JP2006103232A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 安定して高画質な画像を記録することが可能で、かつ、安価なインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】 画像が記録される記録媒体を載置する絶縁性載置部を有し、該絶縁性載置部上に載置された記録媒体を搬送する搬送手段と、搬送手段と対向する位置に配設され、画像信号に応じてインクに静電力を作用させてインク液滴を記録媒体に吐出する吐出部を有するインクジェットヘッドと、前記記録媒体および前記インクジェットヘッドが画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、吐出部に強電界を形成する強電界発生手段とを有し、強電界発生手段は、帯電手段と該帯電手段によって帯電されることにより記録媒体および絶縁性載置部よりも強い電界強度を吐出部に与える強電界形成部とを有すること。
【選択図】 図1

Description

本発明は、静電式インクジェット記録方式の分野に属し、より詳しくは、静電力によりインクを吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
静電式インクジェット記録方式は、画像信号に応じてインクに静電力を作用させてインク液滴を吐出させて記録媒体に画像を形成する方式であり、ヘッド構造が簡易でマルチチャンネル化しやすい、微液滴形成が可能であり、高解像力描画が可能であるという特徴を有する。このような静電式インクジェット記録方式としては、例えば、特許文献1にインク流路内での荷電粒子を電気泳動させて開口付近のインク濃度を増加させ、吐出を行うインクジェット記録方法に関し、主に記録媒体または記録媒体背面に配置された対向電極に起因する静電吸引力によりインク滴の吐出を行うインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置が開示されている。
図10は、特許文献1に開示されたマルチチャンネルインクジェットヘッドの構成を示す概略構成図で、記録ドットに対応した吐出電極の断面を示している。同図において油性インクQはポンプを含む循環機構211から、ヘッドブロック201に接続されたインク供給流路212を通して、ヘッド基板202と吐出電極基板203間に供給され、同じくヘッドブロック201に形成されたインク回収流路213を通してインク循環機構211に回収される。この吐出電極基板203は、貫通孔207を有する絶縁性基板204と、この貫通孔207の周囲で記録媒体P側に形成されている吐出電極209とから構成されている。
一方ヘッド基板202上には凸状インクガイド208が前記貫通孔207の略中心位置に配置されている。この凸状インクガイド208はプラスチック樹脂、セラミックスなど絶縁性部材からなり、前記貫通孔207と中心が等しくなるように同じ列間隔、ピッチで配置され、所定の方法でヘッド基板202上に保持されている。各凸状インクガイド208は厚みが一定の平板の先端を三角形あるいは台形状に切り出した形状で、その先端部がインク滴飛翔位置210となる。インクガイド208と貫通口207の内壁面との間にはインクメニスカスが形成される。凸状インクガイド208の先端に対向して搬送ベルト222上に記録媒体221が配置されている。またヘッド基板202と吐出電極基板203間によって形成される空間の底部には泳動電極205が形成されている。
このようなインクジェットヘッドは、記録時には、インク循環機構211からインク供給流路212を経て供給されたインクQは貫通孔207から凸状インクガイド208の先端のインク飛翔位置210に供給されると共に、一部はインク回収流路213を経てインク循環機構211に回収される。ここで、吐出電極209には信号電圧源223からの画像信号に応じた信号電圧として例えばON時に+500Vのパルス電圧が印加される。この際、泳動電極205は+300Vの電圧が印加されている。一方、記録媒体221はコロナ帯電手段により電圧−1.7kVに帯電されている。今、吐出電極209がON状態(500Vが印加された状態)となると、凸状電極208先端のインク滴飛翔位置210から、インク滴Rが飛び出し、該記録媒体Pに向けて飛翔して画像を形成する。
特開2004−82689号公報
特許文献1に開示のインクジェット記録装置は、インクの吸収による紙の滲みがなく、記録媒体の制約が少なく、種々の記録媒体に画像を記録することができる。
さらに、着色粒子は高濃度化して吐出され、滲みのない高濃度で鮮明な画像が形成され、インクジェット専用紙のみならず通常のオフセット印刷用紙あるいはプラスチックフィルム、印刷用刷版等に画像形成した場合にも解像力の高い画像を形成することができる。
しかしながら、特許文献1に開示の静電式のインクジェット記録装置は、上記のような優れた特徴を有する反面、吐出履歴により吐出時に吐出口に形成されるインクメニスカス状態が変化し、形成されるドット径が変化してしまう、つまり、インク液滴の吐出特性には吐出周波数依存性(吐出頻度依存性)があり、吐出部毎の吐出頻度によって吐出特性が変化することがあるという問題がある。
このように吐出特性が不安定になると、記録媒体に形成される画像が一定にならず、高画質な画像を形成することができないという問題もある。
このような問題は、吐出履歴により吐出信号を制御することで解決する方法もあるが、このような方法では、ドライバが複雑になり高価になってしまうという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、静電式インクジェット記録において、安定して高画質な画像を記録することが可能で、かつ、安価なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、画像が記録される記録媒体を載置する絶縁性載置部を有し、該絶縁性載置部上に載置された前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段と対向する位置に配設され、画像信号に応じてインクに静電力を作用させてインク液滴を前記記録媒体に吐出する吐出部を有するインクジェットヘッドと、前記記録媒体および前記インクジェットヘッドが画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、前記吐出部に強電界を形成する強電界発生手段とを有し、前記強電界発生手段は、帯電手段と該帯電手段によって帯電されることにより前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも強い電界強度を前記吐出部に与える強電界形成部とを有することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
ここで、前記強電界形成部が、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも絶縁性の高い部材であることが好ましい。
また、前記強電界形成部が、前記搬送手段の少なくとも一部に設けられた、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも絶縁性の高い部材であることが好ましい。
または、前記強電界形成部が、前記搬送手段の少なくとも一部に設けられた、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも前記インクジェットヘッド側に突出した凸部であることが好ましい。
さらに、前記帯電手段が、前記記録媒体および前記絶縁性載置部の少なくとも一方を帯電させ、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも強い電界強度を吐出部へ与えるように帯電させるものであることが好ましい。
さらに、前記搬送手段が、画像が記録される記録媒体を載置する前記絶縁性載置部としての絶縁層を有するとともに、該絶縁層上に載置された前記記録媒体を搬送する搬送ベルトを備えたものであることが好ましい。
また、前記インクジェットヘッドは、インク液滴を吐出させる吐出口と、前記吐出口を通過して、その先端部分が前記吐出口の開口面よりも記録媒体側に突出するインクガイドとを有することが好ましい。
また、前記インクジェットヘッドは、前記吐出口が開口された吐出口基板と、前記吐出口基板と所定間隔離間して配置され、前記吐出口基板との間にインク流路を形成し、前記吐出口基板側の表面の前記吐出口の配置に対向する位置に前記インクガイドが形成されたヘッド基板と、前記吐出口基板の前記吐出口周りに配置され、前記吐出口からのインク液滴の吐出を制御する吐出電極とを有することが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様は、搬送手段によりインクジェットヘッドに対向する位置に搬送された記録媒体に、前記インクジェットヘッドが画像信号に応じてインクに静電力を作用させて吐出部から前記記録媒体にインク液滴を吐出させることにより前記記録媒体に画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記記録媒体および前記インクジェットヘッドが画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、前記インクジェットヘッドと対向する位置に前記記録媒体よりも強い電界強度を前記吐出部へ与える強電界形成部を通過させることを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
本発明によれば、記録媒体およびインクジェットヘッドが画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、強電界形成部により吐出部に強電界を形成することで、記録媒体に画像の記録を開始する直前の各吐出部の状態を吐出履歴に関わらず一定にすることができ、吐出特性を一定にすることができる。これにより、描画の安定性を高くすることができ、高画質な画像を安定して形成できる。
また、吐出信号の制御を行うことなく吐出特性を一定にすることができるので、簡単なドライバでインク液滴の吐出を安定して制御することができ、安価なインクジェット記録装置を提供することができる。
以下に、本発明に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を、添付の図面に示される好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明の第2の態様のインクジェット記録方法を実施する第1の態様のインクジェット記録装置の一例を概念的に示す。
図1に示したインクジェット記録装置(以下、記録装置10という)10は、色材を含む帯電した微粒子(以下、色材粒子とする)を絶縁性のキャリア液(分散媒)に分散してなるインクQを用い、このインクに静電力を作用させることによりインク液滴を吐出し、記録媒体Pに画像を記録する画像記録装置である。記録装置10は、基本的に、記録媒体Pをその表面に止着する移動可能な搬送ベルト20と該搬送ベルト20を駆動させるベルトローラ22、24とを有する所定の経路で記録媒体Pを搬送する搬送手段12と、記録媒体Pおよび搬送ベルト20の少なくとも一方を所定電位に帯電させる帯電手段14と、インクに静電力を作用させてインク液滴を吐出させる吐出ヘッド(インクジェットヘッド)16と、搬送ベルト20および記録媒体Pよりも強い電界強度を吐出ヘッド16の吐出部に与える強電界形成部18とを有する。
