JP4029777B2 - センサ付き転がり軸受ユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、転がり軸受と転がり軸受の各種情報を検出するセンサ装置とが一体化されたセンサ付き転がり軸受ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
転がり軸受と転がり軸受の各種情報を検出するセンサ装置とが一体化されたセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、磁歪センサを使用して軌道部材の歪みを検知することが本出願人により提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特願2003−23378(特開2004−45370号公報)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記出願のセンサ付き転がり軸受ユニットでは、転動部材の通過に伴って軌道部材の肩部が歪むことによる逆磁歪効果を検知して軌道部材に作用する力を求めているが、逆磁歪効果が小さいため、この効果を大きくすることが課題となっている。逆磁歪効果を高めるには、材料を変更したり、被検知部に表面処理を施したりすることなどが考えられるが、材料の変更は軸受としての性能に影響を及ぼすことがあり、また、表面処理を施すことには、手間およびコストが増加するという問題がある。
【0005】
の発明の目的は、逆磁歪効果を利用して軸受の歪み量の検知が可能であり、しかも、軸受の材料を変更したり、被検知部に表面処理を施したりすることが不要なセンサ付き転がり軸受ユニットを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、センサ装置は、転動部材と軌道部材との接触部に作用する圧縮方向の力により生じるこれらの部材のうちのいずれかの逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部が、磁気異方性を有するように着磁されており、転動部材がない箇所における状態では、圧縮応力がかからないことによって、着磁部の磁区に圧縮方向の磁気異方性が生じており、転動部材がある箇所における状態では、圧縮応力がかかることによって、着磁部の磁区が磁歪センサの方向を向くことを特徴とするものである。
【0007】
第2の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、センサ装置は、転動部材と軌道部材との接触部に作用する圧縮方向の力により生じるこれらの部材のうちのいずれかの逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部が、磁気異方性を有するように着磁されており、センサのセンシング面は、S極とN極との境界部分で着磁による磁束密度がゼロの付近に臨まされていることを特徴とするものである
【0008】
第3の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、センサ装置は、転動部材と軌道部材との接触部に作用する圧縮方向の力により生じるこれらの部材のうちのいずれかの逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部が、磁気異方性を有するように着磁されており、固定側軌道部材および回転側軌道部材は、いずれも軸受用鋼で、転動部材は、非磁性材料で形成されており、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に、被検知部が設けられていることを特徴とするものである
【0009】
磁歪センサは、逆磁歪効果(物質が歪むあるいは変形すると、磁区が磁化回転を起こし、見かけ上磁力が現れる現象)を計測するセンサであり、磁歪センサとしては、例えば、透磁率の高い磁性線に高周波電流を印加したときの磁性線両端間のインピーダンスが外部磁場によって変化する電磁気現象を利用して外部磁場を計測する磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)、インピーダンスが応力により変化することを利用した応力インピーダンスセンサ(SIセンサ)などが挙げられる。
【0010】
着磁は、S極およびN極が軸方向に並ぶように行われてもよく、また、S極およびN極が径方向に並ぶように行われてもよい。この場合に、S極およびN極は環状に形成されてもよく、周方向の1または複数箇所に設けられてもよい。
【0011】
着磁によって形成される磁気異方性は、各磁区の方向が圧縮方向と同じ方向またはこの方向と小さい角度で交差する方向に揃うように付与され、センサは、そのセンシング面が圧縮方向に対して垂直方向または垂直に近い方向から被検知部を臨むように設けられる。また、センサのセンシング面は、磁束密度がゼロの付近(S極とN極との境界部分)に臨まされる。
