JP2006082378A - インクジェット記録方法および記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来の欠点を解消したインクジェット記録方法、記録媒体を提供し、特に、顔料インクで記録した画像記録部の光沢度の低下を抑制して写真に近い画質とし、耐擦過性に優れた画像が得られるインクジェット記録方法、記録媒体を提供すること。
【解決手段】 記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行なうインクジェット記録方法において、前記インクは、水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子分散相を連続相中に含むポリマーエマルジョンまたは自己分散型顔料を含有する液状物であり、前記記録媒体は、該インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、該インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とを含有する多孔質層を最表層として有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、インクジェット記録方法、記録媒体及びその製造方法、インクジェット記録用インクに関し、詳しくは顔料インクを使用した場合のインク吸収性及び耐擦過性に優れたインクジェット記録方法、記録媒体及びその製造方法、インクジェット記録用インクに関する。
インクジェットプリンタは、低騒音、低ランニングコストといった利点から目覚しく普及し、インクジェット専用記録媒体のみならず普通紙にも印字可能なカラープリンタも市場に盛んに投入されるようになった。しかしながら、画像の色再現性、耐久性、耐光性、画像の乾燥性、文字にじみ(フェザリング)、色境界にじみ(カラーブリード)、両面印刷性、吐出安定性など要求される全ての特性を満足することは非常に難しく、用途に応じて優先される特性から用いるインクが選択されている。特に、普通紙に高速印字するプリンタにおいては、これらの特性を同時に満たすことは難しく、したがって、インク及び記録媒体について、それぞれ、多くの提案がなされている。例えば特開平9−157559号公報(特許文献1)、特開平9−132740号公報(特許文献2)等にはインクに染料インクに比べ耐光性に優れた顔料インクを用いることが開示されており、また、特開昭55−5183号公報(特許文献3)、特開昭56−148585号公報(特許文献4)等にはインクの吸収を良くするために記録媒体基材の上に多孔質無機顔料からなる受容層を設けることが開示されている。
このような方式による画像の定着の機構として、一般的には顔料インクの分散がアニオン性であることに注目してカチオン性の成分をインク受容層に含有させて凝集させる方式が提案されている。ここで、染料インクタイプでは一般的に多量のカチオン成分がその染料の定着に必要であるが、顔料インクタイプでは、カチオン成分が過剰であると表面での凝集が強くなりすぎてインクの分布が不均一になり、記録濃度の低下を招くため、従来の染料インク対応の被記録体では優れた記録は得られないことが多く、また、顔料は染料に比べ分子量が非常に大きく、そのためにじみの制御等の定着機構も染料の低分子レベルの反応とは異なっており、更に、顔料インク用を用いたインクジェット記録方法は、染料インク同様インク液滴を受容層に吐出させ画像を形成する記録方法であるが、インクの吸収性の違いが印字品位に大きな影響を与え、染料インクを用いた記録の場合、被記録紙への表面層形成のための塗工量が多くなるに従いインクの吸収性は向上するものの同時に顔料成分が内部に取り込まれ印字濃度が低下する傾向が顕著であり、一方、顔料インクを用いた場合、顔料成分を表面に存在させるために塗工量を下げると、にじみが悪化し、しかもインク溶媒が受容層に充分吸収されないため顔料粒子が溶媒と共に移動し、そのため受容層表面における顔料粒子の存在が不均一となり印字部に受容層の白部が露呈され印字濃度が下がる結果となることが多い。したがって、記録体に求められる特性が概して異なるため、多くの提案がなされている。
即ちインクについてみると、インクジェット記録に使用されるインクは、水を主成分とし、これに着色剤及び目詰まり防止等の目的でグリセリン等の湿潤剤を含有したものが一般的である。着色剤としては、優れた発色性や安定性から染料が用いられている。しかしながら、染料系インクを用いて得られる画像の耐光性、耐水性等は劣るものである。耐水性については、インク吸収層を有するインクジェット専用記録媒体の改善によってある程度向上しているが、普通紙については満足なものではない。
近年、これらの問題点を改善するために、染料の代わりに有機顔料やカーボンブラック等の顔料を着色剤として用いる顔料インクが検討されている。顔料は水に不溶であるため、顔料を分散剤とともに混合、分散処理して水に安定分散させた水性インクとして用いられる。顔料を用いることで、耐水性、耐光性は付与されるが、上記の例に見られるように、他の特性を同時に達成できるものではない。特に、例えば普通紙に高速印字した場合には高い画像濃度、発色性を得ることが困難であり、又は、文字にじみ、色境界にじみ、両面印刷性も充分には満足できるものではないことがある。
また、インクジェット記録においてはインクジェット記録ヘッドの微細なノズルから安定なインク液滴の吐出が要求されるため、インクジェット記録ヘッドのオリフィスの乾燥によってインクの固化等が発生しないことが必要となる。しかしながら、上記した分散剤が含有されたインクをインクジェット記録に用いた場合には、分散剤を形成している樹脂等がオリフィス等に付着した後、再溶解されずに、目詰まりやインクの不吐出等が生じる場合がある。特に、印字を長期に休止した場合にノズル等の目詰まりが起こり易く、また、ノズルキャップ内や吸引用チューブ等の維持機構に増粘したインクが堆積し、維持機構の機能を損なう怖れがあるものであった。また、印字を一次休止した場合、あるいは空白のある文書や画像の印字中に空白に対応するノズルに印字の休止期間ができた場合にも、インク滴の噴射方向が乱れることによる印字不良(間欠吐出不良)等の問題が多発していた。
また、分散剤を含む水性顔料インクは一般に粘稠であり、長時間にわたる連続吐出及び高速印字を行なう際にノズル先端までの経路で抵抗を起こし、吐出が不安定になり、スムーズな記録が困難になるという問題もあった。
これらの問題点の改善を図るものとして、特開2000−212486号公報(特許文献5)には、分散安定性を図るため、顔料の種類と濃度及び水溶性分散剤樹脂の種類と濃度の組み合わせを特定し、更には特定された浸透剤及び多価アルコールアルキルエーテル誘導体を含有するインク、これらのインクセットが開示されている。
ここで開示されたインクは超浸透性であるので高速印刷した場合においても乾燥性は充分であり、吐出安定性も確保されているが、普通紙における画像濃度、色再現性は染料系インクに比べて見劣りのするものであり、文字にじみ、色境界にじみ、両面印刷性は従来のインクジェット記録画像と比べると改善しているものの、市場で普通紙印刷に用いられている電子写真方式等の記録画像に比べて劣り、更に改善を必要とした。
また、画像の耐久性を改善するものとして、着色剤を水に不溶で分散性の樹脂に内包した着色剤内包樹脂分散体を含有するインクが提案されている。しかし、着色剤としてカーボンブラックを用いた場合に充分な画像濃度が得られないという問題がある。また、着色剤としてカラー有機顔料を用いた場合、従来公知のインク処方では染料インクに比べて普通紙上での画像濃度、色再現性は劣るものである。また、これらの着色剤内包樹脂分散型のブラックインクとカラーインクとを組み合わせたインクセットにおける、ブラックとイエロー間の色境界にじみも満足なものではない。
他の分散方式として、分散剤を使用することなく安定に分散させることができるいわゆる自己分散型顔料インクがある。黒色系顔料インクでは特開平5−186704号公報(特許文献6)や特開平8−3498号公報(特許文献7)、特開平10−140064号公報(特許文献8)で述べられているように、カーボンの表面に親水性基を導入することによって、分散剤を使用することなく安定に分散させることができる、いわゆる自己分散型カーボンブラックが開発されている。さらに、カラー顔料系インクにおいても、特表2000−513396号公報(特許文献9)に述べられているように、イオン性基もしくはイオン化可能な基を含む表面改質剤により改質されることにより、分散剤を使用することなく安定に分散させることのできるカラー顔料が開発されている。
これらの自己分散型顔料インクを組み合わせた場合には、記録媒体におけるカラー画像の彩度が低く、また、光沢紙等の専用記録媒体上での耐擦過性が劣るものであった。耐擦過性を向上するために樹脂エマルジョンを添加した場合には、インクの分散安定性が低下し、吐出安定性を損なう欠点があった。
この他、ブラックインクとカラーインクとからなるインクセットとして、自己分散型カーボンブラックを有するブラックインクと、このブラックインクの色材に対して逆極性の色材を含有するカラーインクとからなるインクセットが特許文献8に開示されている。
また、特開2000−191972号公報(特許文献10)には、自己分散型カーボンブラックインクのイオンの極性と異なる極性のイオンのカラーインクとからなり、耐ブリード性が改善されたインクセットが開示されている。しかし、これらのインクセットを用いた印刷物は、色境界にじみは改善されるものの、他の特性は依然として満足なものではなかった。
一方、記録媒体の適性を改良するための努力は、基材上に塗工層を設けた塗工紙タイプのインクジェット専用記録媒体においてもなされてきた。
例えば、特開平6−79967号公報(特許文献11)には、このようなインクジェット記録シートとしては、プラスチックピグメントを含有し、加熱カレンダー処理を行なったものが、例えば特開昭57−82085号公報(特許文献12)及び特開昭57−135190号公報(特許文献13)に開示されている。しかし、プラスチックピグメントを用いたインクジェット記録シートでは、インクの吸収性及び光沢を同時に満足させることはできるものの、インク吸収性を保持するために、プラスチックピグメント粒子間に空隙を多く有する必要があり、プラスチックピグメントの高い屈折率に起因する色再現性及び色濃度の低下が避けられず鮮明な画像が得られない旨記載され、また、インクジェット記録シートに光沢を付与する目的で、カレンダー、スーパーカレンダー等で処理を行なうと、光沢度の増加と共に塗層の空隙が減少し、インクの吸収が遅くなり、また吸収容量の不足からインクのあふれが発生してしまう旨記載され、シリカ等の顔料微粒子からなるインク吸収層と比較して、インクの吸収速度が遅く、また吸収量が少ないという欠点を有する旨記載されている。
インクの染み込みが早く且つ広がらないインク受容層として、これらの公報に記載されているシリカ粒子やアルミナ粒子等の無機顔料をバインダーに分散させた層を有するインクジェット記録材料は、空隙吸収型または細孔吸収型とも呼ばれ、層の約90%を占める無機顔料粒子の間隙にインクが入り込み、印字され、シリカ粒子またはアルミナ粒子の層は背景として白色或いは乳白色を呈していることが多い。
水溶性樹脂を主体とするインク受容層を有するものとしては、特開平11−342669号公報(特許文献14)には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、更にインク受容層がN−ビニルピロリドンの単一重合樹脂またはN−ビニルピロリドンと他の重合性単量体との共重合樹脂を含有するインクジェット記録体が記載され、特開2000−108508号公報(特許文献15)には、メトキシル基を含有する水溶性セルロース誘導体及び水溶性カチオン性樹脂を含有するインクジェット記録シートが記載され、特開平10−329405号公報(特許文献16)には、親水性高分子樹脂と特定のアニオン性フッ素系界面活性剤を含有するインクジェット記録用シートが記載されている。
無機顔料と結着剤を主成分とするインク受容層を有するものとして、特開平10−119417号公報(特許文献17)には、基材シート上に無機質フィラーを主成分とするインク浸透層、水溶性樹脂を主成分とするインク膨潤層が設けられたインクジェット用記録シートが記載され、特開平10−329417号公報(特許文献18)には、(A)水溶性樹脂、粗面化形成剤及び架橋剤を含むインク受容層と、(B)ドット形状調整剤含有層とを順次積層した記録層を有する記録用フィルムにおいて、(A)の粗面化形成剤として吸油量の異なる少なくとも2種の合成シリカを用い、これらの使用量を変えて、記録層の標準拭き取り回数20〜100回、インク定着時間5分以下に調整することを特徴とするインクジェット用記録フィルムが記載されている。
特開平11−99739号公報(特許文献19)には、第一インク受容層と、その上に設けられた第二インク受容層とを有し、第二インク受容層が吸収し切れないインクを受容吸収するための第一インク受容層が、第二インク受容層用塗布液により溶解もしくは膨潤される樹脂成分を含み、第二インク受容層における顔料含有率が、第一インク受容層における顔料含有率より大きいことを特徴とするインクジェット記録シートが記載されている。
