JP2006096999A - 蓄熱材マイクロカプセル固形物 - Google Patents

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Abstract

【課題】潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルの固形物において、その固形物作製の際にマイクロカプセルの損傷を起こすことなく、かつ相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えても蓄熱効果が低減せずに長期間にわたって利用可能な、蓄熱材マイクロカプセル固形物を提供すること。
【解決手段】蓄熱材を内包する蓄熱材マイクロカプセルを結着剤とともに固着せしめた蓄熱材マイクロカプセル固形物において、該結着剤の弾性率が該蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも小さい値を持つ結着剤を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は蓄熱材を内包したマイクロカプセル固形物に関するものであり、具体的には蓄熱材の融点付近で極めて温度緩衝性に優れるマイクロカプセル固形物に関するものである。
近年、熱エネルギーを有効に利用することにより、省エネルギー化を図ることが求められている。その有効な方法として、物質の相変化に伴う潜熱を利用して蓄熱を行う方法が考えられてきた。相変化を伴わない顕熱のみを利用する方法に比べ、融点を含む狭い温度域に大量の熱エネルギーを高密度に貯蔵できるため、蓄熱材容量の縮小化がなされるだけでなく、蓄熱量が大きい割に大きな温度差が生じないめ熱損失を少量に抑えられる利点を有する。
蓄熱材の熱交換効率を高めるために、蓄熱材をマイクロカプセル化する方法が提案されている。一般に蓄熱材をマイクロカプセル化する方法としては、複合エマルジョン法によるカプセル化法(例えば、特許文献1参照)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(例えば、特許文献2参照)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(例えば、特許文献3参照)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(例えば、特許文献4参照)等の方法を用いることができる。
上記のマイクロカプセル化する方法では多くの場合、蓄熱材マイクロカプセルは水等の媒体に分散した状態で得られる。それを乾燥させ固形物として取り出すことにより、内包された潜熱蓄熱材の相状態に関係なく常に固形状態を保つことができる。そのため、より広範囲の用途での利用が可能となる。蓄熱材マイクロカプセルの固形物は、マイクロカプセルを作製する際に用いた媒体を乾燥させただけのマイクロカプセル単体ではなく、マイクロカプセルが複数個固着した状態を保持させるために結着剤が併用されるのが通例である(例えば、特許文献5参照)。
しかし、蓄熱材マイクロカプセルを固形化すると媒体に分散していた時には見られない問題点があった。すなわち、固形物を作製する際に成型時の外部圧力や内部応力により、マイクロカプセルが損傷を受けたり、蓄熱材マイクロカプセル固形物に相変化温度をはさむ温度域で、繰り返し温度変化を与えると蓄熱効果が低減してしまうという問題点があった。
特開昭62−1452号公報 特開昭62−149334号公報 特開昭62−225241号公報 特開平2−258052号公報 特開平2−222483号公報
本発明の課題は、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルの固形物において、その固形物作製の際にマイクロカプセルの損傷を起こすことなく、かつ相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えても蓄熱効果が低減せずに長期間にわたって利用可能な、蓄熱材マイクロカプセル固形物を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、次の発明を見出した。
(1)蓄熱材を内包する蓄熱材マイクロカプセルを結着剤とともに固着せしめた蓄熱材マイクロカプセル固形物において、該結着剤の弾性率が該蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも小さい値を持つ結着剤を用いることを特徴とする蓄熱材マイクロカプセル固形物、
(2)蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が粉体または固形体である場合に、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値が0.001以上90以下である上記(1)記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物、
(3)蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が造粒体である場合に、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値が0.01以上80以下である上記(1)記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物、
(4)蓄熱材を内包する蓄熱材マイクロカプセルの体積平均粒子径が0.5〜50μmの範囲である上記(1)〜(3)いずれか1項に記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物、
(5)蓄熱材マイクロカプセル固形物の体積平均径が10μm〜100mmの範囲である上記(1)〜(4)いずれか1項に記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物。
本発明で示される蓄熱材マイクロカプセル固形物は、蓄熱材マイクロカプセルを複数個固着せしめる際に用いる結着剤の弾性率を、蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも小さい値を持つ樹脂を用いることにより、固形物作製の際にマイクロカプセルの破壊を生ずることなく、かつ相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えても蓄熱効果が低減せずに長期間にわたって性能を維持することが可能となった。すなわち、蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率と、蓄熱材マイクロカプセルの周囲に存在する結着剤の弾性率とを適切に設定することにより、初期段階での所望の性能と、耐久性を向上させることができた。
固形物作製の際には、乾燥装置や造粒装置などを用いて、蓄熱材マイクロカプセル及び水で湿潤した結着剤を主な成分とする混合物から固形物を作製するが、熱をかけて乾燥する工程で、結着剤から水分が抜けて結着剤が体積収縮する。このとき、蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも、結着剤の弾性率の方が大きいと、カプセル皮膜は結着剤からストレスを受けて、カプセル皮膜に損傷を受け得る。これに対して、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも小さい値を持つ結着剤を用いることにより、カプセル皮膜は結着剤からのストレスを受けにくくなり、カプセル皮膜の損傷を抑止することができた。
