JP2006083228A - 潤滑剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐熱性、導電性が改善された潤滑剤組成物、摩擦係数の低い潤滑剤組成物を提供すること;及び特定の炭素繊維の潤滑剤組成物における新たな用途を提供すること。
【解決手段】 基油と炭素繊維とを含む潤滑剤組成物であって、該炭素繊維が底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有するものであることを特徴とする潤滑剤組成物;上記炭素繊維の潤滑剤組成物における耐熱性向上剤、増ちょう剤、導電性向上剤、摩擦特性向上剤としての使用。

Description

本発明は、潤滑剤組成物に関し、特に特定の構造を有する炭素繊維を含む潤滑剤組成物に関する。
最近、炭化水素を気相成長させる事によって得られる特異的な構造を有する炭素繊維(カーボンナノチューブ)が開発されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
この炭素繊維は、一般的な同心円状のカーボンナノチューブと異なり、底のないカップを積み重ねた形状(カップスタック、またはヘリンボン型)をしており、また内部に大きな中空構造(約50nm)を持つ。この特異的な構造により、他のナノカーボン材料とは異なり、長さを制御したり、表面を改質したりすることによって、さまざまな用途に対応させることが可能であるといわれている。
さらに具体的には、この炭素繊維は、折れにくい、曲がりやすい、ねじれやすい等の性質を有する。また、カーボンブラックとは異なり繊維状であるため切れにくい。
さらに、カーボンナノチューブは、せん断によりチューブが割れ、外表面に軸方向に亀裂が生じたり、ささくれたちが生じたり、芯が抜けたような状態が生じるのに対して、この炭素繊維は、応力がかかると底のないカップ状の炭素網層が抜け出して分離され、炭素網層の形状が壊れにくいという特徴を有する。
しかし、上記炭素繊維の優れた特徴を有効に利用した潤滑剤組成物は知られていない。
特開2003−73928 特開2003−147641 特開2003−147644
本発明の目的は、耐熱性が改善された潤滑剤組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、導電性が改善された潤滑剤組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、摩擦係数の低い潤滑剤組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、特定の炭素繊維の潤滑剤組成物における新たな用途を提供することである。
本発明は以下の潤滑剤組成物を提供するものである。
1.基油と炭素繊維とを含む潤滑剤組成物であって、該炭素繊維が底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有するものであることを特徴とする潤滑剤組成物。
2.基油と炭素繊維と増ちょう剤とを含む潤滑剤組成物であって、該炭素繊維が底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有するものであることを特徴とする潤滑剤組成物。
3.底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の耐熱性向上剤としての使用。
4.底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の増ちょう剤としての使用。
5.底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の導電性向上剤としての使用。
6.底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の摩擦特性向上剤としての使用。
本発明の潤滑剤組成物は、分解温度が高く、耐熱性が改善されている。
本発明の潤滑剤組成物は、体積固有抵抗率が低く、分解温度が高く、導電性及び耐熱性が改善されている。
本発明の潤滑剤組成物は、摩擦係数が低く、摩擦特性が改善されている。
本発明の潤滑剤組成物に使用する炭素繊維は、底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有するものである。このような炭素繊維としては、例えば、特許文献1〜3に記載されたものが挙げられる。さらに具体的には、以下に示す炭素繊維が挙げられる。
(1)底の無いカップ形状をなす炭素網層が数個〜数100個積層した、気相成長法による炭素繊維であって炭素網層の端面が露出したことを特徴とする炭素繊維。
(2)さらに節のない中空状をなすことを特徴とする上記1の炭素繊維。
(3)中空部の外表面および内表面側の炭素網層の端面も露出していることを特徴とする上記2の炭素繊維。
(4)2%以上の外表面で炭素網層の端面が露出していることを特徴とする上記1〜3のいずれか1項記載の炭素繊維。
(5)炭素網層の端面が露出している表面の部位が、該端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈することを特徴とする上記3又は4記載の炭素繊維。
(6)2500℃以上の高温で熱処理しても、黒鉛化しないことを特徴とする上記1〜5のいずれか1項記載の炭素繊維。
(7)2500℃以上の高温で熱処理してもラマンスペクトルのDピーク(1360cm-1)が消失しないことを特徴とする上記1〜6のいずれか1項記載の炭素繊維。
(8)複数層の炭素網層からなる各群ごとに、炭素網層の外端面が接合して、断面多重輪状に閉じていることを特徴とする上記1〜7のいずれか1項記載の炭素繊維。
(9)酸化性雰囲気中で熱処理されることにより前記断面多重輪状に閉じている炭素網層の外端面が開かれて、炭素網層の外端面が露出していることを特徴する上記8記載の炭素繊維。
上記炭素繊維の市販品としては、株式会社GSIクレオス製カルベール(登録商標)が挙げられる。具体的には、カルベール(登録商標)24PS−4lbs、24HT−4lbs、19PS、24PS−AR10、24PS−AR5、24HT−AR10等が挙げられる。
本発明の潤滑剤組成物に使用される基油は特に制限されること無く、通常潤滑油として使用されている油はすべて使用することができる。これらは単独でもしくは混合して使用できる。具体的には鉱物油、ポリαオレフィン、アルキルシクロペンタン等の炭化水素系油、エステル油、エーテル油、芳香族系油、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
