JP2006098258A - センサ装置およびセンサ付き転がり軸受ユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】 磁性体である軌道部材(被検知部)自体に残留磁束密度のバラツキが存在しているために、磁歪センサで得られる値が逆磁歪効果とこの残留磁束密度のバラツキとを含んだものとなることによって精度が低下するという点に着目し、残留磁束密度のバラツキをなくすことにより、検知精度を向上させたセンサ装置およびセンサ付き転がり軸受ユニットを提供する。
【解決手段】 センサ装置2は、回転側軌道部材4に設けられた被検知部の逆磁歪効果を検知する磁歪センサ8を有しており、被検知部とされる内輪17は、キュリー点以上の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されることにより焼入れされている。
【選択図】 図1
【解決手段】 センサ装置2は、回転側軌道部材4に設けられた被検知部の逆磁歪効果を検知する磁歪センサ8を有しており、被検知部とされる内輪17は、キュリー点以上の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されることにより焼入れされている。
【選択図】 図1
Description
この発明は、逆磁歪効果を利用したセンサ装置、および、転がり軸受と転がり軸受の各種情報を検出するセンサ装置とが一体化されたセンサ付き転がり軸受ユニットに関する。
自動車においては、その制御を行うために種々の情報が必要であることから、車体側に固定される車体側軌道部材、車輪が取り付けられる車輪側軌道部材、および両部材の間に配置された二列の転動部材を有するハブユニットに、センサ装置を設けることが提案されている。例えば、特許文献1には、車体側軌道部材の内端面に環状の支持部材を取り付け、この環状支持部材に歪みセンサを貼り付けたセンサ付きハブユニットが開示されている。
近年、自動車の制御手段として、ABS制御(アンチロックブレーキシステム)に加えて、発進時や加速時に駆動輪をスピンさせない駆動力制御やコーナリング時の横滑りを抑制するブレーキ力制御などが実施されているが、より精度のよい制御を行うために、これらの制御に有効に使用できるデータの検出が重要となっている。このような実情に鑑み、タイヤ(車輪)にかかる接地荷重を精度よく測定して、車両制御の向上を図ることが望まれている。
これに対し、特許文献1のセンサ付きハブユニットでは、環状支持部材の歪みを測定するものであるので、この歪みからタイヤ接地荷重を求める場合に、誤差が大きくなり、歪みセンサの測定値から精度よくタイヤ接地荷重を得ることができないという問題があった。そこで、特許文献2には、磁歪センサを利用してタイヤ接地荷重を精度よく求めることが提案されている。
特開平3−209016号公報
特願2003−23378
上記特許文献2のセンサ付き転がり軸受ユニットでは、軌道部材が歪むことによる逆磁歪効果を検知して軌道部材に作用する力を求めているが、逆磁歪効果による磁束密度変化が小さいため、その誤差をできるだけ小さくすることが課題となっている。
この発明の目的は、磁性体である軌道部材(被検知部)自体に残留磁束密度のバラツキが存在しているために、磁歪センサで得られる値が逆磁歪効果とこの残留磁束密度のバラツキとを含んだものとなることによって精度が低下するという点に着目し、残留磁束密度のバラツキをなくすことにより、検知精度を向上させたセンサ装置およびセンサ付き転がり軸受ユニットを提供することにある。
この発明によるセンサ装置は、歪みを受ける磁性体製の被検知部と、被検知部に対向するセンシング面を有し被検知部の逆磁歪効果を検知する磁歪センサとからなり、被検知部は、キュリー点以上の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されることにより焼入れされていることを特徴とするものである。
磁歪センサは、逆磁歪効果(物質が歪むあるいは変形すると、磁区が磁化回転を起こし、見かけ上磁力が現れる現象)を計測するセンサであり、磁歪センサとしては、例えば、透磁率の高い磁性線に高周波電流を印加したときの磁性線両端間のインピーダンスが外部磁場によって変化する電磁気現象を利用して外部磁場を計測する磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)が挙げられる。
焼入れを行う方法としては、浸炭焼入れ、高周波焼入れなどが使用され、磁気シールドは、例えば、パーマロイなどの高透磁率材料を遮蔽材としたシールドルームを使用することで行われる。磁性体製被検知部は、キュリー点以上の温度まで加熱されることにより、各磁区の異方性が失われて完全な等方性を有するようになり、その後、磁気シールドされた状態で冷却されることにより、地磁気などによって異方性を付与されることなく、完全な等方性を有したまま常温での使用に供される。