相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えると、蓄熱材マイクロカプセルの内部に存在する相変化化合物である蓄熱材は、融解と凝固を繰り返すことになるが、これら蓄熱材は凝固状態から融解状態に変化する時は体積が増大し、逆に融解状態から凝固状態に変化する時は体積が減少する。このことに連動して、蓄熱材を内包する蓄熱材マイクロカプセルも、蓄熱材が凝固状態から融解状態に変化する時には膨張し、逆に蓄熱材が融解状態から凝固状態に変化する時には収縮する。この蓄熱材マイクロカプセルの膨張と収縮による体積変動は、媒体に分散された状態ではその体積変動の変位は媒体に吸収されるのでカプセル皮膜には何らダメージは生じない。一方、マイクロカプセル固形物ではマイクロカプセルの周囲に存在する結着剤がその体積変動の変位をうまく吸収しないと、カプセル皮膜はカプセル内部の蓄熱材とカプセル外部の結着剤の両方からストレスを受け、膨張と収縮を繰り返すとカプセル皮膜に損傷が生じて、そこからカプセル内部の蓄熱材が徐々に外部に漏れだして蓄熱効果が低減していくという現象が起こり得る。
これに対して、蓄熱材マイクロカプセルを複数個固着せしめる際に用いる結着剤の弾性率を、蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも小さい値を持つ結着剤を用いることにより、マイクロカプセルの周囲に存在する結着剤に膨張と収縮による体積変動の変位は吸収されるようになり、カプセル皮膜には損傷が生じなくなる。すなわち相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えても蓄熱効果が低減せずに長期間にわたって利用可能な性能を維持することが達成できた。
本発明に係わるマイクロカプセルで内包される潜熱蓄熱材は相転移に伴う潜熱を利用して蓄熱する目的で用いられるものであり、融点あるいは凝固点を有する化合物であれば使用可能である。具体的な蓄熱材としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素化合物(パラフィン類化合物)、無機系共晶物及び無機系水和物、パルミチン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸類、ベンゼン、p−キシレン等の芳香族炭化水素化合物、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のエステル化合物、ステアリルアルコール等のアルコール類等の化合物が挙げられ、好ましくは融解熱量が約80kJ/kg以上の化合物で、化学的、物理的に安定でしかも安価なものが用いられる。これらは混合して用いても良いし、必要に応じ過冷却防止材、比重調節材、劣化防止剤等を添加することができる。また、融点の異なる2種以上のマイクロカプセルを混合して用いることも可能である。
本発明に係わるマイクロカプセルの製法として物理的方法と化学的方法が知られているが、特に潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化する方法としては、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱材粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(特開昭62−45680号公報)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(特開昭62−149334号公報)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(特開昭62−225241号公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報)等に記載されている方法が用いられる。
本発明に係わる蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂としては、界面重合法、インサイチュー(in−situ)重合法、ラジカル重合法等の手法で得られるポリスチレン類、ポリアクリロニトリル類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類、エチルセルロース類、ポリウレタン類、アミノプラスト樹脂類、またはゼラチンとカルボキシメチルセルロース若しくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂が用いられる。特に、インサイチュー重合法によるメラミンホルマリン樹脂類や尿素ホルマリン樹脂類、界面重合法によるポリアミド類、ポリウレア類、ポリウレタンウレア類及びポリウレタン類、ラジカル重合法によるポリメタクリレート類が好ましく用いることができる。
本発明に係わる蓄熱材マイクロカプセルの体積平均粒子径は0.5〜50μmの範囲にすることが好ましく、さらに好ましくは1〜20μmの範囲にすることが好ましい。この範囲より大きい粒子径では機械的剪断力に極めて弱くなることがあり、この範囲より小さい粒子径では破壊は抑えられるものの膜厚が薄くなり耐熱性に乏しくなることがある。本発明で述べる体積平均粒子径とはマイクロカプセル粒子の体積換算値の平均粒子径を表わすものであり、原理的には一定体積の粒子を小さいものから順に篩分けし、その50%体積に当たる粒子が分別された時点での粒子径を意味する。体積平均粒子径の測定は顕微鏡観察による実測でも算定可能であるが市販の電気的、光学的粒子径測定装置を用いることにより自動的に測定可能であり、本発明における体積平均粒子径は米国コールター社製粒度測定装置マルチサイザーII型を用いて測定を行なった。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得る方法としては、水分散液の状態で作製されるマイクロカプセル分散液に結着剤を加えて、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー、フィルタープレスなどの各種乾燥装置・脱水装置を用いて媒体の水を蒸発・脱水させて粉体や固形体の形態にする方法を挙げることができる。また、結着剤を加えて又は加えずに上記の装置で粉体や固形体の形態にした後に、結着剤を加えて、押出し造粒、転動造粒、撹拌造粒など各種造粒法を用いて造粒することで粒径を大きくし、扱いやすくした造粒体の形態にすることも可能である。本発明ではこれら粉体や固形体および造粒体の総称として固形物と呼ぶことにする。なお、固形物の形状としては球状、楕円形、立方体、直方体、円柱状、円錐状、俵状、桿状、正多面体、星形、筒型等如何なる形状でも良い。