【0012】
上記センサ装置によると、圧縮応力がかかっていない状態では、各磁区の方向が同じ方向を向いており、圧縮方向応力がかかることによって、各磁区の方向が圧縮方向と垂直な方向に変化し、これに伴って、磁歪センサによって検知される磁束密度が変化する。この変化量は、圧縮応力の大きさに比例しており、磁歪センサの出力から、被検知部にかかっている圧縮応力を求めることができる。
【0013】
記センサ装置において、各磁区の方向が圧縮方向と同じ方向となるように磁気異方性が付与されるとともに、センサのセンシング面が圧縮方向に垂直な方向から被検知部を臨むように設けられることが好ましく、このようにすると、圧縮応力がかっていないときに磁歪センサに検知される方向の磁束密度が実質的にゼロとなるとともに、圧縮応力がかったときに磁歪センサに検知される方向の磁束密度が実質的に最大値となり、磁歪センサに検知される磁束密度変化が最大となる。したがって、高い精度で圧縮応力を検知することができる。
【0014】
転がり軸受としては、深みぞ玉軸受、アンギュラ玉軸受、ころ軸受、ニードル軸受、スラスト軸受などのいずれの転がり軸受でも使用可能であり、また、単列のものだけでなく、複列のものにも適用できる。
【0015】
固定側軌道部材は、ハウジングなどに取り付けられ、回転側軌道部材は、回転軸などに取り付けられる。磁歪センサは、一般的には、固定側軌道部材またはこれが固定されるハウジングなどの固定側部材に取り付けられる。なお、固定側部材とは、回転側部材と相対回転する部材の意であり、必ずしも固定されている必要はなく、固定側部材には、それ自体が回転するものも含まれるものとする。
【0016】
この発明のセンサ付き転がり軸受ユニットによると、回転軌道部材に固定された主軸等の回転体が回転したり、回転体に荷重がかかると、転動部材と軌道部材の軌道面や肩部との間に作用する力が変化し、この結果、軌道部材の軌道面や肩部の歪み量が変動し、逆磁歪効果が得られる。この場合の逆磁歪効果は、軸受用鋼等の鉄系磁性体では、ミリガウス程度の小さいものであるが、被検知部に磁気異方性を付与することにより、上述のように、磁束密度変化を大きくすることが可能であり、磁歪センサは、歪み変動量を磁歪変動量として精度よく検知することができる。したがって、この歪みの変動量から軌道部材への作用力の変動量を精度よく求めることができる。
【0017】
上記のセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材は、いずれも軸受用鋼であり、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に、被検知部が設けられていることがあり、固定側軌道部材および回転側軌道部材は、いずれも軸受用鋼で、転動部材は、非磁性材料で形成されており、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に、被検知部が設けられていることがある。
【0018】
このようにすると、固定側軌道部材および回転側軌道部材がいずれも軸受用鋼であるので、軸受の性能に影響を及ぼすことなく上記の効果を得ることができる。また、転動部材および被検知部を備えない方の軌道部材や保持器を非磁性材料製とすることにより、ノイズとしての周辺磁束を最小にすることができ、逆磁歪効果による微小な磁束変化をより精度よく検知することができる。
【0019】
上記のセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材が車体側、回転側軌道部材が車輪側に取り付けられるようになされて、センサ付きハブユニットとして使用されることがある。
【0020】
このようにすると、磁歪センサの出力からタイヤの接地荷重を検出することが可能となり、接地荷重を使用した車両の安定制御に寄与することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0022】
図1および図2は、この発明のセンサ付き転がり軸受ユニットの第1実施形態を示している。以下の説明において、左右および上下は、図の左右および上下をいうものとする。なお、左が車両の内側に、右が車両の外側となっている。
【0023】
このセンサ付き転がり軸受ユニットは、センサ付きハブユニットとして使用されるもので、ハブユニット(1)と、タイヤの接地荷重を検出するセンサ装置(2)とを備えている。
【0024】
ハブユニット(1)は、車体側に固定される固定側軌道部材(車体側部材)(3)、車輪が取り付けられる回転側軌道部材(車輪側部材)(4)、両部材(3)(4)の間に2列に配置された複数の転動部材である玉(5)、および各列の玉(5)をそれぞれ保持する保持器(6)を備えている。
【0025】
固定側軌道部材(3)は、軸受の外輪(固定輪)機能を有しているもので、内周面に2列の外輪軌道が形成されている円筒部(12)と、円筒部(12)の左端部近くに設けられて懸架装置(車体)にボルトで取り付けられるフランジ部(13)とを有している。