この発明のセンサ装置によると、圧縮応力または引張り応力がかかっていない状態では、各磁区の方向がバラバラの方向を向いており(完全な等方性)、応力がかかることによって、各磁区の方向が変化し、これに伴って、磁歪センサによって検知される磁束密度が変化する。この変化量は、応力の大きさに比例しており、磁歪センサの出力から、被検知部にかかっている応力を求めることができる。
この発明のセンサ装置は、被検知部が移動(例えば回転)しており、その被検知部が受けている応力を非接触で測定する場合に特に有効である。
上記センサ装置において、センサのセンシング面は、圧縮方向に垂直な方向から被検知部を臨むように設けられることが好ましく、また、引張り方向と同じ方向から被検知部を臨むように設けられることが好ましい。
この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、センサ装置は、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に設けられた被検知部の逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部は、キュリー点以上の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されることにより焼入れされていることを特徴とするものである。
転がり軸受としては、深みぞ玉軸受、アンギュラ玉軸受、ころ軸受、ニードル軸受、スラスト軸受などのいずれの転がり軸受でも使用可能であり、また、単列のものだけでなく、複列のものにも適用できる。
固定側軌道部材は、ハウジングなどに取り付けられ、回転側軌道部材は、回転軸などに取り付けられる。磁歪センサは、一般的には、固定側軌道部材またはこれが固定されるハウジングなどの固定側部材に取り付けられる。なお、固定側部材とは、回転側部材と相対回転する部材の意であり、必ずしも固定されている必要はなく、固定側部材には、それ自体が回転するものも含まれるものとする。
この発明のセンサ付き転がり軸受ユニットによると、回転軌道部材に固定された主軸等の回転体が回転したり、回転体に荷重がかかると、転動部材と軌道部材の軌道面や肩部との間に作用する力が変化し、この結果、軌道部材の軌道面や肩部の歪み量が変動し、逆磁歪効果が得られる。この場合の逆磁歪効果は、軸受用鋼等の鉄系磁性体では、ミリガウス程度の小さいものであるが、上述のように、初期状態における部分的な異方性がないので、磁歪センサは、歪み変動量を磁歪変動量として精度よく検知することができる。したがって、この歪みの変動量から軌道部材への作用力の変動量を精度よく求めることができる。
上記のセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材は、いずれも軸受用鋼であり、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に、被検知部が設けられていることがあり、固定側軌道部材および回転側軌道部材は、いずれも軸受用鋼で、転動部材は、非磁性材料で形成されており、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に、被検知部が設けられていることがある。
このようにすると、固定側軌道部材および回転側軌道部材がいずれも軸受用鋼であるので、軸受の性能に影響を及ぼすことなく上記の効果を得ることができる。また、転動部材および被検知部を備えない方の軌道部材や保持器を非磁性材料製とすることにより、ノイズとしての周辺磁束を最小にすることができ、逆磁歪効果による微小な磁束変化をより精度よく検知することができる。
上記のセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材が車体側、回転側軌道部材が車輪側に取り付けられるようになされて、センサ付きハブユニットとして使用されることがある。
このようにすると、磁歪センサの出力からタイヤの接地荷重を検出することが可能となり、接地荷重を使用した車両の安定制御に寄与することができる。