本発明に係わる蓄熱材マイクロカプセル固形物の体積平均径は10μm〜100mmの範囲にすることが好ましく、さらに好ましくは20μm〜50mmの範囲にすることが好ましい。この範囲より小さい平均径では固形物が飛散しやすくなる、いわゆる粉舞いが起こりやすくなりハンドリング性が悪化することがある。この範囲よりも大きい平均径では体積に比して表面積の割合が小さくなり、外部との熱交換の効率が低下することがある。本発明で述べる体積平均径とはマイクロカプセル固形物の体積換算値の平均径を表わすものであり、原理的には一定体積の固形物を小さいものから順に篩分けし、その50%体積に当たる固形物が分別された時点での物体径を意味する。粉体の場合の体積平均径の測定は篩い分け法や顕微鏡観察による実測でも算定可能であるが市販の電気的、光学的粒子径測定装置を用いることにより自動的に測定することも可能である。造粒体や固形体の場合の体積平均径の測定は篩い分け法や工業用ノギス等による実測で算定可能である。造粒体や固形体を工業用ノギスで測定する場合には、無作為抽出した20個以上の造粒体や固形体の最短径と最長径とを実測して、それらの平均値をもって体積平均径としてもよい。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物に用いられる結着剤の、マイクロカプセル成分に対する配合比は、蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態により好適な範囲がやや異なる。すなわち、蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が粉体や固形体の場合には、結着剤の配合比は、マイクロカプセル成分に対して質量比で0.2〜50%の範囲が好ましく、さらに0.5〜30%の範囲がより好ましい。蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が造粒体の場合には、結着剤の配合比は、マイクロカプセル成分に対して質量比で1〜80%の範囲が好ましく、さらに3〜50%の範囲がより好ましい。この範囲以上であると蓄熱性能の低下が生じることがある。またこの範囲以下であると結着能力が低下することがあったり、マイクロカプセルの収縮・膨張の際の体積変位吸収には不十分となる場合がある。なお、ここでいうマイクロカプセル成分とは、マイクロカプセルの内包物とカプセル皮膜とを合わせたものを指す。
本発明に係わる弾性率とは、弾性体が弾性限界内で変形する場合の応力とひずみの比を表す定数である。引張りあるいは圧縮の応力とひずみの場合には、引張弾性率あるいは圧縮弾性率、縦弾性率、もしくはヤング率という。剪断応力と剪断ひずみの場合にはずり弾性率または剪断弾性率といい、圧力と体積ひずみの場合には体積弾性率という。これらの弾性率はいずれも材料の初期変形に対する抵抗力を表すものであり、材料定数である(以上、新版高分子辞典(朝倉書店刊、1988年発行))。本発明では、上記の各弾性率を総称して弾性率と呼ぶことにするが、本発明に係わる弾性率としては、固形物作製時のマイクロカプセル損傷防止や繰り返し使用時の耐久性向上の観点から、特に引張弾性率または圧縮弾性率を好適な基準として採用することができる。カプセル皮膜構成樹脂の弾性率や結着剤の弾性率は、各材料の弾性率を収録した便覧類から導き出したり、動的粘弾性測定装置等を用いて実測して算出することができる。なお、引張弾性率はJIS−K7113・ASTM−D790に、圧縮弾性率はASTM−D695に、それぞれ試験規格が制定されている。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物では、上記の如く粉体化や固形体化の工程および/または造粒体化の工程で結着剤を用いるが、この結着剤として、蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも小さい値の弾性率を持つ結着剤を用いることで、本発明の目的が達成できるようになる。カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率の大小関係は、結着剤の弾性率の値がカプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値未満であれば本発明の目的は達成されるが、蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態によって好ましい範囲は若干異なってくる。すなわち、蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が粉体や固形体の場合は、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値は0.001以上90以下であることが好ましい。蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が造粒体の場合は、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値は0.01以上80以下であることが好ましい。また、結着剤のマイクロカプセル成分に対する配合比によっても好ましい範囲は若干異なってくる。すなわち、蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が粉体や固形体の場合は、結着剤のマイクロカプセル成分に対する配合比が20%未満では上記の範囲が好ましく、結着剤の配合比が20%以上では、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値は0.001以上80以下であることが好ましい。蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が造粒体の場合は、結着剤のマイクロカプセル成分に対する配合比が35%未満では上記の範囲が好ましく、結着剤の配合比が35%以上では、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値は0.01以上60以下であることが好ましい。結着剤の弾性率がこの範囲よりも大きいと膨張と収縮による体積変動の変位の吸収が十分ではない場合がある。結着剤の弾性率がこの範囲よりも小さいと蓄熱材マイクロカプセル固形物同士の不用意な固着(いわゆるブロッキング)が起こることがある。
蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂として、インサイチュー重合法によるメラミンホルマリン樹脂類または尿素ホルマリン樹脂類を用いる場合には、これら皮膜構成樹脂の弾性率は引張弾性率で8000〜9000MPaであることから、結着剤はその弾性率が上記の比率の範囲内であるものなら好適に使用することができる。これら皮膜構成樹脂の弾性率は比較的高いので、結着剤の選択の幅は広いものとなる。一方、カプセル皮膜構成樹脂として界面重合法によるポリアミド類、ポリウレア類、ポリウレタンウレア類及びポリウレタン類、ラジカル重合法によるポリメタクリレート類を用いる場合には、これら皮膜構成樹脂の弾性率は引張弾性率で3000〜5000MPaであるものが多いことから、結着剤は好適に使用するにはその弾性率が上記の比率の範囲内であるものを選択する必要がある。これらの皮膜構成樹脂を用いるときには、メラミンホルマリン樹脂類または尿素ホルマリン樹脂類を用いるときよりも、より慎重に結着剤の弾性率を考慮して、使用する結着剤を選定する必要がある。また、弾性率の異なる2種以上の結着剤を用いる場合は、それら結着剤混合体の弾性率が上記の比率の範囲を満たせば、本発明の目的は達成される。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物に用いられる結着剤は、更にはマイクロカプセル同士の凝集力、耐水性、強度を高める作用ももたらす成分でもある。本発明で用いられる結着剤としては、上記の弾性率の条件を満たすものであればいずれの結着剤も単独または2種以上併用しても使用可能であるが、具体例としては結着能及び皮膜形成能を有する従来より公知の天然高分子、天然高分子変性品(半合成品)、合成高分子および無機系化合物の中から弾性率を考慮して選択して用いることができる。
