次に、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラーレーザープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像を形成するための4組のトナー像形成部100Y,M,C,Kを備えている。また、光書込ユニット110、給紙カセット120,130、レジストローラ対140、転写装置150、ベルト定着方式の定着装置170、スタック部180等も備えている。更には、図示しないトナー補給容器、廃トナーボトル、電源ユニットなども備えている。なお、以下、各符号の添字Y,M,C,Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック用の部材であることを示す。
光書込ユニット110は、Y,M,C,Kの各色に対応する4つのレーザダイオードからなる光源、正六面体のポリゴンミラー、これを回転駆動するためのとポリゴンモータ、fθレンズ、レンズ、反射ミラー等を有している。レーザダイオードから射出されたレーザー光Lは、ポリゴンミラーの何れか1つの面で反射してポリゴンミラーの回転に伴って偏向せしめられながら、感光体表面に到達する。そして、感光体表面をその軸線方向に光走査する。
上記トナー像形成部100Y,M,C,Kは、像担持体としてのドラム状の感光体2Y,M,C,Kを有している。これら感光体2Y,M,C,Kは、アルミ等の素管に有機感光層が被覆された直径30[mm]のドラムであり、図示しない駆動手段によって線速125[mm/sec]で図中時計回りに回転駆動せしめられる。そして、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて変調したレーザー光Lを発する上述の光書込ユニット110によって暗中にて光走査されて、Y,M,C,K用の静電潜像を担持する。
図2は、4つのトナー像形成部100Y,M,C,Kのうち、Y用のトナー像形成部100Yを転写装置150の一部とともに示す拡大構成図である。なお、他のトナー像形成部(100M,C,K)は、それぞれ使用するトナーの色が異なる点の他がY用のものと同様の構成になっているので、これらの説明については省略する。同図において、トナー像形成部100Yは、プロセスユニット1Yと現像装置50Yとを備えている。プロセスユニット1Yは、感光体2Yの他、これの表面に対し、潤滑剤を塗布するブラシローラ3Y、クリーニング処理を施す揺動可能なカウンタブレード4Y、除電処理を施す除電ランプ5Yなどを有している。また、感光体2Yを一様帯電せしめる帯電ローラ10Yや、これの表面をクリーニングするローラクリーニング装置20Yなども有している。
プロセスユニット1Yにおいて、図示しない電源によって交流の帯電バイアスが印加される帯電ローラ10Yは、軸部材11Y、突き当てコロ12Y、放電部材13Yなどから構成されている。軸部材11Yは、帯電ローラ10Yの芯金となっており、これの両端部がそれぞれ図示しない軸受けによって回転自在に支持されている。軸部材11Yには、図示しない電源によってDCバイアスにACバイアスを重畳した帯電バイアスが印加される。軸部材11Yの軸線方向の中央部表面には、導電性材料の被覆による放電部材13Yが軸周方向の全周に渡って被覆されている。この帯電ローラ部材13Yを間に挟み込むように、軸部材11Yの両端付近にはそれぞれ絶縁性材料からなるリング状の突き当てコロ12Yが、圧入と接着とによって固定されている。これら突き当てコロ12Yの外径は、放電部材13Yの外径よりも数十〜100[μm]大きくなっている。帯電ローラ10Yは、かかる突き当てコロ12Yを感光体2Yに当接させながら、放電部材13Yを感光体2Yに対して所定の帯電ギャップを介して対向させている。そして、図示しない駆動手段により、その表面を感光体2Yの表面移動とは逆方向に移動させるように回転せしめられながら、放電部材13Yからの放電によって感光体2Yの表面を一様帯電せしめる。このように一様帯電せしめられた感光体2Yの表面に、上述の光書込ユニット(図1の符号110)で変調及び偏向されたレーザー光Lが走査されると、その表面に静電潜像が形成される。
現像装置50Yは、ケーシング51Yに設けられた開口から周面の一部を露出させる現像ロール52Yを有している。また、第1搬送スクリュウ53Y、第2搬送スクリュウ54Y、現像ドクタ55Y、トナー濃度センサ(以下、Tセンサという)56Y、図示しない粉体ポンプとの連通部57Y等も有している。
ケーシング51Yには、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとを含むY現像剤が内包されている。このY現像剤は第1搬送スクリュウ53Y、第2搬送スクリュウ54Yによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、現像剤担持体たる現像ロール52Yの表面に担持される。そして、現像ドクタ55Yによってその層厚が規制されてから感光体2Yと対向する現像領域に搬送され、ここで感光体2Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体2Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール52Yの表面(現像スリーブ)の回転に伴ってケーシング51Y内に戻される。一方、現像に寄与したYトナー像は、紙搬送ベルト151によって搬送される転写紙Pに転写される。なお、現像ロール52Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられる非磁性パイプからなる現像スリーブと、これに連れ回らないように内包される図示しないマグネットローラとを有している。そして、マグネットローラの発する磁力により、現像スリーブ表面にY現像剤を引き付けて担持する。
透磁率センサからなるTセンサ56Yは、ケーシング51Yの底板に取り付けられ、第1搬送スクリュウ53Yによって搬送されるY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。現像剤の透磁率は、現像剤のトナー濃度と良好な相関を示すため、Tセンサ56YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。この制御部は、RAM等の記憶手段を備えており、この中にTセンサ56Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefや、他の現像装置に搭載されたTセンサからの出力電圧の目標値であるM,C,K用Vtrefのデータを格納している。Y用の現像装置50Yについては、Tセンサ56Yからの出力電圧の値とY用Vtrefを比較し、図示しないYトナーカートリッジに連結する粉体ポンプを比較結果に応じた時間だけ駆動させる。そして、これにより、Yトナーカートリッジ内のYトナーを、連結部57Yを介して現像装置50Y内に補給する。このようにして粉体ポンプの駆動が制御(トナー補給制御)されることで、現像に伴ってYトナー濃度を低下させたY現像剤に適量のYトナーが補給され、現像装置50Y内の現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。なお、他の現像装置についても、同様のトナー補給制御が実施される。
以上のようにして、先に図1に示した各トナー像形成部100Y,M,C,Kは、光書込ユニット110と共同して、各感光体2Y,M,C,Kに可視像たるトナー像を形成する。よって、本プリンタにおいては、各トナー像形成部100Y,M,C,Kと、光書込ユニット110との組合せにより、感光体2Y,M,C,Kの無端移動する表面にトナー像を形成する可視像形成手段として機能している。
Y,M,C,Kの各色トナーは結着樹脂、着色剤及び電荷制御剤を主成分とし、必要に応じて他の添加剤が加えられている。結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
着色材(例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)としては、従来から公知のものを使用することができる。着色材の量は結着樹脂100重量部に対して0.1から15重量部が適当である。
電荷制御剤としては、ニグロシン染料、含クロム錯体、4級アンモニウム塩などを用いることができ、これらをトナー粒子の極性によって使い分ける。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である。
トナー粒子には流動性付与剤を添加しておくことが望ましい。流動性付与剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物の微粒子及びそれら微粒子をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等によって表面処理したものや、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマー微粒子などを用いることができる。これら流動性付与剤の粒径は0.01〜3μmの範囲のものがよい。流動性付与剤の添加量は、トナー粒子100重量部に対して0.1〜7.0重量部の範囲が好ましい。
トナーを製造する方法としては、種々の公知の方法や、それらを組み合わせた方法を用いることができる。例えば、混練粉砕法では、まず、結着樹脂、着色材(例えばカーボンブラック)、その他必要とされる添加剤などを乾式混合したものを、エクストルーダー、二本ロール、三本ロール等にて加熱溶融混練する。そして、それを冷却固化してからジェットミルなどの粉砕機で粉砕した後、気流分級機によって分級してトナーを得る。また、懸濁重合法や非水分散重合法により、モノマー、着色材、添加剤などからトナーを製造することも可能である。
現像剤のキャリアは、芯材だけからなるものや、芯材上に被覆層を設けたものを用いるのが一般的である。樹脂被覆キャリアの芯材としては、粒径20〜60μm程度のフェライト、マグネタイトなどを用いることができる。また、芯材上の被覆層の材料としては、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルケトンなどを例示することができる。被覆層の形成法としては、従来と同様、芯材粒子の表面に噴霧法、浸漬法等の手段で樹脂を塗布する方法が挙げられる。
プリンタ本体の下部には、2つの給紙カセット120,130が配設されている。これら給紙カセット120,130は、転写紙Pを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容しており、一番上の転写紙Pに給紙ローラ121,131を押し当てている。そして、所定のタイミングで給紙ローラ121,131を回転させて、転写紙Pを給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対140が配設されており、送られてきた転写紙Pを、Yトナー像形成部100Yの感光体2Y上に形成されたYトナー像に同期させ得るタイミングで、後述の転写装置150に向けて送り出す。
