JP2006101788A - シルクパウダー水溶液を噴霧するエリンギの栽培方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 肉質のきめが細かく、大きさの揃った大きな、かつ、トレハロース及びアミノ酸の多量に含有するエリンギを簡易な方法で安定的に生産する方法を提供する。
【解決手段】 蚕の繭、生糸もしくは絹糸などの繊維分に含有のセリシンを除去した後の蚕の繭、生糸もしくは絹糸の繊維素材の粉末のシルクパウダーを容量%で1〜10%含有するシルクパウダー水溶液を生成し、このシルクパウダー水溶液を、図1に示すように、人工栽培中のエリンギの芽出し管理時期および生育管理時期のエリンギの子実体に噴霧してエリンギを人工栽培する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、エリンギの人工栽培に関するものであり、特にトレハロースおよびアミノ酸を多く含有するエリンギの人工栽培に関するものである。
食用キノコは通常は季節に応じて里山などの山肌や朽木に自然に繁殖し、キノコ狩りで収穫していたが、現在ではシイタケをはじめとしてエノキタケ、ヒラタケ、シメジ、マイタケ、ナメコなどの種々のキノコ類が人工栽培されている。ところで最近ではこれらのキノコ類に加え、さらにヨーロッパ、モロッコ、パキスタンやインドなどでで好まれていたエリンギ(学名プレオロータス・エリンギィ)が人工栽培されるようになってきた。
従来、このエリンギの栽培は下記のような手順で行われている。まず、スギのオガ粉やフスマ、コーンなどの培地の材料を混合撹拌してから含水率を65%前後に調整し、850cc程のブロービンなどの容器にこの調整した材料を詰め込んで培地とする。このブロービンに詰めた培地を高温高圧にて殺菌、冷却した後、エリンギの種菌を培地に接種する。これを30〜40日培養した後、菌掻きを行って発芽数を調整し、さらに芽出し管理を行って一番発生を待ち、これらの生育を図って十分に成長したエリンギを得て、それを収穫する(例えば、非特許文献1参照。)。
エリンギはキノコのなかでも胞子が発生しやすいことで知られている。ところで、発生した胞子が雑菌の繁殖を招き、生育中に立ち枯れが発生し易いなど、エリンギ特有の発症しやすい症状がある。また、湿度、CO2濃度、照度など発育環境によって、菌掻き後のエリンギの発生量および生育速度、生育方向、傘や柄の大きさ、などが大きく左右される。そこで、エリンギの安定的な人工栽培を指向するものとして、菌掻き処理後、注水処理を行わずに容器の口を開放状態で倒立あるいは正立状態として、湿度50〜75%未満と75〜100%の環境を交互に一定間隔で繰り返して与えて芽出し管理を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これは安定生産のための人工栽培方法を指向するものであっても、あくまでもその主眼は子実体の大型化などによる生産性の向上にすぎなかった。一方、キノコも一般の野菜などの食用植物と同様に種々の成分が含有されており、これらの成分のうちの有効成分を増やす栽培方法が注目され始めている。
ところで、キノコに含有される成分を人工栽培によって改善することを目指したものとしては、培地である菌床に絹粉末を添加することによって、通常のキノコに含まれるアミノ酸含有量に対してアミノ酸の含有量を高めようとするものがある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この公開公報に開示されている内容は、キノコ栽培の培地に絹粉末を入れるということに過ぎず、それ以外、その具体的な実施の形態についての記載が極めて乏しいものであるといわざるを得ない。たとえば、菌床となる培地に絹粉末をいかなる割合で添加するかなどが全く明示されておらず、また、培地に関する発明でありながら、キノコごとに適、不適の特性があるはずの培地の材料選択及びその混合割合等についての記載が明細書中のどこにも見当たらないため、当業者がただちに実施し得ないものである。また、アミノ酸の含有量が高まるとの記載は見られるものの、それ以外の効果は何ら見いだされていなかった。また、絹粉末を培地に混入させるとすると、多量の絹粉末が必要となると思われる。
