電子写真方式のプリンタや複写機等の静電記録装置としては、感光体ドラムと呼ばれる記録体と現像装置とを有する構成が知られている。この構成の静電記録装置では、感光体ドラムを所定電位に帯電した後、画像情報に応じて露光を記録体に対して行い、現像装置からトナーと呼ばれる像可視化剤を供給することにより記録体上に形成した静電潜像を可視像とし、この可視像を記録媒体上に転写定着することで印刷を行う。
この構成による静電記録装置に設けられる現像装置としては、現像剤収容容器と、現像剤搬送手段と、現像ローラと、現像剤搬送量規制部材と、トナー供給手段とを備える構成が知られており、トナーと、トナーを帯電、搬送するキャリアと呼ばれる磁性粉体とを所定の混合比率で混ぜ合せた2成分現像剤が用いられる。現像剤は、現像剤搬送手段によって攪拌され、現像剤中のトナーとキャリアとが互いに摩擦されることによりトナーが所定の値に帯電されてキャリアにトナーが付着する。
そして、キャリアに付着したトナーは、複数個の磁石を内部に備えその外周には回動可能に設けられたスリーブローラを有する現像ローラに導かれ、磁石の磁力により現像ローラに吸着され、スリーブローラの回転によって保持搬送され、現像ローラに近接対向配置されたドクタブレード呼ばれる現像剤搬送量規制部材と現像ローラとの間に形成された間隙を通過することにより、スリーブローラによる現像剤の搬送量が所定量に規制される。
ドクタブレードによって所定量に規制された現像剤は、スリーブローラの回転により感光体ドラムと対向する位置まで搬送され感光体ドラムと接触する。この時、現像ローラにはバイアス電圧(以下「現像バイアス」とする)が印加されており、感光体ドラム上の静電潜像との相互作用により形成される電場により、帯電したトナーが感光体ドラムの画像形成位置へ吸着されて現像が行われる。
感光体ドラムに対向する現像ローラの位置であって現像ローラ上の現像剤が感光体ドラムと接触して現像を行う領域である現像部の位置では、複数個の磁石のうちの1つが設けられているため、磁石による磁力線は現像ローラから離間する方向へ指向する。このため、磁力線に沿ってキャリアが、あたかも団子のように現像ローラから離間する方向へ連なって、現像ローラのスリーブローラの表面から穂が立ついわゆる穂立ちが生じた状態となり、いわゆる磁気ブラシが形成される。
近年では、高画質化の要求に伴いキャリアの小粒径が進んでいる。キャリアを小粒径化すると、感光体ドラム表面を摺擦する現像剤の穂が緻密になるため、静電潜像をより忠実に現像でき、ざらつきのない良好な画像を得ることができる。しかし、キャリアを小粒径化すると、現像部においてキャリアを磁気的に保持する力が弱くなるので、キャリア飛びが発生し易くなるという問題が生ずる。小粒径化されたキャリアのキャリア飛びを抑えるためには、キャリアを磁気的に保持する力を磁気ブラシの先端まで利かせることが考えられる。このためには、磁気ブラシの穂長を短くする必要があり、穂長が短くなると、現像部における現像ローラと感光体ドラムとの最近接距離である現像ギャップと、ドクタブレードとスリーブローラとの間の最近接距離であるドクタギャップとを狭く設定することが必要になる。
現像ローラにおいて現像ローラの回転方向におけるドクタブレードの上流側の位置と下流側の位置とに異極性の磁石が配置され、異極性の磁石による磁極間にできる磁極極性の反転位置にドクタブレードが配置されている(例えば、特許文献1参照)。
この構成では、ドクタギャップを小さくすると、各部品の加工精度や組立精度に因るドクタギャップのばらつきにより、ドクタギャップ通過後の現像剤搬送量を一定に調整することが難しい。
また、現像部での現像剤充填率が高くなるため、磁気ブラシの機械的な掻取り力が大きくなり、画像にキャリアの掃きスジ等が発生する。逆に、現像ローラ上の現像剤量が適正な範囲より少ない場合は、画像濃度が目標値に達しなかったり、画像濃度が不均一になったりする問題が発生する。このため、ドクタギャップのばらつきに対して現像ローラ上の現像剤量の変化を小さくする必要がある。
また、ドクタギャップを狭く設定すると、現像剤がドクタギャップを通過する際に現像剤にかかるストレスが増大し、長期にわたって画質を維持することが困難になる。このため、ドクタギャップにおいて現像剤にかかるストレスを小さくする必要がある。
現像ローラの搬送極をなす磁極に対向して現像剤搬送量規制部材を配置し、上記課題を解決する現像装置が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
このような構成とすることで、比較的ドクタギャップを広くしても、現像剤搬送量規制部材による規制後の現像剤搬送量を少なくすることが可能になるため、ドクタギャップのばらつきによる搬送量変動を小さくすることが可能となり、現像剤搬送量規制部材を通過する際の現像剤のストレスも小さくすることができるため、長期間安定して高画質の印刷を行うことができる。
近年では、印刷速度の速い装置においても高画質化の要求が強くなってきており、より小粒径のキャリアが用いられる現像装置の開発が望まれている。印刷速度が速い装置では、現像ローラの回転速度も早くする必要があり、キャリア飛び量が低速機に比較して増加する。このため、スリーブ表面での最大磁束密度が0.07T以上の現像ローラや、飽和磁化が70emu/g以上のキャリアが用いられることが多い。
しかし、最大磁束密度の高い現像ローラや、飽和磁化の高いキャリアを用いた場合には、前述した磁極に対向して現像剤搬送量規制部材を配置した構成では、ドクタギャップを特開平2−79878号公報等に記載されている程度の広さに設定すると、現像剤搬送量規制部材による搬送量の規制位置で現像剤がスリーブローラ表面においてスリップし、現像剤搬送量規制部材の位置を通過できなくなり、印刷濃度低下やキャリア飛びが生ずる。このため、現像ギャップをかなり広くしなければならない。
また、螺旋状スクリュウを有して回転することによりその軸方向に現像剤を搬送するいわゆるオーガ又はオーガスクリュウと呼ばれる手段を用いて、順次現像ローラに現像剤を受け渡す方式の現像装置では、オーガで搬送される現像剤が現像ローラへ受け渡され、現像によってトナーを消費した現像剤がオーガに戻ってくる。これを繰り返しながら搬送方向下流側に現像剤が搬送されていくため、搬送方向の下流側ほど現像剤のトナー濃度が下がる。