図3は、転写装置150の要部構成を示す拡大構成図である。同図において、転写装置150は、紙搬送ベルト151と、複数の張架ローラとを有するベルト装置を有している。このベルト装置に搭載された張架ローラとは、具体的には、入口ローラ152、分離ローラ153、駆動ローラ154、テンションローラ155、下部ローラ156の5つである。転写装置150は、かかる構成のベルト装置の他、静電吸着ローラ157、4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,K、4つの搬送支持ローラ159Y,M,C,K、ベルトクリーニング装置160、押圧ローラ161等を有している。また、入口ブラケット162、揺動ブラケット163、出口ブラケット164、カム165等も有している。
紙搬送ベルト151は、体積抵抗率が1010〜1012Ωcm、表面抵抗率が1012〜1014Ω/□にそれぞれ調整された高抵抗の無端状単層ベルトであり、その材料にはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が用いられている。そして、複数の張架ローラに張架されながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される駆動ローラ154により、図中反時計回りに無端移動せしめられる。なお、紙搬送ベルト151の材料として、ポリフッ化ビニリデンに代えて、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることも可能である。また、これらの樹脂を基層として、スプレーやディッピング等の方法により表層を形成して、多層構造のベルトとしてもよい。
入口ローラ152、転写バイアスローラ158Y〜K、搬送支持ローラ159Y〜K、分離ローラ153、駆動ローラ154、テンションローラ155、下部ローラ156は、何れも紙搬送ベルト151の裏面に接触している。これらローラのうち、図中最も右側に配設された入口ローラ152は、その近傍に配設された静電吸着ローラ157との間に紙搬送ベルト151を挟み込むようになっている。この静電吸着ローラ157は、図示しない電源から印加される静電吸着バイアスによってベルトおもて面に電荷を付与することで、後述のレジストローラ対(140)から送り出されてくる転写紙Pを静電吸着させるようにする。
4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,Kは、金属製の芯金にスポンジ等の弾性体が被覆されたローラであり、それぞれ、感光体2Y,M,C,Kに向けて押圧されて、紙搬送ベルト151を挟み込むようになっている。この押圧により、感光体2Y,M,C,Kと紙搬送ベルト151とがベルト移動方向において所定の長さで接触するY,M,C,K用の4つの転写ニップが形成されている。また、転写バイアスローラ158Y,M,C,Kの芯金には、それぞれ転写バイアス電源によって定電流制御される転写バイアスが印加されている。これにより、転写バイアスローラ158Y,M,C,Kを介して紙搬送ベルト151の裏面に転写電荷が付与され、各転写ニップにおいて紙搬送ベルト151と感光体2Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。なお、本プリンタにおいては、転写手段として転写バイアスローラ158Y,M,C,Kを設けているが、ローラに代えて、ブラシやブレード等のものを用いてもよい。また、転写チャージャなどを用いてもよい。
4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,Kのうち、Y,M,C用の3つは、それぞれ、図示しない軸受け部材を介して揺動ブラケット163に支持されている。この揺動ブラケット163は、紙搬送ベルト151のループ内側に配設され、回動軸162aを中心に揺動可能に構成されている。4つの搬送支持ローラ159Y,M,C,Kのうち、Y,M,C用の3つも、この揺動ブラケット163に支持されている。揺動ブラケット163の図中下方には、図示しない駆動手段によって回転軸165aを中心に回転駆動されるカム165が配設されている。これがそのカム面を揺動ブラケット163に突き当てる位置で回転停止されると、揺動ブラケット163が回動軸163aを中心に図中反時計回りに揺動せしめられる。そして、Y,M,C用の転写バイアスローラ158Y,M,Cが、紙搬送ベルト151を介して感光体2Y,M,Cに当接して、Y,M,C用の転写ニップが形成される。これに対し、カム165がそのカム面を揺動ブラケット163に突き当てない位置で回転停止されると、揺動ブラケット163が回動軸163aを中心に図中時計回りに揺動せしめられる。そして、Y,M,C用の転写バイアスローラ158Y,M,Cが、紙搬送ベルト151を感光体2Y,M,Cに押し当てない位置まで移動して、Y,M,C用の転写ニップが形成されなくなる。このように、転写装置150は、揺動ブラケット163の揺動によって紙搬送ベルト151を感光体2Y,M,Cに当接させてY,M,C用の転写ニップを形成したり、紙搬送ベルト151を感光体2Y,M,Cから離間させたりする。
入口ローラ152、静電吸着ローラ157及び下部ローラ156は、それぞれ図示しない軸受け部材を介して、入口ブラケット162に支持されている。この入口ブラケット162は、紙搬送ベルト151のループ内側に配設され、下部ローラ156の軸を中心にして揺動可能に構成されている。
揺動ブラケット163は、その図中左端付近にガイド穴163bを有しており、これの内部に入口ブラケット162から延びるピン162aを遊動可能に位置させている。そして、上述のカム165の回転によって図中反時計回りに揺動すると、ガイド穴162b内のピン162aを押し上げる。すると、入口ブラケット151が、揺動ブラケット163の揺動にリンクして、下部ローラ156の軸を中心にして図中反時計回りに揺動せしめられて、入口ローラ152、静電吸着ローラ157及び下部ローラ156を押し上げる。また、揺動ブラケット163が図中時計回りに揺動せしめられると、入口ブラケット151がそれにリンクして図中時計回りに揺動して、入口ローラ152、静電吸着ローラ157及び下部ローラ156を下方に移動させる。このような揺動ブラケット163の揺動に伴う入口ローラ61、静電吸着ローラ157及び下部ローラ156の移動により、紙搬送ベルト151による紙搬送面が一直線状に維持される。
転写装置150は、転写紙Pに黒単色のトナー像を転写する場合には、揺動ブラケット163を図中時計回りに揺動させて、紙搬送ベルト151をY,M,C用の感光体2Y,M,Cから離間させる。黒単色のトナー像を転写する場合には、Y,M,C用の転写ニップでのトナー像転写が行われないので、それらの転写ニップを形成しないで黒色単色のトナー像の転写を行うのである。これにより、紙搬送ベルト151やこれの駆動系に余計な負荷をかけることなく、黒単色のトナー像を転写することができる。
4つの転写バイアスローラ158Y,M,C,Kのうち、K用の転写バイアスローラ158Kは、図示しない軸受け部材を介して出口ブラケット164に支持されている。この出口ブラケット164は、紙搬送ベルト151のループ内側に配設され、出口ローラ165の軸を中心に揺動可能に構成されている。4つの搬送支持ローラ159Y,M,C,Kのうち、K用の搬送支持ローラ159Kも、この出口ブラケット164に支持されている。K用の転写バイアスローラ158Kは、出口ブラケット164の図中時計回りの揺動により、紙搬送ベルト151をK用の感光体2Kに押し当てない位置に移動する。この状態で上述の揺動ブラケット163が図中時計回りに揺動すると、紙搬送ベルト151が全ての感光体2Y,M,C,Kから離間する。転写装置150は、このように紙搬送ベルト151を全ての感光体から離間させた状態で、プリンタ本体に対して着脱されるようになっている。
転写装置150は、後述のフルカラー画像を転写紙Pに転写する場合には、紙搬送ベルト151を全ての感光体2Y,M,C,Kに接触させて、Y,M,C,K用の転写ニップを形成する。後述のレジストローラ対(140)から送り出された転写紙Pは、上述の静電吸着ローラ157と紙搬送ベルト151との間に挟まれる。そして、紙搬送ベルト151のおもて面に吸着されながら、Y,M,C,K用の転写ニップを順次通過していく。これにより、各感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が、それぞれ転写ニップで転写紙Pに重ね合わされ、上記転写電界やニップ圧の作用を受けて転写紙P上に重ね合わせて転写される。この重ね合わせの転写により、転写紙P上にはフルカラー画像が形成される。
フルカラー画像が形成された転写紙Pは、紙搬送ベルト151の無端移動に伴って、分離ローラ153によるベルト張架位置にさしかかる。このベルト張架位置では、分離ローラ153が紙搬送ベルト151の無端移動方向をほぼ反転させるような急激な巻き付け角で紙搬送ベルト151を巻き付けている。紙搬送ベルト151上に吸着している転写紙Pは、このような急激なベルトの移動方向の変化に追従することができず、紙搬送ベルト151から分離される。そして、図示しない定着装置に受け渡される。
テンションローラ155は、スプリングによって紙搬送ベルト151に向けて付勢されることで、紙搬送ベルト151に対して所定のテンションを付与している。このテンションローラ155と、駆動ローラ154との間におけるベルト展張箇所のおもて面には、押圧ローラ161が押し当てられている。この押し当てにより、紙搬送ベルト151がループ内側に向けて湾曲している。紙搬送ベルト151がこのように大きく湾曲することにより、駆動ローラ154に対する紙搬送ベルト151の巻き付き箇所がより大きく確保されている。そして、この巻き付き箇所のおもて面には、ベルトクリーニング装置160が当接している。分離ローラ153による張架位置で転写紙Pを定着装置に受け渡した紙搬送ベルト151のおもて面には、各感光体2Y,M,C,Kから転移してしまった汚れトナーが付着している。ベルトクリーニング装置160は、この汚れトナーを紙搬送ベルト151から除去するためのものである。