特開2000−209944号公報 特開平11−220945号公報 澤 章三著「エリンギ−安定栽培の実際と販売・利用」農山漁村文化協会 2001年3月5日発行
本発明が解決しようとする課題は、肉質のきめが細かで大きさの揃った大きなエリンギを人工栽培しながらこれらの品質を維持し、かつ、トレハロースの含有量を通常のエリンギよりも増量して有するエリンギを簡易な方法で安定的に生産する方法を提供することである。すなわち、エリンギは他のキノコと比較して培養中におけるトレハロースの蓄積量が多いキノコであるが、本発明は、さらに、品種改良による方法ではなく、栽培方法の工夫によってエリンギのトレハロース含有量を飛躍的に増大させること、および、各種アミノ酸の含有量を増大させる方法を提供することである。
エリンギは、培地からの水の吸引力が強く、しかも子実体中のトレハロース含有量が他のキノコに比して多いことから、酵母菌などによる表面感染を受け易いことが知られており、正常に生育した子実体の菌柄部が酵母菌によって一夜にして黄褐色とされてしまうこともある。また、トレハロースを通常よりもさらに多く含有するエリンギを栽培するためには、栽培方法により一層の工夫を凝らすことが求められる。そこで、少ない手数や手順で雑菌などに侵されることなく、効率よくエリンギの有効成分を増量させる栽培方法を見いだす必要があった。そこで発明者は鋭意研究して本発明の手段を得た。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、蚕の繭、生糸もしくは絹糸の繊維分に含有のセリシンを除去した後の蚕の繭、生糸もしくは絹糸の繊維素材の粉末のシルクパウダーを容量%で1〜10%含有するシルクパウダー水溶液とし、このシルクパウダー水溶液を人工栽培中のエリンギの芽出し管理時期および生育管理時期にエリンギの子実体に噴霧することを特徴とする高トレハロース含有量のエリンギの人工栽培方法である。
ところで、蚕の繭や生糸や絹糸の繊維分に含有されるタンパク質成分は、フェブロインが70%でセリシンが30%からなっているといわれる。そこで、上記の本発明の解決手段は、蚕の繭や生糸や絹糸の繊維分の中にタンパク質成分からセリシンを除いた成分を使用するものであり、しかも使用の便を図るため粉末として使用するものである。
このセリシンは熱湯に溶け、冷えるとゲル化する性質がある。そのため、このようにゲル状となるセリシンを含有したままの状態の蚕の繭、生糸もしくは絹糸の繊維分を粉末としても、この粉末を含有する水溶液とすることは難しい。したがって、セリシンを含んだ状態の粉末の水溶液をエリンギに噴霧することは困難である。仮に、噴霧したとしてもエリンギの表面にセリシンを含んだ粉末が糊状となって付着してしまう。このためセリシンが糊状に付着したエリンギの表面でトリコデルマその他の雑菌類が繁殖しやすくなり、エリンギの成長に支障を来すこととなる。そこで、本発明の手段は、セリシンを予め取り除いた粉末状のシルクパウダーとし、これを水溶液として噴霧することでエリンギ表面に糊状付着を生じることなくしかも雑菌の繁殖をなくしてエリンギ内に十分に摂取されるものとする。
このセリシンを含まないシルクパウダーの水溶液を噴霧する時期は、エリンギの種菌を培養後、芽出し管理をしている時期および生育管理時期、とりわけ生育初期の段階であり、この時期のエリンギの幼子実体及び子実体に噴霧するものとする。このように本発明の手段は、種菌から発生したエリンギの子実体(担胞子体)にシルクパウダー水溶液を噴霧するので、エリンギの子実体に養分を直接に摂取させることができる。しかも、この直接に噴霧する方法であるので、エリンギの子実体の周囲表面全体に洩れを生ずることなく均一に噴霧することができ、シルクパウダーの栄養分を効率よく子実体に行き渡らせることが可能となる。
