ドメイン(Bhattacharya et al., Genes Dev. 13: 64-75 (1999))のみからなるCited2の部分ペプチド、p300/CBP結合ドメインを保持し、他の機能性部位を欠失するポリペプチドが挙げられる。ドミナントネガティブ変異体は、PCRや公知のキットを用いる自体公知の方法により作製できる。
Cited2の発現または機能を調節する物質が、核酸分子である場合、本発明の調節剤は、該核酸分子をコードする発現ベクターを有効成分とすることもできる。当該発現ベクターは、上記の核酸分子をコードするオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドが、投与対象である哺乳動物の細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されていなければならない。使用されるプロモーターは、投与対象である哺乳動物で機能し得るものであれば特に制限はないが、例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR、ラウス肉腫ウイルスLTR、MoMuLV由来LTR、アデノウイルス由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ−アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成タンパク質遺伝子プロモーターなどが挙げられる。
発現ベクターは、好ましくは核酸分子をコードするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。さらに、形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有することもできる。
発現ベクターとして使用される基本骨格のベクターは特に制限されないが、ヒト等の哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。
Cited2の発現または機能を調節する物質として核酸分子を用いる場合は、該核酸分子を単独で、又はプラスミド若しくはウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター)等の適切な発現ベクターに挿入した後、当該分野で周知の方法に従って投与できる。また、Cited2の発現または機能を調節する物質としてタンパク質分子を用いる場合は、剤形を工夫することによって投与でき、また、当該タンパク質をコードする核酸分子を適切な発現ベクターに挿入した後、自体公知の方法に従って投与もできる。
本発明の調節剤は、所定の組織(例えば、肝臓、白色脂肪組織等の脂肪組織、骨格筋)特異的に作用させても、非特異的に作用させてもよい。例えば、Cited2の発現または機能を調節する物質を発現ベクターの形態で用いる場合には、核酸分子を肝特異的プロモーターに連結したベクターを利用することで、肝特異的に作用させることができる。肝特異的なプロモーターとしては、例えば、アルブミンプロモーターが挙げられる。また、アデノウイルスベクターは、肝特異的な送達に優れる。
本発明の調節剤は、Cited2の発現又は機能を調節する物質に加え、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体を含むことができる。
医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、オレンジジュースのような希釈液に有効量の物質を溶解させた液剤、有効量の物質を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量の物質を懸濁させた懸濁液剤、有効量の物質を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容され得る担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
本発明の調節剤の投与量は、有効成分の活性や種類、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に云えないが、通常、成人1日あたり有効成分量として約0.001〜約500mg/kgである。
本発明の調節剤は、糖代謝の調節、例えば改善又は誘導を可能とする。従って、本発明の調節剤は、糖代謝に関連する種々の疾患、例えば、糖尿病(例えば、II型糖尿病)、高脂血症、脂肪肝、動脈硬化症の予防・治療に、並びに該疾患の研究用試薬などに有用である。
本発明はまた、被験物質がCited2の発現または機能を調節し得るか否かを評価することを含む、糖代謝を調節する物質のスクリーニング方法、ならびに当該スクリーニング方法により得られる物質、および当該物質を含有してなる糖代謝調節剤を提供する。
スクリーニング方法に供される被験物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