タイヤに接地荷重が作用すると、ハブユニット各部には圧縮または引張りの歪みが生じる。通常、ハブユニットの二列の転動部材間の中央を通る鉛直線は、タイヤの中心を通る鉛直線よりも軸方向外側にあり、内軸および内輪からなる車輪側軌道部材を有しているハブユニットでは、車体側に近い内輪に相対的に大きな歪みが生じる。この内輪の歪みは、接地中心の反対側である最上部において最大となる圧縮方向の歪みとなる。したがって、この内輪の圧縮歪みを検知するように磁歪センサを配置することにより、より大きな逆磁歪効果を検知することができる。しかも、この圧縮方向の歪みを検知して得られる磁歪センサの出力は、左右方向タイヤ接地荷重との相関が極めて高く、したがって、センサ出力と左右方向タイヤ接地荷重との関係式を予め求めておくことにより、最上部における内輪の圧縮方向の歪みから左右方向タイヤ接地荷重を求めることができる。また、タイヤに作用する荷重が前後方向の場合、内輪の歪みは、最上部と最下部のちょうど中間において最大となる。そして、車両の減速時には、進行方向前側の位置において圧縮方向の歪みとなり、車両の加速時には、進行方向後側の位置において圧縮方向の歪みとなる。したがって、これらの圧縮歪みを最上部と最下部のちょうど中間において検知するように、磁歪センサを内輪肩部の近傍に前後に対向して配置することにより、減速時および加速時に、前後荷重に対応する大きな逆磁歪効果が検知される。この逆磁歪効果を検知して得られる磁歪センサの出力は、前後方向タイヤ接地荷重との相関が極めて高く、したがって、センサ出力と前後方向タイヤ接地荷重との関係式を予め求めておくことにより、内輪の圧縮歪みから前後方向タイヤ接地荷重も求めることができる。
同様に、車体旋回時におけるハブユニットの車体側軌道部材では、転動部材間の中央を通る鉛直線の近傍で相対的に大きな歪みが生じ、この車体側軌道部材の歪みは、接地中心に近い側である最下部において最大となる圧縮方向の歪みとなる。したがって、この車体側軌道部材の圧縮歪みを検知するように磁歪センサを配置することにより、より大きな逆磁歪効果を検知することができる。しかも、この圧縮方向の歪みを検知して得られる磁歪センサの出力は、左右方向タイヤ接地荷重との相関が極めて高く、したがって、センサ出力と左右方向タイヤ接地荷重との関係式を予め求めておくことにより、車体側軌道部材の圧縮方向の歪みから左右方向タイヤ接地荷重を求めることができる。また、タイヤに作用する荷重が前後方向の場合、車体側軌道部材の歪みは、最上部と最下部のちょうど中間において最大となる。そして、車両の減速時には、進行方向後側の位置において圧縮方向の歪みとなり、車両の加速時には、進行方向前側の位置において圧縮方向の歪みとなる。したがって、これらの圧縮歪みを最上部と最下部のちょうど中間において検知するように、磁歪センサを車体側軌道部材のすぐ外方に前後に対向して配置することにより、減速時および加速時に、前後荷重に対応する大きな逆磁歪効果が検知される。この逆磁歪効果を検知して得られる磁歪センサの出力は、前後方向タイヤ接地荷重との相関が極めて高く、したがって、センサ出力と前後方向タイヤ接地荷重との関係式を予め求めておくことにより、車体側軌道部材の圧縮方向歪みから前後方向タイヤ接地荷重も求めることができる。
センサ付きハブユニットでは、磁歪センサは、内輪の軸方向の圧縮歪みを測定可能なように、内輪の肩部径方向より臨まされていることがあり、また、磁歪センサは、車体側軌道部材の軸方向の圧縮歪みを測定可能なように、その径方向外方から臨まされていることがある。
この発明のセンサ装置によると、磁性体製被検知部が完全な等方性を有したまま常温での使用に供されるので、被検知部自体には残留磁束密度のバラツキが存在せず、磁歪センサで得られる値は、逆磁歪効果によるものだけとなり、残留磁束密度による精度の低下がなくなり、検知精度が向上する。
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
図1および図2は、この発明のセンサ装置およびセンサ付き転がり軸受ユニットの第1実施形態を示している。以下の説明において、左右および上下は、図の左右および上下をいうものとする。なお、左が車両の内側に、右が車両の外側となっている。
このセンサ付き転がり軸受ユニットは、センサ付きハブユニットとして使用されるもので、ハブユニット(1)と、タイヤの接地荷重を検出するセンサ装置(2)とを備えている。
ハブユニット(1)は、車体側に固定される車体側軌道部材(3)、車輪が取り付けられる車輪側軌道部材(4)、両部材(3)(4)の間に2列に配置された複数の転動部材である玉(5)、および各列の玉(5)をそれぞれ保持する保持器(6)を備えている。
車体側軌道部材(3)および車輪側軌道部材(4)は、鉄系磁性体である機械構造用炭素鋼(S55C)製、玉(5)は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)またはセラミックス製、保持器(6)は、樹脂製(ポリアミド66)とされている。