【0026】
回転側軌道部材(4)は、第1の軌道溝(15a)を有する大径部(15)および第1の軌道溝(15a)の径よりも小さい外径を有する小径部(16)を有している内軸(14)と、内軸(14)の小径部(16)外径に嵌め止められて右面が内軸(14)の大径部(15)左面に密接させられている内輪(17)とからなる。内軸(14)の右端近くには、車輪を取り付けるための複数のボルト(19)が固定されたフランジ部(18)が設けられている。内輪(17)の右部には、内軸(14)の軌道溝(15a)と並列するように、軌道溝(17a)が形成されており、内輪(17)の左部に肩部(17b)が形成されている。固定側軌道部材(3)の右端部と内軸(14)との間には、シール装置(20)が設けられている。内軸(14)の小径部(16)の左端部には、おねじ部が設けられており、このおねじ部にねじ合わされたナット(21)によって、内輪(17)が内軸(14)に固定されている。固定側軌道部材(3)の左端部には、カバー(22)が被せ止められている。
【0027】
センサ装置(2)は、固定側軌道部材(3)に取り付けられた支持部材(7)と、支持部材(7)に取り付けられた磁歪センサ(8)と、磁歪センサ(8)の出力を処理する処理手段(図示略)とを備えている。
【0028】
この実施形態では、固定側軌道部材(3)および回転側軌道部材(4)は、鉄系磁性体であり軸受用鋼の1種である高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製、転動部材(5)は、セラミック製、保持器(6)は、黄銅製とされており、固定側軌道部材(3)および回転側軌道部材(4)が磁性を有しているのに対し、転動部材(5)および保持器(6)は、非磁性材料によって形成されている。
【0029】
この実施形態では、磁歪センサ(8)は、磁気インピーダンスセンサとされており、そのセンシング面(8a)は、回転側軌道部材(4)の内輪(17)の肩部(17b)の外周面に臨まされている。
【0030】
回転側軌道部材(4)の内輪(17)には、S極とN極とが周方向の所定箇所に左右に並んで配置されることにより、内輪(17)の各磁区の方向を軸方向に向かせる着磁部(9)が設けられている。磁歪センサ(8)のセンシング面(8a)は、内輪(17)と転動部材(5)との接触角の方向にほぼ垂直な方向から着磁部(9)のS極とN極との境界部分を臨むように調整されている。
【0031】
上記センサ付き転がり軸受ユニットによると、回転側軌道部材(内輪)(4)が回転して、転動部材(5)が磁歪センサ(8)のセンシング面(8a)が臨まされている内輪(17)を歪ませると、逆磁歪効果により、この内輪(17)の肩部(17b)で磁区の磁化回転が生じて見かけ上微小磁力が生じ、磁歪センサ(8)の出力が上昇する。そして、転動部材(5)と転動部材(5)の間がセンシング面(8a)に来ると、内輪(17)の歪みが減り、磁力が低下する。よって、磁歪センサ(8)の出力も低下する。この変化は、転動部材(5)の公転周波数×転動部材数に等しい周波数のサイン波となり、その振幅の変化は、径方向荷重と相関がある。したがって、このサイン波の振幅(磁歪センサ(8)の信号の高周波成分の振幅)から回転側軌道部材(4)に作用する力さらにこれと相関のある車輪の接地荷重を求めることができる。
【0032】
上記逆磁歪効果の原理および効果について、図3から図6までを参照して以下に説明する。
【0033】
原子には、電子の公転や電子そのものの自転・スピンにより、自発磁化が発生している。中でもFe原子は、電子分布が回転楕円体的になっているため、原子自体が見掛け楕円体になっており、自発磁化方向がその長軸方向を向いている。Feでは、結晶格子毎に自発磁化が揃っており、結晶格子は、自発磁化方向に伸びている。これを自発磁歪と言う。さらに、多結晶Fe(例えば、SUJ2)では、結晶粒単位で磁化が揃っているのが一般的で、この集団は磁区と呼ばれている。各磁区内で磁化の方向に磁歪が起きているが、消磁状態では、磁区は、図3(a)に示すように、等方性を示し、磁歪は打ち消し合っている。
【0034】
この多結晶Feに外部から磁界を印加すると、その方向のエネルギーを下げるように、各磁区は、磁界の方向に磁化回転を起こす。これにより、磁化方向が変わり、磁区の磁歪方向も変化する。例えば、図3(b)に破線の矢印で示すような外部磁界が印加されると、磁区は、同図に示すように、外部磁界の方向を向く異方性を示し、磁歪方向も同様に変化することから、全体として、Fe材が印加磁界の方向に変形する。歪みの大きさは、歪みに抵抗する材料の弾性エネルギーと磁気異方性エネルギーとの兼ね合いで決まる。磁区が等方性を示す消磁状態では、磁歪による材料の歪みeは、平均してe/3となるから、消磁状態から磁気飽和までの変形λ(磁歪の飽和値)は、λ=e−e/3=(2/3)eで表される。よって、自発磁歪値は、e=(3/2)λで表される。Fe材では、一般的にλ=10−5程度である。