一実施形態では、本発明のスクリーニング方法は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質とCited2の発現を測定可能な細胞とを接触させる工程;
(b)被験物質を接触させた細胞におけるCited2の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるCited2の発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、Cited2の発現量を調節する被験物質を選択する工程。
上記方法の工程(a)では、被験物質がCited2の発現を測定可能な細胞と接触条件下におかれる。Cited2の発現を測定可能な細胞に対する被験物質の接触は、培養培地中で行われ得る。
「Cited2の発現を測定可能な細胞」とは、Cited2の産物、例えば、転写産物、翻訳産物の発現レベルを直接的又は間接的に評価可能な細胞をいう。Cited2の産物の発現レベルを直接的に評価可能な細胞は、Cited2を天然で発現可能な細胞であり得、一方、Cited2の産物の発現レベルを間接的に評価可能な細胞は、Cited2転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞であり得る。Cited2の発現を測定可能な細胞は、動物細胞、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、サル、ヒト等の哺乳動物細胞であり得る。
Cited2を天然で発現可能な細胞は、Cited2を潜在的に発現するものである限り特に限定されず、Cited2を恒常的に発現している細胞、Cited2を誘導条件下(例えば、薬物での処理)で発現する細胞などであり得る。該細胞は、当業者であれば容易に同定でき、初代培養細胞、当該初代培養細胞から誘導された細胞株、市販の細胞株、セルバンクより入手可能な細胞株などを使用できる。Cited2が発現している細胞株としては、例えば、NIH3T3細胞、3T3−L1前駆脂肪細胞、C2C12筋芽細胞等が挙げられる。なお、Cited2は、上述の組織で発現していることが知られているので、これらの組織(例えば、肝臓、白色脂肪組織等の脂肪組織、骨格筋等の筋肉)由来の細胞または細胞株を使用してもよい。
Cited2転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞は、Cited2転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含む細胞である。Cited2転写調節領域、レポーター遺伝子は、好ましくは、発現ベクター中に挿入されている。
Cited2転写調節領域は、Cited2の発現を制御し得る領域である限り特に限定されないが、例えば、転写開始点から上流約2kbpまでの領域、あるいは該領域の塩基配列において1以上の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、且つCited2の転写を制御する能力を有する領域などを挙げることができる。
レポーター遺伝子は、検出可能なタンパク又は酵素をコードする遺伝子であればよく、例えばGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子、GUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子、LUC(ルシフェラーゼ)遺伝子、CAT(クロラムフェニコルアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子等が挙げられる。
Cited2転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子が導入される細胞は、Cited2転写調節機能を評価できる限り、即ち、該レポーター遺伝子の発現量が定量的に解析可能である限り特に限定されない。しかしながら、Cited2に対する生理的な転写調節因子を発現し、Cited2の発現調節の評価により適切であると考えられることから、該導入される細胞としては、Cited2を天然で発現可能な細胞が好ましい。
被験物質とCited2の発現を測定可能な細胞とが接触される培養培地は、用いられる細胞の種類などに応じて適宜選択されるが、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地などである。培養条件もまた、用いられる細胞の種類などに応じて適宜決定されるが、例えば、培地のpHは約6〜約8であり、培養温度は通常約30〜約40℃であり、培養時間は約12〜約72時間である。
上記方法の工程(b)では、先ず、被験物質を接触させた細胞におけるCited2の発現量が測定される。発現量の測定は、用いた細胞の種類などを考慮し、自体公知の方法により行われ得る。