先に示した図1において、定着装置170は、加圧ローラ171、定着ベルト172、加熱ローラ173、駆動ローラ174等を有している。定着ベルト172は、加熱ローラ172と駆動ローラ174とによって張架されながら、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられる駆動ローラ174によって図中時計回りに無端移動せしめられる。加熱手段たる加熱ローラ172は、ハロゲンランプ等の熱源を内包しており、これによって定着ベルト172を裏面から加熱する。一方、当接ローラたる加圧ローラ171は、無端移動せしめられる定着ベルト172に接触しながら、接触部で表面をベルトと同様に移動させるように回転して定着ニップを形成している。転写装置150の紙搬送ベルト151から定着装置170に受け渡された転写紙Pは、その像転写面を定着ベルト172に接触させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧によって像転写面にフルカラー画像が定着せしめられながら、定着装置170を通過する。
定着装置170を通過した転写紙Pは、搬送ローラ対や反転ガイド板などを経由した後、更に搬送ローラ対を経て、プリンタ筺体の上面に設けられたスタック部180に向けて排出される。
先に示した図2において、Y用の転写ニップを通過した後の感光体2Y表面は、する。図中反時計回りに回転駆動せしめられる潤滑剤塗布手段たるブラシローラ3Yで所定量の潤滑剤が塗布された後、カウンタブレード4Yでクリーニングされる。そして、除電ランプ5Yから照射された光によって除電されて次の静電潜像の形成に備えられる。
帯電ローラ10Yの放電部材13Yは、感光体2Yに対して非接触になっているが、感光体2Yのトナーが静電気力によって付着することがある。付着したトナーは、放電部材13Yに接触しながら回転するローラクリーニング装置20Yによって放電部材13Y表面から静電的にクリーニングされる。
なお、同図においては、帯電ローラ10Yやローラクリーニング装置20Yなどによって被帯電体たる感光体2Yを帯電せしめる帯電装置が構成されている。また、プロセスユニット1Yは、感光体2Y、帯電装置、ブラシローラ3Y、カウンタブレード4Y、除電ランプ5Y等が、1つのユニットとして、プリンタ本体に対して着脱可能となるように、共通の支持体に支持されたものである。また、4つのトナー像形成部100Y,M,C,Kのうち、Y用のトナー像形成部100Yについて説明してきたが、他色のトナー像形成部100M,C,Kも同様の構成になっているので説明を省略する。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図4は、本プリンタの帯電ローラを示す縦断面図である。なお、Y,M,C,Kの各色のトナー像形成部は、それぞれ対応するトナーの色が異なる点の他は同様の構成であるので、図4以降の図では符号の後部に付すY,M,C,Kという添字を省略している。図4において、回転部材たる帯電ローラ10は、ステンレス等の金属からなる軸部材11と、2つの突き当てコロ12と、放電部材13とを有している。軸部材11は、円柱状の主軸部11bと、これの軸線方向の両端からそれぞれ突出する突出軸部11aとから構成されている。主軸部11bの直径は8[mm]になっている。放電部材13は、軸部材11の主軸部11Bの軸線方向における中央部に対し、導電性樹脂が射出成形法によって1.5[mm]の厚みで主軸部全周に渡って形成されたものであり、その外径は11[mm]程度になっている。突き当て部材たる2つの突き当てコロ12は、外径11.1[mm]程度、内径8[mm]弱、軸線方向の長さ8[mm]のリング状の絶縁性硬質プラスチックからなる。軸部材11に固定された放電部材13を間に挟み込むように、主軸部11Bの両端部にそれぞれ圧入及び接着によって固定されている。
図5は、本プリンタの感光体と帯電ローラとを示す斜視図である。同図において、帯電ローラ10の軸部材11は、両端の突出軸部(11a)がぞれぞれ図示しない軸受けによって回転自在に支持されながら、軸受けに当接する図示しないスプリングによってドラム状の感光体2に向けて付勢されている。この付勢により、帯電ローラ10の2つの突き当てコロ12がそれぞれ感光体2の両端付近に突き当たるとともに、放電部材13と感光体2表面との間に数十〜100[μm]の帯電ギャップが形成される。軸部材11における2つの突出軸部(11a)のうち、一方には、図示しない駆動受入ギヤが固定されており、これが感光体2の軸に取り付けられた図示しないフランジギヤと噛み合うことで、帯電ローラ10が回転する。かかる回転では、帯電ローラ10が感光体2と同期して駆動されるので、突き当てコロ12の摩擦係数を低くしても帯電ローラ10をスリップさせることなく確実に回転させることができる。
ところで、上述した特許文献1に記載の帯電装置は、帯電ローラとして、芯金の表面に導電性ゴムが固定され、且つその導電性ゴムのローラ軸線方向の両端部にそれぞれ厚み100[μm]程度のフィルム部材が巻き付けられたものを用いる。そして、その両端部のフィルム部材を潜像担持体たるドラム状の感光体に突き当てることで、フィルム部材が巻き付けられていない導電性ゴム箇所である放電部と、感光体との間に100[μm]程度のギャップを維持する。このような帯電ローラでは、環境温度の上昇に伴って導電性ゴムの硬度が低くなると、感光体に圧接せしめられるフィルム部材の導電性ゴムへの食い込み量が増加することから、上述の帯電ギャップがより小さくなる。この逆に、環境温度の低下に伴って導電性ゴムの硬度が高くなると、前述の食い込み量が減少することから、帯電ギャップがより大きくなる。これらの結果、比較的低温になったときに放電部を感光体に近づけ過ぎてトナーを放電部に固着させ易くなったり、比較的高温になったときに放電部を感光体から遠ざけ過ぎて感光体に帯電ムラを引き起こしたりすることがあった。
かかるトナー固着や帯電ムラを抑えるべく、本出願人は、放電部の材料として、柔らかい導電性ゴムに代えて導電性の硬質プラスチックを用いた帯電ローラを試作してみた。しかしながら、この帯電ローラでは、感光体に突き当たる突き当て部材としての厚み100[μm]程度のフィルム部材が、感光体との摺擦により、硬質プラスチックからなる放電部表面からすぐに剥がれてしまった。このため、実使用に対応できる耐久性を発揮することができなかった。
このような耐久性に関する欠点を解消すべく、本出願人は上述した特許文献2において、次のような帯電ローラを提案した。即ち、ローラ周方向に延在する凹部を放電部のローラ軸線方向の両端部にそれぞれ設け、その凹部内で熱収縮チューブを凹部上端から僅かに突出する程度の大きさまで熱収縮させて感光体に突き当てるようにした帯電ローラである。かかる構成では、熱収縮チューブを凹部内に食い込ませて放電部にしっかりと固定することで、突き当て部材たるチューブの剥がれを抑えて実使用に対応できる良好な耐久性を発揮することができる。
ところが、この帯電ローラでは、収縮後のチューブの周方向における厚み偏差が大きいことから、帯電ローラ1周あたりにおける帯電ギャップの変動が著しくなる。そして、比較的低温の環境下において、チューブの肉薄の箇所が感光体に突き当たっているときに、帯電ギャップが非常に小さくなって放電部にトナーを固着させ易くなってしまった。また、比較的高温の環境下においては、チューブの肉厚の箇所が感光体に突き当たっているときに、帯電ギャップが非常に大きくなって帯電不良を引き起こしてしまった。
そこで、本発明者は、図4や図5に示したように、軸部材11の主軸部11bに導電性材料からなる放電部材13を被覆し、その放電部材13を間に挟み込ませるように、放電部材13よりも径の大きなリング状の突き当て部材12を主軸部11bの両端部にそれぞれ固定した帯電ローラ10を開発した。かかる構成の帯電ローラ10では、突き当て部材12を導電性ゴムからなる比較的柔らかい下地ではなく、剛性の高い軸部材11に固定している。このため、高温の環境下で柔らかくなりすぎた下地に突き当て部材12を大きく食い込ませるといった事態を回避して、その食い込みに起因する帯電ギャップの変動を解消することができる。また、放電部材13よりも肉厚の突き当て部材12を圧入、接着、積層等の方法によって軸部材11にしっかりと固定することが可能になるので、突き当て部材12の剥がれによる耐久性の低下を抑えることができる。また、突き当て部材12として、リング状に加工した硬質プラスチックなどといった厚み偏差の調整が容易な材料からなるものを用いることが可能になるので、温度変化と突き当て部材12の厚み偏差とに起因するトナー固着や帯電ムラを抑えることもできる。
しかしながら、この帯電ローラ10に限らず、感光体2に所定の帯電ギャップを介して対向させた対向部からの放電によって感光体2を帯電せしめる非接触帯電方式では、次のような問題があった。即ち、温度変動にかかわらず、帯電ギャップの設定値や、帯電ローラの放電部の材料などによっては、感光体2を一様に帯電せしめることが困難になって帯電ムラを引き起こすことがあった。そこで、本発明者は、以下に説明する実験を行った。
まず、帯電ローラ10として、以下に説明するA〜Gという7種類のものを試作した。なお、これら7種類の帯電ローラ10のうち、A〜Eは、それぞれ次のようにした製造したものである。即ち、まず、基材樹脂100重量部に四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィン系高分子化合物からなるイオン導電剤60重量部を配合して得た樹脂組成物を、ステンレスからなる直径9[mm]の主軸部11b中央部の全周に渡って、数[mm]の厚みで射出成形した。これにより、主軸部11bの中央部に熱可塑性樹脂からなる放電部材13を固定した。次に、熱可塑性樹脂が内径9[mm]弱、外径十数[mm]、軸線方向の長さ8[mm]の大きさに成形されたリング状の突き当てコロ12を、主軸部11bの両端部にそれぞれ圧入及び接着せしめた。そして、このようにして得たローラを、旋盤切削加工機で精密成形した。具体的には、旋盤切削加工により、放電部材13を直径11[mm]に切削加工するとともに、突き当てコロ12を直径11[mm]よりも少し大きめに切削加工した。このように、主軸部11bに対して、放電部材13と突き当てコロ12との両方を固定してから、それぞれを切削加工してその外径を仕上げることで、旋盤切削加工時の偏心による帯電ローラ10の周方向のギャップ変動を解消することができる。具体的には、旋盤切削機では、切削品を完全に真円に加工することができない。ワークを把持するチャックにおける形状精度の限界等により、どうしてもワークを微妙に偏心させた状態で回転させてしまうからである。このように微妙な偏心が生ずる旋盤切削加工を用いて、主軸部11bに固定した放電部材13を加工して仕上げる一方で、突き当てコロ12については旋盤による仕上げ加工を行ってから主軸部11bに固定したとする。すると、帯電ローラ10の周方向において、放電部材13の偏心位相と、突き当てコロ12の偏心位相とが、ずれてしまうため、周方向のギャップ変動が生じてしまう。これに対し、両者をともに主軸部11bに固定してからそれぞれの外径を旋盤切削加工で仕上げると、両者の偏心位相を揃えることができるため、旋盤切削加工時の偏心に起因するギャップ変動を解消することができるのである。