【0035】
逆に、外力によって材料を歪ませると、磁化方向が変化する現象が発生する。これは逆磁歪効果と呼ばれている。多結晶Feに一軸応力がかかると、図3(c)に示すように磁化方向が圧縮方向と垂直の方向に変化し、磁気異方性を成す。逆磁歪効果の測定には、磁気異方性を成すと透磁率が上がる特性を用いて、図3(c)に破線の矢印で示す方向の磁界を外部から印加し、その透磁率変化を測定する方法が多く用いられている。
【0036】
図4は、被検知部が着磁されている場合に検知される磁束密度を説明する図で、図5は、被検知部が着磁されていない場合に検知される磁束密度を説明する図である。
【0037】
図5(a)において、磁性体(M)中には、多数の磁区(m)が存在しており、その方向はバラバラゆえ全体として等方性を示している。この磁性体(M)に磁歪センサ(S)のセンシング面を対向させると、磁歪センサ(S)には磁性体(M)の被検知部の磁束密度が0でないことに伴う出力Δ3(磁束密度0を基準)が生じる。次いで、磁性体(M)に圧縮応力(C)を付加すると、同図(b)に示すように、磁区(m)の方向は、圧縮方向と直交する方向に揃えられる。これにより、磁歪センサ(S)には磁束密度変化に伴う出力Δ4(磁束密度0を基準)が生じる。したがって、磁歪センサ(S)が検知するのは、Δ4−Δ3である。図4(a)において、磁性体(M)中には、多数の磁区(m)が存在しており、その方向は、着磁により、磁歪センサ(S)のセンシング面に平行に揃えられている。この磁性体(M)に磁歪センサ(S)のセンシング面を対向させると、磁歪センサ(S)には被検知部の磁束密度に伴う出力Δ1が生じるが、この値は、磁区の方向がセンシング面に対して直交しているので、ほぼ0となっている。次いで、磁性体(M)に圧縮応力(C)を付加すると、同図(b)に示すように、磁区(m)の方向は、圧縮方向と直交する方向に揃えられる。これにより、磁歪センサ(S)には被検知部の磁束密度変化に伴う出力Δ2(磁束密度0を基準)が生じる。このΔ2は、上記Δ4と同じ大きさであるが、磁歪センサ(S)が検知するのは、Δ2−Δ1であって、Δ1がほぼ0であることから、(Δ2−Δ1)>(Δ3−Δ4)となる。
【0038】
図6は、着磁有りと着磁無しとにおける逆磁歪効果の違いを示すグラフであり、SUJ2(着磁無し)、SUJ2(着磁有り)およびSUS304(参考例)の3種類に対して、負荷荷重を増加させていった際の磁束密度変化量がそれぞれ求められている。同図から分かるように、磁性体であるSUJ2(着磁無し)は、荷重の増加にしたがってほぼ直線的に磁束密度が変化しており、磁束密度の変化量から負荷荷重を求めることができるものの、磁束密度変化量は、8kNの荷重を付与しても1μTに達していない。これに対し、SUJ2(着磁有り)では、磁束密度変化量は、5kNの荷重を付与した際に4μTに達しており、SUJ2(着磁無し)に比べて、磁束密度変化量から負荷荷重を求める際の誤差が小さくなることが分かる。なお、図6のグラフによると、負荷荷重が大きくなると、磁束密度変化量は一定値に飽和しており、SUJ2(着磁有り)では、所定の圧縮応力値になると、磁区の向きがセンサ方向にほぼ揃い、これ以上負荷荷重を大きくしても、磁束密度があまり大きくならないことが分かる。したがって、磁歪センサの出力値から接地荷重を求める演算式は、この特性を考慮して作成される。
【0039】
上記のことから、図1の転がり軸受ユニットでは、図2(a)に示す圧縮応力がかっていない状態(転動部材(5)がない箇所における状態)では、着磁部(9)の磁区(m)に圧縮方向の磁気異方性が生じており、磁歪センサ(8)に向く磁化が少なくなっている(矢印は、磁区(m)の磁束の方向を示している。)。そして、同図(b)に示す圧縮応力がかった状態(転動部材(5)がある箇所における状態)では、着磁部(9)の磁区(m)が磁歪センサ(8)の方向を向くことにより、磁束密度が大きくなる。この磁束密度変化は、着磁無しの場合に比べ大きく、したがって、この変化量から精度よく荷重を求めることができる。
【0040】
上記において、着磁部(9)は、内輪(17)の各磁区(m)の方向を軸方向に向かせるように設けられているが、各磁区(m)の方向を径方向に向かせるように設けることもできる。その一例を図7に示す。同図において、回転側軌道部材(4)の内輪(17)の肩部(17b)には、S極とN極とが周方向の所定箇所に径方向に並んで配置されることにより、内輪(17)の各磁区(m)の方向を径方向に向かせる着磁部(10)が設けられている。磁歪センサ(8)のセンシング面(8a)は、内輪(17)と転動部材(5)との接触角の方向にほぼ垂直な方向から着磁部(10)のS極とN極との境界部分を臨むように調整されている。
【0041】