ここで、用紙全面にベタ印刷を行うなどの高密度の印刷を行う場合であっても、当該最下流側で十分なトナーを供給できるだけのトナー濃度を保っている必要があるが、高速印刷を行う高速機では単位時間あたりに消費するトナー量が多くなる。このため、十分な量のトナーを現像剤に混ぜ込んだ状態で供給できないと印刷濃度低下やキャリア付着が発生する。しかし、多量にトナーを供給しようとしても、うまくキャリアと混ぜて適正な帯電量にすることができず、カブリやトナー飛散といった不具合が発生していた。
そこで、本発明は、高速でトナー消費の多い印刷において、印刷濃度低下やキャリア飛び等の生じない高画質印刷を長期に渡って維持することが可能な現像装置、及び当該現像装置を備える静電記録装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、内部にトナー及びキャリアを主成分とする現像剤を収容する現像剤収容容器と、螺旋状スクリュウを有し、該現像剤収容容器内に設けられ、該現像剤に少なくとも該螺旋状スクリュウの一部が浸漬され、該螺旋状スクリュウが回転することにより回転軸方向へ該現像剤を搬送する少なくとも1つの現像剤搬送手段と、略円柱状をなし該現像剤搬送手段と平行に軸心が配置され表面に静電潜像が形成され該静電潜像の形成された該表面に該現像剤が付着される記録体に対向するとともに、該現像剤搬送手段と対向し、内部に極性が異なるマグネットを複数有する円柱状部と該円柱状部の外周に設けられ該円柱状部の軸心を中心に回転可能なスリーブローラとを有し、該記録体及び該現像剤搬送手段と平行に軸心が配置され、該記録体上へ該現像剤搬送手段からの該現像剤を供給する少なくとも1つの現像ローラと、該記録体と対向する該現像ローラの位置よりも該スリーブローラの回転方向の上流側の位置に該現像ローラに近接対向配置され、該現像ローラによって該記録体上へ供給する該現像剤の量を所定量に規制するための現像剤搬送量規制部材と、該現像剤収容容器内にトナーを供給するためのトナー供給手段とを備え、該現像剤搬送量規制部材は、該現像ローラの該マグネットに対向する位置に配置され、該現像剤を該現像剤搬送手段で該現像ローラへ搬送し,該現像ローラに搬送された該現像剤で記録体上にトナー画像を形成して該現像剤により該記録体に形成された該静電潜像を可視化させる現像装置において、該キャリアの体積平均粒径は65μm以下で、且つ、該キャリアの飽和磁化は70emu/g以上であり、該スリーブローラの表面粗さは、該キャリアの体積平均粒径の0.45倍以上である現像装置を提供している。
ここで、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
また、該記録体と対向する該現像ローラの位置の内部に設けられている該マグネットの最大磁束密度は0.07T以上であることが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
また、該現像剤搬送手段の回転軸方向に搬送されるトナー流量をWとし、回転している該記録体の外周面の周方向における移動速度をVとし、該現像剤搬送手段により該現像剤が搬送される該現像ローラ上における該現像ローラの軸方向の幅を(L)とし、記録体上のトナー量を(M)として、10*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)<W(g/s)<40*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)の関係を満たすことが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
または、該現像剤搬送手段の回転軸方向に搬送されるトナー流量をWとし、回転している該記録体の外周面の周方向における移動速度をVとし、該現像剤搬送手段により該現像剤が搬送される該現像ローラ上における該現像ローラの軸方向の幅を(L)とし、記録体上のトナー量を(M)として、10*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)<W(g/s)<40*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)の関係を満たすことが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
又は、該現像ローラは、少なくとも第1の該現像ローラと第2の該現像ローラとの2本を有し、該第1の現像ローラの該スリーブローラは、該記録体との対向位置において該記録体の外周面と同方向に回転し、該第2の現像ローラの該スリーブローラは、該記録体との対向位置において該記録体の外周面と反対方向に回転し、該第1の現像ローラと該第2の現像ローラと対向位置においては該第1の現像ローラの該スリーブローラと該第2の現像ローラの該スリーブローラとが同方向に回転することが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
また、該記録体と対向する該現像ローラの位置の内部に設けられている該マグネットの最大磁束密度は0.07T以上であることが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
また、該現像剤搬送手段の回転軸方向に搬送されるトナー流量をWとし、回転している該記録体の外周面の周方向における移動速度をVとし、該現像剤搬送手段により該現像剤が搬送される該現像ローラ上における該現像ローラの軸方向の幅を(L)とし、記録体上のトナー量を(M)として、10*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)<W(g/s)<40*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)の関係を満たすことが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
