本発明は、内燃機関のシリンダヘッドに関し、さらに詳しくは、ノックの発生を抑制することができる内燃機関のシリンダヘッドに関するものである。
従来の内燃機関のシリンダヘッドには、シリンダブロックに形成されたシリンダ列を構成する各シリンダにそれぞれ対応する燃焼室およびこの各燃焼室から排気される排気ガスがそれぞれ通過する排気ポートから構成される排気通路が形成されている。また、シリンダヘッドには、このシリンダヘッドの各燃焼室周りおよび排気通路周りを冷却するための冷媒が通過する燃焼室用冷却通路および排気通路用冷却通路がそれぞれ形成されている。燃焼室用冷却通路および排気通路用冷却通路を通過する冷媒は、図示しないウォーターポンプにより循環される。具体的には、燃焼室用冷却通路および排気通路用冷却通路を通過する際に、燃焼室周りや排気通路周りの熱を受熱することで加熱された冷媒は、図示しないラジエターを通過する際に、外気にこの受熱された熱を放熱することで冷却され再び燃焼室用冷却通路および排気通路用冷却通路を通過する。
ここで、従来の内燃機関では、燃焼室用冷却通路と排気通路用冷却通路とが並列に接続され、冷媒の大部分が燃焼室用冷却通路を通過し、この燃焼室冷却通路を通過する冷媒以外の冷媒が排気通路用冷却通路を通過するように構成されている。これは、燃焼室用冷却通路を流れる冷媒の量を多くすることで、排気通路周りの温度よりも、高温となる各燃焼室周りの冷却効率の低下を抑制し、内燃機関のノックの発生を抑制するためである。
ところで、近年、例えば特許文献1に示すように、シリンダヘッドの各排気ポートと連結するエキゾーストマニホールドがシリンダブロックに形成された内燃機関が提案されている。特許文献1に示す従来の内燃機関では、シリンダブロックにエキゾーストマニホールドが一体に形成されている。この従来の内燃機関では、シリンダヘッドの各排気ポートおよびシリンダブロックのエキゾーストマニホールドとから構成される排気通路周りを冷却した後、各燃焼室周りおよびシリンダブロックの各シリンダ周りを冷却するように冷媒が循環する。具体的には、各排気ポートおよびエキゾーストマニホールド近傍に形成された排気通路用冷却通路と、燃焼室用冷却通路および各シリンダを冷却するシリンダ用冷却通路とを直列に接続している。冷媒は、まず排気通路用冷却通路を通過し、その後燃焼室用冷却通路およびシリンダ用冷却通路を並列に通過する。これは、まず冷媒が排気通路用冷却通路を通過させることで、シリンダブロックに形成されるエキゾーストマニホールドを通過する排気ガスの熱によりシリンダが変形することを抑制するものである。
ところで、内燃機関においては、上記エキゾーストマニホールドが各排気ポートともに一体にシリンダヘッド(以下、「一体型シリンダヘッド」と称する)に形成されたものがある。この一体型シリンダヘッドでは、各排気ポートおよびエキゾーストマニホールドにより構成される排気通路が、通常のシリンダヘッドに形成される排気通路よりも長くなるため、この排気通路を通過する排気ガスからシリンダヘッドの排気通路周りに伝熱される熱が増加することとなる。つまり、一体型シリンダヘッドでは、燃焼室周りおよび排気通路周りの2つの高温部分が存在することとなる。従って、冷媒が並列に接続された燃焼室用冷却通路と排気通路用冷却通路とを通過する上記従来の内燃機関では、燃焼室用冷却通路に大部分の冷媒が通過し、排気通路用冷却通路を通過する冷媒の流量が少ないため、排気通路周りの冷却効率が低下する。つまり、この排気通路周りの冷却が不十分となり、排気通路周りの熱が各燃焼室に伝熱されることで、内燃機関のノックの発生を抑制することができないという問題がある。