車体側軌道部材(3)は、軸受の外輪(固定輪)機能を有しているもので、内周面に2列の外輪軌道が形成されている円筒部(12)と、円筒部(12)の左端部近くに設けられて懸架装置(車体)にボルトで取り付けられるフランジ部(13)とを有している。
車輪側軌道部材(4)は、第1の軌道溝(15a)を有する大径部(15)および第1の軌道溝(15a)の径よりも小さい外径を有する小径部(16)を有している内軸(14)と、内軸(14)の小径部(16)外径に嵌め止められて右面が内軸(14)の大径部(15)左面に密接させられている内輪(17)とからなる。内軸(14)の右端近くには、車輪を取り付けるための複数のボルト(19)が固定されたフランジ部(18)が設けられている。内輪(17)の右部には、内軸(14)の軌道溝(15a)と並列するように、軌道溝(17a)が形成されており、内輪(17)の左部に肩部(17b)が形成されている。車体側軌道部材(3)の右端部と内軸(14)との間には、シール装置(20)が設けられている。内軸(14)の小径部(16)の左端部には、おねじ部が設けられており、このおねじ部にねじ合わされたナット(21)によって、内輪(17)が内軸(14)に固定されている。車体側軌道部材(3)の左端部には、カバー(22)が被せ止められている。
センサ装置(2)は、車体側軌道部材(3)に取り付けられた支持部材(7)と、支持部材(7)に取り付けられた磁歪センサ(8)と、磁歪センサ(8)の出力を処理する処理手段(図1には現れず、図2参照)とを備えている。
磁歪センサ(8)は、磁気インピーダンスセンサとされており、磁歪センサ(8)のセンシング面は、車輪側軌道部材(4)の内輪(17)の最上部における圧縮歪みを測定するように、内輪(17)の最上部に径方向外方から臨まされている。磁歪センサ(8)は、図示した位置から90°離れた位置(2カ所とも)にも設けられており、その磁歪センサ(8)のセンシング面は、車輪側軌道部材(4)の内輪肩部(17b)の最上部と最下部のちょうど中間において、車輪側軌道部材(4)の内輪(17)の中間部における圧縮歪みを測定するように、内輪(17)の中間部に径方向外方から臨まされている。
また、被検知部とされている内輪(17)は、浸炭焼入れにおいて、キュリー点以上(720〜730℃)の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されている。
内輪(17)に生成される歪みは、玉(5)が最大負荷を受ける位置と一致した時に最大を示し、玉(5)と玉(5)との間が最大負荷を受ける位置と一致した時に若干歪が下がるので、図2に示すような波形を成しており、磁歪センサ出力として測定できる。そして、歪みの周期(T1またはT2)から内輪(17)の1回転に要する時間したがって内輪(17)の回転数を求めることができる。なお、接触角がαであるときの玉の公転数Nbと内輪回転数Niとは、Dを玉のピッチ径、dを玉の直径として、Nb=(1−dcosα/D)Ni/2となる。また、処理手段(9)には、電圧の変動量として出力された歪みの振幅から内輪(17)に作用する力の変動量を求める演算式が蓄えられており、歪みの振幅Aを使用することにより、内輪(17)が玉(5)から受ける力の最大値を求めることができ、これを使用して内輪(17)に作用する力を求めることができる。
タイヤに接地荷重(ラジアル荷重およびアキシアル荷重)が作用すると、ハブユニット(1)各部には圧縮または圧縮の歪みが生じる。通常、ハブユニット(1)の二列の玉(5)間の中央を通る鉛直線(C)は、タイヤの中心(O)を通る鉛直線よりも軸方向外側にあり、内軸(14)および内輪(17)からなる車輪側軌道部材(4)を有している上記のハブユニット(1)では、車体側に近い内輪(17)に相対的に大きな歪みが生じる。この内輪(17)の歪みは、矢印で示すように、接地中心の反対側である最上部において最大となる圧縮方向の歪みとなる。磁歪センサ(8)は、圧縮歪みに対しては、これに直交する方向から臨まされたときに最大の感度を示す。したがって、図1に示すように、この内輪(17)の圧縮歪みを径方向から検知するように、磁歪センサ(8)を内輪肩部(17b)の最上部に配置することにより、大きな逆磁歪効果が検知される。磁歪センサ(8)の出力とタイヤ接地荷重との関係は、相関関係にあり、したがって、センサ出力とタイヤ接地荷重との関係式を予め求めておくことにより、内輪(17)の圧縮歪みからタイヤ接地荷重を求めることができる。
図3は、この発明のセンサ付き転がり軸受ユニットの第2実施形態を示している。この第2実施形態のセンサ付き転がり軸受ユニットは、センサ装置の構成が第1実施形態のものと異なっており、以下の説明においては、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付しその説明を省略する。