[帯電ローラA]
ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)100重量部にイオン導電剤60重量部を配合して得た樹脂組成物(体積抵抗率105Ωcm)を、主軸部11Bの中央部の全周に渡って、数[mm]の厚みで射出成形して放電部材13を得た。そして、主軸部11bの両端部にそれぞれリング状の突き当てコロ12を圧入及び接着によって固定して放電部材13に繋げた後、旋盤切削加工により、放電部材13を外径11[mm]に仕上げた。また、突き当てコロ12も外径11[mm]に仕上げた。かかる構成の帯電ローラ10では、放電部材13と突き当てコロ12との厚み方向における段差がないため、帯電ギャップが形成されないローラ接触方式のものとなる。
[帯電ローラB]
突き当てコロ12の外径を旋盤切削加工によって11.03[mm]程度に仕上げた他は、帯電ローラAと同様にして帯電ローラ10を作成した。
[帯電ローラC]
突き当てコロ12の外径を旋盤切削加工によって11.05[mm]程度に仕上げた他は、帯電ローラAと同様にして帯電ローラ10を作成した。
[帯電ローラD]
突き当てコロ12の外径を旋盤切削加工によって11.07[mm]程度に仕上げた他は、帯電ローラAと同様にして帯電ローラ10を作成した。
[帯電ローラE]
突き当てコロ12の外径を旋盤切削加工によって11.09[mm]程度に仕上げた他は、帯電ローラAと同様にして帯電ローラ10を作成した。
[帯電ローラF]
厚み150[μm]の導電性樹脂チューブを固定した。PVDF樹脂(ポリフッ化ビニリデン−ポリビニリデンフルオロエチレン)100重量部にカーボンが分散せしめられた厚み150[μm]、体積抵抗率106 [Ωcm]の導電性樹脂チューブを、外径10.85[mm]程度のステンレスからなる軸部材11の主軸部11bに固定した。これにより、放電部材13の外径が11[mm]であり、且つ突き当て部材を有していない帯電ローラを得た。かかる構成の帯電ローラも、放電部材13が感光体2に接触する接触方式となる。
[帯電ローラG]
帯電ローラFにおける放電部材11の軸線方向の両端部に、PET樹脂層と粘着層からなる厚み50[μm]の樹脂テープを貼り付けて、感光体2に突き当てるようにした。
これらA〜Gの帯電ローラは、何れも長さがA3用紙短手方向に対応しており、305[mm]の帯電幅で感光体2を帯電せしめることができる。なお、感光体2は、直径30[mm]のドラム状のアルミニウム素管(金属基体)表面に、感光層等が被覆されたものである。
次に、これらA〜Gの帯電ローラを、株式会社リコー社製のイプシオカラー8100の改造機におけるプロセスユニット(1K)の帯電ローラを、上述したA〜Gのものに順次交換しながら、帯電ギャップを測定した。帯電ギャップについては、図6に示すギャップ測定装置を用いて測定することができる。このギャップ測定装置500は、レーザー発光部501から発したレーザー光を、帯電ギャップGを通して受光部502で受光するようにプロセスユニットにセットされる。そして、受光部502による受光量に基づいて、帯電ギャップGの値を求めることができる。レーザー発光部501と受光部502とを保持している保持部503は、図示しないガイドレール上を図中奥行き方向、即ち、感光体2の軸線方向に沿ってスライド移動可能に支持されている。図示しない駆動手段によって保持部503をスライド移動させることで、帯電ギャップを感光体2の軸線方向に順次測定していくことが可能になっている。かかる構成のギャップ測定装置500として、本発明者は、Mitutoyo社製のレーザースキャンマイクロメータ LSM−600を使用した。
次に、上記改造機におけるプロセスユニット(1K)において、感光体(2K)に代えて、そのアルミニウム素管と金属材料、形状及び大きさが同一であるアルミニウムドラム(直径30mm)をセットした。そして、このプロセスユニット(1K)の帯電ローラを、上述したA〜Gのものに順次交換しながら、それぞれ、金属ドラムと放電部材(13)との間の静電容量を測定した。この測定は、HP社製LCRメーター 4263Bを使用して行った。このとき、測定電圧1V、測定周波数1kHzに設定し、LCRメーターのリード線を、帯電ローラの軸部材(11)と、金属ドラムに摺擦するアース電極とに接続した。
次に、上記改造機におけるプロセスユニット(1K)のアルミニウムドラムを取り外して、再び感光体(2K)をセットした。この感光体(2K)は、直径30[mm]のアルミニウム素管の表面に、厚み3[μm]の下引き層、厚み0.15[μm]の電荷発生層、厚み20[μm]の電荷輸送層、厚み5[μm]の表面保護層が順次被覆されたものである。表面保護層についてはスプレー塗工によって形成した。また、それ以外の層については浸漬塗工法によって形成した。電荷輸送層、表面保護層ともにバインダー樹脂としてポリカーボネートを用い、表面保護層には平均粒径0.3[μm]のアルミナ粒子を全固形分に対して15重量%の割合で添加した。各層の厚みの測定については、渦電流方式の膜厚計であるFISCHER製FISCHERSCOPE MMSを使用した。
このような感光体(2K)がセットされたプロセスユニット(1K)の帯電ローラを上述したA〜Gのものに順次交換しながら、上記改造機を作動させてテスト画像をプリントアウトした。そして、プリントアウト紙を顕微鏡で観察しながら、感光体(2K)の帯電ムラによる濃度ムラがそのテスト画像に現れているか否かを調べた。
以上に説明した実験の結果を次の表1に示す。なお、表1における帯電ギャップは、アルミドラムをセットした際の帯電ローラ1周あたりの平均値である。また、帯電ムラの項における「○」は、帯電ムラに起因する濃度ムラの発生が認められたかったことを示している。また、「×」は、帯電ムラに起因する濃度ムラの発生が認められたことを示している。また、C1/Lは、上述のLCRメーターによる静電容量C1の測定値を、帯電ローラの帯電幅L(305[mm])で除算した値である。この帯電幅Lとは、A〜Fの帯電ローラでは、放電部材13のローラ軸線方向の長さである。また、Gの帯電ローラでは、放電部材13のローラ軸線方向の長さから、樹脂テープ貼付領域の長さを引いた値である。
表1に示すように、帯電ローラEやGを使用した場合に帯電ムラが発生したのに対し、それ以外の帯電ローラを使用した場合には帯電ムラが発生しなかった。帯電ローラE、Gの放電部材(13)と同じ電気抵抗率の放電部材(13)を有する他のローラでは、帯電ムラが発生していないので、帯電ムラの発生と放電部材(13)の電気抵抗率との因果関係はないと考えられる。帯電ローラEと帯電ローラGとにおいて共通している事項として、何れもC1/Lが比較的小さな値であることが挙げられる。このC1/Lと、帯電ムラの発生状況とに着目すると、C1/Lが0.35以上であるという条件を具備することが、帯電ムラの発生を抑えるための条件であると考えられる。そこで、本プリンタにおいては、帯電ローラ10として、かかる条件を具備するものを用いている。
なお、帯電ムラ発生の評価を行うためのプリントアウトを実施するプロセスユニット(1K)の感光体(2K)として、厚み20[μm]の電荷輸送層に代えて、厚み25、30、35[μm]の電荷輸送層を被覆したものでも、プリントアウトを行ってみたが、何れの感光体(2K)でも、A〜Gの帯電ローラにおいて同様の結果が認められた。よって、厚み28.15(3+0.15+20+5)μm〜43.15(3+0.15+35+5)μmの被覆層であれば、その被覆層を省略したアルミニウムドラムを用いた静電容量C1の測定結果に基づいて、帯電ムラが抑えられる条件であるか否かを評価しても差し支えない。
次に、本発明者らは、図5に示した帯電ローラ10として、放電部材13と感光体2との帯電ギャップを互いに異ならせる複数種類のものを試作した。そして、それらをプリンタ本体に対して順次交換しながら、基準画像を出力して、帯電ギャップ、放電部材13の汚れ具合、及び感光体2の帯電状態を調べる実験を行った。プリンタとしては、株式会社リコー社製のイプシオカラー8100の改造機を使用し、プロセス線速を125[mm]に設定した。また、帯電バイアスについては、−700[V]のDCバイアスに、周波数900[Hz]のACバイアスを重畳したものを使用した。このACバイアスのピークツウピーク電圧については、初期状態を1.8[kV]に設定した。そして、上述の改造機でハーフトーンの基準画像を出力した。この出力画像に、感光体2の帯電ムラに起因する白黒ポチ状の濃度ムラが発生している場合には、ACバイアスのピークツウピーク電圧をより大きく設定した後、再び基準画像を出力して濃度ムラの有無を確認した。そして、ピークツウピーク電圧を2.8[kV]以上に設定しても濃度ムラが現れる場合には、帯電ギャップが許容範囲を超えていることに起因する感光体2の帯電ムラが生じているものと判断した(後述する表2で×)。また、濃度ムラが現れていない場合であっても、上述の基準画像を複数の転写紙に連続して出力していき、途中で濃度ムラが現れた場合には、ピークツウピーク電圧を徐々に大きくしながら更なる出力を行った。そして、5万枚の出力でも最終的に濃度ムラが現れなかった場合に、帯電ギャップが許容範囲を超えていることに起因する感光体2の帯電ムラが生じていないものと判断した(後述する表2で○)。放電部材13の汚れ具合については、上述の基準画像を複数の転写紙に連続して出力しながら、放電部材13の汚れに起因する縦スジ状の濃度ムラの有無をそれぞれの出力画像で確認していき、5万枚の出力を行ってもそれが確認されない場合には、汚れなし(後述する表2で○)と評価した。また、5万枚以下の出力でそれが確認された場合には、汚れあり(後述する表2で×)と評価した。
この実験の結果は、次の表2に示す通りであった。なお、この実験については、室温20[℃]湿度50[%]の環境下で行った。また、帯電ギャップについては、帯電ローラ軸線方向の両端部及び中央部における帯電ギャップをそれぞれ測定した。表2には、それら測定値の最大値と最小値とを示している。
表2の結果から、放電部材13と感光体12との間の間隙である帯電ギャップが15μmを下回ると、トナーによる汚れ具合が急激に悪化し始めることがわかる。よって、帯電ギャップについては、室温10〜32℃の環境下において、温度変化にかかわらず、15μm以上に保たないと、帯電部材13のトナー汚れによる帯電性能の悪化や低寿命化を引き起こし易くなると言える。
また、表2の結果から、帯電ギャップが75μmを上回ると、帯電ギャップが許容範囲を超えたために異常放電が発生することに起因する感光体2の帯電ムラが急激に悪化し始めることがわかる。よって、帯電ギャップについては、室温10〜32℃の環境下において、温度変化にかかわらず、75μm以上に保たないと、帯電ムラを引き起こし易くなると言える。