なお、図1は、本発明の特徴的な部位を主に示しているが、本発明の記録装置10は、図に示した搬送手段12、帯電手段14、吐出ヘッド16、強電界形成部18以外にも、例えば、吐出ヘッド16を駆動してインク液滴を吐出させるドライバ、帯電した記録媒体P、搬送ベルト20および強電界形成部18の少なくとも1つを除電する除電手段、吐出ヘッド16へのインクの供給および吐出ヘッド16で使用されたインクの回収等を行う循環手段、搬送される記録媒体Pを検出するセンサ、装置内に滞留するキャリア液等を回収する溶媒回収手段など、公知の静電式のインクジェット記録装置が有する各種の構成要素を有しているのは、もちろんのことである。
また、本発明のインクジェット記録装置は、K(黒)のみなどの1色の画像記録を行うモノクロの記録装置であってもよく、また、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、およびKの4色のインクを用いて、記録媒体にフルカラー画像を記録する記録装置であってもよい。
ここで、本発明のインクジェット記録装置に用いられる記録媒体Pとしては、通常記録媒体として用いられる印刷用紙である上質紙、微コート紙、コート紙が挙げられる。また、表面に樹脂フィルム層を有する、例えばポリオリフィンラミネート紙、およびプラスチックフィルム、例えばポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリオレフィンフィルム等も使用できる。さらに、表面に金属が蒸着されたり、又は金属箔が張り合わされたプラスチックフィルム、加工紙、印刷用刷版等も使用できる。勿論、インクジェット用の専用紙、専用フィルムも使用できる。
図1に示すように、搬送手段12は、搬送ベルト20とベルトローラ22、24とを有する。
搬送ベルト20は、記録媒体Pをその表面に載置させ、所定方向に搬送させるものである。搬送ベルト20は、リング状のエンドレスベルトであり、ベルトローラ22、24によって張架されている。搬送ベルト20は、絶縁層30および導電層32から構成されており、絶縁層30は記録媒体Pと接触する側の面(表面)に設けられ、導電層32は、絶縁層30の記録媒体Pと接触する側の面と逆側の面、つまりベルトローラ22、24と接触する面(裏面)に設けられている。
絶縁層30は、絶縁性を有する材料、例えばポリイミド樹脂、または、フッ素樹脂で構成される。なお、フッ素樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、3フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)が例示される。
ここで、絶縁層30は、固有体積抵抗率を1014Ω・cm以上とすることが好ましい。固有体積抵抗率を上記範囲とすることで、記録媒体Pを安定して止着させることができる。
また、絶縁層30の厚みは、10μm〜500μmとするのが好ましく、絶縁層30の表面粗さは、平均表面粗さRa≦20μmであることが好ましい。絶縁層30の厚みおよび表面粗さを上記範囲とすることで、優れた電荷保持性と耐久性を得ることができる。
導電層32は、導電性を有する材料、例えば柔軟性金属、具体的にはステンレス薄膜等で構成される。
導電層32の厚みは、10μm〜200μmとすることが好ましい。導電層32の厚みを上記範囲とすることで、搬送ベルトを優れた電荷保持性と耐久性を得ることができる。
搬送ベルト20の作成方法は特に限定されず、金属の導電層上に上記樹脂をコーティングすることで形成する方法、接着剤等で樹脂シートを張り合わせる方法、または、絶縁層の裏面に蒸着等により金属層(導電層)を設ける方法等により作成することができる。
ベルトローラ22、24は、上述したように搬送ベルト20を張架している。ベルトローラ22、24のうち少なくとも1つは、図示していない駆動源に接続されており、記録時には、所定の速度で回転駆動される。これにより、搬送ベルト20を図中時計回りに回転させる。
また、ベルトローラ22は接地されている。これにより、ベルトローラ22と接している導電層32の電位は基準電位0Vに保持される。
帯電手段14は、搬送ベルト20の絶縁層30側の面、つまり記録媒体Pが載置される面と対向して配置され、スコロトロン帯電器40と、高圧電源42とを備える。スコロトロン帯電器40は、搬送ベルト20の絶縁層30側の面に対向する位置に配置されている。また、スコロトロン帯電器40は、高圧電源42の負側の端子に接続されており、高圧電源42の正側の端子は接地されている。
帯電手段14は、高圧電源42に接続されたスコロトロン帯電器40のグリット電極の電位を制御することにより、記録媒体Pおよび/または搬送ベルト20の絶縁層32の表面を所定の電位に均一に帯電させる(本実施例では負の高電位)。ここで、上述のように搬送ベルトの導電層32の電位は基準電位に保持されている。これにより、記録媒体Pおよび絶縁層30に帯電された電位が安定する。
ここで、本実施形態では、帯電手段としてスコロトロン帯電器を用いたが、本発明はこれに限定されず、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針などの種々の帯電手段を用いることができる。
吐出ヘッド16は、画像信号に応じてインク液滴を吐出させ、記録媒体Pに画像を形成するものであり、帯電手段よりも記録媒体Pの搬送方向下流側(図1中右側)の搬送ベルト20に対向する位置に配置される。
図2(A)に、吐出ヘッドの概略構成の断面を模式的に示し、図2(B)に、図2(A)のIIB−IIB線矢視図を示す。図2(A)に示すように、吐出ヘッド16は、ヘッド基板72と、インクガイド74と、吐出口82が形成された吐出口基板76とを有する。吐出口基板76には、吐出口82を囲むように吐出電極78が配置されている。
また、ヘッド基板72と吐出口基板76は、互いに対面した状態で所定間隔離間して配置される。ヘッド基板72と吐出口基板76の間に形成される空間によって各吐出口82にインクを供給するインク流路84が形成される。
吐出ヘッド16は、より高密度な画像記録を高速に行うために、複数の吐出口82(ノズル)が二次元的に配列されたマルチチャンネル構造を有する。図3に、吐出ヘッド16の吐出口基板76に複数の吐出口82が二次元的に配列されている様子を模式的に示した。なお、図2(A)及び図2(B)においては、インクジェットヘッドの構成を分かりやすく示すために、複数の吐出口のうちの1つの吐出口だけを示している。
本実施形態の吐出ヘッド16において、吐出口82の個数や、その物理的な配置位置等は自由に選択することができる。例えば、図3に示すようなマルチチャンネル構造のみならず、吐出口の列を1列のみ有するものであってもよい。また、記録媒体Pの全域に対応する吐出口の列を有するいわゆる(フル)ラインヘッドでもよく、あるいは、ノズル列の方向と直交する方向に走査されるいわゆるシリアルヘッド(シャトルタイプ)であってもよい。また、本発明のインクジェットヘッドは、モノクロおよびカラーのどちらの記録装置にも対応可能である。
なお、図3は、マルチチャンネル構造の一部分(3行3列)の吐出口の配列を示しており、好ましい態様として、インク流方向において、下流側の列の吐出口82が上流側の列の吐出口に対してインク流に垂直な方向に所定ピッチずつずれて配置されている。このように、下流側の列の吐出口を上流側の列の吐出口に対してインク流方向に垂直な方向にずらして配置することにより、吐出口にインクを良好に供給することができる。本発明のインクジェットヘッドにおいては、下流側の列の吐出口が上流側の列の吐出口に対してインク流方向に垂直な方向にずらされて配置されたn行m列(n、mは正の整数)の吐出口が、インク流方向に一定の周期で繰り返し続くように構成されていてもよいし、それぞれの吐出口が、上流側に位置する吐出口に対してインク流に垂直な一方向(図3において下方向又は上方向)に連続的にずれて配置されていてもよい。吐出口の個数やピッチ、繰り返し周期等は、解像度や送りピッチに応じて適宜設定することができる。
また、図3では、好ましい態様として、インク流方向において、下流側の列の吐出口を上流側の列の吐出口に対してインク流に垂直な方向にずらして配置したが、これに限定されず、下流側の吐出口と上流側の吐出口が、インク流方向において同一直線上に配置されていてもよい。この場合は、各行のそれぞれの吐出口を、インク流に垂直な方向において隣に位置する行のそれぞれの吐出口に対して、インク流方向にずらして配置させることが好ましい。
このような吐出ヘッド16においては、顔料等の色材を含み、かつ、電荷を有する微粒子(以下、色材粒子とする)を絶縁性の液体(キャリア液)に分散してなるインクQを用いる。そして、吐出口基板76に設けられた吐出電極78に駆動電圧を印加して吐出口82に電界を発生させ、吐出口82のインクを静電力により吐出させる。また、吐出電極78に印加する駆動電圧を、画像データに応じてon/off(吐出on/off)することにより、画像データに応じて吐出口82からインク液滴を吐出して、記録媒体P上に画像を記録する。
以下、図2(A)及び(B)に示した本発明の吐出ヘッド16の構造についてより詳細に説明する。
図2(A)に示すように、吐出ヘッド16の吐出口基板76は、絶縁基板86と、ガード電極80と、吐出電極78と、絶縁層88とを有する。絶縁基板86の図中上側の面(ヘッド基板72に対面する側と反対の面)に、ガード電極80と絶縁層88とが順に積層されている。また、絶縁基板86の図中下側の面(ヘッド基板72に対面する側の面)には、吐出電極78が形成されている。
また、吐出口基板76には、インク液滴Rを吐出するための吐出口82が絶縁基板86を貫通して形成されている。吐出口82は、図2(B)に示すように、長方形の両方の短辺側を半円形にした、インク流方向に細長い繭形の開口(スリット)であり、インク流方向の長さLとインク流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上となる形状を有する。
本実施形態では、このように、吐出口82をインク流方向の長さLとインク流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上の開口(インク流方向を長辺とする形状異方性を有する形状、インク流方向を長辺とする長穴形状)とすることで、吐出口82にインクが流れやすくなる。つまり吐出口82へのインクの粒子供給性を高めることができ、周波数応答性を向上させ、さらに目詰まりも防止することができる。この点については、インク液滴の吐出の作用とともに、後ほど詳細に説明する。
本実施形態では、吐出口82を細長い繭形の開口として形成したが、これに限らず、吐出口82からインクを吐出することができ、インク流方向の長さとインク流れに直交する方向の長さとのアスペクト比が1以上となる形状であれば、略円形、楕円形、長方形、ひし形、平行四辺形など任意の形状にすることができる。例えば、インク流方向を長辺とする矩形状、又は、インク流方向を長軸とする楕円形若しくはひし形にすることができる。また、インク流の上流側を上底、下流側を下底とし、インク流方向の高さが下底よりも長い台形状にしてもよい。この場合、上流側の辺を長くしても下流側の辺を長くしてもよい。また、インク流方向を長辺とする長方形の両方の短辺側に、直径がその長方形の短辺よりも大きな円が接続されたような形状にしてもよい。また、吐出口82は、その中心に対して、上流側と下流側で対称な形状であっても非対称な形状であっても良い。例えば、矩形状の吐出口の上流側と下流側の少なくとも一方の端部を半円状にして吐出口を形成してもよい。