特開平11−245502号公報(特許文献20)には、吸水性ポリウレタンを含有し、さらに吸水性ポリウレタンを全塗工剤の15〜90重量%と、平均粒径が6〜9μmのシリカを10〜30重量%と、平均粒径が10〜15μmの光拡散用シリカを15〜40重量%と平均粒径が10〜22μmの多孔性シリカを15〜40重量%と、からなるシリカ混合物を全塗工剤の固形分重量比で10〜80重量%とを含有するインクジェット用塗工剤が記載され、特開平11−291619号公報(特許文献21)には、(A)バインダー、(B)塗膜形成補助剤及び(C)架橋剤を主成分とする接着層と、上記(A)成分と同じバインダー、(D)粗面化形成剤、前記(C)成分と同じ架橋剤及び(E)触媒を主成分とし、かつバインダーと粗面化形成剤との重量比が2:3ないし1:3であるインク受容層とを順次積層したインクジェット用記録フィルムが記載されている。
特開平11−301093号公報(特許文献22)には、インク受容層の上に溶媒は透過するが顔料は透過しないインク溶媒透過層を有するインクジェット記録材料が記載され、特開2000−1043号公報(特許文献23)に、ポリビニルアセタール樹脂、尿素・グリオキザール・アクリルアミド重縮合物及び/又はエポキシ化合物、並びに、微粒子からなる樹脂組成物より形成される水性インク用記録材料が記載され、特開2000−79752号公報(特許文献24)に、合成シリカ等とカチオン強度が1.5m当量/g以上6m当量/g以下であるカチオン性樹脂を含有するインクジェット記録体が記載され、特許文献24、及び特開2000−79754号公報(特許文献25)には、インク受容層に対し、相容性を有しない顔料インクによるインクジェット印刷パターンを担持した一部消去可能な記録シートが記載されている。
特開2000−127610号公報(特許文献26)には、細孔中に無機あるいは有機の微粒子を埋設せしめた多孔性澱粉粒子とバインダー樹脂からなるインクジェット記録シートが記載され、特開2000−141876号公報(特許文献27)には、ポリビニルアセタール樹脂を主成分とし、ポリビニルピロリドン系樹脂と、尿素・グリオキザール・アクリルアミド重縮合物及び/又はエポキシ化合物と、微粒子とを含有するものが記載され、特開2000−190622号公報(特許文献28)には、無機顔料、水不溶性樹脂及び2価以上のイオン価数を有する金属塩を含有するインク受容層を形成してなるインクジェット記録材料が記載され、特開2000−238420号公報(特許文献29)には、顔料と結着剤が顔料100重量部に対し結着剤10〜50重量部であり、記録層が顔料として平均粒子径3〜15μmの合成シリカと結着剤としてケン化度が96mol%以上のポリビニルアルコールを主体としてなり、4級アンモニウム塩ポリマーを顔料100重量部に対し1〜40重量部及び硬化剤を結着剤100重量部に対し20〜100重量部含有してなるインクジェット記録シートが記載されている。
特開2000−247014号公報(特許文献30)には、ポリビニルアルコールを芳香族アルデヒドを用いてアセタール化することにより得られたポリビニルアセタール樹脂を主成分とし、これに、水溶性アクリル酸系樹脂と、水溶性エポキシ系化合物と、ケイ酸、シリカ、カオリン、クレー、アルミナ、炭酸カルシウム、ゼオライト、酸化チタン、タルク及び球状高分子からなる群から選択した少なくとも1種からなる微粒子とを含む水性インク用記録材が記載され、特開2000−318298号公報(特許文献31)に、樹脂フィルム、非晶質合成シリカと水不溶性樹脂含有下層、及び非晶質合成シリカ、水不溶性樹脂とシラノール変性ポリビニルアルコール含有上層、平滑度が5秒以上40秒以下であるインクジェット記録用シートが記載されている。
酸化アルミニウム系受容層について、特許文献11には、支持体上に、一層以上のアルミナ水和物、即ち一般にアルミナゾルと呼ばれ、インク透過性に優れ、高度の陽性電荷を帯びていることからインク中の染料の定着に適している高分子量アルミナ、好ましくは粒子形が擬ベーマイトおよびベーマイトであり、さらに好適には粒子形が繊維状であるアルミナゾルを含有する層構成を有するインク受理層を設け、且つ該インク受理層表面及びインク受理後の画像記録部の60度鏡面光沢度が、それぞれ25%以上及び20%以上のインクジェット記録シートが記載されているが、特開平11−198520号公報(特許文献32)には、ベーマイト形アルミナゾルを用いたインクジェット用被記録材は、表面光沢性は非常に高くなるものの、細孔容積が少ないために、例えば特開平5−24335号公報(特許文献33)に記載されているように、インク吸収容量が少なく、厚膜塗布が必要であると記載されていて、前記のように、インクの種類や記録操作条件の違いにより、記録体に求められる好ましい特性は異なり、かならずしも常に一様ではない。
特開2000−37945号公報(特許文献34)には、インク受容層が2種の粒径の酸化アルミニウム微粒子と重合度1000以上でケン化度80〜95モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールを主成分とするバインダーにより固着してなる層であるインクジェット記録用シートが記載され、特許文献32に、γ形またはδ形酸化アルミニウムの層、水溶性または水膨潤性の高分子含有層を順次積層してなるインクジェット用被記録材が記載されているが、いずれも、顔料インクと似ているが、旧来の一般的顔料インクとは異なる“ポリマー微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョン含有インク”を用いたインクジェット記録の場合には、インク吸収性、画像濃度、ビーディング、定着性(耐擦過性)等のインクジェット適性を充分に満足させるものではなかった。
一方、インクジェット記録に用いられるメディアとして、通常の紙やインクジェット専用コート紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなるインク受容層を有するメディアが知られている。これらメディアの基材は、従来、紙が一般的に用いられ、基材の紙にインクの溶媒吸収層としての役割を持たせていた。近年、銀塩写真に近い画質が求められる中、基材として写真印画紙と同様な非吸収性のレジンコート紙等が用いられるようになり、メディア表面の質感が光沢のあるものが望まれている。このため、インク受容層に求められるインク吸収能力や表面の平滑度が重要になり、気相法シリカやアルミナ微粒子をインク受容層に含有させ、表面平滑度が高く、インク受容層の空隙率を高める改良がなされている。
例えば、特許文献11には、アルミナ水和物を含有するインク受理層が最表層にあるキャスト光沢紙が開示されているが、最表面に大きなひび割れが多く、記録時にインクがにじんだり、基材がインク中の溶媒を吸収してカールやコックリングも生じやすいという欠点を有している。また、特開2000−351267号公報(特許文献35)には初期の画質ばかりでなく、画像堅牢性を銀塩写真並に近づけるため、顔料インクの吸収性と定着性が良好な記録媒体と記録方法が開示されているが、自己分散型顔料や界面活性剤分散型顔料のように分散剤にポリマーを含まない顔料インクについては画像の光沢がメディア表面より低下したり、耐擦過性等の画像定着性がなく、さらなる改良が望まれている。
従来の光沢紙等の記録媒体に顔料インクで記録した場合、顔料粒子は通常は0.1〜0.3μm程度の2次粒径を有しており、インク受容層の細孔径は、顔料インクの2次粒径よりも大きいので、顔料インクの顔料は、インク受容層表面に凝集状態で固定される。そのため、受容層表面に顔料の凝集粒子と同程度の大きさの凹凸を形成され、光散乱により表面光沢が低下する。また、インク受容層表面の顔料は、インク受容層表面に強固に固着しているわけではないので、耐擦過性が劣るものであった。
顔料インクを使用した場合の光沢、画像定着性の改良を目的として、特許文献17にはウレタン系樹脂組成物からなるインク受容層を有する記録媒体が、特開平10−287036号公報(特許文献36)にはゼラチンとアクリルエマルションを含有するインク受容層を有する記録媒体が、また特開平11−157205号公報(特許文献37)には無機質フィラーを主成分とする層の上に水溶性樹脂を主成分とするインク膨潤層を設けた記録媒体が開示されているが、近年の高速のプリンタで使用された場合には、インク吸収性が不充分であるために、ビーデイングによる画像ムラが発生するという欠点を有するものであった。
特開平9−157559号公報 特開平9−132740号公報 特開昭55−5183号公報 特開昭56−148585号公報 特開2000−212486号公報 特開平5−186704号公報 特開平8−3498号公報 特開平10−140064号公報 特表2000−513396号公報 特開2000−191972号公報 特開平6−79967号公報 特開昭57−82085号公報 特開昭57−135190号公報 特開平11−342669号公報 特開2000−108508号公報 特開平10−329405号公報 特開平10−119417号公報 特開平10−329417号公報 特開平11−99739号公報 特開平11−245502号公報 特開平11−291619号公報 特開平11−301093号公報 特開2000−1043号公報 特開2000−79752号公報 特開2000−79754号公報 特開2000−127610号公報 特開2000−141876号公報 特開2000−190622号公報 特開2000−238420号公報 特開2000−247014号公報 特開2000−318298号公報 特開平11−198520号公報 特開平5−24335号公報 特開2000−37945号公報 特開2000−351267号公報 特開平10−287036号公報 特開平11−157205号公報
本発明は、このような従来の欠点を解消したインクジェット記録方法、記録媒体を提供し、特に、顔料インクで記録した画像記録部の光沢度の低下を抑制して写真に近い画質とし、耐擦過性に優れた画像が得られるインクジェット記録方法、記録媒体を提供することをその課題とするものである。
本発明者らは上記課題について鋭意検討を行なった結果、インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子とインクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子を含有する多孔質層を最表層として有する記録媒体の表面に、記録情報に応じて、ポリマー微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンまたは自己分散型顔料を含有する顔料インクを付与することにより、上記課題、とりわけ、インクの吸収性が高く、画像記録部の光沢度が高い画像が得られ、記録画像の耐擦過性が改善されることを見出して本発明に至った。
本発明の記録方法において使用する記録媒体は、インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子(無機粒子および/または有機粒子)とを含有する多孔質層を最表層として基材上に有する記録媒体である。
本発明における記録媒体は、インク吸収速度が速いことが必要であり、そのため少なくとも最表層として多孔質層を有するものである。多孔質層は、インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子(無機粒子および/または有機粒子)とにより形成される。多孔質層の空隙は上記粒子間の間隙である。
記録時にインクが記録媒体に付与されると、インクは速やかに多孔質層に吸収され、インクの顔料の一部も多孔質層に吸収される。同時に、インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子は、インクの乾燥とともに次第に溶解を開始する。本発明に係るインクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子含有の記録媒体を用いてインクジェット記録を行なうと、インクの乾燥中に有機粒子の一部又は全部が溶解あるいは軟化することによって層が変形しやすくなり、インク顔料粒子がその重さにより最表層中に全部あるいは一部が沈み込むために、インク顔料粒子に起因する凹凸が目立たない画像が形成される。その結果、画像記録部の光沢度は高くなり、また、耐擦過性の良好な画像を得ることができるものである。
本発明における記録媒体の最表層の多孔質層に含有され、インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子(無機粒子および/または有機粒子)は、記録前の記録媒体の保存中においては、記録媒体のブロッキングや多孔質層の空隙が小さくなるのを防止し、記録後においては、未乾燥状態の画像記録部が記録媒体の裏面と接触することによるインク汚れや、記録画像部と記録媒体の裏面とのブロッキングを防止する作用を果たす。
すなわち、上記課題は本発明の(1)〜(9)によって解決される。