天然高分子物質としては、酸化でんぷん、リン酸エステル化でんぷん等の多糖類、並びにゼラチン、カゼイン、にかわ、及びコラーゲン等のタンパク質等が挙げられる。また、半合成品としては、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の繊維素誘導体が用いられる。
また、合成高分子としては、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、及びポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル部分けん化物、及びポリ(メタ)アクリルアマイド等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、及びビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体の親水性高分子や、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレンブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリル酸メチルブタジエン共重合体、及びエチレン酢酸ビニル共重合体等のラテックス類等、メラミンホルムアルデヒド樹脂(初期縮合物)、尿素ホルマリン樹脂(初期縮合物)、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物は、それ単独で利用可能であるが、繊維、樹脂、無機素材などの中に分散・混合・含浸したり、それらの表面に塗工したり貼り付けたり、あるいは吸着材や発熱材と複合したり、包材中に充填したりして利用することも可能である。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物をマイクロ波照射により加熱及び蓄熱する保温材に利用することは、本発明の効果を有効に発揮できる使用例である。ここで言う蓄熱材マイクロカプセル固形物を用いる、マイクロ波照射により加熱及び蓄熱する保温材とは、例えば特開2001−303032号公報や特開2005−179458号公報に記載のように、シリカゲル等の吸水性化合物あるいは極性構造を有する化合物と蓄熱材マイクロカプセル固形物とを単独または適当な包材に充填したものである。マイクロ波を照射することにより吸水性化合物あるいは極性構造を有する化合物が発熱して、その熱が直接または間接的に接触している蓄熱材マイクロカプセル固形物に伝熱され蓄熱が可能となる。蓄熱材マイクロカプセル固形物中の蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率と、蓄熱材マイクロカプセルの周囲に存在する結着剤の弾性率との大小関係を適切な範囲にすることによって、固形物作製時のマイクロカプセルの破壊を抑制したり、使用時に人体から受ける圧力によるマイクロカプセルの破壊を抑制したり、加熱(蓄熱)と使用(放熱)とを繰り返す−すなわち相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えた際における蓄熱材マイクロカプセル固形物中のマイクロカプセルの破壊や劣化を防止して、長期にわたって高熱量な蓄熱性能を維持することが可能となる。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物を寝具に利用することは、本発明の効果を有効に発揮できる使用例である。ここで言う蓄熱材マイクロカプセル固形物を用いる寝具とは、枕、ベッドパッド、シーツ、布団、毛布などが挙げられ、天然繊維や合成繊維からなる布地を単独で使用したもの、若しくはその内部に綿、羊毛、羽毛、ウレタンフォーム、スポンジ、ゲル状クッション材、蕎麦殻、プラスチックビーズなどの合成素材や天然素材からなる充填物が充填されているものである。蓄熱材マイクロカプセル固形物は布地内に単独で充填されたり、上記充填物と共に充填されたりして用いられる。蓄熱材マイクロカプセル固形物中の蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率と、蓄熱材マイクロカプセルの周囲に存在する結着剤の弾性率との大小関係を適切な範囲にすることによって、固形物作製時のマイクロカプセルの破壊を抑制したり、使用時に人体から受ける圧力によるマイクロカプセルの破壊を抑制したり、使用(吸熱)と放置(放冷)とを繰り返す−すなわち相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えた際における蓄熱材マイクロカプセル固形物中のマイクロカプセルの破壊や劣化を防止して、長期にわたって高熱量な蓄熱性能を維持することが可能となる。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物を建築材料に利用することは、本発明の効果を有効に発揮できる使用例である。ここで言う蓄熱材マイクロカプセル固形物を用いる建築材料とは、コンクリート、セメントボード、石膏ボード、樹脂ボード、木質繊維・鉱物性繊維・合成樹脂繊維等を用いた繊維質ボードなどへ蓄熱材マイクロカプセル固形物を混合・塗工したものである。これらを躯体、天井、壁、床などへ利用することにより室内温度が上がりにくい、もしくは下がりにくい環境を作ることが可能となる。また、加熱器や冷却器と組み合わせて、暖房及び/または冷房システムとして使用することもできる。蓄熱材マイクロカプセル固形物中の蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率と、蓄熱材マイクロカプセルの周囲に存在する結着剤の弾性率との大小関係を適切な範囲にすることによって、固形物作製時のマイクロカプセルの破壊を抑制したり、固形物を用いた建築材料を製造する際に成型時の圧力によるマイクロカプセルの破壊を抑制したり、使用(吸熱と放冷、または蓄熱と放熱)を繰り返す−すなわち相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えた際における蓄熱材マイクロカプセル固形物中のマイクロカプセルの破壊や劣化を防止して、長期にわたって高熱量な蓄熱性能を維持することが可能となる。