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、燃焼室周りおよび排気通路周りの冷却効率の低下を抑制することで、ノックの発生を抑制することができる内燃機関のシリンダヘッドを提供することを目的とするものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、シリンダブロックに形成される複数のシリンダのそれぞれに対応する複数の燃焼室と、当該各燃焼室とそれぞれ連通する複数の排気連通通路部および当該複数の排気連通通路部が集合する排気集合部を有する排気通路とを備える内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記複数の燃焼室を冷却する冷媒が通過する燃焼室用冷却通路と、前記排気通路を冷却する冷媒が通過する排気通路用第1冷却通路および排気通路用第2冷却通路とが形成され、前記排気通路用第1冷却通路と、前記排気通路用第2冷却通路と、前記燃焼室用冷却通路とが直列に連通していることを特徴とする。
また、この発明では、上記内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記排気通路用第1冷却通路および前記排気通路用第2冷却通路は、前記排気通路を挟んで対向するように形成されていることを特徴とする。
また、この発明では、上記内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記燃焼室用冷却通路は、前記排気通路用第1冷却通路および前記排気通路用第2冷却通路にそれぞれ連通していることを特徴とする。
この発明によれば、排気集合部を有する排気通路周りと同様に高温となる燃焼室周りが燃焼室用冷却通路を通過する冷媒により冷却される。ここで、燃焼室用冷却通路は、排気通路用第1冷却通路と排気通路用第2冷却通路との間に直列に接続されているので、排気通路用第1冷却通路を通過した冷媒が燃焼室用冷却通路を通過する。つまり、燃焼室用冷却通路を通過する冷媒の流量が排気通路用第1冷却通路を通過する冷媒の流量に対して減少することはない。従って、シリンダヘッドに流入した冷却水が燃焼室用冷却通路を通過せずにこのシリンダヘッドから流出することがないので、燃焼室周りの冷却効率の低下を抑制することができる。
また、排気集合部を有し燃焼室周りと同様に高温となる排気通路周りが排気通路用第1冷却通路および排気通路用第2冷却通路を通過する冷媒により冷却される。ここで、排気通路用第1冷却通路、排気通路第2冷却通路、燃焼室用冷却通路は、直列に接続されているので、排気通路用第1冷却通路を通過した冷媒が、排気通路用第2冷却通路を通過する。つまり、排気通路用第1冷却通路あるいは排気通路用第2冷却通路のいずれか一方を通過する冷媒の流量がいずれか他方を通過する冷媒の流量に対して減少することはない。従って、シリンダヘッドに流入した冷却水が、排気通路用第1冷却通路および排気通路用第2冷却通路を通過せずにこのシリンダヘッドから流出することがなく、かつ2回冷却するので、排気通路周りの冷却効率の低下を抑制することができる。
また、この発明では、上記内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記燃焼室用冷却通路は、前記複数の燃焼室を燃焼室軸線方向において覆うように形成されていることを特徴とする。
この発明によれば、排気通路用第1冷却通路あるいは排気通路用第2冷却通路を通過した冷媒がシリンダヘッドに形成された複数の燃焼室のすべての燃焼室周りを通過できるように1つの燃焼室用冷媒通路を形成する。従って、燃焼室用冷却通路の各燃焼室周りに対応する部分を通過する冷媒の流量は、他の各燃焼室周りに対応する部分を通過する冷媒の流量に対して減少することはない。これにより、各燃焼室周りは、燃焼室用冷却通路を通過する冷媒により確実に冷却されるため、この各燃焼室周りの冷却効率の低下を確実に抑制することができる。
また、この発明では、上記内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記燃焼室用冷却通路は、前記各燃焼室を燃焼室軸線方向においてそれぞれ覆うように複数形成されていることを特徴とする。