(1)「記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行なうインクジェット記録方法において、前記インクは、水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子分散相を連続相中に含むポリマーエマルジョンまたは自己分散型顔料を含有する液状物であり、前記記録媒体は、該インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、該インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とを含有する多孔質層を最表層として有することを特徴とするインクジェット記録方法」;
(2)「前記インクが、水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子または自己分散型顔料、及び少なくとも1種類以上の湿潤剤を含有し、且つ炭素数8以上で11以下のポリオールまたはグリコールエーテル、アニオンまたはノニオン系界面活性剤、水溶性有機溶剤、水を少なくとも含有し、25℃における表面張力が40dyne/cm以下であることを特徴とする前記第(1)項に記載のインクジェット記録方法」;
(3)「前記インクに力学的エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載のインクジェット記録方法」;
(4)「前記インクに熱エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載のインクジェット記録方法」;
(5)「水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とを含有する多孔質層を最表層として有することを特徴とするインクジェット記録媒体」;
(6)「水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とバインダーとを主成分として基材上に設けられている多孔質層(第1層)の上に、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子を含む塗工液を塗工することにより、該第1層と明確に層別されず、該第1層にほぼ埋没している第2層が形成されていることを特徴とするインクジェット記録媒体」;
(7)「水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子分散相を連続相中に含むポリマーエマルジョンインクまたは自己分散型顔料を含有するインクを記録媒体の表面に、記録情報に応じて付与して記録を行なうインクジェット記録方法に用いられるものであることを特徴とする前記第(5)項または第(6)項に記載のインクジェット記録媒体」;
(8)「基材上に、水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とバインダーとを主成分とする多孔質層(第1層)を形成する段階と、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子を含む塗工液を塗工して、第2層を形成する段階とを含むことにより、該第1層と第2層が明確に層別されておらず、第2層が第1層にほぼ埋没しているインクジェット記録媒体を製作することを特徴とする前記第(5)項または第(6)項に記載のインクジェット記録媒体を製造する方法」;
(9)「記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行なうインクジェット記録用インクにおいて、前記インクは、水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子分散相を連続相中に含むポリマーエマルジョンまたは自己分散型顔料を含有する液状物であり、前記記録媒体は、該インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、該インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とを含有する多孔質層を最表層として有するものであることを特徴とするインクジェット記録用インク」。
本発明により、顔料インクで記録した場合のインク吸収性に優れ、画像記録部の光沢度の低下を抑制して写真に近い画質とし、耐擦過性に優れた画像が得られるインクジェット記録方法、記録媒体を提供することができるという極めて優れた効果が奏される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される記録媒体の基材としては、特に限定されず種々のものを使用できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ETFEなどのフッ素系樹脂のようなプラスチック類、ならびに普通紙、アート紙、コート紙等各種の紙類を好適に使用できる。さらに、布、ガラスや金属も使用できる。これらの基材には、多孔質層との接着強度を向上させるなどの目的で、コロナ放電処理や各種アンダーコートを行なうこともできる。基材として透明プラスチックフィルムを使用した場合には、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シートなどにも使用できる透明な記録物が得られる。基材として、白色顔料を含んだ不透明プラスチックフィルムや、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆる、RCペーパー)、などを使用した場合には、銀塩写真に匹敵する記録物が得られる。
前記基材が紙基材である場合、坪量45g/cm〜150g/cmの紙基材であることが好ましく、また、前記基材が樹脂フィルム基材である場合、厚さ10μm〜500μmのものであることが好ましい。より好ましくは20μm〜250μmのものである。厚さ10μm未満の基材はゆがみ易く取り扱い難い。また一般的に伸び易く画像の寸法安定性の点で問題を生じることがある。厚さ500μmを超えると、硬過ぎてたわませることが難しくなり取り扱い難く、また、例えばOHP等の光透過型の用途に用いる際の非画像部の光透過性が問題になることがある。
本発明において使用される記録媒体の多孔質層は、インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子、およびインクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子(無機粒子および/または有機粒子)を用いることにより形成される。
インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子について説明する。本発明において水溶性有機溶媒とは、いわゆる水溶性有機溶剤の他に、湿潤剤、界面活性剤を含む。本発明に係るインクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子は、インク中の水溶性有機溶媒により溶解又は軟化する有機粒子であり、分子量5000以上の高分子が好ましく、その材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、SBR、NBR、ポリテトラフルオロエチレン、クロロプレン、タンパク質、多糖類、ロジンエステル、セラック樹脂等、従来公知のものから選ばれる。特に好ましい有機粒子の材質は、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、SBR等であり、変成や共重合によって2種以上の単量体からなる樹脂も好ましく用いられ、樹脂に対して特定の修飾基を付加したものや脱離基を除いたものでもよく、2種以上の材質を混合して有機粒子を形成してもよく、更には2種類以上の有機粒子を混合して用いてもよい。
本発明でいう「溶解」とは、有機粒子とインク中の水溶性有機溶媒が相溶して、有機粒子に対して水溶性有機溶媒の量が充分に多い場合には平衡状態で単一の相をなすことを指し、「軟化」とは有機粒子が水溶性有機溶媒を吸収してインク中の顔料等の重さにより変形しやすい状態になることをいう。
インク中の水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子は、記録媒体自体や記録画像の耐水性の観点から、水に不溶であるほうが好ましい。
本発明に係るインクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子の粒径は、記録媒体の表面光沢に大きく影響する。好ましい数平均粒径は2nm〜2μmである。更に、有機粒子の粒径が5〜100nmであると、画像記録部と非画像記録部の光沢度差を小さくすることができる。数平均粒径の測定法としては、例えば、有機粒子含有層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の有機粒子の粒径を求め、その単純平均値(個数平均)として求める方法がある。なお、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表わしたものである。又は別の方法としては、有機粒子を適当な分散媒に分散させ、レーザ回折散乱式粒度分布測定によって粒径を求めることもできる。本発明に係る有機粒子の形状は、真球形である必要はなく、針状でも板状でもよい。粒径は、体積から球換算で求められる。
インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子(無機粒子および/または有機粒子)のうち、無機粒子としては、合成非晶質シリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどに代表される顔料(填料)が用いられ、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの複合体微粒子を好ましく用いることができる。
このようなシリカ、アルミナ、シリカとアルミナの複合体無機粒子は、超微粒の一次粒子が凝集した微粒子であり、粒径が1〜30nmの一次粒子が凝集した数平均粒径1〜20μm、好ましくは数平均粒径が2.0〜15μmで、好ましくは合成シリカ、アルミナ水和物を挙げることができる。シリカ例えば合成シリカ、アルミナ水和物の粒子径としては、平滑な表面を有する多孔質層を形成するためには塗工液の粘度の点からも粒子径が小さい無機粒子を用いることが望ましいが、粒子径が小さいものは塗工層が密になりやすくインクドットの広がりが少なくシャープなドット再現性を得られる半面、粒子相互間の間隙、粒子表面の空隙が小さくなりインク吸収が比較的遅い。
これに対し粒子径が大きくなると、粒子相互間の間隙、粒子表面の空隙が大きくなりインク吸収が早くなる反面、インクドットが広がりやすく、インク滲みが発生しやすくなるという性質があるため、インク乾燥性が悪く、また画像濃度が低い傾向にあり、一次粒径が30nmより大きいと記録層表面の平滑性が劣り、ドットの広がりが大きくなることがある。
特にシリカの中でも、気相法により得られる平均1次粒径が30nm以下で、BET比表面積が250m/g以上の合成シリカはインクの吸収性と光沢性が高いため好ましい。またアルミナとしては、β−アルミナ、γ−アルミナ等が使用できる。また表面をアルミニウム塩で処理したシリカ粒子も好ましく使用することができる。
本発明においては、1種類の粒子径の合成シリカ、アルミナ水和物を使用してもよいが、シリカ、アルミナ水和物を混合し、または粒子径の異なるものを2種以上混合して使用することも可能である。但しこの場合にも、多孔質層に含まれる無機粒子が、数平均の一次粒径1〜30数nmであり、一次粒径が1nm未満の粒子の個数含有率が10%より少なく一次粒径が30nmを超える粒子の個数含有率が5%より少なくなるように混合することが望ましい。
インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子のうち、有機粒子としては、水および水溶性有機溶媒により溶解しない公知の有機粒子が使用でき、各種の有機低分子材料粒子、高分子材料粒子を挙げることができる。
本発明において、記録媒体の多孔質層はインクの吸収層および/または色材定着層として機能する。多孔質層が1層から構成される場合には、インクの吸収層および色材定着層として、多孔質層が複数の層である場合には、下層がインク吸収層として、上層が色材定着層として機能する。
多孔質層中には、バインダーが含まれているのが好ましい。バインダーとしては、でんぷんまたはその変性物、ポリビニルアルコールまたはその変性物、SBRラテックス、NBRラテックス、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の有機物を使用できる。
このようなバインダーとしては、透明性が高くインク溶媒のより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用にあたっては、親水性バインダーがインク溶媒の初期浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、室温付近で膨潤しにくい親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
バインダーの使用量は、粒子重量に対して5〜50重量%程度を採用することが好ましい。バインダーの使用量が、5重量%未満の場合は、多孔質層の強度が不充分になるおそれがあり、逆に50重量%を超える場合は、インクの吸収性が不充分になるおそれがあるのでそれぞれ好ましくない。さらに、記録シートに自動搬送性を付与するために球状粒子を混合してもよい。