例えば、Cited2の発現を測定可能な細胞として、Cited2を天然で発現可能な細胞を用いた場合、発現量は、Cited2の産物、例えば、転写産物又は翻訳産物を対象として自体公知の方法により測定できる。例えば、転写産物の発現量は、細胞からtotal RNAを調製し、RT−PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の発現量は、細胞から抽出液を調製し、免疫学的手法により測定され得る。免疫学的手法としては、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、蛍光抗体法などが使用できる。
また、工程(b)では、Cited2の発現量は、核へのCited2の局在量に基づき測定することもできる。核へのCited2の局在量は、自体公知の方法により測定できる。例えば、レポーター遺伝子と融合させたCited2遺伝子を適切な細胞に導入し、培養培地において被験物質の存在下で培養する。次いで、共焦点顕微鏡により細胞内、核内における蛍光シグナルを観察し、被験物質の非存在下での共焦点顕微鏡像と比較すればよい。また、Cited2抗体を用いる免疫染色によっても、核へのCited2の局在量を測定できる。
一方、Cited2の発現を測定可能な細胞として、Cited2転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞を用いた場合、発現量は、レポーターのシグナル強度に基づき測定され得る。
次いで、被験物質を接触させた細胞におけるCited2の発現量が、被験物質を接触させない対照細胞におけるCited2の発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を接触させない対照細胞におけるCited2の発現量は、被験物質を接触させた細胞におけるCited2の発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。
上記方法の工程(c)では、Cited2の発現量を調節する被験物質が選択される。Cited2の発現量の調節は、発現量の促進または抑制であり得る。例えば、Cited2の発現量を増大させる(発現を促進する)被験物質は、肝細胞において糖代謝を促進する作用を有し得、糖尿病患者において血糖値を低下させる薬剤となる。従って、Cited2の発現量の促進を指標として、糖尿病の予防・治療剤のための候補物質を選択することが可能となる。
本発明のスクリーニング方法はまた、被験物質の動物への投与により行われ得る。該動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等の哺乳動物が挙げられる。動物を用いて本発明のスクリーニング方法が行われる場合、Cited2の発現量を調節する被験物質が選択され得る。
本発明のスクリーニング方法はさらに、Cited2を発現し、且つグルコキナーゼの発現を測定可能な細胞を用いて行われ得る。Cited2を発現し、且つグルコキナーゼの発現を測定可能な細胞とは、グルコキナーゼの産物、例えば転写産物、翻訳産物の発現レベルを直接的又は間接的に評価可能である、Cited2発現細胞をいう。本発明の実施例より、Cited2の発現増加はグルコキナーゼの発現増加をもたらし、糖代謝を改善する可能性が示唆されている。従って、かかる細胞を用いてグルコキナーゼの発現または機能を評価することにより、Cited2の発現または機能を調節する物質を選択することが可能となる。この場合、Cited2を発現せず、且つグルコキナーゼの発現を測定可能な細胞をコントロールとして用いてもよい。Cited2を発現し、且つグルコキナーゼの発現を測定可能な細胞としては、例えば、Cited2を恒常的に発現しているグルコキナーゼの発現を測定可能な細胞、Cited2発現ベクターで形質転換されたグルコキナーゼの発現を測定可能な細胞等が挙げられる。かかる細胞の入手先及び由来は、Cited2の発現を測定可能な細胞と同様であり得る。
本発明のスクリーニング方法は、糖代謝を調節し得る物質のスクリーニングを可能とする。従って、本発明のスクリーニング方法は、糖代謝に関連する疾患の改善が所望される上述の疾患の予防・治療剤、並びに該疾患の研究用試薬の開発などに有用である。
本発明はさらに、本発明のスクリーニング方法に有用なキットを提供する。
一実施形態では、本発明のキットは、以下(i)〜(iii)の少なくとも1つを含む:
(i)cited2をコードする核酸を含む発現ベクター;
(ii)cited2遺伝子の発現を測定可能な細胞;あるいは
(iii)cited2遺伝子の転写調節領域及び該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現ベクター。
本発明のキットにおける(i)〜(iii)の構成要素は、上述の通りである。なお、cited2をコードする核酸を含む発現ベクターが提供される場合、本発明のキットは、該発現ベクターが導入されるべき細胞をさらに含んでいてもよい。