吐出ヘッド16のインクガイド74は、所定の厚みを有するセラミック製平板からなり、各吐出口82(吐出部)に対応してヘッド基板72の上に配置されている。インクガイド74は、繭形の吐出口82の長辺方向の長さに応じて幅広に形成されている。上述したように、インクガイド74は、吐出口82を通過し、その先端部分74aが吐出口基板76の記録媒体P側の表面(絶縁層88の表面)よりも上方に突出している。
インクガイド74の先端部分74aは、記録媒体P(搬送ベルト20)側へ向かうに従って次第に細く略三角形(ないしは台形)に成形されている。インクガイド74は、先端部分74aの傾斜面がインク流方向と交差するように配置される。これにより、吐出口82に流入するインクがインクガイド74の先端部分74aの傾斜面に沿って先端部分74aの頂点に到達するので、吐出口82にインクのメニスカスが安定して形成される。
また、インクガイド74を吐出口82の長辺方向に幅広に形成することで、インク流れに直交する方向の幅を短くすることができ、インクの流れに及ぼす影響を少なくすることができ、かつ後述するメニスカスを安定して形成させることができる。
なお、インクガイド74の形状は、インクQ内の色材粒子を吐出口基板76の吐出口82を通って先端部分74aに濃縮させることができれば、特に、制限的ではなく、例えば、先端部分74aが記録媒体P側に向かうに従って細くなるような形状でなくても良く、適宜変更することができる。例えば、インクガイド74の中央部分に、図中上下方向に毛細管現象によってインクQを先端部分74aに集めるインク案内溝となる切り欠きが形成されていても良い。
また、インクガイド74の最先端部に、金属が蒸着されていることが好ましい。インクガイド74の最先端部に金属を蒸着させることにより、インクガイド74の先端部分74aの誘電率が実質的に大きくなる。これにより、強電界を生じさせ易くなり、インクの吐出性を向上することができる。
図2(B)に示すように、絶縁基板86の下面(ヘッド基板72と対向する面)には、吐出電極78が形成されている。吐出電極78は、矩形状の吐出口82の周囲を囲むように、吐出口82の周縁に沿って、インク流上流側の一辺が切り欠いたコの字状に配置されている。吐出電極78を、インク流方向の上流側が一部欠けている形状とすることで、インク流方向の上流側から吐出口への色材粒子の流入を妨げる電界が形成されず、効率よく色材粒子を吐出口へ供給させることができる。また、インク下流側に吐出電極78を配置することで、吐出口へ流入した色材粒子を吐出口に留める方向の電界が形成される。以上より、吐出電極をインク流方向の上流側が一部欠けている形状とすることで、吐出口への粒子供給性をより向上させることができる。
また、本実施形態では、上記効果を得ることができる点から、吐出電極78はコの字状で形成されているが、インクガイドに臨むように配置される電極であれば、どのような形状でもよく、例えば、リング状の円形電極、楕円形電極、分割円形電極、平行電極、略平行電極等、吐出口82の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
前述のように、吐出ヘッド16は、吐出口82を2次元的に配列したマルチチャンネル構造を有するので、図3に模式的に示すように、吐出電極78は、各吐出口82に対応して2次元的に配置されている。
また、吐出電極78は、インク流路84に露出し、インク流路84を流れるインクQと接触している。これにより、インク液滴の吐出性を大幅に向上させることができる。この点については、後に、吐出の作用と共に詳述する。しかしながら、吐出電極78は、必ずしもインク流路84に露出してインクと接触している必要はない。すなわち、吐出電極78は吐出口基板76の内部に形成されていてもよいし、吐出電極78の露出面が薄い絶縁層などにより被覆されていてもよい。
吐出電極78は、図に示すように、制御部92に接続されている。制御部92は、インク吐出時及び非吐出時に吐出電極78に印加する電圧を制御することができる。
ガード電極80は、絶縁基板86の表面上に形成されており、ガード電極80の表面は絶縁層88によって覆われている。図4に、ガード電極80の平面構造を模式的に示した。図4は、図2(A)のIV−IV線矢視図であり、マルチチャンネル構造のインクジェットヘッドの場合のガード電極80の平面構造を模式的に示している。図4に示すように、ガード電極80は、金属板などの各吐出電極に共通なシート状の電極であり、2次元的に配列されている各吐出口82の周囲に形成された吐出電極78に対応する位置に開口部90を有する。開口部90は、矩形状に形成されている。ガード電極80の開口部90の長さ及び幅は、吐出口の長さ及び幅よりも大きく形成されている。
ガード電極80は、隣接する吐出電極78間における電気力線を遮蔽して、電界干渉を抑制することができ、ガード電極80には所定電圧が印加される(接地による0Vを含む)。図示例においては、ガード電極80は接地されて0Vとされている。
ガード電極80は、好ましい態様として、図2(A)に示すように、吐出電極78とは異なる層に形成され、さらに、全面が絶縁層88によって覆われている。
このような絶縁層88を有することにより、隣接する吐出電極78間における電界干渉を好適に防止できると共に、吐出電極78とガード電極80との間で、インクQの色材粒子が被膜化して放電することも防止できる。
ここで、ガード電極80は、吐出電極78から発生する電気力線のうち、対応する吐出口82(以下、便宜的に「自チャンネル」とする)に作用する電気力線を確保しつつ、他の吐出口82(同様に「他チャンネル」とする)に設けられた吐出電極78の電気力線および他チャンネルへの電気力線を遮蔽するように設ける必要がある。
ガード電極80が無い場合、インク液滴の吐出時に、吐出電極78の吐出口側の端部(以下、吐出電極の内縁部という)から生じる電気力線は、吐出電極78の内側、すなわち、吐出電極78の内縁部によって囲まれた領域内に収束して自チャンネルに作用し、インク液滴の吐出に必要な電界を生じさせる。一方、吐出電極78の吐出口側と逆側の端部(以下、吐出電極の外縁部という)から生じる電気力線は、吐出電極78の外縁部よりも更に外側に発散して他チャンネルに影響を及ぼし、電界干渉を生じる。
以上の点を考慮すれば、ガード電極80の矩形状の開口部90の幅及び長さは、自チャンネルへの電気力線を遮蔽しないように、基板平面で見た際に、自チャンネルの吐出電極78も大きくするのが好ましい。すなわち、ガード電極80の吐出口82側の端部は、自チャンネルの吐出電極78の内縁部よりも、吐出口82から離間(後退)しているのが好ましい。
また、他チャンネルへの電気力線を効率的に遮蔽するためには、ガード電極80の矩形状の開口部90の長さ及び幅は、基板平面で見た際に、自チャンネルの吐出電極78の外縁部間の間隔よりも小さくするのが好ましい。すなわち、ガード電極80の内縁部は、自チャンネルの吐出電極78の外縁部よりも、吐出口82に近接(前進)しているのが好ましい。本発明者の検討によれば、この近接量は、5μm以上、特に、10μm以上とするのが好ましい。
上記構成を有することにより、吐出口82からの吐出安定性を十分に確保した上で、隣接するチャンネル間における電界干渉に起因するインク着弾位置のバラツキ等を好適に抑制して、安定して高画質な画像記録を行うことが可能となる。
ガード電極80の開口部90を、吐出電極78の内縁部又は外縁部によって形成される形状と略相似形にし、ガード電極80の内縁部が、自チャンネルの吐出電極78の内縁部よりも吐出口82から離間(後退)し、吐出電極の外縁部よりも吐出口82に近接(前進)するように、ガード電極80を設けてもよい(すなわち、ガード電極80の開口部90を形成してもよい)。
また、以上の例では、ガード電極80は、シート状電極としているが、本実施形態はこれには限定されず、各吐出口間において、他チャンネルの電気力線を遮蔽できるように設けられていれば、どのような形状又は構造でも良い。例えば、ガード電極80は、各吐出口の間に網目状に設けられていても良い。また、マトリクス状に配列されている複数の吐出口において、例えば、行方向と列方向で隣接する吐出口の間隔が異なる場合には、電界干渉を生じない程十分離れている吐出口の間にはガード電極を設けずに、近接している吐出口の間にのみガード電極を設けても良い。
このような場合にも、自チャンネルの吐出電極78に対して、ガード電極80の内縁部が、吐出電極78の内縁部よりも吐出口82から離間し、吐出電極78の外縁部より吐出口82に近接するように、ガード電極80を形成すればよい。
ここでは、ガード電極80の開口部90の形状を、吐出口82の形状と略同様の形状にしたが、これに限定されるものではなく、隣接する吐出電極78間における電気力線を遮蔽して電界干渉を防止することができれば、任意の形状にすることができる。例えば、円形や楕円形、正方形、ひし形などの形状にすることができる。
また、本実施形態の吐出ヘッド16は、好ましい形態として、ヘッド基板72に吐出口82にインクを誘導するインク誘導堰94が設けられている。以下、インク誘導堰94について説明する。
図5(A)は、図2の吐出ヘッド16における吐出部近傍の構成を示す部分断面斜視図である。同図では、インク誘導堰94の構造を明示するために、吐出口基板76をインクガイド74の略中央の位置でインク流方向に沿って切断して示している。
インク誘導堰94は、ヘッド基板72のインク流路84側の面、すなわちインク流路84の底面において、吐出口82に対応する位置に配置されたインクガイド74のインク流方向の上流側および下流側に備えられており、インク流方向に対して、吐出口82に対応する位置の近傍から吐出口82の中心に対応する位置に向かって、吐出口基板76に漸次近接するように傾斜した面を有している。すなわち、インク誘導堰94は、インク流方向に沿って、吐出口82に向かって傾斜する形状を有している。
また、インク誘導堰94は、インク流に直交する方向には、吐出口82と略同一の幅を有し、底面から垂設する壁面を有する形状とされている。また、インク誘導堰94は、吐出口82を塞ぐことなく、インクQの流路を確保するように、吐出口基板76のインク流路84側の面、すなわちインク流路84の上面から所定の間隔を置いて設けられている。このようなインク誘導堰94は、各々の吐出部にそれぞれ設けられている。
このように、インク流路84の底面に、インク流方向に沿って、吐出口82に向かって傾斜するインク誘導堰94を設けることによって、吐出口82へ向かうインク流が形成され、インクQが吐出口82のインク流路84側の開口部に誘導される。そのため、インクQを吐出口82内部へ好適に流入させることができ、インクの粒子供給性をより向上させることができる。さらに目詰まりもより確実に防止することができる。
インク誘導堰94のインク流方向の長さlは、隣接する吐出部と干渉しない範囲で、インクQを吐出口82へ好適に誘導できるように適宜設定されればよいが、図5(B)に示すように、インク誘導堰94の最高部の高さhに対し、3倍以上(l/h≧3)とするのが好ましく、8倍以上(l/h≧8)とするのがより好ましい。
インク誘導堰94のインク流と直交する方向の幅は、吐出口82と同等か、若干広いのが好ましい。また、インク誘導堰94の幅は、図示例のように均一なものには限定されず、幅が漸減するものや漸増するもの等であってもよい。また、その壁面も、垂直面には限定されず、傾斜面等であってもよい。