この発明によれば、排気通路用第1冷却通路あるいは排気通路用第2冷却通路を通過した冷媒は、シリンダヘッドに形成された複数の燃焼室の燃焼室周りごとに形成された燃焼室用冷媒通路を通過する。従って、各燃焼室用冷媒通路を通過する冷媒による各燃焼室周りの冷却効率を一定し、この各燃焼室周りの温度差を小さくすることができる。これにより、各燃焼室周りの冷却効率を一定に維持することができるので、燃焼室ごとに発生するノックのばらつきを抑制することができる。
この発明にかかる内燃機関のシリンダヘッドは、各燃焼室周りおよび排気通路周りの冷却効率の低下を抑制することができるので、ノックの発生を抑制することができるという効果を奏する。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。ここで、以下の実施例における内燃機関とは、乗用車、トラックなどの車両に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、水素エンジン、天然ガスエンジンなどが含まれるものである。また、以下の実施例においては、内燃機関を直列3気筒エンジンとして説明するがこれに限定されるものではなく、シリンダブロックに2以上のシリンダが形成されている内燃機関に適用することができるものである。
図1は、実施例1にかかる内燃機関のシリンダヘッドのシリンダ列方向断面図である。また、図2は、実施例1にかかる内燃機関の冷却水の通過経路を示す概略図である。なお、図2は、シリンダヘッドにおける燃焼室周りおよび排気経路周りと、シリンダブロックにおけるシリンダ周りを燃焼室軸線方向断面視において展開したものである。図1および図2に示すように、実施例1にかかる内燃機関のシリンダヘッド1−1は、複数の燃焼室2と、吸気通路3と、排気通路4と、動弁室5と、排気通路用第1冷却通路6と、排気通路用第2冷却通路7と、複数の燃焼室用冷却通路8a,8b,8cとにより構成されている。なお、10は、このシリンダヘッド1−1に対応するシリンダブロックである。また、20は、その内部に冷媒である冷却水を通過させ、この冷却水の熱を外気に放熱するラジエターである。さらに、30は、内燃機関の図示しないクランクシャフトの回転力により作動し、冷媒である冷却水をシリンダヘッド1−1およびシリンダブロック10などに循環させるウォーターポンプである。
燃焼室2は、図2に示すシリンダブロック10に直列に成形される3つのシリンダ11のそれぞれに対応してシリンダヘッド1−1の下面1aに形成されている(図2では、二点鎖線)。ここで、シリンダブロック10に形成される複数のシリンダ11によりシリンダ列が構成され、このシリンダ列の方向をシリンダ列方向という。また、このシリンダ列と直交する方向を直交方向という。
吸気通路3は、図示しない吸気経路と燃焼室2とを連通するものであり、具体的にはこの燃焼室2からシリンダヘッド1の直交方向における一方の側面1bまで連通するものである。この吸気通路3は、各燃焼室2に対応した吸気ポート3aにより構成されている。従って、図示しない吸気経路から吸気通路3に導入された空気は、各燃焼室2に対応する吸気ポート3aに流入して、燃焼室2に流入する。
排気通路4は、図示しない排気経路と燃焼室2とを連通するものであり、この燃焼室2からシリンダヘッド1の直交方向における他方の側面1cよりもシリンダヘッド1の直交方向に張り出している図示しない張出部に形成されたフランジ部まで連通するものである。この排気通路4の燃焼室2側には、各燃焼室2とそれぞれ連通する複数の排気連通通路部である排気ポート4aが形成されている。一方、この排気通路4の張出部のフランジ部側には、この複数の排気連通路部である排気ポート41が集合する排気集合部である排気集合ポート4bが形成されている。従って、各燃焼室2から排気通路4に排気される排気ガスは、各燃焼室2に対応した排気ポート4aに流出し、この排気ポート4aから排気集合ポート4bに流出して、図示しないフランジ部で連結された排気経路に流出する。