更に、該現像剤搬送手段の回転軸方向に搬送されるトナー流量をWとし、回転している該記録体の外周面の周方向における移動速度をVとし、該現像剤搬送手段により該現像剤が搬送される該現像ローラ上における該現像ローラの軸方向の幅を(L)とし、記録体上のトナー量を(M)として、10*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)<W(g/s)<40*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)の関係を満たすことが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
または、該スリーブローラの回転方向において該現像剤搬送量規制部材に対向する位置に設けられた該マグネットの上流側に隣接配置された該マグネットの極性は、該現像剤搬送量規制部材に対向する位置に設けられた該マグネットの極性と同一であることが好ましい。
更に、該キャリアの芯材はマグネタイトを有していることが好ましい。
また、本発明は、略円柱状をなし、該現像剤搬送手段と平行に軸心が配置され、表面に静電潜像が形成され該静電潜像の形成された該表面に該現像剤が付着される記録体と、該記録体に電荷を与えるための帯電器と、電荷が印加された該記録体に露光を行うため露光器と、トナーを該記録体上に供給してトナー像を該記録体上に形成するための現像装置と、該トナー像を記録媒体上に転写するための転写機とを備え、該現像装置は、内部にトナー及びキャリアを主成分とする現像剤を収容する現像剤収容容器と、螺旋状スクリュウを有し、該現像剤収容容器内に設けられ、該現像剤に少なくとも該螺旋状スクリュウの一部が浸漬され、該螺旋状スクリュウが回転することにより回転軸方向へ該現像剤を搬送する少なくとも1つの現像剤搬送手段と、該記録体に対向するとともに該現像剤搬送手段と対向し、内部に極性が異なるマグネットを複数有する円柱状部と該円柱状部の外周に設けられ該円柱状部の軸心を中心に回転可能なスリーブローラとを有し、該記録体及び該現像剤搬送手段と平行に軸心が配置され、該記録体上へ該現像剤搬送手段からの該現像剤を供給する少なくとも1つの現像ローラと、該記録体と対向する該現像ローラの位置よりも該スリーブローラの回転方向の上流側の位置に該現像ローラに近接対向配置され、該現像ローラによって該記録体上へ供給する該現像剤の量を所定量に規制するための現像剤搬送量規制部材と、該現像剤収容容器内にトナーを供給するためのトナー供給手段とを備え、該現像剤搬送量規制部材は、該現像ローラの該マグネットに対向する位置に配置され、該現像剤を該現像剤搬送手段で該現像ローラへ搬送し,該現像ローラに搬送された該現像剤で記録体上にトナー画像を形成して該現像剤により該記録体に形成された該静電潜像を可視化させる静電記録装置において、該キャリアの体積平均粒径は65μm以下で、且つ、該キャリアの飽和磁化は70emu/g以上であり、該スリーブローラの表面粗さは、該キャリアの体積平均粒径の0.45倍以上である静電記録装置を提供している。
本発明の請求項1記載の現像装置、請求項19記載の静電記録装置によれば、スリーブローラの表面粗さはキャリアの体積平均粒径の0.45倍以上であるため、キャリアの体積平均粒径を65μm以下とし、且つ、キャリアの飽和磁化を70emu/g以上とした場合に、現像剤搬送量規制部材とスリーブローラとの間のドクタギャップを狭くしても、搬送量規制部による搬送量の規制位置で現像剤がスリーブローラ表面でスリップすることを防止することができ、印刷濃度低下やキャリア飛びの発生を防止することができる。このため、ドクタギャップをある程度狭くすることができ、高速でトナー消費の多い印刷を行っても、印刷濃度低下やキャリア飛び等の生じない高画質印刷を、長期に渡って維持することができる。
本発明の請求項2、4、6、8、10、12、14、16、18記載の現像装置によれば、キャリアの芯材はマグネタイトを有しているため、プロセス速度(記録体の周速)が、300m/sを超えるような比較的高速の画像形成装置において、現像機内の現像ローラや現像剤搬送手段等の回転部材の回転数が高くなり、現像装置内の現像剤の受けるストレスが大きくなっても、キャリア芯材を被覆している絶縁性樹脂がキャリア芯材の界面から剥がれ落ちることを防止することができる。
本発明の請求項3、11記載の現像装置によれば、記録体と対向する現像ローラの位置の内部に設けられているマグネットの最大磁束密度は0.07T以上であるため、現像剤搬送量規制部材とスリーブローラとの間のドクタギャップを所望の値としたときに、磁気ブラシの穂先までキャリアを磁気的に保持する力を利かせることができる。
本発明の請求項5、7、13、15記載の現像装置によれば、現像剤搬送手段の回転軸方向に搬送されるトナー流量をWとし、回転している記録体の外周面の周方向における移動速度をVとし、現像剤搬送手段により現像剤が搬送される現像ローラ上における現像ローラの軸方向の幅を(L)とし、記録体上のトナー量を(M)として、10*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)<W(g/s)<40*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)の関係を満たしているため、プロセス速度が速くても、連続して印刷しているときにトナー濃度が低下して印刷濃度が低下したり、キャリア飛びが発生したりすることを防止することができる。
本発明の請求項9記載の現像装置によれば、現像ローラは、少なくとも第1の現像ローラと第2の現像ローラとの2本を有し、第1の現像ローラのスリーブローラは、記録体との対向位置において記録体の外周面と同方向に回転し、第2の現像ローラのスリーブローラは、記録体との対向位置において記録体の外周面と反対方向に回転し、第1の現像ローラと第2の現像ローラと対向位置においては第1の現像ローラのスリーブローラと第2の現像ローラのスリーブローラとが同方向に回転するため、記録体に対向する現像ローラの位置であって現像ローラ上の現像剤が記録体と接触して現像を行う領域である現像部の位置には、常にトナー濃度が所定の値に調整された現像剤を供給することができる。このため、例えば、同方向に回転する現像ローラを複数組み合わせた現像装置や、略鉛直上方に配置された現像ローラにおいて現像に用いた現像剤を鉛直下方に配置された現像ローラに受け渡す構成の現像装置と比べて、良好な現像性能が得られる。