インク誘導堰94の傾斜面(インク誘導面)は、インクQを吐出口82に誘導するのに好適な形状とすればよく、一定の傾斜角を有する斜面であってもよいし、傾斜角が変化する面や、湾曲面であってもよい。また、その表面は、平滑面には限定されず、インク流方向に、あるいは吐出口82の中心部に向かって放射状に、1条以上の畝や溝等が形成されていてもよい。
また、インク誘導堰94の上部のインクガイド74との接部近傍は、図示例のように段差を有することなく、滑らかにつながる形状としてもよい。
図示例では、インク誘導堰94がインクガイド74の上流側および下流側に配置された形態としているが、吐出口82の上流側および下流側に斜面を有する台形状のインク誘導堰94を設け、その上部にインクガイド74を立設する形態としてもよいし、インクガイド74およびインク誘導堰94を一体的に形成してもよい。このように、インク誘導堰94は、インクガイド74と別々に、または、一体的に形成されて、ヘッド基板72に取り付けられてもよいし、あるいは、従来公知の掘削手段によりヘッド基板72を削り出して形成されてもよい。
なお、インク誘導堰94は、吐出口82の上流側に設けられていれば良いが、図示例のように、吐出口82の下流側にも、インク液滴Rの吐出方向の高さが吐出口82から遠ざかるにつれて低くなるように設けられているのが好ましい。これにより、上流側のインク誘導堰94によって吐出口82に向かって誘導されたインクQが滑らかに下流側へ流れるので、インクQが乱流になることなく、インク流の安定を保つことができ、吐出安定性を保つことができる。
また、図5の例では、インク誘導堰94は、ヘッド基板72の上側の面上に配置されているが、これに限定されず、ヘッド基板72にインク流溝を設け、インク流溝の内部にインク誘導堰を設けてもよい。
例えば、インク流方向に沿って、吐出口82に対応する位置を通過する所定深さのインク流溝を設け、吐出口に対応する位置にインク流方向に沿って吐出口82に向かって傾斜する面を有するインク誘導堰を設ける。このように、インク流溝を設けることによって、インク流路84を流れるインクQの多くを選択的にインク流溝に流すことができ、インク流路堰を設けることで、インクQを吐出口82の内部へ好適に流入させることができ、インクガイド先端部分74aへのインクの供給性を向上させることができる。
前述のような色材粒子を含有するインクQを用いる静電式のインクジェットにおいては、従来のインクジェット方式のように、インク全体に力を作用させて、インクを記録媒体に向けて飛翔させるのではなく、主に、キャリア液に分散させた固形成分である色材粒子に力を作用させて、インクを飛翔させる。以下、吐出ヘッド16におけるインク液滴Rの吐出作用を説明する。
図2(A)に示すように、吐出ヘッド16では、図示しないポンプ等を含むインク循環機構により、記録時に吐出電極78に印加される電圧と同極性、例えば、正(+)に帯電した色材粒子を含むインクQが、インク流路84の内部を矢印方向(図中左から右方向)に循環している。
他方、記録に際して、記録媒体Pは、上述のしたように、帯電手段14によって色材粒子と逆極性すなわち負の高電圧(一例として、−2.2kV)に帯電されて、バイアス電圧を帯電した状態で、搬送ベルト20に静電吸着される。
この状態で、記録媒体P(搬送ベルト20)と吐出ヘッド16とを、相対的に移動しつつ、供給された画像データに応じて制御部92で吐出電極78にパルス電圧(以下、駆動電圧という)が印加されるように制御する。そして、基本的には、駆動電圧の印加on/offによって吐出をon/offすることにより、画像データに応じてインク液滴Rを変調して吐出し、記録媒体P上に画像を記録する。
ここで、吐出電極78に駆動電圧を印加していない状態(あるいは、印加電圧が低電圧レベルである状態)、すなわち、バイアス電圧のみが印加されている状態では、インクQには、バイアス電圧とインクQの色材粒子(荷電粒子)の荷電とのクーロン引力、色材粒子間のクーロン反発力、キャリア液の粘性、表面張力、誘電分極力等が作用している。そして、これらが連成して、色材粒子やキャリア液が移動し、図2(A)に概念的に示すように、インクQは、吐出口82から若干盛り上がったメニスカス状となってバランスが取れている。
また、吐出電極78から発生する電界によって、吐出口82に色材粒子が凝集している。そして、上述したクーロン引力等によって、その色材粒子は、いわゆる電気泳動でバイアス電圧が帯電された記録媒体Pに向かって移動する。したがって、吐出口82に形成されたメニスカスにおいては、インクQが濃縮された状態となっている。
この状態から、吐出電極78には駆動電圧が印加される。これにより、バイアス電圧に駆動電圧が重畳され、先の連成に、さらにこの駆動電圧の重畳によって連成された運動が起こる。そして、吐出電極78への駆動電圧の印加によって発生する電界によって色材粒子及びキャリア液には静電力が作用する。その静電力によって色材粒子およびキャリア液がバイアス電圧(搬送ベルト20)側、すなわち記録媒体P側に引っ張られ、吐出口に形成されたメニスカスが上方に向かって成長し、吐出口82の上方に略円錐状のインク液柱いわゆるテーラーコーンが形成される。また、先と同様に、色材粒子は、電気泳動、及び、吐出電極からの電界によってメニスカスに移動しており、メニスカスのインクQは濃縮され、色材粒子を多数有する、ほぼ均一な高濃度状態となっている。
吐出電極78への駆動電圧の印加開始後、さらに有限な時間が経過すると、色材粒子の移動等により、電界強度の高いメニスカスの先端部分で、主に色材粒子とキャリア液の表面張力とのバランスが崩れ、メニスカスが急激に伸びて、曳糸と呼ばれる直径数μm〜数十μm程度の細長いインク液柱が形成される。
さらに有限な時間が経過すると曳糸が成長し、この曳糸の成長、レイリー/ウエーバー不安定性によって発生する振動、メニスカス内における色材粒子の分布不均一、メニスカスにかかる静電界の分布不均一等の相互作用によって曳糸が分断される。そして、分断された曳糸が、インク液滴Rとなって吐出され、記録媒体に向かって飛翔し、かつ、バイアス電圧にも引っ張られて、記録媒体Pに着弾する。なお、曳糸の成長および分断は、さらにはメニスカス(曳糸)への色材粒子の移動は、駆動電圧の印加中は連続して発生する。したがって、駆動電圧を印加する時間を調整することによって、1画素当たりのインク液滴の吐出量を調整することができる。
また、駆動電圧の印加を終了(吐出off)した時点で、バイアス電圧のみが印加された先のメニスカスの状態に戻る。
ここで、図2に示すように、本実施形態のインクジェットヘッドの吐出口はインク流方向に細長いスリット状の長穴形状を有する。このように、吐出口82を細長いスリット状の長穴形状、つまりインク流方向の長さとインク流れに直交する方向の長さとのアスペクト比が1以上となる形状とすることで、インクが吐出口内部に流れやすくなり、吐出口82へのインクの粒子供給性が高くなる。これにより、インクガイド先端14aへのインクの粒子供給性を向上させることができる。したがって、画像記録時の吐出周波数が改善され、高速で連続的にドットを描画しても安定して所望のサイズのドットを描画することができる。さらに、吐出口のアスペクト比を1以上にすることで、インクの流れがスムーズになり、吐出口での目詰まりを防止することができ、アスペクト比を、1.5以上とすることで、インクガイドへのインク供給性がより向上し、連続した大ドットを形成した際も、より安定してドットを形成することができ、より高い周波数の描画周波数で描画を行うことができる。
吐出周波数としては、画像の出力時間を考慮すると5kHzで、好ましくは10kHzで、より好ましくは15kHzで描画できることが望まれる。
ここで、上記のように、吐出口の開口形状をインク流方向の長さとインク流れに直交する方向の長さとのアスペクト比が1以上となる形状とすることで、上記効果をより好適に得るができるが、本実施形態のインクジェットヘッドはこれに限定されず、吐出口の開口形状を、開口の長径と短径のアスペクト比を1以上とすることで、インクの流れをスムーズにし、吐出口での目詰まりを防止することができる。
また、図2(A)及び(B)に示した吐出ヘッド16においては、吐出電極78はインク流路84に露出している。すなわち、吐出電極78は、インク流路84において、インクQと接液している。
このように、インク流路84においてインクQと接液する吐出電極78に駆動電圧を印加(吐出on)すると、吐出電極78に供給された電荷の一部がインクQに注入され、吐出口82と吐出電極78との間に位置するインクQの電導度が高くなる。したがって、本実施形態の吐出ヘッド16においては、インクQは、吐出電極78に駆動電圧が印加された時(吐出on時)に、インク液滴Rを吐出し易い状態となる(吐出性が向上する)。
さらに、非吐出時、すなわち、駆動電圧を印加していないときに、コの字形の吐出電極78に色材粒子と同極性の電圧を印加することで、非吐出時においてもインクに電荷が注入され、インクの電導度を一層高めることができ、上流から流れるインク中に浮遊する帯電した色材粒子を、吐出電極78による静電力によって吐出口82により確実に押し留められる。
ここで、本実施形態の吐出ヘッド16に用いられるインクについて説明する。
インクQは、色材粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、色材粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中の色材粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ω・cm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの色が薄くなったり、滲みを生じたりするからである。
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
このようなキャリア液に分散される色材粒子は、色材自身を色材粒子としてキャリア液中に分散させてもよいが、好ましくは、定着性を向上させるための分散樹脂粒子を含有させる。分散樹脂粒子を含有させる場合、顔料などは分散樹脂粒子の樹脂材料で被覆して樹脂被覆粒子とする方法などが一般的であり、染料などは分散樹脂粒子を着色して着色粒子とする方法などが一般的である。
色材としては、従来からインクジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真用液体現像剤に用いられている顔料および染料であればどれでも使用可能である。
色材として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定なく用いることができる。
色材として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましく例示される。
さらに、分散樹脂粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
インクQにおいて、色材粒子の含有量(色材粒子あるいはさらに分散樹脂粒子の合計含有量)は、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。色材粒子の含有量が少なくなると、印刷画像濃度が不足したり、インクQと記録媒体P表面との親和性が得られ難くなって強固な画像が得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均一な分散液が得られにくくなったり、インクジェットヘッド等でのインクQの目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