動弁室5は、シリンダヘッド1−1の上部に形成されており、吸気バルブ9aおよび排気バルブ9b、図示しないインテークカムシャフトおよびエキゾーストカムシャフトなどが配置されるものである。なお、この動弁室5には、吸気バルブ9aとインテークカムシャフトの摺動面、排気バルブ9bとエキゾーストカムシャフトの摺動面、インテークカムシャフトおよびエキゾーストカムシャフトの軸受面などに供給されたオイルが流出する。この動弁室5には、複数の吸気ポート3aのそれぞれに対応する吸気バルブ9aおよび複数の排気ポート4aのそれぞれに対応する排気バルブ9bを各燃焼室2に配置するためのバルブ孔5a,5bが形成されている。また、動弁室5には、各燃焼室2に配置される点火プラグを固定する図示しない点火プラグ固定穴が形成されている。
排気通路用第1冷却通路6および排気通路用第2冷却通路7は、後述する冷媒である冷却水が通過することで排気通路4を冷却するものである。この排気通路用第1冷却通路6および排気通路用第2冷却通路7は、シリンダ方向断面視において排気通路4を挟み込むように、すなわちこの排気通路4を挟んで対向するようにシリンダヘッド1−1に形成されている。また、排気通路用第1冷却通路6および排気通路用第2冷却通路7は、燃焼室軸線X方向における投影視において排気通路4、すなわち各排気ポート4aおよび排気集合ポート4bの大部分を覆うようにシリンダヘッド1−1に形成されている。
排気通路用第1冷却通路6には、シリンダヘッド1−1に冷媒である冷却水が流入する冷却水流入口6aが形成されており、後述する各燃焼室用冷却通路8a〜8cにそれぞれ連通する連通通路6bが形成されている。また、排気通路用第2冷却通路7には、シリンダヘッド1−1から冷媒である冷却水が流出する冷却水流出口7aが形成されており、後述する各燃焼室用冷却通路8a〜8cにそれぞれ連通する連通通路7bが形成されている。なお、排気通路用第1冷却通路6および排気通路用第2冷却通路7は、燃焼室軸線X方向における投影視において排気通路4の全部を覆うようにシリンダヘッド1−1に形成されても良い。
燃焼室用冷却通路8a,8b,8cは、後述する冷媒である冷却水が通過することでシリンダヘッド1−1に形成されている各燃焼室2の各燃焼室2周りを冷却するものである。各燃焼室用冷却通路8a〜8cは、シリンダ方向断面視において各燃焼室2と動弁室5との間となるようにシリンダヘッド1−1に形成されている。また、各燃焼室用冷却通路8a〜8cは、燃焼室軸線X方向における投影視において、それぞれ各燃焼室2の大部分を覆うようにシリンダヘッド1−1に形成されている。なお、8eは、各燃焼室2内に配置される図示しない点火プラグを挿入、固定する点火プラグ固定穴である。ここで、各燃焼室用冷却通路8a〜8cは、燃焼室軸線X方向における投影視において各燃焼室2の全部をそれぞれ覆うようにシリンダヘッド1−1に形成されても良い。
この燃焼室用冷却通路8a,8b,8cは、排気通路用第1冷却通路6および排気通路用第2冷却通路7に連通通路6b,7bを介してそれぞれ連通している。つまり、燃焼室用冷却通路8a〜8cは、冷却水の通過経路において、排気通路用第1冷却通路6と排気通路用第2冷却通路7との間に配置されることとなる。従って、排気通路用第1冷却通路6と、排気通路用第2冷却通路7と、各燃焼室用冷却通路8a〜8cとは、直列に連通している。
シリンダブロック10には、上記シリンダヘッド1−1の各燃焼室2にそれぞれ対応するシリンダ11が形成されている。また、この複数のシリンダ11のシリンダ軸線方向における周囲には、この複数のシリンダ11を囲うようにほぼ1周するシリンダ用冷却通路が形成されている。このシリンダ用冷却通路12は、その一方の端部に冷却水流入口12aが他方の端部に冷却水流出口12bが形成されている。