本発明の請求項17記載の現像装置によれば、スリーブローラの回転方向において現像剤搬送量規制部材に対向する位置に設けられた搬送極の上流側に隣接配置された搬送極の極性は、現像剤搬送量規制部材に対向する位置に設けられた搬送極の極性と同一であるため、第1の現像ローラ、第2の現像ローラのいずれか一方から他方へ向う磁力線の発生を防止することができる。また、現像剤搬送量規制部材に対向する位置に設けられた搬送極から当該上流側に隣接配置された搬送極へ向う磁力線の発生も防止することができる。このため、スリーブローラの回転方向における現像剤搬送量規制部材に対向する位置に設けられた搬送極の上流側の一部の狭い部分で現像剤を保持することができ、当該上流側の位置での現像剤の磁気的拘束力を弱くすることができる。このため、現像剤へ与えるストレスをより小さくすることができる。
本発明の第1の実施の形態による現像装置及び静電記録装置について図1乃至図6を参照しながら説明する。図1に示されるように、静電記録装置1は、表面に静電潜像を形成するための感光体ドラム11と、感光体ドラム11に電荷を与えるための帯電器12と、電荷が印加された感光体ドラム11に露光を行うための露光器13と、紙等からなる記録媒体2と、トナー像を記録媒体2上に転写するための転写器14と、トナー像転写後の感光体ドラム11からトナーを除去するためのクリーナ15と、感光体ドラム11から記録媒体2へ転写されたトナー像を溶融定着させるための定着機16と、現像装置20とを備えている。感光体ドラム11は記録体に相当する。
画像形成を行う際には、先ず、感光体ドラム11が、図1の時計方向に周速(プロセス速度)300mm/s以上の速度で回転を開始する。感光体ドラム11の表面は帯電器12によって−600Vに一様に帯電される。感光体ドラム11上には、露光器13に設けられた図示せぬLED等の光源による露光によって背景部−600V、画像部−50Vの静電潜像が形成される。次に、感光体ドラム11の回転により、静電潜像が現像装置20の位置に至ると、現像装置20によって感光体ドラム11上の所定の現像剤供給幅内に現像剤3が供給され、当該現像剤供給幅内の画像部、即ち、露光器13によって露光された部分に現像剤3のトナーが付着し、感光体ドラム11上にトナー像が形成される現像が行われる。
感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、その後、感光体ドラム11の回転により転写器14の位置に至ると、積層されている紙等の記録媒体2のうちの一枚が、転写器14と感光体ドラム11との間の位置に送られ、転写器14によって記録媒体2に転写され、定着機16によって定着される。転写器14によって記録媒体2にトナー像の転写を行った後の感光体ドラム11上に残留したトナー(図2等)は、クリーナ15によって除去され、その後、回収廃棄される。前述のように、プロセス速度は300mm/sであるため、A4横送り換算で連続紙の場合は85ppm、カット紙で用紙間隙を50mmとした場合には70ppmの印刷(画像形成)が可能である。
次に、現像装置20の構成及び動作について説明する。現像装置20は、図2に示されるように、現像剤収容容器21と、第1の螺旋状スクリュウ22と、第2の螺旋状スクリュウ23と、現像ローラ24と、図示せぬモータとを備えている。図示せぬモータは、歯車等からなる図示せぬ駆動伝達手段を介して、第1の螺旋状スクリュウ22と、第2の螺旋状スクリュウ23と、現像ローラ24とそれぞれ駆動連結されている。なお、第1の螺旋状スクリュウ22、第2の螺旋状スクリュウ23は現像剤搬送手段に相当する。
現像剤収容容器21内には、図2に示されるように、非磁性のトナーと、キャリアと呼ばれる磁性粒子とを主成分とする現像剤3が収容されている。キャリアは、磁性体より成るキャリア芯材の表面を絶縁性樹脂により均一に被覆してなり、表面を被覆する絶縁性樹脂にトナーと適合した摩擦帯電特性を持たせている。トナーは、現像剤3において3〜10%の重量比で混合されている。キャリアの平均粒径は65μm以下、飽和磁化は70emu/g以上であることが好ましい。
ここで、一般に、キャリアを小粒径にすればするほど、感光体ドラム11表面を摺擦する現像剤3の穂が緻密になり、静電潜像をより忠実に現像できるようになるため、小粒径化が進む傾向にある。しかし、キャリアの感光体ドラム11への付着(遠心力+静電力と磁気的な拘束力との関係)が、小粒径のキャリア使用上の制限になる。つまり、キャリアの粒径が小さいほど感光体ドラム11への付着が増加し好ましくないため、10〜35μm程度が最小径となる。
キャリアの粒径と画像のざらつき感の関係は、図3のグラフに示されるように、大粒径ではざらつき感は大きく、65μmまでは小粒径化によるざらつき感の改善効果は顕著である。65μmより小粒径の範囲では、ざらつき感は小さくなりざらつき感の改善効果もほぼ飽和している。画像のざらつき感は、主観的な評価であるため、人によって感じ方のレベルが異なるが、キャリア粒径が65μm以下であれば、大多数の人が満足できる画像が得られる。このため、上述のように、キャリア粒径は65μm以下のものを用いる。
また、飽和磁化が60emu/g程度のキャリア、飽和磁化が70emu/g程度のキャリアについてのキャリア飛びの特性を図4に示す。図4において、飽和磁化が60emu/g程度のキャリアの特性は(ア)に示されており、飽和磁化が70emu/g程度のキャリアの特性は(イ)に示されている。いずれの場合も、キャリアを小粒径にすればする程、キャリア飛びが増加する傾向にあるが、飽和磁化が高いキャリアの方が、感光体ドラム11に対向する現像ローラ24の位置であって現像ローラ24上の現像剤3が感光体ドラム11と接触して現像を行う領域である現像部では、キャリアの磁気的保磁力が強くなり、キャリア飛びを抑えることができる。このため、キャリアの飽和磁化は、上述のように、70emu/g以上とする。磁気的な拘束力から見ると飽和磁化が大きいほうが好ましいが,画質(掻き取りなど)は小さいほうが良好であるため、鉄粉キャリアでは、上限は150emu/g程度、その他のキャリアの飽和磁化は、70〜100emu/g程度が望ましい。