次に、本発明者らは、帯電ローラ10として、次のようなものを試作した。即ち、まず、基材樹脂100重量部に四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィン系高分子化合物からなるイオン導電剤60重量部を配合して得た樹脂組成物(体積抵抗106Ωcm)を、ステンレスからなる直径9[mm]の主軸部(11b)中央部の全周に渡って、数[mm]の厚みで射出成形した。これにより、主軸部(11b)の中央部に熱可塑性樹脂からなる放電部材(13)を固定した。次に、熱可塑性樹脂が内径9[mm]弱、外径十数[mm]、軸線方向の長さ8[mm]の大きさに成形されたリング状の突き当てコロ(12)を、主軸部(11b)の両端部にそれぞれ圧入及び接着せしめた。そして、このようにして得たローラを、旋盤切削加工機で精密成形した。具体的には、旋盤切削加工により、放電部材(13)を直径11[mm]に切削加工するとともに、突き当てコロ(12)を直径11.09[mm]に切削加工した。このように、主軸部(11b)に対して、放電部材(13)と突き当てコロ(12)との両方を固定してから、それぞれを切削加工してその外径を仕上げることで、旋盤切削加工時の偏心による帯電ローラ10の周方向のギャップ変動を解消することができる。より詳しくは、旋盤切削機では、切削品を完全に真円に加工することができない。ワークを把持するチャックにおける形状精度の限界等により、どうしてもワークを微妙に偏心させた状態で回転させてしまうからである。このように微妙な偏心が生ずる旋盤切削加工を用いて、主軸部(11b)に固定した放電部材(13)を加工して仕上げる一方で、突き当てコロ(12)については旋盤による仕上げ加工を行ってから主軸部(11b)に固定したとする。すると、帯電ローラ10の周方向において、放電部材(13)の偏心位相と、突き当てコロ(12)の偏心位相とが、ずれてしまうため、周方向のギャップ変動が生じてしまう。これに対し、両者をともに主軸部(11b)に固定してからそれぞれの外径を旋盤切削加工で仕上げると、両者の偏心位相を揃えることができるため、旋盤切削加工時の偏心に起因するギャップ変動を解消することができるのである。
このようにして、本発明者らは、放電部材(13)の樹脂材料、及び突き当てコロ(12)の樹脂材料が互いに異なるA〜Mという13種類の帯電ローラ(10)を試作した。これら帯電ローラ(10)の具体的構成は次の通りである。
[ローラA]
まず、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)100重量部に四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィン系高分子化合物からなるイオン導電剤60重量部を混合して得た樹脂組成物(体積抵抗率106Ωcm)を用意した。そして、ステンレスからなる直径9[mm]の軸部材11の周面上で、この樹脂組成物を射出成形して、外径11[mm]の放電部材(13)を得た。次に、この放電部材(13)の両端側にそれぞれ並ぶように、外径が11[mm]を僅かに超えるリング状の突き当てコロ(12)を、軸部材(11)の両端部にそれぞれ圧入及び接着した。なお突き当てコロ(12)としては、ヒドリン(エピクロルヒドリンゴム)からなるものを用いた。また、放電部材(13)の硬度(JIS D)を測定したところ、63[度]であった。
[ローラB]
突き当てコロ(12)として、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)からなるものを用いた他は、ローラAと同様にして作成した。
[ローラC]
突き当てコロ(12)として、HDPE(高密度ポリエチレン)からなるものを用いた他は、ローラAと同様にして作成した。
[ローラD]
突き当てコロ(12)として、PP(ポリプロピレン)からなるものを用いた他は、ローラAと同様にして作成した。
[ローラE]
突き当てコロ(12)として、POM(ポリオキシメチレン=ポリアセタール)からなるものを用いた他は、ローラAと同様にして作成した。
[ローラF]
突き当てコロ(12)として、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)からなるものを用いた他は、ローラAと同様にして作成した。
[ローラG]
まず、ステンレスからなる直径9[mm]の軸部材11の周面上に、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)からなる外径11[mm]の放電部材(13)を形成した。次に、この放電部材(13)の両端側にそれぞれ並ぶように、外径が11[mm]を僅かに超えるリング状の突き当てコロ(12)を、軸部材(11)の両端部にそれぞれ圧入及び接着した。なお突き当てコロ(12)としては、ヒドリン(エピクロルヒドリンゴム)からなるものを用いた。また、放電部材(13)の硬度(JIS D)を測定したところ、44[度]であった。
[ローラH]
突き当てコロ(12)として、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)からなるものを用いた他は、ローラGと同様にして作成した。
[ローラI]
突き当てコロ(12)として、HDPE(高密度ポリエチレン)からなるものを用いた他は、ローラGと同様にして作成した。
[ローラJ]
突き当てコロ(12)として、POM(ポリオキシメチレン=ポリアセタール)からなるものを用いた他は、ローラGと同様にして作成した。
[ローラK]
まず、ステンレスからなる直径8[mm]の軸部材11の周面上に、ヒドリン(エピクロルヒドリンゴム)からなる外径11[mm]の放電部材(13)を形成した。次に、この放電部材(13)の両端側にそれぞれ並ぶように、外径が11[mm]を僅かに超えるリング状の突き当てコロ(12)を、軸部材(11)の両端部にそれぞれ圧入及び接着した。なお突き当てコロ(12)としては、ヒドリン(エピクロルヒドリンゴム)からなるものを用いた。また、放電部材(13)の硬度(JIS D)を測定したところ、33[度]であった。
[ローラL]
突き当てコロ(12)として、HDPEからなるものを用いた他は、ローラKと同様にして作成した。
[ローラM]
突き当てコロ(12)として、ABSからなるものを用いた他は、ローラKと同様にして作成した。
これら13種類の帯電ローラ(10)を上述の改造機に対して順次交換しながら、基準画像を1万枚の転写紙に連続出力した。そして、室温10〜32[℃]までの温度変化に伴う帯電ギャップの変動、放電部材(13)の硬度、突き当てコロ(12)の硬度、及び感光体外観を調べる実験を行った。具体的には、帯電ローラ搭載済みの改造機を室温10℃湿度15%又は室温32℃湿度54%の環境下に12時間以上放置した後、同じ環境下にて帯電ギャップを測定した。なお、室温10〜32[℃]は、画像形成装置における機能保証温度範囲として、一般的に設定される温度範囲である。
硬度については、放電部材(13)や突き当てコロ(12)の材料としての硬度ではなく、それらをJIS K 7215に準拠した硬度計で測定したときの硬度(JIS D)で測定した。
帯電ギャップについては、帯電ローラ(10)の軸線方向における所定の1箇所でなく、放電部材(13)の軸線方向における全領域をくまなく測定した。上述のように帯電ギャップについては15〜75[μm]の範囲に設定する必要がある。但し、環境変動に伴う放電部材(13)や突き当てコロ(12)の硬度変化や体積変化によって帯電ギャップが変動することを考慮すると、15〜75[μm]の中間である40〜50[μm]程度が望ましい。そして、帯電ギャプがその中間を境にして大きくなる側、小さくなる側にそれぞれ変動したり、部材毎のギャップ誤差が生じたりすることを考慮すると、10℃〜32℃の環境変動に伴う帯電ギャップの変動は20[μm]以下であることが望ましい。そこで、10℃〜32℃の環境変動に伴う帯電ギャップの変動が20[μm]以下であったもの、21[μm]以上であったものを、それぞれ、○、×として評価した。
感光体(2)としては、直径30[mm]のアルミニウム素管上に、厚み3.5[μm]の下引き層、厚み0.15[μm]の電荷発生層、厚み[22μm]の電荷輸送層、厚み5[μm]の表面保護層を順次積層したものを用いた。これら層のうち、表面保護層については、スプレー塗工により形成した。また、それ以外の層については浸漬塗工法により形成した。電荷輸送層や表面保護層の主成分であるバインダー樹脂としては、ポリカーボネートを用いた。また、表面保護層のバインダー樹脂には、平均粒径0.3[μm]のアルミナ粒子を全固形分に対して10重量%の割合で添加した。1万枚出力後に感光体(2)の表面を観察して、その痛み具合を、◎(初期状態と同等)、○(僅かな傷が認められる)、×(表面が粗くなって曇りが認められる)の3通りで評価した。
表3の結果から、温度10〜32[℃]の環境変動に伴う帯電ギャップの変動を20[μm]以下に留めるためには、突き当て部材(12)、放電部材(13)ともに、その材料として硬度(JIS D)44度以上のものを用いる必要があると言える。換言すれば、突き当てコロ(12)として硬度(JIS D)が44度以上であるものを用いるとともに、放電部材(13)として硬度(JIS D)が44度以上であるものを用いることで、室温10〜32[℃]の環境下において、温度変動にかかわらず、帯電ギャップを15〜75[μm]の範囲に維持できると言える。
そこで、本実施形態に係るプリンタにおいては、突き当てコロ(12)として硬度(JIS D)が44度以上であるものを用いるとともに、放電部材(13)として硬度(JIS D)が44度以上であるものを用いている。そして、室温10〜32℃の環境下における帯電ギャップを15〜75[μm]の範囲に設定している。かかる構成のプロセスユニットでは、帯電ギャップをこの範囲に維持することができなかった従前の開発中の帯電装置よりも確実に、帯電ギャップの変動による放電部材(13)へのトナー固着や帯電ムラを抑えることができる。
軸部材11の主軸部11bの直径としては、6〜10[mm]程度が望ましい。直径が小さすぎると後述する旋盤切削加工時や感光体2に向けて加圧されるときの撓みが大きくなりすぎて、安定した値の帯電ギャップを維持することが困難になる。また、直径が大きすぎると、近年の小型化や低重量化に対応することが困難になる。