また、キャリア液に分散された色材粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4〜1.0μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
色材粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することにより色材粒子を荷電して、荷電した色材粒子をキャリア液に分散してなるインクQとする。なお、色材粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
なお、色材粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷のいずれに荷電したものであってもよい。
また、色材粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記に定義する分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とする。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、インクQの電気伝導度、σ2は、インクQを遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインクQを用いることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
インクQの電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
また、インクQの表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、さらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
さらに、インクQの粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
このようなインクQは、一例として、色材粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、色材粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。具体的な方法としては、以下の方法が例示される。
(1)色材あるいはさらに分散樹脂粒子をあらかじめ混合(混練)した後、必要に応じて分散剤を用いてキャリア液に分散し、荷電調整剤を加える方法。
(2)色材、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、キャリア液に同時に添加して、分散し、荷電調整剤を加える方法。
(3)色材および荷電調整剤、あるいはさらに分散樹脂粒子および分散剤を、同時にキャリア液に添加して、分散する方法。
静電式のインクジェット記録装置では、通常、搬送ベルト20により記録媒体Pを搬送させつつ、上記のように画像信号に応じて吐出ヘッド16からインク液滴を吐出させることで、記録媒体Pに画像を形成している。しかしながら、このような静電式のインクジェット記録装置では、吐出ヘッドの吐出履歴により、吐出特性が変化し、インク液滴の吐出が不安定になり、高画質な画像を形成することができない、つまりインク液滴の吐出には吐出周波数依存性があるという問題があった。
本発明者は、この点について鋭意検討の結果、上記吐出特性(吐出頻度依存性)が吐出部のぬれ状態、特にインクガイドのぬれ状態に起因し、吐出頻度が低いつまり吐出周波数が低い(吐出の時間間隔が大きい)場合に、吐出部、特にインクガイドの先端部分が乾いてしまうことが原因であることを見いだした。
そこで、本発明では、インクガイドの先端部分等の吐出部が乾くことを防止するために、記録媒体Pが吐出ヘッドと対向する位置に搬送され記録媒体Pに画像が形成される前に、吐出ヘッドの吐出部に強電界を形成させ、インクガイドの先端部分をインクでぬらす様に作用する強電界発生手段として、記録媒体Pおよび絶縁層30よりも強い電界強度を吐出ヘッド16の吐出部に与える強電界形成部18を設ける。
以下、強電界形成部18を詳細に説明する。
図1に示すように、強電界形成部18は、搬送ベルト20上の記録媒体Pの止着位置よりも搬送方向上流側に配置され、記録媒体Pおよび絶縁層30よりも高い帯電性を有する部材で構成されている。ここで、強電界形成部18としては、絶縁性を有する材料、例えば、ポリイミド樹脂、または、フッ素樹脂で構成される。なお、フッ素樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、3フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)が例示される。
ここで、強電界形成部18は、絶縁層30よりも固有体積抵抗率を高くすることが好ましく、固有体積抵抗率を1015Ω・cm以上とすることが好ましい。固有体積抵抗率を上記範囲とすることで、電位保持性が高く、好適に高電位に帯電させることができる。
強電界形成部18は、搬送手段12の移動とともに移動され、帯電手段14と対向する位置を通過する際に、帯電手段14により所定電位に帯電される。強電界形成部18は、記録媒体Pおよび絶縁層30よりも高い帯電性を有するので、記録媒体Pおよび絶縁層30の電位よりも高い電位に帯電される。
帯電手段14によって高い電位に帯電された強電界形成部18は、記録媒体Pへの記録が行われる前に、吐出ヘッド16に対向する位置に搬送され、吐出ヘッド16に対向する位置を通過する。強電界形成部18が吐出ヘッド16に対向する位置に搬送されると、搬送ベルト20通過時および記録媒体Pが吐出ヘッド16と対向している場合よりも強い電界が吐出ヘッド16と強電界形成部18との間に形成される。吐出ヘッド16と強電界形成部18との間に強電界が形成されることで、吐出ヘッド16の吐出口96のインクは、強電界形成部18側、つまり搬送ベルト20側に引き寄せられ、インクが吐出ヘッド16のインクガイド76の先端部分98まで移動され、インクガイド76の先端部分98がインクにぬれた状態となる。
このように、本発明では、強電界形成部を高い電位に帯電させ、記録媒体に記録を行う前に吐出ヘッドに対向する位置を通過させることで、記録媒体Pへの記録を行う前に、吐出ヘッドの吐出部のインクガイドの先端部分をインクにぬれた状態にすることができる。これにより、吐出履歴、吐出間隔に拘わらず、記録時の吐出ヘッドのインクガイドの先端部分(吐出部)のぬれ状態が一定となり、一定の吐出特性でインク液滴を吐出させることができる。
以上より、本発明によれば、描画の安定性を高くすることができ、記録媒体に高画質な画像を安定して形成することができる。また、吐出ヘッドの制御を行うことなく、吐出特性を一定にすることができる。これにより、簡単なドライバでインク液滴の吐出を制御することができ、装置コストを低くすることができる。
また、長時間インク液滴を吐出しない吐出部がある場合も、強電界形成部が通過する度に、全ての吐出部がぬれた状態となるので、長時間インク液滴が吐出されないことで発生する吐出口のつまり等を防止することができる。
ここで、強電界形成部18が吐出ヘッド16と対向する位置を通過する時に、吐出ヘッド16からインク液滴が吐出されても記録媒体Pに記録される画像に影響はないので、インク液滴が吐出される電界を形成する電位に強電界形成部18を帯電させてもよい。また、強電界形成部18の通過時に吐出ヘッド16からインク液滴を吐出させることで、インクガイドの先端部分を確実にぬらすことができる。
また、上記実施形態では、搬送ベルト20上の強電界形成部18を搬送させ、吐出ヘッド16と対向する位置を通過させたが、本発明はこれに限定されず、記録媒体Pおよび吐出ヘッド16が画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、吐出ヘッドと対向する位置に強電界形成部18により吐出部に強い電界強度を与えればよく、吐出ヘッド16を移動させても、強電界形成部18を単独で移動させてもよい。
図6(A)〜図6(D)は、強電界形成部18の配置例を模式的に示す斜視図である。
強電界形成部18は、記録媒体の搬送方向と直交する方向の幅を、吐出ヘッドの幅よりも長くすることが好ましい。つまり、本実施形態のようなラインヘッドの場合は、図6(A)に示すように、強電界形成部18を搬送ベルト20の幅方向、すなわち搬送方向に直交する方向の長さと略同じ長さで設けることが好ましい。
その際、強電界形成部の搬送方向に直交する方向の幅を、吐出ヘッドの搬送方向に直交する方向の幅より長い幅で設けることで、吐出ヘッドを移動させることなく、搬送ベルトによる強電界形成部の移動のみで、吐出ヘッドの全ての吐出部に強電界を発生させ、インクガイドの先端部分(吐出部)をインクにぬれた状態にすることができる。
また、上記のように吐出ヘッドがシリアルヘッドの場合は、図6(B)に示すように、搬送ベルト20上に、少なくとも吐出ヘッドの幅以上の幅の強電界形成部18を設けることで本発明の効果をえることができる。
さらに、シリアルヘッドの場合は、上記形態に限定されず、図6(C)に示すように、強電界形成部18を、搬送ベルト20の記録媒体Pの搬送方向と直交する方向の端部の記録媒体Pの搬送方向に延設してもよい。
このように、強電界形成部18を設けることで、吐出ヘッド16を記録媒体Pと直交する方向に走査させ、記録媒体Pへ画像を記録する際に、吐出ヘッド16を強電界形成部18と対向する位置まで走査させることで、記録媒体Pへの画像記録時も、記録媒体Pおよび吐出ヘッド16が画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、吐出ヘッド16の吐出部に強電界を形成することができ、吐出部の吐出特性を一定にすることができる。これにより、描画安定性をより向上させることができる。
ここで、本発明は、少なくとも記録媒体Pに記録を行う前に、吐出ヘッド16の全吐出部に強電界を形成すればよく、吐出ヘッド16を強電界形成部18と対向する位置に移動させ、吐出ヘッド16の吐出部に強電界を発生させる回数、頻度等は、特に限定されず、吐出ヘッド16を走査させる毎に強電界形成部18と対向する位置に移動させても、所定回数吐出ヘッド16を走査させる毎に強電界形成部18と対向する位置に移動させてもよい。
また、強電界形成部18の長手方向の長さは、記録媒体Pと略同じ長さ、搬送ベルト20の全周等任意の長さとすることができる。
さらに、図6(C)に示した例では、搬送ベルト20の搬送方向と直交する方向の端部の一方のみに設けたが、図6(D)に示すように、搬送ベルト20の搬送方向と直交する方向の両方の端部に設けてもよい。
また、記録前に吐出ヘッドの吐出部、特にインクガイドの先端部分をインクにぬれた状態とすることができれば、強電界形成部の通過時間は特に限定されず、少なくとも記録前に瞬間的に吐出ヘッドと対向する位置を強電界形成部が通過すればよい。
ここで、強電界形成部が通過する時間を瞬間的つまり短い時間にすることにより、強電界形成部がインク液滴を吐出する電位に帯電されている場合でも、インク液滴の吐出を最小限にすることができ、インクの消費を抑えることができる。