ここで、キャリアの体積平均粒径は、マイクロトラック(登録商標)粒度分布測定装置(NIKKISO)、HELOS&RODOS(Sympatec GmbH)等、レーザ回析・散乱法を用いた市販の粒度分布測定機を使用して測定することができる。
また、飽和磁化は、磁界を強くしても磁化が変化しなくなった時点の磁化であり、振動試料型磁力計、B−Hアナライザなど市販の測定機で常温にて測定した。
キャリア芯材としては、マグネタイト、Mn−Mgフェライト、Cu−Znフェライト等が用いられる。キャリアは、現像装置20内でストレスを長時間受けると、トナーがキャリア表面に融着したり、絶縁性樹脂が磨損、剥離して、キャリア表面のトナーに対する摩擦帯電特性が変化したりするため、現像剤3の帯電量が一定に保たれず、画像品質の劣化を引き起こす。プロセス速度が300m/sを超えるような比較的高速の静電記録装置1においては、現像装置20内の現像ローラ24、第1の螺旋状スクリュウ22、第2の螺旋状スクリュウ23といった回転部材の回転数が高くなり、現像装置20内の現像剤3の受けるストレスが大きくなるため、キャリア芯材を被覆している絶縁性樹脂が、キャリア芯材の界面から剥がれ落ちることによる現像剤劣化が起こりやすい。
上述したキャリア芯材の一つであるマグネタイトは、キャリア芯材表面に凹凸が多く、表面を被覆する絶縁性樹脂との接触面積が多いため、絶縁性樹脂との密着性が良好である。そこで、現像剤寿命を確保する上で、キャリア芯材にはマグネタイトを用いることがより好ましい。実際に、Mn−Mgフェライト、Cu−Znフェライトをキャリア芯材に用いた場合に、絶縁性樹脂がキャリア芯材の界面から剥がれ落ちるような高ストレスの条件下においても、マグネタイトの場合には、絶縁性樹脂がキャリア芯材の界面から剥がれ落ちる現象が発生せず、所望の現像剤寿命が確保できることを確認している。
トナーは、現像剤3の全重量の3〜10%の重量比で混合されている。現像剤3は、静電記録装置1の画像形成動作(印刷動作)によって、現像剤3中のトナーのみが消費され、現像装置20内の現像剤3中のトナーの重量比が減少する。このため、後述するトナー供給装置から現像装置20の内部にトナー3Aを供給し、供給されたトナー3Aは、第1の螺旋状スクリュウ22と、第2の螺旋状スクリュウ23とによって、常に現像装置20内にある現像剤3と混合されながら搬送される。
第1の螺旋状スクリュウ22、第2の螺旋状スクリュウ23は、外形が略円柱形状をなしており、図2に示されるようにその回転軸は、図2の紙面の表と裏とを結ぶ方向に指向し、感光体ドラム11と平行に軸心が配置され、且つ略水平な仮想平面上において互いに平行な位置関係となるように、現像剤収容容器21内において互いに近接対向配置されている。
第1の螺旋状スクリュウ22の略鉛直上方には、図2に示されるように、トナー補給装置27が設けられている。トナー補給装置27は、トナー3Aを第1の螺旋状スクリュウ22の略鉛直上方から現像剤収容容器21内へ供給することができるように構成されている。トナー補給装置27はトナー供給手段に相当する。
第1の螺旋状スクリュウ22に対向している第2の螺旋状スクリュウ23とは反対側、即ち、図2における第2の螺旋状スクリュウ23の左側には、現像ローラ24が設けられている。現像ローラ24は、全体として略円柱状をなしており、マグネットローラと呼ばれる円柱状部24Aと円柱状部24Aの外周に設けられ円柱状部24Aの軸心を中心に回転可能なスリーブローラ24Bとを備えている。現像ローラ24は、感光体ドラム11に対向するとともに、第2の螺旋状スクリュウ23と対向し、感光体ドラム11及び第2の螺旋状スクリュウ23と平行に軸心が配置されており、感光体ドラム11上へ第2の螺旋状スクリュウ23からの現像剤3を供給する。現像ローラ24は、それぞれ感光体ドラム11及び第1の螺旋状スクリュウ22、第2の螺旋状スクリュウ23と平行に軸心が配置されている。
現像ローラ24内部であって現像ローラ24表面近傍の円柱状部24Aには、S1極、N1極、S2極、N2極、N3極の5個のマグネットたる永久磁石がその周方向に所定の間隔を隔てて設けられており、現像ローラ24のスリーブローラ24B上に現像剤3を吸着して搬送することができるように構成されている。5個の永久磁石は、スリーブローラ24Bの回転方向下流方向、即ち、図2の反時計周り方向に沿ってS1極、N1極、S2極、N2極、N3極の順に設けられており、S1極は、後述の現像剤搬送量規制部材25に対向する位置に配置されている。
感光体ドラム11に対向するN1極は、スリーブローラ24B表面での最大磁束密度が0.07T程度であり、その他の極は、0.04から0.06T程度の磁力を有している。現像ローラ24は図2における反時計方向に回転することにより、第2の螺旋状スクリュウ23から搬送されてきた現像剤3を感光体ドラム11上へ供給することができるように構成されている。最大磁束密度を0.07T程度とすることにより、キャリアを磁気的に保持する力を磁気ブラシの先端まで利かせることができ、小粒径のキャリアのキャリア飛びを抑えることができる。
感光体ドラム11と対向する現像ローラ24の位置よりもスリーブローラ24Bの回転方向の上流側の位置には、ドクタブレードと呼ばれる現像剤搬送量規制部材25が設けられている。現像剤搬送量規制部材25は現像ローラ24のスリーブローラ24Bに近接対向配置されており、スリーブローラ24Bと現像剤搬送量規制部材25との間の最近接距離であるドクタギャップJ1を通ることにより、スリーブローラ24Bによって感光体ドラム11上へ供給される現像剤3の量を所定量に規制する。ドクタギャップJ1は0.5mmである。
現像剤搬送量規制部材25に対向する現像ローラ24内の円柱状部24Aには、図2に示されるように、搬送極をなすS1極が配置されている。図5に示されるように、現像剤搬送量規制位置、即ち、ドクタギャップの位置では、S1極により現像ローラ24の表面に対して磁力線の法線方向の成分が多いため、現像剤3の穂が起立しており、現像剤3の密度が小さい状態にある。現像剤搬送量規制位置で現像剤3を規制しているため、ドクタギャップJ1を同一に設定した場合であっても、現像剤搬送量規制位置を通過する現像剤量を少なくすることができる。