最表層の多孔質層は、その細孔半径分布曲線のピークが20nm以下にあるような細孔構造を有するのが好ましい。このような多孔質層にすると、高い画像濃度が得られ、光沢感のある画像となる。インク中の色材が最表層の多孔質層の表面や表面近傍に定着されるためである。最表層の多孔質層は、その細孔半径分布曲線のピークがこの範囲よりも大きいところにあると、インク吸収速度は優れるものの、ドット径が小さくなりすぎ、画像濃度が低くなる。
本発明におけるこのような記録媒体は、インク受容層表面の60度光沢が10未満では写真画質としての光沢感が足りず、80より大きいと画像部光沢が低下し、非画像部とのバランスを損なうことになる。インク受容層表面とはこの場合、メディア印字面となるが、この表面のベック平滑度が300秒以上であることが好ましい。300秒未満であると、画素が不均一に拡がったり、真円度を損ない易くなり、写真階調のノイズになりやすいため好ましくない。
本発明でいう細孔半径分布の測定について説明する。基体や下層の多孔質層の影響をのぞくために、多孔質層をフィルム上に設けた後、多孔質層を剥がし取り、測定に用いた。多孔質層をフィルムに設け、そのまま測定することもできる。細孔分布は水銀圧入法により求めた空隙量分布曲線から細孔分布を計算により求めることができる。
本発明の記録方法において使用される記録媒体では、搬送性改良等のために多孔質層を設けた側と反対側の基材上(裏面)に粒子とバインダーを主成分とする層を設けてもよい。
基材上に、多孔質層を形成する方法としては、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子にバインダーと溶媒を加えて塗工液にし、これを基材に塗布したあと乾燥する方法が好ましい。塗布方法は、たとえば、ダイコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーターなどを用いるのが好ましい。塗工液の溶媒としては、水系、非水系のいずれも採用できる。
多孔質層の厚さは、各プリンタなどの仕様によって適宜選択され、多孔質層が1層からなる場合は、一般には5〜50μmを採用するのが好ましい。多孔質層の厚さが5μmに満たない場合は、インクを充分吸収しないおそれがあるので好ましくない。多孔質層の厚さが50μmを超える場合には、多孔質層の透明性が損なわれたり層の接着強度が低下するおそれがあるので好ましくない。
複数の多孔質層を形成する方法としては、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子、バインダーなどに溶媒を加えて塗工液にし、これを下層の多孔質層に塗布した後乾燥する方法が好ましい。塗布方法は、下層の多孔質層形成の場合と同様、ダイコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーターなどを採用できる。塗工液の溶媒としては、水系、非水系のいずれも採用できる。
複数の多孔質層を形成する場合の最表層の厚さは、各プリンタなどの仕様によって適宜選択され、一般には0.5〜15μmを採用するのが好ましい。最表層の厚さが0.5μmに満たない場合は、インクの定着性が充分に向上しないおそれがあるので好ましくない。最表層の厚さが15μmを超える場合には、インクの吸収性が悪くなるおそれがあるので好ましくない。
最表層の多孔質層に水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子を含有せしめる別の方法としては、基材上に、水および水溶性有機溶媒により溶解しない比較的大きな粒径の粒子とバインダーを主成分とする多孔質層を形成した後に、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子を含む塗工液を塗工して、先に形成させた多孔質層中に水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子を実質的に埋没させるようにする方法がある。先に形成させた層と後に塗工した層とが明確に層別されておらず、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子がほぼ埋没している状態とすることができる。この方法によって得られる記録媒体は、主として水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子によって形成される凹凸が平坦化されるために、光沢が高く、記録媒体の保存中および記録後のブロッキングが発生しにくい構造になるため特に好ましい。
また本発明の特徴は、前記インクを用いたインクジェット記録方法にもある。この場合、記録信号に応じてインクを噴射し、メディア上に画像を得るが、インクを噴射させるため、熱エネルギーを作用させることも可能である。また、これらの記録方法により得られる画像部の60度光沢が、非画像部より低下しないことが好ましく、そのためインクのメディアに対する最大付着量は40g/m以内であることが好ましい。付着量が40g/mを越えるとインクがあふれたり、にじみ出したりするため好ましくない。
また、インクが少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3色を備えた複数のカラーインクでメディア上にフルカラー画像を形成することが好ましく、特にカーボンブラックを色材とするブラックインクを用いずに無彩色画像を形成できることが好ましい。ブラックインクが染料では、画像堅牢性に乏しく、カーボンブラックは人体への影響が懸念されており、環境上できるだけその使用量を少なくする検討が始まっている。前記フルカラー、無彩色画像を形成するため、複数のカラーインクはメディア上で混色させることが好ましいが、混色画像部では明度の低いインクからメディア上に付与することが好ましい。明度の高いインクから付与すると濃度むらや色境界にじみが起こりやすく好ましくない。
次に、本発明において使用するインクについて説明する。
本発明において使用するインクは、25℃における表面張力が40mN/m以下の低表面張力の水性インク、インクセットを用いることが好ましい。これは、本発明者らが、記録画像の乾燥性を改善するために種々の手段について検討を行なった結果、インクの表面張力を40mN/m以下になるように調整すれば、ほとんどの被記録材に対しても速やかな浸透乾燥が可能であることを見い出したことに基づくものである。また、インクの表面張力を40mN/m以下にすることで、インクのヘッド部材への濡れが良くなり、8mPa・sec(25℃)以上の高粘度インクでも周波数応答性が向上し、吐出安定性が格段に向上する。この低表面張力のインクは炭素数8〜11のポリオールまたはグリコールエーテルと、アニオンまたはノニオン系界面活性剤を用いることにより達成できる。
また、本発明において好ましくは5mPa・sec以上、より好ましくは8mPa・sec(25℃)以上の高粘度インク、インクセットを用いることにより、特に普通紙に記録したときの印字品位が格段に向上する。従来のインクジェットプリンタに用いられてきた3mPa・sec(25℃)程度の低粘度インクではインク中の水分が約70重量%であるが、8mPa・sec(25℃)程度の高粘度インクでは約50重量%以下になり、インク滴が紙面上に着弾するときの水分蒸発率が2.0〜3.0倍も高くなる。このために高濃度の顔料が紙面上で凝集する速さも速くなり滲みがほとんどなくなる。
さらに、本発明において、インク中の色材濃度が固形分で好ましくは8重量%以上、より好ましくは10重量%以上にすることである。ポリマーエマルジョン濃度あるいは顔料濃度を高めることにより、インクの粘度が高くなり、顔料が記録媒体のインク受容層表面で凝集しとどまり易くなり発色濃度、色調が向上するとともに滲みもほとんどなくなる。
さらにまた、本発明においては、従来用いられてきたエチレングリコール(ジエチレングリコール)とグリセリンの混合した低粘度の湿潤剤よりも、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上の高粘度の湿潤剤とグリセリンの混合した高粘度の湿潤剤を用いることが好ましい。高粘度の湿潤剤を用いると、高顔料濃度と相まって高粘度のインクとすることができる。
本発明で使用する好ましいインク組成物は、次の構成よりなるインク粘度5mPa・sec以上、好ましくは8mPa・sec(25℃)以上の記録用インクである。印字するための着色剤、それを分散させるための水とを必須成分とし、必要に応じて添加される湿潤剤、水溶性有機溶剤、アニオンまたはノニオン系界面活性剤、エマルジョン、防腐剤、pH調製剤から構成される。湿潤剤1と2を混合するのは各々の湿潤剤の特徴を活かすためと、粘度調製ができるためであるが、湿潤剤1と2を必ず併有する必要はない。
[1]着色剤
[2]湿潤剤1(グリセリン)
[3]湿潤剤2(1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、
1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、
1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、
ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、
トリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上)
[4]水溶性有機溶剤
[5]アニオンまたはノニオン系界面活性剤
[6]炭素数8〜11のポリオールまたはグリコールエーテル
[7]防腐剤
[8]pH調製剤
[9]純水
以下、本発明で使用する各インクの構成要素について説明する。
ブラックインク用色材としては、例えばカーボンブラックが用いられ、ファーネス法、チャネル法等で製造されたカーボンブラックで、一次粒子径が15nmから40nm、BET吸着法による比表面積が50〜300m/g、pH2〜9を有するものが好ましく使用され、特にpH6以下の酸性カーボンブラックが高濃度で好ましい。また次亜塩素酸化処理したカーボンブラックやスルホン化剤処理したカーボンブラック、ジアゾニウム化合物で処理してスルホン酸、カルボン酸等のアニオン性解離基を導入したカーボンブラック、いわゆる自己分散型カーボンブラックが好ましい。
自己分散型カーボンブラックを用いたブラックインクは吐出安定性に優れ、普通紙に記録した場合の画像濃度、文字品位に優れる特徴があるが、光沢紙など基材上にインク吸収層を設けた記録媒体に記録を行なう場合には耐擦過性が不足する場合もあり、耐擦過性を補う目的で自己分散型カーボンブラックに樹脂エマルジョンを添加した構成とすることもできる。
樹脂エマルジョンとは、連続相が水であり、分散相が次のような樹脂成分であるエマルジョンを意味する。分散相の樹脂成分としてはアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、この樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。また、これらの樹脂成分の粒子径はエマルジョンを形成する限り特に限定されないが、150nm程度以下が好ましく、より好ましくは5〜100nm程度である。
これらの樹脂エマルジョンは、樹脂粒子を、場合によって界面活性剤とともに水に混合することによって得ることができる。例えば、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル系樹脂のエマルジョンは、これら樹脂と、界面活性剤とを水に混合することによって得ることができる。
樹脂成分と界面活性剤との混合の割合(重量比)は、通常10:1〜5:1程度とするのが好ましい。界面活性剤の使用量が前記範囲に満たない場合、エマルジョンとなりにくく、また前記範囲を超える場合、インク組成物の耐水性が低下したり、浸透性が悪化する傾向があるので好ましくない。
また、前記エマルジョンの分散相成分としての樹脂と水との割合は、樹脂100重量部に対して水60〜400重量部、好ましくは100〜200の範囲が適当である。
市販の樹脂エマルジョンとしては、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)などが挙げられる。
本発明において樹脂エマルジョンを添加する場合には、その樹脂成分がインク組成物の0.1〜40重量%となるよう含有するのが好ましく、より好ましくは1〜25重量%の範囲である。
樹脂エマルジョンは、増粘・凝集する性質を持ち、着色成分の浸透を抑制し、さらに記録材への定着を促進する効果を有する。また、樹脂エマルジョンの種類によっては記録材上で皮膜を形成し、印刷物の耐擦過性をも向上させる効果を有する。
カラーインク用色材としては、ポリマー微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させたポリマーエマルジョンからなる。本発明において、「色材を含有させた」とは、ポリマー微粒子中に色材を封入した状態およびポリマー微粒子の表面に色材を吸着させた状態の何れか又は双方を意味する。この場合、本発明のインクに配合される色材はすべてポリマー微粒子に封入または吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、該色材がエマルジョン中に分散していてもよい。上記色材としては、水不溶性若しくは水難溶性であって、上記ポリマーによって吸着され得る色材であれば特に制限なく用いられる。