図7(A)〜図7(F)は、強電界形成部18の配置例を模式的に示す断面図である。
本実施形態では、図7(A)に示すように、搬送ベルト20上に強電界形成部18を載置したが、これに限定されず、図7(B)〜図7(F)に示すように、搬送ベルト20の絶縁層30の一部を強電界形成部18とする、つまり強電界形成部18と絶縁層30とを一体型としてもよい。
例えば、図7(B)に示すように、強電界形成部18の吐出ヘッド側の面が絶縁層30の表面と同一平面となり、吐出ヘッド16と反対側の面が図示しない導電層と接するように強電界形成部18を設けてもよく、また、図7(C)に示すように、強電界形成部18の吐出ヘッド16側の面が絶縁層30の表面と同一平面となり、吐出ヘッド16と反対側の面が絶縁層30と接するように強電界形成部18を設けてもよい。また、図7(D)に示すように、強電界形成部18の吐出ヘッド側の面が、絶縁層30の表面よりも低く、つまり強電界形成部18が導電層32側に凹となるように、強電界形成部18を凹設してもよい。
このように、強電界形成部18の表面が、搬送ベルト20の表面と同じ高さ、または搬送ベルト20の表面よりも低くなるように強電界形成部18を設けることで、強電界形成部18上に付着した異物等が吐出ヘッド16と接触して、ヘッドが破損することを防止することができる。
また、強電界形成部18と絶縁層を一体型とする場合でも、図7(A)と同様に、図7(E)に示すように、強電界形成部18の吐出ヘッド16側の面が絶縁層30の表面よりも吐出ヘッド16側に凸となり、吐出ヘッド16と反対側の面が絶縁層30と接するように強電界形成部18で設けてもよく、また、図7(F)に示すように、強電界形成部18の吐出ヘッド16側の面が絶縁層30の表面よりも吐出ヘッド16側に凸となり、吐出ヘッド16と反対側の面が絶縁層30と接するように強電界形成部18で設けてもよい。つまり、強電界形成部18を絶縁層30の表面よりも吐出ヘッド16側に凸な形状と有する凸部としてもよい。
ここで、上記実施形態では、強電界形成部として、搬送ベルトの絶縁層よりも絶縁性の高い部材を用いたが、本発明はこれに限定されず、強電界形成部18として、絶縁層30に用いる部材と同じ部材、または、固有体積抵抗が絶縁層30よりも多少低い部材を用いる場合でも、例えば、図7(A)、図7(E)および図7(F)に示すような、強電界形成部18を搬送ベルト20(の絶縁層30)の表面よりも吐出ヘッド16側に凸となる形状とすることで、吐出ヘッド16と対向する位置を通過させる際の吐出ヘッド16と強電界形成部18とのギャップが狭くなり、搬送ベルト20通過時および記録媒体Pが吐出ヘッド16と対向している場合よりも強い電界を吐出部に形成することができる。
ここで、本実施形態では、帯電手段が強電界形成部に印加する電圧を制御することなく、一定のグリット電圧で記録媒体と同じ電圧に印加させたが、本発明はこれに限定されず、帯電手段を制御して、強電界形成部に帯電手段により高い電圧を印加し、強電界形成部をより高い電位に帯電させてもよい。このように、制御部を設け、強電界形成部をより高い電位に帯電させることで、吐出ヘッドと対向する位置を通過する際により強い電界を形成することができる。これにより、インクガイドの先端部分をより確実にぬれた状態とすることができ、より安定した画像の記録を行うことができる。
また、帯電手段により印加する印加する電圧を制御しない場合は、制御部を設ける必要がないので、装置構成を簡単にすることができる。
以下、記録装置10の動作を説明する。
記録装置10では、画像の記録時に図示しない給紙トレイから、搬送ベルト20に記録媒体Pが供給される。ここで、記録媒体Pは、搬送方向の上流側に強電界形成部18に配置される位置に載置される。
記録媒体Pを所定位置に載置させた搬送ベルト20は、ベルトローラ22、24により所定方向に移動される。この搬送ベルト20の移動に同期して、搬送ベルト20上に設けられた強電界形成部18および搬送ベルト20上に載置された記録媒体Pも所定方向に搬送される。
搬送ベルト20に搬送される強電界形成部18および記録媒体Pは、強電界形成部18、記録媒体Pの順で帯電手段14に対向する位置を通過する。
帯電手段14と対向する位置を通過した強電界形成部18および記録媒体Pはそれぞれ所定電位に帯電される。ここで、強電界形成部18は、記録媒体Pおよび搬送ベルト20の絶縁層30よりも高い電位に帯電され、記録媒体Pは搬送ベルト20に静電吸着される。
帯電手段14により帯電された強電界形成部18および記録媒体Pは、強電界形成部18、記録媒体Pの順に吐出ヘッド16と対向する位置に移動される。
強電界形成部18が対向する位置を通過すると、搬送ベルト20通過時および記録媒体P通過時よりも高い電界が、吐出ヘッド16の吐出部周りに形成される。これにより吐出ヘッド16の全てのインクガイド76の先端部分98が、インクにぬれた状態となる。
その後、吐出ヘッド16に対向する位置に記録媒体Pが搬送され、搬送ベルト20の移動とともに所定の一定速度で搬送されつつ、吐出ヘッド16により、記録媒体Pの表面に画像データに対応した画像が形成される。
画像が形成された記録媒体Pは、図示しない定着装置により画像が定着され、画像が定着された記録媒体は、図示しない排出トレイに排出される。
ここで、本実施形態では、絶縁層30と導電層32の2層構造とし、導電層32を接地されたベルトローラ22と接触させて導電層32の電位を基準電位0Vに保持させた構成の搬送ベルト20を用いたが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、搬送ベルト60を絶縁部材により構成し、吐出ヘッド16に対向する位置の搬送ベルト60の内側、つまりベルトロール22、24側に平板状の導電性プラテン62を搬送ベルト20と当接させて配置し、導電性プラテン62を接地させることで、吐出ヘッド16と対向する部分の搬送ベルト60の内側を基準電位0Vに保持させてもよい。
このような搬送ベルト60でも、強電界形成部18を搬送ベルト60の記録媒体の止着位置の搬送方向上流側に設けることで、上記本発明の効果を得ることができる。
搬送ベルト60は、上記搬送ベルト20の絶縁層30と同様の材料、例えばポリイミド樹脂、または、フッ素樹脂で形成することができる。なお、フッ素樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、3フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)が例示される。
ここで、図8に示すように、搬送ベルト60を絶縁部材のみで形成する場合には、表面粗さRaは5μm以下、好ましくは2μm以下とすることにより、記録媒体Pを均一に吸着搬送することができる。また、搬送ベルト60の厚みは10〜500μ、好ましくは50〜300μmとすることにより、十分な耐久性とベルト搬送適性が得られる。また、搬送ベルト60の引っ張り強さは、100kg/cm2以上、好ましくは、120kg/cm2以上とすることにより、高い搬送精度、および高い耐久性を得ることができる。また、搬送ベルト60の体積抵抗率は、1014Ω・cm以上、好ましくは1015Ω・cm以上とすることにより、良好な電荷(帯電電位)保持性を確保することができる。また、搬送ベルトの吸水率(ASTMD570に準拠)は、5%以下、好ましくは2%以下とすることにより、湿度変動に対する搬送精度を安定化させることができる。
ここで、本実施形態では、記録媒体Pに所定電圧を印加し、帯電させることでバイアス電圧としたが、本発明はこれに限定されず、搬送ベルトの導電層、または導電性プラテンに所定電圧を印加し、バイアス電圧としてもよい。
次に、本発明のインクジェット記録装置の具体的な一例を図9を用いて説明する。
図9は、本発明の静電式インクジェット記録装置の具体的な実施例の一例の概略全体構成を示す模式図である。
同図に示すインクジェット記録装置(以下インクジェットプリンタ100とする)100は、記録媒体Pに片面4色印刷を行う装置で、記録媒体Pの搬送手段として、フィードローラ対102、ガイド104、ローラ106a,106b,106c、搬送ベルト108、搬送ベルト位置検知手段109、帯電手段110、除電手段112、剥離手段114、定着・搬送手段116およびガイド118を有し、画像形成手段として、ヘッドユニット120、インク循環系122、ヘッドドライバ124、記録媒体位置検出手段126および記録位置制御手段128を有し、さらに、溶媒回収手段として、排出ファン130および溶媒回収装置132を有し、これらの構成要素を内包する筐体101を備える。
また、本発明の特徴的部分である強電界形成部18は、搬送ベルト108上に設けられている。
まず、インクジェットプリンタ100における、記録媒体Pの搬送手段について説明する。
フィードローラ対102は、筐体101の側面に設けられた搬入口101aに隣接して設けられ、図示されないストッカから記録媒体Pを筐体101内に設けられた搬送ベルト108(ローラ106aに支持される部分)に送り込む1対のローラからなる。ガイド104は、フィードローラ対102と搬送ベルト108を支持するローラ106aとの間に設けられ、記録媒体Pを搬送ベルト108に案内する。
フィードローラ対102の近傍には、図示しないが、記録媒体Pに付着した塵埃や紙粉等異物を除去する異物除去手段を設けるのが好ましい。異物除去手段としては、公知の吸引除去、吹き飛ばし除去、静電除去等の非接触法や、ブラシ、ローラ等による接触法によるものの1つあるいは複数を組み合わせて使用すればよい。また、フィードローラ対102を微粘着ローラで構成し、さらにフィードローラ対102のクリーナを設けて、フィードローラ対102による記録媒体Pのフィード時に塵埃・紙粉等の異物の除去を行っても良い。
ローラ106a,106b,106cは、搬送ベルト108を張架して移動させるものであり、ローラ106a,106b,106cのうち少なくとも1つは、図示されない駆動源と連結されている。
搬送ベルト108は、ヘッドユニット120の吐出ヘッド120aから吐出されるインクによって画像が形成される時に記録媒体Pを保持するプラテンとして機能し、記録媒体Pを移動するとともに、画像形成後、定着・搬送手段116まで搬送するためのものである。従って、搬送ベルト108としては、寸法安定性に優れ、耐久性を有する材料で形成される無端ベルトが用いられる。
図示の本実施例においては、記録媒体Pは、静電吸着によって搬送ベルト108上に保持されるので、搬送ベルト108は、記録媒体Pを保持する側(表面)が絶縁性、ローラ106a,106b,106cと接する側(裏面)が導電性を有する構成としている。具体的には、搬送ベルト108は、金属ベルトの表面側にフッ素樹脂コートを行ったものである。また、図示例においては、ローラ106aは導電性ローラとされ、搬送ベルト108の裏面(金属面)は、ローラ106aを介して接地されている。
また、強電界形成部18は、記録媒体Pの止着位置よりも搬送方向上流側となる部分に配置されている。
なお、搬送ベルト108は、公知の方法により蛇行が抑制されているのが好ましい。蛇行抑制の方法としては、例えば、ローラ106cをテンションローラとし、搬送ベルト位置検知手段109の出力、すなわち搬送ベルト108の幅方向の検知位置に応じて、ローラ106cの軸をローラ106aおよびローラ106bの軸に対して傾けることにより、搬送ベルトの幅方向の両端でテンションを変えて蛇行を抑制する方法等が用いられる。また、ローラ106a、106b、106cをテーパ形やクラウン形、あるいはその他の形状とすることで、蛇行を抑制してもよい。