放電部材13については、その体積抵抗を104〜109[Ωcm]に調整することが望ましい。抵抗が低すぎると、微少な抵抗ムラに起因して放電状態が不均一になることから、帯電ムラを発生させ易くなる。また、抵抗が高すぎると十分な放電を起こすことができずに、均一な帯電電位を得ることができなくなり易い。帯電部材の電気抵抗については、基材となる樹脂に対する導電性材料の配合量を変えることで調整することができる。基材となる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート等を用いることができる。これらは何れも熱可塑性樹脂であって成形性が良いので、容易に成形加工することができる。基材となる樹脂に配合する導電性材料としては、イオン導電性材料が好ましい。かかるイオン導電材料を均一に配合することで放電部材13の抵抗ムラを抑えることができる。イオン導電性材料としては、ポリエチレンやポリポリオレフィンのような四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィンが特に好適である。また、イオン導電性材料については、二軸混練機、ニーダー等の手段を用いることにより、樹脂に均一に配合することができる。また、イオン導電性材料と、基材となる樹脂との配合比率としては、樹脂100重量部に対してイオン導電性材料30〜80重量部が望ましい。
放電部材13の厚みについては、本プリンタでは0.5〜2.0[mm]の範囲に設定している。これは次に説明する理由による。即ち、0.5[mm]未満であると成型が困難である上に強度の面でも問題がある。また、2.0[mm]を超えると、帯電ローラ10の大型化を招くうえに、抵抗容量の増大によって帯電効率が低下する。
突き当てコロ12の材質としては、プロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンーエチルアクリレート共重合体、エチレンーメチルアクリレート共重合体、エチレンー酢酸サンビニル共重合体、エチレンープロピレン共重合体、エチレンーヘキセン共重合体等の樹脂を用いることができる。また、放電部材13の基材と同様に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂でもよい。また、摺動性に優れて、感光体2の感光層に損傷を与えにくい樹脂材料として、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を用いることもできる。
本プリンタにおいては、放電部材(13)と突き当てコロ(12)との硬度差(JIS D)を、15度以下に設定している。これは次に説明する理由による。即ち、上述のように、帯電ローラ10の放電部材(13)と突き当てコロ(12)とは、それぞれ軸部材の主軸部(11b)に固定された状態で、一緒に旋盤切削加工される。旋盤切削加工では、ワークの硬度によって適切な加工条件が異なるため、放電部材(13)と突き当てコロ(12)との硬度差が大きすぎると、両者を高精度で加工することが困難となる。本発明者らの実験によれば、その硬度差(JIS D)を15度以下にすることで、硬度差による加工精度の悪化を有効に抑えることができた。
突き当てコロ(12)としては、感光体2よりも低硬度のものを用いている。このようにすることで、感光体2よりも高硬度のものを用いる場合に比べて、感光体2におけるコロ当接部の傷付き、摩耗、凹みを大幅に抑えることができるからである。また、突き当てコロ(12)は、感光体2よりも高硬度であることに加えて、硬度(JIS D)70度以下という条件を具備している。70度以下であることで、一般的な感光体の感光層の損傷をより確実に抑えることができるからである。
本プリンタでは、気温10〜32℃の環境下において、帯電ローラ(10)1回転あたりにおける帯電ギャップの同一温度での変動幅を40[μm]以下に設定している。これは次に説明する理由による。即ち、帯電バイアスについては、感光体(2)を確実に帯電せしめる目的で、帯電ギャップの変動幅における最大値に合わせて設定することになる。かかる設定を行う場合に、変動幅がそれほど大きくない場合にはそれほど支障はないが、変動幅が大きすぎると、帯電ローラ1回転あたりで変動幅が最小値となるときに、帯電バイアスが大きくなり過ぎる。そして、そのときに、過剰な帯電バイアスで感光体(2)を帯電せしめることで、その帯電箇所にトナーの固着によるフィルミングを急激に発生し易くなる。本発明者らの実験によれば、変動幅が40[μm]を超えると、かかるフィルミングを急激に発生させ始めることが確認された。
放電部材(13)と突き当てコロ(12)との組合せについては、それぞれ気温10〜32℃の環境下で、厚みが0.5〜2.0[mm]の範囲になり、且つ、両者の線膨張係数の差が50×10−5[1/℃]以下になるものを用いている。これは次に説明する理由による。即ち、図4に示した構成の帯電ローラ10では、温度変動に伴う帯電ギャップの変動に、様々な要因が関与する。温度変動に伴う突き当てコロ12の硬度変化や、放電部材13及び突き当てコロ12のそれぞれにおける温度変動に伴う径変化などである。このうち、突き当てコロ12の硬度変化については、突き当てコロ12として、硬度(JIS D)44度以上のものを用いることで、ある程度の範囲内に留めることができる。一般に熱可塑性樹脂は、硬度が高くなるほど、温度変化に伴う硬度変化が小さくなるからである。但し、径変化については、樹脂材料の線膨張係数や厚みなどが関与するので、硬度だけでそれを調整するのは困難である。例えば、放電部材13、突き当てコロ12として、互いに同じ線膨張係数の材料からなるものを用いたとしても、両者のもともとの径が互いに異なることにより、両者の温度変化に伴う径変化率は異なってくる。そして、これにより、温度変化に伴って帯電ギャップが変動してしまう。本発明者らは、両者ともに、気温10〜32℃の環境下で、厚みが0.5〜2.0[mm]の範囲になり、且つ、両者の線膨張係数の差が50×10−5[1/℃]以下になるものを用いることで、温度変化に伴う帯電ギャップの変動を有効に抑え得ることを実験によって確認した。
放電部材13と突き当てコロ12との組合せは、線膨張係数の差が50×10−5[1/℃]以下になることに加えて、両者ともに線膨張係数が50×10−5[1/℃]以下であるという条件を具備している。かかる条件を具備させることで、温度変化に伴う帯電ギャップの変動を更に有効に抑え得ることが本発明者らの実験によって確認されたからである。
また、放電部材13と突き当てコロ12との組合せとしては、次の数1で示される関係式を具備するものを用いている。但し、次式において、Rc
10、Rc
30、Rg
10、Rg
30は、それぞれ10℃の環境下における放電部材13の外径、30℃の環境下における放電部材13の外径、10℃の環境下における突き当てコロ12の外径、30℃の環境下における突き当てコロ12の外径を示している。
この式は、放電部材13の気温30[℃]の環境下における直径Rc
30と気温10[℃]の環境下における直径Rc
10との差に対し、突き当てコロ12の気温30[℃]の環境下における直径Rg
30と気温10[℃]の環境下における直径Rg
10との差を減算した値が、20[μm]以下であることを示している。即ち、気温が10℃〜32℃に変化した場合における放電部材13と突き当てコロ12との外径の差が、最大でも20[μm]以下になることを示している。このような条件を具備することにより、温度変動に伴う放電部材13の径変化と突き当てコロ12の径変化とに起因する帯電ギャップの変動を有効に抑えることができる。
また、放電部材13と突き当てコロ12との組合せとしては、突き当てコロ12の線膨張係数が放電部材13の線膨張係数よりも大きいという条件を具備するものを用いている。これは次に説明する理由による。即ち、図4に示した構成の帯電ローラ10では、放電部材13の材質、及び突き当てコロ12の材質の選定により、温度変化の方向と、帯電ギャップの変化の方向との関係を自由に設定することができる。具体的には、高温になるほど帯電ギャップを広くすることも、高温になるほど帯電ギャップを狭くすることも可能である。一方、一般的な樹脂材料は、低温になるほど電気抵抗が高くなるので、それに印加されるバイアス値が一定である場合には、低温になるほどその表面電位が小さくなる。すると、放電部材13であれば、低温になるほど放電を起こし難くなる。これは、低温になるほど、帯電能力が低下することを意味している。そこで、本プリンタでは、低温になるほど、帯電ギャップを小さくして、電気抵抗の上昇による帯電能力の低下を、帯電ギャップの狭小化によって相殺して、温度変化に伴う放電部材13の電気抵抗の変化に起因する帯電能力のバラツキを抑えるようにしている。より詳しくは、突き当てコロ12は、放電部材13よりも厚みが大きい。このような突き当てコロ12として、その線膨張係数が放電部材13よりも大きいものを用いると、帯電ギャップが低温になるほど小さくなるのである。
なお、線膨張係数については、JIS K 7197に準じた方法で測定でもよいし、仕上げ加工後の帯電ローラ10の放電部材11や突き当てコロ12の外径を温度毎に測定して割り出してもよい。
突き当てコロ12としては、ローラ軸線方向における感光体2との当接長さの総和が6〜18[mm]になるものを用いている。本プリンタでは、突き当てコロ12として、互いに軸線方向における長さが同じであるものを2つ用いているので、1個あたりの長さは3〜9[mm]である。このように当接長さを調整したのは次の理由による。即ち、感光体2の突き当てコロ12との当接部にかかる単位長さあたりの圧力は、突き当てコロ12の感光体2に対する加圧力と、当接長さの総和とによって決まる。同じ加圧力であっても、当接長さの総和が小さくなるほど、当接部にかかる単位長さあたりの圧力を大きくなる。本発明者らの実験によれば、当接長さの総和を6[mm]未満にすると、当接部にかかる単位長さあたりの圧力による感光体表面の損傷を急激に進行させることが確認された。感光体2における突き当てコロ12との当接箇所は、絶縁性の感光層が被覆されているが、感光体表面の損傷が急激に進行すると、感光層が摩耗により失われて下地の導電性材料が露出する。すると、感光層の電荷が露出した導電性材料にリークして良好な帯電が行われなくなってしまう。そこで、当接長さの総和を6[mm]以上にして、感光層の摩耗の進行を抑えているのである。なお、感光体2における突き当てコロ12との当接部は、当然ながら、感光体2の非画像形成領域である必要がある。当接長さの総和を18[mm]よりも大きくすると、感光体2や帯電ローラ10を過剰に長くしなければならず、装置の小型化を阻害してしまう。
また、突き当てコロ12としては、表面摩擦係数が0.3以下であるものを用いている。かかる突き当てコロ12を用いることで、突き当てコロ12との摺擦による感光体2表面の摩耗を抑えるとともに、両者の摩擦による回転速度変動を抑えることができる。なお、ここで言う表面摩擦係数とは、オイラーベルト方式により算出した静止摩擦係数を意味する。本来は感光体2に対する摩擦係数を求めるべきであるが、感光体表面の摩擦係数によって測定値が影響を受けてしまうため、感光体2ではなく、PETフィルムに対する摩擦係数を測定する。より詳しくは、測定用の軸線方向の長さが5[mm]の突き当てコロ12を端部に1つずつ設けた帯電ローラ10を台座に固定する。そして、長さ297[mm]にカットしたPETフィルム(リコー製OHPフィルムTypeST)を感光体2の上に乗せる。次に、PETフィルムの一端部に重さ100gの分銅を取り付け、もう一端部にはデジタルフォースゲージに取り付ける。そして、デジタルフォースゲージを一定速度で移動させた際の移動開始時の荷重から、次式に基づいて静止摩擦係数μsを算出する。