本発明において、水不溶性若しくは水難溶性とは、20℃で水100重量部に対して、色材が10重量部以上溶解しないことをいい、溶解するとは、目視で水溶液表層または下層に色材の分離や沈降が認められないことをいう。上記色材としては、例えば、油溶性染料、分散染料等の染料や、顔料等が挙げられる。良好な吸着・封入性の観点から油溶性染料及び分散染料が好ましいが、得られる画像の耐光性からは顔料が好ましく用いられる。
本発明に用いられる上記の各染料は、ポリマー微粒子に効率的に含浸される観点から、有機溶剤、例えば、ケトン系溶剤に2g/リットル以上溶解することが好ましく、20〜600g/リットル溶解することが更に好ましい。
カラーインク用顔料としては黄色インク用でC.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、150、153等を使用することができる。
マゼンタ用でC.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219等を使用することができる。
シアン用でC.I.ピグメントブルー1、2、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63等を使用することができる。
また中間色としてはレッド、グリーン、ブルー用として下記顔料が単独もしくは混合して用いることができる。また、下記顔料は前記のマゼンタ、シアンの調色用としても用いることができる。
C.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントバイオレット3、19、23、37、C.I.ピグメントグリーン7,36。
他の適切な着色顔料の例は、The Color Index、第三版(The Society of Dyers and Colourists,1982)に記載されている。
なお、顔料を着色剤として用いる場合に補色、調色等のために上記染料を併用することもできる。
上記色材の配合量は、ポリマーの配合量との関係において、該ポリマーの重量に対して約10〜200重量%が好ましく、特に約25〜150重量%であることが好ましい。
上記ポリマーエマルジョンを形成するポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー及びポリウレタン系ポリマー等を用いることができる。特に好ましく用いられるポリマーはビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーであり、特開2000−53897号公報、特開2000−53898号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマーが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、これらの色材を含有するポリマー微粒子の平均粒子径はインク中において最も好ましくは0.16μm以下である。
インク中のポリマー微粒子の含有量は固形分で8〜20重量%程度が好ましく、より好ましくは8〜12重量%程度である。
湿潤剤と水溶性有機溶剤に関して、本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にするため、インクの乾燥を防止するために、また、分散安定性を向上するため等の目的で、例えば下記の水溶性有機溶媒が使用される。これら水溶性有機溶媒は複数混合して使用してもよい。
湿潤剤と水溶性有機溶媒の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;
ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類;
プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。
これら有機溶媒の中でも、特にジエチレングリコール、チオジエタノール、ポリエチレングリコール200〜600、トリエチレングリコール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペトリオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
その他の湿潤剤としては、糖を含有するのが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖、例えば、糖アルコール(一般式:HOCH(CHOH)CHOH(ここでn=2〜5の整数を表わす。)で表わされる。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
これら糖類の含有量は、インク組成物の0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲が適当である。
顔料と湿潤剤の比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が高いのに湿潤剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらす。
湿潤剤の配合量は10〜50重量%が好ましく、これに対して色材を含有するポリマー微粒子は8重量%以上が好ましく、より好ましくは8〜20重量%であるので、湿潤剤とポリマー微粒子固形分の両者の比は0.5〜6.25が好ましいが、より好ましくは2.0〜6.0であり、最も好ましくは3.0〜5.0の範囲である。この範囲にあるインクは、乾燥性や保存試験や信頼性試験が非常に良好である。
界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤またはノニオン系界面活性剤が用いられる。色材の種類や湿潤剤、水溶性有機溶剤の組み合わせによって、分散安定性を損なわない界面活性剤を選択する。
アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどが挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール系(例えばエアープロダクツ社(米国)のサーフィノール104、82、465、485あるいはTGなど)を用いることができるが、特にサーフィノール465、104やTGが良好な印字品質を示す。
前記界面活性剤は、単独または二種以上を混合して用いることができる。
本発明では界面活性剤を使用することで記録紙への濡れ性を改善することができる。好ましい界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレングリコール系界面活性剤が挙げられる。より具体的にはアニオン系界面活性剤としては下記一般式(I)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、及び/または下記一般式(II)で表わされる炭素鎖が5〜16の分岐したアルキル鎖を有するジアルキルスルホ琥珀酸が挙げられ、これらを用いることで普通紙特性も改善されさらに着色剤の溶解・分散安定性が得られる。
Figure 2006082378
(R:炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基、m=3〜12、M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
Figure 2006082378
(R:炭素数5〜16の分岐したアルキル基、M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
表1に、本発明に用いる界面活性剤(I)、(II)を具体的に遊離酸型で示す。
Figure 2006082378
さらに本発明の界面活性剤の対イオンとしてリチウムイオン、及び下記一般式(a)で示される第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオンを用いることにより界面活性剤が優れた溶解安定性を示す。
Figure 2006082378
(式中、Zは窒素又はリンを表わし、R〜Rは独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、またはハロゲン化アルキル基を表わす。)
好ましい非イオン系の界面活性剤として下記一般式(III)で表わされるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、下記一般式(IV)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテル、下記一般式(V)、(V’)で表わされるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、下記一般式(VI)で表わされるアセチレングリコール系界面活性剤が挙げられる。これらを併用することによりさらに相乗効果として浸透性が挙げられ、これにより色境界にじみが低減され、また文字にじみも少ないインクが得られる。
Figure 2006082378
(Rは分岐してもよい炭素数6〜14の炭化水素基、k=5〜20)
Figure 2006082378
(Rは分岐してもよい炭素数6〜14の炭化水素基、n=5〜20)
Figure 2006082378
(R’は炭素数6〜14の炭化水素基、m≦20、n≦20)
Figure 2006082378
(p、q=0〜40)
なお、このインクのpHを6以上にすることによりインクの保存安定性が得られ、また、オフィスで使用されているコピ−用紙や用箋等はpHが5〜6のものが多く、これらの記録紙にインクを9〜60μmの微細な吐出口より吐出し重量が3ng〜50ngの液滴として5〜20m/sで飛翔させ、単色での付着量を1.5g/mから30g/mとしてJIS P−8122試験法によるステキヒトサイズ度が3秒以上の所謂普通紙に記録することにより高画質、高解像の記録画像を形成する記録方式を提供することができる。ただし、前記一般式(II)で表わされる界面活性剤を用いる場合は、pHが9以上では保存時に分解による物性変化が起こりやすいため、pHを6〜9とすることが好ましい。
本発明に用いることができる前記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(V’)、(VI)で表わされる界面活性剤の添加量は0.05〜10重量%の間でプリンターシステムにより要求されるインク特性に対し所望の浸透性を与えることが可能である。ここで0.05重量%未満ではいずれの場合も2色重ね部の境界でのにじみが発生し、10重量%より多く添加する場合は化合物自体が低温で析出しやすいことがあり信頼性が悪くなる。
本発明における表面張力は紙への浸透性を示す指標であり、特に表面形成されて1秒以下の短い時間での動的表面張力を示し、飽和時間で測定される静的表面張力とは異なる。測定法としては特開昭63−31237号公報等に記載の従来公知の方法で1秒以下の動的な表面張力を測定できる方法であれば使用できるが、本発明ではWilhelmy式の吊り板式表面張力計を用いて測定した。表面張力の値は40mN/m以下が好ましく、より好ましくは35mN/m以下とすると優れた定着性と乾燥性が得られる。
本発明に用いる炭素数8〜11のポリオールまたはグリコールエーテルは、25℃の水中において好ましくは0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する部分的に水溶性のポリオールおよび/またはグリコールエーテルであり、記録用インク全重量に対して好ましくは0.1〜10.0重量%添加することによって、該インクの熱素子への濡れ性が改良され、少量の添加量でも吐出安定性および周波数安定性が得られる。
これらの好ましい例として下記のものが挙げられる。
〔1〕 2−エチル−1,3−ヘキサンジオール
溶解度:4.2重量%(20℃)
〔2〕 2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール
溶解度:2.0重量%(25℃)
25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有するポリオール、グリコールエーテルからなる浸透剤は、溶解度が低い代わりに浸透性が非常に高いという長所がある。従って、25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤と他の溶剤との組み合わせや他の界面活性剤との組み合わせで非常に高浸透性のインクを作成することが可能となる。
本発明のインクには上記着色剤、溶媒、界面活性剤等の他に従来より知られている添加剤を加えることができる。
例えば、防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
またpH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。