本発明のキットは、Cited2の発現量を測定し得る手段をさらに含むことができる。Cited2の発現量を測定し得る手段は、Cited2の発現量を定量可能である限り特に限定されず、例えばCited2を定量可能な手段、Cited2転写産物を定量可能な手段に大別される。該手段は、標識用物質で標識されていてもよい。また、該手段が標識用物質で標識されていない場合、本発明の判定用キットは、該標識用物質をさらに含むこともできる。標識用物質としては、例えば、FITC、FAM等の蛍光物質、ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等の発光物質、H、14C、32P、35S、123I等の放射性同位体、ビオチン、ストレプトアビジン等の親和性物質などが挙げられる。
詳細には、Cited2を定量可能な手段としては、Cited2に対する抗体(上述)などが挙げられる。Cited2に対する抗体は、プレート等の基板上に固定された形態で提供されてもよい。
また、Cited2転写産物を定量可能な手段としては、Cited2転写産物に対する核酸プローブ、Cited2転写産物を増幅可能なプライマー対などが挙げられる。核酸プローブ、プライマー対は、転写産物抽出用試薬とともに提供されてもよい。
Cited2転写産物に対する核酸プローブは、Cited2転写産物の量を測定可能である限り特に限定されない。該プローブはDNA、RNAのいずれでもよいが、安定性等を考慮するとDNAが好ましい。また、該プローブは、1本鎖又は2本鎖のいずれであってもよい。該プローブのサイズは、Cited2の転写産物を検出可能である限り特に限定されないが、好ましくは約15〜1000bp、より好ましくは約50〜500bpである。該プローブは、マイクロアレイのように基板上に固定された形態で提供されてもよい。
Cited2を増幅可能なプライマー対は、検出可能なサイズのヌクレオチド断片が増幅されるように選択される。検出可能なサイズのヌクレオチド断片は、例えば約100bp以上、好ましくは約200bp以上、より好ましくは約500bp以上の長さを有し得る。プライマーのサイズは、Cited2を増幅可能な限り特に限定されないが、好ましくは約15〜100bp、より好ましくは約18〜50bp、さらにより好ましくは約20〜30bpであり得る。Cited2転写産物を定量可能な手段がCited2を増幅可能なプライマー対である場合、本発明のキットは、逆転写酵素をさらに含むことができる。
本発明のキットは、糖代謝を調節し得る物質の容易なスクリーニングを可能とする。従って、本発明のキットは、糖代謝に関連する疾患の改善が所望される上述の疾患の予防・治療剤、並びに該疾患の研究用試薬の開発などに有用である。
本発明はまた、Cited2の特定の多型が糖代謝の調節に関与しているか否かを解析する工程を含む、糖代謝の調節に関連するCited2多型の同定方法、当該方法により同定される糖代謝の調節に関連するCited2多型を含むタンパク質・核酸分子を提供する。
Cited2の多型とは、ある母集団において、Cited2を含むゲノムDNAに一定頻度で見出されるヌクレオチド配列の変異を意味し、Cited2を含むゲノムDNAにおける1以上のDNAの置換、欠失、付加(例えば、SNP、ハプロタイプ)、並びに該ゲノムDNA中の部分領域の反復、逆位、転座などであり得る。
解析工程は、連鎖解析等の自体公知の方法により行われ得る。糖代謝に関連する疾患の有無により特定の遺伝子多型の保有頻度に有意差が認められたとき、そのタイプの遺伝子多型を保有する対象は、保有しない対象よりも該疾患の発症リスクが相対的に高い又は低いと判定される。
本発明の同定方法は、哺乳動物由来の生体試料から調製されたDNAサンプルをシークエンシング (sequencing) に供し、Cited2多型の新たなタイプを決定する工程をさらに含むこともできる。生体試料は、Cited2の発現組織のみならず、毛髪、爪、皮膚、粘膜等のゲノムDNAを含む任意の組織も使用できる。入手の容易性、人体への負担等を考慮すれば、生体試料は、毛髪、爪、皮膚、粘膜、血液、血漿、血清、唾液などが好ましい。遺伝子多型の決定は、由来が異なる生体試料に含まれるゲノム又は転写産物のヌクレオチド配列を多数解析し、決定されたヌクレオチド配列中に一定頻度で見出される変異を同定することで行われ得る。
本発明の同定方法および当該方法により決定された糖代謝の調節に関連するCited2多型は、糖代謝に関連する疾患の発症リスクの判定に有用である。本発明によれば、このようなCited2多型を用いる糖代謝に関連する疾患の発症リスクの判定方法も提供され得る。このような判定方法は、哺乳動物由来の生体試料において、Cited2多型のタイプを決定する工程、および決定された多型のタイプに基づき、該哺乳動物において糖代謝に関連する疾患の発症リスクを評価する工程を含むことができる。
本明細書中で挙げられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例等に何ら制約されるものではない。
参考例1:Cited2の発現は、db/dbマウスの白色脂肪組織で低下している