本発明の潤滑剤組成物は、基油と上記炭素繊維のみから構成されていてもよい。この場合、基油100質量部に対する炭素繊維の割合は好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは1〜60質量部である。
本発明の潤滑剤組成物は、さらに増ちょう剤を含んでいてもよい。
増ちょう剤としては、金属石鹸、金属複合石鹸、ウレア化合物、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
本発明の潤滑剤組成物中、基油100質量部に対する増ちょう剤の割合は好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは1〜60質量部である。
本発明の潤滑剤組成物は、さらにモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)等の摩擦調整機能を有する有機モリブデン化合物を含んでいてもよい。
本発明の潤滑剤組成物中、基油100質量部に対する有機モリブデン化合物の割合は好ましくは0.1〜50質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部である。
本発明の潤滑剤組成物の好ましい実施態様としては、上記炭素繊維、基油(好ましくは、鉱物油、ポリαオレフィン、アルキルシクロペンタン等炭化水素系油から選ばれる少なくとも1種)、増ちょう剤(好ましくは、金属石鹸、金属複合石鹸、ウレア化合物、ポリテトラフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種)を含有する潤滑剤組成物が挙げられる。この潤滑剤組成物は、特に耐熱性が向上している。
本発明の潤滑剤組成物の他の実施態様としては、上記炭素繊維、基油(好ましくは、鉱物油、ポリαオレフィン、アルキルシクロペンタン等炭化水素系油から選ばれる少なくとも1種)を含有する潤滑剤組成物が挙げられる。この潤滑剤組成物は、特に、導電性、耐熱性が向上している。
本発明のさらに他の実施態様としては、上記炭素繊維、基油、有機モリブデン化合物を含有する潤滑剤組成物が挙げられる。この潤滑剤組成物は、特に優れた摩擦特性を示す。
本発明の実施例組成物には、従来使用されている、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、油性剤、摩耗防止剤等の添加剤を添加しても良い
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。他に明記しない限り、「部」は質量部である。
実施例における試験方法は以下のとおりである。
不混和ちょう度
JISK2220 5.3に準拠し、1/4ちょう度計で0ワークのちょう度を測定した。値が小さいほど増ちょう性良好である。
分解温度−減量開始温度(熱重量−示差熱分析)
装置:上皿式差動型示差熱天秤(TG−DTA)ブルカーエイエックス株式会社製TG−DTA2010型
条件:温度レンジ室温〜500℃、窒素雰囲気、窒素導入速度100ml/分、
試料重量約10mg、昇温速度10℃/分、参照試料アルミナ
体積固有抵抗率(Ω・cm)
試料に加えた直流電界(V/m)とそのときに試料に加わる単位断面積当たりの電流との比。試料1辺1cmの立方体の相対する面間の抵抗に等しい。JISC2101 2.2準拠で測定。両電極間(2mm)に気泡が入らないようにグリースを充填しこの電極に電圧を印加し、1分後の抵抗値から算出。印加電圧100V、時間1分、温度25℃
摩擦係数(100N)試験−振動式摩擦摩耗試験
オプチモル社製SRV摩擦摩耗試験機を用い、直径10mmの鋼球(SUJ−2)、直径24mm、厚さ7.85mmのディスクを用い、周波数15Hz、振幅1mm、試験温度25℃、100N/分で1200Nまでステップアップし、100Nでの平均摩擦係数を測定した。
実施例1(耐熱性向上剤としての利用)
トリス(2-オクチルドデシル)シクロペンタン(MAC油)(NYE LUBRICANTS社製nye synthetic oil 2001A)90部に12−ヒドロキシステアリン酸リチウム10部を加え230℃まで加熱後、室温まで放冷し、三段ロールミルにて混練し、ベースグリースとした。
このベースグリース99部に各種炭素材料1部を添加し、攪拌後三段ロールミルにて混練し、試料グリースとし、その分解温度を調べた。ベースグリースの分解温度に対する温度の上昇値を表1に示す。この値が大きい方が耐熱性良好である。表中「*」は比較例であることを示す。
Figure 2006083228
Li(12OH)St:12−ヒドロキシステアリン酸リチウム
24PS−4lbs:株式会社GSIクレオス製カルベール24PS−4lbs
24HT−4lbs:株式会社GSIクレオス製カルベール24HT−4lbs
19PS:株式会社GSIクレオス製カルベール19PS
24PS−AR5:株式会社GSIクレオス製カルベール24PS−AR5
24PS−AR10:株式会社GSIクレオス製カルベール24PS−AR10
24HT−AR10:株式会社GSIクレオス製カルベール24HT−AR10
ナノチューブ:カーボンナノチューブ
CB:カーボンブラック(ケッチェンインターナショナル製ケッチェンブラックEC)
酸化防止剤:ヒンダードフェニルエステル(チバ・スペシャルティ・ケミカル製イルガノックスL−107)
カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ヒンダードフェニルエステルを添加した試料7〜9では、分解が促進され、添加剤を含まない基準試料1(ベースグリース)に対して分解温度が低下した。これに対して本発明の炭素繊維(カルベール)を使用した試料2〜6ではすべて基準試料1(ベースグリース)より分解温度が向上した。
実施例2(増ちょう性、導電性、耐熱性向上剤としての利用)
基油としてポリα-オレフィン(PAO)(PAO601:BP Amoco Chemical Company製)又はエステル油(ペンタエリストールエステル)(花王株式会社製)を使用し、これに本発明の炭素繊維(カルベール)を8.5質量%添加し、ちょう度、導電性、耐熱性を調べた。結果を表2及び表3に示す。