さらに、子実体の芽出し及び生育過程での噴霧の回数は数回程度で十分で、たとえば芽出し管理時期の芽出し中および生育管理時期の初期の生育中にそれぞれ一回ずつ噴霧する。この場合には、シルクパウダーを添加混入した培地を造り、培地から摂取させることも考えられる。しかし、この培地から摂取させる方法に比し、本発明の手段の直接子実体に噴霧する方法は高価なシルクパウダーの総使用量を格段に抑えることができ、しかもエリンギ中の栄養部分となる各種アミノ酸及びトレハロースの含有量を大幅に向上させることができる。
ところで、このようにシルクパウダー水溶液を噴霧すると生育雰囲気として極めて大切な湿度に暫時変化を与えることになる。しかしながら、従来のエリンギ栽培方法の生育管理方法においても、生育雰囲気の湿度を意図的に上下動させるものであり、しかも、本発明の手段の噴霧の回数は少ないので、本発明の噴霧手段がエリンギの生育条件である生育環境の湿度管理に及ぼす影響はほとんどない。そのため本発明の手段の噴霧を実施しても管理手順が複雑化したり困難となることもなく、従来どおり容易にエリンギの生育管理を行うことができる。
本発明の手段の噴霧に用いるシルクパウダー水溶液中のシルクパウダーの濃度は、溶媒の水に対して容量%で1〜10%とし、とりわけ1〜3%とすることが望ましい。これは1%未満ではエリンギの生育に対する噴霧効果はなく、効果は1%以上で見られることによる。しかし、3%を超えても生育上の噴霧効果は3%と格別の差異はなく飽和する。10%を超えるとコストが増加するので上限を10%とする。
本発明のエリンギの人工栽培方法において、セリシンを除いたシルクパウダー水溶液をエリンギ子実体に噴霧する簡易な方法とすることによって、少ないシルクパウダーの使用量でありながら、通常の栽培方法に比してエリンギ中のトレハロースの含有量を増量させることができ、さらにアミノ酸の含有量も増量させることができるなど、本発明は優れた効果を奏するものである。
本発明を実施するための最良の形態を図1を参照して工程順に説明する。先ず、(a)工程としてエリンギの培地用の材料(培地素材)はオガ粉を主成分とし、さらに質量%でコーンコブミールを18〜21%、フスマを35〜45%、オルガ(菌糸活性剤)を6〜7.3%、米糠を8〜20%を加えて、残部をオガ粉とするものである。これらの培地素材に加水して含水率を60〜65%とする。次いで、(b)工程として、加水した培土素材を良く混合撹拌する。(c)工程として撹拌した培地素材を850ccのブロービンもしくは4リットルの広口ポットに仕込んで培地とする。上記においてオガ粉は主としてスギ又はヒノキなどの針葉樹のオガ粉とする。なお、コーンコブミールとはトウモロコシの茎を粉砕したものである。
次いで、(d)工程としてこの培地を入れたブロービンもしくは広口ポットを高温高圧殺菌釜に装入し、120℃、137.2kPa(1.4気圧)にて60分間掛けて殺菌する。その後、(e)工程として殺菌釜から取り出し、容器内の培地の温度を20℃以下になるまで冷却室で冷却する。この冷却したブロービンもしくは広口ポットを(f)工程として20℃以下に温度管理したクリーンルームなどの清潔な部屋に移し、この部屋で培地にエリンギの種菌を10〜15cc接種する。次いで培地に接種したブロービンもしくは広口ポットを(g)工程として冷房、暖房、加湿及び換気の行える清潔な培養室にさらに移して、冷暖房、加湿、換気を繰り返しつつ、温度20〜24℃、湿度60〜75%に管理して、35日間培養し、菌糸を容器の培地内にゆっくりとまんべんなく蔓延させる。
次いで、(h)工程としてブロービンの場合には20℃以下に温度管理した清潔な部屋にて菌掻きを施し発芽数を調整する。広口ポットの場合はポットの口が広く多数の発芽した子実体を生育しうるので、発芽数を調整するための菌掻きは必ずしも必要としない。