ここで、搬送ベルト位置検知手段109は、上述のように、搬送ベルトの蛇行などを抑制するとともに、画像記録時の記録媒体Pの副走査方向の位置を所定位置に規制するために、搬送ベルト108の幅方向の位置を検知するもので、フォトセンサ等の公知の検知手段が用いられる。
帯電手段110は、上述したように、記録媒体Pに、ヘッドユニット120(の吐出ヘッド120a)に対する所定のバイアス電圧を印加すると共に、静電力により搬送ベルト108に吸着させて保持するために、記録媒体Pを所定の電位に帯電させ、さらに強電界形成部18を所定電位に帯電させるものである。
本実施例においては、帯電手段110は、記録媒体Pを帯電させるスコロトロン帯電器110aと、スコロトロン帯電器110aに接続される負の高圧電源110bとを有する。記録媒体Pは、負の高圧電源110bに接続されたスコロトロン帯電器110aにより、負の高電圧に帯電され、搬送ベルト108の絶縁層に静電吸着される。
また、帯電手段としては、上述したように、スコロトロン帯電器110aに限定されず、他にも、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針等、種々の手段や方法が利用できる。また、後に詳述するように、帯電手段110を、ローラ106a,106b,106cの少なくとも1つを導電性ローラとし、あるいは、記録媒体Pへの記録位置において搬送ベルト108の裏面側(記録媒体Pと逆側)に導電性プラテンを配置し、この導電性ローラ、または導電性プラテンを負の高圧電源に接続する構成としても良いし、あるいは搬送ベルト108を絶縁性ベルトとし、導電性ローラは接地し、導電性プラテンを負の高圧電源に接続する構成としても良い。
帯電手段110は、静電力によって記録媒体Pが浮き上がりの無い状態で搬送ベルト108に静電吸着した後、搬送ベルト108を駆動しながら、記録媒体P表面を均一帯電する。記録媒体Pを帯電する際の搬送ベルト108の搬送速度は、安定に帯電できる範囲であれば良く、画像記録時の搬送速度と同じでも良いし、異なっていても良い。また、記録媒体Pを複数回周回させることによって、同一の記録媒体Pに帯電手段を複数回作用させ、均一帯電を行っても良い。
なお、本実施例では、帯電手段110で記録媒体Pの静電吸着および帯電を行っているが、別々に設けてもよい。
帯電手段110によって帯電された記録媒体Pおよび強電界形成部18は、搬送ベルト108によって後述するヘッドユニット120の位置まで搬送される。上述のように、強電界形成部18は、記録媒体Pの止着位置の搬送方向上流側に配置されている。これにより、記録媒体Pがヘッドユニット120と対向する位置に搬送される前にヘッドユニット120と対向する位置を通過し、ヘッドユニット120の全吐出部をぬれた状態にする。
ヘッドユニット120は上述の図2〜図5に示した吐出ヘッドを用いて、記録媒体Pに画像を記録する。ここで、吐出ヘッドは、記録媒体Pの帯電電位をバイアス電圧とし、吐出ヘッドの制御電極に記録信号電圧が印加し、バイアス電圧に駆動電圧が重畳し、インク液滴Rを吐出し、記録媒体Pに画像が形成するのは、前述の通りである。この際、搬送ベルト108の加熱手段を設け、記録媒体温度を高めることで、記録媒体P上におけるインク液滴Rの定着を促進することができ、滲みをより一層抑制して画質の向上を図ることができる。なお、ヘッドユニット120等による画像記録に関しては、後に詳述する。
画像が形成された記録媒体Pは、除電手段112により除電され、剥離手段114により搬送ベルト108より剥離されて定着・搬送手段116へ搬送される。
本実施例において、除電手段112は、コロトロン除電器112aと、交流電源112bと、直流高圧電源112cとを有し、直流高圧電源112cの他方の端子は、接地されている。図示例の除電手段112は、コロトロン除電器112aおよび交流(AC)電源112bを用いる、いわゆるACコロトロン除電器を使用しているが、これ以外にも、例えばスコロトロン除電器、固体チャージャ、放電針等の種々の手段や方法などが利用でき、また、上述の帯電手段110のように、導電性ローラや導電性プラテンを用いる構成も好適に使用される。また、剥離手段114としては、剥離用ブレード、逆回転ローラ、エアナイフ等公知の技術が利用可能である。
搬送ベルト108から剥離された記録媒体Pは、定着・搬送手段116に送られ、インクジェットによって形成された画像が定着される。本実施例においては、定着・搬送手段116としてヒートローラ116aおよび搬送ローラ116bからなるローラ対を用い、記録媒体Pを搬送すると共に、記録媒体Pに形成された画像を接触加熱して定着している。なお、本発明においては、定着手段を搬送ローラ対からなる搬送手段と別々に設け、他の定着手段や定着方法によって定着を行ってもよい。
加熱定着としては、上述のヒートロール定着以外に、赤外線またはハロゲンランプやキセノンフラッシュランプによる照射、あるいはヒータを利用した熱風定着等の一般的な加熱定着を挙げることができる。
なお、加熱定着の場合、記録媒体Pとして、コート紙やラミネート紙を用いた場合には、急激な温度上昇により紙内部の水分が急激に蒸発し紙表面に凹凸が発生する、ブリスターと呼ばれる現象が生じるため、これを防止するために、複数の定着器を配置し、紙が徐々に昇温するように、各定着器の電力供給および記録媒体Pまでの距離の一方または両方を変えるのが好ましい。
なお、少なくともヘッドユニット120による画像形成から、定着・搬送手段116による定着までの行程では、記録媒体Pの画像形成面には何も接触しないように保たれることが望ましい。
定着・搬送手段116における定着の際の記録媒体Pの移動速度には、特に制限的では無く、画像形成時の搬送ベルト108による搬送速度と同じであっても良いし、異なっていても良い。画像形成時の搬送速度と異なる場合には、定着・搬送手段116の直前に記録媒体Pの速度バッファを設けるのも好ましい。
画像が定着された記録媒体Pは、ガイド118に案内されて図示されない排紙ストッカに排紙される。
次に、インクジェットプリンタ100における画像形成(描画)手段および画像記録方法について説明する。
上述したように、インクジェットプリンタ100の画像形成手段は、インクジェットを吐出するヘッドユニット120、ヘッドユニット120にインクの供給および回収を行うインク循環系122、図示されないコンピュータ、RIP(Raster Image Processor)等の外部機器からの出力画像信号によりヘッドユニット120を駆動するヘッドドライバ124、記録媒体Pにおける画像形成(記録)位置を決定するために記録媒体Pを検出する記録媒体位置検出手段126、およびヘッドユニット120の位置を制御する記録位置制御手段128により構成される。
図9(B)は、ヘッドユニット120および記録位置制御手段128と、その周辺の記録媒体Pの搬送手段を模式的に示す斜視図である。
ヘッドユニット120は、フルカラー画像の記録を行うためのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色の吐出ヘッド120aを有し、ヘッドドライバ124からの信号に従って、インク循環系122によって供給されるインクをインク液滴として吐出して、搬送ベルト108によって所定速度で搬送されている記録媒体Pに画像を形成(記録)する。各色の吐出ヘッドは、搬送ベルト108の搬送方向に配列されている。なお、ヘッドユニット80の各色の吐出ヘッド120aは、上述した図2〜図5に示すインクジェットヘッドである。
図示例において、各吐出ヘッド120aは、吐出口96が記録媒体Pの幅方向全域に配列されたラインヘッドであり、好ましくは、図3に示されるように、互いに千鳥状となるように配置された複数のノズル列を有するマルチチャンネルヘッドである。
従って、図示例においては、搬送ベルト108に記録媒体Pを保持させた状態で、ヘッドユニット120に対して記録媒体Pを搬送によって1回通過させるだけで、すなわち1回の走査搬送を行うのみで、記録媒体Pの全面に画像が形成される。従って、吐出ヘッドをシリアルスキャンする場合に比べて、高速での画像記録(描画)が可能となる。
なお、本発明のインクジェットヘッドは、いわゆるシリアルヘッド(シャトルタイプ)にも利用可能であり、従って、記録装置100も、この態様であってもよい。
この際においては、各インクジェットヘッドの吐出口96の列(単列でもマルチチャンネルでもよい)を搬送ベルト108の搬送方向と一致させてヘッドユニット120を構成し、ヘッドユニット120を記録媒体Pの搬送方向と直交する方向に走査する走査手段を設ける。走査手段としては、既に知られた走査手段を用いることができる。
画像記録は、通常のシャトルタイプのインクジェットプリンタと同様に行えばよく、吐出口96の列の長さに応じて、搬送ベルト108によって記録媒体Pを間欠的に搬送しつつ、この間欠搬送に同期して、停止時にヘッドユニット120を走査して、記録媒体Pの全面に画像を記録する。
このようにして、ヘッドユニット120によって記録媒体Pの全面に形成された画像は、前述のように、記録媒体Pが定着・搬送手段116によって挟持搬送されることにより、定着・搬送手段116によって定着される。
次に、インク循環系122は、ヘッドユニット120の各色の吐出ヘッド120aのインク流路78(図2参照)にインク吐出に十分なインクを流すためのもので、4色(C、M、Y、K)の各色のインクタンク、ポンプおよび補給用インクタンク(図示せず)等を有するインク循環装置122aと、インク循環装置122aのインクタンクからヘッドユニット120の各色の吐出ヘッド120aのインク流路78(図2参照)にそれぞれ各色のインクを(図2中の右側から)供給する各色のインク配管系からなるインク供給路を含むインク供給系122bと、ヘッドユニット120の各色の吐出ヘッド120aのインク流路78(図2中の左側)からインクをインク循環装置122aに回収する各色のインク配管系からなるインク回収路を含むインク回収系122cとを有する。
インク循環系122は、インク循環装置122aによって、インクタンクからインク供給系122bを介してヘッドユニット120に各色毎にインクを供給し、かつ、インク供給系122cを介してヘッドユニット120から各色毎にインクをインクタンクに回収して循環させることができればどのようなものでも良い。インクタンクは、画像記録用のインクを貯留しており、このインクがポンプにより汲み出されてヘッドユニット120へ送られる。ヘッドユニット120からインクが吐出されることにより、インク循環系82で循環しているインクの濃度が低下するので、インク循環系82では、インク濃度検出器によってインク濃度を検出し、検出したインク濃度に応じて補給用インクタンクから適宜インクを補充して、インク濃度を所定の範囲に保つのが望ましい。
また、インクタンクには、インクの固形成分の沈殿・濃縮を抑制するための攪拌装置や、インクの温度変化を抑制するためのインク温度管理装置が備えられるのが好ましい。この理由は、温度管理をしないと、環境温度の変化等によりインク温度が変化して、インクの物性が変化することによりドット径が変化し、高画質な画像が安定して形成できなくなる可能性があるからである。
攪拌装置としては回転羽、超音波振動子、循環ポンプ等が使用できる。