センサ装置(2)は、車体側軌道部材(3)に取り付けられた支持部材(7)と、支持部材(7)に取り付けられた磁歪センサ(10)と、磁歪センサ(10)の出力を処理する処理手段(図示略)とを備えている。
磁歪センサ(10)は、磁気インピーダンスセンサとされており、磁歪センサ(10)のセンシング面は、車体側軌道部材(3)の最下部の外周面に径方向外方から臨まされている。磁歪センサ(10)は、図示した位置から90°離れた位置(2カ所とも)にも設けられており、その磁歪センサ(10)のセンシング面は、車体側軌道部材(3)の最上部と最下部のちょうど中間において、その外周面に径方向外方から臨まされている。
また、被検知部とされている車体側軌道部材(3)は、高周波焼入れにおいて、キュリー点(720〜730℃)以上の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されている。
タイヤに接地荷重(ラジアル荷重およびアキシアル荷重)が作用すると、ハブユニット(1)各部には圧縮または引張りの歪みが生じる。通常、ハブユニット(1)の二列の玉(5)間の中央を通る鉛直線(C)は、タイヤの中心(O)を通る鉛直線よりも軸方向外側にあり、ハブユニット(1)の車体側軌道部材(3)では、2列の玉(5)間の中央を通る鉛直線の近傍で相対的に大きな歪みが生じる。この車体側軌道部材(3)の歪みは、矢印で示すように、接地中心側である最下部において最大となる圧縮方向の歪みとなり、また、接地中心の反対側である最上部においは、引張り方向で最大の歪みとなる。磁歪センサ(10)は、圧縮歪みに対しては、これに直交する方向から、また、引張り歪みに対しては、これと同じ方向から臨まされたときに最大の感度を示す。したがって、図3に示すように、この車体側軌道部材(3)の軸方向圧縮歪みを検知するように、磁歪センサ(10)を車体側軌道部材(3)の玉近傍部の外周面のすぐ外方に配置することにより、大きな逆磁歪効果が検知される。磁歪センサ(10)の出力とタイヤ接地荷重との関係は、相関関係にあり、したがって、センサ出力とタイヤ接地荷重との関係式を予め求めておくことにより、車体側軌道部材(3)の軸方向圧縮歪みからタイヤ接地荷重を求めることができる。
上記第1および第2実施形態のセンサ装置の原理および効果について、図4および図5を参照して以下に説明する。
原子には、電子の公転や電子そのものの自転・スピンにより、自発磁化が発生している。中でもFe原子は、電子分布が回転楕円体的になっているため、原子自体が見掛け楕円体になっており、自発磁化方向がその長軸方向を向いている。Feでは、結晶格子毎に自発磁化が揃っており、結晶格子は、自発磁化方向に伸びている。これを自発磁歪と言う。さらに、多結晶Fe(例えば、SUJ2)では、結晶粒単位で磁化が揃っているのが一般的で、この集団は磁区と呼ばれている。各磁区内で磁化の方向に磁歪が起きているが、消磁状態では、磁区は、図4(a)に示すように、等方性を示し、磁歪は打ち消し合っている。
この多結晶Feに外部から磁界を印加すると、その方向のエネルギーを下げるように、各磁区は、磁界の方向に磁化回転を起こす。これにより、磁化方向が変わり、磁区の磁歪方向も変化する。例えば、図4(b)に破線の矢印で示すような外部磁界が印加されると、磁区は、同図に示すように、外部磁界の方向を向く異方性を示し、磁歪方向も同様に変化することから、全体として、Fe材が印加磁界の方向に変形する。歪みの大きさは、歪みに抵抗する材料の弾性エネルギーと磁気異方性エネルギーとの兼ね合いで決まる。磁区が等方性を示す消磁状態では、磁歪による材料の歪みeは、平均してe/3となるから、消磁状態から磁気飽和までの変形λ(磁歪の飽和値)は、λ=e−e/3=(2/3)eで表される。よって、自発磁歪値は、e=(3/2)λで表される。Fe材では、一般的にλ=10−5程度である。
逆に、外力によって材料を歪ませると、磁化方向が変化する現象が発生する。これは逆磁歪効果と呼ばれている。多結晶Feに一軸応力がかかると、図4(c)に示すように磁化方向が圧縮方向と垂直の方向に変化し、磁気異方性を成す。逆磁歪効果の測定には、磁気異方性を成すと透磁率が上がる特性を用いて、図4(c)に破線の矢印で示す方向の磁界を外部から印加し、その透磁率変化を測定する方法が多く用いられている。
磁性体製の被検知部である内輪(17)および車体側軌道部材(3)が完全に等方性を有しているとすると、歪みがゼロの場合には、被検知部を1回転させても、磁歪センサ(8)(10)からの出力はゼロであり、周方向の所定位置で歪みが生じると、磁歪センサ(8)(10)は、歪みに伴う逆磁歪効果に応じた大きさの電圧を出力する。