次に、実施例1にかかる内燃機関の冷却水の通過経路について説明する。図2に示すように、図示しないクランクシャフトの回転力により作動するウォーターポンプ30から吐出された冷媒である冷却水は、図示しない冷却水配管を介して、シリンダヘッド1−1に流入する。つまり、ウォーターポンプ30から吐出された冷却水は、まず排気通路用第1冷却通路6内に冷却水流入口6aから流入する。なお、ウォーターポンプ30から吐出された冷却水の一部は、シリンダブロック10に形成されたシリンダ用冷却通路12内に冷却水流入口12aから流入する。このシリンダ用冷却通路12内に流入した冷却水は、シリンダ用冷却通路12を通過する際に、シリンダ周りの熱を受熱する。これにより、シリンダブロック10のシリンダ周りが冷却される。なお、このシリンダ周りの熱を受熱した冷却水は、シリンダヘッド1−1、すなわち排気通路用第1冷却通路6内に流入する。従って、排気通路用第1冷却通路6内へ流入する冷却水の流量は、ウォーターポンプ30から吐出された冷却水がシリンダ用冷却通路12内を通過しても減少しないこととなる。
次に、排気通路用第1冷却通路6に流入した冷却水は、排気通路4周り、すなわち各排気ポート4a周りおよび排気集合ポート4b周りの熱を受熱する。これにより、シリンダヘッド1−1の排気通路4周りが冷却される。この排気通路4周りの熱を受熱した冷却水は、連通通路6bを介して、各燃焼室用冷却通路8a〜8cにそれぞれに流入する。
次に、各燃焼室用冷却通路8a〜8cに流入した冷却水は、各燃焼室2周りの熱を受熱する。つまり、排気通路用第1冷却通路6を通過した冷却水は、シリンダヘッド1−1に形成された複数の燃焼室2の燃焼室2周りごとに形成された燃焼室用冷却通路8a〜8cを通過する。これにより、シリンダヘッド1−1の各燃焼室2周りが冷却される。この各燃焼室2周りの熱を受熱した冷却水は、連通通路7bを介して、排気通路用第2冷却通路7に流入する。
ここで、各燃焼室用冷却通路8a〜8cに流入する冷却水の流量は、同じであるため各燃焼室2周りの冷却効率を一定とすることができ、各燃焼室2周りの温度差を小さくすることができる。これにより、各燃焼室2周りの冷却効率を一定に維持することができるので、燃焼室ごとに発生するノックのばらつきを抑制することができる。
また、各燃焼室用冷却通路8a〜8cに流入する冷却水の流量の総和は、排気通路用第1冷却通路6を通過する冷却水の流量に対して減少することはない。しかしながら、各燃焼室用冷却通路8a〜8cに流入する冷却水の流量は、排気通路用第1冷却通路6を通過する冷却水の流量に対して減少するので、各燃焼室用冷却通路8a〜8cに流入する冷却水の流速を増加する流速増加手段を設けることが好ましい。例えば、連通通路6aの断面形状を絞り形状、あるいは各燃焼室用冷却通路8a〜8cの冷却水が流入する冷却水流入口の断面形状を絞り形状とする。これにより、各燃焼室用冷却通路8a〜8cに流入する冷却水の流速を増加することができ、各燃焼室2周りの冷却効率をさらに向上することができる。
次に、排気通路用第2冷却通路7に流入した冷却水は、排気通路4周り、すなわち各排気ポート4a周りおよび排気集合ポート4b周りの熱をさらに受熱する。ここで、排気通路用第2冷却通路7を通過する冷却水の流量が排気通路用第1冷却通路6を通過する冷却水の流量に対して減少することはない。これにより、シリンダヘッド1−1の排気通路4周りがさらに冷却される。つまり、シリンダヘッド1−1に流入した冷却水は、排気通路用第1冷却通路6および排気通路用第2冷却通路7を通過することで、排気通路4周りを2回冷却することができる。なお、排気通路4周りの熱を受熱した冷却水は、冷却水流出口7aから流出、すなわちシリンダヘッド1−1から流出する。
シリンダヘッド1−1から流出、すなわち排気通路用第2冷却通路7を流出した冷却水は、図示しない冷却水配管を介して、ラジエター20に流入する。このラジエター20は、この冷却水が通過する配管と、この配管周りに形成される複数のフィンとにより構成されている。従って、各燃焼室2周りおよび排気通路4周りの熱を受熱して加温された状態で、このラジエター20に流入した冷却水は、ラジエター20の配管を通過する際に、フィンを介して外気にこの受熱した熱を放熱する。つまり、ラジエター20を通過する冷却水は、外気と熱交換を行い冷却される。