本発明の蓄熱材マイクロカプセル固形物をガス吸着材に利用することは、本発明の効果を有効に発揮できる使用例である。ここで言う蓄熱材マイクロカプセル固形物を用いる、ガス吸着材とは、例えば特開2001−145832号公報に記載のように、活性炭、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、有機金属錯体等の吸着材と蓄熱材マイクロカプセル固形物とを複合させたものである。吸着対象のガスとしては、メタンなどの天然ガス系、プロパンやブタンなどの石油ガス系、水素、一酸化炭素や二酸化炭素、酸素、窒素、臭気性ガス、酸性ガス、塩基性ガス、有機溶剤ガスなどが挙げられる。これらのガスを吸着材に吸着させるときに発生する熱(吸着熱)を、蓄熱材マイクロカプセル固形物に蓄熱吸収させて温度上昇を抑制して、吸着効率の低下を抑制することができる。また、吸着材からガスを脱着させるときに吸収する熱(脱着熱)を、蓄熱材マイクロカプセル固形物に蓄熱していた熱から放熱供給して温度低下を抑制して、脱着効率の低下を抑制することができる。蓄熱材マイクロカプセル固形物中の蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率と、蓄熱材マイクロカプセルの周囲に存在する結着剤の弾性率との大小関係を適切な範囲にすることによって、固形物作製時のマイクロカプセルの破壊を抑制したり、使用時の機械的圧力によるマイクロカプセルの破壊を抑制したり、使用(蓄熱と放熱)を繰り返す−すなわち相変化温度を挟む温度域で温度変化を繰り返し与えた際における蓄熱材マイクロカプセル固形物中のマイクロカプセルの破壊や劣化を防止して、長期にわたって高熱量な蓄熱性能を維持することが可能となる。
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明する。実施例中の部数や百分率は特にことわりがない限り質量基準である。
〈熱履歴耐久性〉
温度制御が可能な恒温槽中に蓄熱カプセル固形物を入れ、相変化温度を挟む温度域として−10℃から60℃までを温度変化させ、(昇温に1時間、60℃で30分保持、降温に1時間、−10℃で30分保持のサイクルを1回として)、1000回の温度変化を与えた後の蓄熱量を測定し、温度変化を与える前の熱量との比を熱履歴耐久性とした。数値が大きいほど温度変化を与えた後での蓄熱性の保持性に優れていることを示す。なお、蓄熱量については示差走査熱量計(米国パーキンエルマー社、DSC7)で測定される融解熱量により決定した。
〈溶剤抽出率〉
作製された蓄熱カプセル固形物1gを、n−ヘキサン50mLで5分間震盪抽出した後、ヘキサン相をガスクロで測定し、検出された蓄熱剤成分量を蓄熱カプセル固形物への仕込み蓄熱剤成分量で除した値を溶剤抽出率(百分率)とし、皮膜破壊の程度の目安とした。この溶剤抽出率が小さいほど皮膜の破壊が少なく良好であることを示す。
蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製:pHを4.5に調整した5%のスチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100gの中に、潜熱蓄熱材として融点16℃のn−ヘキサデカン80gを激しく撹拌しながら添加し、乳化を行なった。次にメラミン6gと37%ホルムアルデヒド水溶液9g及び水15gを混合し、これをpH8に調整し、約80℃でメラミン−ホルマリン初期縮合物水溶液を調製した。この全量を上記乳化液に添加し70℃で2時間加熱撹拌を施してカプセル化反応を行なった後、この分散液のpHを9に調整してカプセル化を終了し、蓄熱材マイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は2.5μmであった。この蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂はメラミン−ホルマリン樹脂であり、引張弾性率は8900MPaであった。
粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:上記蓄熱材マイクロカプセル分散液に、結着剤としてポリメタクリル酸メチルのラテックス(ポリメタクリル酸メチルの引張弾性率は4100MPaであった)を、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比が100:15の割合になるように添加・混合した後、ドラムドライヤーにより加熱乾燥して、体積平均径が500μmの粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:46である。
得られた粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.9%であり、熱履歴耐久性は90%であった。
蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製までは、実施例1と同様に行い、得られた蓄熱材マイクロカプセル分散液をスプレードライにより噴霧乾燥し、蓄熱材マイクロカプセルの粉体を得た。
造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:上記で得られた蓄熱材マイクロカプセルの粉体に、結着剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体のラテックス(エチレン−酢酸ビニル共重合体の引張弾性率は50MPaであった)を、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比が100:8の割合になるように添加・混合した後、押出式造粒装置により押出成型を行い、100℃で乾燥させて体積平均径が2mmの造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:0.56である。
得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.3%であり、熱履歴耐久性は98%であった。
蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製:潜熱蓄熱材として融点23℃のデカン酸ドデシル80gに多価イソシアネートとして、ジシクロヘキシルメタン4,4−ジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製脂肪族イソシアネート、商品名デスモジュールW)15gを溶解した物を、5%ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名ポバール117)水溶液100g中に添加し、平均粒径が3μmになるまで室温で撹拌乳化を行った。次にこの乳化液に3%ポリエーテル水溶液(旭電化工業(株)製ポリエーテル、商品名アデカポリエーテルEDP−450)60gを添加した後、60℃で加熱と撹拌を施した。低粘度で分散安定性が良好な、蓄熱材マイクロカプセル分散液が得られた。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は3.2μmであった。この蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂はポリウレタンウレアであり、引張弾性率は3900MPaであった。
粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:上記蓄熱材マイクロカプセル分散液に、結着剤としてポリスチレンのラテックス(ポリスチレンの引張弾性率は3100MPaであった)を、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比が100:10の割合になるように添加・混合した後、スプレードライヤーにより加熱乾燥して、体積平均径が120μmの粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:79である。