換言すれば、現像ローラ24のスリーブローラ24Bにおいて所定の現像剤量をドクタギャップJ1において規制し搬送しようとするときに、本実施の形態のように、現像剤搬送量規制部材25に対向する現像ローラ24内の円柱状部24Aに搬送極をなすS1極が設けている場合には、ドクタギャップJ1における現像剤3の密度が小さいため、ドクタギャップJ1を広くすることができる。このため、部品の加工精度や組立精度によるドクタギャップJ1の変動の影響を小さくすることができる。
また、現像剤搬送量規制位置よりも現像ローラ24の回転方向の上流側の位置での現像剤3の保持は、図5の磁力線を示す矢印に示されるように、現像剤搬送量規制部材25に対向するN1極から、その上流側のS1極へ向う磁力線によって行われるため、現像剤搬送量規制位置よりも現像ローラ24の回転方向の上流側の位置での現像剤3の磁気的拘束力が比較的弱くなる。このため、現像剤3へ与えるストレスを小さくすることができる。
現像ローラ24のスリーブローラ24Bの表面は、メタルショット処理されることにより表面粗さがキャリアの体積平均粒径の0.45倍以上1.08倍以下とされており、具体的にはRz=30μm程度である。より好ましくは、0.62以上0.93以下である。
ここで、表面粗さRzはJIS B0601'94に準拠した10点平均粗さを示す。粗さ曲線の最高山頂から、高い順に5番目までの山高さ平均と、最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均の和である。surfcom(登録商標)(東京精密)、タリサーフ(登録商標)(Taylor Hobson)などの表面粗さ測定機で測定できる。
メタルショット処理とは、例えば、ターンテーブルに現像ローラ24を置き、メタルショットノズルから現像ローラ24のスリーブローラ24B表面にメタル等を吹きつける処理である。
図6に示されるように、0.45倍未満では、現像剤搬送量規制部材25の裏側、即ち、スリーブローラ24Bの回転方向における現像剤搬送量規制部材25の上流側で、スリーブローラ24Bの表面と現像剤3の界面との間でスリップが発生し、現像剤搬送量規制位置における現像剤搬送量が不安定になるからである。また、1.08を超えると現像剤3の搬送量が多くなり、現像部での充填率が増加し、磁気ブラシの機械的な掻取り力が大きくなり、画像にキャリアの掃きスジ等が発生するためである。なお、図6においては、キャリアの飽和磁化は90emu/gである。このように、現像ローラ24のスリーブローラ24Bの表面粗さを、キャリアの体積平均粒径の0.45倍以上とすることにより飽和磁化が70emu/g以上でキャリア粒径が65μm以下のキャリアを用いても、現像ローラ24への現像剤供給量を安定させることが可能となり、300mm/s以上の高速で印刷を行った場合であっても、現像剤3へのストレスが少なく、高画質でキャリア飛びのない印刷を長期的に安定して行うことができる。
特に、高速でカラー印刷を行う装置においても、印刷濃度低下やキャリア飛び等のない高画質印刷を50万ページ以上の長期に渡って維持することが可能であり、低コストでフルカラー印刷を行うことができる。
画像形成の際には、現像剤3中のトナーは、第1の螺旋状スクリュウ22と第2の螺旋状スクリュウ23とによって攪拌されることにより現像剤3中のキャリアと摩擦しあい、−10〜−30μc/gの間の所定の値に帯電する。この値に帯電した現像剤3は現像ローラ24の近傍に導かれ、N3極によってスリーブローラ24Bの表面に引きつけられ、スリーブローラ24Bの回転により現像剤搬送量規制部材25に対向した位置のS1極の位置にまで搬送される。スリーブローラ24Bは、図2中の矢印Aで示される感光体ドラム11の回転方向、即ち、図2における時計方向に対して、感光体ドラム11の周速の1.1倍〜2.0倍の周速で順回転、即ち、図2における反時計方向に回転する。
現像剤3は、現像剤搬送量規制部材25によって現像剤3の搬送量の規制が行われるドクタギャップJ1(図2)において所定量に搬送量が規制された後、現像部に導かれる。現像部において現像ローラ24では、現像剤3はN1極により穂立ちが生じ、感光体ドラム11表面の移動方向と同方向、即ち、図2に示されるように、感光体ドラム11が時計方向に回転するのに対して現像ローラ24が反時計方向に回転するようにして移動しながら、感光体ドラム11表面を摺擦する。そして、現像ローラ24には現像バイアスが印加され、現像ローラ24上の現像剤3からトナーのみを感光体ドラム11上の静電潜像に供給し可視画像を形成する。その後、現像部を通過した現像剤3は、同極であるN2極とN3極との間の反発磁界により、現像ローラ24から剥離され、再び、第2の螺旋状スクリュウ23に戻り、現像装置20内部を循環する。感光体ドラム11上に形成された可視画像は、転写器14により記録媒体2に転写された後、定着機16により記録媒体2に固着される。
なお、トナーの帯電量は、吸引式ファラデーケージ法を用いた装置、例えば、吸引式小型帯電量測定装置Model210HS-2A(トレック・ジャパン)等を使用し測定することができる。具体的には、現像機からサンプリングした現像剤約200mgから目開き26μmのメッシュ(500メッシュ)を介してトナーを吸引し、電荷量表示の変化が無くなった時点の値を用い、重量あたりのトナー帯電量(Q/M)を算出する。
次に、本発明の第2の実施の形態による現像装置及び静電記録装置について図7乃至図8を参照しながら説明する。第2の実施の形態による現像装置20’は、第1の現像ローラ24と第2の現像ローラ28との2つの現像ローラが設けられている点で、第1の実施の形態による現像装置20とは異なる。また、第2の螺旋状スクリュウ23から第1の現像ローラ24及び第2の現像ローラ28へ現像剤3を搬送するための搬送部材26が設けられている点で、第1の実施の形態による現像装置20とは異なる。
現像装置20’は、第1の現像ローラ24と、第2の現像ローラ28と、搬送部材26とを備えており、図示せぬモータは、歯車等からなる図示せぬ駆動伝達手段を介して第1の現像ローラ24と、第2の現像ローラ28と、搬送部材26とそれぞれ駆動連結されている。