Cited2と糖代謝との関連を調べるため、高度の肥満を呈する糖尿病モデルであるレプチン受容体欠損db/dbマウス(C57BL/KsJ−db/db)のインスリン感受性組織におけるCited2の発現量を検討した。5、10、15週齢の本モデルマウスの精巣周囲白色脂肪組織、前頚骨筋、および肝臓よりTrizolを用いて抽出した全RNAをヒトCited2 cDNAをプローブとしたノザンブロット解析に供した。
その結果、db/dbマウスの白色脂肪組織では早期よりCited2の発現が低下していた(図1)。一方、前頚骨筋と肝臓では2群間に有意な差異は認められなかった(図1)。
以上より、白色脂肪組織におけるCited2の発現が肥満の病態に関連することが示唆された。
参考例2:絶食/再摂食によるCited2の発現変化
Cited2が生理的な糖代謝調節に関与する可能性を調べるため、24時間の絶食後、再摂食させた10週齢の普通マウス(C57BL6)の精巣周囲白色脂肪組織および肝臓より抽出した全RNAをCited2 cDNAをプローブとしたノザンブロット解析に供した。
その結果、白色脂肪組織におけるCited2の発現量は絶食により著明に低下し、6時間の再摂食にてやや回復した(図2)。肝臓でも絶食によってCited2の発現量が低下する傾向があった(図2)。
以上より、白色脂肪組織および肝臓におけるCited2の発現が生理的な糖代謝調節に関わることが示唆された。
参考例3:インスリンによるCited2の発現誘導
絶食/再摂食によるCited2の発現変動のメカニズムを調べるため、インスリンがCited2の発現を調節する可能性を検証した。コラゲナーゼにて還流処理したラット肝臓より調整した初代培養肝細胞を12時間の血清除去の後100nMインスリンにて3−9時間処理し、刺激後の細胞より抽出した全RNAをCited2 cDNAをプローブとしたノザンブロット解析に供した。
その結果、Cited2の発現は3時間のインスリン刺激にて有意に上昇し、9時間後には非刺激細胞のレベルまで低下した(図3)。
以上より、Cited2の発現がインスリンにより一過性に誘導されることが明らかとなった。
実施例1:Cited2発現アデノウイルスのマウスへの投与
1.1.Cited2の強制発現は、血糖値の低下をもたらす
糖代謝におけるCited2の役割を個体レベルで明らかにすることを目的として、アデノウイルスベクターを用いて肝臓選択的にCited2を強制発現することを試みた。ベクターの作成にはAdenovirus Expression Vector Kit(TaKaRa; Code No. 6150)を使用した。まず、ヒトCited2遺伝子翻訳領域の全長(野生型:WT)、およびCBP/p300のC/H1ドメインとの結合に与るC末端側の56アミノ酸残基を欠失するフラグメント(ΔC)を、コスミドベクターpAxCAwtのSwaIサイトにサブクローニングした。インサートを組み込んだコスミドベクターと制限酵素処理済みDNA−TPCをHEK293細胞に同時に導入した後、細胞内の相同組換えを経て出現したアデノウイルスを獲得した。目的の組換えウイルスのスクリーニングは、Cited2に対する特異抗体(JA22; Santa Cruz Biotechnology Inc.)を用いたウエスタンブロット解析にて行った。野生型およびC末端側欠失変異体を発現するウイルス、さらに対照用のβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)発現アデノウイルスを、一個体あたり3×10pfu(プラーク形成単位)の濃度で12週齢の普通マウス(C57BL6)あるいは9週齢のdb/dbマウスの尾静脈より注射した。ウイルス投与後のマウスの体重ならびに随時血糖値を経時的に測定した。
その結果、野生型Cited2発現アデノウイルスの投与により普通マウスの随時血糖が低下した(図4、表1)。対照的に、C末端側欠失変異体を発現するウイルスの投与は血糖値に有意な影響を与えなかった(図4、表1)。さらに、野生型Cited2発現アデノウイルスの投与はdb/dbマウスの血糖値を大きく低下させた(図5、表2)。一方、普通マウスおよびdb/dbマウスの体重は、いずれのウイルスの投与によっても変化しなかった(表1、2)。
以上より、Cited2の強制発現により肝臓における糖代謝が改善され得、血糖値の低下をきたすことが示唆された。
1.2.Cited2はグルコキナーゼ遺伝子の発現を増加させる
Cited2による肝糖代謝改善のメカニズムを調べるために、上記解析に供したdb/dbマウスの肝臓における解糖系酵素および糖新生系酵素の発現量を定量性RT−PCR法ならびにノザンブロット解析にて検討した。
その結果、野生型Cited2発現アデノウイルスの投与により主要な解糖系酵素であるグルコキナーゼの遺伝子発現が著明に増加した(図6)。一方、糖新生系酵素PEPCKの発現は、Cited2の強制発現によって変化しなかった(図6)。
以上より、Cited2がグルコキナーゼ遺伝子の発現増加を介してdb/dbマウスの肝臓における糖代謝を改善させる可能性が示唆された。
実施例2:初代培養肝細胞へのCited2の強制発現