ところが、図5(a)に示すように、磁性体の被検知部(M)中に存在している多数の磁区(m)に、部分的に同じ方向のものが揃っている異方性(I)がある場合、歪みがゼロの場合でも、被検知部(M)を1回転させるのに伴って、この異方性の部分(I)における磁束密度変化により磁歪センサ(8)(10)からの出力が発生する。そして、周方向の所定位置で歪みが生じると、磁歪センサ(8)(10)は、歪みに伴う逆磁歪効果に応じた大きさの電圧を出力するが、この逆磁歪効果による磁束密度変化分と異方性部分(I)からの磁束密度変化部分とが加算されることになり、磁歪センサ(8)(10)からの出力には、誤差が含まれることになる。すなわち、図5(b)に示すように、振幅として、Aのほかに、A’が検出され、周期として、T1’およびT2’が検出され、この結果、荷重および回転速度が本来の値と異なるものとなってしまう。
これに対し、上記第1および第2実施形態のものでは、内輪(17)および車体側軌道部材(3)の焼入れ時に、磁気シールドされた状態で冷却されることによって、地磁気などの影響が排除されて、被検知部である内輪(17)および車体側軌道部材(3)は完全な等方性を有しており、図4に示したように、磁歪センサ(8)(10)からは誤差を含まない信号が出力される。こうして、磁歪センサ(8)(10)で得られる値から残留磁束密度のバラツキが排除され、検知精度が向上する。一方、従来のように、焼入れ時に、磁気シールドせずに冷却した場合は、全体としての異方性および部分的な異方性がともに強くなり、しかも、その大きさや異方性の部分がどこにあるかが不明であるため、図5に示した誤差を防ぐことが困難である。
なお、上記においては、センサ付き転がり軸受ユニットとして、センサ付きハブユニットに使用されるものを説明したが、上記のセンサ装置(2)は、固定側軌道部材(3)に対応する位置に配されている外輪、回転側軌道部材(4)に対応する位置に配されている内輪、および1列または2列の転動部材を有する種々の転がり軸受にももちろん適用できる。
転がり軸受の転動部材の材料は特に限定されないが、転動部材をセラミックスなどの非磁性材料とすることにより、ノイズとしての周辺磁束を最小にすることができ、逆磁歪効果による微小な磁束変化を精度よく検知できる。
(1) 転がり軸受
(2) センサ装置
(3) 固定側軌道部材
(4) 回転側軌道部材
(5) 玉(転動部材)
(8)(10) 磁気インピーダンスセンサ(磁歪センサ)
(17) 内輪
(2) センサ装置
(3) 固定側軌道部材
(4) 回転側軌道部材
(5) 玉(転動部材)
(8)(10) 磁気インピーダンスセンサ(磁歪センサ)
(17) 内輪
Claims (5)
- 歪みを受ける磁性体製の被検知部と、被検知部に対向するセンシング面を有し被検知部の逆磁歪効果を検知する磁歪センサとからなり、被検知部は、キュリー点以上の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されることにより焼入れされていることを特徴とするセンサ装置。
- 固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、
センサ装置は、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に設けられた被検知部の逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部は、キュリー点以上の温度まで加熱された後、磁気シールドされた状態で冷却されることにより焼入れされていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受ユニット。 - 固定側軌道部材が車体側、回転側軌道部材が車輪側に取り付けられるセンサ付きハブユニットとされている請求項2のセンサ付き転がり軸受ユニット。
- 磁歪センサは、内輪の軸方向の圧縮歪みを測定可能なように、内輪の肩部径方向より臨まされている請求項3のセンサ付き転がり軸受ユニット。
- 磁歪センサは、車体側軌道部材に径方向外方から臨まされている請求項3のセンサ付き転がり軸受ユニット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004285813A JP2006098258A (ja) | 2004-09-30 | 2004-09-30 | センサ装置およびセンサ付き転がり軸受ユニット |
Applications Claiming Priority (1)
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