その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
さらにキレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が使用できる。
さらにまた防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
その目的に応じて水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤等を添加することができる。
本発明の記録液を収容した記録液カートリッジおよび記録液カートリッジを具備するインクジェット記録装置について、図面を参照して説明するが、以下は構成例のひとつに過ぎず、本発明になんら限定を加えるものではない。
図1は、本発明の記録液を収容した記録液収容部を備えたインクカートリッジを搭載するシリアル型インクジェット記録装置の機構部の概略正面図である。
このインクジェット記録装置の機構部は、両側の側板(1)、(2)間に主支持ガイドロッド(3)及び従支持ガイドロッド(4)を略水平な位置関係で横架し、これらの主支持ガイドロッド(3)及び従支持ガイドロッド(4)でキャリッジユニット(5)を主走査方向に摺動自在に支持している。キャリッジユニット(5)には、それぞれイエロー(Y)インク、マゼンタ(M)インク、シアン(C)インク、ブラック(Bk)インクをそれぞれ吐出する4個のヘッド(6)を、その吐出面〔ノズル面〕(6a)を下方に向けて搭載し、またキャリッジユニット(5)のヘッド(6)の上側には4個のヘッド(6)に各々インクを供給するための各色のインク供給体である4個のインクカートリッジ(7y)、(7m)、(7c)、(7k)を交換可能に搭載している。
そして、キャリッジユニット(5)は主走査モータ(8)で回転される駆動プーリ(駆動タイミングプーリ)(9)と従動プーリ(アイドラプーリ)(10)との間に張装したタイミングベルト(11)に連結して、主走査モータ(8)を駆動制御することによってキャリッジ(5)、即ち4個のヘッド(6)を主走査方向に移動するようにしている。
また、側板(1)、(2)をつなぐ底板(12)上にサブフレーム(13)、(14)を立設し、このサブフレーム(13)、(14)間に用紙(16)を主走査方向と直交する副走査方向に送るための搬送ローラ(15)を回転自在に保持している。そして、サブフレーム(14)側方に副走査モータ(17)を配設し、この副走査モータ(17)の回転を搬送ローラ(15)に伝達するために、副走査モータ(17)の回転軸に固定したギヤ(18)と搬送ローラ(15)の軸に固定したギヤ(19)とを備えている。
さらに、側板(1)とサブフレーム(12)との間には、ヘッド(6)の信頼性維持回復機構〔以下、「サブシステム」という。〕(21)を配置している。サブシステム(21)は、各ヘッド(6)の吐出面をキャッピングする4個のキャップ手段(22)をホルダ(23)で保持し、このホルダ(23)をリンク部材(24)で揺動可能に保持して、キャリッジユニット(5)の主走査方向の移動でホルダ(23)に設けた係合部(25)にキャリッジユニット(5)が当接することで、キャリッジユニット(5)の移動に従ってホルダ(23)がリフトアップしてキャップ手段(22)でインクジェットヘッド(6)の吐出面(6a)をキャッピングし、キャリッジユニット(5)が印写領域側へ移動することで、キャリッジユニット(5)の移動に従ってホルダ(23)がリフトダウンしてキャップ手段(22)がインクジェットヘッド(6)の吐出面(6a)から離れるようにしている。
なお、キャップ手段(22)は、それぞれ吸引チューブ(26)を介して吸引ポンプ(27)に接続すると共に、大気開放口を形成して、大気開放チューブ及び大気開放バルブを介して大気に連通している。また、吸引ポンプ(27)は吸引した廃液を、ドレインチューブ等を介して図示しない廃液貯留槽に排出する。さらに、ホルダ(23)の側方には、インクジェットヘッド(6)の吐出面(6a)をワイピングする繊維部材、発泡部材或いはゴム等の弾性部材からなるワイピング手段であるワイパブレード(28)をブレードアーム(29)に取り付け、このブレードアーム(29)は揺動可能に軸支し、図示しない駆動手段で回動されるカムの回転によって揺動させるようにしている。
次に、インクカートリッジ(7)について、図2、図3を参照して説明する。
ここで、図2は、記録装置に装填する前のインクカートリッジの外観斜視図、図3はインクカートリッジの正断面図を表わしたものである。
インクカートリッジ(7)は、図3に示すように、カートリッジ本体(41)内に所要の色のインクを吸収させたインク吸収体(42)を収容してなる。カートリッジ本体(41)は、上部に広い開口を有するケース(43)の上部開口に上蓋部材(44)を接着又は溶着して形成したものであり、例えば樹脂成型品からなる。また、インク吸収体(42)は、ウレタンフォーム体等の多孔質体からなり、カートリッジ本体(41)内に圧縮して挿入した後、インクを吸収させている。
カートリッジ本体(41)のケース(43)底部には記録ヘッド(6)へインクを供給するためのインク供給口(45)を形成し、このインク供給口(45)内周面にはシールリング(46)を嵌着している。また、上蓋部材(44)には大気開放口(47)を形成している。
そして、カートリッジ本体(41)には、装填前の状態で、インク供給口(45)を塞ぐと共に装填時や輸送時などのカートリッジ取り扱い時、或いは真空包装時による幅広側壁に係る圧力でケース(43)が圧縮変形されて内部のインクが漏洩することを防止するため、キャップ部材(50)を装着している。
また、大気開放口(47)は、図2に示すように、酸素透過率が100ml/m以上のフィルム状シール部材(55)を上蓋部材(44)に貼着してシールしている。このシール部材(55)は大気開放口(47)と共にその周囲に形成した複数本の溝(48)をもシールする大きさにしている。このように大気開放口(47)を酸素透過率が100ml/m以上のシール部材(55)でシールすることで、インクカートリッジ(7)を透気性のないアルミラミネートフィルム等の包装部材を用いて減圧状態で包装することにより、インク充填時やインク吸収体(42)とカートリッジ本体(41)との間に生じる空間(A)(図3参照)にある大気のためにインク中に気体が溶存したときでも、シール部材(55)を介してインク中の空気が真空度の高いカートリッジ本体(41)外の包装部材との間の空間に排出され、インクの脱気度が向上する。
また、図4は、本発明の記録液を収容した記録液収容部と、記録液滴を吐出させるためのヘッド部を備えた記録カートリッジの構成例を示したものである。
すなわち、記録ユニット(30)は、シリアルタイプのものであり、インクジェットヘッド(6)と、このインクジェットヘッド(6)に供給される記録液を収容するインクタンク(41)と、このインクタンク(41)内を密閉する蓋部材とで主要部が構成される。インクジェットヘッド(6)には、記録液を吐出するための多数のノズル(32)が形成されている。記録液はインクタンク(41)から、図示しないインク供給管を介して、やはり図示しない共通液室へと導かれ、電極(31)より入力される記録装置本体からの電気信号に応じて、ノズル(32)より吐出される。本発明で用いることができるインクジェットヘッドは、電歪素子に電圧を印加して電歪素子を変形させることでインクを吐出する、いわゆるピエゾ方式であってもよいし、電熱変換素子に電流を流すことで発熱させて、発熱によりインクを発泡させることでインクを吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
ピエゾ方式を用いる場合、ピエゾ素子を肥大させたり縮小したり、ピエゾ素子の変形量を調整したりしてそれらの駆動波形を調整することで、様々な大きさのインク滴を吐出させることができる。そのため、階調性が良好な画像を形成するのに有利である。
一方、サーマル方式は、ノズルの高集積化が容易であるため、多ノズルヘッドの作製に向いている。そのため、解像度が高い画像を高速で印刷するのに有利である。
本発明で用いることができるインクジェットヘッドは、インク流路から吐出口にかけての形状が直線的であるエッジシューター方式であってもよいし、インク流路の向きと吐出口の向きが異なるサイドシューター方式であってもよい。
本発明の記録液は、バブルやサーマル方式等の記録方法において、C〜C11のポリオール又はグリコールエーテルを添加することによって、熱素子への濡れ性が改良されるため、少量の添加量でも吐出安定性及び周波数安定性が得られ、かつ安全性も高く、非常に適している。
また、インクカートリッジの別の具体例の外観斜視図を図5に示す。
図5に示すインクカートリッジ(201)において、インク袋(202)はケース(203)に収納されており、また、ケース(203)は(211)、(212)、(213)の3つの構成部材で構成されており、ねじ部材(282)によって締め付け固定するようにしたものである。これによりインクカートリッジ(201)が記録装置本体への着脱の際に自然に分解することが防止できる。
図5に示すインクカートリッジ(201)には、インク供給口(225)、該インク供給口(225)のための開口部(253)、記録装置本体への着脱のための凹部(241)、引っ掛け部(242)、ガイド部(244)、(245)が設けられ、さらにインクの色を表わすための色識別手段(264)が設けられている。
次に、上述したインクカートリッジ(201)を使用するインクジェット記録装置の一例について図6を参照して説明する。図6はインクジェット記録装置の機構部の全体構成を説明する具体的な概略構成図である。
このインクジェット記録装置は装置本体(101)と、装置本体(101)に装着した用紙を装填するための給紙トレイ(102)と、装置本体(101)に装着された画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ(103)とを備えている。そして、装置本体(101)の上カバー(111)の上面は略平坦な面であり、装置本体(101)の前カバーの前面(112)が上面に対して斜め下後方に傾斜し、この傾斜した前面(112)の下方側に、前方(手前側)に突き出した排紙トレイ(103)及び給紙トレイ(102)を備えている。
装置本体(101)内には、図6に示すように、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド(131)とステー(132)とでキャリッジ(133)を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって移動走査する。
このキャリッジ(133)には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェットヘッドからなる記録ヘッド(134)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド(134)を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ(133)には、記録ヘッド(134)に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(135)を搭載している。このサブタンク(135)に、図示しないインク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部に装填された本発明に係るインクカートリッジ1からインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ(103)の用紙積載部〔圧板〕(141)上に積載した用紙(142)を給紙するための給紙部として、用紙積載部(141)から用紙(142)を1枚づつ分離給送する半月コロ〔給紙コロ〕(143)及び給紙コロ(143)に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(144)を備え、この分離パッド(144)は給紙コロ(143)側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙(142)を記録ヘッド(134)の下方側で搬送するための搬送部として、用紙(142)を静電吸着して搬送するための搬送ベルト(151)と、給紙部からガイド(145)を介して送られる用紙(142)を搬送ベルト(151)との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ(152)と、略鉛直上方に送られる用紙(142)を略90°方向転換させて搬送ベルト(151)上に倣わせるための搬送ガイド(153)と、押さえ部材(154)で搬送ベルト(151)側に付勢された先端加圧コロ(155)とを備えている。また、搬送ベルト(151)表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ(156)を備えている。
ここで、搬送ベルト(151)は、無端状ベルトであり、搬送ローラ(157)とテンションローラ(158)との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向に周回するように構成している。この搬送ベルト(151)は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