得られた粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は1.2%であり、熱履歴耐久性は81%であった。
蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製までは、実施例3と同様に行い、得られた蓄熱材マイクロカプセル分散液をスプレードライにより噴霧乾燥し、蓄熱材マイクロカプセルの粉体を得た。
造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:上記で得られた蓄熱材マイクロカプセルの粉体に、結着剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体のラテックス(エチレン−酢酸ビニル共重合体の引張弾性率は50MPaであった)を、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比が100:12の割合になるように添加・混合した後、押出式造粒装置により押出成型を行い、100℃で乾燥させて体積平均径が1mmの造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:1.3である。
得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.7%であり、熱履歴耐久性は96%であった。
蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製:潜熱蓄熱材として融点16℃のn−ヘキサデカン80gにメタクリル酸メチル10gを溶解させ、これを75℃の1%ポリビニルアルコール水溶液300gに入れ、強撹拌により乳化を行った。次にこの乳化液の入った重合容器内を75℃に保ちながら窒素雰囲気にした後、イオン交換水15gに溶解させた2,2′−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド0.3gを添加した。7時間後に重合を終了し、重合容器内を室温にまで冷却し、カプセル化を終了した。得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径は2.3μmであった。この蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂はポリメタクリル酸メチルであり、引張弾性率は4100MPaであった。
粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:上記蓄熱材マイクロカプセル分散液に、結着剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体のラテックス(エチレン−酢酸ビニル共重合体の引張弾性率は50MPaであった)を、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比が100:8の割合になるように添加・混合した後、スプレードライヤーにより加熱乾燥して、体積平均径が100μmの粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:1.2である。
得られた粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は1.3%であり、熱履歴耐久性は92%であった。
蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製までは、実施例5と同様に行い、得られた蓄熱材マイクロカプセル分散液をスプレードライにより噴霧乾燥し、蓄熱材マイクロカプセルの粉体を得た。
造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:上記で得られた蓄熱材マイクロカプセルの粉体に、結着剤としてポリスチレンのラテックス(ポリスチレンの引張弾性率は3100MPaであった)を、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比が100:10の割合になるように添加・混合した後、押出式造粒装置により押出成型を行い、100℃で乾燥させて体積平均径が1mmの造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:76である。
得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は2.5%であり、熱履歴耐久性は85%であった。
実施例1において、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:30の割合にした以外は実施例1と同様の操作で、実施例7の粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:46で、実施例1と同様である。得られた粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.6%であり、熱履歴耐久性は91%であった。
実施例2において、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:38の割合にした以外は実施例2と同様の操作で、実施例8の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:0.56で、実施例2と同様である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.1%であり、熱履歴耐久性は99%であった。
実施例3において、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:25の割合にした以外は実施例3と同様の操作で、実施例9の粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:79で、実施例3と同様である。得られた粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.6%であり、熱履歴耐久性は79%であった。
実施例4において、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:45の割合にした以外は実施例4と同様の操作で、実施例10の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:1.3で、実施例4と同様である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.2%であり、熱履歴耐久性は98%であった。
実施例5において、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:23の割合にした以外は実施例5と同様の操作で、実施例11の粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:1.2で、実施例5と同様である。得られた粉体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.6%であり、熱履歴耐久性は94%であった。