ラジエター20により冷却された冷却水は、図示しない冷却水配管を介して、ウォーターポンプ30に吸引される。この吸引された冷却水は、再びシリンダヘッド1−1およびシリンダブロック10に流入する。以上により、冷媒である冷却水は、シリンダヘッド1−1およびシリンダブロック10を循環する。
以上のように、シリンダヘッド1−1に流入した冷却水は、直列に連通する排気通路用第1冷却通路6、燃焼室用冷却通路8a〜8c、排気通路用第2冷却通路7の順番で通過し、シリンダヘッド1−1に流入した冷却水がこのすべての冷却通路を通過してこのシリンダヘッド1−1から流出する。ここで、シリンダヘッド1−1に流入した冷却水の通過経路は、このシリンダヘッド1−1のシリンダ列方向投影視において、U字形状となる。従って、シリンダヘッド1−1に流入した冷却水が燃焼室用冷却通路8a〜8cを通過せずにこのシリンダヘッド1−1から流出することがなく、燃焼室2周りの冷却効率の低下を抑制することができる。また、シリンダヘッド1−1に流入した冷却水が、排気通路用第1冷却通路6および排気通路用第2冷却通路7を通過せずにこのシリンダヘッド1−1から流出することがなく、かつ2回冷却を行うので、排気通路4周りの冷却効率の低下を抑制することができる。
図3は、実施例2にかかる内燃機関の冷却水の通過経路を示す概略図である。なお、図3は、図2と同様に、シリンダヘッドにおける燃焼室周りおよび排気経路周りと、シリンダブロックにおけるシリンダ周りを燃焼室軸線方向断面視において展開したものである。図3に示す実施例2にかかる内燃機関のシリンダヘッド1−2が、図2に示す実施例1にかかる内燃機関のシリンダヘッド1−1と異なる点は、複数の燃焼室2にそれぞれ燃焼室用冷却通路8a〜8cを形成せず、1つの燃焼室用冷却通路8dを形成した点である。なお、図3に示す実施例2にかかる内燃機関のシリンダヘッド1−2の基本的構成は、図2に示す実施例1にかかる内燃機関のシリンダヘッド1−1の基本的構成と略同様であるので、その説明は省略する。
燃焼室用冷却通路8dは、後述する冷媒である冷却水が通過することですべての燃焼室2周りを冷却するものである。燃焼室用冷却通路8dは、シリンダ方向断面視において各燃焼室2と動弁室5との間となるようにシリンダヘッド1−2に形成されている。また、燃焼室用冷却通路8dは、燃焼室軸線X方向における投影視において、すべての燃焼室2の大部分を覆うようにシリンダヘッド1−2に形成されている。この燃焼室用冷却通路8dは、仕切りのない空間となっており、シリンダ列の方向の一方の端部に冷却水流入口8fが形成されており、シリンダ列の方向の他方の端部に冷却水流出口8gが形成されている。ここで、燃焼室用冷却通路8dは、燃焼室軸線X方向における投影視においてすべての燃焼室2の全部を覆うようにシリンダヘッド1−2に形成されても良い。
この燃焼室用冷却通路8dは、排気通路用第1冷却通路および排気通路用第2冷却通路に、連通通路6c,7cを介してそれぞれ連通している。つまり、燃焼室用冷却通路8dは、冷却水の通過経路において、排気通路用第1冷却通路6と排気通路用第2冷却通路7との間に配置されることとなる。従って、排気通路用第1冷却通路6と、排気通路用第2冷却通路7と、燃焼室用冷却通路8dとは、直列に連通している。
次に、実施例2にかかる内燃機関の冷却水の通過経路について説明する。なお、図2に示す実施例1にかかる内燃機関の冷却水の通過経路と同一部分は簡略化して説明する。図3に示すように、ウォーターポンプ30から吐出された冷媒である冷却水は、図示しない冷却水配管を介して、シリンダヘッド1−2に流入、すなわち排気通路用第1冷却通路6内に冷却水流入口6aから流入する。なお、ウォーターポンプ30から吐出された冷却水の一部は、シリンダ用冷却通路12を通過してから、シリンダヘッド1−2、すなわち排気通路用第1冷却通路6内に流入する。
次に、排気通路用第1冷却通路6に流入した冷却水は、排気通路4周りの熱を受熱し、排気通路4周りを冷却する。この排気通路4周りの熱を受熱した冷却水は、連通通路6cを介して、冷却水流入口8fから燃焼室用冷却通路8dに流入する。