次いで、(i)工程としてさらに部屋を移して、冷暖房、加湿、換気を繰り返しつつ、温度15〜18℃、湿度60〜90%にて、10日間ほどかけて芽出し管理をする。この芽出し管理の間に(j)工程としてエリンギの派生した芽の幼子実体にまんべんなく3%のシルクパウダー水溶液を1回噴霧する。
発生した芽が生長しだしたら、(k)工程として子実体がさらに生育するように生育室に移し、冷暖房、加湿、換気を繰り返して乾湿の差をつけながら、照度50〜100ルクス、温度15〜18℃、湿度65〜92%に管理して生育させる。この生育段階の初期に、(l)工程としてエリンギの子実体に再度まんべんなく3%のシルクパウダー水溶液を1回噴霧し、さらに生育を続ける。そして、この子実体のエリンギが収穫できるような大きさのキノコに生育した段階で、(m)工程としてキノコ全体をその石突きの部分ではずすようにして収穫し、収穫したエリンギを大中小取り分けて、計量、包装のうえ、市場に出荷するものとする。
上記の方法にてシルクパウダー水溶液の噴霧工程を実施して得られた生エリンギと、シルクパウダー水溶液の噴霧工程を実施することなく得られた通常の生育方法による生エリンギとについて、トレハロース及びアミノ酸のエリンギ中に含有される量を分析試験にかけて調査したところ、表1に示すような結果が得られた。まず、シルクパウダー水溶液の噴霧を行わずに人工栽培したエリンギのトレハロース含有量は100g中に2.40gであったのに対して、本発明の方法にてシルクパウダー水溶液を芽出し管理の間および生育管理の間の生育初期に子実体に各1回噴霧したものは、トレハロース含有量は100g中に3.76gとなり、トレハロース含有量が1.57倍に大幅に増量されたことが確認された。なお上記の分析試験は、財団法人日本食品分析センターにより行われ、シルクパウダー水溶液を噴霧した生のエリンギと通常の生育方法による生のエリンギとについて、それぞれトレハロース及びアミノ酸のトリプトファンは高速液体クロマトグラフ法により、トリプトファン以外のアミノ酸はアミノ酸自動分析法により行われたものである。
Figure 2006101788
さらに、表1から分かるように、本発明の手段のシルクパウダー水溶液の噴霧工程を実施して育成したエリンギは、トレハロースの含有量がシルクパウダー水溶液を噴霧しないものに比して上記のように1.57倍に増量されたほか、各種アミノ酸の含有量総計も1.42倍に増量された。すなわち、本発明の方法にてシルクパウダー水溶液を噴霧したエリンギでは各種アミノ酸の含有量総計が100g中2.77gであったのに対し、通常のエリンギでは各種アミノ酸の含有量総計が100g中1.945gで、本願発明によるものは明らかに増量しており、また個別のアミノ酸も全てに本願発明によるものは増量されていた。
なお、本発明の方法にて生育させて得られたエリンギは、噴霧しない場合と比較して、肉質が細かく、同一株から生育したエリンギは大きさに不揃いがなく、揃って大きく生育しており、さらに、収穫したエリンギの日持ちについても従来のものに比して良好な結果を示した。
本発明の方法におけるエリンギの育種の一実施の形態を示す工程図である。

Claims (1)

  1. 蚕の繭、生糸もしくは絹糸の繊維分に含有のセリシンを除去した後の蚕の繭、生糸もしくは絹糸の繊維素材の粉末のシルクパウダーを容量%で1〜10%含有するシルクパウダー水溶液とし、このシルクパウダー水溶液を人工栽培中のエリンギの芽出し管理時期および生育管理時期にエリンギの子実体に噴霧することからなる高トレハロース含有量のエリンギの人工栽培方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103214311A (zh) * 2013-04-09 2013-07-24 邬金飞 一种蘑菇栽培种培养料及其制作方法

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