感光体2に対する突き当てコロ12の加圧力については、0.05/g〜0.2/g[N/mm]に設定している(但し、gは重力加速度:9.80665)。これは、50〜200g[gf/mm]に相当する。かかる設定にしたのは、次に説明する理由による。即ち、加圧力が50/g[N/mm]を下回ると、感光体2の回転力によって帯電ローラ10が加圧方向とは反対方向に押される力に打ち勝って良好に加圧されることが困難になり、突き当てコロ12の跳ね返りが発生し易くなる。また、加圧力が0.2/g[N/mm]を上回ると、過剰な当接圧力によって感光体2や帯電ローラ10のスムーズな回転を阻害してしまう。
また、放電部材13としては、上述した基材樹脂による下地層(基層)の上に、この基材樹脂よりもトナーとの付着力が小さい物質からなる表面層を被覆した多層構造のものを用いている。基層の外径を旋盤切削加工によって仕上げた後、その基層の表面に表面層の前駆体材料をスプレー塗布して、表面層を形成している。かかる構成では、基材樹脂による下地層をむき出しにしている場合に比べて、放電部材13のトナー汚れを抑えることができる。表面層の形成方法としては特開2003−76116号公報に開示されている方法を用いることができる。具体的には、アクリル骨格と、ポリシロキサン成分を含有するセラミックハイブリッド材料と、硬化剤と、導電性微粒子とを有機溶剤に分散させた塗料を作成し、スプレー塗工やディッピングにより基層表面にコーティングした後、加熱処理により硬化させるのである。硬化剤としては、イソシアネート系の材料を用いることができる。また、導電性微粒子としては、酸化スズのような導電性金属酸化物やカーボンブラック等の材料を用いることができる。表面層の厚さが薄すぎる場合には、放電部材13の表面を均一に被覆することが困難になり、厚すぎる場合には長時間の加熱処理が必要になることから、表面層の厚みについては5〜20μmにすることが望ましい。
なお、突き当てコロ12として、下地層に表面層を形成したものを用いることは好ましくない。突き当てコロ12は、感光体2と摺擦するため、薄厚の表面層が剥離し易く、剥離してしまうと帯電ギャップを変動させてしまうからである。従って、放電部材13の基層に表面層の前駆体材料をスプレー塗布する際には、突き当てコロ12をマスキングして、放電部材13のみにその前駆体材料を付着させるようにする。
また、放電部材13と突き当てコロ12との組合せとしては、次のようなものを用いている。即ち、気温10〜32[℃]の環境下における両者の厚み方向の段差が40〜60[μm]であり、且つ、同環境下における放電部材13の軸線方向の真直度が20[μm]以下であるものである。かかる構成の組合せを用いることで、帯電ギャップを15〜75[μm]の範囲に容易に収めることが可能になる。なお、真直度とは、被検対象の表面の真っ直ぐさを示す指標であり、次のようにして測定することができる。即ち、東京光電子工業社製の自動ローラ測定器RSV640PC型に、被検対象となるローラを平行にセットする。ここで言う平行にセットするとは、測定器がつくり出す基準線に対し、ローラ表面の一端と、もう一端との距離が同じになるようにセットすることである。このようにセットしたら、ローラ軸線方向において、10[mm]間隔でローラ表面と基準線との距離を順次測定していく。次に、ローラを90°回転させて、同様の測定を行う。かかる測定を、0°、90°回転、180°回転、270°回転の4回行った後、全ての測定結果に基づいて、測定器に真直度を求めさせる。
また、放電部材13及び突き当てコロ12としては、それぞれ熱可塑性樹脂からなるものを用いている。熱可塑性樹脂は非常に成形し易い材料なので、放電部材13や突き当てコロ12を容易に成形することができる。また、成形後の突き当てコロ12、放電部材13として、それぞれ44度以上という高硬度のものを容易に得ることができる。
また、本プリンタでは、放電部材13として、その基層及び表面層が導電性樹脂からなるものを用いるとともに、突き当てコロ12として、絶縁性樹脂からなるものを用いている。放電部材13として、基層及び表面層が導電性樹脂からなるものを用いることで、軸部材11に印加した帯電バイアスを放電部材13に導通せしめて、放電部材13から放電を生じせしめることができる。また、突き当てコロ12として、絶縁性樹脂からなるものを用いることで、帯電バイアスの印加による突き当てコロ12の表面電位上昇を阻止して、かかる表面電位上昇によって感光体2上のトナーを突き当てコロ12に静電移動させてしまうといった事態を回避することができる。
また、放電部材13と突き当てコロ12との組合せとしては、次のようなものを用いている。即ち、突き当てコロ12の電気抵抗が1×109[Ωcm]よりも高く、放電部材13の電気抵抗が1×109[Ωcm]よりも低く、且つ、突き当てコロ12の電気抵抗値を放電部材13の電気抵抗値で除算した値が1×105よりも小さいものである。このような条件を具備することで、放電部材13に対して良好な帯電性能を発揮させるとともに、突き当てコロ12からの放電を確実に防止することができる。
突き当てコロ12については、そのリング状の内円部を軸部材11の主軸部11bに対して圧入するだけでなく、接着剤によって主軸部11bに接着して、4/g[N・cm](4kgf・cmに相当)以上の耐トルクで固定している。このようにすることで、固定後の突き当てコロ12を旋盤切削加工する際に、突き当てコロ12の主軸部11b上でのスリップによる突き当てコロ12と放電部材13との偏心位相ズレを回避することができる。
図7は、本プリンタの感光体2を部分的に示す拡大縦断面図である。同図において、感光体2は、アルミ等の金属の素管からなる導電性支持体2a上に、感光層2bと、表面保護層eとが被覆されている。感光層2bは、導電性支持体2a側から、電荷発生層2cと電荷輸送層2dとに分けられる。なお、図8に示すように、電荷発生層2cと電荷輸送層2dとの位置関係を逆にしてもよい。また、導電性支持体2aと感光層2bとの間に図示しない下引き層を設けてもよい。
導電性支持体2aとしては、体積抵抗で104[Ωcm]以下の導電性を発揮するアルミニウムやステンレス等の金属管を用いることができる。また、ニッケル等の金属をエンドレスベルト状に加工したものでもよい。
上記下引き層の材料としては、樹脂を主成分とするものを用いることができる。但し、樹脂を溶剤に溶解した材料を下引き層の上に塗布して感光層2bを形成する場合には、下引き層の樹脂として、有機溶剤に対して高い耐溶解性を発揮するものを用いることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、アルキッド−メラミン、エポキシ等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
上記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、等の金属酸化物の微粉末を加えてもよい。適当な溶媒に溶解した樹脂を導電性支持体2a上に塗工することで、下引き層を形成することができる。なお、下引き層の厚みとしては、0〜5[μm]程度が好ましい。
電荷発生層2cは、電荷発生材料を主成分とする層である。電荷発生材料としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、フタロシアニン系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生材料を、ポリカーボネート等のバインダー樹脂とともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン等の溶媒中に分散せしめ、その分散液を塗布することで、電荷発生層2cを形成することができる。分散液の塗布については、浸漬塗工法やスプレーコート等によって行うことができる。電荷発生層2cの厚みとしては、0.01〜5[μm]程度が好ましい。
電荷輸送層2dについては、電荷輸送材料及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、トルエン、ジクロルエタン等の適当な溶剤に溶解又は分散せしめ、その液を塗布、乾燥することで形成することができる。その厚みとしては、15〜40[μm]程度が好ましい。電荷輸送材料のうち、低分子電荷輸送材料には、電子輸送材料と正孔輸送材料とがある。
電子輸送材料としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド等の電子受容性物質が挙げられる。また、正孔輸送材料としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。
電荷輸送材料と共に電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリル、エポキシ、メラミン、フェノール等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
表面保護層2eとしては、バインダー樹脂中に金属酸化微粒子を分散せしめたものを用いることができる。バインダー樹脂としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル、フェノール、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ等の樹脂を例示することができる。また、バインダー樹脂を溶解又は分散せしめる溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロルエタン等を例示することができる。また、バインダー樹脂中に分散せしめる金属酸化微粒子としては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等を例示することができる。かかる金属酸化微粒子を分散せしめることで、優れた耐摩耗性を発揮させて、帯電ローラ(10)の突き当てコロ12との当接部の長寿命化を図ることができる。
表面保護層2eに含有せしめる上述の金属酸化物粒子の添加量としては、5〜40%、好ましくは、8〜30%が適当である。添加量が5%未満では、耐摩耗性が急激に低下し始め、40%を越えると、露光時における明部電位の上昇が著しくなって、感度低下が無視できなくなってしまう。また、金属酸化物粒子の粒径としては、0.1〜0.8[μm]が適当である。0.8[μm]を超えると、表面保護層2eの凹凸が大きくなってクリーニング性が低下することに加えて、露光のための光を散乱させて解像力の低下をきたすために、画像品質を低下させてしまう。また、0.1[μm]未満だと、優れた耐摩耗性を得ることができなくなる。