実施例6において、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:40の割合にした以外は実施例6と同様の操作で、実施例12の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:76で、実施例6と同様である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は1.1%であり、熱履歴耐久性は82%であった。
(比較例1)
実施例2において、造粒体状蓄熱材マイクロカプセル固形物作製時の結着剤としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックスに代えてメラミン−ホルマリン樹脂初期縮合物水溶液(メラミン−ホルマリン樹脂の引張弾性率は8900MPaであった)を用いた以外は実施例2と同様の操作で、比較例1の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:100である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は4.1%であり、熱履歴耐久性は66%であった。
(比較例2)
実施例4において、造粒体状蓄熱材マイクロカプセル固形物作製時の結着剤としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックスに代えて尿素ホルマリン樹脂初期縮合物水溶液(尿素ホルマリン樹脂の引張弾性率は8600MPaであった)を用いた以外は実施例4と同様の操作で、比較例2の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:220である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は6.2%であり、熱履歴耐久性は37%であった。
(比較例3)
実施例6において、造粒体状蓄熱材マイクロカプセル固形物作製時の結着剤としてのポリスチレンのラテックスに代えて尿素ホルマリン樹脂初期縮合物水溶液(尿素ホルマリン樹脂の引張弾性率は8600MPaであった)を用いた以外は実施例6と同様の操作で、比較例3の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:210である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は6.9%であり、熱履歴耐久性は35%であった。
(比較例4)
実施例2において、造粒体状蓄熱材マイクロカプセル固形物作製時の結着剤としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックスに代えてメラミン−ホルマリン樹脂初期縮合物水溶液を用いたことと、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:38の割合にしたこと以外は実施例2と同様の操作で、比較例4の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:100で、比較例1と同様である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は2.9%であり、熱履歴耐久性は59%であった。
(比較例5)
実施例4において、造粒体状蓄熱材マイクロカプセル固形物作製時の結着剤としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックスに代えて尿素ホルマリン樹脂初期縮合物水溶液を用いたことと、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:45の割合にしたこと以外は実施例4と同様の操作で、比較例5の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:220で、比較例2と同様である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は4.1%であり、熱履歴耐久性は32%であった。
(比較例6)
実施例6において、造粒体状蓄熱材マイクロカプセル固形物作製時の結着剤としてのポリスチレンのラテックスに代えて尿素ホルマリン樹脂初期縮合物水溶液を用いたことと、蓄熱材マイクロカプセル成分と結着剤の固形分との質量比を100:40の割合にしたこと以外は実施例6と同様の操作で、比較例6の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:210で、比較例3と同様である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は4.7%であり、熱履歴耐久性は29%であった。
造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:実施例1の蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製において、潜熱蓄熱材としてn−ヘキサデカンに代えて、融点55℃のパラフィンワックスを用いた以外は実施例1と全く同様の操作で蓄熱材マイクロカプセルの分散液を作製した。次に、実施例2と同様の操作を施して、この蓄熱材マイクロカプセル分散液から蓄熱材マイクロカプセル粉体を経由して、実施例13の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:0.56である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.2%であり、熱履歴耐久性は98%であった。
マイクロ波照射により加熱及び蓄熱する保温材の作製:実施例13で得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物33質量部と粒径2mmのシリカゲル粒子67質量部とを混合し、木綿製の袋に600gを充填した。電子レンジを用いて2分間加熱を行ったところ、心地よい温度域である43℃以上の温度が70分間持続し、長時間暖かさが持続する保温材が得られた。また、この操作を200回繰り返しても、造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物から蓄熱成分が滲み出すこともなく、43℃以上の温度を持続する時間にも変化は生じなかった。
造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:実施例1の蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製において、潜熱蓄熱材としてn−ヘキサデカンに代えて、融点28℃のn−オクタデカンを用いた以外は実施例1と全く同様の操作で蓄熱材マイクロカプセルの分散液を作製した。次に、実施例2と同様の操作を施して、この蓄熱材マイクロカプセル分散液から蓄熱材マイクロカプセル粉体を経由して、実施例14の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:0.56である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.3%であり、熱履歴耐久性は98%であった。