グルコキナーゼの発現に対するCited2の作用をインビトロで検討するために、野生型Cited2および対照用のβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)発現アデノウイルスを、細胞一個あたり1−10pfuの濃度で初代培養ラット肝細胞に感染させた。100nMインスリン、1nMデキサメタゾン、1nM 3,3’,5−トリヨード−L−チロニン、さらに10%ウシ胎児血清を含む培養液にて48時間培養した後、感染細胞より全RNAを抽出してノザンブロット解析に供した。
その結果、野生型Cited2発現アデノウイルスは感染量依存性にグルコキナーゼ遺伝子の発現を増加させた(図7)。
以上より、肝細胞においてCited2がグルコキナーゼ遺伝子の発現を増加させることがインビトロにおいても確認された。
本発明の調節剤は、例えば、糖代謝に関連する疾患の予防・治療、あるいは該疾患の発症を可能とする。本発明のスクリーニング方法およびスクリーニング用キットは、例えば、糖代謝に関連する疾患の予防・治療薬、あるいは該疾患の研究用試薬の開発を可能とする。本発明の同定方法および当該方法により同定されたCited2多型は、例えば、糖代謝に関連する疾患の発症リスクの判定方法を可能とする。
db/dbマウスの白色脂肪組織、前頚骨筋、肝臓におけるCited2の発現を示す図である。 C57BL6マウスの白色脂肪組織、肝臓における、絶食/再摂食によるCited2の発現の変化を示す図である。 初代培養ラット肝細胞における、インスリン刺激によるCited2の発現変化を示す図である。 Cited2発現アデノウイルスが投与された普通マウスの血糖値の経時変化を示す図である。 Cited2発現アデノウイルスが投与されたdb/dbマウスの血糖値の経時変化を示す図である。 db/dbマウスの肝臓における、Cited2発現アデノウイルスの投与によるグルコキナーゼの発現変化を示す図である。 Cited2発現アデノウイルスを感染させた初代培養ラット肝細胞における、グルコキナーゼの発現を示す図である。

Claims (18)

  1. Cited2の発現または機能を調節する物質を含有してなる、糖代謝調節剤。
  2. Cited2の発現または機能を促進する物質を含有してなる糖尿病の予防・治療剤である、請求項1記載の剤。
  3. Cited2の発現または機能を促進する物質が、Cited2、またはCited2をコードする核酸を含む発現ベクターである、請求項2記載の剤。
  4. 発現ベクターがアデノウイルスベクターである、請求項3記載の剤。
  5. 被験物質がCited2の発現または機能を調節し得るか否かを評価することを含む、糖代謝を調節し得る物質のスクリーニング方法。
  6. 被験物質がCited2の発現または機能を促進し得るか否かを評価することを含む糖尿病を予防・治療し得る物質のスクリーニング方法である、請求項5記載の方法。
  7. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、請求項5記載の方法:
    (a)被験物質とCited2の発現を測定可能な細胞とを接触させる工程;
    (b)被験物質を接触させた細胞におけるCited2の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるCited2の発現量と比較する工程;
    (c)上記(b)の比較結果に基づいて、Cited2の発現量を調節する被験物質を選択する工程。
  8. 工程(c)において、Cited2の発現量を促進する被験物質が、糖尿病を予防・治療し得る物質として選択される、請求項7記載の方法。
  9. Cited2の発現を測定可能な細胞が、肝細胞、脂肪細胞又は筋細胞である、請求項7記載の方法。
  10. 請求項5〜9のいずれか1項記載の方法により得られる物質。
  11. 請求項5〜9のいずれか1項記載の方法により得られる物質を含有してなる、糖代謝調節剤。
  12. 以下(i)〜(iii)の少なくとも1つを含んでなる、糖代謝を調節し得る物質のスクリーニング用キット:
    (i)Cited2をコードする核酸を含む発現ベクター;
    (ii)Cited2の発現を測定可能な細胞;あるいは
    (iii)Cited2の転写調節領域及び該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含む発現ベクター。
  13. Cited2の発現量を測定し得る手段をさらに含む、請求項12記載のキット。
  14. Cited2の特定の多型が糖代謝の調節に関与しているか否かを解析する工程を含む、糖代謝の調節に関連するCited2多型の同定方法。
  15. 請求項14記載の方法により同定される、糖代謝の調節に関連するCited2多型を含むタンパク質。
  16. 請求項14記載の方法により同定される、糖代謝の調節に関連するCited2多型を含む核酸分子。
  17. Cited2をコードする核酸を含むウイルスベクター。
  18. アデノウイルスベクターである、請求項17記載のウイルスベクター。
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