また、搬送ベルト(151)の裏側には、記録ヘッド(134)による印写領域に対応してガイド部材(161)を配置している。
さらに、記録ヘッド(134)で記録された用紙(142)を排紙するための排紙部として、搬送ベルト(151)から用紙(142)を分離するための分離爪(171)と、排紙ローラ(172)及び排紙コロ(173)とを備え、排紙ローラ(172)の下方に排紙トレイ(103)を備えている。
また、装置本体(101)の背面部には両面給紙ユニット(181)が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット(181)は搬送ベルト(151)の逆方向回転で戻される用紙(142)を取り込んで反転させて再度カウンタローラ(152)と搬送ベルト(151)との間に給紙する。また、この両面給紙ユニット(181)の上面には手差し給紙部(182)を設けている。
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙(142)が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙(142)はガイド(145)で案内され、搬送ベルト(151)とカウンタローラ(152)との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド(153)で案内されて先端加圧コロ(155)で搬送ベルト(151)に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ(156)によって搬送ベルト(157)が帯電されており、用紙(142)は搬送ベルト(151)に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ(133)を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド(134)を駆動することにより、停止している用紙(142)にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙(142)を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙(142)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙(142)を排紙トレイ(103)に排紙する。
そして、サブタンク(135)内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ(201)から所要量のインクがサブタンク(135)に補給される。
このインクジェット記録装置では本発明に係るインクカートリッジ(201)を備えているので、インクカートリッジ(201)も使い切ったときには筐体(203)を分解して内部のインク袋(202)だけを交換することが可能になり、また、インクカートリッジ(201)を縦置きで前面装填構成としても、安定してインク供給を行えるので、装置本体(101)の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体(101)の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ(201)の交換を容易に行なうことができる。
ここでは、前述のようなシリアル型インクジェット記録装置を説明したが、本発明の記録液は、ノズルを千鳥など任意の配列で、目的とする画像の解像度と同じか数分の1程度の密度に集積し、記録媒体の幅以上に配列させた、いわゆるラインヘッドを有する記録装置に適用することも可能である。
また、ここでいう記録装置とは、PCやデジカメ用の出力プリンタのみならず、ファックスやスキャナ、電話などと組み合わせた複合的な機能を有する装置であっても構わない。
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<インクの作成>
[着色剤例1.]
フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調整
特開2001−139849号公報の調整例3を追試して、具体的には下記の操作により行なった。
(1)ポリマー溶液の調製
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下漏斗を備えた1L容積のフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルパレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50重量%のポリマー溶液800gを得た。
(2)ポリマー微粒子の水分散体の調製
前記(1)で得られたポリマー溶液28g、フタロシアニン顔料(大日本インク化学工業(株)製、商品名:TGR−SD)26g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水30gを充分に攪拌した後、3本ロールミルを用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、充分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、青色のポリマー微粒子分散体を得た。
ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は93nmであった。
[着色剤例2.]
ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調整
着色剤例1.のフタロシアニン顔料をピグメントレッド122に変更したほかは着色剤例1と同様にして赤紫色のポリマー微粒子分散体を得た。ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は127nmであった。
[着色剤例3.]
モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散体の調整
着色剤例1.のフタロシアニン顔料をピグメントイエロー74に変更したほかは着色剤例1と同様にして黄色のポリマー微粒子分散体を得た。ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は76nmであった。
[着色剤例4.]
ジアゾ化合物処理したカーボンブラック分散液(自己分散型)
表面積が230m/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック100gと、p−アミノ−N−安息香酸34gとを水750gに混合分散し、これに硝酸16gを滴下して70℃で撹拌した。5分後、50gの水に11gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間撹拌した。得られたスラリーを10倍に希釈し遠心処理し粗大粒子を除き、pHをジエタノールアミンにて調整しpH8〜9とし、限外濾過膜にて脱塩濃縮し顔料濃度15重量%のカーボンブラック分散液とした。このものをポリプロピレンの0.5μmフィルターにてカーボンブラック分散液1とした。マイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は99nmであった。
[着色剤例5.]
次亜塩素酸処理したカーボンブラック分散液(自己分散型)
市販のpH2.5の酸性カーボンブラック(キャボット社製 商品名モナーク1300)300gを水1000ミリリットルに良く混合した後に次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で8時間撹拌した。この液に更に次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)100gを加え、横型分散機で3時間分散した。得られたスラリーを水で10倍に希釈し、水酸化リチウムにてpHを調整し、電導度0.2mS/cmまで限外濾過膜にて脱塩濃縮し顔料濃度15%のカーボンブラック分散液とした。遠心処理により粗大粒子を除き、さらに1ミクロンのナイロンフィルターで濾過しカーボンブラック分散液2とした。Fe、Ca、Siの含有量の総計がICPの測定により100ppm以下であった。また塩素イオン濃度も10ppm以下とした。マイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は95nmであった。
[インクa]
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
着色剤例4.ジアゾ化合物処理した
カーボンブラック分散液1 8.0重量%(固形分として)
1,4−ブタンジオール 22.5重量%
グリセリン 7.5重量%
N−メチル−2−ピロリドン 2.0重量%
具体例(II−2)の界面活性剤 2.0重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール2.0重量%
プロキセルLV(防腐剤) 0.2重量%
イオン交換水 残 量
[インクb]
下記組成物を用いる以外はインクaと同様にし、pHを水酸化リチウムで9にしてインク組成物を調製した。
着色剤例1.フタロシアニン顔料
含有ポリマー微粒子分散体 15.0重量%(固形分として)
1,5−ペンタンジオール 15.0重量%
グリセリン 15.0重量%
N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン 2.0重量%
具体例(II−3)の界面活性剤 2.0重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量%
プロキセルLV(防腐剤) 0.2重量%
イオン交換水 残 量
[インクc]
下記組成物を用いる以外はインクaと同様にし、pHを水酸化リチウムで9にしてインク組成物を調製した。
着色剤例2.ジメチルキナクリドン
顔料含有ポリマー微粒子分散体 15.0重量%(固形分として)
1,6−ヘキサンジオール 22.5重量%
グリセリン 7.5重量%
2−ピロリドン 3.0重量%
具体例(II−4)の界面活性剤 2.0重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール2.0重量%
プロキセルLV(防腐剤) 0.2重量%
イオン交換水 残 量
[インクd]
下記組成物を用いる以外はインクaと同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
着色剤例3.モノアゾ黄色
顔料含有ポリマー微粒子分散体 15.0重量%(固形分として)
2−メチル−2,4−ペンタンジオール 22.5重量%
グリセリン 7.5重量%
N−メチル−2−ピロリドン 5.0重量%
一般式(III)で表わされる
界面活性剤(R=n−ヘキシル基、k=5) 2.0重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量%
プロキセルLV(防腐剤) 0.2重量%
イオン交換水 残 量
インクa〜dのインク組成物の色材固形分(顔料とエマルジョン)の濃度と湿潤剤濃度とインク粘度を次の表2に示す。
Figure 2006082378
<記録媒体の作成>
(有機粒子エマルションの調整)
ポリビニルブチラール(セキスイ化学製、BL−SH)10部、塩化メチレン50部からなる液と界面活性剤0.2部と水100部からなる液を共に液温70℃に加温後に、混合し、超高速万能ホモジナイザーおよび超音波ホモジナイザーによって乳化分散し、減圧下で塩化メチレンを揮散させた。得られた有機粒子エマルションの固形分濃度は10%であり、平均粒径は0.6μmであった。
(記録媒体1)
2次粒子の平均粒子径4.5μmの合成無定型シリカ(トクヤマ(株)社製、商品名:ファインシールX−45、平均1次粒子径:約15nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1800、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液を用い、ワイヤーバーで塗被量が15g/mとなるようにレジンコート紙(塗工紙表面にポリエチレンを18μmラミネートしたもの)上に塗被後、60℃の温風で乾燥し、下層の多孔質層を設けた。
次いで、2次粒子の平均粒子径が2.2μmの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil K−300、平均1次粒子径:15nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−135H)40部を混合した10%水溶液20部と上記有機粒子エマルション80部を混合した塗工液をワイヤーバーで塗被量が6g/mとなるように塗被乾燥し、最上層の多孔質層を設け、本発明の記録媒体を得た。
(記録媒体2)