表面保護層2eについては、スプレーを用いた塗布等によって形成することが可能である。その厚みとしては、1〜10μm、好ましくは3〜8μm程度が適当である。薄すぎると耐久性に劣り、保護層の膜厚を厚くしすぎると感光体生産時の生産性が低下するだけでなく、経時での残留電位の上昇が大きくなってしまう。
表面保護層2eとしては、バインダー樹脂に金属酸化物粒子を分散させたものに代えて、特開2000−275877号公報に開示されているような架橋性樹脂からなるものを用いても、優れた耐久性を発揮させることができる。かかる架橋性樹脂としては、同公報に開示されているシロキサンだけでなく、光架橋性(光硬化性)樹脂や、熱架橋性(熱硬化性)樹脂を用いてもよい。
表面保護層2eに用いるバインダー樹脂には、耐摩耗性を更に向上させる目的で、潤滑剤を分散せしめてもよい。かかる潤滑剤としては、フッ素樹脂粒子を例示することができる。より詳しくは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等である。これらのフッ素樹脂の添加量としては、全固形分に対する含有率で20〜60重量%が望ましい。20重量%未満では潤滑性の改善効果が小さく、60重量%を越えると膜の強度が低下してしまう。また、フッ素樹脂の粒径としては0.1〜2[μm]が適当である。
また、表面保護層2eに用いるバインダー樹脂には、上述の金属酸化物粒子や潤滑剤粒子の分散性を向上させるために分散助剤を添加してもよい。一般の塗料等に使用されるものでよい。
また、表面保護層2eには、電荷輸送材料を添加することも可能であり、さらに酸化防止剤も必要に応じて添加することができる。
感光体(2)としては、そのドラム軸線方向における潜像形成領域だけでなく、非潜像形成領域にも感光層2bを被覆したものを用いている。具体的には、本プリンタの感光体(2)では、その軸線方向における、帯電ローラ(10)の突き当てコロ(12)との当接領域については、コロとの当接による感光層2bの劣化が生ずるので、潜像形成領域とすることは望ましくない。このため、コロとの当接領域よりも中央寄りの領域を潜像形成領域とし、当接領域については潜像を形成しない非潜像形成領域としている。潜像を形成する潜像形成領域については、本プリンタでは、最大でA3サイズの用紙を縦方向(長手方向)に搬送しながら画像を形成するようになっているので、少なくともA3サイズ紙の短手方向の長さよりも大きくしている。この潜像形成領域には、感光層2bを形成する必要があるが、コロと突き当たる非潜像形成領域については感光層2bを形成する必要は必ずしもない。しかしながら、非潜像形成領域に感光層2bを形成しない場合、そのままだと、導電性支持体2aがむき出しになる。そして、帯電ローラ(10)の放電部材(13)からの放電が、絶縁性の感光層2bよりもむき出しの導電性支持体2aに向けて飛んでしまうので、感光層2aの代わりに何らかの絶縁層を設ける必要が出てくる。すると、導電性支持体2aの軸線方向の中央部(潜像形成領域)については感光層2bを被覆する一方で、両端部(非潜像形成領域)については別の絶縁層を被覆することになる。このような層構造のものでは、中央部、両端部を全て感光層2bにする場合に比べて、層形成工程が増えるので、製造コストが高くなる。加えて、潜像形成領域の感光層2bと、その両端側の非潜像形成領域の絶縁層との間に繋ぎ目が発生して、その繋ぎ目の箇所が弱くなってしまう。そこで、本プリンタでは、非潜像形成領域にも感光層2bを形成して、そこに突き当てコロ(12)を突き当てるようになっている。
帯電ローラ(10)の軸部材(11)に帯電バイアスを供給するバイアス供給手段たる図示しない電源としては、次のようなものを用いている。即ち、直流バイアスに交流バイアスを重畳した帯電バイアスを供給するものである。しかも、その交流バイアスとして、周波数[Hz]が、感光体(2)の線速[mm/sec]の7倍よりも大きく且つ12倍よりも小さいものを重畳するものである。このような帯電バイアスを採用したのは、次のような理由による。即ち、交流バイアスの周波数が感光体の線速の7倍以下になると、ストライプ状の帯電ムラが急激に目立ってしまう。また、周波数が感光体の線速の12倍以上になると、過剰な放電が発生し、感光体の摩耗量を増大させたり、感光体にトナーやトナー外添剤のフィルミングが発生し易くなってしまう。
なお、直流バイアスに交流バイアスを重畳する場合に、直流バイアスを定電流制御とすると、環境によるローラ抵抗の変動を受け難くすることができる。但し、帯電ローラ(10)の放電部材(13)と感光体(2)とを非接触に配置している本プリンタのような構成では、感光体や帯電ローラの回転に伴って帯電ギャップが変動するため、定電流制御では高圧電源が帯電ギャップ変動に追従しきれず異常画像が発生することがある。このため、交流バイアスについては、定電圧制御とすることが望ましい。交流バイアスは、ローラ抵抗の環境変動や、帯電ギャップの大きさによって変動するので、交流電流を検知可能とし、非画像形成時に交流電流をモニタしながらAC電圧を調整することで適正なAC電圧に設定することができる。
以上、本プリンタにおいては、感光体(2)として、感光層(2b)の電荷輸送層(2d)の厚みが20〜35[μm]であるという本発明者の行った実験に使用したものと同じ条件のものを用いているので、金属体(アルミニウムドラム)を用いた静電容量C1の測定結果に基づいて感光体帯電ムラの発生性を正確に評価することができる。
また、帯電装置が、感光体(2)に突き当たる突き当て部材たる突き当てコロ(12)と、感光体(2)に所定の帯電ギャップを介して対向する放電部材(13)とを回転可能な軸部材に対してその回転方向の全周に渡って固定した回転部材たる帯電ローラ(10)を有し、感光体(2)と突き当てコロ(12)との突き当たりによって帯電ギャップを維持する。かかる構成では、上述した理由により、放電部材(13)よりも肉厚の突き当てコロ(12)を、圧入、接着、積層等の方法によって軸部材(11)にしっかりと固定することが可能になるので、突き当て部材の剥がれによる耐久性の低下を抑えることができる。
また、突き当てコロ(12)を導電性ゴムからなる比較的柔らかい下地ではなく、剛性の高い軸部材(11)に固定しているので、高温の環境下で柔らかくなりすぎた下地に突き当て部材を大きく食い込ませるといった事態を回避する。これにより、下地に対する突き当て部材の食い込みに起因する上記ギャップの変動を解消することで、上述した特許文献1に記載の帯電装置よりも確実に、帯電ギャップの変動による放電部材(13)へのトナー固着や帯電ムラを抑えることができる。
また、突き当てコロ(12)として、収縮後の厚み偏差の調整が困難な熱収縮チューブではなく、硬質プラスチックなどといった厚み偏差の調整が容易な材料からなるものを用いることが可能になる。このため、突き当てコロ(12)として熱収縮チューブからなるものを用いていた同特許文献2に記載の帯電装置よりも確実に、帯電ギャップの変動による放電部材へのトナー固着や帯電ムラを抑えることができる。
また、本プリンタでは、突き当てコロ(12)として硬度(JIS D)が44度以上であるものを用いるとともに、放電部材(13)として硬度(JIS D)が44度以上であるものを用い、軸部材(11)に固定した放電部材(13)を間に挟み込ませるように、突き当てコロ(12)を軸部材(11)の軸線方向の両端部又は両端付近にそれぞれ固定し、気温10〜32℃の環境下における上記ギャップを15〜75[μm]の範囲に設定している。かかる構成では、上述した理由により、気温10〜32℃の環境下において、気温にかかわらず帯電ギャップを15〜75[μm]の範囲に維持することが可能になる。よって、帯電ギャップをこの範囲に維持しない場合よりも確実に、帯電ギャップの変動による放電部材(13)へのトナー固着や帯電ムラを抑えることができる。
また、軸部材(11)の表面上における放電部材(13)の厚みが0.3〜2.0[mm]であるので、放電部材(13)の周方向の厚み偏差による帯電ギャップ変動を抑えつつ、帯電ローラ(10)の大型化を抑えることができる。
また、突き当てコロ(12)、放電部材(13)の材料として、それぞれ熱可塑性樹脂を用いているので、それぞれを容易に成形することができる。
また、突き当てコロ(12)の材料として、絶縁性樹脂を用いるとともに、放電部材(13)の材料として導電性樹脂を用いているので、軸部材(11)に印加した帯電バイアスを放電部材(13)に導通せしめて放電部材(13)から放電を生じせしめつつ、帯電バイアスの印加による突き当てコロ(12)の表面電位上昇を阻止して、かかる表面電位上昇によるコロへのトナー付着を回避することができる。
また、潜像担持体として、金属基体たるアルミニウム素管の表面に感光層(2b)と表面保護層(2e)とを被覆した感光体を用いているので、表面保護層(2e)により、突き当てコロ(12)の押圧による感光層(2b)の劣化を抑えることができる。
また、感光体(2)として、その表面移動方向と直交する方向における潜像形成領域だけでなく、同方向における非潜像形成領域にも感光層(2b)を被覆したものを用い、突き当てコロ(12)を、非潜像形成領域の感光層(2b)の上に突き当てているので、非潜像形成領域に感光層(2b)を形成しない場合に比べて、感光体(2)の層形成工程を減らして製造コストを低減することができる。更には、潜像形成領域の感光層(2b)と、その両端側の非潜像形成領域の絶縁層との間に繋ぎ目を発生させることによる感光体(2)の耐久性の低下を回避することができる。
また、感光体(2)の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段たるブラシローラ(3)を設けているので、潤滑剤の塗布によって感光体(2)表面からのトナー離型性を向上せしめて、感光体(2)から転写紙へのトナー転写性を向上させることができる。
また、バイアス供給手段たる帯電バイアスの電源として、直流バイアスに交流バイアスを重畳した帯電バイアスを供給するものであって、交流バイアスの周波数[Hz]が感光体(2)の線速[mm/sec]の7倍よりも大きく且つ12倍よりも小さいものを用いるので、交流バイアスの周波数が小さすぎることに起因するストライプ状の帯電ムラを回避するとともに、周波数が大きすぎることに起因する感光体の摩耗量の増大やフィルミング発生を回避することができる。
また、バイアス供給手段たる帯電バイアスの電源として、交流バイアスを定電流制御するものを用いているので、温度変化に伴う放電部材(13)の電気抵抗の変動にかかわらず、放電部材(13)の表面電位を一定にして安定した帯電性能を発揮させることができる。