搬送部材26は、第1の螺旋状スクリュウ22に対向している第2の螺旋状スクリュウ23とは反対側、即ち、図7における第2の螺旋状スクリュウ23の左側に設けられている。搬送部材26は、回転軸26Aと、回転軸26Aから半径方向外方へ向って延出する6枚の平板状部26Bとを備えており、軸部26Aは、第1の螺旋状スクリュウ22の回転軸たる軸部22A及び第2の螺旋状スクリュウ23の回転軸たる軸部23Aと平行に配置され、図7において反時計方向に回転することにより、第2の螺旋状スクリュウ23の位置にある現像剤3を後述の第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28の方へ搬送することができるように構成されている。
第1の現像ローラ24と第2の現像ローラ28とは、第2の螺旋状スクリュウ23に対向している搬送部材26とは反対側、即ち、図7における搬送部材26の左側と、第1の現像ローラ24の略鉛直上方とにそれぞれ設けられている。第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28は、それぞれ外形が略円柱状をなし、第1の現像ローラ24は、搬送部材26を介して第2の螺旋状スクリュウ23と間接的に対向し、また、第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28は、それぞれ感光体ドラム11と直接対向している。第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28は、それぞれ感光体ドラム11及び第1の螺旋状スクリュウ22、第2の螺旋状スクリュウ23と平行に軸心が配置されている。
第1の現像ローラ24のスリーブローラ24Bは、感光体ドラム11との対向位置において、感光体ドラム11の外周面と同方向、即ち、図7に示される反時計方向に回転する。第2の現像ローラ28のスリーブローラ28Bは、感光体ドラム11との対向位置において、感光体ドラム11の外周面と反対方向、即ち、図7に示される時計方向に回転する。また、第1の現像ローラ24と第2の現像ローラ28と対向位置、即ち、後述の現像剤搬送量規制部材25が設けられている位置においては、第1の現像ローラ24のスリーブローラ24Bと第2の現像ローラ28のスリーブローラ28Bとが同方向に回転する。なお、第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28ともに、周速は第1の実施の形態における現像ローラ24と同一である。
このように第1の現像ローラ24と第2の現像ローラ28とが回転するため、常にトナー濃度が所定の値に調整された現像剤3を現像部に供給することができ、例えば、同方向に回転する現像ローラを複数組み合わせて、略鉛直上方に配置された第2の現像ローラにおいて現像に用いた現像剤を鉛直下方に配置された第1の現像ローラに受け渡す構成の現像装置と比較して、良好な現像性能が得られる。実際に、第2の実施の形態による現像装置20’と、第2の実施の形態による現像装置20’において第1の現像ローラ24と第2の現像ローラ28と同方向に回転させ第2の現像ローラ28において現像に用いた現像剤3をその鉛直下方に配置された第1の現像ローラ24に受け渡す構成の現像装置とを比較したところ、第2の実施の形態による現像装置20’の方が約30%高い現像性能を得ている。この現像性能とは、静電潜像にトナーを付着させる能力,感光体ドラム11の単位面積あたりのトナー付着量が30%増える、つまり、印刷濃度が増加することである。プロセス速度が高速で反時計方向に回転する現像ローラ2本では電位ポテンシャルを埋めるほどトナーを付着させられないような状況でも、第2の実施の形態による現像装置20’のようなセンターフィード(噴水型)なら、トナー付着量を30%増加できる能力をもっている。電位ポテンシャルがトナー電荷で埋まった時点で、それ以上トナーは付着しなくなってしまうので,センターフィードに対し、反時計方向に回転する現像ローラ2本を備えた現像装置では、トナー付着量が30%減ると言うこともできる。
また、現像部において第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28が、感光体ドラム11表面をそれぞれ互いに逆方向に摺擦するため、先端、後端欠け等の、摺擦方向に起因する画像の方向性が無い良好な画像を得ることができる。
300mm/s程度のプロセス速度では、現像ローラ24が1本である現像装置20の構成で所望の現像性能が得られ、また、画像の方向性も許容レベルである。しかし、300mm/sを超えるプロセス速度では、現像ローラ24が1本である現像装置20の構成では、所望の現像性能を得ることが難しくなる。また、所望の現像性能を得ようとして、感光体ドラム11表面の周速に対する現像ローラ24の周速の比率を高くすると、現像剤3の穂による感光体ドラム11表面の擦りが強くなるため、画像の方向性に関して良好な画像を得ることが困難になる。本実施の形態では、上述の構成により300mm/sを超えるプロセス速度であっても良好な画像を得ることができる。
現像ローラ24内部であって現像ローラ24表面近傍の円柱状部24Aには、図8に示されるように、第1の実施の形態と同様に、S1極、N1極、S2極、N2極、N3極の5個の永久磁石がその周方向に所定の間隔を隔てて設けられている。第2の現像ローラ28の内部であって現像ローラ28表面近傍の円柱状部28Aにも、第1の現像ローラ24と同様に、5個の永久磁石がその周方向に所定の間隔を隔てて設けられている。但し、第2の現像ローラ28では、5個の永久磁石は、図8の時計周り方向に沿ってS1極、N1極、S2極、N2極、N3極の順に設けられている点で第1の現像ローラ24とは異なる。第1の現像ローラ24のS1極、第2の現像ローラ28のS1極は、それぞれ、後述の現像剤搬送量規制部材25に対向する位置に配置されている。
現像剤搬送量規制部材25は第1の実施の形態における現像剤搬送量規制部材25とは形状が異なっており、図8に示されるように、第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28の軸方向から見た形状は、略二等辺三角形をなすいわゆる両刃ドクタになっている。略二等辺三角形の2つの底角は、第1の現像ローラ24のS1極、第2の現像ローラ28のS1極に対向しており、この底角の部分で、それぞれ第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28上において搬送される現像剤3の量を規制する。略二等辺三角形の頂角は、感光体ドラム11の方向に指向する。