記録媒体1と同様に、2次粒子の平均粒子径4.5μmの合成無定型シリカ(トクヤマ(株)社製、商品名:ファインシールX−45、平均1次粒子径:約15nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1800、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液を用い、ワイヤーバーで塗被量が15g/mとなるようにレジンコート紙(塗工紙表面にポリエチレンを18μmラミネートしたもの)上に塗被後、60℃の温風で乾燥し、下層の多孔質層を設けた。
次いで、2次粒子の平均粒子径が2.2μmの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil K−300、平均1次粒子径:15nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−135H)40部を混合した10%水溶液40部と上記有機粒子エマルション60部を混合した塗工液をワイヤーバーで塗被量が6g/mとなるように塗被乾燥し、最上層の多孔質層を設け、本発明の記録媒体を得た。
(記録媒体3)
2次粒子の平均粒子径7.0μmの非晶質合成シリカ(日本シリカ工業製、商品名:ニップシールL300)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1800、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液を用い、ワイヤーバーで塗被量が20g/mとなるようにレジンコート紙(塗工紙表面にポリエチレンを18μmラミネートしたもの)上に塗被乾燥し、下層の多孔質層を設けた。
次いで、ポリビニルブチラールエマルション(中京油脂製、商品名:レゼムVB−1、固形分濃度30重量%、平均粒径0.3μm)をワイヤーバーで塗被量が4g/mとなるように塗被乾燥し記録媒体を得た。塗工層の断面を見ると、この記録媒体の多孔質層は2層が明確に分かれておらず、有機粒子は粒径が大きいシリカの凹凸を埋めるように存在していた。
(比較例の記録媒体A)
記録媒体1と同様に、2次粒子の平均粒子径4.5μmの合成無定型シリカ(トクヤマ(株)社製、商品名:ファインシールX−45、平均1次粒子径:約15nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1800、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液を用い、ワイヤーバーで塗被量が15g/mとなるようにレジンコート紙(塗工紙表面にポリエチレンを18μmラミネートしたもの)上に塗被後、60℃の温風で乾燥し、下層の多孔質層を設けた。
次いで、上記有機粒子エマルションをワイヤーバーで塗被量が3g/mとなるように塗被乾燥し、水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子を含有しない最上層の多孔質層を設け、比較例の記録媒体を得た。
(比較例の記録媒体B)
記録媒体1と同様に、2次粒子の平均粒子径4.5μmの合成無定型シリカ(トクヤマ(株)社製、商品名:ファインシールX−45、平均1次粒子径:約15nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1800、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液を用い、ワイヤーバーで塗被量が15g/mとなるようにレジンコート紙(塗工紙表面にポリエチレンを18μmラミネートしたもの)上に塗被後、60℃の温風で乾燥し、下層の多孔質層を設けた。
次いで、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA220)をワイヤーバーで塗被量が3g/mとなるように塗被乾燥し、インク膨潤層を設け、比較例の記録媒体を得た。
次に、上記記録媒体とシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックからなるインクセットAにて下記の試験を行なった。結果を表3に示す。
1)画像出力
インクジェットプリンタEM−900(セイコーエプソン株式会社製)にて、ヘッドの駆動電圧、周波数、パルス幅を変え、下記の各紙に印刷を行なった。印刷パターンは、イエロー、マゼンタ、シアンの各カラー顔料インクは100%dutyで印字し、本発明の黒インクを充填したブラックインクは文字を同時に印刷した。印字条件は、Mjが35pl、Vjが20m/sec、周波数が1kHz、記録密度は720dpi、ワンパス印字とした。
印字乾燥後、ベタ画像部の光沢感、ムラを目視で評価し、評価基準にしたがって判定した。また、印字部の耐擦過性を綿布を張り付けたクロックメーターを5往復させ、綿布の着色度合いで判定した。
判定基準
<ベタ画像部ムラ>
ビーディングによるベタ画像部のムラの状況を目視で観察した。インク吸収性が不充分であると発生しやすい。
○:ムラが認められない。
△:かすかにムラが見える。
×:ムラが明確に認められる。
<画像光沢>
画像部の光沢を目視で判定した。
◎:優れている。
○:良好。
△:若干劣る。
×:劣る。
<耐擦過性>
◎:綿布がほとんど着色しない。
○:わずかに着色がある。
△:あきらかに着色がある。
×:濃い着色がある。
Figure 2006082378
記録媒体Aおよび記録媒体Bでは、記録後に重ね置きをしておいたところ、画像部において軽いブロッキングが発生していた。
本発明における記録液を収容するインクカートリッジを搭載するシリアル型インクジェット記録装置の一例を示す概略正面図である。 本発明における記録装置に装填する前のインクカートリッジの外観斜視図である。 本発明におけるインクカートリッジの正断面図である。 本発明における記録ヘッドと一体化された記録ユニットの外観斜視図である。 本発明におけるインクカートリッジの別の一例を示す外観斜視図である。 本発明における記録液を収容したインクカートリッジを搭載するインクジェット記録装置の別の一例を示すの概略図である。
符号の説明
1 側板
2 側板
3 主支持ガイドロッド
4 従支持ガイドロッド
5 キャリッジユニット
6 ヘッド
6a 吐出面(ノズル面)
7 インクカートリッジ
7y イエローインクカートリッジ
7m マゼンタインクカートリッジ
7c シアンインクカートリッジ
7k ブラックインクカートリッジ
8 主走査モータ
9 駆動プーリ(駆動タイミングプーリ)
10 従動プーリ(アイドラプーリ)
11 タイミングベルト
12 底板
13 サブフレーム
14 サブフレーム
15 搬送ローラ
16 用紙
17 副走査モータ
18 ギヤ
19 ギヤ
21 信頼性維持回復機構(サブシステム)
22 キャップ手段
23 ホルダ
24 リンク部材
25 係合部
26 吸引チューブ
27 吸引ポンプ
28 ワイピング手段(ワイパブレード)
29 ブレードアーム
30 記録ユニット
31 電極
32 ノズル
41 カートリッジ本体
42 インク吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 インク供給口
46 シールリング
47 大気開放口
48 溝
50 キャップ部材
51 インク供給口
53 引っ掛け部
55 フィルム状シール部材
71 カートリッジ挿入ガイド
81 取っ手
81a 滑り止め
82 凹部
A 空間
101 インクジェット記録装置
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
111 上カバー
112 前カバー前面
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 インクのサブタンク
141 用紙積載部(圧板)
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 先端加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 テンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 画面給紙ユニット
182 手差し給紙部
201 インクカートリッジ
202 インク袋(インク収納手段)
203 ケース
211 ケースの構成部材
212 ケースの構成部材
213 ケースの構成部材
225 供給口
241 凹部
242 引っ掛け部
244 ガイド部
245 ガイド部
253 開口部
264 色識別手段
282 ねじ部材

Claims (9)

  1. 記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行なうインクジェット記録方法において、前記インクは、水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子分散相を連続相中に含むポリマーエマルジョンまたは自己分散型顔料を含有する液状物であり、前記記録媒体は、該インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、該インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とを含有する多孔質層を最表層として有することを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記インクが、水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子または自己分散型顔料、及び少なくとも1種類以上の湿潤剤を含有し、且つ炭素数8以上で11以下のポリオールまたはグリコールエーテル、アニオンまたはノニオン系界面活性剤、水溶性有機溶剤、水を少なくとも含有し、25℃における表面張力が40dyne/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記インクに力学的エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記インクに熱エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
  5. 水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とを含有する多孔質層を最表層として有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
  6. 水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とバインダーとを主成分として基材上に設けられている多孔質層(第1層)の上に、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子を含む塗工液を塗工することにより、該第1層と明確に層別されず、該第1層にほぼ埋没している第2層が形成されていることを特徴とするインクジェット記録媒体。
  7. 水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子分散相を連続相中に含むポリマーエマルジョンインクまたは自己分散型顔料を含有するインクを記録媒体の表面に、記録情報に応じて付与して記録を行なうインクジェット記録方法に用いられるものであることを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェット記録媒体。
  8. 基材上に、水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とバインダーとを主成分とする多孔質層(第1層)を形成する段階と、水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子を含む塗工液を塗工して、第2層を形成する段階とを含むことにより、該第1層と第2層が明確に層別されておらず、第2層が第1層にほぼ埋没しているインクジェット記録媒体を製作することを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェット記録媒体を製造する方法。
  9. 記録媒体の表面に、記録情報に応じてインクを付与して記録を行なうインクジェット記録用インクにおいて、前記インクは、水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマー微粒子分散相を連続相中に含むポリマーエマルジョンまたは自己分散型顔料を含有する液状物であり、前記記録媒体は、該インクに含まれる水溶性有機溶媒により溶解または軟化する有機粒子と、該インクに含まれる水および水溶性有機溶媒により溶解しない粒子とを含有する多孔質層を最表層として有するものであることを特徴とするインクジェット記録用インク。
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JP2017209939A (ja) * 2016-05-27 2017-11-30 キヤノン株式会社 記録素子基板、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置

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