次に、燃焼室用冷却通路8dに流入した冷却水は、この燃焼室用冷却通路8dをシリンダ方向の一方から他方まで通過する際に、すべての燃焼室2周りの熱を受熱する。つまり、排気通路用第1冷却通路6を通過した冷却水は、シリンダヘッド1−1に形成された複数の燃焼室2のすべての燃焼室2周りを通過できる1つ燃焼室用冷却通路8dを通過する。また、燃焼室用冷却通路8dに流入する冷却水の流量は、排気通路用第1冷却通路6を通過する冷却水の流量に対して減少することはない。これにより、シリンダヘッド1−1のすべての燃焼室2周りが冷却される。このすべての燃焼室2周りの熱を受熱した冷却水は、冷却水流出口8gから流出し、連通通路7cを介して、排気通路用第2冷却通路7に流入する。
次に、排気通路用第2冷却通路7に流入した冷却水は、排気通路用第2冷却通路7を通過する際の流量が排気通路用第1冷却通路6を通過する際の流量に対して減少することはなく、排気通路4周りの熱をさらに受熱し、排気通路4周りをさらに冷却する。排気通路4周りの熱を受熱した冷却水は、冷却水流出口7aから流出、すなわちシリンダヘッド1−1から流出し、図示しない冷却水配管を介して、ラジエター20に流入する。このラジエター20に流入した冷却水は、外気と熱交換を行い冷却され、図示しない冷却水配管を介して、ウォーターポンプ30に吸引され、再びシリンダヘッド1−1およびシリンダブロック10に流入する。以上により、冷媒である冷却水は、シリンダヘッド1−1およびシリンダブロック10を循環する。
以上のように、シリンダヘッド1−2に流入した冷却水は、直列に連通する排気通路用第1冷却通路6、燃焼室用冷却通路8d、排気通路用第2冷却通路7の順番で通過し、シリンダヘッド1−2に流入した冷却水がこのすべての冷却通路を通過してこのシリンダヘッド1−2から流出する。ここで、シリンダヘッド1−2に流入した冷却水の通過経路は、このシリンダヘッド1−2のシリンダ列方向投影視において、U字形状となる。従って、実施例1と同様に、燃焼室2周りおよび排気通路4周りの冷却効率の低下を抑制することができる。
なお、上記実施例において、ウォーターポンプ30から吐出された冷却水の一部は、シリンダ用冷却通路12を循環した後、シリンダヘッド1−1,1−2に流入するが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、シリンダヘッド1−1,1−2から流出し、かつラジエター20に流入する前の冷却水がシリンダ用冷却通路12を循環しても良い。従って、ウォーターポンプ30から吐出された冷却水の一部がシリンダ用冷却通路12を通過することによりシリンダ周りの熱を受熱した後にこのシリンダヘッド1−1,1−2に流入しない。これにより、シリンダヘッド1−1,1−2に流入する冷却水の温度をこのシリンダヘッド1−1,1−2に流入する前に上昇することを抑制することができるので、燃焼室2周りおよび排気通路4周りの冷却効率の低下をさらに向上することができる。
以上のように、この発明にかかる内燃機関のシリンダヘッドは、排気通路を構成する排気集合部である排気集合ポートが形成されているシリンダヘッドに有用であり、特に、燃焼室周りおよび排気通路周りの冷却効率の低下を抑制するのに適している。
実施例1にかかる内燃機関のシリンダヘッドのシリンダ列方向断面図である。
実施例1にかかる内燃機関の冷却水の通過経路を示す概略図である。
実施例2にかかる内燃機関の冷却水の通過経路を示す概略図である。
符号の説明
1−1,1−2 シリンダヘッド
1a 下面
1b,1c 側面
2 燃焼室
3 吸気通路
3a 吸気ポート
4 排気通路
4a 排気ポート(排気連通通路部)
4b 排気集合ポート(排気集合部)
5 動弁室
6 排気通路用第1冷却通路
6a 冷却水流入口
6b,6c 連通通路
7 排気通路用第2冷却通路
7a 冷却水流出口
7b,7c 連通通路
8a〜d 燃焼室用冷却通路
9a 吸気バルブ
9b 排気バルブ
10 シリンダブロック
11 シリンダ
12 シリンダ用冷却通路
20 ラジエター
30 ウォーターポンプ