現像装置20’においては、第2の螺旋状スクリュウ23の回転軸方向に搬送されるトナー流量をWとし、回転している感光体ドラム11の外周面の周方向における移動速度、即ち、プロセス速度をVとし、第2の螺旋状スクリュウ23により現像剤3が搬送される現像ローラ24、28上における現像ローラ24、28の軸方向の幅を(L)とし、感光体ドラム11上のトナー量を(M)とすると、10*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)<W(g/s)<40*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)の関係を満たしている。
プロセス速度が速いと、現像によるトナー消費が早くなるため、印刷開始時には高画質印刷が行えても、連続して印刷しているとトナー濃度が低下し、印刷濃度の低下やキャリア飛びが発生することがある。特にフルカラー機のように高密度の印刷を行う装置では不具合が発生しやすい。これは、印刷によるトナー消費量に対し、搬送部材26から第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28に供給されるトナー量が少なくなったり、不均一なったりすることが原因であり、本実施の形態のように搬送部材26で軸方向に現像剤3を搬送しながら現像ローラ24、28に現像剤3を供給する構成の現像装置20’では、10*V(cm/s)*L(cm)*M(g/cm2)<W(g/s)とすること、つまり印刷により単位時間あたりに消費されるトナー量の10倍よりも多く、搬送部材26でトナーを搬送することにより解決できることが確認できた。
しかし、搬送部材26によるトナー搬送量を40倍より多くすると、搬送するトナーの帯電量が適正範囲から外れてかぶりなどの画質上の不具合が発生したり、現像剤3の劣化が早まり長期的に画質を維持したりすることが困難になる。このため、上述の範囲とする。この範囲とすることにより、700mm/sのプロセス速度においても、高画質の印刷が行え、キャリア飛びなどの不具合もなく、50万ページ以上の長期的に安定した画像が得られることを実際に確認している。
画像形成の際には、現像剤3中のトナーは、第1の螺旋状スクリュウ22と第2の螺旋状スクリュウ23とによって攪拌されることにより現像剤3中のキャリアと摩擦しあい、−10〜−30μc/gの間の所定の値に帯電する。この値に帯電した現像剤3は第1の現像ローラ24の近傍に導かれ、第1の現像ローラ24の近傍にある現像剤3は、N3極によってスリーブローラ24Bの表面に引きつけられ、スリーブローラ24Bの回転により現像剤搬送量規制部材25に対向した位置のS1極の位置にまで搬送される。
そして、現像剤3は、現像剤搬送量規制部材25のドクタギャップJ2(図8)において、現像部の容積に対し20〜40%の容積比を占めるような所定量に規制された後、現像部に導かれる。このとき現像剤搬送量規制部材25での通過量規制によって余剰となった現像剤3は、S1極の磁力によってスリーブローラ24Bの表面に引きつけられ、スリーブローラ24Bの回転に伴って現像剤搬送量規制部材25ドクタギャップJ1’(図8)において第1の現像ローラ24上と同じ所定量に規制された後、N1極に配置された第2の現像ローラ28の現像部へ導かれる。第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28の現像部において現像剤3は、N1極の磁極により穂立ちをし、第2の現像ローラ28では、感光体ドラム11表面の移動方向とは逆方向に感光体ドラム11表面を摺擦し、第1の現像ローラ24では、感光体ドラム11表面の移動方向と同方向に感光体ドラム11表面を摺擦する。
次に、本発明の第3の実施の形態による現像装置及び静電記録装置について図9を参照しながら説明する。第3の実施の形態による現像装置20”は、スリーブローラ24Bの回転方向において現像剤搬送量規制部材25に対向する位置に設けられた搬送極S1極の上流側に隣接配置された搬送極S3極の極性は、現像剤搬送量規制部材25に対向する位置に設けられた搬送極S1極の極性と同一である点で、第2の実施の形態による現像装置20”とは異なる。
現像装置20”の第1の現像ローラ24では、5個の永久磁石は、図9に示される反時計周り方向に沿ってS1極、N1極、S2極、N2極、S3極の順に設けられており、第2の現像ローラ28では、5個の永久磁石は、図9に示される時計周り方向に沿ってS1極、N1極、S2極、N2極、S3極の順に設けられている。
このような構成とすることにより、第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28のいずれか一方から他方へ向う磁力線の発生を防止することができる。また、現像剤搬送量規制部材25に対向する位置に設けられた搬送極S1極から当該上流側に隣接配置された搬送極S3極へ向う磁力線の発生も防止することができる。このため、スリーブローラ24Bの回転方向における現像剤搬送量規制部材25に対向する位置に設けられた搬送極S1極の上流側の一部の狭い部分25Aで現像剤3を保持することができ、当該上流側の位置での現像剤3の磁気的拘束力を弱くすることができる。このため、現像剤3へ与えるストレスをより小さくすることができる。
本発明による現像装置及び静電記録装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施形態では、感光体ドラム11を像担持体たる記録体として用いたが、これに限定されない。例えば、特定の軌道上を周回する感光体ベルトのようなものを用いるようにしてもよい。
また、第2の実施の形態では、第1の現像ローラ24、第2の現像ローラ28の2本の現像ローラを有していたが、第2の現像ローラ28よりも感光体ドラム11の回転方向の上流側に複数本の現像ローラを有する構成としてもよい。また、第1の現像ローラ24よりも感光体ドラム11の回転方向の下流側に複数本の現像ローラを有する構成としてもよい。