なお、上記各実施形態では、いずれも着磁部(9)(10)を回転側軌道部材(4)の内輪(17)に設ける例を示したが、着磁部は、回転側軌道部材(4)の他の部分に設けてもよく、固定側軌道部材(3)に設けてもよい。また、転動部材(5)を軸受用鋼で形成し、この軸受用鋼製の転動部材(5)に着磁部を設けるようにしてもよい。いずれの場合でも、着磁に際して、S極とN極とを軸方向に並ぶように設けてもよく、径方向に並ぶように設けてもよい。そして、磁歪センサ(8)のセンシング面(8a)は、形成された着磁部からの磁束密度の変化を最適に検知できるようにその方向を調整される。
【0042】
また、上記においては、センサ付き転がり軸受ユニットとして、センサ付きハブユニットに使用されるものを説明したが、上記のセンサ装置(2)は、図8および図9に示すように、他の転がり軸受にももちろん適用できる。以下の説明において、左右は図8の左右をいうものとする。
【0043】
このセンサ付き転がり軸受ユニットは、転がり軸受(31)およびそれに設けられたセンサ装置(32)を備えている。
【0044】
転がり軸受(31)は、ハウジング(39)に固定されている固定側軌道部材(外輪)(33)、回転軸(40)に固定されている回転側軌道部材(内輪)(34)、これらの間に配置された複数の転動部材(玉)(35)、および転動部材(35)を保持する保持器(36)からなる。
【0045】
この実施形態では、固定側軌道部材(33)および回転側軌道部材(34)は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製、転動部材(35)は、セラミック製、保持器(36)は、黄銅製とされており、固定側軌道部材(33)および回転側軌道部材(34)が磁性を有しているのに対し、転動部材(35)および保持器(36)は、非磁性材料によって形成されている。
【0046】
センサ装置(32)は、固定側軌道部材(33)に取付部材(37)を介して取り付けられた磁歪センサ(38)と、磁歪センサ(38)の出力信号を処理する処理手段(図示略)とを備えている。
【0047】
この実施形態では、磁歪センサ(38)は、磁気インピーダンスセンサとされており、そのセンシング面(38a)は、回転側軌道部材(34)の肩部(34a)に設けられたテーパ面に臨まされている。そして、回転側軌道部材(34)の肩部(34a)には、磁力線の方向がテーパ面にほぼ平行となるように着磁部(41)が設けられている。
【0048】
上記センサ付き転がり軸受ユニットによると、回転側軌道部材(内輪)(34)が回転して、転動部材(35)が磁歪センサ(38)のセンシング面(38a)が臨まされている内輪肩部(34a)を歪ませると、逆磁歪効果により、この内輪肩部(34a)で磁区の磁化回転が生じて見かけ上微小磁力が生じ、磁歪センサ(38)の出力が上昇する。そして、転動部材(35)と転動部材(35)の間がセンシング面(38a)に来ると、内輪肩部(34a)の歪みが減り、磁力が低下する。よって、磁歪センサ(38)の出力も低下する。この変化は、転動部材(35)の公転周波数×転動部材数に等しい周波数のサイン波(第1のSIN波)となり、その振幅の変化は、径方向荷重と相関がある。したがって、このサイン波の振幅(磁歪センサ(38)の信号の高周波成分の振幅)から回転側軌道部材(34)に作用する力を求めることができる。
【0049】
この転がり軸受ユニットでは、図9(a)に示す圧縮応力がかっていない状態(転動部材(35)がない箇所における状態)では、矢印で示すように、着磁部(41)の磁区(m)に圧縮方向の磁気異方性が生じており、磁歪センサ(38)に向く磁化が少なくなっている。そして、同図(b)に示す圧縮応力がかった状態(転動部材(35)がある箇所における状態)では、着磁部(41)の磁区(m)が磁歪センサ(38)の方向を向くことにより、磁束密度が大きくなる。この磁束密度変化は、着磁無しの場合に比べ大きく、したがって、この変化量から精度よく荷重を求めることができる。
【0050】
上記の実施形態では、磁歪センサ(38)を固定側軌道部材(外輪)(33)に固定する例を示したが、磁歪センサ(38)は、回転側軌道部(内輪)(34)やハウジング(39)等に固定してもよい。軌道部材(33)(34)に固定する場合では、転がり軸受ユニットとしてハウジング(39)等とは独立した構成となり、取扱いが容易になる。
【0051】
なお、上記各実施形態において、磁歪センサの出力から回転側軌道部材に作用する力を検知する場合についてのみ説明したが、磁歪センサの出力から固定側軌道部材に作用する力を検知することもでき、また、適宜な信号処理手段の追加により、回転側軌道部材の回転情報(回転速度や回転数)、回転側軌道部材の偏心量や膨張量、転動部材の公転速度などの物理量の検出も同時に可能となる。
【0052】