インクの温度制御装置としてはヘッドユニット120、インクタンク、インク配管系等に、ヒータなどの発熱素子や発熱手段および/またはペルチェ素子等の発熱・吸熱素子および/または冷却器などの冷却手段などの温調素子や温調手段ならびにそのコントローラおよび温度センサを備え、温調素子や温調手段を温度センサによって検出されたインク濃度に応じてコントローラによって制御するものや、温調素子や温調手段を、温度センサとコントローラが一体化された、例えばサーモスタットにより制御するもの等、公知の温調ユニットが使用できる。温度制御装置をインクタンク内に配置する場合には、温度分布を一定にするように攪拌装置と共に配するのがよい。また、タンク内の濃度分布を一定に保つための攪拌装置は、インクの固形成分の沈澱・濃縮の抑制するための攪拌装置と共用しても良い。
ヘッドドライバ124は、外部装置から画像データを受け取り、種々の処理を行うシステム制御部(図示せず)から画像データを受け取り、その画像データに基づいてヘッドユニット120を駆動する。このシステム制御部は、コンピュータやRIP、画像スキャナ、磁気ディスク装置、画橡データ伝送装置等の外部装置から受け取った画像データを色分解すると共に、分解されたデータに対して適当な画素数、階調数に分割演算し、スクリーニング処理、網点面積率の演算を行って、ヘッドドライバ124がヘッドユニット120(吐出ヘッド120a)を駆動するための、画像データに応じたヘッド駆動データである。
また、システム制御部は、搬送ベルト108による記録媒体Pの搬送タイミングに合わせたヘッドユニット120(記録位置制御手段128)の移動、および、ヘッドユニット120によるインクの吐出タイミングの制御を行う。吐出タイミングの制御は、記録媒体位置検出手段126の出力や、搬送ベルト108または搬送ベルト108の駆動手段へ配置したエンコーダやフォトインタプリッタからの出力信号を利用して行われる。
記録媒体位置検出手段126は、ヘッドユニット120によるインク液滴の吐出位置に搬送されてくる記録媒体Pを検出するためのもので、フォトセンサ等の公知の検出手段を用いることができる。
記録位置制御手段128は、ヘッドユニット120を載置・固定して、搬送ベルト108の幅方向に移動させ、記録媒体Pへの幅方向の画像形成位置を調整するものである。すなわち、記録位置制御手段128は、記録媒体Pの所定の位置に画像を形成するための微調整、および、ヘッドユニット120としてマルチチャンネルヘッドを用いた場合の副走査のために、搬送ベルト位置検知手段109が検知した搬送ベルト108の位置と、ヘッドドライバ124からの画像信号とに応じて、ヘッドユニット120を移動させるものである。
次に、インクジェットプリンタ100における溶媒回収手段について説明する。
インクジェットプリンタ100は、溶媒回収手段として、排出ファン130および溶媒回収装置132を有し、ヘッドユニット120から記録媒体P上に吐出された色材粒子およびこれを分散させる分散溶媒を含むインク液滴から蒸発する、特にインク液滴によって形成された画像を定着する際に記録媒体Pから蒸発する分散溶媒を回収する。
排出ファン130は、インクジェットプリンタ100の筐体101内部の空気を吸い込んで溶媒回収装置132へ送るためのものである。
溶媒回収装置132は、溶媒蒸気吸収材を備えており、排出ファン130によって吸い込まれた溶媒蒸気を含む気体の溶媒成分をこの溶媒蒸気吸収材に吸着し、溶媒が吸着回収された後の気体をインクジェットプリンタ100の筐体101外に排出する。溶媒蒸気吸収材としては、各種の活性炭などが好適に使用される。
上記では、C、M、Y、Kの4色のインクを用いてカラー画像を記録する静電式インクジェット記録装置について説明したが、本発明はこれには制限されず、モノクロ用の記録装置であってもよいし、他の色、例えば淡色や特色のインクを任意の数だけ用いて記録するものであってもよい。その場合は、インク色数に対応する数のヘッドユニット120およびインク循環系122が用いられる。
また、上記の例ではいずれも、インク中の色材粒子を正帯電させ、記録媒体、記録媒体の背面の導電性プラテン、または搬送ベルトの導電層を負の高電圧にして、吐出したインクジェットによって画像記録を行うインクジェット式記録装置について説明したが、本発明はこれには限定されず、逆に、インク中の色材粒子を負に帯電させ、記録媒体、導電性プラテン、または搬送ベルトの導電層を正の高電圧にして、インクジェットによる画像記録を行っても良い。このように、色材粒子の極性を上記の例と逆にする場合には、帯電手段、導電性プラテン、搬送ベルトの導電層、静電式インクジェットヘッドの駆動電極への印加電圧極性等を上記の例と逆にすれば良い。
また、本発明の静電式インクジェット記録装置は、帯電した色材成分を含むインクを吐出するものに限定されるものではなく、色材粒子を含む液体を吐出させる液体吐出ヘッドであれば特に制限されず、例えば、上記静電式インクジェット記録装置の他に、帯電粒子を利用して液滴を吐出して対象物を塗布する塗布装置に適用することができる。
以上、本発明に係る静電式のインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法について、種々の実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記種々の実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
本発明のインクジェット記録装置の概略構成を示す模式図である。 図1に示すインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの一例の模式図である。 吐出ヘッド16の吐出口基板76に複数の吐出口82が二次元的に配列されている様子を模式的に示した図である。 マルチチャンネル構造のインクジェットヘッドのガード電極の平面構造を模式的に示した図である。 (A)は、図2のインクジェットヘッドにおける吐出部近傍の構成を示す部分断面斜視図であり、(B)は、インク誘導堰の形状寸法を説明する図である。 (A)〜(D)は、強電界形成部18の配置例を模式的に示す斜視図である。 (A)〜(F)は、強電界形成部18の配置例を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録装置の他の一例の概略構成を示す模式図である。 本発明のインクジェット記録装置の具体的一例の概念図である。 従来のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの一例を示す概念図である。
符号の説明
10、50、100 インクジェット記録装置
12、52 搬送手段
14、100 帯電手段
16、120a インクジェットヘッド(吐出ヘッド)
18 強電界形成部
20、60、108 搬送ベルト
22、24、106a、106b、106c ベルトローラ
30 絶縁層
32 導電層
40 スコロトロン帯電器
42 高電圧源
62 導電性プラテン
72 ヘッド基板
74 インクガイド
74a 先端部分
76 吐出口基板
78 吐出電極
80 ガード電極
82 各吐出口
84 インク流路
86 絶縁基板
88 絶縁層
90 開口部
92 制御部
94 誘導堰
102 フィードローラ
104 ガイド
109 搬送ベルト位置検知手段
112 除電手段
114 剥離手段
116 定着・搬送手段
118 ガイド
120 ヘッドユニット
122 インク循環系
124 ヘッドドライバ
126 記録媒体位置検出手段
128 記録位置制御手段
130 排出ファン
132 溶媒回収装置
P 記録媒体
Q インク
R インク液滴

Claims (9)

  1. 画像が記録される記録媒体を載置する絶縁性載置部を有し、該絶縁性載置部上に載置された前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
    前記搬送手段と対向する位置に配設され、画像信号に応じてインクに静電力を作用させてインク液滴を前記記録媒体に吐出する吐出部を有するインクジェットヘッドと、
    前記記録媒体および前記インクジェットヘッドが画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、前記吐出部に強電界を形成する強電界発生手段とを有し、
    前記強電界発生手段は、帯電手段と該帯電手段によって帯電されることにより前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも強い電界強度を前記吐出部に与える強電界形成部とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記強電界形成部が、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも絶縁性の高い部材であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記強電界形成部が、前記搬送手段の少なくとも一部に設けられた、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも絶縁性の高い部材であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記強電界形成部が、前記搬送手段の少なくとも一部に設けられた、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも前記インクジェットヘッド側に突出した凸部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記帯電手段が、前記記録媒体および前記絶縁性載置部の少なくとも一方を帯電させ、前記記録媒体および前記絶縁性載置部よりも強い電界強度を吐出部へ与えるように帯電させるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記搬送手段が、画像が記録される記録媒体を載置する前記絶縁性載置部としての絶縁層を有するとともに、該絶縁層上に載置された前記記録媒体を搬送する搬送ベルトを備えたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記インクジェットヘッドは、インク液滴を吐出させる吐出口と、
    前記吐出口を通過して、その先端部分が前記吐出口の開口面よりも記録媒体側に突出するインクガイドとを有する請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記インクジェットヘッドは、前記吐出口が開口された吐出口基板と、
    前記吐出口基板と所定間隔離間して配置され、前記吐出口基板との間にインク流路を形成し、前記吐出口基板側の表面の前記吐出口の配置に対向する位置に前記インクガイドが形成されたヘッド基板と、
    前記吐出口基板の前記吐出口周りに配置され、前記吐出口からのインク液滴の吐出を制御する吐出電極とを有する請求項7に記載のインクジェット記録装置。
  9. 搬送手段によりインクジェットヘッドに対向する位置に搬送された記録媒体に、前記インクジェットヘッドが画像信号に応じてインクに静電力を作用させて吐出部から前記記録媒体にインク液滴を吐出させることにより前記記録媒体に画像を形成するインクジェット記録方法であって、
    前記記録媒体および前記インクジェットヘッドが画像記録可能な位置へ相対移動される直前に、前記インクジェットヘッドと対向する位置に前記記録媒体よりも強い電界強度を前記吐出部へ与える強電界形成部を通過させることを特徴とするインクジェット記録方法。
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