枕の作製:実施例14で得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物100質量部と蕎麦殻100質量部とを混合した後、この混合物1.5kgを綿製布地をタテ45cm×ヨコ65cmの袋状に縫製したものに充填して、蓄熱性を有する枕を得た。この枕を室温25℃の部屋に6時間放置した後、使用すると快適な冷涼感が1時間持続した。また、この操作を200回繰り返しても、造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物から蓄熱成分が滲み出すこともなく、快適な冷涼感を維持する時間にも変化は生じなかった。
造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:実施例1の蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製において、潜熱蓄熱材としてn−ヘキサデカンに代えて、融点28℃のn−オクタデカンを用いた以外は実施例1と全く同様の操作で蓄熱材マイクロカプセルの分散液を作製した。次に、実施例2において造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の体積平均径を1mmにした以外は実施例2と全く同様の操作を施して、この蓄熱材マイクロカプセル分散液から蓄熱材マイクロカプセル粉体を経由して、実施例15の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:0.56である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.5%であり、熱履歴耐久性は97%であった。
木質ボードの作製:実施例15で得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物30部と充填用素材として長径3mm以下の木材粉末70部、及び30%濃度の尿素ホルマリン樹脂初期縮合物水溶液30部をよく混合した後、圧力3MPa、温度160℃の条件下で加圧、加熱成形を行い、縦横40cm四方で厚さ5mmの蓄熱性を有する木質ボードを得た。この板状成形体を6枚組み合わせて立方体状の箱を作製して、庫内温度15℃の大型恒温チャンバー内に6時間放置した後、庫内温度を33℃に切り替えたところ、箱内部中央部の空気温度は28℃以下を3時間維持することができた。また、大型恒温チャンバーの庫内温度を10℃と35℃とに交互に2時間ごとに切り替える操作を10回繰り返したところ、箱内部中央部の空気温度は19〜28℃の比較的狭い範囲での温度変動に留まり、優れた蓄熱性能が確認できた。さらに、この操作を200回繰り返しても、造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物から蓄熱成分が滲み出すこともなく、箱内部中央部の空気温度の変動範囲にも変化は生じなかった。
造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の作製:実施例1の蓄熱材マイクロカプセル分散液の作製において、潜熱蓄熱材としてn−ヘキサデカンに代えて、融点36℃のパラフィンワックスを用いた以外は実施例1と全く同様の操作で蓄熱材マイクロカプセルの分散液を作製した。次に、実施例2において造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の体積平均径を1mmにした以外は実施例2と全く同様の操作を施して、この蓄熱材マイクロカプセル分散液から蓄熱材マイクロカプセル粉体を経由して、実施例16の造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物を得た。なお、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率と結着剤の弾性率との比は、100:0.56である。得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物の溶剤抽出率は0.6%であり、熱履歴耐久性は97%であった。
ガス吸着材の作製:実施例16で得られた造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物35部と、平均粒径1.2mmの活性炭100部と混合し、蓄熱材複合吸着剤を得た。この蓄熱材複合吸着剤を用いてメタンガス(供給ガス温度=25℃)の吸着量を測定したところ、圧力1MPaにおけるガス吸着量は蓄熱材複合吸着剤1gあたり43mgであった。また、ガスの圧力を1MPaと0.1MPaとを交互に繰り返してガスの吸着と脱着を50回繰り返したところ、融点付近の36℃前後の温度が長時間持続し、蓄熱材複合吸着剤の温度上昇はほとんど見られず、ガス吸着量も蓄熱材複合吸着剤1gあたり41mgとほとんど低下せず、優れた蓄熱効果が確認できた。さらに、この操作を200回繰り返しても、造粒体状の蓄熱材マイクロカプセル固形物から蓄熱成分が滲み出すこともなく、ガス吸着量にも変化は生じなかった。
本発明による蓄熱材マイクロカプセル固形物は、マイクロ波照射により加熱及び蓄熱する保温材、寝具、建築材料、ガス吸着剤に加え、被服材料などの繊維加工物、電子部品などの過熱抑制材及び/または過冷抑制材、建築物の躯体蓄熱・空間充填式空調、床暖房用、空調用途、道路や橋梁などの土木用材料、燃料電池や焼却炉などの廃熱利用設備、給湯蓄熱用途、産業用保温材料、農業用保温材料、家庭用品、健康用品、医療用材料など様々な利用分野に応用できる。

Claims (5)

  1. 蓄熱材を内包する蓄熱材マイクロカプセルを結着剤とともに固着せしめた蓄熱材マイクロカプセル固形物において、該結着剤の弾性率が該蓄熱材マイクロカプセルを形成するカプセル皮膜構成樹脂の弾性率よりも小さい値を持つ結着剤を用いることを特徴とする蓄熱材マイクロカプセル固形物。
  2. 蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が粉体または固形体である場合に、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値が0.001以上90以下である請求項1記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物。
  3. 蓄熱材マイクロカプセル固形物の形態が造粒体である場合に、カプセル皮膜構成樹脂の弾性率の値を100としたときの結着剤の弾性率の値が0.01以上80以下である請求項1記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物。
  4. 蓄熱材を内包する蓄熱材マイクロカプセルの体積平均粒子径が0.5〜50μmの範囲である請求項1〜3いずれか1項に記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物。
  5. 蓄熱材マイクロカプセル固形物の体積平均径が10μm〜100mmの範囲である請求項1〜4いずれか1項に記載の蓄熱材マイクロカプセル固形物。
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