また、上記各実施形態では、転動部材(5)や保持器(6)に非磁性材料を用いているが、転動部材(5)を軸受用鋼としてももちろんよい。転動部材(5)や保持器(6)あるいは被検知部を備えない方の軌道部材に非磁性材料を用いることにより、ノイズとしての周辺磁束を最小にすることができ、逆磁歪効果による微小な磁束変化を精度よく検知できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットの1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】 図2は、図1のセンサ付き転がり軸受ユニットにおける圧縮応力と磁区の方向との関係を示す拡大断面図である。
【図3】 図3は、この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットの逆磁歪効果の原理を示す図である。
【図4】 図4は、この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットの磁束密度変化を示す図である。
【図5】 図5は、着磁部のない場合の図4に対応する図である。
【図6】 図6は、図4および図5のものについて、荷重変化と磁束密度変化との関係を示す実験結果である。
【図7】 図7は、この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】 図8は、この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットのさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】 図9は、図8のセンサ付き転がり軸受ユニットにおける圧縮応力と磁区の方向との関係を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
(1) 転がり軸受
(2) センサ装置
(3) 固定側軌道部材
(4) 回転側軌道部材
(5) 玉(転動部材)
(8) 磁気インピーダンスセンサ(磁歪センサ)
(9) 着磁部
(10) 着磁部
(31) 転がり軸受
(32) センサ装置
(33) 外輪(固定側軌道部材)
(34) 内輪(回転側軌道部材)
(35) 玉(転動部材)
(38) 磁気インピーダンスセンサ(磁歪センサ)
(41) 着磁部

Claims (5)

  1. 固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、
    センサ装置は、転動部材と軌道部材との接触部に作用する圧縮方向の力により生じるこれらの部材のうちのいずれかの逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部が、磁気異方性を有するように着磁されており、
    転動部材がない箇所における状態では、圧縮応力がかからないことによって、着磁部の磁区に圧縮方向の磁気異方性が生じており、転動部材がある箇所における状態では、圧縮応力がかかることによって、着磁部の磁区が磁歪センサの方向を向くことを特徴とするセンサ付き転がり軸受ユニット。
  2. 固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、
    センサ装置は、転動部材と軌道部材との接触部に作用する圧縮方向の力により生じるこれらの部材のうちのいずれかの逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部が、磁気異方性を有するように着磁されており、
    センサのセンシング面は、S極とN極との境界部分で着磁による磁束密度がゼロの付近に臨まされていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受ユニット。
  3. 固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動部材を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、
    センサ装置は、転動部材と軌道部材との接触部に作用する圧縮方向の力により生じるこれらの部材のうちのいずれかの逆磁歪効果を検知する磁歪センサを有しており、被検知部が、磁気異方性を有するように着磁されており、
    固定側軌道部材および回転側軌道部材は、いずれも軸受用鋼で、転動部材は、非磁性材料で形成されており、固定側軌道部材および回転側軌道部材のいずれか一方に、被検知部が設けられていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受ユニット。
  4. センサは、そのセンシング面が圧縮方向に垂直な方向から被検知部を臨むように設けられている請求項1〜3のいずれか1項のセンサ付き転がり軸受ユニット。
  5. 固定側軌道部材が車体側、回転側軌道部材が車輪側に取り付けられるセンサ付きハブユニットとされている請求項1〜4のいずれか1項のセンサ付き転がり軸受ユニット。
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