Figure 2006083228
基油としてポリα-オレフィンを使用し、本発明の炭素繊維24PS−4lbs、24HT−4lbs、19PSを添加した試料12〜14は、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ナノチューブ、カーボンブラックを添加した試料11、15、16と同等の増ちょう性を示した。
本発明の炭素繊維24PS−41bs、24HT−4lbs、19PSを添加した試料12、13、14の導電性は、ナノチューブ、カーボンブラック(CB)と同等レベルで1E+5Ω・cmより低い抵抗値を示し、良好であった。特に24HT−41bsの導電性が優れていた。
一方、本発明の炭素繊維24PS−4lbs、24HT−4lbs、19PSを添加した試料12〜14の耐熱性は、ナノチューブ、カーボンブラックを添加した試料15及び16より優れていた。特に24HT−41bsの耐熱性が優れていた。
Figure 2006083228
基油としてエステル油(ペンタエリストールエステル)を使用し、本発明の炭素繊維24HT−4lbs、19PSを添加した試料22、23は、ナノチューブ、カーボンブラックを添加した試料24及び25と同等の増ちょう性及び1E+5Ω・cm程度の抵抗値を示し、導電性に優れていた。また、本発明の炭素繊維24PS−4lbsを使用した試料21は約1E+5〜1E+9Ω・cm程度の抵抗値を示し静電気拡散性程度の導電性を示した。
実施例3(増ちょう剤、摩擦特性向上剤としての利用)
基油としてポリα-オレフィン(PAO601:BP Amoco Chemical Company製)を使用し、本発明の炭素繊維(カルベール)で増ちょうしたグリースに、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)又はモリブデンジチオホスフェート(MoDTP)を添加し、振動式摩擦摩耗試験を行った。結果を表4及び表5に示す。
Figure 2006083228
Figure 2006083228
ナノチューブ、カーボンブラック(CB)を使用した試料32、33、39、40が12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを使用した基準試料30、34に比べ摩擦係数が高い。一方、本発明の炭素繊維24HT−4lbsを使用した試料31および36は摩擦係数が低い
実施例4(摩擦特性向上剤としての利用)
基油として鉱物油(500NT)を使用し、ジウレア化合物で増ちょうしたグリースに、本発明の炭素繊維(カルベール)、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)を添加し、振動式摩擦摩耗試験を行った。結果を表6に示す。





Figure 2006083228
MoDTPと本発明の炭素繊維24HT−41bsを併用(各1.5%添加)した試料43は、基準試料41、MoDTP単独3.0%添加の試料42、炭素繊維24HT−41bs単独3.0%添加の試料44、MoDTPとカーボンブラックを併用(各1.5%添加)した試料45、MoDTPとナノチューブを併用(各1.5%添加)した試料46に比べ摩擦係数が低く、MoDTPと本発明の炭素繊維24HT−41bsとの併用効果が見られた。本発明の炭素繊維24HT−41bsが摩擦特性向上剤の役割をしている。

Claims (6)

  1. 基油と炭素繊維とを含む潤滑剤組成物であって、該炭素繊維が底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有するものであることを特徴とする潤滑剤組成物。
  2. 基油と炭素繊維と増ちょう剤とを含む潤滑剤組成物であって、該炭素繊維が底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有するものであることを特徴とする潤滑剤組成物。
  3. 底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の耐熱性向上剤としての使用。
  4. 底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の増ちょう剤としての使用。
  5. 底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の導電性向上剤としての使用。
  6. 底のないカップ形状をなす炭素網層が積層した構造を有する炭素繊維の使用であって、潤滑剤組成物の摩擦特性向上剤としての使用。
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